結論:EREMAの総合シビックランクはB
ペットボトルや食品トレー、包装フィルムを「使い終わったらごみ」として捨てるのではなく、もう一度原料へ戻せるかどうか。その成否は、消費者が分別するかだけでなく、回収したプラスチックを実際に再生原料へ変える機械の性能にも大きく左右されます。
EREMAは、その再生工程を支える世界有数のプラスチックリサイクル設備メーカーです。
今回の審査対象は、オーストリアのEREMA Engineering Recycling Maschinen und Anlagen Ges.m.b.H.です。持株・統括会社であるEREMA Group GmbHや、3S、PURE LOOP、KEYCYCLE、UMACなどのグループ会社とは原則として分けて評価します。ただし単体情報がない項目でグループ情報を参照する場合は、対象範囲を明記します。
総合シビックランクはBとします。
最大の強みは、事業による人間への貢献とInnovationです。EREMAによると、同社のシステムは世界で約7,500基が稼働し、年間2,000万トンを超える再生ペレットの生産に関わっています。115の特許ファミリー、1,000件を超える特許を保有するとしています。
PETボトルを再びPETボトルへ戻すVACUREMAやVACUNITE、フィルム・工場端材・使用済みプラスチックを再生するINTAREMAなど、単なる廃棄物処理ではなく、プラスチックを再び原料として使える品質まで戻す技術を提供しています。
さらにEcoGentleでは、PET向けVACUREMA Basicにおいて従来型の可塑化ユニットと比較し、システム全体で最大12%、押出機駆動部で30~47%のエネルギー削減が確認されています。2025年にはEcoGentleをポリオレフィンへ拡張し、材料によって押出機駆動電力を最大15%削減するとしています。
機械の高速化や大型化だけではなく、「同じ量を再生するために使うエネルギーを減らす」という方向へ技術を進めている点は高く評価できます。
一方、労働環境には慎重な評価が必要です。
EREMA Groupの公式採用情報では、フレックスタイム、在宅勤務可能な職種、自社レストラン、フィットネスセンター、社内研修機関LoopAc、子ども向け休暇期間プログラムなどが確認できます。職業訓練も充実しており、若年者育成への投資は明確です。
しかし2025/26年度のEREMA Group売上高は2億3,500万ユーロとなり、前年度比28%減少しました。グループは黒字を維持したものの、リサイクル材需要の弱さ、高いエネルギーコスト、国際競争、顧客の設備投資延期という厳しい市場環境にあります。
2026年の従業員口コミでは、短時間勤務、成果連動賞与の停止、雇用への不安、製造部門のコミュニケーション不足や暑熱・工具環境への不満も複数確認されました。これらは匿名口コミであり企業全体の事実として確定はできませんが、同じ時期に似た内容が複数投稿されているため、補助情報として無視もしません。
Safetyについては、同社固有の死亡事故、重大労災、重大な行政処分を今回の公開情報調査では確認できませんでした。ただし労災件数、度数率、休業災害、ヒヤリハットなどの定量的な安全情報は十分公開されておらず、製造現場の安全性を外部から検証しにくい状態です。
EREMA GroupのCode of Conductでは安全・健康・衛生を重視し、安全上の欠陥を特定・是正し、職場環境を継続的に改善するとしています。方針は評価できますが、方針だけでSafetyをAにはしません。
Protectionでは、世界50か所以上の販売・サービス網、オーストリア国内での主要部品内製化、営業時間外の緊急技術サポート、海外拠点の分散などは評価できます。一方、サイバー攻撃時のSOC、CSIRT、ネットワーク分離、オフラインバックアップ、復旧目標時間など、シビックProtectionで重視する具体的な情報は公開情報では十分確認できませんでした。
以上から、技術そのものはA相当、事業による人間への貢献もA相当と評価できますが、2026年時点の雇用不安を示す補助情報、製造現場の労働環境に関する不満、安全指標とサイバー復旧力の情報不足を考慮し、総合ではBとします。
| 評価項目 | シビックランク | 主な評価 |
|---|---|---|
| 事業による人間への貢献 | A | 廃プラスチックを再び原料へ戻す産業基盤を提供。食品接触用途やボトルtoボトルにも対応 |
| 労働環境 | B | フレックス、在宅勤務、研修、福利厚生は充実。一方、市況悪化下で雇用不安や製造現場への不満が口コミで複数確認 |
| Safety | B | 安全方針と教育は確認できるが、労災件数・度数率など単体の定量データが不足 |
| Innovation | A | 高品質再生、食品接触、エネルギー削減など定量的な技術成果を確認 |
| Protection | B | 世界サービス網と主要部品内製化は強み。サイバー復旧・BCPの具体情報は不足 |
| 総合シビックランク | B | 社会的価値と技術力は高いが、労働・Safety・Protectionの透明性に改善余地 |
基本情報
EREMAは1983年、オーストリアでプラスチックリサイクル設備を開発する企業として創業しました。現在も本社はオーバーエスターライヒ州アンフェルデンにあります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 会社名 | EREMA Engineering Recycling Maschinen und Anlagen Ges.m.b.H. |
| 所在地 | Ansfelden, Austria |
| 創業 | 1983年 |
| 事業 | プラスチックリサイクル機械・システムの開発、製造、販売、サービス |
| 経営 | Manfred Hackl、Markus Huber-Lindinger、Horst Wolfsgruber |
| 企業形態 | 非上場・民間所有のEREMA Group傘下 |
| 従業員規模 | EREMA公式会社ページでは690人超 |
| 売上高 | EREMA公式ページ掲載の2022/23年度は3.2億ユーロ |
| グループ売上 | 2025/26年度2.35億ユーロ |
| 海外展開 | 50か所以上の国・地域拠点・代理網 |
ここで注意したいのは、EREMA単体とEREMA Groupを混同しないことです。
EREMA公式会社ページには690人超、2022/23年度売上高3.2億ユーロとあります。一方、2025年のEREMA Group発表ではグループ従業員920人、2024/25年度売上高3.3億ユーロでした。2025/26年度のグループ売上は2.35億ユーロまで低下しています。
単体とグループで対象範囲が違うため、グループ売上の減少をEREMA単体の売上減少としては扱いません。
ただしEREMAはグループの中核会社であり、事業環境の悪化が採用、勤務、賞与、設備投資などへ影響する可能性はあります。労働環境では、このグループ全体の市況を背景情報として扱います。
主な業務内容と拠点
EREMAの仕事は単純な「機械製造」ではありません。
顧客が持ち込む廃プラスチックの種類、汚れ、形状、水分量、最終製品に求める品質に応じて、前処理、加熱、脱気、ろ過、押出、ペレット化などの工程を組み合わせ、再生原料へ戻せる設備を設計・製造します。
主要拠点はオーストリア・アンフェルデンの本社です。ここに開発、営業、製造、顧客テスト、サービス機能が集中しています。
海外ではEREMA North AmericaやEREMA Chinaなどの拠点を持ち、グループ全体では北米、中国、アフリカ、タイ、2026年にはインドにも展開しています。販売だけでなく、サービス、保守、予備部品、技術支援を世界規模で行えることが事業上の強みです。
INTAREMA
INTAREMAは、工場内端材から使用済みプラスチックまで幅広い材料を再生ペレットへ戻す主力システムです。
特徴の一つがCounter Current技術です。前処理装置内の回転方向と押出機への材料供給の関係を最適化し、低温でも安定して材料を取り込めるようにしています。
Smart Start機能によって操作を簡略化し、レシピを呼び出して運転条件を設定できるなど、熟練者だけに依存しない運用も目指しています。
設備の自動化が進むことで、作業員が常に機械へ張り付いて細かな調整を行う必要を減らせる点は、人間への還元として評価できます。
VACUREMA・VACUNITE
PETボトルを再び食品接触可能なPET原料へ戻す分野ではVACUREMAとVACUNITEが代表的です。
使用済みPETは、単に溶かして固めれば飲料ボトルへ戻せるわけではありません。食品と直接接触するため、異物や移行物質を除去し、分子特性を回復し、安定した品質を確保する必要があります。
EREMAのVACUREMAでは、高温・真空下でフレークを前処理し、押出前に水分や移行物質を除去します。
Food Contact Controlでは食品接触用途の運転条件を継続監視・記録し、設定値から外れた場合に警報を出し、必要に応じて製品流を分離する仕組みもあります。
公式資料ではVACUREMA・VACUNITEのボトルtoボトル設備は400基超の実績があり、最大毎時6トン級のPET処理にも対応しています。2020年以降に導入された4~6トン級の12設備だけでも、年間約35万トンのrPETを生産するとしています。
COREMAと高度なコンパウンド
COREMAではリサイクルとコンパウンドを連続させ、再生樹脂へ添加剤や補強材を加えながら、新しい用途に使える材料へ加工します。
これは「再生したが品質が低く、結局用途が限られる」という問題への対応です。
プラスチック循環では、回収量だけでなく、再生材がどれだけ高い用途へ戻れるかが重要です。EREMAは単なる量的リサイクルではなく、再生材の品質を上げる技術へ事業を広げています。
研究・顧客テスト
EREMAは顧客が実際に扱う材料を持ち込み、産業規模でテストできる研究・実証設備を整備しています。PET繊維リサイクルでは専用テストセンターも設けています。
この仕組みはInnovation上重要です。
研究室で成功した技術と、汚れや材質のばらつきがある実際の廃棄物を大量処理する技術は同じではありません。
顧客材料で試験し、処理品質、安定性、エネルギー、最終用途まで確認できることは、技術を実社会へ移す能力につながります。
事業による人間への貢献
事業による人間への貢献はAと評価します。
EREMAが提供しているものは「リサイクル機械」ですが、人間への価値は機械そのものではありません。
最大の価値は、すでに社会に存在する大量のプラスチックを、廃棄物ではなく再び原料として使えるようにすることです。
プラスチックは衛生、食品保存、医療、輸送、電気製品、建築など幅広い領域で使われています。短期的にすべてを他素材へ置き換えることは現実的ではありません。
そうである以上、使用後のプラスチックを焼却・埋立・流出させるのではなく、可能な限り循環させる設備には社会的価値があります。
EREMA公式会社ページでは、同社システム約7,500基によって年間2,000万トン超の再生ペレットが生産されているとしています。EREMA Groupの2025年発表では、グループの設備・部品による年間リサイクル能力は約2,600万トンまで拡大しています。
これらは企業自身の公表値であり、全量が新品プラスチックを同量代替したことを意味するわけではありません。
それでも、リサイクル工程の産業化に大きく関与していることは明確です。
特に食品接触用途へ戻せる技術は評価できます。
ペットボトルを低品質な繊維やシートへ一度だけ再利用して終わるのではなく、再び飲料ボトルへ戻せるなら、同じ資源を繰り返し使える可能性が高まります。
2025年にはFaerchとの取り組みで、使用済みPET食品トレーを再び食品トレーへ戻し、最大100%rPETを使うtray-to-trayの産業利用も紹介されています。
一方、リサイクル技術にも限界があります。
機械的リサイクルには回収、洗浄、選別、エネルギーが必要です。すべてのプラスチックを無限に同じ品質で循環できるわけでもありません。
再生設備の存在が、過剰包装や使い捨てを正当化するものでもありません。
したがって「リサイクル企業だから自動的にS」とはしません。
それでも、現実に大量使用されているプラスチックを高品質で再び資源へ戻し、食品接触用途まで含めて循環させる産業設備を提供しているため、事業による人間への貢献はAが妥当です。
代表業務を審査:高品質プラスチックの機械的リサイクル設備の開発・製造
EREMAを代表する業務は「高品質な再生樹脂をつくる機械的リサイクル設備の開発・製造」とします。
その代表例がINTAREMAとVACUREMAです。
この業務を評価するうえで重要なのは、「廃プラスチックを処理できるか」だけではありません。
再生材の品質が低ければ、安価な用途にしか使えず、最終的には廃棄へ向かいます。
逆に、食品包装、自動車部品、高品質フィルムなどへ使える再生材を安定生産できれば、新しい原料の使用を減らせる可能性が高くなります。
EREMAの技術開発は、処理量、脱気、ろ過、食品安全、臭気低減、エネルギー消費など、再生材を高価値用途へ戻すための問題を一つずつ解決する方向に進んでいます。
2025年に発表したVOLEXは、水を用いたストリッピング技術を単軸押出機へ組み込み、標準的なINTAREMA TVEplusの脱気と比較して最終再生ペレット中のVOCを最大40%低減し、投入原料比では最大75%低減したとしています。
臭気や揮発成分が問題になる再生材を、家具、自動車内装、生活用品などより高い用途へ使いやすくする技術です。
EcoGentleでは、PET向けで総エネルギー最大12%削減、押出機駆動部30~47%削減という定量的な成果があります。
ここはシビックInnovationの考え方と非常に相性がいい部分です。
設備投資額が大きいから評価するのではなく、同じリサイクル量をより少ないエネルギーで処理し、再生材品質を上げ、設備の摩耗を減らし、生産コストを下げる方向に技術が使われています。
したがって代表業務については高く評価します。
労働環境
労働環境はBと評価します。
公式情報を見る限り、福利厚生と働き方にはかなり充実した部分があります。一方、2026年の市場悪化局面では、従業員側から雇用不安、賞与、コミュニケーション、製造環境に関する不満が複数出ています。
雇用区分と従業員規模
EREMA公式会社ページは従業員690人超としています。
一方、EREMA Group全体では2025年6月時点で920人でした。現在の採用ページでは900人超とも説明されています。これらはグループ全体の数字であり、EREMA単体の最新人数とは混同しません。
正社員、契約、派遣の構成比について、EREMA単体で比較できる公開資料は確認できませんでした。
オーストリアでは金属加工産業の労働協約が適用される求人があり、現在募集されているPETプロセスエンジニアでは、最低月額2,947.89ユーロとしたうえで、経験・能力に応じて実際の給与を決めるとしています。
これは職種別の最低提示額であり、EREMA全社員の平均給与ではありません。
給与
企業公式の平均年収は確認できませんでした。
口コミサイトKununuでは、EREMA Groupについて2026年時点で140件を超える給与投稿があります。
職種別平均では、物流職約4.07万ユーロ、機械組立職約4.43万ユーロ、機械技術職約4.49万ユーロ、カスタマーサービス約5.37万ユーロ、プロジェクトマネージャー約6.54万ユーロなどとなっています。
これは自己申告であり、EREMA単体の給与台帳ではありません。職種比較の補助資料としてのみ扱います。
より注意したいのは、2026年の複数口コミで「成果連動賞与がなくなった」「短時間勤務の影響で収入が厳しい」という趣旨の内容が確認できることです。
EREMA Groupの2025/26年度売上は前年度比28%減となっており、市況悪化そのものは公式・報道でも確認できます。
ただし、短時間勤務の対象人数、期間、EREMA単体への適用範囲、賞与停止の全社員への適用などは公式資料では確認できません。
したがって「全社員の給料が下がった」とは書きません。
しかし景気悪化時の人間への還元を見るうえで、今後確認すべき重要項目です。
フレックスタイム・在宅勤務
EREMA公式採用情報では、フレックスタイム制度が社会的福利厚生として明記されています。
現在募集されている技術職では、柔軟な勤務時間と在宅勤務が可能とされています。
Kununuの長期勤務者の口コミでも、柔軟に勤務時間を設定できることを評価する投稿があります。
部門・職種により適用範囲は異なる可能性があります。
製造、倉庫、組立など現場職では在宅勤務はできないため、オフィス職の制度を生産職へ広げて評価することはしません。
福利厚生
公式採用情報では次の福利厚生が確認できます。
| 制度 | 内容 |
|---|---|
| 社員食堂 | Ansfeldenに企業レストラン |
| フィットネス | 自社フィットネスセンターVitalo |
| 柔軟勤務 | フレックスタイム、職種によりホームオフィス |
| 教育 | LoopAcという自社研修・教育アカデミー |
| 家族支援 | 子ども向け休暇期間プログラムEremalino |
| 通勤 | 自動車・自転車駐車場、EV・電動自転車充電設備 |
| 社内交流 | 従業員イベント |
口コミでも食堂、駐車場、柔軟な勤務時間、食事補助、フィットネスなどは比較的多く確認されており、福利厚生の存在自体には一定の裏付けがあります。
人材育成
EREMAは職業訓練にも力を入れています。
若年者向けには金属技術、物流、IT、経理・事務などの職業訓練コースがあり、専用の訓練設備、語学、ソーシャルスキル、フォークリフト・クレーン資格、荷締め教育などを提供しています。
機械メーカーでは熟練技術の継承が重要であり、若年者を単純な補助作業員として使うのではなく、資格と技能を育成する仕組みを持っている点は評価できます。
一方、2026年の口コミでは「研修はあるが実際のキャリアアップにつながりにくい」「改善提案が通りにくい」といった不満も見られます。
公式制度の存在と、社員が実感する成長機会は別なので、両方を分けて記録します。
2026年の雇用不安
2026年の労働環境評価で最も注意した点です。
EREMA Groupは2025/26年度に黒字を維持したものの、売上高は2.35億ユーロへ28%減少しました。
同社は原因として、高いエネルギーコスト、再生材需要の弱さ、激しい国際競争、顧客の設備投資延期を挙げています。
この時期のKununu口コミでは、短時間勤務、成果連動賞与の停止、雇用不安、人員削減を示唆する記述が複数あります。
これらは会社公式の人数データではなく匿名口コミです。したがって大量解雇が実施されたと断定はしません。
同じプラットフォームには高評価もあり、全社一様に悪いわけでもありません。
だからこそ、現在の企業評価では「市場悪化局面で社員をどこまで守れるか」を継続して見る必要があります。
労働環境をAにしなかった最大の理由はここです。
Safety
SafetyはBと評価します。
EREMAは大型機械、押出機、金属加工、電気設備、高温の樹脂、フォークリフト、クレーンなどを扱う製造会社です。そのため事務系企業より労災リスクが高い業種です。
EREMA GroupのCode of Conductは、安全、健康保護、衛生を重視し、安全上の欠陥の特定と是正、継続的な職場環境改善、危険やセキュリティ上の問題の即時報告、管理職の責任、安全規則の継続的見直しを掲げています。
職業訓練でもフォークリフト・クレーン資格や荷締め講習などが確認でき、安全教育を制度として組み込んでいる点は評価できます。
今回の調査では、EREMA Engineering Recycling Maschinen und Anlagen Ges.m.b.H.について、死亡事故、重大労災、重大な行政処分、重大製品事故などを確認できませんでした。
ただし「重大事故を検索で確認できない」ことと「事故がない」ことは同じではありません。
公式サイトでは休業災害件数、度数率、強度率、死亡災害件数、交通事故件数といった定量的Safety指標を確認できませんでした。
また2026年8月の生産部門口コミには、夏場の暑さ、臭気、工具の状態などについて強い不満を述べる投稿があります。
この投稿には労働監督時の対応についても重大な主張が含まれていますが、匿名投稿以外の裏付けを確認できないため事実認定はしません。
別の2026年生産部門口コミでも工具・設備への不満が出ており、現場設備や暑熱対策に問題がないと言い切る材料もありません。
SafetyをAへ上げるには、会社単体の労災指標、暑熱対策、設備点検、安全投資、改善実績などの公開が望まれます。
Innovation
InnovationはAです。
EREMAは今回の審査でも、Innovationを人間への具体的な効果へつなげて評価しやすい会社です。
理由は、新技術の紹介だけではなく、「何%エネルギーを減らしたか」「何トン処理できるか」「どの品質まで戻せるか」といった成果が比較的具体的だからです。
EcoGentle
EcoGentleはPET再生設備の可塑化工程を改善する技術です。
VACUREMA Basic 2628 Tでの測定では、システム全体の比エネルギー消費を最大12%、押出機駆動部では30~47%削減したとしています。
大型設備では毎時最大6,000kgを処理するため、単位量当たりの電力を減らす効果は累積すると大きくなります。
2025年にはポリオレフィン向けにも展開し、HDPE・PPでは押出機駆動電力を最大6%、LDPE・LLDPEやBOPETでは最大15%削減するとしています。
VOLEX
VOLEXは揮発性有機化合物を低減する脱気技術です。
標準的なINTAREMA TVEplus脱気と比べて最終再生ペレット中VOCを最大40%低減し、投入原料比で最大75%低減したとしています。
再生材の臭気・揮発成分を減らせれば、より多くの用途へ再生材を使いやすくなります。
これはリサイクル率だけを上げるのではなく、再生材の品質を上げ、新材を代替できる範囲を広げるInnovationです。
大型化と自動化
VACUREMAでは毎時6トン、INTAREMA 2325ではポリオレフィン再生で毎時4トン超の処理能力を実現しています。
ただ大型化するだけなら人間への貢献とは限りません。
しかし同時に省エネルギー、工程安定、自動ろ過、自動運転、簡易操作を進めています。
大量処理を人員増加だけで実現するのではなく、機械側の処理能力と自動化で対応している点を評価します。
繊維・トレー・高度用途へ領域拡大
PETボトルだけでなく、食品トレー、PET繊維、ポリオレフィン、工業用樹脂などへ高品質リサイクルを広げています。
特に繊維to繊維は、衣料廃棄物問題に関係する分野です。専用テストセンターを設置し、実際の顧客材料で産業規模の検証ができる体制を構築しています。
EREMA公式会社情報では115の特許ファミリー、1,000件超の特許を保有するとしていますが、Innovation評価を特許件数だけで上げているわけではありません。
人間側への還元が測れる実装技術が複数あるためAとします。
Protection
ProtectionはBです。
EREMAのProtectionで強いのは、物理的な供給網とサービス網です。
世界5大陸、50か所以上の国・地域拠点・代理網を持ち、保守と予備部品を提供しています。営業時間外にも緊急技術連絡先を設け、機械・プロセス、電気・電子のトラブルに対応しています。
リサイクル工場は設備が停止すれば生産そのものが止まります。
部品供給と現地・遠隔サポートを世界規模で持つことは、顧客側の事業継続に直接関係します。
主要部品の内製化
EREMA Groupは2024/25年度までの5年間で1.45億ユーロの投資プログラムを行い、そのうち2,300万ユーロを3Sへ投じて主要部品の内製率を高めたとしています。
押出機スクリューやシリンダーなど重要部品をグループ内で生産できれば、外部サプライヤーへの依存を減らせます。
これは単なる利益率改善だけではなく、供給途絶への耐性というProtectionの意味があります。
地理的分散
北米、中国、アフリカ、タイ、インドなどへ拠点を広げています。
2026年2月にはLindner Washtechと共同でEREMA Indiaを開設したとしています。
地政学リスクや物流障害があった場合に全世界の顧客サポートが一度に止まりにくい構造は評価できます。
サイバーProtection
弱いのは情報公開です。
EREMA Groupのサステナビリティ情報では、データ保護について高い要求水準を掲げ、従業員のセキュリティリスク意識向上を重視するとしています。
しかし、SOC、CSIRT、EDR、ゼロトラスト、ネットワーク分離、オフラインバックアップ、ランサムウェア復旧訓練、RTO、RPOなどの具体的な公開情報は今回確認できませんでした。
EREMAの設備にはデジタル制御や顧客サービス機能が増えているため、サイバー攻撃が自社業務だけでなく顧客サポートへ影響する可能性があります。
「公開していないから対策していない」とは判断しませんが、シビックProtectionでは外部から確認できる復旧能力も評価対象です。
このためProtectionはBとします。
項目別シビックランク
| 項目 | ランク | 評価理由 |
|---|---|---|
| 事業による人間への貢献 | A | 廃プラスチックを再原料化する世界規模の産業設備を提供し、食品接触・閉ループ用途まで拡大 |
| 労働環境 | B | フレックス、在宅勤務、教育、福利厚生は充実。2026年は市況悪化に伴う雇用不安・賞与・製造現場への不満が口コミで増加 |
| Safety | B | 安全方針・教育は確認。重大事故は確認できない一方、単体労災指標や現場改善データが不足 |
| Innovation | A | EcoGentle、VOLEX、高度食品接触、繊維to繊維など、人間・資源・エネルギーへの具体的還元を確認 |
| Protection | B | グローバルサービス網、部品内製化、拠点分散は評価。サイバー復旧力は不透明 |
| 総合 | B | 技術と社会的価値は高いが、2026年の労働環境とSafety・Protectionの透明性に改善余地 |
総合評価
EREMAは、商品として目に触れる機会が少ない企業です。
しかし、市販のペットボトルや食品容器を「再び同じ用途に戻せるか」という問題を追っていくと、この会社のようなリサイクル設備メーカーへ行き着きます。
プラスチックの循環は、消費者がごみを分別するだけでは成立しません。
回収し、選別し、洗い、異物を取り除き、脱気し、溶かし、ろ過し、分子特性を整え、もう一度製品に使える原料へ戻す必要があります。
EREMAはこのうち特に高品質な再生材をつくる工程で、世界的に大きな役割を担っています。
同社システム約7,500基で年間2,000万トンを超える再生ペレットが生産されているという規模は大きく、VACUREMAやVACUNITEは食品接触可能なrPETを産業規模で生産します。
これは単に「環境に良い」という抽象論ではありません。
新しい石油由来原料を使わず、既に存在するプラスチックを再び資源として利用できる量を増やす産業インフラです。
Innovationも強い企業です。
EcoGentleの総エネルギー最大12%削減、押出機駆動部30~47%削減、VOLEXのVOC最大40%削減など、技術が何を改善したかを比較的具体的に示しています。
シビックランクでは、AIを使った、新設備を建てた、研究費を増やしたというだけではInnovationを高評価しません。
EREMAの場合、エネルギー消費、処理量、再生品質、食品安全、設備運転といった実際の成果へ技術がつながっているため、Innovation Aは妥当です。
一方、企業全体をAにできなかった理由は、現在の働く人の状態と情報公開です。
2025/26年度のEREMA Group売上高は2.35億ユーロとなり、前年度比28%減少しました。グループは利益を維持していますが、リサイクル市場は3年連続で厳しい状況にあると説明しています。
2026年の社員口コミでは、短時間勤務、成果連動賞与の停止、雇用不安、コミュニケーション不足、製造現場の設備や暑熱への不満が複数出ています。
口コミは会社全体の公式データではありません。
高評価の社員もおり、福利厚生、柔軟な勤務、食堂、フィットネス、同僚関係などを評価する声もあります。
だからこそ「EREMAはブラック企業」といった単純な結論にはしません。
むしろ、平常時には良好だった職場が、市場悪化時にどこまで雇用と待遇を維持できるかが、これからの評価ポイントです。
シビックランクでは、企業が成長しているときだけ社員を大切にできるかではなく、売上が落ちたときにどのように負担を分担するかも重要です。
Safetyについても同様です。
大型機械を製造する会社として、安全方針や教育は確認できます。しかし、労災件数、度数率、暑熱対策、改善実績などの単体データが少なく、外部から安全状態を詳細に検証できません。
Protectionは物理的な面では比較的強いです。
世界規模のサービス網、部品内製化、複数地域への拠点展開は、供給停止や顧客設備停止への耐性を高めます。
一方、サイバー攻撃時の復旧能力は公開情報では判断できません。
EREMAは今後、リサイクル設備をよりデジタル化し、顧客設備との接続や遠隔サービスを増やしていく可能性があります。その場合、機械性能と同じくらいサイバーProtectionが重要になります。
総合すると、EREMAは人間社会に必要な技術を持つ企業です。
リサイクルを「ごみを減らす活動」から「品質の高い原料を大量につくる産業」へ変える技術力は高く、事業とInnovationはA評価に値します。
しかし、2026年の厳しい市場環境下で雇用・賞与・職場環境への不満が複数見られること、SafetyとサイバーProtectionの定量情報が不足していることから、企業全体では一段下げます。
したがって、EREMA Engineering Recycling Maschinen und Anlagen Ges.m.b.H.の総合シビックランクはBと審査します。
今後、景気悪化局面でも雇用と待遇を維持できたことが確認される、製造現場の労災・暑熱・安全指標が公開される、サイバー攻撃時の復旧・バックアップ体制が具体的に示される、といった改善が確認できれば、総合Aへの引き上げを十分検討できる企業です。
出典一覧
1.EREMA「Company」
2.EREMA「INTAREMA」
3.EREMA「VACUREMA」
4.EREMA「VACUREMA Details」
5.EREMA「EcoGentle」
6.EREMA「VOLEX technology reduces VOCs by 40 percent」2025年10月9日
7.EREMA「VACUREMA machines recycle up to 6 tons of PET per hour」2025年3月13日
8.EREMA「New EREMA polyolefin plant outputs more than 4 tonnes per hour」2024年10月16日
9.EREMA「PET Fibre to Fibre」
10.EREMA Group「EREMA Group well underway despite challenging market」2025年6月4日
11.EREMA Group「Plastics Recycling Remains a Long-Term Growth Market」2026年8月6日
12.EREMA Group「Jobs」
13.EREMA Group「Verfahrenstechniker – Schwerpunkt PET」
14.EREMA Group「Lehre」
15.EREMA Group「Environmental policy」
16.EREMA Group「People in our loop」
17.EREMA Group「Corporate governance」
18.EREMA Group「Code of Conduct」2024年12月版
19.Kununu「EREMA Group als Arbeitgeber」
20.Kununu「EREMA Group Gehalt」
21.Plasticker「Erema: Group Remains Profitable Despite Significant Revenue Decline」2026年8月7日
