戦争をなくすには、国家や軍隊の判断を変えるだけでなく、市民が社会を動かす力を取り戻す必要があります。
多くの市民が日常の中で望んでいるのは、戦争そのものではありません。自分や家族が安全に暮らせること、安定した仕事や住居があること、食料、電気、医療を利用できること、将来に希望を持てることです。
しかし、生活への不安や他国への恐怖が強くなると、「自分たちが安全になるには、敵を倒すしかない」という考えが支持される場合があります。市民の不満が分断や憎悪へ向かい、国家や大きな組織だけが意思決定、資金、技術を持つ状態では、戦争を止める市民の力は育ちません。
GVSは、市民が社会への不満を批判だけで終わらせず、実行案であるDRIVEへ変え、人と協力して形にするための仕組みです。
言葉を形にし、協力を力に変える。その主体性を日常生活の中で学び、実行するための新しい生活ツールがGVSです。
競争社会は、市民を分断している
現在の社会では、市民同士が仕事、所得、地位、住宅、福祉などを巡って競争しています。
生活費を得るために長い時間働けば、社会問題について学び、人と話し合い、活動へ参加する余裕も失われます。政治や企業の重要な決定は、市民から遠い場所で行われ、市民は決定された制度や商品を受け入れる側になりがちです。
そのような状態では、問題が起きるたびに「政府が変えるべきだ」「企業が改善すべきだ」「専門家が解決すべきだ」と考えるようになります。
もちろん、政府や企業の責任を追及することは必要です。問題を起こした側の責任まで市民が背負う必要はありません。
それでも、「誰が悪いか」を決めるだけで終われば、市民の手元には実行案、協力者、資金、技術、経験が残りません。次の問題が起きたときも、再び誰かに解決を求めることになります。
現在の市民は、言葉を持っていないわけではありません。SNS、選挙、デモなど、意見を表明する手段はあります。しかし、その言葉を予算、人材、商品、設備へ変える仕組みが弱いのです。
競争によって市民が分断され、言葉と協力が実行へつながらない。この状態を変えることがGVSの役割です。
批判する言葉だけでは、社会をつくれない
デモやSNSでの批判には、問題を可視化し、世論をつくり、政治や企業へ圧力をかける役割があります。批判すること自体が無意味なのではありません。
ただし、何かに反対するだけでは、その後に必要なものが決まりません。
- どのような状態を目指すのか
- 何を実行するのか
- 誰が担当するのか
- いくら必要なのか
- どの企業や専門家と協力するのか
- 成果をどのように確認するのか
同じスローガンを掲げて集まっても、活動が終われば人々は再び分散します。批判の対象がなくなった後に、何を一緒につくるのかが決まっていないからです。
GVSが目指す団結は、同じ敵を批判することで生まれる団結ではありません。同じ目的を形にするために、異なる能力を持つ人が協力する団結です。
DRIVEは、不満を主体的な言葉へ変える
DRIVEは、市民の不満を抑えるものではありません。不満の中にある必要性を見つけ、実行できる言葉へ変えるためのものです。
たとえば、「政府は電気料金を下げろ」という要求があったとします。
そこには、安定した価格で電気を使いたい、停電しても生活を続けたい、外国の資源に依存しすぎたくない、特定地域だけに負担させたくないといった必要性があります。
GVSでは、必要性を確認したうえで、次のような問いを立てます。
- 何が起きているのか
- 誰が何に困っているのか
- どのような状態へ変えたいのか
- 自分たちに何ができるのか
- 誰と協力できるのか
- 実行には何が必要なのか
- 成果をどう確認するのか
その結果、「公共施設へ蓄電池を設置し、停電時には地域住民へ電力を供給する」「住宅の断熱改修を進め、必要な電力を減らす」「地域で修理と保守を担う人材を育てる」といったDRIVEをつくれます。
主体性とは、困っている本人が一人で問題を解決する自己責任論ではありません。
自分にできることを言葉にし、できない部分を他者との協力によって補うことです。「誰かがやるべきだ」で止まらず、「自分たちには何ができるか」まで考える。DRIVEは、その主体性を練習するための実行案です。
GVSは、勝者を決めるだけの投票ではない
一般的な多数決では、賛成と反対に分かれ、多数派が勝ち、少数派が負けます。決定には必要な方法ですが、負けた側の不安や必要性が残れば、対立は続きます。
GVSでは、投票する前に少人数で意見を確認します。
相手は何を恐れているのか。何を守ろうとしているのか。どの条件なら協力できるのか。複数の案を組み合わせられないか。少数派の不安を、実行案へどう反映するか。
この過程が合論です。
全員を同じ考えへ統一するのではありません。それぞれの必要性を残しながら、元の案より多くの人が参加でき、実行しやすい案へ改善します。
匿名性、自動翻訳、少人数での対話を利用すれば、国籍、役職、知名度に左右されず、同じ問題を抱える市民として協力しやすくなります。エネルギー不足、失業、物価高、災害、医療不足は、国籍が違っても共通する問題です。
OECDも、市民参加の方法として、公開協議だけでなく、参加型予算や熟議型プロセスなどを挙げています。市民が政策形成、意思決定、実施、評価へ参加することは、より透明で包摂的な政策づくりにつながると説明しています。OECD「市民参加プロセスのガイドライン」
GVSは、こうした市民参加を一度限りの会議ではなく、日常生活の中で繰り返す仕組みにしようとする構想です。
言葉が予算・人材・企業へつながって、市民の力になる
話し合って終わるのであれば、市民の提案は現実を変えられません。
GVSは、シビックドライブを構成するほかの仕組みとつながります。
- GVS:市民が優先事項を決める
- DRIVE:不満を実行案へ変える
- シビックファンド:必要な活動へ予算を出す
- シビックギルド:人材を集めて実行する
- シビックマーケット:人間を守る企業を選ぶ
市民の意見が、資金、仕事、商品、設備、技術へ変わって初めて、市民の力になります。
GVSにおける主体性は、気持ちの持ち方だけを変える精神論ではありません。市民が意思決定に参加し、協力者を見つけ、予算を配分し、実行結果を確かめられる状態をつくることです。
市民が予算の優先順位を決める
GVSが社会へ広がった先では、シビックファンドの予算だけでなく、自治体や国家予算の決定にも市民の意向を反映できます。
ここで目指すのは、専門知識を無視して、すべての予算を単純な人気投票で決めることではありません。
専門家が法律、必要経費、リスク、将来負担などを示し、市民が何を優先するかを決めます。医療、教育、防災、生活防衛、エネルギー自給、研究開発、労働時間の短縮など、生活へ直結する分野にどれだけ配分するかを市民が選べる仕組みです。
すでに世界では、住民が提案を出し、投票によって地域予算の使い道を決める参加型予算が行われています。ウズベキスタンの「Open Budget」では、市民が地域予算で実施する事業を提案し、投票できる仕組みが導入されました。UNDP
OECDも、予算を巡る市民との双方向の対話は、市民の必要性や選好への理解を深め、難しい財政判断への合意や当事者意識を育てると整理しています。OECD「Citizen engagement: Beyond the ballot and into budgets」
GVSでは、参加型予算をさらに進め、提案、合論、優先順位の決定、実行、検証を一つの循環にします。
敵を倒す防衛から、市民を守る防衛へ変える
市民が防衛予算の優先順位を決めるなら、評価すべきなのは「どれだけ敵を破壊できるか」だけではありません。
多くの市民が直接必要としているのは、自分や家族が生き残り、攻撃や災害の中でも生活を続けられることです。
その意向が反映されれば、防衛の重点は次のように変わります。
- シェルターと避難設備
- 迎撃と早期警戒
- 分散型電源と蓄電池
- 食料や医薬品の備蓄
- 通信網の分散
- サイバー防御
- 医療、救助、復旧
- 住宅やインフラの修理体制
相手を脅すための防衛ではなく、自国民を守るための防衛です。
攻撃されても電気、水、通信、医療、物流が止まらない。設備を破壊されても、地域の人材と部品で修理できる。その状態に近づくほど、攻撃によって市民を恐怖に陥れ、政治的な要求を通すことは難しくなります。
GVSは兵器を直接なくす仕組みではありません。市民が「敵を倒すこと」より「自分たちの生活を守ること」を優先できるようにし、防衛の目的を変えていきます。
作業する市民から、開発する市民へ変わる
市民が主体性を持つためには、時間と能力が必要です。
生活費を得るために反復的な作業へ追われていれば、社会問題を調べ、GVSへ参加し、DRIVEをつくる余裕は生まれません。
シビックギルドでは、働く人が通常業務を経験した後、業務改善、新設備の試験、自動化、研究開発へ進む流れを目指します。
- 通常業務を経験する
- 不便や危険を見つける
- 改善案を提案する
- 新しい設備を試験する
- 自動化や研究開発へ参加する
自動化によって得られた利益を、人員削減だけに使うのではなく、賃金、労働時間の短縮、学習、研究開発へ還元します。
市民が開発や発明へ参加すれば、エネルギー、食料、住宅、医療などの不足を、奪い合いではなく技術によって解決できる可能性が高まります。
自由な時間と充足が、分断を弱くする
自由時間は、単なる休暇ではありません。
時間がなければ、市民は政治や企業について調べ、人と話し合い、地域活動へ参加できません。疲れ切った市民は、社会の決定を政府、企業、専門家へ任せるしかなくなります。
労働時間が短くなれば、GVSへ参加する、社会問題を学ぶ、DRIVEを提案する、子育てや介護を支え合う、新しい技術や文化を生み出すといった活動が可能になります。
ILOは、労働時間と働く時間帯が、本人だけでなく家族や社会の健康と生活の質にも影響すると指摘しています。ILO「Working Time and Work-Life Balance Around the World」
仕事は、所得だけでなく、役割、達成感、人とのつながりも生み出します。一方で、WHOは、過重労働、雇用不安、仕事への裁量の少なさなどを、職場の精神的健康を損なう要因として挙げています。WHO「Mental health at work」
自分の意見が社会へ反映され、役割を持ち、仲間と活動し、生活に必要な所得と時間を得られるようになれば、無力感や孤立は弱くなります。
すべての犯罪が貧困や孤立だけで起きるわけではありません。それでも、生活苦、疎外感、他者への憎悪から生まれる犯罪や過激化の一部は減らせます。
市民の主体性が、戦争と犯罪を減らす
GVSによって主体性が高まれば、自動的に戦争がなくなるわけではありません。
それでも、市民が言葉、協力、時間、予算、実行組織を持つことには、戦争と犯罪を減らす明確な意味があります。
生活への不満を、敵国や外国人への憎悪ではなくDRIVEへ変えられる。資源不足を、侵略ではなく代替技術の開発によって解決できる。国家予算を、攻撃より生活防衛へ向けられる。国籍を越えて、同じ問題を抱える市民として協力できる。経済的不安や孤立を弱くできる。
戦争を止めてくれる指導者を待つのではなく、市民自身が戦争を必要としない社会をつくる側へ移ります。
GVSだけで外交、国際法、軍縮の役割がなくなるわけではありません。誤情報、組織的な投票操作、多数派による少数派の抑圧、参加者の偏りなどにも対策が必要です。
情報源の表示、専門家による検証、少数意見の保護、予算の公開、活動報告、再審議、不正対策を組み込み、市民参加が実際の決定へ影響することも保証しなければなりません。
GVSは万能な答えではなく、市民が平和をつくるための権利と能力を育てる基盤です。
批判する市民から、つくる市民へ
GVSが目指しているのは、市民全員を同じ意見にすることではありません。
市民が自分の感情や必要性を言葉にし、他者の必要性を理解し、協力できる実行案をつくることです。そして、自分たちで優先順位を決め、予算、人材、企業を動かし、結果を確かめます。
多くの市民が本当に望んでいる安全、安定した生活、自由な時間を、自分たちの意思で形にする。
批判する市民から、つくる市民へ。
言葉を形にし、協力を力に変える。
その主体性を日常生活の中で学び、実行するために、GVSはつくられました。
市民が真の意味で団結し、戦争や犯罪を必要としない社会を自分たちでつくること。それが、GVSが戦争廃止につながる理由です。
