森永製菓株式会社は、「森永ミルクキャラメル」「森永ビスケット」「チョコボール」「ハイチュウ」「ダース」「チョコモナカジャンボ」「アイスボックス」「inゼリー」などを扱う食品企業です。1899年の創業から120年以上にわたり、菓子、食品、冷菓、健康食品を作ってきました。
菓子は、生存に不可欠な主食や医薬品とは異なります。しかし、人が休憩する、家族や友人と分け合う、気持ちを切り替える、短時間でエネルギーを取るという場面に価値があります。森永製菓は、こうした「心の健康」に加え、「inゼリー」などで栄養補給を支え、防災備蓄用の商品も開発しています。
働く人への還元にも評価できる実績があります。2026年春闘では、全森永労働組合の製菓部門に対する回答が、定期昇給などを含む月例賃金の総額で1人平均1万7,775円増となりました。森永製菓単体の平均年間給与は835万2,549円、平均勤続年数は19.0年です。平均残業時間は月14.1時間、有給休暇の平均取得日数は14.0日で、正社員に限れば安定性と待遇は良好です。
一方、正社員の数字だけで森永製菓グループ全体を評価することはできません。2026年3月期の連結従業員は3,222人ですが、これとは別に平均臨時雇用者が1,985人います。森永製菓単体でも従業員1,587人に対し、平均臨時雇用者は703人です。正社員の平均年収や賃上げが、準社員、契約社員、パート、派遣、請負、海外子会社の全員へ同じ条件で適用されるわけではありません。
安全と企業統治にも課題があります。2024年には、幼児も食べる「マンナボーロ」へ小動物のふんと推察される異物が製造工程で混入したおそれがあり、約19万個を自主回収しました。2026年6月には、市販用アイスの価格を巡る独占禁止法違反の疑いで、公正取引委員会の立入検査を受けています。後者は調査中であり、森永製菓の違反が確定したわけではありません。しかし、消費者が日常的に買う商品の価格に関する疑いである以上、審査では経過を確認する必要があります。
この記事では、森永製菓株式会社を中心に、国内生産子会社、海外子会社、臨時雇用者、原料供給会社まで、会社が管理・改善できる範囲を調べます。労働環境、事業による人間への貢献、セーフティ、イノベーション、プロテクションの5項目から、総合シビックランクを判定します。
調査日:2026年8月28日
先に結論:総合シビックランクはB(普通)
| 審査項目 | ランク | 主な判断理由 |
|---|---|---|
| 労働環境 | B(普通) | 森永製菓単体の平均年間給与は835万2,549円。2026年春闘の月例賃金は総額1万7,775円増で、平均勤続19.0年、月平均残業14.1時間、有給平均14.0日も良好。一方、連結で平均臨時雇用者1,985人、単体で703人を抱え、正社員との条件差が大きい。工場には深夜を含む交替勤務があり、女性の賃金は男性を下回る |
| 事業による人間への貢献 | B(普通) | 菓子による楽しさと交流、inゼリーによる短時間の栄養補給、食育、子どもへの商品提供、防災備蓄商品に社会的価値がある。一方、事業の中心は菓子・アイスであり、糖分やエネルギーの過剰摂取、包装、カカオ生産地の人権などの負担も残る |
| セーフティ | B(普通) | 国内全生産工場がFSSC22000またはJFS-Bを取得し、労災死亡者は正社員・契約社員とも5年連続ゼロ。休業災害度数率も製造業平均を下回る。一方、2024年に幼児向けマンナボーロ約19万個を異物混入のおそれで回収し、労災度数率も直近で悪化した |
| イノベーション | A(良い) | 2026年3月期の研究開発費は32億1,300万円。菓子の食感、栄養、認知、感性、生産技術を研究し、IoT・AIを使うスマートファクトリー、5年保存のinゼリー、米国第2工場まで実用化している。ただし、自動化で夜勤や危険作業を何時間減らしたかは不明 |
| プロテクション | B(普通) | BCPからBCMへ進め、24時間のサイバー監視、調達先分散、防災訓練、非常食点検を実施。5年保存のinゼリー、防災教育、災害寄付にも実績がある。一方、代替生産能力、復旧目標時間、備蓄量、手動出荷能力などは十分に公開されていない |
| 総合シビックランク | B(普通) | 正社員の待遇、長期雇用、研究開発、食品安全の制度、防災商品は高く評価できる。しかし、大量の臨時雇用に支えられた構造、非正規と女性の待遇差、幼児向け商品の回収、公取委調査を考えるとAには届かない |
森永製菓の最も強い点は、長年の菓子製造技術を「楽しさ」だけに閉じず、栄養、防災、認知、工場安全へ広げていることです。「inゼリー エネルギーロングライフ」は、製造後5年間保存でき、食器や調理を使わずに180キロカロリーと水分を取れます。災害時、食欲が落ちたとき、かむことが難しいときに利用しやすい商品です。
正社員への還元も明確です。2026年の賃上げ総額1万7,775円は前年の1万5,674円を上回り、平均年収も800万円を超えます。年間総労働時間、残業、有給、離職率、男女別の賃金、労災を数値で公開している点も評価できます。
ただし、公開範囲が広いからこそ、課題も見えます。連結従業員3,222人に対する平均臨時雇用者1,985人は小さくありません。両者は期末人数と年間平均という違う集計ですが、正規の中核人材だけでなく、多数のパート、契約、準社員が商品を作り、販売している構造は明らかです。
森永製菓単体の2026年開示では、女性の賃金は男性を100としたとき、全労働者で62.3、正規雇用で64.8、パート・有期雇用で85.5です。会社は雇用区分、等級、役職、手当受給者の構成差を理由に挙げています。これは同じ仕事へ低い単価を付けている証拠ではありませんが、配置、昇進、雇用区分、家族・住宅手当の設計を通じて、実際の所得差が生じていることは事実です。
シビックランクでは、正社員の高い平均給与で非正規の条件差を消しません。研究開発の成果で品質事故を相殺することもしません。良い点と悪い点をそれぞれの項目で残したうえで、人間へ与える総合的な利益と損害を比べ、今回はBと判定しました。
審査対象は森永製菓株式会社と管理可能なグループ範囲
森永製菓と森永乳業は、名前と創業の歴史に関係がありますが、現在は別々に上場する企業です。この記事は、菓子、アイス、inゼリーを扱う森永製菓株式会社を審査します。牛乳、ヨーグルト、粉ミルクなどを主力とする森永乳業の労働条件や事故を、森永製菓の実績として混ぜません。
| 主体 | 主な役割 | この記事での扱い |
|---|---|---|
| 森永製菓株式会社 | グループ経営、研究開発、商品企画、営業、鶴見・小山・三島・中京の4工場 | 労働条件と企業評価の中心 |
| 高崎森永株式会社 | ビスケット、チョコレート、キャンディ、アイスの製造 | 主要生産子会社として、交替勤務と準社員条件を確認 |
| 森永エンゼルデザート株式会社、森永デザート株式会社 | 冷菓、デザートなどの製造 | 国内生産の安全と雇用を確認する対象 |
| 株式会社アントステラ | クッキー製造と店舗販売 | 女性・非正規雇用が多い子会社として待遇差を確認 |
| 森永アメリカフーズ | 米国でHI-CHEWを製造 | 米国工場投資、現地雇用、供給継続を評価 |
| 台湾・中国の製造販売会社 | 菓子やゼリー飲料の製造・販売 | 海外品質と雇用について公開範囲内で確認 |
| 原料・包装の供給会社 | カカオ、パーム油、砂糖、小麦、乳原料、包装資材などを供給 | 森永製菓が基準、監査、契約を通じて改善できる範囲を評価 |
| 派遣・請負・物流会社 | 製造補助、倉庫、輸送、店舗運営など | 直接雇用と区別し、安全・人権・供給継続の範囲で評価 |
単体の平均年間給与は、有価証券報告書に記載される森永製菓株式会社の従業員を対象とします。高崎森永の正社員や準社員、アントステラの店舗パート、米国工場の従業員へ、その金額をそのまま当てはめることはできません。
反対に、子会社の工場で起きたことを、すべて親会社と無関係にすることもできません。森永製菓は、グループ品質方針、食品安全認証、設備投資、役員選任、原料基準、監査を通じて子会社へ影響を与えられます。この記事では、直接の事実主体を明記したうえで、親会社が改善できる範囲を総合評価へ反映します。
森永製菓の基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式社名 | 森永製菓株式会社 |
| 英文名 | Morinaga & Co., Ltd. |
| 創業 | 1899年8月15日 |
| 会社設立 | 1910年2月23日 |
| 本社 | 東京都港区芝浦1-13-16 |
| 代表者 | 代表取締役会長 CEO 太田栄二郎、代表取締役社長 COO 森信也 |
| 資本金 | 186億1,200万円 |
| 2026年3月期売上高 | 連結2,366億7,200万円、単体1,906億600万円 |
| 2026年3月期営業利益 | 連結223億9,400万円 |
| 従業員数 | 連結3,222人、単体1,587人 |
| 平均臨時雇用者数 | 連結1,985人、単体703人 |
| 研究開発費 | 32億1,300万円 |
| 国内直営工場 | 鶴見工場、小山工場、三島工場、中京工場 |
| 主な事業 | 菓子食品、冷菓、in、通販、米国、中国・台湾・輸出、業務用食品素材など |
会社概要と2026年3月期の数値は、森永製菓の会社概要と第178期有価証券報告書で確認できます。
菓子食品事業
菓子食品事業は、2026年3月期に889億5,700万円を売り上げた最大の事業です。「ハイチュウ」「チョコボール」「ダース」「小枝」「森永ビスケット」「森永ミルクキャラメル」「おっとっと」「森永ラムネ」などを扱います。ココア、甘酒、ホットケーキミックスもこの事業に含まれます。
菓子の価値は、栄養成分だけでは測れません。少量を分け合う、休憩のきっかけを作る、子どもが製造や衛生を学ぶ、味や食感を楽しむという心理・社会的な役割があります。森永製菓は、自社の価値を「心の健康」と表現しています。この表現には広告的な面がありますが、菓子が会話や気分転換を生むこと自体は現実の価値です。
一方、砂糖、脂質、カロリーを多く含む商品もあります。菓子を食べたことと健康になったことを同一視してはいけません。1回量、頻度、他の食事とのバランス、歯の健康を消費者が判断できる表示と食育が必要です。子どもへの広告では、楽しさだけでなく、量や食べ方も伝える責任があります。
冷菓事業
冷菓事業の2026年3月期売上高は535億2,800万円です。「チョコモナカジャンボ」「バニラモナカジャンボ」「アイスボックス」「板チョコアイス」などを扱います。チョコモナカジャンボは、製造後の時間でモナカの食感が変わることを前提に、店舗の販売状況まで追う「鮮度マーケティング」を行ってきました。
冷菓は、暑い時期の体温感覚や水分摂取、気分転換に役立ちます。「アイスボックス」は氷菓をかみながら水分を取る選択肢になります。ただし、アイスは冷凍設備、冷凍倉庫、冷凍車、店舗の冷凍ケースを必要とし、停電や物流停止に弱い商品です。原料や電力の負担もあり、災害時の基礎食料とは別に評価する必要があります。
2026年6月、公正取引委員会は市販用アイスの価格を巡り、森永製菓を含む大手6社へ立入検査を行いました。冷菓は消費者に身近で、6社の市場影響力も大きいため、疑いの解明は重要です。現時点では処分や違反認定が確定しておらず、「価格カルテルを行った企業」と断定してはいけません。
in事業
in事業の2026年3月期売上高は299億5,500万円です。「inゼリー」「inバー」などを通じ、時間のない朝、運動、仕事、試験、体調不良などの場面で、短時間にエネルギーやビタミン、たんぱく質を取れる形を提供します。
通常の「inゼリー エネルギー」は、1袋180グラムで180キロカロリー、炭水化物45.0グラム、たんぱく質と脂質は0グラムです。便利なエネルギー源ですが、完全な食事ではありません。野菜、たんぱく質、脂質、食物繊維を含む食事の代わりに常用すれば、栄養が偏る可能性があります。商品ページで目的と栄養成分を確認して選ぶ必要があります。
防災向けの「inゼリー エネルギーロングライフ」は、製造後5年間保存でき、180キロカロリーと水分を同時に取れます。原材料に含まれるアレルギー物質28品目を使わず、食器や加熱も不要です。停電、断水、避難所、在宅避難で利用しやすく、通常の菓子・飲料よりプロテクション上の価値が明確です。防災備蓄用inゼリーに特長が公開されています。
通販、米国、海外・子会社事業
通販事業では、コラーゲンドリンク、青汁などの健康・美容商品を消費者へ直接販売します。顧客と直接つながれるため、購入履歴や問い合わせを商品改善へ使える一方、個人情報保護、健康表示、定期購入の分かりやすさが重要になります。
米国事業では「HI-CHEW」が成長の中心です。2026年3月期の米国事業売上高は202億1,400万円でした。2018年度以降、米国で大きく成長し、現地生産能力を増やしています。中国、台湾、輸出を含む事業では、現地向けの商品と販売網を持ち、「HI-CHEW」は世界30か国以上で販売されています。
国内の事業子会社では、アントステラがクッキーの製造・販売、森永商事が業務用食品素材、森永生科学研究所が食物アレルゲン検査キットなどを扱います。アレルゲン検査キットは、森永製菓の菓子ブランドとは異なる形で、食品事故を防ぐ社会基盤へ貢献します。
2026年3月期の連結売上高2,366億7,200万円のうち、食料品製造は2,251億6,700万円で約95%を占めます。森永製菓は不動産やゴルフ場も持ちますが、企業の中心は明確に食品製造です。事業紹介と有価証券報告書で事業構成を確認できます。
森永製菓の主なニュース
企業審査では、制度の一覧だけでなく、実際に起きた出来事、影響を受けた人、会社の対応を見ます。森永製菓では、2026年の賃上げと米国投資がプラス、マンナボーロ回収と公正取引委員会の調査がマイナスです。防災商品と教育は、菓子技術を社会の危機へ使う動きとして評価します。
| 時期 | 主なニュース | 審査上の意味 |
|---|---|---|
| 2026年6月 | 市販用アイスの価格を巡り、公正取引委員会が立入検査 | 独占禁止法違反の疑い。違反確定ではないが、消費者価格と公正競争に関わるため経過を重視 |
| 2026年3月 | 全森永労組の製菓部門へ月例賃金総額1万7,775円増で回答 | 前年を上回る還元。回答のうちベースアップ額は公開資料で確認できないため、全額をベアとは表現しない |
| 2026年4月 | 米国第2工場の完成式典。1億3,600万ドル投資、204人の雇用創出 | HI-CHEWの供給能力と現地雇用を拡大。投資利益が賃金・安全・地域へ還元されるかを継続確認 |
| 2025年8月 | 自治医科大学の災害医学講座と防災教室を開始 | 5年保存のinゼリーを売るだけでなく、家庭で食と防災を考える教育へ広げた |
| 2024年6月 | マンナボーロ約19万個を自主回収 | 小動物のふんと推察される異物が混入したおそれ。健康被害の報告はなかったが、幼児向け商品の衛生管理として重大 |
| 2025年4月 | 約20年ぶりに人事制度を大幅改定 | 職務記述、早期昇格、専門職、年齢を基準とする役職離任の廃止を進め、年功だけに依存しない配置へ転換 |
公取委の立入検査は「疑い」と「確定」を分ける
2026年6月16日、森永製菓は、独占禁止法違反の疑いで公正取引委員会の立入検査を受けたと公表しました。会社は調査へ全面的に協力するとしています。森永製菓の公表は、疑いの具体的な内容を詳しく書いていません。
報道では、明治、ロッテ、森永乳業、森永製菓、江崎グリコ、赤城乳業の6社が対象で、市販用アイスの希望小売価格に関する情報交換や調整が疑われているとされています。日刊酪農乳業速報などで対象企業と調査の背景を確認できます。
立入検査は、違反を認定する行政処分ではありません。審査日時点で、森永製菓に対する排除措置命令や課徴金納付命令は確認できません。したがって「カルテルを結んだ」と断定するのは不正確です。
ただし、調査中だから評価に無関係ともいえません。アイスは子どもを含む幅広い人が買い、市場の主要企業が同時に価格情報を調整すれば、消費者が価格競争の利益を失う可能性があります。森永製菓には、調査終了後に結果、社内調査、再発防止、役員責任を分かりやすく公開する責任があります。
森永製菓は2019年にも、公正取引委員会から下請法違反の勧告を受けています。5社の下請事業者へ、合意前に発注した商品の単価をさかのぼって引き下げ、合計958万2,853円を減額していました。会社は勧告前に返金しましたが、公正取引委員会の勧告で違反が認定された事実です。
2019年の下請法違反と2026年の独占禁止法調査は、法律も事案も異なります。過去の違反を理由に現在の疑いを事実とみなしてはいけません。それでも、仕入先と消費者の両側で公正な取引を守る統治が実効性を持つかは、Aランクを目指すうえで重要な確認事項です。
月例賃金は総額1万7,775円増、全額ベアではない
連合の2026春季生活闘争回答速報によると、全森永労働組合の製菓部門は、組合員1,268人、平均年齢40.0歳、平均勤続18.2年、要求基礎賃金34万7,604円です。組合は総額1万9,785円を要求し、そのうち1万2,612円をベースアップ分としていました。
会社側の3月18日の回答は、総額1万7,775円です。前年妥結総額1万5,674円を2,101円上回ります。物価上昇の中で月例賃金を前年以上に増やしたことは、働く人への還元として評価できます。連合の回答速報で確認できます。
ただし、回答欄には総額だけが記載され、定期昇給、ベースアップ、手当改定の内訳は示されていません。「1万7,775円のベースアップ」と書くと、確認できる事実より強い表現になります。また、組合員以外の準社員、パート、海外従業員へ同じ金額が適用されたとも確認できません。
米国第2工場は現地雇用と供給能力を増やす
森永アメリカフーズは、ノースカロライナ州メベインの既存工場に隣接して第2工場を建設しました。2026年4月21日、州知事が参加する完成式典が開かれています。投資額は1億3,600万ドルで、204人の雇用を生む計画です。ノースカロライナ州政府の発表で、式典、投資、雇用を確認できます。
森永製菓が2024年に発表した計画では、延べ床面積は1万2,322平方メートル、HI-CHEWの製造ラインを増設し、供給体制と生産効率を高めます。米国事業は2023年度に約190億円へ成長していました。森永製菓の建設発表に計画の背景があります。
現地で200人を超える仕事を作ることはプラスです。しかし、雇用人数だけでは質を判断できません。賃金、医療保険、勤務シフト、労災、組合・従業員代表、現地採用の管理職比率を継続して公開すれば、地域への利益をより正確に評価できます。
幼児向けマンナボーロ約19万個を回収
2024年6月、森永製菓は「マンナボーロ」の袋に異物が入っていたという消費者の指摘を受け、現物を検査しました。異物は小動物のふんと推察され、製造工程で紛れ込んだおそれがあると判断しました。ほかの商品への混入可能性を否定できないため、全国で販売した対象商品を自主回収しました。
会社の発表時点で健康被害の報告はありませんでした。対象商品の回収、返金、休日を含む相談窓口の設置は必要な対応です。森永製菓の回収発表で異物、対象、対応を確認できます。回収規模は約19万個と報じられています。TBS NEWS DIG
問題が一件の申し出から見つかったことは、消費者窓口が機能した証拠です。一方、幼児が食べる商品で、製造工程に小動物が入る可能性を防げなかった点は重い問題です。工場建屋の侵入防止、原料保管、清掃、害獣管理、製造委託先の監査をどう変えたかについて、会社の公開説明は限定的です。
防災商品を防災教育へ広げた
2025年8月、森永製菓は自治医科大学栃木県災害医学寄附講座と協力し、「食とお菓子の防災教室」を始めました。災害医療の専門家から、避難生活で起こる食の問題や、家庭での備えを学ぶ活動です。森永製菓の発表で目的を確認できます。
この活動は、非常食を販売するだけで終わらず、利用者が自分に必要な備蓄を選ぶ力を作ろうとしている点に意味があります。防災用inゼリーは、調理不要で水分とエネルギーを取れる一方、それだけでたんぱく質やすべての栄養を満たせません。専門家と一緒に商品の限界まで伝える教育であれば、販売促進を超えた社会的価値があります。
今後は、参加人数、対象地域、参加後に備蓄を始めた家庭の割合、学校・自治体での継続実施を公開すると、活動の効果を判断しやすくなります。
約20年ぶりの人事制度改革
森永製菓は2025年4月、約20年ぶりに人事制度を大きく改定しました。人事部への取材によると、職務記述書を整備し、若手の早期昇格、専門職等級、年齢を基準に役職を離れる仕組みの廃止などを進めています。日本の人事部のインタビューに改革の背景と内容があります。
年齢と勤続だけでなく、役割、能力、専門性を処遇へ反映することは、若手や技術者の選択肢を増やします。55歳など一定年齢で一律に役割を下げるより、本人の能力を使い続けやすくする点も評価できます。
一方、職務を明確にする制度は、評価基準の不透明さや、会社都合の役割変更があれば、従業員の不安を増やします。制度導入後に、昇格者の年齢・性別、専門職の人数、賃金分布、異議申立て、従業員満足がどう変わったかを確認する必要があります。
労働環境の評価はB(普通)
森永製菓株式会社の正社員は、賃金、勤続、残業、有給、柔軟な勤務で良好な条件にあります。しかし、生産と販売は多数の臨時雇用者と子会社従業員に支えられています。平均年収だけで全員の待遇を代表させず、雇用区分、性別、職場、シフトごとに見ます。
正社員の賃金と雇用安定
| 項目 | 公開されている内容 | 評価 |
|---|---|---|
| 平均年間給与 | 森永製菓単体で835万2,549円 | 食品製造業として高い水準 |
| 2026年賃上げ | 組合員の月例賃金を総額1万7,775円増 | 前年を上回る。ベア内訳は不明 |
| 平均年齢 | 43.4歳 | 平均年収の前提として確認が必要 |
| 平均勤続年数 | 19.0年 | 長期雇用の安定性を示す |
| 2024年度離職率 | 1.6%、自己都合も1.6% | 低い |
| 新卒3年未満離職率 | 3.6% | 若手定着は良好 |
| 労働組合 | 単体正規従業員の加入率100% | 労使交渉の基盤として評価 |
平均年収835万円は、役員を除く提出会社の従業員平均で、年齢、勤続、役職、残業、賞与の構成を含みます。新入社員や工場契約社員が同額を受け取るという意味ではありません。それでも、平均勤続19.0年と組み合わせると、長く働く正社員へ比較的高い報酬を支払っていることが分かります。
2026年の賃上げも、単発の一時金ではなく月例賃金の増加です。毎月の生活費、残業単価、将来の賞与や退職給付へ影響する可能性があるため、賞与だけの還元より持続性があります。ただし、定期昇給と賃金改善を含む総額であり、物価上昇を上回る実質賃金の改善になったかは、ベースアップ内訳と消費者物価を合わせなければ断定できません。
労働時間、休暇、健康
2024年度の森永製菓単体は、従業員1人あたり年間総労働時間1,936時間、月平均残業14.1時間です。年次有給休暇の平均取得日数は14.0日、取得率は75.8%でした。健康診断受診率は100%、ストレスチェック実施率は97.9%です。森永製菓ESGデータに複数年の実績が掲載されています。
残業月14.1時間は、全社平均として極端に長くありません。有給14.0日も、制度が名目だけでなく使われていることを示します。テレワーク、フレックスタイム、時差出勤、短日・短時間勤務、個人別休日カレンダー、転居を伴う異動を選ばない制度もあります。働きやすい労働環境の説明で確認できます。
ただし、平均値は部署差を隠します。本社、営業、研究はテレワークやフレックスを使えても、製造ラインは決められた時間に人が必要です。個人別休日カレンダーがあっても、夜間の生産を本人の都合だけで動かすことはできません。
高ストレス者の割合は11.8%で、会社目標の10%以下を上回りました。健康診断100%や相談窓口は評価できますが、受診したことと健康問題が解決したことは別です。睡眠、交替勤務、管理職の労働時間、職場ごとの心理的負担へ、結果指標を使った改善が必要です。
工場の交替勤務と非正規雇用
森永製菓小山工場の2026年8月時点の契約社員募集では、時給1,310円、年間休日125日、賞与年2回、正社員と同等の休暇制度、正社員登用制度を示しています。2交替または3交替で、3交替には22時から翌7時までの勤務があります。深夜手当の割増率は50%です。小山工場の募集要項で現行条件を確認できます。
年間休日、賞与、深夜割増、無期雇用への転換実績は、契約社員を使い捨てにしない要素です。一方、時給1,310円で夜勤を含む製造、包装、検品、機械異常への対応を担います。募集例の月収は、2交替で残業10時間を含み23万233円、3交替で夜勤5日と休日出勤1日を含み25万5,237円です。正社員平均年収835万円との単純比較は年齢・役割が違うためできませんが、雇用区分による所得と安定性の差は大きいと考えられます。
主要生産子会社の高崎森永では、正社員新卒の月給が22万1,500円、準社員は時給1,250円です。どちらも1週間ごとの3交替で、深夜手当は50%、年間休日は120日です。高崎森永の募集要項は正社員と準社員を分けて公開しています。
高崎森永は森永製菓単体ではなく子会社です。正社員の平均給与835万円を高崎森永の従業員へ当てはめてはいけません。逆に、高崎森永の時給を森永製菓の全契約社員の条件とみなすこともできません。この記事では、公開された具体例として、工場労働の時間帯と雇用差を確認する材料に使います。
連結では従業員3,222人に対し、平均臨時雇用者1,985人です。有価証券報告書の臨時雇用者には、パートタイマーと有期契約社員が含まれ、派遣社員は含まれません。つまり、派遣・請負まで含めた現場人数は、この数字より多い可能性があります。
臨時雇用が多いこと自体を直ちに悪と判定しません。短時間勤務を希望する人、繁忙期だけ働く人、店舗の営業時間に合わせる人もいます。問題は、恒常的な中核業務を低賃金・不安定雇用へ置き換えていないか、同じ危険へ同じ教育・装備・補償を用意しているか、正社員への転換経路が実際に機能しているかです。
男女の賃金と登用
2026年の森永製菓単体では、女性の賃金は男性を100とした場合、全労働者62.3、正規雇用64.8、パート・有期雇用85.5です。女性管理職比率は14.0%、男性の育児休業取得率は80.0%です。有価証券報告書は、女性に非正規雇用が多いこと、等級・役職の構成、家族・住宅手当の受給構成が差の主な理由だと説明しています。
2024年度のESGデータでは、月額換算の平均賃金は男性71万2,094円、女性55万511円です。一般管理職では女性が男性を上回る一方、上級管理職、上級一般従業員、初級一般従業員では差があります。同じ等級で女性が必ず低いわけではなく、女性がどの雇用区分・職位へ配置されているかが全体差を生んでいます。
女性管理職比率は上がってきましたが、部長以上は5.8%、営業本部内の女性管理職は2.9%でした。人数の多い初級管理職だけでなく、意思決定と収入が大きい上位職や営業の中核へ登用を広げる必要があります。
男性育休80%は前進ですが、育児短時間勤務者は2024年度に女性34人、男性0人でした。育休を一度取得したかだけでなく、復職後の日常的な育児を誰が担うかを見ると、性別役割の差が残っています。
労働災害
2024年度の森永製菓国内工場では、休業災害度数率0.24、強度率0.00、不休災害を含む全度数率0.95でした。同じ年の日本の製造業平均度数率1.30を下回ります。正社員と契約社員の労災死亡者は、2020年度から2024年度までいずれも0人です。
2025年度の統合報告では、森永製菓工場と国内生産グループの度数率が0.48とされ、前年度の0.24から悪化しました。対象範囲の注記を確認する必要はありますが、会社自身のゼロ目標には届いていません。転倒防止の床、防滑靴、設備リスクアセスメント、危険予知訓練を行い、生産部門の全従業員2,269人へ年2回のKYTを実施しています。
死亡ゼロと製造業平均を下回る度数率は評価できます。一方、深夜を含む交替勤務、機械投入、成形、包装、清掃、保全には巻き込まれ、挟まれ、転倒、熱中症の危険があります。工場別、雇用区分別、事故類型別の件数を公開すれば、どの人に負担が集中しているかを判断しやすくなります。
正社員の待遇だけならA候補です。しかし、多数の臨時雇用、契約社員の時給と交替勤務、男女の所得差、高ストレス者、労災悪化を合わせると、グループ全体をAとするには足りません。労働環境はBと判定します。
事業による人間への貢献はB(普通)
森永製菓は、人を生かす最低限の食料より、楽しさ、間食、短時間の補給を中心に提供します。貢献は確かにありますが、商品を売った数量のすべてを「健康への貢献」と数えることはできません。
心の健康と、人をつなぐ菓子
菓子は、誕生日、季節行事、遠足、休憩、仕事や勉強の合間など、人が時間を区切り、誰かと分け合う道具になります。森永製菓のロングセラー商品は、世代を越えた記憶や会話の共通点にもなっています。
この価値は医療の治療効果のように測定しにくいものです。それでも、孤立、緊張、疲労がある生活で、楽しさや交流を一律に「ぜいたく」と切り捨てることはできません。森永製菓が食感、音、香り、感情を研究することには、人が食を楽しむ能力を深める意味があります。
栄養補給と防災
inゼリーは、食べる時間がない人、運動中の人、食欲が落ちた人が、エネルギーや特定栄養素を取りやすくします。パウチは持ち運びやすく、開封後に直接飲めるため、移動、病床、避難所でも使えます。
特に5年保存の商品は、非常食の選択肢を増やします。乾パンやアルファ化米は保存性が高い一方、水やかむ力が必要な場合があります。ゼリー状の商品は、水分とエネルギーを同時に取りやすい点で補完関係があります。ただし、1袋だけで必要な栄養を満たす商品ではなく、非常食全体の一部として使うべきです。
子ども、食育、カカオ産地への支援
森永製菓は、2024年度から2026年度までに食育体験者を累計20万人とする目標を持ち、工場見学、出張授業、菓子育、キッザニアなどを運営しています。経済的に困難な家庭へは、セーブ・ザ・チルドレンの「子どもの食 応援ボックス」を通じ、2026年3月末までに累計6万5,546個の商品を提供しました。社会貢献活動で実績を確認できます。
カカオ産地を支援する「1チョコ for 1スマイル」では、2024年度に2,084万365円をNGOへ拠出しました。子どもの教育、児童労働の予防、農家の所得向上へつなげる活動です。支援は必要ですが、寄付だけでサプライチェーンの人権問題が解決するわけではありません。カカオ全量の追跡、生活所得、児童労働の発見数と救済数まで公開することが次の課題です。
商品が生む負担
菓子やアイスは、食べ方によって糖分、脂質、エネルギーの過剰摂取へつながります。子どもが一人で量を判断しにくい商品では、キャラクターや景品による販売促進と、健康情報のバランスが必要です。「笑顔にする」商品であることと、無制限に食べて健康であることは同じではありません。
パウチ、個包装、トレー、箱、冷凍物流も資源とエネルギーを使います。個包装は衛生、分配、賞味期限維持に役立ちますが、ごみを増やします。森永製菓はパウチ回収や軽量化を進めていますが、回収できる地域と量は限定されます。
原料生産では、カカオ、パーム油、砂糖、乳原料、小麦の農地、水、労働へ影響します。将来も菓子を作り続けるには、農家が生活できる価格と、森林・土壌・水を維持できる調達が必要です。
人の楽しさ、短時間の栄養補給、子ども支援、防災の貢献は評価できます。一方、事業の中心が菓子・アイスであること、健康と環境・人権の負担を考え、事業による人間への貢献はBと判定します。
セーフティ評価はB(普通)
セーフティでは、品質管理の制度があるかだけでなく、実際に事故を防ぎ、発生時に影響を限定できたかを見ます。森永製菓は食品安全認証と検査を広く導入していますが、マンナボーロ回収は制度の弱点を示しました。
食品安全認証と品質保証
森永製菓の4工場と国内グループ会社4社は、FSSC22000またはJFS-Bの認証を取得しています。海外工場もFSSC22000またはSQFを取得しています。商品開発では、リニューアル品を含む全商品について、14部門・延べ187項目の品質アセスメントを発売前に行います。
原料は規格を定めた供給会社から購入し、食品添加物、アレルギー、遺伝子組換えなどを確認します。生産後は風味、色、寸法、重量、微生物、包装、賞味期限印字を確認し、原料から配送まで履歴を追えるトレーサビリティを持ちます。安全・安心な食の提供に仕組みが公開されています。
FSSC22000やSQFは、危害分析、手順、監査を継続する基盤です。しかし、認証は事故ゼロの証明ではありません。工場内の小さな侵入口、原料保管、委託先、清掃、作業者の異常対応が機能しなければ、認証工場でも異物は混入します。
マンナボーロ回収の評価
約19万個を回収し、健康被害が確認されなかったことは、被害拡大を防ぐ対応として評価できます。消費者からの一件を軽視せず、同一商品の広い範囲へ回収をかけた判断も必要でした。
一方、マンナボーロは幼児が食べる商品です。抵抗力が弱く、異物を見分けて吐き出すことが難しい人を想定した安全水準が必要です。小動物のふんと推察される異物は、見た目の不快さだけでなく、衛生上の危害を考える必要があります。
会社は原因究明と再発防止を続けるとしましたが、最終原因、影響ロット、工場または委託先、設備改善、害獣管理の変更、監査結果を一般向けに詳しく説明していません。企業秘密を守りながらでも、「どこが弱く、何を二重化したか」は開示できます。
労働者の安全
休業災害度数率0.24、強度率0.00、死亡者ゼロは良好です。会社は、転倒防止、設備リスクアセスメント、危険予知、交通安全、高齢労働者の体力測定、熱中症対策を行っています。雇用関係や言語にかかわらず安全を守る方針も掲げています。
ただし、直近の度数率0.48は改善ではありません。工場には、早朝、深夜、重量物、回転設備、熱源、冷凍設備、洗浄薬品があります。自動化が進んでも、材料補充、詰まり除去、清掃、保全のときに人が機械へ近づきます。重大災害ゼロを維持しながら、休業・不休災害も減らす必要があります。
公正取引と安全の関係
価格調整の疑いは、食品衛生事故ではありません。しかし、消費者が選択できる価格と、供給会社が公正な条件で取引できることは、生活の安全と権利に関わります。2019年の下請法違反は確定事実であり、2026年の独禁法案件は調査中です。この違いを明示したうえで、取引先と消費者の双方を守る統治を確認します。
認証、検査、低い労災率、死亡ゼロを評価し、回収、公取委案件、労災悪化を減点して、セーフティはBです。マンナボーロの最終原因と再発防止効果を公開し、調査案件を透明に解決できればAへ近づきます。
イノベーション評価はA(良い)
森永製菓の2026年3月期研究開発費は32億1,300万円です。食品企業として、おいしさ、健康、感性、生産、包装を組み合わせ、長期販売できる商品へ実装しています。研究論文だけで終わらず、工場と市場へ広げている点を評価します。
食感、認知、感性を研究する
ハイチュウの弾力、チョコモナカジャンボのパリパリ感、アイスボックスの食感などは、原料配合、温度、水分、加工、包装、物流を制御する技術で作られます。商品の価値が味だけでなく、音や感触にもあるため、森永製菓は感性科学の研究センターを持ちます。
ぶどう糖を含むラムネについて、健康な若年成人の認知課題で選択的注意力と一部の脳活動値が向上した研究も公表しています。ただし、単回摂取、対象者、試験条件の結果を、すべての人の学力や仕事能力が上がるという広告へ広げてはいけません。森永製菓の論文一覧で研究内容を確認できます。
スマートファクトリー
高崎森永第3工場では、製造設備へIoT・AIを導入し、稼働状況をリアルタイムに可視化しています。問題を早く見つけ、長時間停止と生産ロスを減らす仕組みを、国内外の工場へ展開する計画です。森永製菓の生産技術で全体像が示されています。
設備異常を遠隔で見つけられれば、作業者が危険な機械へ近づく回数を減らせます。品質のばらつき、廃棄、復旧時間も減らせます。高崎森永は、成形、箱詰め、梱包の多くが自動化され、未経験者でもオペレーターとして学べると説明しています。
一方、自動化の労働者への利益は、結果で測る必要があります。深夜勤務を何人分減らしたか、重量物作業を何回なくしたか、設備停止時の残業を何時間減らしたか、削減した仕事の人を解雇せず再教育したかは公開されていません。生産効率だけでなく、人の時間と安全の改善を示せば、より強いAになります。
防災用inゼリーと米国生産
通常商品をそのまま備蓄用と呼ぶのではなく、保存試験、ゲル化、配合を変えて5年保存へ伸ばしたことには実用的な技術価値があります。調理不要、アレルゲン28品目不使用、水分とエネルギーの同時補給という設計は、災害時の利用者を具体的に考えたものです。
米国第2工場への1億3,600万ドル投資も、海外販売だけでなく、現地生産、物流距離、供給能力、雇用を増やします。日本から輸出するだけより、為替や海上輸送のリスクを分散できます。ただし、キャンディの供給能力拡大が人間への重大な貢献と同義ではなく、雇用の質と安全を伴うことが条件です。
研究分野の広さ、商品化、工場への実装、防災への応用を評価し、イノベーションはAです。Sにするには、自動化で減った事故、夜勤、労働時間、廃棄、エネルギーを定量的に公開し、技術利益を全雇用区分へ還元する必要があります。
プロテクション評価はB(普通)
プロテクションでは、災害、停電、感染症、サイバー攻撃、原料不足が起きたときに、従業員と利用者を守り、必要な商品を供給し続けられるかを見ます。
BCPとサイバー対策
森永製菓は2001年度にトータルリスクマネジメント規程を設け、自然災害クライシス対応要領などを整備しました。2017年度からは、計画を作るだけのBCPから、訓練と改善を継続するBCMへ進めています。リスクマネジメントで主要リスクと対応を公開しています。
自然災害では、ハザードマップ、避難場所、防災設備、訓練、非常食を確認し、台風や大雨の前に倉庫や配送センター周辺を監視します。感染症では対応方針を更新し、衛生用品を備蓄します。原料調達では、生産地と供給会社の分散、適正在庫の維持を方針にしています。
サイバー攻撃は、個人情報だけでなく、生産ラインと物流の停止につながります。会社は、セキュリティオペレーションセンターによる24時間監視、診断、全従業員教育、システム強化、発生時の連携と復旧を挙げています。
対策項目はそろっていますが、復旧目標時間、重要システムのオフライン代替、手動受注・出荷、バックアップ復元訓練の成功率は公開されていません。制度の存在と、攻撃を受けたときに実際に工場と物流を動かせることは別です。
防災商品と防災教育
5年保存のinゼリーは、森永製菓自身の事業継続だけでなく、家庭、学校、企業、自治体の備蓄を支えます。自治医科大学栃木県災害医学寄附講座との防災教室では、身近な食と菓子を使い、防災を学ぶ活動を始めました。防災教室の発表
商品を売るだけでなく、何を何日分備え、どの順番で食べ、アレルギーや水分をどう考えるかを学ぶ機会には価値があります。反対に、教室の参加人数、理解度、行動変化、自治体との備蓄契約などの実績はまだ限定的です。
災害・人道支援
2024年の能登半島地震では、森永乳業と合同で日本赤十字社へ5,000万円を寄付し、役員・従業員700人以上の寄付と会社のマッチング寄付も行いました。台湾東部沖地震では、森永乳業と合同で1,000万円を寄付しています。
寄付は被災地の選択肢を増やし、現地組織が必要な物へ使える点で有効です。一方、森永乳業との合同額であり、森永製菓単独の負担額は公開ページから分かりません。商品の提供量、供給先、輸送方法、発災後何時間で届けたかまで示せば、食品企業としての実働能力を評価できます。
BCM、24時間監視、調達分散、防災商品、教育、寄付を評価します。一方、代替生産、在庫、復旧時間、手動運用、被災地への商品供給実績の開示が足りないため、プロテクションはBです。
森永製菓がAランクへ上がる条件
森永製菓がAランクへ上がるには、新しい理念や制度を増やすだけでは足りません。今回B評価となった原因を解消し、正社員に集中している待遇、食品事故後の説明責任、技術と防災の効果を、グループ全体の実績として示す必要があります。
1. 非正規・子会社まで待遇改善を広げる
2026年の月例賃金総額1万7,775円増と、正社員の平均年収835万2,549円は高く評価できます。しかし、連結では平均1,985人、森永製菓単体でも平均703人の臨時雇用者が働いています。正社員の待遇だけでは、グループ全体をAとは判定できません。
まず、正社員、準社員、契約社員、パート、派遣、請負について、人数、賃金中央値、賞与、退職金、無期転換、正社員登用、離職率を同じ形式で公開することが必要です。そのうえで、2026年の賃上げが非正規雇用と主要子会社へどこまで及んだかを示し、実際の賃金差と雇用区分による格差を縮めることが求められます。
正規雇用の女性賃金が男性の64.8%にとどまる問題も、この条件に含まれます。職位、職種、勤続年数、手当を調整した賃金差と、管理職候補や部長以上への登用状況を継続して公開し、配置と昇進の偏りを改善する必要があります。
2. 食品事故と公正取引の問題を未解決のまま残さない
幼児向けマンナボーロ約19万個の自主回収については、最終原因、製造主体、影響範囲、設備・建屋・清掃・害獣管理の変更、再発防止後の監査結果まで公表する必要があります。「管理を強化する」という説明だけでは、同じ問題を防げる状態になったか判断できません。
公正取引委員会による立入検査は、現時点では違反が確定した出来事ではありません。だからこそ、調査終了後の対応が重要です。違反が認定されなければ、その結果と社内調査の内容を公表する。違反が認定された場合は、情報交換の経路、影響した商品と期間、責任の所在、取引先や消費者への対応、再発防止策を示す必要があります。
重大な食品回収と公正競争をめぐる調査が、原因や結論の分からない状態で残っている間は、セーフティと企業統治をAとは評価できません。問題が起きなかったように扱うのではなく、発生後の検証と改善まで完了させることが条件です。
3. 自動化とBCPの効果を人と供給の実績で示す
森永製菓の研究開発とスマートファクトリーはA評価ですが、生産性が上がったことだけでは、働く人への貢献を判断できません。自動化によって減った夜勤時間、重量物作業、機械への接近回数、労災、残業を公開し、教育、配置転換、雇用維持まで含めて成果を示す必要があります。技術が人を減らすためではなく、危険と負担を減らすために使われたと確認できれば、イノベーションのAが労働環境の評価にもつながります。
プロテクションでも同様です。重要商品ごとの代替工場、目標復旧時間、最低在庫、停電時の電源、手動での受注・出荷、サイバー攻撃を想定した復旧訓練の結果を示す必要があります。防災用inゼリーについても、自治体、学校、病院への供給量と、災害発生後に届けるまでの時間が分かれば、非常時に人を守る実力を評価できます。
自動化とBCPを計画や設備の説明で終わらせず、労働負担の減少と供給継続の実績で証明することが、BからAへ上がる3つ目の条件です。
最終評価
森永製菓は、単純に「お菓子を売る会社」ではありません。菓子が生む楽しさと交流、inゼリーの栄養補給、防災備蓄、食育、アレルゲン検査、カカオ産地支援まで、人の生活へ複数の接点を持っています。
正社員の平均年収835万2,549円、2026年の月例賃金総額1万7,775円増、平均勤続19.0年、残業月14.1時間、有給14.0日、労災死亡ゼロは、働く人への責任を一定程度果たしている証拠です。研究開発とスマートファクトリー、5年保存のinゼリー、米国で204人の雇用を生む投資も評価できます。
一方、連結の平均臨時雇用者1,985人、工場の深夜交替、非正規との待遇差、正規雇用の男女賃金比64.8%は、正社員平均だけでは見えない課題です。幼児向けマンナボーロ約19万個の回収は食品安全の実績として重く、公取委の立入検査は結論を待ちながらも、公正競争の統治を問う出来事です。
森永製菓には、良い制度と技術があります。Aへ上がるために必要なのは、新しい理念を増やすことより、非正規・子会社までの待遇、回収後の最終原因、自動化による人の負担軽減、公取委調査の結果を、具体的な数字で公開することです。
以上から、森永製菓株式会社の総合シビックランクはB(普通)と判定します。
