企業審査|100点制・第1版
評価時点:2026年9月27日
赤ちゃんに与える粉ミルク、病院や在宅医療で使われる栄養食品、スーパーで買うヨーグルトや植物性飲料、外出先で手に取るミネラルウォーター。これらは「なくても困らない嗜好品」だけではありません。乳幼児や病気で通常の食事を十分に取れない人にとっては、成分と安全性が生活そのものに直結します。水についても、地域によっては安全な飲用水へのアクセスを補う役割があります。
Danone S.A.は、Activia、Oikos、Alpro、Aptamil、Nutricia、Fortimel、evian、Volvic、AQUA、Bonafontなどを展開する世界的な食品・飲料グループの親会社です。2025年の連結売上高は272億8,300万ユーロ、従業員は88,670人、製造拠点は151カ所、事業は約120カ国に広がります。
規模が大きいほど、一つの原料問題や品質判断が多くの家庭に影響します。2026年1月、Danoneは乳児用ミルクの特定ロットを一部市場で回収しました。問題の背景には、中国の原料供給元で製造されたアラキドン酸油に関連するセレウリド汚染の国際的な問題があり、Danone以外の複数メーカーも影響を受けました。フランス検察はDanoneを含む複数社の対応について調査を開始しています。ただし評価時点で、Danone製品が乳児死亡の原因だったと確定した資料は確認できません。企業審査では、回収の事実と調査中という状態を重く見ながら、未確定の因果関係は断定しません。
一方、働く人への還元では強い材料があります。Danoneは2025年、独立機関Fair Wage Networkから、全従業員が各地域の生活賃金以上を受け取っていることを確認するLiving Wage Employer認証を取得しました。医療保障Dan’Caresは97.8%の従業員をカバーし、団体協約の適用率は69%、人権方針研修の受講率は96.9%です。
安全面でも2025年の死亡事故は0件まで改善しました。ただし休業1日以上の事故は180件、FR1は100万労働時間当たり0.9で前年から横ばいです。2024年には死亡事故2件、2023年には3件が報告されており、「2025年に死亡0」だけで安全を満点とすることはできません。
以上から、賃金、人権、福利厚生、研究開発、供給網の強さを高く評価する一方、実残業や有休取得など労働時間の現在値が不足していること、近年の重大労災履歴、乳児用ミルク回収を反映し、総合69点、シビックランクCとします。
結論:総合69点/100点、シビックランクC
| 評価軸 | 得点 | 主な評価 |
|---|---|---|
| Safety | 33/50 | 全従業員の生活賃金認証、Dan’Cares、人権研修、団体協約、安全KPIを評価。一方、実残業・休暇の現在値不足、近年の死亡事故履歴、2026年乳児用ミルク回収を減点 |
| Innovation | 19/25 | 医療栄養、OneBiome、Industry 5.0、AI、デジタル供給網、製品改良を評価。生産性向上が社員の時短・賃金へ戻った定量値は限定的 |
| Protection | 17/25 | 世界151拠点、調達・水源分散、24時間SOC、CERT、供給網デジタル化、災害時の水・栄養支援を評価。製品別の代替生産時間やRTOは不足 |
| 総合 | 69/100 | シビックランクC |
Cランクの理由は、Danoneが「平均的な食品会社」だからではありません。Safetyのうち賃金、福利厚生、人権、Innovation、Protectionにはかなり強い実績があります。特にLiving Wage認証と、食事・水・医療栄養まで跨ぐ商品開発力は大きなプラスです。
一方、総合70点のBランクに届かなかった最大の理由は、労働時間と重大安全項目です。
Danoneは労働時間が人権上の重要課題であることを自ら認識しています。2024年には、従業員の平均実労働週が48時間以内だった国の比率を84.6%と開示しました。しかし2025年について、グループ全体の平均残業時間、年間総労働時間、有休取得率を、比較可能な現在値として確認できませんでした。制度や一部国の柔軟勤務だけで「全社的に労働時間が良好」と補完しないため、ここは4/10にとどめます。
また2025年は死亡0へ改善したものの、2024年2件、2023年3件の死亡事故があり、FR1も2025年は0.9で前年から改善していません。
商品安全では、151製造拠点の98.6%がFSSC 22000認証を受けるなど管理は強い一方、2026年の乳児用ミルク回収は、最も安全性が要求されるカテゴリーで実際に供給網上の問題が表面化した事例です。高い安全管理と重大な回収事例を両方残し、3/5としています。
審査対象の範囲:Danone S.A.とDanone Groupを混同しない
本記事の対象名はDanone S.A.です。ただし、Danone S.A.はフランスの上場親会社であり、製造、販売、雇用の大部分は各国の子会社が担います。公開されるサステナビリティ、従業員、労災、製造拠点の数値の多くはDanone Group連結ベースです。
そのため本記事では、次のように区別します。
| 情報 | 扱い |
|---|---|
| Danone S.A.の本社、上場、経営陣、親会社としての方針 | Danone S.A.自身の情報 |
| 売上、88,670人、151製造拠点、世界の労災、人権、Dan’Cares | Danone Group連結情報 |
| Danone North America、Danone Indonesia、ダノンジャパン等の個別事例 | 子会社・地域法人の事例として明記 |
| Aptamil、evian、Volvic、AQUA等 | Danoneグループブランドとして扱う |
子会社で起きた出来事を、Danone S.A.本社の直接雇用職場で起きた出来事として書き換えません。一方、親会社として設定した安全、人権、品質、供給網管理の仕組みと、連結グループの結果は、Danone S.A.の企業審査に必要なグループ実績として評価します。
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 会社名 | Danone S.A. |
| 本社 | Paris, France |
| CEO | Antoine de Saint-Affrique |
| 上場 | Euronext Paris、BN |
| 2025年売上高 | 272億8,300万ユーロ |
| 2025年従業員 | 88,670人、連結グループ |
| 2025年製造拠点 | 151拠点 |
| 展開国 | 約120カ国 |
| 主な事業 | Essential Dairy & Plant-Based、Specialized Nutrition、Waters |
| 2025年売上構成 | EDP 48%、Specialized Nutrition 34%、Waters 18% |
| 主要ブランド例 | Activia、Oikos、Alpro、Aptamil、Nutricia、Fortimel、evian、Volvic、AQUA、Bonafont等 |
| 企業形態 | フランスのSociété à Mission、2025年にグローバルB Corp認証 |
2025年末の従業員88,670人のうち、無期雇用は84,795人、有期雇用は3,875人です。単純計算では約95.6%が無期雇用です。2025年の採用は13,492人、離職・解雇等のdismissalsは6,289人、従業員turnoverは17.0%で、2024年の18.0%から改善しました。
国別ではメキシコ15,267人、インドネシア9,977人、フランス9,175人が大きな雇用拠点です。
この会社は何をしているのか
Danoneの事業は、ヨーグルトメーカーという一言では捉えられません。日常食品、乳児・医療栄養、水という、必要性の異なる三領域を一つのグループで運営しています。
| 事業 | 誰が・どこで | 何をするか | 人への役割 |
|---|---|---|---|
| EDP | 各国の乳製品・植物性工場、品質・営業・R&I | 牛乳、発酵乳、植物原料を調達し、ヨーグルト、植物性飲料等を製造 | 日常のたんぱく質、発酵食品、植物性選択肢を提供 |
| Specialized Nutrition | 専門工場、R&I、医療・栄養チーム | 乳児用ミルク、経腸栄養、疾患・高齢者向け栄養食品を設計・製造 | 通常食だけで必要量を摂れない人を支える |
| Waters | 水源周辺工場、環境・品質・物流部門 | 天然水・飲料水を採水、品質管理、容器充填、輸送 | 安全な水分補給と地域に応じた飲用水アクセスを支える |
| Supply Chain | 151工場、倉庫、物流、調達 | 牛乳、糖、果実、油脂、包装材等を調達し、生産・在庫・物流を調整 | 欠品を抑え、病院・小売・家庭へ継続供給 |
| R&I | Paris-Saclay等の研究拠点、各カテゴリー | 腸内細菌、栄養、発酵、医療栄養、AI等を研究 | 新しい栄養介入や製品改善につなげる |
Essential Dairy & Plant-Based:毎日食べる食品を大量に安定生産する
2025年の売上の48%を占める最大部門です。Activia、Oikos、Danone、Alproなど、発酵乳、ヨーグルト、植物性飲料・食品を扱います。
工場では原料乳や植物原料を受け入れ、成分調整、殺菌、発酵、混合、充填、冷却、包装までを行います。製造だけではなく、温度、微生物、アレルゲン、異物、包装材などを品質部門が確認し、冷蔵が必要な商品では倉庫・輸送温度まで管理します。
このカテゴリーの人間への貢献は、特別な病気を治すことではなく、毎日買える価格と量で栄養食品を供給することです。一方、日常的に摂取されるからこそ、砂糖、脂質、アレルゲン、表示、衛生管理の積み重ねが重要になります。
Specialized Nutrition:乳児と患者の「代替しにくい食品」を作る
Specialized Nutritionは2025年売上の34%を占めます。乳児用ミルクだけでなく、がん、脳卒中、加齢、嚥下・食欲低下などで通常の食事だけでは栄養を満たしにくい人向けの医療栄養を扱います。
2026年9月、DanoneはフランスSteenvoorde工場で7,000万ユーロを投じた医療栄養の新ラインを稼働させました。年間約2,000万リットルの経口栄養補助食品、約150種類のFortimel製品を生産できる計画で、400人超の直接雇用を持つ拠点です。
ここで重要なのは、「健康食品の売上を伸ばす」というだけではありません。病院や在宅医療で利用される製品は、味やマーケティングだけでは代替できません。必要な栄養成分、粘度、容量、アレルゲン、安全性を患者用途に合わせて安定供給する必要があります。
Waters:水源を守りながら大量に充填・配送する
Watersは2025年売上の18%です。evian、Volvic、AQUA、Bonafontなど、地域ごとに異なる水ブランドを持ちます。
水事業では、工場内の製造管理だけでなく、水源と流域の状態そのものが供給継続に関係します。Danoneは2025年に全151生産拠点でReduce、Reuse、Recycle、Reclaimの4R水戦略を展開したとしています。インドのLalru工場では過去5年で操業用水を半分以下にし、乳由来凝縮水の再利用で年間2万立方メートルを再生しています。
またDanone Communitiesが支援する社会事業は、2025年に40億リットル超の水を提供し、日々1,600万人超へ影響を与えたとDanoneは公表しています。
Danoneがないと何が困るのか
企業の人間貢献を考えるとき、「世界的大企業だから重要」という説明では不十分です。Danoneが実際に担う機能を、商品を使う人の側から見る必要があります。
乳児用ミルクは安全と供給の両方が必要
乳児用ミルクを利用する家庭では、急に特定製品が使えなくなると、月齢、アレルギー、消化特性、医療上の指示に合う代替品を探す必要があります。
2026年のセレウリド問題が示したのは、このカテゴリーで原料供給者の安全管理が一社の工場内部だけでは完結しないことです。Danoneの自社試験で問題が確認されなかったとしても、当局の基準変更や原料供給網の情報を踏まえ、特定ロットを市場から外す必要が生じました。
これはDanoneの存在価値と責任が同じ場所にある例です。多くの家庭へ供給できる規模は強みですが、同じ供給網の問題が広い市場へ波及するリスクにもなります。
医療栄養は病院と在宅の選択肢を増やす
Fortimelなどの医療栄養は、通常食を十分に取れない患者の栄養管理を補うために使われます。2026年のSteenvoorde増強は、欧州で医療栄養を供給する能力を増やす投資です。
高齢化や慢性疾患が増えるほど、医薬品だけでなく栄養管理の需要も増えます。医療栄養を大量生産できることは、患者の回復や生活を支える社会インフラの一部と考えられます。
水の事業は「ボトルを売る」だけではない
水道水を安全に飲める地域では、ボトル水は選択肢の一つです。一方、世界には安全な飲料水へのアクセスが限定される地域があります。
Danoneは商業ブランドとは別にDanone CommunitiesやWater Access Acceleration Fundを通じて安全な水へのアクセスを支援しています。商業的な水販売と社会支援を同じものとは扱いませんが、水資源・浄水・配送の知見が生活基盤へ応用されている点は人間貢献として評価できます。
代表業務の審査:原料から最終製品まで食品安全をつなぐ
Danoneの代表業務には、食品・栄養製品の安全管理を選びます。
食品メーカーでは、完成品を最後に検査するだけでは不十分です。原料供給者、輸送、工場、包装、保管、出荷まで複数段階で異常を防ぐ必要があります。
Danoneの151製造拠点では、2025年にFSSC 22000の第三者認証監査を144件実施し、対象拠点の98.6%が認証されていました。2024年の94.0%から改善しています。社内Food Safety監査も72件実施しました。
品質管理では、次のような仕事が含まれます。
- 原料の規格、微生物、化学的危害、アレルゲン等を確認する
- 原料供給者の監査・認証・是正を管理する
- 工場の殺菌、発酵、充填、洗浄条件を管理する
- 包装材から食品へ物質が移行しないかを確認する
- 製品ロットを追跡できる状態にする
- 市場・当局から新しい危害情報が出た際に追加分析する
- 必要に応じて出荷停止、回収、消費者窓口対応を行う
2026年の乳児用ミルク回収は、この仕組みが重要であることと同時に限界も示しました。
Danoneは1月23日の公表で、通常検査と追加分析では製品の安全・法令適合を確認していると説明しつつ、各国当局の新しい指針へ合わせて特定ロットを回収しました。一方、Reutersは中国の原料工場由来とされるアラキドン酸油のセレウリド問題でDanoneを含む複数社が影響を受けたと報じています。
つまり、完成品工場が管理されていても、外部原料のサプライヤーリスクをゼロにはできません。食品安全は「認証を持つか」だけではなく、問題が見つかった後に原料停止、ロット追跡、回収、原因究明をどこまで迅速に行えるかで評価する必要があります。
労働環境
Danoneの労働環境は、一般的な大企業の福利厚生だけを見ると高く評価しやすい会社です。しかし現行の企業審査では、制度より結果、平均値より対象範囲、グループ方針より現場実績を重視します。
賃金:全従業員の生活賃金以上を第三者認証
情報ランク:S相当|Fair Wage Networkによる独立認証。
Danoneは2025年、Fair Wage Networkの認証を取得し、100%のDanone従業員が各地域のliving wage、つまり基本的生活に必要な費用を賄う基準以上の賃金を受け取っていることを確認しています。
これは「最低賃金以上です」という会社の自己申告より強い根拠です。地域ごとの食費、住居、医療などを考慮した外部基準を使っているためです。
ただし、生活賃金以上であることと、会社の利益増加を毎年どの程度社員へ還元したかは別です。2025年のグループ全体のベースアップ率、賞与の平均支給率、利益配分の総額を全世界で統一した数値として確認できませんでした。
口コミでは給与を評価する声が多い一方、「市場より低い」「昇給が小さい」という声もあります。したがって賃金水準の底上げは高く評価しますが、利益還元まで満点とせず8/10とします。
男女賃金差と管理職
Danoneの2025年の管理職に占める女性比率は54%、Senior Leadershipでは45.5%と報告されています。
ジェンダー賃金差について、Danoneが年次給与レビューで用いる比較可能な指標では1.1ポイントまで縮小し、会社目標の±3ポイント以内に入っています。
この1.1ポイントは、単純に全男性平均と全女性平均を割った無調整値とは異なる企業内管理指標です。したがって「世界中の男女が完全に同額」とは書きません。一方、採用・昇進・給与レビューで継続的に差を確認している点は公平性で評価できます。
雇用の安定
2025年末の88,670人のうち、無期雇用は84,795人、有期雇用は3,875人でした。
約95.6%が無期雇用であることは安定性の強い材料です。一方、turnoverは17.0%です。国・職種ごとの差が大きいグローバル企業とはいえ、決して低い離職率ではありません。
GlassdoorやIndeedでは、成長機会を評価する声と、「昇進が遅い」「社内公募で進みにくい」「キャリアパスが不明確」とする声が混在しています。
無期雇用比率と公平性を評価しつつ、離職率とキャリア上の口コミを考慮して4/5です。
労働時間・休息
ここはDanoneの情報開示で最も弱い部分の一つです。
2024年のExtra-Financial Dataでは、Danone従業員の平均実労働週が最大48時間に収まっていた国の比率は84.6%でした。
これは全く情報がない会社より進んだ開示です。しかし逆に言えば、同指標では全ての国が48時間以内ではありません。また2025年について、同じグループ指標、月平均残業時間、年間総労働時間、有休取得率を比較可能な形で確認できませんでした。
Danoneは2025年のサステナビリティ報告で、過度な労働時間と不十分な休息を自社・上流・下流の人権上の負の影響として明示しています。課題を認識していることは評価できますが、認識と結果は別です。
一部の国・職種では柔軟勤務やハイブリッド勤務があり、口コミでもWork-Life Balanceは比較的高く評価されています。しかし世界88,670人の結果を一部オフィス職の制度で代表させないため4/10とします。
福利厚生と健康支援
Dan’Caresは、入院・手術、外来、妊産婦医療等の基本的医療保障を世界の従業員へ広げる制度です。
2025年は86,739人、全従業員の97.8%がDan’Cares基準を満たす医療保障を受けていました。54カ国でEmployee Assistance Programも導入されています。
さらにDanoneはDan’Lifeとして、Parental Policy、Caregiver Policy、Cancer/Critical Illness Policy、Dan’Caresを統合し、2030年までに対象社員の95%以上をカバーする目標を設定しました。2025年のDan’Life全体の基準値は25%で、制度拡張はこれからの段階です。
医療保障の実績は強い一方、世界全体の育児休業取得率、介護休業取得率、復職率を現行公開情報から一貫して確認できないため4/5です。
人権・ハラスメント・労使関係
2025年、Danone Human Rights Policyの従業員研修受講率は96.9%でした。100%目標には届かず、会社は研修延期など実務上の要因を理由として説明しています。
団体協約の適用率は世界で69%です。フランスでは従業員代表が取締役会へ参加する仕組みがあり、IUFとの共同訪問も長期にわたり実施されています。
Danone Ethics Lineは従業員・第三者が懸念を通報できる仕組みです。Anti-Harassment and Discrimination Policyもグループへ適用されています。
一方、サプライチェーン側の監査では2025年に587件のcritical non-conformitiesが確認されました。内訳は安全衛生51.8%、労働時間・報酬31.0%、児童労働0.7%、結社・団体交渉0.1%などです。Danoneは全件をフォローし、解決済みまたは是正中としています。
これはDanone社員の違反件数ではなく、サプライヤー監査の結果です。問題を発見・公開・是正している点は評価できますが、「供給網に人権問題がない会社」とは言えません。
また2026年4月、米国Danone North AmericaのMount Crawford拠点を巡り、Teamsters Local 29がNLRBへ不当労働行為の申立てを行い、評価時点で案件はOpenと表示されています。申立ては判断確定ではないため、違反認定として扱いません。
以上から人権・労使関係は4/5です。
従業員・元従業員の口コミ
情報ランク:C。
Danone S.A.単体と各国子会社の口コミを完全に切り分けることは困難です。そのため、ここではDanoneブランド全体とフランス勤務者の口コミを補助情報として扱い、子会社の口コミをDanone S.A.本社社員の事実にはしません。
Indeedフランスでは2026年9月時点で総合4.1/5、Work-Life Balance 3.8、給与・福利厚生4.0、雇用安定・成長3.6、Management 3.6、Culture 3.9です。
2026年の投稿では、チーム、研修、福利厚生、リモート勤務、学習機会を評価する声があります。一方、契約終了後の登用が少ないという声、業務負荷、キャリアの不透明さを指摘する声もあります。
GlassdoorでもDanone全体は4.1/5前後です。2026年の投稿には、ワークライフバランスや福利厚生を評価する一方、「給与が市場以下」「昇給が小さい」「昇進・社内異動が停滞」「大きな業務量に対して給与が低い」といった意見があります。
フランスの2026年8月投稿には新入社員支援と業務量への不満、9月投稿にはCSE福利厚生への期待外れという声もあります。
日本のOpenWork、転職会議、エン カイシャの評判でも「ダノン」の口コミは確認できますが、対象はダノンジャパン株式会社です。Danone S.A.とは別法人なので、Danone S.A.の採点には使いません。
口コミ全体は公式のLiving Wage認証と大きく矛盾するものではありませんが、「生活賃金以上」と「競合より高い給与」「毎年十分に昇給する」は別だと分かります。
Safety:33点/50点
賃金・利益の還元:8/10
Fair Wage Networkの独立認証により、2025年に100%の従業員がliving wage以上であることを確認できます。
さらに社員持株制度や業績連動報酬などの仕組みがあります。
一方、全世界のベースアップ率、平均賞与、利益の何%が従業員へ追加還元されたかまでは確認できません。
生活を支えられる賃金の底を第三者認証で確認できる点を大きく評価し8点です。
労働時間・休息:4/10
2024年は平均実労働週48時間以内の国が84.6%でした。
しかし2025年の同等指標、平均残業、年間総労働時間、有休取得率が不足しています。
課題を自社の重要人権リスクとして開示している点と、過去指標がある点を評価しますが、現在の結果を十分確認できないため4点です。
雇用の安定・待遇公平性:4/5
無期雇用約95.6%、比較可能なジェンダー賃金差1.1ポイント、女性管理職54%を評価します。
一方、turnover17%と、キャリア進展への不満を示す口コミがあります。
4点です。
福利厚生・育児・介護:4/5
Dan’Caresが97.8%の従業員をカバーし、EAP、Parental Policy、Caregiver Policy、Cancer/Critical Illness Policyを展開しています。
世界全体の育休・介護休業利用率と復帰率は不足するため4点です。
人権・ハラスメント・労使関係:4/5
人権研修96.9%、団体協約69%、Ethics Line、Anti-Harassment Policy、IUFとの対話、HRDDを評価します。
一方、供給網では安全衛生や労働時間・報酬を中心に多数のcritical non-conformitiesが実際に見つかっています。全件フォロー中である点は評価しますが満点にはしません。
4点です。
労働安全・健康:6/10
2025年は死亡事故0、休業1日以上180件、FR1 0.9、FR2 0.4、休業日数4,374日でした。
2024年は死亡2件、休業事故187件、FR1 0.9、休業日数5,492日です。
死亡0と休業日数減少は改善です。一方、FR1は横ばいで、2023年3件、2024年2件の死亡事故が直近履歴にあります。
WISE2では毎年およそ半数の製造・物流拠点等を監査し、従業員・外部作業者も安全管理範囲に含めています。
改善と開示を評価し6点です。
商品・サービスの安全:3/5
2025年は144件のFSSC 22000第三者監査を実施し、98.6%の対象拠点が認証されました。社内Food Safety監査は72件です。
一方、2026年1月には乳児用ミルクの特定ロットを回収しました。フランス当局はセレウリド基準を厳格化し、検察はDanoneを含む複数メーカーについて調査を開始しています。
Danoneは自社の追加分析では製品が安全・適合と説明していますが、外部原料の問題により実際に回収が必要になった以上、満点にはできません。
評価時点でDanone製品と乳児死亡との因果関係が確定したとは確認できないため、それを前提とした減点はしません。
3点です。
Innovation:19点/25点
作業負担・危険の削減:6/10
Danoneは工場・供給網へIndustry 5.0とAIを導入し、設備とアプリケーションをリアルタイムにつなぐデジタル基盤を展開しています。
Industry 5.0 Academyでは20,000人超の製造現場従業員を対象に、AI、データ活用、デジタルアシスタント等を学ぶ仕組みを整えています。2025年決算説明では、10の先行工場でデジタル工場モデルを試行していると説明しました。
AIを単に本社の資料作成へ使うのではなく、計画、設備、工場の意思決定へ入れていることは評価できます。
一方、「危険区域への立入りが何%減った」「工場従業員の手作業が何時間減った」「残業が何時間減った」といった人間側の成果KPIは十分に公開されていません。
6点です。
商品・サービスの改善:5/5
Danoneは乳製品、植物性、乳児栄養、医療栄養、水の全カテゴリーで継続的な商品改善を行っています。
2025年にはOneBiome LaboratoryをParis-Saclayに開設し、マイクロバイオーム、栄養、デジタルヘルスの研究を強化しました。
2026年にはSteenvoordeへ最大規模の医療栄養ラインを稼働させ、年間約2,000万リットル、約150製品の生産能力を追加しました。
またHuel買収を2026年9月に完了し、完全栄養食・機能性栄養分野を拡大しています。
研究が実際の商品・生産設備・買収戦略までつながっているため5点です。
改善成果の人間への還元:3/5
Danoneは2025~2030年に学習・能力開発へ1億ユーロを投じる計画で、2025年には100万時間超の学習が行われました。DanSkillsは全Danonerを対象とし、AI AcademyやIndustry 5.0 Academyも現場教育へつながっています。
Living Wage認証もあり、技術導入と人材育成を同時に進める姿勢は確認できます。
一方、AI・自動化によるコスト削減額のうち何%を賃金、労働時間短縮、休暇、人員増へ返したかという直接の還元KPIは確認できません。
3点です。
研究開発・現場改善の継続:5/5
OneBiome、医療栄養、発酵、植物性、AI、デジタル工場、水利用、再生農業など、複数年にわたる研究・改善を確認できます。
2025年から2026年にかけても、医療栄養工場増強、Industry 5.0、Huel、MADE Groupなど新しい成長領域へ継続投資しています。
5点です。
Protection:17点/25点
災害への備え・訓練:3/5
Danoneはグループリスク管理で気候・水・供給網・サイバーを重要リスクとして扱い、工場単位の安全リスク評価、WISE2監査、事業継続の計画を整備しています。
一方、全151拠点について災害訓練回数、非常電源の持続時間、各拠点のRTOを一貫して公開しているわけではありません。
制度はあるが復旧数値が不足するため3点です。
生産・物流・調達の代替:4/5
Danoneの151生産拠点は世界の主要市場に分散しています。一般的な乳製品・飲料は複数地域で生産できます。
一方、会社自身がUniversal Registration Documentで明記する通り、Specialized Nutritionは他カテゴリーより生産拠点が集中しています。乳児用ミルクの原料問題でも、共通サプライヤーの一原料が複数メーカーへ波及しました。
このため「151工場あるからどの商品も即代替可能」とは評価しません。
分散した製造網と調達管理を評価し4点です。
サイバー防衛・情報保護:4/5
DanoneはITとOperational Technologyの両方を対象に、NISTフレームワークへ沿ったグローバルサイバー戦略を実施しています。
具体的には、24時間365日のSecurity Operations Center、IT・OT継続監視、重要システムのリスク評価、サプライチェーンのサイバーリスク管理、脆弱性管理、全従業員の必須研修、Danone CERTを確認できます。
2026年7月には、ランサムウェア集団QilinがDanoneを被害者としてリークサイトに掲載し、221GBを盗んだと主張したとのセキュリティ媒体報道がありました。
しかし評価時点で、Danone公式、規制当局、主要通信社による侵害確定・被害範囲の確認を確保できません。攻撃者側の主張を「Danoneで221GB流出が確定した」とは扱いません。
対策は具体的ですが、バックアップ復元時間や重大インシデントの実績開示は限定的なため4点です。
供給継続・復旧能力:3/5
Danoneは151工場、世界の原料供給者、物流拠点を持ち、AIを用いた計画・供給網可視化を進めています。
2026年の乳児用ミルク問題では、対象を特定ロット・特定市場に限定して回収し、全製品停止ではなく供給を継続しました。これはトレーサビリティとロット単位の隔離が機能した例と見ることができます。
一方、同じ問題はSpecialized Nutritionの原料集中リスクも示しました。工場停止時に各主要SKUを何日以内に別工場へ切り替えるか、原料Aが使えない場合に何日分の代替在庫を持つかといったRTO・RPO型の数値は公開されていません。
3点です。
危機時の市民への対応:3/5
Danoneグループには、災害時に水・栄養製品を提供する実績があります。
2026年8月、Danone Indonesiaはインドネシア・NTT地震の被災者に、10億ルピアの寄付、約53,000本の飲料水、栄養製品を赤十字と連携して提供しました。
2025年末から2026年には、スマトラの洪水被災地で飲料水、栄養、給水、医療施設向け水処理設備の復旧支援も行っています。
これらはDanone S.A.本社が直接配布した事例ではなく、地域子会社によるグループ活動です。しかし食品・水会社の資源を危機時に地域へ戻した実績としてProtectionへ反映します。
恒常的な全世界共通の災害物資供給協定や、支援到達人数の一貫したKPIは不足するため3点です。
SNS・匿名掲示板の確認結果
口コミサイトとは別工程で、X、Reddit、5ちゃんねる、爆サイ等を検索しました。
| 媒体 | 確認結果 |
|---|---|
| X | Danone公式、ブランド、労働・製品関連の投稿は多数あるが、Danone S.A.社員と身元・勤務関係を確認でき、賃金・残業の現在値を裏づける一般投稿は確保できず |
| Danoneの勤務経験を語る古い投稿や、2026年のHuel買収に対する消費者反応を確認。勤務実態の現在KPIとしては使用せず | |
| 5ちゃんねる | 日本のダノン製品・競馬等の同名文脈が多く、Danone S.A.本体の現在の労務へ帰属できる有用投稿を確認できず |
| 爆サイ | Danone S.A.本体へ帰属できる現在の労務情報を確認できず |
| Danone公式・社員のAI、人材育成、研究開発発信は確認。企業公式・関係者情報として扱い、匿名口コミとは分離 |
SNSで有用情報が見つからなかったこと自体は加点・減点に使っていません。
Huel買収についてRedditでは「品質や価格が悪化しないか」と懸念する利用者が多く見られますが、買収直後の将来予想であり、Danoneが実際に品質を下げた証拠ではありません。評価には使用しません。
重大事故・回収・行政・法的案件
2026年1月:乳児用ミルクの特定ロット回収
Danoneは2026年1月23日、各国当局の新しい指針に対応し、乳児用ミルクの「非常に限定された特定ロット」を対象市場から回収すると発表しました。
Reutersによると、セレウリド陽性が確認された中国製アラキドン酸油原料が問題の中心で、Danone、Nestlé、Lactalisなど複数メーカーへ影響しました。
ドイツではAptamilの複数ロットが回収対象となりました。
2026年2月:フランス検察が複数メーカーを調査
パリ検察は、Danoneを含む5社の乳児用ミルク汚染・回収対応について調査を開始しました。
消費者団体や家族からの申立てがあり、詐欺や健康安全上の違反可能性等を調べています。
評価時点では調査中です。Danoneが違法行為をしたと確定したわけではありません。
また乳児死亡との関連についても、複数の事案が調べられていますが、Danone製品が死亡原因であると確定した情報は確認できません。
2026年5月:回収対応の速度を巡る追加 scrutiny
欧州メディアの共同調査を受け、ReutersはDanoneとNestléの回収対応について追加 scrutiny が生じていると報じました。
Danoneは当局への協力、予防的回収、品質検査の強化を説明しています。
ここでも、批判報道の存在と、法的な違反認定を区別します。
2026年4月:Danone North Americaの労働事件は審理中
米NLRBには、Danone North AmericaのMount Crawford拠点を対象に、組合側からSection 8(a)(5)、8(a)(1)の申立てが提出されています。
評価時点でステータスはOpenです。Danone S.A.自身ではなく米子会社の案件であり、違反認定前なので、重大な確定不祥事としては採点していません。
2026年7月:Qilinのサイバー攻撃主張は未確認
QilinがDanoneをリークサイトへ掲載したとのセキュリティ媒体報道があります。
一方、Danone公式や主要規制当局の確定公表を確認できないため、本記事では「攻撃者の主張」としてのみ記録します。
主なニュース・最近の動き
2026年9月15日:Steenvoordeでフランス最大の医療栄養ラインを稼働
Danoneは7,000万ユーロを投じ、Steenvoorde工場に年間約2,000万リットル、約150製品を生産できる医療栄養ラインを稼働しました。
工場は400人超を直接雇用し、400を超える酪農家と連携しています。
生産能力増加だけでなく、高齢化・慢性疾患に伴う低栄養へ対応する供給基盤の強化として評価できます。
2026年9月4日:Huel買収を完了
Danoneは完全栄養食企業Huelの買収完了を発表し、2026年9月1日から連結対象としました。
HuelのD2C、コミュニティ、完全栄養食と、Danoneの研究・生産・世界流通を組み合わせる狙いです。
買収後の品質、雇用、価格への影響はまだ評価時点で判断できないため、現段階では事業ポートフォリオとInnovationの材料に限定します。
2026年7月29日:上期売上139億3,600万ユーロ
2026年上期は売上139億3,600万ユーロ、LFL成長3.5%、Recurring Operating Margin 13.3%でした。
第2四半期は4.2%成長した一方、中国の成長は第1四半期10.3%から第2四半期3.6%へ鈍化し、乳児用ミルク市場の競争が懸念材料となりました。
2026年6月:MADE Group買収を発表
オーストラリアのMADE Group買収と、Saputo Dairy Australiaとの乳製品JV残余49%取得を発表しました。
高たんぱく飲料、腸内健康、ココナツ製品など、アジア太平洋の健康栄養分野を強化する取引です。
2026年1月:乳児用ミルク回収
2026年のDanone評価で最も重要なネガティブニュースです。
特定原料に関連した国際的なセレウリド問題を受け、Danoneも対象ロットを回収しました。その後フランス検察の調査にもつながっています。
回収自体を「安全管理が機能した証拠」とだけ見ることも、「Danoneが死亡事故を起こした」と断定することも避け、外部原料管理の弱点が顕在化した事案としてSafetyへ反映しました。
項目別得点
| 評価軸 | 項目 | 得点 | 評価理由 |
|---|---|---|---|
| Safety | 賃金・利益の還元 | 8/10 | Fair Wage Networkが100%の従業員をliving wage以上と認証。全社ベア・賞与・利益還元率は不足 |
| Safety | 労働時間・休息 | 4/10 | 2024年は84.6%の国で平均週48時間以内。2025年の実残業・総労働時間・有休取得率は不足 |
| Safety | 雇用の安定・待遇公平性 | 4/5 | 無期雇用約95.6%、賃金差1.1ポイント、女性管理職を評価。turnover17%は課題 |
| Safety | 福利厚生・育児・介護 | 4/5 | Dan’Cares97.8%、EAP、Dan’Lifeを評価。世界共通の休業利用・復職KPIは不足 |
| Safety | 人権・ハラスメント・労使関係 | 4/5 | 人権研修96.9%、団体協約69%、Ethics Line、HRDDを評価。供給網のcritical findingsは継続課題 |
| Safety | 労働安全・健康 | 6/10 | 2025年死亡0、休業事故・休業日減を評価。FR1横ばい、2023~2024年に計5件の死亡事故 |
| Safety | 商品・サービス安全 | 3/5 | FSSC22000 98.6%、内部監査を評価。2026年乳児用ミルク回収と検察調査を反映 |
| Safety小計 | 33/50 | ||
| Innovation | 作業負担・危険の削減 | 6/10 | Industry5.0、AI、リアルタイム供給網、20,000人超の現場教育。削減時間・事故減のKPI不足 |
| Innovation | 商品・サービス改善 | 5/5 | 医療栄養、OneBiome、植物性、機能性栄養、Huel等で継続改善 |
| Innovation | 改善成果の人間への還元 | 3/5 | 1億ユーロ学習投資、100万時間超の学習、living wageを評価。生産性利益の時短・賃金還元は不明 |
| Innovation | 研究開発・現場改善の継続 | 5/5 | R&I、医療栄養ライン、AI Academy、Industry5.0等が継続 |
| Innovation小計 | 19/25 | ||
| Protection | 災害への備え・訓練 | 3/5 | グループリスク管理、WISE2、拠点リスク評価を評価。全拠点の訓練・非常電源・RTOは不足 |
| Protection | 生産・物流・調達の代替 | 4/5 | 世界151拠点と広域調達を評価。Specialized Nutrition集中と共通原料リスクを減点 |
| Protection | サイバー防衛・情報保護 | 4/5 | NIST、24/7 SOC、IT・OT監視、CERT、必須研修を評価。未確認ランサム主張と復旧KPI不足 |
| Protection | 供給継続・復旧能力 | 3/5 | 世界製造網、AI計画、ロット追跡を評価。SKU別代替時間・原料RTOが不明 |
| Protection | 危機時の市民対応 | 3/5 | 2025~2026年の水・栄養支援、Danone Communitiesを評価。地域法人実績中心で全社KPI不足 |
| Protection小計 | 17/25 | ||
| 総合 | 69/100 | シビックランクC |
総合評価
Danone S.A.は、人間への貢献という企業審査の基準と相性のよい事業を持っています。
ヨーグルトや植物性食品だけでなく、乳児用ミルク、患者向け医療栄養、水という、人の健康と生活に直接触れる商品を世界規模で供給しています。
その中でも最も高く評価できるのは、労働面では生活賃金、事業面では医療栄養と研究開発です。
2025年、Fair Wage Networkが全Danone従業員についてliving wage以上であることを認証しました。食品企業の労働評価で、単に「福利厚生が充実」「平均給与が高そう」ではなく、世界の全拠点を地域生活費と比較した外部認証があることは大きな強みです。
Dan’Caresも97.8%へ届いています。人権研修96.9%、団体協約69%、無期雇用約95.6%、ジェンダー賃金差1.1ポイントなど、社会面は比較的多くの数字を公開しています。
Innovationでも、Steenvoordeの医療栄養ライン、OneBiome、Industry 5.0、AI Academy、Huel買収など、研究・技術・事業ポートフォリオを継続的に変えています。
一方、Cランクにとどまる理由は三つあります。
第一は労働時間です。
Danoneは2024年に「平均実労働週48時間以内の国84.6%」という珍しく具体的な指標を公開しています。しかし2025年の実残業、年間総労働時間、有休取得率を世界で比較できる形では確認できません。
Living Wageを第三者認証できる会社だからこそ、次は「何時間働いてその賃金を得ているのか」を同じ解像度で見せる余地があります。
第二は労働安全です。
2025年に死亡事故0へ改善したことは重要です。しかし2023年3件、2024年2件の死亡事故があり、2025年も休業1日以上の事故180件、FR1 0.9です。
事故が多いと一言で決めるのではなく、死亡ゼロを継続し、FR1を実際に下げられるかを今後確認する必要があります。
第三は乳児用ミルクの回収です。
Danoneは高いFSSC 22000認証率と多数の内部監査を持っています。それでも外部原料から生じた国際的なセレウリド問題で特定ロットを回収しました。
これは食品安全の難しさを示します。自社工場だけを安全にしても、原料供給者の一段上流で問題が起きれば、最終製品まで影響します。
一方、この件でDanone製品が乳児死亡を引き起こしたと確定した情報は評価時点で確認できません。検察調査は調査として扱い、未確定の責任を事実に変えないことも重要です。
Protectionでは、151の製造拠点、世界供給網、水資源管理、24時間SOC、Danone CERT、災害時の水・栄養支援などを評価しました。
ただしSpecialized Nutritionは生産集中が強く、2026年の回収は共通原料の集中リスクも示しています。拠点数が多いことをそのまま「どの商品も代替できる」とは評価していません。
Danoneが次に評価を上げるために重要なのは、次の情報です。
- 2025~2026年の世界平均残業時間、年間総労働時間、有休取得率
- 国・職種別で48時間超労働が残る範囲と改善実績
- ベースアップ率、平均賞与、利益還元の継続KPI
- 2026年以降も死亡事故0を継続し、FR1を0.9から下げること
- 乳児用ミルク問題の最終調査結果、原料供給者管理の再発防止策
- 検察・規制当局調査の最終結果
- 重要製品ごとの代替生産拠点と切替所要時間
- 原料供給停止時の代替調達・安全在庫の具体的KPI
- サイバー攻撃時の復旧時間、バックアップ復元訓練の結果
- AI・自動化によって社員の作業時間、危険作業、残業をどれだけ減らしたか
- 生産性向上分を賃金・休暇・人員配置へどう還元したか
Danoneは、社会的な理念だけでなく、living wage、安全、人権、製品栄養、研究開発で比較的多くの数値を出している会社です。
だからこそ、不足している労働時間や危機復旧の数字をさらに公開すれば、「人への貢献」をより強く検証できる企業になります。
以上から、Safety 33点、Innovation 19点、Protection 17点、総合69点/100点、シビックランクCとします。
出典一覧
1.Danone Universal Registration Document 2025
2.Danone Integrated Annual Report 2025
3.Danone 2026 Interim Financial Report / H1 2026 Results
4.Danone 2025 Full-Year Results
5.Danone Careers「Rewards」
6.Fair Wage Network認証に関するDanone 2026 remuneration publication
7.Danone Impact Journey Phase 2
8.Danone Sustainable Sourcing / Human Rights Due Diligence disclosures
9.Danone WISE2 / Health and Safety metrics 2025
10.Danone Food Safety / FSSC 22000 metrics 2025
11.Danone「targeted recall of specific infant formula batches」2026年1月23日
12.Reuters「Danone recalls certain baby formula batches」2026年1月23日
13.Reuters「French prosecutor opens probe into baby milk brands」2026年2月13日
14.Reuters「Nestlé and Danone face fresh scrutiny over infant formula recalls」2026年5月19日
15.フランス農業・食料主権省 乳児用ミルク・セレウリド基準強化 2026年1月30日
16.Conseil d’État 乳児用ミルク健康勧告判断 2026年3月3日
17.Danone Cybersecurity Risk disclosures 2025
18.Danone CERT RFC 2350
19.Cybernews QilinによるDanone攻撃主張の報道 2026年7月、未確認情報として使用
20.Danone Industry 5.0 Academy / Digital Transformation
21.Danone「AI and resilient supply chains」
22.Danone Steenvoorde medical nutrition line 2026年9月15日
23.Danone Huel acquisition completion 2026年9月4日
24.Danone MADE Group acquisition announcement 2026年6月
25.Reuters Danone H1 2026 / China slowdown 2026年7月29日
26.NLRB Danone North America Case 05-CA-384483、評価時点Open
27.Indeed Danone employee reviews、France and global
28.Glassdoor Danone employee reviews、France and global
29.OpenWork・転職会議・エン カイシャの評判、ダノンジャパンは別法人確認用のみ
30.ANTARA Danone Indonesia NTT earthquake relief 2026年8月26日
31.ANTARA Danone Indonesia flood/water recovery support 2025~2026年
32.Danone Communities / Social Innovation Funds
33.X、Reddit、5ちゃんねる、爆サイ等の対象名検索
情報ランクの基準
| 情報ランク | 基準 |
|---|---|
| S | 公的機関の資料で直接確認できる情報、または独立した第三者による検証・監査・認証等の裏づけがある情報。裏づけの対象範囲に限る |
| A | 企業自身の公式発表、報告書、採用情報など。独立した裏づけまでは確認していない企業側の説明・自己申告 |
| B | 役職や立場が確認できる関係者への取材・発言、労働組合等の当事者資料、記者による直接取材など |
| C | 一般社員・元社員・契約社員・パート等の勤務経験に基づく口コミ |
| D | X等の一般SNS投稿で、発信者の立場や内容の裏づけが十分でない情報 |
| E | 匿名掲示板等で、発信者の身元・関与・経緯をさらに確認しにくい情報 |
情報ランクは情報の出どころと裏づけの強さを示すもので、企業そのものの良し悪しを示す総合シビックランクとは異なります。企業公式の発信はA、公的機関の判断や第三者認証で直接確認できる範囲はSとして扱います。口コミやSNSは現場感を補うために使用しますが、公式KPIや公的事実の代用にはしません。

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