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パワハラは本当に仕事の効率を上げるのか?軍事戦争と経済戦争から考える「強い組織」

職場でミスをしたとき、上司から強く怒鳴られた経験はないでしょうか。

あるいは、自分が怒鳴られたことはなくても、

「最近は何でもパワハラになる」

「昔はもっと厳しかった」

「優しくしているだけでは人は動かない」

「ある程度怖い上司がいた方が仕事は回る」

という話を聞いたことがあるかもしれません。

確かに、怒られれば人は動きます。

「早くしろ」と怒鳴られれば、その瞬間だけ作業速度が上がることもあるでしょう。

すると、こんな疑問が生まれます。

パワハラは人道的に問題だから禁止されているだけで、純粋に仕事の効率だけを考えれば、むしろあった方がいいのでしょうか。

この疑問を考えるとき、比較してみたいのが「軍事戦争」と「経済戦争」です。

ここでいう経済戦争とは、国家間の経済制裁だけを指すものではありません。

企業同士が市場を奪い合い、より安く、より早く、より高品質な商品やサービスを提供しようと競争する社会を、この記事では広い意味で「経済戦争」と呼びます。

軍事戦争では、一瞬の判断の遅れが死につながることがあります。

厳しい規律や、強いストレスの中でも命令を理解して行動できる訓練が必要になることは理解できます。

しかし、会社でも同じなのでしょうか。

人を恐怖で動かすことは、本当に企業を強くするのでしょうか。

研究を調べていくと、少なくとも「厳しくすればするほど組織は強くなる」という単純な話ではないことが見えてきます。

目次

軍隊に厳しい訓練が必要でも、体罰やいじめが必要とは限らない

まず最初に区別しなければならないことがあります。

軍隊に厳しい訓練が必要であることと、軍隊に体罰やいじめが必要であることは同じではありません。

米陸軍の規則では、作戦や作戦訓練に伴う肉体的・精神的な困難、正規の身体訓練、必要な矯正訓練などと、ヘイジングやいじめを明確に区別しています。

肉体的・精神的に厳しい訓練であっても、軍事的な目的があり、適切な指揮系統の下で実施されるものは認められます。

一方で、人を殴る、辱める、苦痛を与える、排除するなどのヘイジングやいじめは、軍隊の価値観に反するものとして禁止されています。

これは重要な違いです。

戦場が過酷なのだから、訓練でも仲間を暴力で支配しなければならない、という話にはなっていません。

むしろ必要なのは、

「過酷な状況でも任務を遂行できる訓練」

であって、

「仲間から暴力を受ける訓練」

ではないわけです。

ストレス下で能力を発揮する訓練そのものには研究上の根拠があります。

ストレス接種訓練について37研究、1,837人を統合したメタ分析では、不安を減らすだけでなく、ストレス下でのパフォーマンスを向上させる効果が確認されました。

つまり、

厳しい状況に備えること

と、

人間同士を暴力的な関係にすること

は分けて考える必要があります。

軍隊でさえ「仲間からのいじめ」は強さにつながっていない

さらに興味深い研究があります。

戦闘地域へ派遣された経験のある米陸軍兵士1,463人を追跡した研究では、派遣中にいじめやヘイジングを経験した兵士は、その後の大うつ病、PTSD、自殺念慮、物質使用障害などのリスクが高くなっていました。

例えば大うつ病については、他の要因を調整した後でも、いじめ・ヘイジング経験者のオッズは約2.9倍でした。

別の現役軍人944人を対象とした研究でも、軍隊内のヘイジングは怒りや抑うつ症状を通じて自殺念慮と関連していました。

反対に、軍隊では仲間同士の「凝集性」が重要だという研究があります。

軍事組織の凝集性研究を統合した古典的なメタ分析では、凝集性と集団パフォーマンスの間に正の関連が確認されました。軍隊における縦断研究をまとめた後年の系統的レビューでも、複雑で相互依存性の高い任務を遂行する軍事組織にとって、チームワークや凝集性が重要な研究テーマであることが確認されています。

ここから一つのことが分かります。

軍隊は厳しくなくてよい、という話ではありません。

しかし、

「厳しさ=仲間への暴力」

ではありません。

むしろ命がかかった組織だからこそ、仲間同士が信頼し、連携して動けることが重要になります。

だとすれば、命を奪い合うことを目的としていない企業で、社員同士を恐怖によって動かす必要は本当にあるのでしょうか。

それでも「怒鳴った方が人は動く」という感覚には理由がある

ここで、パワハラを肯定する側の感覚も無視してはいけません。

「怒鳴ったら実際に仕事が速くなった」

という経験を持っている管理職は、本当にいるでしょう。

恐怖には人を動かす力があります。

恐怖を使った説得について127本の論文、248サンプル、合計2万7,372人を統合したメタ分析では、恐怖を喚起するメッセージは、平均すると態度や意図、行動を変化させる効果を持っていました。

特に、何度も続ける行動よりも、一度だけ行えばよい明確な行動を促す場合に効果が強くなる傾向がありました。

ただし、この研究は職場で上司が部下を怒鳴る実験ではありません。

主に健康行動などを対象とした「恐怖訴求」の研究です。

したがって、「パワハラには効果がある」と直接証明するものではありません。

それでも、

危険を強く知らせる

今すぐ決められた行動を取らせる

という場面では、恐怖が行動を促すことがあるという点は参考になります。

例えば、

「今すぐそこから離れろ!」

「機械を止めろ!」

「避難しろ!」

という緊急時に、長い対話をしている暇はありません。

また、作業者が怒鳴られた直後に手を速く動かすこともあり得ます。

だからこそ、

「厳しくした方が人は動く」

という考えは完全な幻想とは言えないのです。

問題は、その瞬間に人を動かすことと、会社全体の生産性を高めることが同じなのかという点です。

恐怖は短期的に人を動かしても、仕事全体では逆効果になり得る

2024年に発表された「恐怖と仕事のパフォーマンス」に関するメタ分析では、恐怖と三つの仕事上の成果との関係が調べられました。

一つ目は、本来の仕事をどれだけ遂行できるかというタスクパフォーマンス。

二つ目は、同僚を助ける、自発的に仕事を引き受けるなどの組織市民行動。

三つ目は、遅刻、サボり、攻撃などの反生産的行動です。

結果は、

恐怖が強いほどタスクパフォーマンスが低い。

恐怖が強いほど自発的な協力行動が少ない。

恐怖が強いほど反生産的行動が多い。

というものでした。

補正後の相関は、タスクパフォーマンスで約マイナス0.13、組織市民行動で約マイナス0.07、反生産的行動で約プラス0.30でした。また、その一部はストレスによって説明されていました。

ここが重要です。

怒鳴れば、その瞬間だけ手を速く動かすかもしれません。

しかし会社が必要としているのは、数分間だけ速く動く人ではありません。

毎日働く。

周囲と協力する。

問題を報告する。

新人を助ける。

改善案を出す。

ミスを認める。

必要なら上司にも「これは危険です」と言う。

こうした行動を継続する人です。

その全体を考えると、恐怖による管理には大きな代償がある可能性があります。

職場の攻撃的なコミュニケーションは15万人規模の研究でもマイナス

さらに大規模な研究があります。

2025年に『Journal of Applied Psychology』に掲載されたメタ分析では、職場での攻撃的行動に関する405本の実証研究、471サンプル、36の国・地域、合計14万9,341人のデータが統合されました。

研究では、職場で攻撃を受けることが、

仕事そのものの遂行、

組織や同僚への協力行動、

逸脱行動

に悪影響を与える仕組みが分析されています。

特に、攻撃を受けることで生じる否定的感情、自分に対する評価の低下、人間関係の悪化などが、仕事上の成果へ影響していました。

2026年に発表された虐待的リーダーシップについてのメタ分析でも、39研究、3万2,909人を対象として、虐待的なリーダーシップは従業員の心理面だけでなく、職務パフォーマンスや組織へのコミットメントに不利な関係を持つと報告されています。

ただし、この分野では研究間のばらつきも大きく、「どの職場でも同じ大きさの悪影響が起きる」とまでは言えません。

少なくとも現在の研究から、

「パワハラは人道的には悪いが、生産性には有効である」

と一般化することは難しいでしょう。

むしろ、人道上の問題だけでなく、仕事の成果という観点からも疑問が大きいのです。

なぜ暴力的な会社では問題が見えなくなるのか

例えば工場で、作業者が設備の異音に気付いたとします。

上司へ報告すると、

「そんなことでラインを止めるな」

「余計なことをするな」

と怒鳴られる職場だったらどうなるでしょうか。

一度怒られれば、次から黙るようになるかもしれません。

すると表面上は効率的です。

報告に時間を取られません。

会議もしません。

ラインも止まりません。

しかし、本当に設備が故障しかけていたらどうでしょうか。

小さな異常を無視した結果、大きな事故や長時間の停止につながる可能性があります。

これは製造業だけの話ではありません。

営業でも、

「この商品には問題があります」

と言えなくなる。

医療でも、

「この処置は危ないのではないか」

と言えなくなる。

ITでも、

「このシステムには重大な脆弱性があります」

と言えなくなる。

パワハラが生産性を上げているように見える一つの理由は、異論や問題報告そのものを消してしまうことにあるのかもしれません。

問題がなくなったのではありません。

問題を言う人がいなくなっただけです。

現代の経済戦争では「言われた通りに動く人」だけでは勝てない

ここで軍事戦争と経済戦争の違いが見えてきます。

軍事では、緊急時に命令へ即座に反応しなければならない場面があります。

もちろん現代の軍隊でも現場判断や情報共有は重要ですが、少なくとも銃弾が飛んでくる瞬間に、

「この命令について全員で30分議論しましょう」

とはできません。

一方、会社が日常的に行っている仕事の多くは違います。

より効率的な作業方法を考える。

不良品の原因を探す。

顧客の不満を見つける。

新しい商品を開発する。

AIやロボットを導入する。

設備の危険を発見する。

他部署と情報を共有する。

これらは、単純に命令へ従えば解決する仕事ではありません。

現場の人が持っている情報を出し、それを他の人の知識と組み合わせなければならない仕事です。

だから「経済戦争」において本当に重要なのは、

誰が一番怖い上司なのか

ではなく、

誰が一番多くの人間の知識を引き出し、協力させられるのか

ではないでしょうか。

では、パワハラをなくして「優しい会社」にすればいいのか

ここで別の問題があります。

恐怖が悪いのであれば、誰も怒らず、何を言っても否定されない会社にすれば生産性は最大になるのでしょうか。

研究は、そこまで単純ではないことも示しています。

職場の「心理的安全性」について、136の独立サンプル、2万2,000人以上、約5,000グループを統合したメタ分析では、心理的安全性が学習行動やタスクパフォーマンスなどの重要な職場成果と関係することが確認されています。

心理的安全性とは、簡単に言えば、

「こんなことを言ったら馬鹿にされる」

「ミスを報告したら責められる」

「反対意見を言ったら干される」

といった対人関係上の恐怖を持たずに発言できる状態です。

しかし2023年の研究では、心理的安全性が高ければ高いほど、必ずパフォーマンスが上がるわけではないことも示されています。

特に定型的な業務では、心理的安全性が非常に高い場合にパフォーマンスが低下するケースがありました。

一方、「集団としての責任」が高ければ、その低下を抑えられることも示されました。

これは非常に重要です。

必要なのは、

恐怖のある職場

か、

何をしても許される職場

か、

という二択ではありません。

安心して話せる。

しかし、仕事の目的は明確である。

自分もその仕事へ参加する。

仲間と結果を出す。

この両立が必要なのではないでしょうか。

話し合いも「量」より「質」が重要

「では会議を増やしましょう」

という話でもありません。

会議が増えれば生産性が上がるわけではないからです。

チームコミュニケーションとパフォーマンスを調べたメタ分析では、コミュニケーションはチームの成果と関連していました。

しかし、単純に会話の回数を増やすことより、コミュニケーションの質の方が強く関係していました。

特に、単に情報を渡すだけでなく、複数の情報について掘り下げ、意味を考え、結び付ける「information elaboration」が強い関連を示しています。

さらに2024年のチーム・リフレクシビティに関するメタ分析では、自分たちの目標や方法、結果を振り返って改善するチームは、パフォーマンスが高い傾向を示しました。

そして、リーダーがメンバーを議論や意思決定へ参加させることが心理的安全性を高め、チームの振り返りを促す経路も示されています。

つまり、

「上司が怒鳴る」

から、

「みんなで仲良く雑談する」

へ変えればいいのではありません。

必要なのは、

仕事上の問題について、安心して、主体的に、効率よく話し合える仕組み

なのです。

日本でもパワハラを経験したと答える人は減っている

日本の職場も変わりつつあります。

厚生労働省の調査では、2020年度調査で「過去3年間に勤務先でパワハラを一度以上経験した」と回答した労働者は31.4%でした。

2023年度調査では19.3%となっています。

単純計算では12.1ポイントの低下です。

ただし、この数字だけから「日本のパワハラそのものが約4割減った」と断定することはできません。

調査時期も異なり、社会環境も変化しています。

また企業側の相談件数と労働者自身の被害経験率は同じ指標ではありません。

したがって正確には、

「厚労省の労働者調査では、過去3年間にパワハラを経験したと回答した割合が31.4%から19.3%へ低下した」

と表現するべきでしょう。

それでも、職場での暴力的なコミュニケーションを当然とする時代から離れようとしていることは読み取れます。

では、その先に何を作るのでしょうか。

パワハラをなくした後に残る「どうやって人を動かすのか」という問題

ここで経営側の立場に立ってみましょう。

パワハラをやめる。

怒鳴らない。

威圧しない。

失敗した人を責めない。

それはいい。

では、どうやって仕事を前へ進めるのでしょうか。

全員が、

「私は分かりません」

「誰かがやってください」

と言うようになれば、会社は動きません。

心理的安全性だけでは足りないという研究結果も、この問題を示しています。

必要なのは、恐怖の代わりになる「主体性を生み出す仕組み」です。

そこでシビックドライブでは、GVSを会社の業務にも使えないかと考えています。

業務用GVSでは「誰が悪いか」ではなく「私は何をするか」を話す

GVSは「合論型投票システム」です。

その中心にある合論では、発言を実行案と要請案に分けます。

アプリ内では、実行案をDrive、要請案をSupportと呼びます。

例えば工場で、

「このラインは無駄が多すぎる。管理職は現場を分かっていない」

という不満が出たとします。

これをそのまま上司批判として終わらせません。

例えばDriveなら、

「私は今週、ラインで発生している待ち時間を記録し、原因と結果をまとめて共有します」

という形に変えます。

Driveは「私は○○します」という形で、自分が実行する案を出し、その成果を他の人へ共有するところまで含めます。

さらに、そのDriveに伴って、

「同じ工程で待ち時間が発生したとき、時間と原因を記録してほしい」

と要請することもできます。

これがSupportです。

Supportは単なる「応援」ではありません。

Driveに伴って、他者に何をしてほしいのかを具体的に示す要請案です。

こうすると、

管理職が悪い。

現場が怠けている。

という善悪論だけではなく、

「では、自分たちは何をするのか」

という話へ移れます。

Supportは「仕事を押し付ける仕組み」ではなく仲間を作る仕組み

Supportには、単なる人手不足の補完以上の意味があります。

一人のDriveだけでは、改善がその人だけの活動で終わる可能性があります。

しかし、そのDriveに伴って他の人へ具体的な要請を出すと、別の人も同じ問題へ参加できます。

自分だけが気にしていた問題が、

「自分たちの工程の問題」

へ変わります。

一人の課題が、共通の課題になります。

そして複数の人が同じ問題へ参加することで、一人では生まれなかった改善が生まれる可能性があります。

GVSが狙っているのは、単なる「優しいコミュニケーション」ではありません。

人を非難によって動かす代わりに、

主体性と協力によって動かす

ことです。

怒られないから黙るのではなく、怒られないから問題を言える

パワハラ型の職場では、

「間違えたら怒られる」

という恐怖によって仕事を動かします。

業務用GVSで目指すのは反対です。

間違った案を出してもいい。

実現できないDriveを出してもいい。

その発言だけを理由に非難されない。

だから問題を隠す必要がない。

そのうえで、

何をしたいのか。

何を調べるのか。

何を変えるのか。

誰に何をしてほしいのか。

を明確にしていく。

これは、

心理的安全性だけを高めて責任をなくす

という考えではありません。

むしろ、

恐怖による強制を取り除いたうえで、一人ひとりを仕事の主体へ戻す

という考えです。

少人数で話すことにも意味がある

業務用GVSでも、大人数の会議だけでは主体性を持ちにくいという問題があります。

50人の会議であれば、ほとんど話さず終わる人がいても不思議ではありません。

しかし数人のグループなら、自分も参加者になります。

これは研究結果とも完全に同じとは言えませんが、参加型の意思決定やチームの振り返り、心理的安全性がパフォーマンスへつながるという研究とは方向性が一致しています。

業務用GVSでは、こうした研究で有効性が示されている要素を、一つの運用システムとして組み合わせることを目指します。

GVSを使えば生産性が上がると証明されたわけではない

ここは明確にしておく必要があります。

業務用GVSそのものについて、

「導入すれば生産性が何%上がる」

という研究結果はまだありません。

GVSそのものが実証された制度ではないからです。

したがって、

「パワハラをGVSへ置き換えれば必ず企業の業績が上がる」

とは言えません。

ただし、GVSが取り入れようとしている要素については研究があります。

心理的安全性。

質の高いコミュニケーション。

メンバーの議論や意思決定への参加。

チームでの振り返り。

情報共有。

主体的な協力行動。

こうした要素と仕事の成果との間には、多くの研究で関連が確認されています。

反対に、恐怖、職場での攻撃、虐待的なリーダーシップには、仕事の成果や協力行動に不利な研究が蓄積されています。

だから業務用GVSは、

「すでに効果が証明された完成品」

ではなく、

「研究上有望な要素を組み合わせ、本当に生産性を高められるか検証する価値のある仕組み」

と位置付けるのが適切でしょう。

軍事戦争と経済戦争では「強さ」の意味が違う

ここまで考えると、軍事戦争と経済戦争には重要な違いがあります。

軍事戦争では、敵を攻撃する能力が必要です。

敵を欺くこともあります。

敵の行動を妨害することもあります。

そして緊急時には、短時間で命令を伝え、即座に動かなければならない場面があります。

しかし、だからといって同じ論理を仲間同士に適用する必要はありません。

実際、軍隊自身もヘイジングやいじめを禁止し、凝集性を重要視しています。

まして経済活動では、企業の競争力の大きな部分を、

知識、

改善、

発明、

技術、

情報共有、

顧客理解、

協力

が作ります。

社員同士を敵のように扱う必要はありません。

むしろ、競争相手と戦う会社だからこそ、内部では協力できた方が強い。

そう考えることもできます。

パワハラの問題は「かわいそうだからやめよう」だけではない

パワハラをなくす理由として、人権や心の健康を挙げることは当然重要です。

しかし、それだけでは、

「綺麗事では会社は回らない」

という反論が残ります。

だからもう一つの問いを投げかけたいと思います。

パワハラは、本当に効率的なのでしょうか。

現在の研究を見る限り、少なくとも、

「人を怖がらせれば企業は強くなる」

と単純には言えません。

恐怖は、その瞬間に明確な行動を起こさせることがあります。

しかし長期的な仕事では、タスクパフォーマンスや自発的な協力を弱め、反生産的行動を増やす可能性があります。

攻撃的な職場は、社員が持っている情報やアイデアを失わせる可能性もあります。

そして何より、人間は恐怖から逃げようとします。

怒られない方法を考えるようになる。

失敗しない方法を考える。

目立たない方法を考える。

しかし企業が本当に必要としているのは、

失敗しない人間

だけではありません。

新しい方法を考える人。

問題を発見する人。

挑戦する人。

仲間を助ける人。

より良い方法を試す人です。

経済戦争で本当に強い会社とは何か

もし企業同士の競争を「経済戦争」と呼ぶのであれば、本当に強い企業とはどんな企業でしょうか。

最も社員を怖がらせられる会社でしょうか。

最も厳しく命令できる会社でしょうか。

それとも、

最も多くの社員から情報を引き出せる会社。

問題を早く発見できる会社。

社員同士が知識を共有できる会社。

現場の人が改善案を出せる会社。

失敗から学び、次の挑戦につなげられる会社。

多くの人を一つの共通の課題へ参加させられる会社。

でしょうか。

軍事戦争に必要な「強さ」と、経済戦争に必要な「強さ」は同じとは限りません。

そして軍隊ですら、厳しい訓練と仲間への暴力を区別しています。

ならば企業も、

「恐怖がなければ人は働かない」

という前提そのものを、もう一度検証してもいいのではないでしょうか。

パワハラをなくすことは、単に人に優しくすることではありません。

恐怖に頼らなくても人々が主体的に動き、効率よく協力できる仕組みを作ることです。

その方法の一つとして、シビックドライブでは業務用GVSを考えています。

恐怖によって人を動かす組織から、

人が自分で考え、仲間と協力して動く組織へ。

もし後者の方が人道的であるだけでなく、仕事の効率まで高められるのであれば、

競争の激しい経済社会で本当に強い企業の姿も、今とはかなり違ったものになるのではないでしょうか。

主な参考資料

厚生労働省「職場のハラスメントに関する実態調査」令和2年度・令和5年度。

Pustovit, Miao & Qian, “Fear and work performance: A meta-analysis and future research directions,” Human Resource Management Review, 2024.

Yao et al., “Workplace aggression and employee performance: A meta-analytic investigation of mediating mechanisms and cultural contingencies,” Journal of Applied Psychology, 2025.

Frazier et al., “Psychological Safety: A Meta-Analytic Review and Extension,” Personnel Psychology.

Eldor, Hodor & Cappelli, “The limits of psychological safety: Nonlinear relationships with performance,” Organizational Behavior and Human Decision Processes, 2023.

Marlow et al., “Does team communication represent a one-size-fits-all approach?: A meta-analysis of team communication and performance,” Organizational Behavior and Human Decision Processes, 2018.

“A meta-analysis of team reflexivity: Antecedents, outcomes, and boundary conditions,” Human Resource Management Review, 2024.

米陸軍のヘイジング・いじめに関する規則および解説。

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