戦争をなくすには、話し合いや国際法だけでなく、企業の力がどこへ向かうかを変える必要があります。
なぜなら、兵器をつくるのも、エネルギーや資源を運ぶのも、通信や物流を支えるのも企業だからです。企業が持つ資金、技術、人材、設備、供給網は、戦争を続ける力にもなれば、人間の生活を守る力にもなります。
シビックマーケットが目指しているのは、企業を善と悪に分けることではありません。
社員や利用者を大切にし、技術の利益を人間へ返し、非常時にも市民生活を守れる企業を見つけ、その企業が選ばれやすい市場をつくることです。
人間を守る企業が成長する仕組みをつくる。それが、シビックマーケットから戦争廃止へ向かう最初の一歩です。
企業の力は、攻撃にも生活防衛にも使える
企業が持つ技術には、最初から善悪が決まっているわけではありません。重要なのは、その技術を何のために使うかです。
たとえば、AIは兵器の標的選定にも使えますが、災害時の被害予測や物資配送にも使えます。ドローンは攻撃にも使えますが、被災地の調査や医薬品の輸送にも使えます。蓄電池は軍事施設にも置けますが、停電した病院や避難所を支えることもできます。
通信、建設、エネルギー、ロボット、物流といった企業の技術も同じです。
そのため、単に「高度な技術を持っている企業」を評価するだけでは不十分です。その技術によって誰が守られ、誰の負担が減り、得られた利益がどこへ戻っているのかまで見る必要があります。
シビックマーケットが評価したいのは、技術の強さだけではありません。企業の力が、人間を支配する方向ではなく、人間を守る方向へ使われているかです。
戦争を支えているのは国家だけではない
戦争を始める最終的な判断は、主に国家や政治が行います。しかし、その判断を実行可能にするためには、企業の生産力や供給網が必要です。
兵器、燃料、金属、半導体、輸送、通信、金融、警備、情報システム。現代の戦争は、さまざまな企業活動の上に成り立っています。
ストックホルム国際平和研究所によると、世界の大手兵器製造・軍事サービス企業100社の兵器関連収入は、2024年に合計6,790億ドルへ達しました。これは、戦争が軍隊だけで完結するものではなく、大きな企業市場でもあることを示しています。SIPRI
また、戦争との関係を考えるべきなのは、兵器企業だけではありません。鉱物や金属の調達が、武装勢力の資金源や人権侵害につながる場合もあります。OECDも、企業が調達先を確認し、紛争への加担を避けるための指針を示しています。OECD
つまり、企業は戦争の外側にいる存在ではありません。
企業が何をつくり、どこから調達し、どの事業へ投資するかによって、戦争を支える力も、人間を守る力も大きく変わります。戦争廃止を目指すなら、政治だけでなく、企業の成長する方向も変えなければなりません。
人間を守る企業を、三つの視点から見る
シビックマーケットでは、関連企業を主にSafety、Innovation、Protectionの三つの視点から見ていきます。
Safety|平時から人間を壊していないか
Safetyで見るのは、社員や利用者が安全に扱われているかです。
十分な賃金や休日があるか。長時間労働やハラスメントを放置していないか。商品やサービスによって利用者の生命や健康を危険にさらしていないか。問題が起きたときに、隠さず改善できる企業か。
社員を消耗品として扱う企業が、非常時だけ市民を大切にするとは考えにくいものです。平時に人間を守れているかは、その企業が持つ力を誰のために使うのかを見る土台になります。
Innovation|技術の利益を人間へ返しているか
Innovationで見るのは、新しい技術を導入しているかだけではありません。
自動化によって生産性が上がったとき、その成果が人員削減だけに使われていないか。賃上げ、休日、労働時間の短縮、安全性の向上、研究開発への参加など、人間の生活や仕事へ還元されているかを見ます。
技術が一部の所有者だけを強くする社会では、技術の進歩が支配力の拡大につながります。一方、技術によって多くの人が時間と能力を取り戻せる社会では、人間は生活防衛や地域改善にも参加しやすくなります。
Protection|攻撃や災害の中でも生活を守れるか
Protectionで見るのは、兵器を持っているかではありません。
停電時にも電気を供給できるか。水や食料を確保できるか。通信が切断されても情報を届けられるか。壊れた住宅や設備を早く修理できるか。医療、物流、避難生活を維持できるか。
企業の技術によって「攻撃する力」を増やすのではなく、攻撃されても人間の生活が止まらない状態をつくれるかを評価します。
買い物によって、成長する企業を変える
シビックマーケットの役割は、企業を評価して終わることではありません。人間を守る企業が、実際に選ばれやすくなる流れをつくることです。
一般的な買い物では、価格、性能、デザイン、口コミが主な判断材料になります。しかし、一つの商品が届くまでには、企画、製造、部品供給、物流、販売、設置、修理など、多くの企業が関わっています。
商品だけを見ていると、その裏側で社員がどのように働き、利益が何に使われ、非常時にどのような役割を果たす企業なのかは見えません。
そこでシビックマーケットでは、商品に関係する企業を調べ、それぞれの企業審査を商品選びにつなげます。
利用者が人間への貢献度を確認して商品を選べるようになれば、社員や利用者を大切にする企業へ売上が向かいます。反対に、人間への負担を放置する企業は、価格や広告だけでは選ばれにくくなります。
これは、不買運動を続ける仕組みではありません。人間を守ることが企業の競争力になる市場をつくる試みです。
人間を守る企業が増えると、戦争の利益が小さくなる
人間を守る企業が増えることは、戦争の原因を一度に消すものではありません。それでも、攻撃する側が得られる利益と、社会へ与えられる損害を小さくすることはできます。
資源を奪う必要を減らす
エネルギーや重要資源を一部の地域に強く依存している社会では、供給の支配が大きな政治的・軍事的価値を持ちます。
再生可能エネルギー、蓄電、資源回収、修理、代替素材、地域生産などを担う企業が成長すれば、外部から資源を確保しなければ社会を維持できない状態を少しずつ変えられます。
すべての資源争いがなくなるわけではありません。しかし、他国の土地や供給網を支配することで得られる利益を小さくすることは、戦争を選ぶ動機の一つを弱めます。
都市機能を一度に止められないようにする
現代の都市では、電気、水道、通信、医療、物流が互いに依存しています。一つの設備が壊れると、別のサービスまで連鎖的に止まることがあります。赤十字国際委員会も、武力紛争下の都市サービスは、大規模で相互接続されたインフラと、それを維持する熟練職員に依存していると指摘しています。ICRC
だからこそ、分散型電源、蓄電池、地域通信、移動型医療、備蓄、修理網、代替輸送などを整える企業が重要になります。
一か所を攻撃されても、別の設備や経路で生活を続けられる。破壊されても、地域の人材と部品ですぐに直せる。そうした社会では、攻撃によって市民生活を停止させ、相手を屈服させることが難しくなります。
防衛産業の目的を変える
防衛という言葉は、兵器の数や攻撃能力と結びつけて語られがちです。しかし、本来守るべきものは、国家の威信ではなく、そこで暮らす人間です。
防衛関連の資金や技術が、殺傷能力の向上だけでなく、迎撃、避難、救命、復旧、サイバー防御、インフラ維持へ向かえば、防衛産業の役割も変わります。
「どれだけ破壊できるか」ではなく、「どれだけ死なせず、生活を止めずに済むか」で企業を評価する。この需要が大きくなれば、企業も人間を守る技術へ投資する理由を持てます。
攻撃されても暮らせる社会が、防衛都市国家になる
シビックドライブが目指す防衛都市国家とは、巨大な兵器で相手を脅す都市ではありません。攻撃や災害が起きても、市民の生活を維持できる都市です。
それは、政府が宣言するだけでは完成しません。
電気を分散して供給する企業、住宅や道路を修理する企業、食料を届ける企業、通信を維持する企業、医療を支える企業、避難生活を改善する企業。こうした企業が地域に存在し、互いにつながって初めて、生活を守る力が生まれます。
つまり、防衛都市国家は一つの巨大組織ではなく、人間を守る企業が積み重なった結果です。
シビックマーケットは、その企業を見つけ、評価し、選ばれやすくする入口になります。買い物を通じて保護能力を持つ企業へ資金が流れれば、地域の生活防衛力も少しずつ強くなります。
攻撃しても資源を奪えない。インフラを壊しても生活が止まらない。市民を恐怖で支配しようとしても、社会がすぐに立て直される。
その状態に近づくほど、攻撃する側が戦争によって得られる利益は小さくなります。
シビックマーケットだけで戦争がなくなるわけではない
もちろん、企業審査と買い物だけで、戦争を完全になくせるわけではありません。
外交、国際法、教育、民主主義、軍縮、貧困対策など、同時に必要な取り組みは数多くあります。また、企業評価が正確でなければ、人間を守っているように見せるだけの宣伝に利用されるおそれもあります。
だから、審査基準を公開し、根拠を示し、問題があれば評価を更新する必要があります。将来的には、評価するだけでなく、企業が労働環境や生活防衛力を改善するための仕組みも必要です。
それでも、シビックマーケットには明確な役割があります。
政治が変わるのを待つだけではなく、日々の買い物によって、どの企業へ資金を渡すかを市民が選べるようにすることです。
戦争廃止は、企業の成長先を変えることから始められる
戦争をなくすために、すべての企業を否定する必要はありません。むしろ、企業が持つ資金、技術、人材、供給網を、人間を守る方向へ生かす必要があります。
社員を大切にする企業。技術の利益を人間へ還元する企業。資源への過度な依存を減らす企業。攻撃や災害の中でも、電気、水、食料、通信、医療、住居を守る企業。
そうした企業が選ばれ、成長し、社会の中心になるほど、戦争を続ける経済的な土台は弱くなります。そして、攻撃によって得られる利益も小さくなります。
一回の買い物で、戦争が止まるわけではありません。
しかし、私たちが何を買い、どの企業を育てるかは、社会に残る技術と設備を決めます。その選択の積み重ねが、企業の競争を「どれだけ売るか」から「どれだけ人間を守れるか」へ変えていきます。
人間を守る企業が成長する市場をつくること。
それが、シビックマーケットが戦争廃止へつながる理由です。
