私たちは、企業の商品を購入したり、サービスを利用したりすることで、そこで働く人たちの未来を変えることができます。
働く人に十分な賃金を払い、休暇を確保し、安全な職場をつくり、人の負担を減らす企業の商品やサービスが選ばれれば、そうした企業により多くの売上が集まります。その結果、働く人を大切にする経営を続けやすくなります。
反対に、低賃金や長時間労働、安全上の問題を改善しない企業の商品やサービスが売れ続ければ、そうした働かせ方のままでも事業を続けることができます。
だからこの企業審査では、「私たちがお金を使うなら、どの企業を選ぶことが、そこで働く人にとってより良い社会につながるのか」という視点から企業を評価します。
今回審査する株式会社ミツウロコグループホールディングスは、総合84点、シビックランクAです。
株式会社ミツウロコグループホールディングスの特に強い点は、SmartOWLでLPガスの検針・配送負担を実際に減らし、約90日分のLPG備蓄と24時間365日の緊急出動体制で災害時の供給継続力も高めていることです。そのため、この企業の商品を購入したりサービスを利用したりすれば、検針・配送の負担が減り、災害時にも生活に必要なエネルギーが届きやすい社会につながる可能性が高まります。
一方で、改善点として全労働者の男女賃金比率が77.2%で、持株会社単体の平均残業時間や有給休暇取得率の公開情報がない点が残ります。
この記事では、株式会社ミツウロコグループホールディングスの強みと課題をさらに詳しく企業審査していきます。
株式会社ミツウロコグループホールディングスの企業審査結果
ミツウロコグループホールディングスは、平均給与、女性管理職比率、育児支援、労働安全、LPガスの備蓄、24時間保安、SmartOWLによる省力化、複数拠点のBCP、サイバー教育まで幅広い取り組みを確認できる企業です。
特にInnovationとProtectionが強い一方、男女賃金差、持株会社単体の労働時間開示、SmartOWLによって削減した時間を従業員へどこまで返したのか、作業災害をさらに減らせるかが今後の課題です。
| 評価軸 | 得点 | 主な評価 |
|---|---|---|
| Safety | 39/50 | 平均年収1,037万5,000円、女性管理職47.4%、男女とも育休取得率100%、死亡災害0・重大事故0を評価。男女賃金差77.2%、単体労働時間の公開不足、作業災害11件が課題 |
| Innovation | 23/25 | SmartOWLで配送回数6.6回→4.6回、実証で配送業務時間約30%、走行距離約20%削減。省力化成果を高く評価する一方、労働時間・休日・賃金への還元結果は不足 |
| Protection | 22/25 | LPG約90日分の備蓄、24時間365日の緊急出動、複数調達、2拠点BCP、サイバー教育を評価。安否確認訓練の実施回数や一部復旧情報に改善余地 |
| 総合 | 84/100 | シビックランクA |
主な強み
・2026年3月期の単体平均年間給与1,037万5,000円
・提出会社単体の女性管理職比率47.4%
・男性・女性とも育児休業取得率100%
・2024年度の死亡災害0人、重大事故0件、交通事故0件
・SmartOWLでLPガス配送先1軒あたり平均配送回数を年間6.6回から4.6回へ削減
・SmartOWLの実証で配送業務時間約30%、走行距離約20%削減
・LPガスで元売・国家備蓄を含め約90日分を確保
・消費者宅の軒先在庫として約60日分を確保
・24時間365日の緊急出動体制
・さいたま・長野の事務センター2拠点BCP
・サイバーセキュリティのeラーニングと抜き打ち標的型メール訓練
・再生可能エネルギーや系統用蓄電池への投資
主な課題
・全労働者の男女賃金比率77.2%
・パート・有期労働者の男女賃金比率38.9%
・持株会社単体の平均残業時間、有給休暇取得率、年間総労働時間の公開情報が不足
・グループの2024年度月平均時間外労働15.5時間
・グループの2024年度年間平均総労働時間1,926.5時間
・2024年度の作業災害11件、休業度数率2.39
・SmartOWLによって減った労働時間を休日・賃金などへどこまで還元したかの定量情報が不足
・2025年度の安否確認訓練は目標年2回に対し1回
・サイバー攻撃発生時の具体的な復旧時間などの公開情報が不足
事業内容と人間への貢献
ミツウロコグループホールディングスは、グループの経営戦略・経営管理を担う持株会社です。LPガス、電力、再生可能エネルギー、飲料、飲食、住宅、物流、IT、セルフストレージなど、生活に関係する幅広い事業を傘下企業を通じて展開しています。[出典1・4]
今回の企業審査では、持株会社自身の雇用・賃金については提出会社単体の数値を使い、LPガス保安、SmartOWL、労働安全、BCPなどについては、持株会社によるグループ横断の管理と子会社での実際の運用を区別して評価します。
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 会社名 | 株式会社ミツウロコグループホールディングス |
| 英文名 | Mitsuuroko Group Holdings Co., Ltd. |
| 設立 | 1926年5月10日 |
| 代表者 | 代表取締役社長 CEO 田島晃平 |
| 本社 | 東京都中央区京橋3丁目1番1号 |
| 資本金 | 70億77百万円 |
| 主な事業 | 持株会社としてグループの経営戦略・経営管理 |
| 2026年3月末の提出会社従業員数 | 74人 |
| 2026年3月末の連結従業員数 | 1,759人 |
| 2026年3月期単体平均年間給与 | 1,037万5,000円 |
| 平均年齢 | 41.0歳 |
| 平均勤続年数 | 8.1年 |
2026年3月31日時点の有価証券報告書では提出会社従業員数は74人ですが、現在の公式会社概要では25人と表示されています。集計時点や人員配置の違いが考えられるため、2026年3月期の平均給与などを評価するときは有価証券報告書の74人を基準にします。[出典1・2]
情報ランク:A。
エネルギー・電力を生活へ届ける
グループではLPガス、都市ガス、石油製品、電力、風力、バイオマス、太陽光などを扱っています。家庭の調理や給湯に加え、企業や店舗の事業継続にも関わる生活インフラです。[出典4・6]
LPガスは容器単位で輸送できるため、大規模災害で都市ガスなどの供給網が止まった場合にも、地域ごと・利用者ごとに供給を再開しやすい特徴があります。
食品・飲料・生活サービスまで展開
グループには飲料水製造、ベーカリー、カフェ、施設運営、住宅・不動産、物流などの事業もあります。[出典4]
エネルギーだけではなく、日常生活を支える複数の事業を同じ企業グループ内に持つことがミツウロコグループの特徴です。
持株会社としてグループ横断の管理を担う
持株会社自身がLPガス容器を配送したり、発電所を運転したりするわけではありません。
その代わり、リスク管理、サステナビリティ、法務、内部監査、コンプライアンス、人的資本、情報セキュリティなどをグループ横断で統括しています。
2026年1月には内部通報制度を海外子会社まで対象とするグループ規程へ改め、エシックス&コンプライアンス審議会も設置しました。[出典15・16]
Safety 39/50
Safetyでは、持株会社自身の賃金、労働時間、雇用の公平性、育児支援に加え、グループで行われている労働安全、人権、商品・サービス安全まで確認しました。
平均給与、女性管理職比率、育児休業、安全衛生管理は強い結果があります。一方、持株会社単体の労働時間情報、男女賃金差、グループで発生している作業災害には改善余地があります。
賃金・利益の還元:8/10
2026年3月期の提出会社単体の平均年間給与は1,037万5,000円です。平均年齢41.0歳、平均勤続年数8.1年で、賞与と基準外賃金を含む平均値です。[出典2]
持株会社で専門職・管理部門が中心という人員構成の影響はありますが、平均給与そのものは高く、働く人への金銭的還元は強く評価できます。
一方、一般社員のベースアップ率、職位別の賃金、賃金中央値など、給与の高さが幅広い従業員へ行き渡っているかを判断できる情報は十分に公開されていません。
高い平均給与を評価する一方、幅広い従業員への還元を確認する情報が不足するため8/10点です。
10/10点を検討するには、高水準の給与を維持したうえで、ベースアップ率や職位別賃金、賃金中央値などを公開し、広い層で継続的な賃上げが確認できることが必要です。
情報ランク:A。
労働時間・休息:6/10
グループの2024年度実績では、従業員1人あたり月平均時間外労働15.5時間、年間平均総労働時間1,926.5時間、有給休暇の平均取得日数12.6日です。[出典3]
月平均15.5時間の時間外労働は極端な長時間労働ではなく、有給休暇も平均12日以上取得されています。
一方、これらはグループ全体の数字です。今回の審査対象である持株会社単体74人について、月平均残業時間、年間総実労働時間、有給休暇取得率の公開情報がありません。
さらに、グループの年間平均総労働時間は2023年度1,835.5時間から2024年度1,926.5時間へ増え、月平均時間外労働も15.0時間から15.5時間へ増えています。[出典3]
持株会社単体の重要な労働時間情報が公開されていない点は課題です。採点上も減点対象です。
そのため6/10点です。
8/10点を検討するには、持株会社単体の残業時間、有給休暇取得率、年間総労働時間を毎年公開し、残業時間の減少や高い有休取得率を継続して確認できることが必要です。
情報ランク:A。
雇用の安定・待遇の公平性:4/5
2026年3月末の提出会社単体では、労働者に占める女性比率48.0%、管理的地位にある女性比率47.4%です。[出典2]
女性従業員比率と女性管理職比率がほぼ同水準であり、女性が管理職へ進みにくい構造は比較的小さいと評価できます。
一方、男女賃金比率は全労働者77.2%です。正規雇用では91.5%ですが、パート・有期労働者では38.9%です。[出典2]
この数字だけで同一職務の男女に異なる賃金を払っているとは判断できません。しかし、雇用形態や職位などの構成差が大きな賃金差として現れていることは課題です。
そのため4/5点です。
5/5点を検討するには、職種・職位・雇用形態・労働時間ごとに賃金差の原因を公開し、是正を進めた結果として男女賃金比率がさらに縮小していることを確認する必要があります。
情報ランク:A。
福利厚生・育児・介護:5/5
2026年3月期の提出会社単体では、男性労働者の育児休業取得率100%、女性も100%です。[出典2]
グループ全体でも男性の育児休業取得率は高い水準まで上昇しており、女性は100%を維持しています。育児短時間勤務、介護休職、帯同休職、リフレッシュ制度なども設けています。[出典3・17]
2024年度の育児休職取得者の復職率も100%です。[出典3]
制度が存在するだけでなく、実際に利用され、高い復職率も確認できるため5/5点です。
情報ランク:A。
人権・ハラスメント・労使関係:4/5
グループ人権方針では、差別やハラスメント、児童労働、強制労働を禁止し、結社の自由と団体交渉権を尊重しています。[出典15]
2026年3月末の全ミツウロコ労働組合の組合員数は701人で、有価証券報告書では労使関係は円滑とされています。[出典2]
2026年1月には内部通報制度を海外子会社まで対象とするグループ規程へ改め、社外法律事務所、人事、内部監査室を窓口とする体制を整備し、処分の公平性を審議するエシックス&コンプライアンス審議会も設置しました。[出典16]
一方、ハラスメント相談件数、認定件数、是正件数などを毎年比較できる形で確認する公開情報は不足しています。
そのため4/5点です。
5/5点を検討するには、相談・通報件数、認定件数、是正件数、再発防止の結果などを継続的に公開し、制度が実際に機能していることまで確認できる必要があります。
情報ランク:A。
労働安全・健康:8/10
グループではOSHMSを使った安全衛生管理、リスクアセスメント、専門職による事業所巡回などを行っています。[出典8]
2024年度は労災による死亡者0人、重大事故0件、交通事故0件です。作業災害は11件で、2023年度の18件から減少しました。休業度数率は2.39、強度率は0.038です。[出典3・8]
健康面では定期健康診断受診率100%を継続しています。
死亡災害、重大事故、交通事故が0件で、作業災害も前年から減ったことは評価できます。
一方、作業災害11件は残っています。
そのため8/10点です。
10/10点を検討するには、作業災害11件の原因を分類して具体的な防止策を実施し、その後に作業災害件数や休業度数率がさらに低下し、低い水準を継続していることを確認する必要があります。
情報ランク:A。
商品・サービスの安全:4/5
LPガスでは充填所、小売店舗、コールセンター、SmartOWLによる情報収集などを組み合わせて安全管理しています。電力では発電所に24時間交替制で従業員を配置し、本社から遠隔監視も行っています。[出典9]
フーズ事業ではHACCPチームを編成し、ロットごとの微生物検査・官能検査や、外部機関による原水・製品検査を行っています。[出典9]
持株会社自身が商品を製造・配送する会社ではありませんが、食品品質管理委員会やグループ横断のリスク管理を統括しています。
複数の事業で安全管理が具体化されているため4/5点です。
5/5点を検討するには、事故・不具合・回収などの発生状況と改善結果をグループ横断で継続公開し、安全管理が実際の低事故率につながっていることまで確認できる必要があります。
情報ランク:A。
従業員・元従業員の口コミ
転職会議では、ミツウロコグループホールディングス単体の口コミ件数は少なく、確認できる具体的な投稿も古い勤務経験に基づくものが中心です。[出典18]
その中には、
「休みでも顧客からの電話が入るためしっかり休めなく、ストレスが多いです。」
という投稿があります。[出典18]
ただし、古い投稿であり、現在の持株会社は人員構成や業務内容が変わっている可能性があります。この口コミだけを2026年時点の労働環境へそのまま一般化しません。
現在の公式資料では男女とも育児休業取得率100%、女性管理職比率47.4%などの実績も確認できるため、口コミは過去の補助情報として扱います。
情報ランク:B。
SNS・匿名掲示板の確認結果
X、5ちゃんねる、爆サイなどについて、企業名と「残業」「給料」「事故」「退職」「パワハラ」などを組み合わせて確認しました。
今回確認した範囲では、2026年時点で持株会社の社員・元社員であることや勤務時期を確認でき、採点根拠として利用できる具体的な投稿本文は確認できませんでした。
「株式会社ミツウロコ」や各事業会社に関する書き込みはありますが、別法人の投稿を持株会社単体の採点には流用しません。
Innovation 23/25
Innovationでは、持株会社がグループへ導入しているデジタル技術や業務改善が、実際に人の作業時間や危険を減らしているか、その成果が働く人へ返っているかまで確認しました。
SmartOWLは、導入したという事実だけでなく、配送回数、配送時間、走行距離の削減まで数値で確認できる点が大きな強みです。一方、削減した時間が休日・労働時間・賃金へどう還元されたかの公開は不足しています。
作業負担・危険の削減:10/10
SmartOWLはLPガスメーター情報を自動取得し、従来は人が訪問していた検針作業を遠隔化します。さらにガス残量から適切な容器交換時期を算出し、配送計画を効率化します。[出典10]
グループ企業で導入前後を比較すると、配送先1軒あたりの平均配送回数は年間6.6回から4.6回へ減少しています。
過去の実証では、配送業務時間を約30%、走行距離を約20%削減しました。[出典10・11]
例えば、100軒へ年間6.6回配送していた場合は660回の訪問が必要ですが、4.6回なら460回です。同じ100軒でも年間約200回の配送を減らせる計算になります。
これによってトラックを運転する時間、LPガス容器を積み降ろしする回数、交通事故や重量物取扱いに接する機会も減らせます。
人の作業量と危険の両方を実際の数値で削減しているため10/10点です。
情報ランク:A。
商品・サービスの改善:5/5
SmartOWLによる自動検針・配送最適化に加え、グループでは再生可能エネルギー、デマンドレスポンス、系統用蓄電池、電力小売、太陽光などへ事業を広げています。[出典4・12]
北海道北広島第一蓄電所は出力1,534kW、容量7,834kWhの設備として計画されています。[出典12]
太陽光や風力は発電量が天候によって変化します。蓄電池で余った電力を蓄え、必要な時間帯に使えるようにすれば、再生可能エネルギーを増やしながら電力の需給を安定させやすくなります。
既存サービスの省力化と新しい電力インフラの両方を進めているため5/5点です。
情報ランク:A。
改善成果の人間への還元:3/5
SmartOWLによって配送業務時間を約30%減らし、配送回数も1軒あたり年間約2回減らしたため、「人が仕事に使っていた時間を減らした」という成果自体は確認できます。[出典10・11]
同社もSmartOWLを労働力不足への対応策として位置づけています。
一方、SmartOWL導入前後で配送担当者の残業時間、年間総労働時間、休日数、賃金、配置転換人数がどう変化したかについては、公開情報が不足しています。
作業時間を30%減らしても、その分だけ担当者を減らし、残った人の仕事量が変わらなければ、人への還元とは評価しにくくなります。
反対に、削減した時間によって残業が減る、休日が増える、賃金が上がる、危険な作業から別の仕事へ配置転換されるといった結果が確認できれば、技術による改善が働く人へ返ったと判断できます。
現時点では作業削減の成果は確認できるものの、人への還元結果が十分に確認できないため3/5点です。
5/5点を検討するには、導入前後の残業時間、年間総労働時間、休日数、賃金、配置転換人数などを公開し、複数の改善が継続して確認できる必要があります。
情報ランク:A。
研究開発・現場改善の継続:5/5
2018年からLPガス配送効率化の大規模実証を行い、2019年にIoTメーターサービスを商用化、2021年にSmartOWL配送効率化ソリューションを開始しています。さらに複数の特許技術を活用し、外部のLPガス事業者にも展開しています。[出典10・13]
電力分野でもデマンドレスポンス、系統用蓄電池、再生可能エネルギー開発を継続しています。[出典12・13]
実証だけで終わらず、商用化、外部展開、設備投資まで複数年にわたり続けているため5/5点です。
情報ランク:A。
自動化・AI導入後の雇用状況
SmartOWLによる自動検針や配送最適化は、人が行っていた作業を減らす技術です。そのため、作業削減と同時に雇用がどう変わったかも確認する必要があります。
今回確認した範囲では、SmartOWL導入を理由とした大規模な人員削減、希望退職、契約打ち切り、採用停止などを示す公開情報は確認されていません。
一方で、「人員削減がなかった」と断定できるほど、導入部署ごとの従業員数、配置転換人数、採用人数、非正規契約の更新状況などが公開されているわけでもありません。
したがって、SmartOWLが雇用を悪化させたとは評価しませんが、自動化によって浮いた人員や時間をどのように配置転換・労働時間短縮へつなげたのかについては、公開情報が不足しています。
この点は「改善成果の人間への還元」3/5点の判断にも反映しています。
Innovation小計:23/25点
Protection 22/25
Protectionでは、地震、豪雨、停電、ガス供給停止、システム障害、サイバー攻撃などが起きたときに、生活インフラを止めにくくする仕組みがあるかを評価しました。
ミツウロコグループは、LPガス備蓄、24時間365日の緊急出動、複数調達、事務センター2拠点化、BCP、サイバー教育などを具体的に整備しています。一方、訓練回数や復旧時間など、一部の成果開示には改善余地があります。
災害への備え・訓練:4/5
グループは大規模災害に備えてBCPと災害対応マニュアルを策定し、安否確認訓練、事故対応訓練、出動訓練などを行っています。[出典7]
2023年度と2024年度の安否確認訓練はそれぞれ年2回実施しました。一方、2025年度は1回で、目標としている年2回には届いていません。[出典5]
LPガス容器の流出防止では、充填所へ防災ネットやラッシングベルトを備え、浸水リスクがある地域では容器チェーンの二重掛けや放出防止型高圧ホースなどを進めています。[出典7]
例えば豪雨で事業所が浸水した場合、LPガス容器が流されると容器そのものが危険物となり、供給再開も遅れます。容器を固定して流出を防ぐことは、周辺住民の安全と災害後の供給再開の両方に関わります。
設備対策と訓練は具体的ですが、2025年度は訓練目標を達成していないため4/5点です。
5/5点を検討するには、目標とする訓練回数を毎年実施し、訓練で見つかった問題と改善結果まで継続公開する必要があります。
情報ランク:A。
生産・物流・調達の代替:5/5
LPガスは複数の輸入元売会社と年間調達契約を結び、元売備蓄と国家備蓄を合わせて約90日分、消費者宅の軒先在庫として約60日分を確保しています。石油製品も複数の元売会社から調達しています。[出典6]
例えば一つの輸入元や物流拠点が災害で停止しても、別の調達先や備蓄があれば供給を続けられる可能性が高まります。
電力でも自社発電、長期契約調達、再生可能エネルギー、蓄電池など複数の供給方法を持っています。[出典4・12]
一つの供給元や一つの設備だけへ依存しない構造が具体的に確認できるため5/5点です。
情報ランク:A。
サイバー防衛・情報保護:4/5
持株会社とグループ子会社が一体となった情報セキュリティ体制を構築し、不正侵入防止などの技術対策へ予算と人員を確保しています。[出典14]
契約社員や協力会社を含むグループ役職員へ年1回のeラーニングを行い、抜き打ちの標的型攻撃メール訓練も実施しています。グループ会社にも一定基準以上のセキュリティツールと運用を求めています。[出典14]
例えば社員へ偽のメールが届いたとき、訓練によって添付ファイルや偽ログイン画面を開かない人が増えれば、情報流出やシステム停止の可能性を減らせます。
一方、MFA、EDR、SOC、バックアップ分離、侵入テスト、復元訓練などについて、どの対策をどこまで導入し、障害時に何時間で復旧できるのかを比較できる公開情報は不足しています。
そのため4/5点です。
情報ランク:A。
供給継続・復旧能力:5/5
ガス漏れなどの緊急事態に備え、24時間365日の緊急出動体制を構築しています。[出典7]
グループ各社の事務業務を集約するミツウロコ事務センターは、さいたま市と長野の2拠点体制です。さいたま側が機能しない場合にはBCPプログラムを発動し、非常時の業務へ切り替える仕組みがあります。[出典19]
例えば大規模地震でさいたま側の拠点が使用できなくなった場合でも、長野側へ業務を移せれば、請求、受付、顧客対応などが一斉に停止する危険を減らせます。
LPガスは容器単位で個別復旧でき、発電所では24時間監視も行っています。[出典7・9]
代替調達、複数拠点、緊急出動、遠隔監視が組み合わされているため5/5点です。
情報ランク:A。
危機時の市民への対応:4/5
LPガスは災害時にも容器単位で供給できる分散型エネルギーです。ミツウロコグループは災害用バルク、発電機、GHPなどの災害対策設備を全国の販売ネットワークを通じて展開しています。[出典7・20]
全国ミツウロコ会は約1,800社で構成され、約80万世帯との接点を持っています。[出典20]
例えば地震で電気や都市ガスが止まった地域でも、LPガス設備や発電機を使える場所では、調理、給湯、暖房、非常用電源などを確保できる可能性があります。
地域の生活インフラを維持する土台は強い一方、直近の災害について、避難所へ何件供給したのか、何世帯を支援したのか、何人を派遣したのかといった定量的な支援実績の公開情報は不足しています。
そのため4/5点です。
5/5点を検討するには、実際の災害時支援について支援件数、供給量、対応時間、対象地域などを継続公開し、仕組みが実際に市民へ届いた結果まで確認できる必要があります。
情報ランク:A。
Protection小計:22/25点
良いニュース・最近の前向きな動き
最近の前向きな動きでは、長年培ったLPガスなどの生活インフラを維持しながら、SmartOWL、蓄電池、再生可能エネルギー、コンプライアンス強化へ事業と管理体制を更新している点を評価できます。
こうした取り組みが広がれば、ミツウロコグループの商品やサービスを利用することによって、人が行う危険・反復作業を減らす技術や、災害時にもエネルギーを届け続ける設備への投資を支えることにつながります。
2026年:創立100周年
ミツウロコグループホールディングスは2026年5月に創立100周年を迎えました。グループの起源は1886年までさかのぼります。[出典21]
長く存続していること自体を加点するわけではありません。
石炭やガスから電力、再生可能エネルギー、DX、生活サービスへ事業を変化させながら、生活インフラを維持してきた継続性は、ProtectionとInnovationの背景として評価できます。
2026年:北海道北広島第一蓄電所
北海道北広島第一蓄電所は出力1,534kW、容量7,834kWhの系統用蓄電池です。[出典12]
太陽光や風力の発電量が多い時間に電力を蓄え、必要な時間に放電できれば、再生可能エネルギーを増やしても電力系統を安定させやすくなります。
再生可能エネルギーを利用しながら供給安定性を高める設備投資として評価できます。
2026年1月:内部通報・コンプライアンス体制を再構築
2026年1月、内部通報運用規程とコンプライアンス規程を海外子会社まで対象とするグループ規程へ改めました。外部法律事務所への通報窓口も整備し、エシックス&コンプライアンス審議会を設置しています。[出典16]
従業員が問題を見つけたとき、直属の上司以外へ通報できる経路があり、処分の公平性を別の組織で確認できれば、不正やハラスメントを放置しにくくなります。
悪いニュース・問題となった動き
今回確認した範囲では、2026年に持株会社自身が起こした重大な死亡事故、大規模リコール、重大な行政処分は確認されていません。
一方、男女賃金差、作業災害、年間総労働時間の増加など、働く人の待遇や安全に直接関係する課題は数字として残っています。これらが改善されないままであれば、高い給与やDXを持つ企業であっても、働く時間、安全、待遇の格差という問題は残ります。
2026年3月期:全労働者の男女賃金比率77.2%
提出会社単体の女性管理職比率は47.4%と高い一方、全労働者の男女賃金比率は77.2%です。正規雇用では91.5%ですが、パート・有期労働者では38.9%です。[出典2]
女性管理職を増やすことに加え、雇用形態、職種、職位、労働時間など何が賃金差を生んでいるのかを分解し、その原因を改善した結果まで示す必要があります。
2024年度:作業災害11件
グループでは2024年度の死亡災害0人、重大事故0件、交通事故0件を達成した一方、作業災害は11件、休業度数率は2.39でした。[出典3・8]
前年の18件から11件へ減っていることは改善です。
しかし、LPガス配送、充填、物流、製造など危険を伴う仕事を持つ企業グループである以上、どの作業で事故が起きたのかを分析し、作業災害をさらに減らす必要があります。
グループの年間総労働時間が増加
グループの従業員1人あたり年間平均総労働時間は、2023年度1,835.5時間から2024年度1,926.5時間へ増えています。月平均時間外労働も15.0時間から15.5時間へ増えました。[出典3]
事業構成や集計範囲の変化がある可能性があるため、この数字だけで労働環境が悪化したとは断定しません。
ただし、SmartOWLなどで作業時間を減らしている企業だからこそ、省力化が最終的に年間総労働時間や残業時間の減少へつながっているかを確認できる情報が必要です。
総合評価と、これから改善してほしいこと
現在の総合評価は84点、シビックランクAです。
次のSランクは90点からなので、あと6点必要です。
ミツウロコグループホールディングスは、平均給与、育児支援、女性登用、SmartOWLによる省力化、LPガスの備蓄、24時間365日の保安体制など、すでに高く評価できる仕組みを複数持っています。
次に重要なのは、その仕組みをさらに増やすことより、技術や利益によって「働く時間が減った」「安全になった」「賃金や休日へ還元された」という結果を数字で示すことです。
持株会社単体の労働時間を改善・公開する:労働時間・休息 6→8/10
現在の「労働時間・休息」は6/10点です。
グループ全体では2024年度の月平均時間外労働15.5時間、年間平均総労働時間1,926.5時間、有給休暇平均取得12.6日を公開しています。
一方、持株会社単体74人について、月平均残業時間、年間総実労働時間、有給休暇取得率の公開情報がありません。
まず、持株会社単体について、
・月平均残業時間
・年間総実労働時間
・有給休暇取得率
・平均有給休暇取得日数
を毎年公開する必要があります。
さらに、公開するだけでは加点しません。残業時間が減少し、有給休暇取得率が高い状態を継続して確認できれば8/10点を検討できます。
参考になるのは株式会社三井住友銀行です。当サイトの現行企業審査では、法定外労働月13.3時間、有給休暇取得率95.5%、平均取得19.1日などを公開しており、「労働時間・休息」を10/10点と評価しています。
ミツウロコグループホールディングスでも、持株会社単体で労働時間と休暇を公開し、実際に残業削減と高い有休取得率が確認できれば、
現在:6/10点
改善後:8/10点
加点:+2点
総合:84→86点
ランク:Aのまま
となります。
働く人にとっては、年間に自由に使える時間が増え、長時間労働による疲労や健康リスクを減らせます。
SmartOWLで減らした時間を休日・労働時間へ返す:改善成果の人間への還元 3→5/5
現在の「改善成果の人間への還元」は3/5点です。
SmartOWLでは、LPガス配送先1軒あたりの年間平均配送回数を6.6回から4.6回へ減らし、実証では配送業務時間を約30%、走行距離を約20%削減しています。
技術によって人の仕事を減らしたこと自体は明確です。
次に必要なのは、その時間が働く人へどう返ったかを示すことです。
SmartOWL導入部署について、
・導入前後の月平均残業時間
・年間総労働時間
・年間休日数
・賃金
・必要人員数
・配置転換人数
・採用人数
・非正規契約の変化
を公開し、実際に残業時間が減る、休日が増える、賃金が上がる、雇用を維持したまま別の仕事へ配置転換されるといった成果が複数確認できれば5/5点を検討できます。
参考になるのはキリングループロジスティクス株式会社です。当サイトの現行審査では、業務改善を進めたうえで年間所定労働時間を1,920時間から1,896時間へ24時間短縮しています。
また、キリンビバレッジ株式会社では、最大約25kgの原料を扱う重筋作業のロボット化など、人の身体的負担そのものを機械へ移す取り組みを進めています。
ミツウロコでもSmartOWLの省力化を実際の労働時間短縮や休日増加までつなげられれば、
現在:3/5点
改善後:5/5点
加点:+2点
総合:84→86点
ランク:Aのまま
となります。
働く人にとっては、技術によって仕事が速くなるだけではなく、実際に自由時間が増えたり、危険な配送作業へ接する回数が減ったりすることになります。
作業災害をさらに減らす:労働安全・健康 8→10/10
現在の「労働安全・健康」は8/10点です。
2024年度は死亡災害0人、重大事故0件、交通事故0件を達成しました。一方で、作業災害は11件、休業度数率は2.39です。
まず11件の作業災害について、
・LPガス容器の運搬
・充填作業
・転倒
・車両作業
・製造設備
・その他の作業
など原因別に分類し、それぞれに防止策を実施する必要があります。
そのうえで翌年度以降、作業災害件数と休業度数率がさらに低下し、その低い水準を複数年継続できれば10/10点を検討できます。
参考になるのは株式会社セブン&アイ・ホールディングスです。当サイトの現行審査では、持株会社単体の労働災害度数率と強度率を2020年度から2024年度まで5年連続0.00としており、「労働安全・健康」を10/10点と評価しています。
ミツウロコでも作業災害をさらに減らし、安全成果を継続的な数値として示せれば、
現在:8/10点
改善後:10/10点
加点:+2点
総合:84→86点
ランク:Aのまま
となります。
働く人にとっては、けがによって仕事や生活を中断する危険をさらに減らせます。
次のランクへ上がるための具体例
現在84点・シビックランクAです。Sランクは90点からなので、あと6点必要です。
具体的には、次の3つをすべて実現する方法があります。
1つ目は、持株会社単体の月平均残業時間、年間総実労働時間、有給休暇取得率を毎年公開し、実際に残業時間が減少し、高い有休取得率が継続している状態をつくることです。
これが確認できれば、
労働時間・休息:6→8点
加点:+2点
を検討できます。
2つ目は、SmartOWLで削減した作業時間を、実際の残業削減、年間総労働時間の短縮、休日増加、賃金上昇、配置転換などへつなげ、その結果を導入前後の数字で公開することです。
これが確認できれば、
改善成果の人間への還元:3→5点
加点:+2点
を検討できます。
3つ目は、現在11件発生している作業災害の原因を分析して具体的な防止策を実施し、作業災害件数と休業度数率をさらに下げ、その低い水準を複数年継続することです。
これが確認できれば、
労働安全・健康:8→10点
加点:+2点
を検討できます。
この3つをすべて実現すると、
現在84点
+ 労働時間・休息 2点
+ 改善成果の人間への還元 2点
+ 労働安全・健康 2点
=90点
となり、シビックランクAからSへ上がります。
つまり、ミツウロコグループホールディングスがSランクへ上がるための具体的な道筋は、「持株会社単体の労働時間を実際に短くする」「SmartOWLで浮いた時間を従業員の休日・労働時間・待遇へ返す」「作業災害をさらに減らす」という3つです。
すでに持っている高い給与水準、SmartOWL、LPガス備蓄、24時間365日の供給体制に加え、こうした成果を働く人の時間・安全・待遇へさらに還元できれば、90点以上を狙える企業だと評価できます。
現時点の総合評価は84点/100点、シビックランクAです。
出典一覧
1.株式会社ミツウロコグループホールディングス「会社概要」
2.株式会社ミツウロコグループホールディングス「第117期 有価証券報告書」
3.株式会社ミツウロコグループホールディングス「ESGデータ」
4.株式会社ミツウロコグループホールディングス「事業領域」
5.株式会社ミツウロコグループホールディングス「社会/KPI」
6.株式会社ミツウロコグループホールディングス「エネルギー・電力の安定供給」
7.株式会社ミツウロコグループホールディングス「防災対策」
8.株式会社ミツウロコグループホールディングス「産業保健・労働安全衛生」
9.株式会社ミツウロコグループホールディングス「お客様の安全確保・品質管理」
10.株式会社ミツウロコグループホールディングス「SmartOWLによるLPガス業務効率化」
11.株式会社ミツウロコグループホールディングス「SmartOWL実証結果」
12.株式会社ミツウロコグループホールディングス「再生可能エネルギー・系統用蓄電所」
13.株式会社ミツウロコグループホールディングス「沿革」
14.株式会社ミツウロコグループホールディングス「サイバーセキュリティ」
15.株式会社ミツウロコグループホールディングス「人権の尊重」
16.株式会社ミツウロコグループホールディングス「コンプライアンス/リスクマネジメント」
17.株式会社ミツウロコグループホールディングス「人的資本KPI」
18.転職会議「株式会社ミツウロコグループホールディングス 社員口コミ」
19.株式会社ミツウロコグループホールディングス「水セキュリティ/事務センターBCP」
20.株式会社ミツウロコグループホールディングス「地域社会/全国ミツウロコ会」
21.株式会社ミツウロコグループホールディングス「創立100周年特設サイト」
シビックランクの基準
| ランク | 点数 |
|---|---|
| S | 90~100点 |
| A | 80~89点 |
| B | 70~79点 |
| C | 60~69点 |
| D | 50~59点 |
| E | 40~49点 |
| F | 20~39点 |
| G | 0~19点 |
情報ランクの基準
| 情報ランク | 基準 |
|---|---|
| S | 公的機関、裁判所、規制当局、独立した第三者機関の調査・監査・検証・認証など、内容そのものに独立した裏づけがある情報 |
| A | 企業公式資料、採用情報、公式声明・SNS、氏名・役職・立場を確認できる記名取材や公表発言など、発信主体を確認できる公表情報 |
| B | 従業員・元従業員の口コミ、一般SNS、匿名掲示板など、発信者の身元や対象企業との関係を独立に確認しにくい情報 |
情報ランクは企業そのものの良し悪しではなく、個々の情報の出どころと検証状態を示します。
