MENU

TOTO株式会社のホワイト度は?労働環境と水まわり事業を審査

TOTO株式会社は、便器、温水洗浄便座、水栓、浴室、キッチン、洗面化粧台などを開発・製造・販売する住宅設備企業です。家庭だけでなく、病院、学校、駅、商業施設、介護施設、宿泊施設などでも同社の商品が使われています。

トイレと水まわりは、単なる住宅の内装ではありません。排泄物を衛生的に処理し、感染症を防ぎ、体を清潔に保ち、高齢者や障害のある人の生活を支える社会基盤です。その意味で、TOTOの事業は人間の生命、健康、尊厳へ直接関わっています。

一方、完成品の裏側には、陶土や金属、樹脂、電子部品の調達、衛生陶器の高温焼成、電子機器の組立、重量物の運搬、営業、ショールーム、施工、修理など、多様な仕事があります。海外工場や取引先も多いため、TOTO本体の平均給与だけで全体を評価することはできません。

この記事では、TOTO株式会社の労働環境を中心に、国内外の製造子会社、施工・修理会社、委託業者、調達先まで実施主体を分けて調査します。そのうえで、生命・健康・生活を守るセーフティ、危険・単調・過重な仕事を技術で減らすイノベーション、災害・戦争・供給途絶への備えを示すプロテクションの3項目からシビックリワードを判定します。

調査日:2026年8月13日

目次

先に結論:シビックカンパニーランクはA(良い)

審査項目ランク主な判断理由
セーフティA(良い)TOTO単体の平均年間給与は781万円。国内グループの月平均時間外・休日労働15.8時間、有給休暇取得率91.8%、自己都合離職率2.2%。2025年度の休業災害度数率0.30は全国製造業平均1.33を下回り、死亡災害は従業員・委託業者とも5年連続0件。衛生設備、福祉機器、製品安全、人権確認も評価できる。一方、男女賃金差、製造・施工の危険、海外・取引先までの確認範囲には課題がある
イノベーションA(良い)2026年3月期の研究開発費は250億54百万円。節水、汚れ防止、自動洗浄、非接触操作、清掃負担の軽減、便の状態を測る機器、見守り技術、工場の画像検査や工程自動化へ投資している。ただし、自動化の利益を労働時間短縮や賃金へ分配する制度は確認できない
プロテクションB(普通)排泄と給水を支える商品、国内外の複数工場、修理網、災害時の案内と無償点検は社会基盤の維持へ役立つ。一方、平常時の商品が中心で、断水・停電時に機能が制限される機種も多い。2026年には石油化学原料の供給悪化により一部商品の受注制限が生じ、長期供給途絶への弱さも表れた
総合ランクA(良い)労働時間、休暇、安全衛生、衛生設備の社会的意義、研究開発、情報公開を総合すると、人間への貢献が問題点を明確に上回る。Sには、男女賃金差の縮小、取引先への現地監査拡大、製造自動化の利益還元、非常時にも使いやすい商品の拡充が必要

TOTOの大きな強みは、事業そのものが人間の尊厳と健康へ直結している点です。安全な排泄、手洗い、入浴、介護は、利益が出るかどうかにかかわらず社会に必要でしょう。

働く会社として見ても、公開指標は良好です。2025年度の国内グループでは、有給休暇を平均18.3日取得し、取得率は91.8%でした。男性の育児休業等取得率はTOTO単体で95.9%、国内グループで98.5%に達しています。

製造現場の安全についても、従業員だけでなく委託業者の休業災害度数率と死亡者数を開示しています。2025年度の度数率は従業員0.30、委託業者0.16で、どちらも全国製造業平均1.33を下回りました。ただし、従業員の度数率は前年の0.14から上昇しており、事故ゼロの目標には届いていません。

明確な課題もあります。TOTO単体の女性の平均賃金は、男性を100としたとき全労働者で61.7、正規雇用で63.6です。役職、勤続年数、職種などの構成差が含まれるため、同じ仕事に対する賃金差とは断定できません。それでも、差が大きい事実は昇進、配置、育児負担を含めて追跡する必要があります。

また、TOTOは2025年度に政治団体へ162万円を寄付しています。金額は利益や研究開発費と比べて小さいものの、「企業献金をしていない会社」と評価することはできません。寄付額を自社で公開している透明性は評価しつつ、資金の受け手と目的がどこまで説明されるかを見るべきでしょう。

審査対象となる会社

この記事の中心となる法人は、TOTO株式会社です。TOTOの名称が付く会社であっても、別法人であれば雇用条件、経営責任、安全実績は同一ではありません。

主体主な役割この記事での扱い
TOTO株式会社研究開発、商品企画、一部製造、営業、品質保証、管理、本社機能労働環境と総合評価の中心
TOTOサニテクノ株式会社衛生陶器の製造高温焼成、重量物、粉じん、製造安全へ反映
TOTOウォシュレットテクノ株式会社温水洗浄便座などの製造電子機器の組立、検査、自動化へ反映
TOTOバスクリエイト株式会社ユニットバスルームの製造樹脂、成形、組立、工場労働へ反映
TOTOハイリビング株式会社システムキッチン、洗面化粧台の製造木質材・樹脂材の加工、組立へ反映
TOTOアクアテクノ株式会社水栓、手すり、浴室換気暖房乾燥機などの製造金属加工、組立、福祉機器へ反映
TOTOプラテクノ株式会社樹脂・ゴム成形部品、便座、浴槽、カウンターなど部品供給、化学物質、成形作業へ反映
TOTOメンテナンス株式会社修理、点検、相談対応製品寿命、故障対応、訪問作業へ反映
TOTOエムテック株式会社商品販売、施工支援など工事現場と顧客宅での作業へ反映
TOTOファインセラミックス株式会社半導体製造装置向けセラミック部品新領域事業、研究、製造安全へ反映
海外製造・販売会社中国、米州、アジア、欧州などで製造・販売海外雇用、調達、供給継続へ反映。ただし日本の制度を当てはめない
施工会社・販売店設計、販売、取付け、改修TOTOが選定・教育・支援できる範囲で評価
原材料・部品・物流の取引先陶土、金属、樹脂、電子部品、梱包、輸送など調達方針、人権調査、是正要求の範囲で評価

TOTOグループは、商品開発から製造、販売、修理まで広い範囲へ関わっています。しかし、便器を設置する配管工事や建設工事のすべてをTOTO社員が行うわけではありません。住宅会社、工務店、設備工事会社、卸売会社など、多数の事業者が最終的な設置を担います。

したがって、TOTO単体の平均年収781万円を、国内の全工場、ショールームの契約社員、海外工場、施工会社の従業員へ適用することはできません。この記事では、確認できた範囲を超えて待遇を推測しない方針です。

TOTO株式会社の基本情報

項目内容
正式社名TOTO株式会社
英文名TOTO LTD.
創立1917年5月15日
証券コード5332
上場市場東京・名古屋・福岡証券取引所
本社福岡県北九州市小倉北区中島2-1-1
代表者代表取締役会長 兼 取締役会議長 清田徳明、代表取締役社長執行役員 田村信也
資本金355億7,900万円
連結売上高7,374億41百万円(2026年3月期)
連結従業員数31,837人(契約社員・派遣社員を含む、2026年3月)
主な事業衛生陶器、温水洗浄便座、浴室、水栓、キッチン、洗面化粧台、福祉機器、セラミック部品などの開発・製造・販売

1917年創立のTOTOは、衛生陶器から始まり、住宅と公共施設の水まわり全体へ事業を広げてきました。現在は住宅設備が中心ですが、半導体製造装置に使われるファインセラミックスも手掛けています。

企業概要にある連結従業員数31,837人は、契約社員と派遣社員を含む数字です。2026年3月期の有価証券報告書に記載される連結従業員数30,324人とは集計範囲が異なります。人数を比較するときは、どの雇用区分が含まれるかに注意が必要です。

財務状況

2026年3月期の売上高は7,374億41百万円、営業利益は537億59百万円でした。親会社株主に帰属する当期純利益は402億57百万円です。

財務項目2026年3月期
売上高7,374億41百万円
営業利益537億59百万円
経常利益606億89百万円
親会社株主に帰属する当期純利益402億57百万円
総資産8,274億83百万円
純資産5,339億14百万円
設備投資額506億98百万円
研究開発費250億54百万円

500億円を超える営業利益と、5,000億円を超える純資産があり、直ちに事業継続や賃金支払いが危ぶまれる状態ではありません。年間500億円規模の設備投資と250億円規模の研究開発を行える財務力もあります。

ただし、利益が大きいだけではホワイト企業とはいえません。高い利益が長時間労働、取引先への値下げ要求、安全費用の削減によって生まれていないかを別に見る必要があります。

海外では、中国の住宅市場低迷が事業へ影響しました。連結従業員数は2024年度の34,673人から2025年度の31,837人へ減少しています。日本の従業員数は17,819人から17,616人への減少にとどまるため、海外、とりわけ中国事業の変化が大きいと考えられます。

この減少だけで解雇の人数や理由を断定することはできません。しかし、海外市場の悪化が働く人へどのような形で及んだのかは、雇用の安定性を判断するうえで重要です。

株主構成と従業員持株会

2026年6月30日時点の発行済株式数は1億6,635万8,397株、株主数は58,579人です。信託銀行、保険会社、海外投資家などが主要株主となっています。

TOTO持株会は316万5,000株を保有し、持株比率は1.9%でした。従業員が毎月の積立によって会社の資本を持てる制度は、働く人が利益と議決権の一部を担う仕組みとして評価できます。

一方、1.9%だけで経営方針を決められるわけではありません。従業員が資本を持つ意義はあるものの、機関投資家と経営陣に対抗できるほどの権力が付与された状態ではないでしょう。

政治団体への寄付

TOTOは、公共政策への関与として、政治団体への寄付額を公表しています。2025年度は162万円でした。

年度政治団体への寄付額
2021年度250万円
2022年度270万円
2023年度280万円
2024年度120万円
2025年度162万円

寄付額を継続して公開していることは、何も示さない会社より透明です。ただし、株主、従業員、消費者が金額の妥当性を判断するには、寄付先、選定理由、政策上の目的も必要になります。

年間162万円は、2026年3月期の純利益402億57百万円や研究開発費250億54百万円と比べれば小額です。それでも、会社が生み出した資金を政治へ使うという原則上の問題は残ります。公開している事実と、寄付の是非は分けて評価しました。

TOTOでは何の仕事をしているのか

TOTOは、完成した便器や浴室を仕入れて販売するだけの会社ではありません。陶土の配合、成形、乾燥、焼成、電子機器の組立、水流の設計、商品試験、営業、設置支援、修理まで、多数の工程へ関わっています。

水まわり商品が利用者へ届くまで

工程主な担当実際に行うこと
利用者調査・商品企画TOTOの商品・企画部門家庭、公共施設、介護、医療の課題を調べ、必要な機能や価格を決める
研究・設計TOTOの研究開発部門水流、洗浄、汚れ、節水、電子制御、材料、人体への安全性を検証する
原材料・部品調達TOTOと取引先陶土、石こう、金属、樹脂、木質材、半導体、センサー、梱包材などを調達する
衛生陶器の製造TOTOサニテクノなど原料調合、成形、乾燥、施釉、高温焼成、検査、梱包を行う
電子機器の製造TOTOウォシュレットテクノなど温水・洗浄・便座・脱臭部品を組み立て、通電・水漏れ・性能を検査する
浴室・キッチン製造TOTOバスクリエイト、TOTOハイリビングなど樹脂・木質・金属部材を加工し、浴槽、壁、床、収納、台などを組み立てる
水栓・福祉機器製造TOTOアクアテクノなど水栓、手すり、換気・乾燥機器を加工・組立・検査する
営業・提案TOTO、販売会社、代理店住宅会社、設計者、工務店、施主へ商品と仕様を提案する
展示・相談TOTOのショールーム実物を使って機能、寸法、色、費用、工事条件を説明する
配送・施工物流会社、販売店、設備工事会社重量物を現場へ運び、給排水や電気設備に合わせて設置する
修理・部品供給TOTOメンテナンスなど故障診断、部品交換、漏水対応、長期利用の支援を行う
回収・廃棄施工会社、廃棄物処理会社など交換した陶器、金属、樹脂、電子部品を分別し、再資源化または処分する

商品を購入する人からは一つのブランドに見えても、製造会社、販売会社、施工会社、修理会社は別々です。品質上の責任をTOTOが負う場面と、現場工事を担う会社が責任を負う場面を区別する必要があります。

衛生陶器の製造

便器や洗面器は、陶土を型へ流し込み、乾燥させ、表面へ釉薬を施し、高温の窯で焼いて作ります。焼成によって収縮するため、同じ形を安定して作るには材料、湿度、温度、作業技能を細かく管理しなければなりません。

工場では、重量物、粉じん、高温設備、窯の熱、運搬車両、機械の挟まれなどが主な危険になります。陶器が欠ければ鋭い破片も生じるため、保護具、清掃、設備防護、運搬方法が重要です。

TOTOサニテクノは、中津、小倉、滋賀、愛知などで衛生陶器を製造しています。複数拠点を持つことは供給継続へ役立ちますが、同じ製品を別工場ですぐ代替できるとは限りません。

2026年1月、小倉工場では衛生陶器の焼成に使う都市ガスへ体積比20%の水素を混ぜる実証を始めました。年間約140トンの二酸化炭素削減を見込み、同工場の製造工程由来排出の約7%に当たるとしています。

同じ工場では、古いれんが窯を繊維材の窯へ更新し、1971年の窯と比べて二酸化炭素排出を約40%減らしたと説明しています。高温工程そのものをなくしたわけではありませんが、設備更新による省エネルギーは労働環境と事業継続の両面へ影響します。

温水洗浄便座と電子機器

温水洗浄便座には、ヒーター、ポンプ、弁、基板、センサー、ノズル、便座、脱臭部品などが組み込まれています。水と電気を同時に扱うため、漏電、発熱、漏水、衛生、誤動作への対策が不可欠です。

製造現場では、部品供給、ねじ締め、配線、組立、外観検査、通水検査、電気試験、梱包などを行います。手作業の反復を設備へ移せば負担を減らせますが、不具合を発見する判断と設備保全は人が担います。

2026年度には、国内向け住宅用の温水洗浄便座を、湯を貯め続ける方式から、使用時に加熱する方式へ全面的に移す方針を示しました。利用時の電力を減らし、商品の使用段階における二酸化炭素排出削減へつなげる取り組みです。

浴室・キッチン・洗面化粧台

ユニットバスは、浴槽、床、壁、天井、扉、水栓、換気機器などを組み合わせた商品です。工場では大型部材を成形・加工し、現場で組み立てやすい単位へ分けて出荷します。

システムキッチンと洗面化粧台には、木質材、樹脂、金属、人工大理石、接着剤、電気機器が使われます。切断、穴あけ、研磨、接着、塗装、組立には、粉じん、騒音、化学物質、重量物への対策が必要でしょう。

浴室の床へ親水性の表面処理を施し、皮脂汚れを落としやすくする技術も開発しています。清掃回数や力仕事を減らせれば、一般家庭だけでなく、ホテル、病院、介護施設の清掃従事者にも利益があります。

営業とショールーム

営業職は、住宅会社、設計事務所、工務店、販売店などへ商品を提案し、価格、納期、仕様、施工条件を調整します。公共施設や大型物件では、建築計画の初期から関わる場合もあります。

ショールームアドバイザーは、来場者の希望を聞き、実物を示しながら商品を案内します。図面や寸法を確認し、見積もりや提案書を作るため、接客だけでなく住宅設備の知識が必要です。

利用者の希望、予算、建物条件が一致しない場面では、感情労働も生じます。土日祝日が来場の多い時期となるため、オフィス職とは休日の取り方が異なる点にも注意が必要です。

施工と修理

便器、浴室、キッチンの設置には、給排水、電気、換気、建築の知識が要ります。既存住宅の改修では、古い配管や床下の状態が現場ごとに違い、狭い場所での姿勢、重量物運搬、粉じん、漏水事故が負担となります。

TOTO自身がすべての施工を行うわけではありません。販売店、住宅会社、工務店、専門工事会社が担うため、最終的な作業環境と賃金は施工会社によって変わります。

修理は、利用者宅や施設へ訪問し、故障の原因を調べて部品を交換する仕事です。漏水やトイレ故障は生活へ直結するため、迅速さが求められます。訪問先での衛生、移動、時間指定、単独作業にも負担があります。

長期間部品を供給し、修理によって買い替えを減らすことは、利用者の費用、資源消費、廃棄物を抑えます。商品販売だけでなく、保守部門を持つことは人間への貢献として重要です。

ファインセラミックス事業

TOTOファインセラミックスは、半導体製造装置に使われる静電チャックなどを手掛けています。住宅設備とは異なる事業ですが、セラミック材料、焼成、表面加工の技術を活用したものです。

半導体は医療、通信、交通、製造設備などを支えます。その製造装置へ部品を供給する意義はありますが、最終用途は広く、TOTOの部品だけを生命保護や防衛への直接的な貢献とみなすことはできません。

需要拡大に対応し、福岡県豊前市では新たな焼成棟の建設を進め、2027年1月の稼働を予定しています。高温工程を増やす事業であるため、生産能力だけでなくエネルギー、安全、雇用の質も追う必要があります。

主な職場と働き方

TOTOグループには、研究所、衛生陶器工場、電子機器工場、浴室・キッチン工場、営業所、ショールーム、修理拠点、海外法人があります。職場によって身体負担と勤務時間は大きく異なります。

職種主な仕事特有の負担・責任
衛生陶器製造調合、成形、乾燥、施釉、焼成、検査、梱包高温、粉じん、重量物、割れ物、交替勤務
電子機器製造部品供給、組立、通水・電気検査、梱包反復作業、姿勢、細かな品質判断、機械との協働
浴室・キッチン製造成形、加工、接着、組立、検査大型部材、騒音、化学物質、切削粉
生産技術・設備保全工程設計、自動化、点検、修理、改善電気・機械の危険、故障時対応、停止時間への責任
研究開発水流、材料、電子制御、人体、製造技術の研究長期成果、専門性、試験と事業化の両立
品質保証商品試験、監査、不具合解析、出荷判断判断の正確さ、事故時対応、販売部門との緊張
営業住宅会社・販売店との商談、納期・価格調整目標、移動、顧客都合、現場との調整
ショールーム接客、仕様提案、見積もり、図面確認土日勤務、立ち仕事、感情労働、商品知識
施工支援現場確認、組立指導、品質確認重量物、高所・狭所、工期、安全責任
修理訪問、診断、部品交換、漏水対応移動、時間指定、衛生、単独判断
情報・管理人事、財務、法務、調達、情報システム多社・海外対応、締切、障害・不正への責任

「TOTOで働く」という言葉だけでは、実際の仕事は想像できません。本社の企画職が使える在宅勤務と、窯や組立設備の前で働く製造職を同じ基準で語らないことが大切です。

海外では、米国、中国、ベトナム、タイ、インド、インドネシア、台湾、欧州などに製造・販売拠点があります。国によって法定賃金、労働時間、労働組合、安全基準、社会保険が違うため、日本の福利厚生を海外にも適用できません。

労働環境の評価:A(良い)

TOTOの労働環境は、A(良い)と評価します。平均給与、休暇取得、時間外労働、離職率、安全衛生、育児支援、労働組合を合わせると、国内大手製造業の中でも良好な部類です。

とりわけ、有給休暇取得率91.8%、自己都合離職率2.2%、男性育児休業等取得率95.9%、休業災害度数率0.30という実績は、制度が存在するだけではなく、実際に使われていることを示します。

ただし、数字の対象はTOTO単体または国内グループが中心です。海外工場、施工会社、物流会社、二次以降の取引先まで同じ待遇だと判断することはできません。

賃金:A(良い)

2026年3月期のTOTO単体の平均年間給与は781万円でした。平均年齢45.2歳、平均勤続年数18.9年です。

指標TOTO単体・2026年3月期
従業員数7,758人
平均年齢45.2歳
平均勤続年数18.9年
平均年間給与781万円

平均年間給与には賞与や時間外手当などが含まれます。年齢と勤続年数が高く、管理職や専門職も含む平均であるため、入社時から781万円を受け取れるという意味ではありません。

また、この数字はTOTO株式会社単体の従業員が対象です。製造子会社、修理会社、ショールームの契約社員、派遣社員、施工会社、海外法人へそのまま当てはめることはできません。

日本の大手製造業としては高い給与水準で、勤続年数18.9年からも長期雇用の傾向が読み取れます。一方、職種別・雇用形態別・国内子会社別の給与は、単体平均ほど詳しく公開されていません。

TOTO単体の男女賃金比率は、2025年度に全労働者61.7%、正規雇用63.6%、パート・有期雇用76.0%でした。女性の平均が男性より大きく低いことは明白です。

会社は、役職、勤続、職務などの構成差を含む数値として開示しています。同一職務で異なる賃金を払っている証拠ではありませんが、女性が高賃金の役職・職種へ進みにくい可能性も含むため、賃金をSとは評価しません

福利厚生:A(良い)

国内グループには、育児、介護、治療、転居、学び直しを支える制度があります。法定制度へ最低限合わせるだけでなく、利用可能な期間や対象を広げたものも確認できました。

主な制度は次のとおりです。

  • 子どもが満2歳になるまでの育児休業
  • 子どもが小学校6年生を終えるまで利用できる短時間勤務など
  • 育児・介護・治療を理由とする在宅勤務とコア時間のないフレックス勤務
  • 保育、教育、介護費用への補助
  • 配偶者の海外転勤へ同行するための休職
  • ライフイベントに応じた勤務地限定制度
  • 介護対象者1人につき、職場によって通算最大365日の介護休業
  • 時間単位・半日単位の有給休暇
  • ボランティアのための年5日の有給休暇
  • 進学、留学、資格取得のため最長3年の休職
  • 社員持株制度、住宅・通勤支援、保養施設、選択型福利厚生

2025年6月には、性別を問わず使える有給の育児目的特別休暇を導入しました。勤続1年未満で通常の育児休業対象外となる社員も利用できます。

制度の幅は広いものの、工場の交替勤務、ショールームの土日勤務、少人数の修理拠点では、代替人員を確保できるかが実際の使いやすさを左右します。利用人数と取得率が高い点は評価できても、すべての職場で同じように使えるとは限りません。

労働時間・休日:A(良い)

2025年度の国内グループにおける労働時間と休暇実績は、次のとおりです。主に正社員と契約社員を対象とする指標で、派遣社員の勤務実績は雇用主側で管理される場合があります。

指標2025年度
年間平均所定労働時間1,898.3時間
年間平均実労働時間1,905.5時間
月平均時間外・休日労働15.8時間
長時間労働者数13人
有給休暇平均取得日数18.3日
有給休暇取得率91.8%
総離職率2.8%
自己都合離職率2.2%

月平均15.8時間は、長時間労働が常態化している数字ではありません。有給休暇を平均18.3日取得し、9割を超える取得率を維持していることは高く評価できます。

会社はICカードやパソコン利用記録と自己申告を照合し、労働時間の差がある場合に確認する仕組みを設けています。特別条項を使う場合でも、時間外・休日労働を月80時間以内とする上限を設定しました。

長時間労働者が13人いるため、全員が常に短時間で働いているわけではありません。平均値は、繁忙部署、海外対応、開発の締切、設備故障、工事対応などの偏りを隠す可能性があります。

製造職は交替勤務、ショールームは土日を含むシフト、営業は顧客都合、修理は緊急性の高い訪問があり得ます。応募や配属を考える場合は、会社平均に加え、職種と勤務地の勤務表を確認すべきでしょう。

安全性・健康:A(良い)

TOTOは、製造・研究拠点を中心に、従業員と委託業者の休業災害度数率を公開しています。食堂、清掃、警備を除く委託業者3,278人も集計対象に含めている点は重要です。

安全指標2024年度2025年度2025年度の参考値
TOTOグループ従業員の休業災害度数率0.140.30全国製造業平均1.33
委託業者の休業災害度数率0.150.16同上
従業員の死亡者数0人0人2021~2025年度すべて0人
委託業者の死亡者数0人0人2021~2025年度すべて0人
職業性疾病度数率0.000.005年連続0.00

全国製造業平均を大きく下回り、死亡災害が5年間0件であることから、製造安全は良好です。化学物質については、安全データシート、作業環境測定、特殊健康診断、保護具の選定などを行っています。

2025年度には国内14拠点、海外5拠点で安全監査・確認を実施し、指摘があった拠点はすべて是正したと公表しました。管理者や新任者など527人へ安全教育も行っています。

ただし、従業員の度数率は0.14から0.30へ上がりました。全国平均より低いというだけで事故が許容されるわけではなく、前年から悪化した原因と再発防止を追う必要があります。

健康面では、2025年度の健康診断受診率と精密検査受診率がともに100%です。ストレス確認の受検率は95.1%、高ストレス者の割合は15.4%でした。

高ストレス者がゼロではないため、研修や相談窓口だけでなく、業務量、上司との関係、配置、勤務時間の改善が欠かせません。健康経営の外部認定を受けていても、認定そのものを健康の保証として扱わない方針です。

雇用の安定性:B(普通)

TOTO単体の平均勤続年数は18.9年、国内の自己都合離職率は2.2%です。財務基盤も強く、国内の正社員に限れば安定性は高いと考えられます。

国内の正社員数は2024年度14,057人から2025年度14,163人へ増加しました。一方、国内の契約社員は2,093人から1,953人、派遣社員は1,669人から1,503人へ減少しています。

グループ全体では、契約・派遣を含む人数が34,673人から31,837人へ2,836人減りました。日本の減少は203人であるため、海外側の変化が大半です。

中国住宅市場の低迷と事業再編が背景にありますが、公開人数だけで退職、採用抑制、事業売却、雇用区分変更を分けることはできません。世界全体で長期雇用が守られているとまでは判断できないため、雇用の安定性はBとしました。

AI、画像検査、ロボット、無人搬送を導入する際、TOTOは品質と生産性の効果を詳しく説明しています。しかし、省人化後の従業員をどの職務へ移し、労働時間や賃金へどう還元したかという情報は限定的です。

多様性と公平性:B(普通)

2025年度の女性管理職比率は、グループ全体24.1%、日本21.3%、海外31.7%でした。日本企業としては一定の進展があり、女性が管理職へ進んでいない会社とはいえません。

日本の障害者雇用率は2.82%です。育児支援、勤務地限定、短時間勤務、治療との両立制度も用意されています。

他方、TOTO単体の男女賃金比率は全労働者61.7%、正規雇用63.6%にとどまります。女性管理職比率が伸びても、平均給与の差はなお大きい状態です。

平均勤続年数、役職、職種、雇用区分の構成が違えば、平均賃金にも差が出ます。それでも、差を縮めるには、同一職務の賃金確認だけでなく、採用、配属、転勤条件、昇進、育児負担の偏りまで見直す必要があるでしょう。

労働組合と対話:A(良い)

2025年度に労働組合または従業員代表組織へ属する従業員の比率は85.9%でした。TOTOと一部グループ会社ではユニオンショップ制度が採用されています。

経営と労働組合の代表者が参加する中央労使協議会を年4回開き、経営課題、賃金、働き方、安全、福利厚生などを話し合う仕組みがあります。組合が存在するだけでなく、定期協議の場がある点は評価できます。

ただし、組織率は2021年度の87.8%から85.9%へ低下しました。海外拠点や委託会社で同じ交渉力があるとは限らず、派遣社員と施工会社従業員の声をTOTO経営へ届かせる経路も別途必要です。

口コミ・SNSの評判:B(普通)

口コミは個人の所属、職種、上司、時期によって変わるため、会社全体の事実とは扱いません。ただし、公式平均では見えない職場差を探す手掛かりになります。

「エンゲージ 会社の評判」では、TOTO株式会社の総合評価が3.6、掲載口コミが1,500件を超えていました。2025年のショールームアドバイザーによる投稿では、正社員で月残業10時間・年収470万円、契約社員で月残業10時間・年収350万円という例があります。

Indeedでは、落ち着いた社風や人間関係を評価する投稿がある一方、ショールームの見積もり作成による残業、建築知識を覚える負担、店舗による差を指摘する声も見られます。

これらは投稿者本人の申告であり、数値の正確さを会社が保証したものではありません。公式の有給取得率や残業時間と大きく矛盾するとはいえませんが、ショールームでは接客後の事務作業が残りやすい可能性があります。

口コミだけでランクを下げるのではなく、公式数値と共通する傾向を重視しました。会社平均は良好でも、職場ごとの教育方法、残業、評価の納得感には差があると見るのが妥当です。

事業による人間への貢献:A(良い)

TOTOの事業による人間への貢献は、A(良い)と評価します。排泄、手洗い、入浴、調理、介護といった日常生活を支え、衛生状態と尊厳を改善する商品が中心だからです。

水まわりは、便利さがなくても我慢できる娯楽商品とは性質が異なります。安全なトイレと手洗い設備がなければ、感染症、介護負担、外出の制限、学校や仕事への参加に影響が及びます。

一方、商品を作るためには多くの資源とエネルギーを使い、施工と廃棄にも負担が生じます。電子機能が増えるほど、停電時の制約、故障、部品供給も問題となるため、事業の意義だけでSとはしませんでした。

衛生と尊厳を支える

排泄物を安全に流し、臭気と汚染を抑え、手洗いへつなげる設備は公衆衛生の基礎です。家庭内だけでなく、学校、病院、駅、職場、商業施設へ普及することで、人が安心して外出し、学び、働く条件を作ります。

温水洗浄便座は、紙だけでは清潔を保ちにくい人、手指の動きに制約がある人、皮膚への刺激を減らしたい人に利益があります。自動開閉、自動洗浄、非接触水栓は、手で触れる回数を減らし、感染対策と動作支援の両方へ役立ちます。

ただし、温水洗浄便座がすべての人に医学的利益をもたらすと断定することはできません。使い過ぎや不適切な使用による皮膚への影響も考えられるため、正しい使用案内が必要です。

高齢者・障害者・介助者の負担を減らす

手すり、昇降機能、座りやすい便器、滑りにくい床、またぎやすい浴槽、車いす利用を想定した設備は、自立した生活を支えます。本人が一人でできる動作が増えれば、介助者の持ち上げや中腰作業も減らせるでしょう。

公共トイレの設計では、車いす、乳幼児連れ、オストメイト、視覚障害など、多様な利用者を想定する必要があります。設備を一か所へ詰め込むだけでは待ち時間が増えるため、施設全体の配置まで考えることが重要です。

TOTOは、福祉機器と公共向け商品を事業として扱い、建築関係者へ設計情報を提供しています。一般向け商品の付加機能にとどまらず、利用者の参加機会を広げる点を評価しました。

清掃労働と家事負担を減らす

汚れが付きにくい陶器表面、便器内の水流、使用後の除菌水、自動洗浄、掃除しやすい継ぎ目、汚れを落としやすい浴室床は、日常の清掃時間と身体負担を減らします。

この利益は家庭だけに及ぶものではありません。ホテル、病院、駅、商業施設、介護施設では、多数の便器と浴室を清掃する従事者がいます。こすり洗い、薬剤、前かがみの姿勢を減らせれば、職業上の負担軽減にもつながります。

ただし、自動洗浄機能があっても清掃作業が不要になるわけではありません。見えにくい部分の汚れ、機器の分解、床や壁の清掃は残ります。「お手入れ不要」と誤解させない説明が必要でしょう。

水とエネルギーの使用を減らす

便器、水栓、シャワーは、商品の使用期間を通じて大量の水とエネルギーを使います。一回当たりの洗浄水量を減らす技術は、家庭の料金だけでなく、浄水、送水、下水処理の負担も抑えます。

温水洗浄便座を使用時加熱方式へ移す施策も、待機中の保温電力を減らします。TOTOは、この変更などによる商品使用時の二酸化炭素排出削減効果を算定しています。

節水し過ぎれば、配管条件によっては流れにくさが生じる可能性があります。商品の性能試験だけでなく、建物の配管、勾配、使用頻度に合う設計と施工が欠かせません。

健康状態の把握と見守り

TOTOは、便の形状や量などを測るセンサーとアプリを組み合わせ、日々の健康状態を把握する「ウェルネストイレ」の開発を進めています。排泄は健康変化が現れやすく、本人が意識せず継続的に測れる利点があります。

2026年には、富士通と共同で、公共トイレ個室内の転倒や長時間滞在をミリ波センサーで検知する見守りサービスを発表しました。カメラを使わずに異常を把握する方法で、プライバシーと救助の両立を目指しています。

健康情報は非常に機微性が高いため、誰が閲覧できるか、保存期間、誤検知、本人同意、外部提供を厳格に管理しなければなりません。便利な計測機能が、監視や差別へ使われない設計も評価対象です。

修理によって生活と商品寿命を支える

トイレ、水栓、浴室が故障すると、生活への影響はすぐ表れます。全国の修理体制、部品供給、問い合わせ窓口を持つことは、商品販売後の人間への貢献です。

部品交換で使い続けられれば、利用者の買い替え費用と工事負担を減らせます。便器のように建物へ固定する商品では、長期修理性が耐久性と同じくらい重要です。

一方、電子部品は機械部品より廃番や故障の影響を受けやすく、古い機種の修理がいつまで可能かは商品ごとに異なります。長寿命の陶器と短寿命になり得る電子機器を組み合わせる場合、交換単位を小さく保つ設計が望まれます。

半導体産業への間接的な貢献

ファインセラミックスは、半導体製造装置の精度と安定稼働へ関わります。半導体は医療機器、通信、交通、産業機械、省エネルギー設備など、幅広い社会基盤へ使われています。

しかし、最終用途には民生、娯楽、監視、兵器など多様な分野があり得ます。TOTOが製造装置部品を供給していることだけで、すべてを人間への直接的な貢献とはみなしません。

人間へ与えている損害や問題

衛生設備の社会的意義が大きくても、製造、使用、政治、供給網に問題がないわけではありません。ここでは、利益と相殺せず、確認できた負担を独立して示します。

製造現場の危険

衛生陶器は重く、割れると鋭い破片になります。原料粉じん、高温の窯、釉薬、運搬設備、成形機械には、吸入、熱、挟まれ、切創、腰痛などの危険があります。

浴室やキッチンの製造では、樹脂、接着剤、切削粉、騒音、大型部材を扱います。電子機器工場は重作業が比較的少なくても、反復動作、細かな目視、同じ姿勢による負担が生じます。

2025年度の休業災害度数率は全国平均より低い一方、従業員は前年の0.14から0.30へ上昇しました。事故の種類や負傷の程度をより詳しく公開すれば、商品に関わる人も改善状況を判断しやすくなります。

施工会社と委託先の負担

便器、浴室、キッチンは、工場で完成して終わりではありません。重量物を現場へ運び、狭い場所で古い設備を外し、給排水・電気・換気の工事を行います。

施工会社はTOTOとは別の雇用主であり、賃金、休日、安全教育は会社ごとに違います。TOTOが施工説明、研修、認定、品質確認を行えても、すべての現場を直接監督できるわけではありません。

委託業者の度数率を開示しているのは強みですが、その対象は主に製造・研究拠点で働く委託業者です。全国の販売店や住宅工事現場を網羅する数字ではない点に注意が必要でしょう。

男女賃金差

女性管理職比率が上昇している一方、女性の平均賃金は男性の61.7%です。正規雇用に限っても63.6%で、大きな差が残っています。

ショールームや事務など女性比率の高い職種が、技術、営業、管理職より低い賃金帯に配置されている可能性があります。職務の価値そのものを低く見積もっていないか、転勤要件が昇進を妨げていないかも検証すべきです。

会社は比率を開示していますが、役職・職種・勤続年数を調整した差や、昇進候補者の男女比までは同じ表から分かりません。差の原因と改善計画をより具体的に示す余地があります。

原材料とエネルギーの負担

陶器には粘土や鉱物を使い、焼成には高温の熱が必要です。金属、水、樹脂、木質材、電子部品、梱包材も大量に使います。

TOTOグループの2025年度の温室効果ガス排出量は、Scope1・2・3を合わせて約1,530万トンと公表されています。商品の使用段階における水とエネルギーの影響が大きく、製造だけを省エネルギー化すれば終わる問題ではありません。

衛生陶器は長く使えますが、陶器、樹脂、金属、電子部品が組み合わさる商品は分解と再資源化が難しくなる場合があります。修理性、交換部品、回収、材料表示を通じて廃棄を減らす必要があります。

電力・給水への依存

一般的な便器は、機種と配管条件によっては停電時にも水を流せます。断水時はバケツの水を使う方法が案内されていますが、給水と下水が長期停止すれば通常利用は困難です。

温水、洗浄、乾燥、自動開閉、自動洗浄などの電子機能は、停電すると利用できない場合があります。便利な機能が増えるほど、手動操作、非常用電源、故障時の代替方法を分かりやすく残すことが重要です。

商品事故と長期回収

TOTOは、2000年から2004年に製造した石油直圧式給湯機の一部について、発煙・発火のおそれから無償点検・修理を続けています。2024年にも対象製品が関係する事故が消費者庁から公表されました。

製造から長期間が経過しても回収を続けることは責任ある対応です。一方、古い住宅設備は所有者変更や空き家化で追跡が難しく、対象品が残る限り事故の可能性は消えません。

水栓の漏水など、火災以外の重要なお知らせも出しています。商品数と使用期間が長い企業では、事故が起きたかだけでなく、対象台数、改修率、周知方法を継続して示す必要があります。

供給網における人権

2025年度の取引先総数は1,241社、重要取引先は540社です。TOTOは人権リスク評価の対象434社へ質問調査を行い、改善が必要な5拠点ですべて改善計画を実行したと公表しています。

優先度の高い3社には第三者による現地監査を実施しました。強制労働と児童労働は確認されませんでしたが、労働時間管理と社会保険料の支払いに問題があり、是正完了を確認したとしています。

問題を見つけて改善したことは評価できます。しかし、取引先1,241社に対し現地監査3社は限られています。二次以降の取引先、鉱物、電子部品、海外の派遣労働まで確認範囲を広げる余地があります。

政治団体への寄付

2025年度の政治団体への寄付は162万円でした。会社が公開しているため隠れた支出ではありませんが、商品の購入者や従業員が賛同しない政治活動へ、企業資金が使われる可能性があります。

金額の小ささだけで問題を消すことはできません。受け手、目的、意思決定、期待する政策を示し、株主と従業員が判断できる状態が望まれます。

海外市場と供給途絶

中国住宅市場の悪化は、売上だけでなく海外雇用へ影響しました。グループ人数が一年で2,836人減った事実からも、市場変動が働く人へ及ぼす影響を軽視できません。

2026年4月には、中東情勢と海上輸送の制約によって原油・ナフサの供給環境が悪化し、ユニットバスなど一部商品の受注を制限しました。その後、段階的に受注を再開しましたが、樹脂原料の地政学上の弱さが実際に表れた事例です。

問題発生後の対応:A(良い)

TOTOの問題発生後の対応は、A(良い)と評価します。製品の重要なお知らせ、無償点検・修理、安全監査の是正、人権監査の改善計画、災害時の案内を公開しているためです。

製品安全の仕組み

商品開発では、設計審査、危険の洗い出し、耐久試験、使用条件の検証を行っています。製造工程では、二次元コードによる部品照合、画像検査、重量測定などを使い、人の経験だけに依存しない品質確認を進めています。

製造開始直後は、初期流動管理によって不具合を重点的に確認します。量産後も、市場から届いた故障や事故情報を設計・製造へ戻す仕組みを設けています。

ただし、品質管理の仕組みがあることと、事故が起きないことは同じではありません。古い給湯機の対象品を減らし、改修率を高める継続的な働きかけが必要です。

労働災害への対応

業務上災害が発生した場合、報告経路と期限を定め、原因と対策を各事業場へ共有しています。災害へ至らなかった事象も含めて調べ、類似事故を防ぐ方針です。

安全監査で指摘された拠点は、2025年度中にすべて是正したと公表されました。結果を数値で出す姿勢は評価できますが、指摘内容と再発の有無まで見えると、外部からの検証性はさらに高まります。

取引先の人権問題への対応

人権調査で改善が必要となった5拠点は、緩和計画をすべて実行しました。第三者監査で見つかった労働時間と社会保険料の問題についても、改善完了を確認しています。

2025年には、企業と人権に関する苦情処理機関JaCERへ参加しました。取引先の二次以降で働く人や地域住民も相談できる外部窓口を設けた点は前進です。

2025年度の受付件数は0件でした。0件は問題がない証明とは限らず、制度を知らない、利用を恐れる、言語が合わない可能性もあるため、周知と利用者保護を続ける必要があります。

災害と供給制約への対応

災害救助法が適用された地域では、災害で被害を受けたTOTO製品の無料点検を案内する場合があります。停電・断水・凍結時の使用方法も公式サポートで確認できます。

2026年の石油化学原料不足では、受注制限と再開状況を重要なお知らせとして公表しました。供給できない事実を隠さず伝えることは必要ですが、利用者が代替商品や工期を判断できる情報も求められます。

セーフティ:A(良い)

セーフティは、A(良い)と評価します。

TOTOの主力商品は、衛生、手洗い、入浴、介護、公共施設の利用を支えます。生活の安全と尊厳へ直接貢献する事業であり、製品安全と修理体制も用意されています。

働く人についても、給与、休暇、時間外労働、離職率、育児支援、労働組合、安全衛生の公開実績は良好です。従業員だけでなく、製造拠点の委託業者まで度数率を示している点を高く評価しました。

一方、男女賃金差は大きく、施工現場と海外取引先の情報は国内本体ほど詳しくありません。2025年度の従業員度数率が前年より上昇したこと、古い給湯機の改修が続いていることも踏まえ、SではなくAとします。

イノベーション:A(良い)

イノベーションは、A(良い)と評価します。

2026年3月期の研究開発費は250億54百万円でした。汚れにくい表面、水流による洗浄、除菌水、非接触操作、節水、使用時加熱、見守り、排泄情報の計測など、人の作業と生活上の負担を減らす技術を継続して開発しています。

工場では、画像検査、重量測定、部品照合、工程の危険分析、ロボットなどを使い、品質のばらつきと人の反復作業を減らしています。米国の新工場では、便器とタンクをロボットが組み合わせる工程も導入しました。

ただし、自動化によって削減した工数を、休暇、短時間勤務、賃上げ、研究職への移行へどう使ったかは明確ではありません。人員削減だけで終わらず、危険作業から改善・研究へ仕事を変える仕組みが確認できれば、さらに高く評価できます。

プロテクション:B(普通)

プロテクションは、B(普通)と評価します。

トイレと給排水は災害時にも必要な社会基盤です。国内外の複数工場、修理網、被災商品の無償点検、停電・断水時の使用案内、重要取引先の把握は、生活の継続へ役立ちます。

一方、TOTOの中心は平常時の住宅・施設向け商品です。防災用トイレ、長期断水用設備、独立電源、浄水・汚水処理を主力にする会社ではありません。

電子機能は停電に弱く、水道と下水が止まれば通常の便器も長期間は使えません。2026年の受注制限は、樹脂原料と国際輸送への依存も示しました。

したがって、災害時に役立つ実績はありますが、戦争や長期供給途絶を明確な目的として設計した事業とは評価できません。非常時でも使える手動機能、代替材料、国内調達、現場向け応急設備を強化すればAへ近づきます。

TOTO株式会社のシビックカンパニーランク:A(良い)

TOTO株式会社の総合ランクは、A(良い)です。

評価項目ランク
労働環境A(良い)
事業による人間への貢献A(良い)
問題発生後の対応A(良い)
セーフティA(良い)
イノベーションA(良い)
プロテクションB(普通)
総合A(良い)

TOTOは、利益を上げているだけの企業ではありません。排泄、手洗い、入浴、介護という、人間が生活するうえで欠かせない領域へ製品と保守を提供しています。

労働環境についても、有給休暇取得率91.8%、月平均時間外・休日労働15.8時間、自己都合離職率2.2%、死亡災害5年連続0件という結果があります。研究開発へ年間250億円を投じ、清掃、節水、見守り、工場検査の技術を進めている点も評価できます。

その一方で、女性の平均賃金が男性の61.7%にとどまること、海外を中心にグループ人数が大きく減ったこと、取引先への現地監査が3社に限られること、政治団体へ寄付していることは見逃せません。水と電力、石油化学原料へ依存する商品は、長期の災害や戦争に対して十分に自立しているともいえないでしょう。

Sへ進むために必要なのは、理念の追加ではありません。男女賃金差の原因と改善結果を職種別に示すこと、施工・海外・二次以降の取引先まで安全と人権の確認を広げること、自動化で得た利益を働く人の時間と権力へ還元すること、断水・停電・供給途絶でも使える衛生設備を増やすことです。

現時点では、問題点を含めても、人間への利益が明確に上回っています。よって、TOTO株式会社のシビックカンパニーランクをA(良い)と判定します。

主な参照情報

※ランクは、2026年8月13日までに確認できた公開情報をもとにした当サイト独自の判定です。行政処分、認証、投資格付け、採用合否を示すものではありません。今後の事故、制度変更、追加開示によって評価は変わる可能性があります。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

目次