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企業審査:セキ株式会社|総合シビックランクA|水性フレキソでVOC・CO2を削減、工場夜勤と男女賃金差・危機対応開示が課題

コンビニや自動販売機で水やお茶を買うとき、ラベルは単なる飾りに見えるかもしれません。しかし、そのラベルには商品情報を伝える役割があり、製造する工場ではインキや溶剤、電力が使われています。どの印刷方式を選ぶかによって、工場で働く人が吸い込む可能性のある揮発性有機化合物や、製造時のCO2排出量まで変わります。

普段手にする「サントリー天然水550ml」のラベルにも関わってきたセキ株式会社は、見えにくい包装工程を通じて、私たちの購入する飲料の安全性、環境負荷、供給の安定性に接続する企業です。

目次

結論:総合シビックランクはA

セキ株式会社は、愛媛県松山市と東京都渋谷区に本社を置く総合印刷会社です。一般的な商業印刷だけでなく、パッケージ、飲料ラベル、紙器、広告・デザイン、デジタルマーケティング、地域商社などへ事業を広げています。東京証券取引所スタンダード市場に上場しており、2026年3月期の単体売上高は91億9,300万円、連結売上高は121億3,200万円です。

今回の審査で最も高く評価したのは、環境配慮を理念だけで終わらせず、水性フレキソ印刷を実際の大手飲料商品へ導入していることです。2019年には「サントリー天然水550ml」にセキが印刷した水性フレキソラベルが採用され、その後もサントリーやフジシールとの協働を広げています。2024年には「伊右衛門600ml」の両面ラベルを水性フレキソ印刷で実用化し、従来の油性グラビア印刷と比較して印刷工程のCO2排出量を50%以上削減できると公表しています。

水性フレキソで使用する水性インキは有機溶剤の含有量が極めて少なく、環境面だけでなく工場の作業環境改善にもつながります。SEKI BLUE FACTORYでは2023年10月から使用電力を実質再生可能エネルギー由来100%へ切り替え、2022年度の使用電力量を基準に年間約567トンのCO2削減を見込んでいます。伊予工場では太陽光発電、ISO14001、Japan Color認証、予防保全、オンライン品質検査なども確認できます。

労働環境は一方的に高評価とはしません。2026年3月期の有価証券報告書では、セキ単体の平均年間給与は464万8,000円、平均年齢41.0歳、平均勤続年数15.7年です。有給休暇取得率は68.3%で目標60%を上回り、採用資料では月平均所定外労働時間が2024年度11.6時間、2025年度13.0時間とされています。過重労働が常態化している企業を示す数字ではありません。

ただし、伊予工場の印刷機オペレーターには8時30分から17時15分と、20時から翌4時45分の交替勤務があります。年間休日120日、月平均残業11時間、月給20万~25万円という求人条件は確認できますが、夜勤そのものによる生活・睡眠への負担は残ります。

男女格差も課題です。2026年3月期の法定開示では、女性管理職比率8.7%、男女賃金差は全労働者61.9%、正規雇用75.5%、有期労働者40.9%でした。また、法定の男性育児休業取得率は0.0%です。一方、会社独自の「男性の育児特別休暇」は取得率100%とされており、両者は別制度です。独自の有給休暇制度を評価しつつも、法定育休取得まで十分に広がっているとは判断しません。

Safetyでは、水性インキ、クリーンルーム、オンライン品質検査、予防保全、事故是正委員会などを評価できます。今回の公開情報調査では、セキ株式会社本体について総合評価を大きく下げる死亡事故、大規模な製品回収、重大な行政処分を裏付ける資料は確認できませんでした。ただし、会社単体の休業災害件数、度数率、強度率などの最新数値は公開情報では確認できず、労働安全の透明性は十分ではありません。

Protectionでは、CISOと情報セキュリティ委員会、プライバシーマーク、セキュリティルーム、内部監査などを確認できます。主要製造設備には防火・耐震施策があると有価証券報告書に記載されています。一方、非常電源、代替生産能力、SOC、EDR、多要素認証、オフラインバックアップ、復旧目標時間などの具体的な開示は限定的です。2025年度には主要取引先へのサイバー攻撃によるシステム障害の影響で、セキグループのカタログ販売関連事業の受注・物流が一時制限され、売上が減少した事例もあり、取引先を含めた供給網の脆弱性が実際の業績へ波及し得ることが確認できます。

また、2026年6月には連結子会社の株式会社エス・ピー・シーがフリーランス法違反で公正取引委員会から勧告を受けています。これはセキ株式会社本体の直接違反ではないため、本体の行政処分として扱いません。ただし、96.4%を保有する主要連結子会社で起きた事案であり、グループガバナンス上の注意材料としては残ります。

以上を総合し、セキ株式会社は、事業による人間への貢献とInnovationに明確な長所があり、労働時間も全社平均では比較的抑えられています。一方で、工場夜勤、男女賃金差、女性管理職比率、労災数値の不足、危機対応の具体的開示、子会社ガバナンスには改善余地があります。そのため、総合シビックランクはAと判断します。

審査項目ランク主な評価
労働環境B有休取得率68.3%、平均残業は概ね月10時間台、長い平均勤続年数、労働組合などを評価。一方、伊予工場の夜勤、男女賃金差、女性管理職比率、法定男性育休0%が課題
事業による人間への貢献A商品情報を支える印刷・包装に加え、水性フレキソを飲料ラベルへ社会実装し、VOC・CO2・インキ使用量の削減につなげている
SafetyB水性インキ、クリーンルーム、オンライン品質検査、予防保全、事故是正委員会を評価。会社単体の最新労災件数・度数率等の開示が不足
InnovationA両面水性フレキソ、IoTによるエネルギー可視化・故障予兆、予防保全、パッケージ設備投資などを人間・環境負担の削減へ接続
ProtectionBCISO、情報セキュリティ委員会、プライバシーマーク、防火・耐震施策を評価。非常電源、代替生産、SOC・EDR、バックアップ・復旧目標の具体的開示が弱い
総合シビックランクA環境負荷と作業環境を改善する印刷技術を実用品へ広げている点を高く評価。労働格差、安全データ、危機対応、子会社統治が今後の課題

基本情報

今回審査するのは、愛媛県松山市に本拠を置く「セキ株式会社」です。同名・類似名の企業とは分け、証券コード7857、EDINETコードE00730の上場法人を対象とします。

項目内容
会社名セキ株式会社
英文名SEKI CO., LTD.
創業1908年7月
設立1949年3月
松山本社愛媛県松山市湊町7丁目7番地1
東京本社東京都渋谷区代々木3丁目2番8号
代表者代表取締役社長 関 宏孝
資本金12億170万円
従業員数公式会社概要306名。2026年3月末の有価証券報告書では単体就業人員308名、臨時従業員46名を外数で開示
連結従業員数2026年3月末484名、臨時従業員71名を外数で開示
2026年3月期単体売上高91億9,300万円
2026年3月期連結売上高121億3,200万円
上場東京証券取引所スタンダード市場、証券コード7857
主な事業総合印刷、パッケージ、洋紙・板紙販売、広告・デザイン、WEB・デジタルマーケティング、システム開発、地域商社、カタログ販売、労働者派遣など
主要製造拠点伊予工場、SEKI BLUE FACTORY
主な認証・制度ISO14001、プライバシーマーク、FSC CoC、Japan Color、DBJ環境格付など

公式会社概要の従業員数306名と、有価証券報告書の308名は集計時点や表示方法が異なるため、どちらかが誤りと判断しません。有価証券報告書では臨時従業員46名を外数で示しているため、正社員・常勤就業人員と臨時雇用を混同しないことも重要です。

主な業務内容と国内拠点

印刷会社というと、パンフレットやチラシを印刷する会社を想像しがちです。しかしセキは、飲料ラベルや食品パッケージ、紙器、機密性の高い印刷、WEB、広告、イベントなどを組み合わせて企業や自治体の情報伝達を支えています。どの拠点でどの仕事が行われているかを見ると、オフィスワークと工場労働では働き方や安全上の論点が大きく違うことも分かります。

伊予工場は総合印刷の中核

愛媛県伊予市の伊予工場は、印刷から製本・加工までを担う主要製造拠点です。ハローワークの求人では、印刷機オペレーターが印刷機・加工機の操作、インキや用紙の搬入・セッティング、色合い・品質確認などを担当するとされています。

工場はJapan Color認証を取得し、色再現の安定性を管理しています。独自の品質マネジメントであるIOIシステム、予防保全活動SIPM、オンライン品質検査装置、事故是正委員会も公開されています。

伊予工場は印刷会社としての品質・生産能力の中心である一方、夜勤を含む交替勤務が存在するため、企業全体のオフィス勤務データだけで働きやすさを判断できません。

SEKI BLUE FACTORYは水性フレキソの専門拠点

同じ伊予市にあるSEKI BLUE FACTORYは、2017年に新設された水性フレキソ印刷加工工場です。セキが「人と地球にやさしい次世代型印刷工場」と位置付ける拠点で、飲料ラベルや食品パッケージなどの水性フレキソ印刷を行います。

水性フレキソでは、有機溶剤の含有量が極めて少ない水性インキを使います。工場側の説明では、油性グラビアのように溶剤を含む排気ガスを燃焼処理する必要がなく、その工程で発生するCO2を抑えられます。インキ使用量も従来方式より約60%少ないとされています。

食品・飲料向け包装を扱うため、クリーンルーム化、陽圧管理、静電気対策、衛生管理なども実施しています。環境負荷低減と食品パッケージ品質の両方を狙う拠点です。

松山本社・東京本社と全国営業拠点

松山本社には経営・管理、営業、企画等の機能があり、東京本社は首都圏の顧客対応・営業の重要拠点です。このほか大阪、高松、名古屋、広島、福岡、高知にも営業拠点があります。

印刷・包装は顧客ごとの仕様調整、デザイン、営業、校正、製造、品質確認、納品まで複数部門が連携する仕事です。全国に営業拠点を持つことで顧客との距離は縮まりますが、製造機能そのものは愛媛県内への依存が比較的大きく、災害時の生産代替というProtectionでは別の評価が必要です。

事業による人間への貢献:A

包装や印刷は、消費者から見ると「なくても商品そのものは存在する」と思われやすい分野です。しかし、食品名、原材料、アレルゲン、使用方法、注意事項、企業連絡先などを正しく伝えることは、安全な購入や利用の前提です。さらにセキの場合は、その情報を載せる包装を、より少ない溶剤・エネルギーで作る方向へ技術を変えている点が重要です。

印刷は商品情報と安全な選択を支える

食品や飲料のラベルは、単なる広告ではありません。商品名、容量、原材料、保存方法、注意事項など、消費者が購入・利用を判断する情報を伝えます。印刷品質が悪く文字が読めない、色がずれる、必要な表示が欠けると、利用者の安全や企業への信頼にも影響します。

セキは商業印刷から包装、紙器、情報処理まで扱い、Japan Color認証やオンライン品質検査などによって印刷品質を管理しています。事業の人間貢献は「印刷物を大量に作る」ことではなく、生活の中で必要な情報を読み取れる形で届けることにあります。

ただし、広告チラシや販促物のすべてが同じ社会的価値を持つとは評価しません。不要な大量印刷は紙やエネルギーを消費します。そのため、事業全体を無条件でAにするのではなく、環境対応型パッケージや安全な情報伝達など、具体的な人間への還元を重視します。

サントリー天然水550mlのラベルへ採用

セキと日常生活の接点を最も分かりやすく示すのが「サントリー天然水550ml」です。

セキの2024年公表資料では、サントリー食品インターナショナルとフジシールとの水性フレキソ化の取り組みの中で、2019年に「サントリー天然水550ml」へセキが印刷した水性フレキソラベルが採用されたと明記されています。

つまり、スーパーやコンビニ、自動販売機で市民が実際に手にする飲料の容器に、セキの印刷技術が使われてきたことが確認できます。BtoB企業であっても、その技術は最終商品を通して市民生活へ届いています。

2022年にはサントリー烏龍茶600ml、2024年には伊右衛門600mlへ採用が拡大し、2025年の展示会でもサントリー天然水550mlが水性フレキソの実績品として紹介されています。特定の一度きりの実験ではなく、複数年にわたり実用品へ展開されている点を評価できます。

ただし、現在販売されているすべてのサントリー天然水の全容量・全地域のラベルをセキが製造しているとは確認できません。商品審査で関係を使う場合は、具体的なSKUや供給範囲を別途確認する必要があります。

VOCを減らすことは工場で働く人にも関係する

水性フレキソの価値はCO2削減だけではありません。

従来の油性グラビア印刷では有機溶剤を使用し、揮発性有機化合物、VOCへの対応が必要になります。水性フレキソで使用する水性インキは有機溶剤の含有量が極めて少ないため、作業者の化学物質への接触や工場内外へのVOC排出を減らす方向に働きます。

有害物質の使用を減らす技術は、「環境にやさしい」という抽象的な価値だけでなく、印刷現場で働く人の安全衛生へ直接接続します。企業自身も有価証券報告書で、水性フレキソの普及が製造現場の労働環境改善に貢献すると説明しています。

もちろん、インキが水性になれば工場の危険がすべて消えるわけではありません。印刷機の可動部、搬送、重量物、夜勤、騒音など別のリスクは残ります。それでも、危険要因の一つを工程設計によって減らしていることは明確な人間還元です。

CO2と資材使用量を工程から減らす

セキは、水性フレキソ印刷について油性グラビアと比べ印刷工程のCO2排出量を50%以上削減できるとしています。数値はSuMPOの算定条件を使った試算で、すべての製品や工場で一律に50%減るという意味ではありません。

それでも、溶剤を含む排気の燃焼処理が不要になること、使用インキ量を減らせることなど、削減につながる工程上の理由があります。

2023年10月にはSEKI BLUE FACTORYの電力を実質再生可能エネルギー由来100%へ切り替え、年間約567トンのCO2削減を見込むと発表しました。伊予工場では2013年から太陽光発電も行っています。

環境負荷の削減を人間貢献として見る理由は、CO2そのものを評価したいからではありません。エネルギーや化石資源を少なく使い、工場周辺の化学物質排出を減らしながら、同じ生活用品を提供できるなら、市民が負担する環境・健康・資源コストを下げる方向に働くからです。

地域情報・文化への貢献もある

セキグループは印刷だけでなく、地域情報誌、イベント、地域商社、美術館などにも関わっています。セキ美術館は道後地区で文化・観光の一部を担い、地域向けイベントも開催しています。

ただし、美術館の運営は連結子会社の関興産株式会社へ委託されており、グループ事業をセキ株式会社単体の直接業務として混同しません。また、地域文化活動があるからといって労働環境や安全上の問題を相殺することもしません。

事業全体を見ると、セキは従来型印刷の需要縮小に対応しながら、包装、デジタル、地域事業へ業域を広げています。中でも、生活者が日常的に接する食品・飲料包装をより安全・低負荷に変える取り組みには明確な人間貢献があるため、この項目はAとします。

代表業務・代表事業:水性フレキソによる飲料・食品パッケージ印刷

セキを象徴する代表業務として、本記事では水性フレキソによる飲料・食品パッケージ印刷を取り上げます。これは特定の商品を採点するためではなく、セキが印刷会社としてどのような価値を社会へ追加しているのかを最も具体的に示す事業だからです。

従来の油性グラビア印刷は高品質な包装印刷に広く使われてきました。一方、溶剤を使用するためVOC対策や排気処理が必要です。水性フレキソは水性インキを使い、有機溶剤を大幅に減らしながらフィルム等へ印刷します。

セキは2017年にSEKI BLUE FACTORYを開設し、技術の量産化を進めました。2019年にはサントリー天然水550mlへ採用され、2022年にはサントリー烏龍茶、2024年にはフジシール、サントリーとの協働で両面水性フレキソ印刷を伊右衛門600mlへ導入しました。

両面印刷では表面と裏面の位置を正確に合わせる必要があります。セキは約3年の検証を通じて位置合わせ技術を確立したと説明しています。ここで評価すべきなのは「新しい印刷方式を発明した」ことだけではなく、既存の商品品質やデザインを損なわず、大量販売される飲料へ採用できるところまで工程を安定させたことです。

食品包装では、環境性能だけを優先して印刷品質や衛生性が下がれば人間への貢献にはなりません。SEKI BLUE FACTORYではクリーンルーム、陽圧、衛生管理を組み合わせ、食品向けの量産環境を整えています。

代表業務としては、人間への貢献とInnovationの両方を高く評価できます。一方で、受注量が増えることで工場夜勤や人員負担が増えていないかは別に確認する必要があります。技術革新の成果が働く人の生活時間まで改善しているかについては、公開データがまだ十分ではありません。

労働環境:B

自分がセキで働く立場なら、環境に配慮した製品を作っているかだけでなく、毎月の給与、残業、休日、夜勤、育児との両立が生活そのものを左右します。セキは全社平均の残業や有休取得に良い数字がある一方、製造現場の夜勤と男女間の結果格差を分けて見る必要があります。

平均年収は464万8,000円、平均勤続15.7年

2026年3月期の有価証券報告書では、セキ株式会社単体の就業人員は308人、平均年齢41.0歳、平均勤続年数15.7年、平均年間給与464万8,000円です。平均年間給与には賞与と基準外賃金が含まれます。

平均勤続15.7年は、短期間で大量に人が入れ替わる会社という印象ではありません。2024年度の採用情報でも平均勤続年数16.8年とされており、時点差はあるものの比較的長期就業が多いことがうかがえます。

ただし、平均年収464万8,000円だけでは工場オペレーター、営業、管理職、東京勤務などの待遇差は分かりません。平均値を全社員の標準給与として扱わず、具体的な求人条件と分けて見ます。

工場オペレーターは月給20万~25万円

2026年6月のハローワーク求人では、伊予工場の印刷機オペレーターを正社員として募集し、月給20万円から25万円としています。固定残業代を前提とした求人ではなく、経験不問・学歴不問で、印刷機や加工機の操作、インキ・用紙のセット、品質確認などを担当します。

この給与を「セキ全社員の基本給」とは扱えません。工場オペレーターという特定職種の募集条件です。

新卒採用にも年1回の昇給、年2回の賞与が示されています。ただし新卒初任給の引き上げが確認できても、それを既存社員のベースアップとしては扱いません。今回の調査では、2026年度に全既存社員へ一律で何円のベースアップを実施したかという明確な会社単体の公表値は確認できませんでした。

残業は全社平均では月10時間台

マイナビ2027に掲載された2024年度実績では、月平均所定外労働時間は11.6時間です。マイナビ2028の2025年度データでは13.0時間となっています。

2026年6月の伊予工場オペレーター求人でも月平均時間外労働11時間とされており、少なくとも公開求人・採用情報を見る限り、月40~60時間の残業を通常前提とする企業とは異なります。

会社は毎週水曜日をノー残業デーとしており、有価証券報告書でも実施実績ありとしています。CSRページでは松山本社で20時までに全員退社するルールも紹介しています。

一方、平均値は繁忙部署や特定職種の負担を隠す可能性があります。部門別・職種別の残業分布や、管理職の労働時間までは公開情報から確認できません。

年間休日120日、有休取得率68.3%

ハローワークの工場求人は年間休日120日、土日祝を基本とする週休2日制です。新卒採用でも年間休日120日が示されています。

有価証券報告書では、有給休暇取得率の目標60%に対して2025年度実績68.3%です。マイナビの2024年度データでは平均有給休暇取得日数11.5日とされています。

取得率68.3%は「ほとんど有休を取れない会社」とは言いにくい数字です。一方、100%取得には距離があり、部署差も公開されていません。企業審査としてはプラス材料としつつ、最高評価の根拠にはしません。

伊予工場には20時から翌4時45分の夜勤がある

労働環境で最も注意すべき点の一つが工場の交替勤務です。

2026年6月の印刷機オペレーター求人では、勤務時間は8時30分から17時15分と、20時から翌4時45分の交替制です。月平均残業は11時間と比較的抑えられていますが、夜勤は残業とは別の負担です。

夜間に働くことは、睡眠リズム、食事、家族との時間、健康管理へ影響します。工場が土日休みで年間休日120日であっても、「夜勤があるか」は日勤中心の本社勤務とは生活条件が大きく異なります。

セキでは全社平均の働きやすさだけで工場を評価せず、工場勤務の夜勤負担を労働環境Bの理由に含めます。

男性の「育児特別休暇100%」と法定育休0%は別の数字

セキの人的資本開示には、一見すると矛盾する二つの数字があります。

会社独自の指標では「男性の育児特別休暇取得率100%」としています。一方、同じ2026年3月期の法定開示では、男性労働者の育児休業取得率は0.0%です。

これはどちらかが誤りという意味ではありません。会社独自の育児特別休暇と、育児・介護休業法に基づいて算定する育児休業は別制度です。

セキは以前から男性向けに有給の育児特別休暇を設け、育児支援を進めてきました。採用情報では男性の取得実績もあるとしています。この取り組みは評価できます。

しかし、法定育休取得率が0%である以上、「男性が長期の育児休業を十分に取得している」と評価することはできません。短期の特別休暇から法定育休へ選択肢を広げられるかが次の課題です。

男女賃金差と女性管理職比率は明確な課題

2026年3月期の有価証券報告書では、管理職に占める女性の割合は8.7%です。男女賃金差は、女性の賃金を男性100とした場合、全労働者61.9%、正規雇用労働者75.5%、有期労働者40.9%です。

賃金差があるという事実だけで「同じ仕事をする女性へ違法に低い賃金を払っている」とは判断できません。職種、役職、勤続年数、労働時間などの構成差が影響する可能性があるためです。

それでも、正規雇用でも75.5%、有期雇用では40.9%という結果は小さな差ではありません。女性管理職8.7%という登用結果と合わせると、採用後の職域、昇進、雇用形態などのどこかに大きな構成差が残っている可能性があります。

企業は性別・国籍などによらない多様な人材登用を方針として掲げています。今後は方針だけでなく、賃金差縮小や女性管理職増加という結果で進展を確認したいところです。

福利厚生・健康支援は複数確認できる

採用情報では、社会保険、社員持株制度、育児・介護休業、奨学金返還支援、健康診断受診率100%、インフルエンザ予防接種の全額会社補助、メンタルヘルス窓口、ハイパーメディカル制度などが示されています。

研修では新入社員研修、OJT、情報セキュリティ研修、包装管理士講座、通信教育助成、社内の機械操作マイスター制度などがあります。製造現場で技術を学び、資格・技能へつなげる仕組みがあることはプラスです。

1956年に結成されたセキ労働組合もあり、2026年3月末の組合員数は160人です。有価証券報告書では労使関係について特記すべき事項はないとしています。

臨時従業員と子会社を正社員本体と混同しない

有価証券報告書では単体308人に対し、臨時従業員46人を外数で開示しています。連結では484人に対し臨時71人です。

臨時従業員の雇用区分、賃金、有休、賞与等の詳細は公開情報では十分確認できません。男女賃金差では有期労働者40.9%という大きな差があるため、非正規・有期雇用の待遇透明性は今後の重要な確認点です。

また、2026年6月にフリーランス法違反で公正取引委員会の勧告を受けたのは、連結子会社の株式会社エス・ピー・シーです。取引条件を一部明示しなかったこと、報酬の支払い遅延、振込手数料の差し引きが認定されました。

この事案をセキ株式会社本体の直接の労務違反として書くことはしません。一方、エス・ピー・シーはセキが96.4%を保有する連結子会社であり、グループのフリーランス取引管理という観点では改善を求める材料です。

全体として、残業、有休、長期勤続、福利厚生には良い材料があります。しかし、工場夜勤、男女賃金差、女性登用、法定男性育休、有期雇用の透明性を考慮し、労働環境はBとします。

Safety:B

飲料ラベルや食品パッケージを作る企業では、利用者に正しい表示を届ける品質安全と、印刷機・インキを扱う従業員の労働安全の両方が必要です。セキは化学物質を減らす工程や品質検査を持つ一方、会社単体の労災実績を定量的に追える開示が弱い点を分けて評価します。

水性インキはVOCへの曝露低減に寄与する

水性フレキソで使う水性インキは、有機溶剤の含有量が極めて少ないと説明されています。

油性印刷の溶剤は換気・回収・燃焼処理などの管理が必要であり、水性化によってVOCの使用・排出を減らせるなら、工場周辺環境だけでなく、印刷工程に従事する人の化学物質管理も軽くできます。

セキ自身も水性フレキソが「製造現場の労働環境改善」に貢献すると有価証券報告書で述べています。環境施策が働く人のSafetyにも接続している点は高く評価できます。

食品包装に対応するクリーンな生産環境

SEKI BLUE FACTORYでは食品向け包装を扱うため、クリーンルーム化、陽圧、静電気対策などを実施しています。2025年度には紙パッケージ分野でも最新UV印刷機やトムソン機を導入し、印刷加工環境をクリーンルームへ改修したと開示しています。

食品パッケージでは異物、汚れ、印刷不良が商品安全や回収につながる可能性があります。衛生環境を設備として整備していることはSafety上のプラスです。

品質検査と予防保全を仕組みにしている

セキのCSR調達ガイドラインでは、独自の品質管理IOIシステム、機械保全活動SIPM、オンライン品質検査装置、事故是正委員会を明示しています。

機械が故障してから直すのではなく、予防保全によって突発停止を減らすことは、挟まれ・巻き込まれ等のリスクを直接ゼロにするものではありませんが、異常状態で設備を運転し続ける可能性を下げます。

オンライン検査は、人間の目だけに品質確認を依存せず、印刷不良を早期に検出する方向に働きます。飲料・食品ラベルでは、表示や見た目の品質安定に意味があります。

重大事故・回収・行政処分は本体について確認できず

死亡事故、重大労災、製品事故、大規模リコール、行政処分をセキ株式会社本体について追加検索しました。

今回確認できた公的資料・主要公開情報の範囲では、総合評価を大きく引き下げるようなセキ株式会社本体の死亡事故、大規模な製品回収、重大な安全行政処分を裏付ける資料は確認できませんでした。

これは「事故が一件もない」と証明するものではありません。企業が全労災を公表していなければ、検索だけで小規模な事故を網羅することはできません。

また、連結子会社エス・ピー・シーへの公正取引委員会勧告は取引適正化の問題であり、製品Safetyやセキ本体の事故として扱いません。

労災の定量開示が不足

セキは事故是正委員会や安全衛生方針を公開していますが、会社単体の年間労働災害件数、休業災害件数、度数率、強度率、死亡災害件数の時系列を一般向けに十分公開していません。

伊予工場では大型印刷機・加工機、インキ・用紙の搬入、夜間操業があるため、労働安全の定量情報は重要です。

SafetyをAとするには、「仕組みがある」だけでなく、実際の事故がどれだけ減っているかを確認できることが望まれます。水性化と品質管理の強みを評価しつつ、労災透明性の不足からSafetyはBとします。

Innovation:A

Innovationが読者に関係するのは、機械が新しいからではありません。新技術によって、同じ商品を作るために必要な溶剤、電力、インキ、検査作業、故障対応を減らし、その結果が安全性や価格、供給安定へ返ってくるかが重要です。セキには、その因果関係を比較的確認しやすい技術があります。

水性フレキソを大手飲料へ量産導入

水性フレキソ自体はセキだけの発明ではありません。しかし、食品・飲料向けラベルで求められる品質を満たし、サントリー天然水などの大量流通商品へ採用できる生産技術へ仕上げている点にInnovationがあります。

2019年のサントリー天然水550mlから、烏龍茶、伊右衛門などへ採用が広がっています。技術が実験設備で止まらず、日常商品へ継続して使われていることを重視します。

両面水性フレキソで従来の制約を越えた

従来のフレキソ設備では、裏面の絵柄と表面印刷の位置を正確に合わせる両面印刷が難しい課題がありました。

セキは両面印刷が可能な設備で約3年間の検証を行い、位置合わせ技術を確立したと説明しています。これにより、表面のマットニスや耐摩耗性向上の塗工を含む伊右衛門600mlラベルへ水性フレキソを適用できました。

2024年のサントリー・フジシールとの共同開発では、従来の油性グラビア印刷に比べ印刷工程のCO2を50%以上削減できるとしています。環境性能を高めるために商品デザインや耐久性を大きく犠牲にせず、適用範囲を広げたことを評価できます。

IoTでエネルギーと設備状態を可視化

SEKI BLUE FACTORYではIoTを使い、設備のエネルギー使用状況を収集・可視化しています。蓄積データをBIや生産管理へ連携し、故障予兆にも活用すると説明しています。

これは単なる「DX導入」ではありません。設備異常を早く察知できれば、突発停止、緊急修理、廃棄ロス、納期遅延を減らす方向に働きます。故障後に人が長時間対応するより、計画的な保全へ移行できる可能性があります。

ただし、IoT導入によって実際に残業が何時間減ったか、保全要員の夜間呼び出しが何件減ったかという人間側の定量効果は公開情報では確認できません。この点はS評価をしない理由です。

予防保全とオンライン検査は人の判断を補助する

SIPMによる予防保全とオンライン品質検査もInnovationとして評価できます。

印刷品質の確認を人の目だけに依存すると、長時間の集中や見逃しリスクが生じます。検査装置で異常を自動検知し、人が判断・対応へ集中できるなら、単純監視負担を減らしながら品質を高められます。

一方、自動化が人員削減だけに使われ、残った人の負担が増えていないかも本来は確認すべきです。セキの公開資料では、技術投資後の人員配置や労働時間の変化を十分に追える数値はありません。

新設備投資を「投資額」ではなく用途で評価

2025年度には、成長分野である紙パッケージへ最新UV印刷機、トムソン機を導入し、印刷加工環境をクリーンルームへ改修しています。

企業審査では設備投資額が大きいこと自体を高評価にはしません。今回は、食品・医療向けパッケージの衛生性・品質を高めるためのクリーンルーム化や、環境負荷を減らす水性フレキソ、予防保全といった「人間側への意味」が確認できる部分を評価します。

水性フレキソ、IoT、品質検査、予防保全が、資源削減、安全性、故障削減へ複数の経路でつながっているためInnovationはAとします。労働時間短縮や夜勤削減まで明確な成果が出れば、さらに高い評価を検討できます。

Protection:B

災害やサイバー攻撃が起きたとき、印刷会社が止まっても自分には関係ないように見えるかもしれません。しかし、食品ラベル、行政印刷物、機密文書、物流関連の印刷・データ処理が止まれば、商品の出荷や情報提供に影響することがあります。セキでは一定の防御体制がある一方、復旧力を具体的に判断できる情報が不足しています。

主要設備には防火・耐震施策

2026年3月期の有価証券報告書では、製造設備等の主要設備に防火・耐震面の施策を施しているとしています。

一方で、災害時に電力等の動力源が停止したり、原材料の搬入が遅れたりすれば、生産体制へ重要な影響が出る可能性も明記しています。

リスクを開示していることは評価できますが、非常用発電機の容量、何時間稼働できるか、原材料の備蓄日数、どの拠点へ生産を振り替えられるかなどは公開情報では確認できません。

製造拠点が愛媛に集中するリスク

セキには全国の営業拠点がありますが、主要製造拠点である伊予工場とSEKI BLUE FACTORYはいずれも愛媛県伊予市です。

距離の近い二つの工場を持つことは工程分散にはなりますが、広域災害という観点では同じ地域に集中しています。また、両工場の設備用途が異なるため、片方が停止した際にもう片方が全製品を代替できるとは確認できません。

グループには新聞印刷を担うメディアプレス瀬戸内など別法人の設備もありますが、それをセキ株式会社の代替生産能力として自動的に扱いません。

CISOと情報セキュリティ委員会を設置

情報面では、セキはCISO、最高情報責任者を置き、情報セキュリティ委員会を全社横断で運営しています。プライバシーマークを2002年から取得し、情報セキュリティ教育、内部監査、機密案件用のセキュリティルームと厳格な入室管理も確認できます。

個人情報、試験問題、選挙関連、金券類など機密性の高い案件を扱うため、情報セキュリティは印刷会社として本業の一部です。

ただし、SOCによる24時間監視、EDR、多要素認証、ゼロトラスト、OTネットワーク分離、CSIRT、オフラインバックアップ、ランサムウェア復旧訓練、復旧目標時間など、現代的なサイバーProtectionの具体策は公開情報では十分確認できませんでした。

「公開していない」ことを「実施していない」とは判断しません。しかし、ProtectionをA以上にするには、攻撃を受けた後に何時間・何日で戻せるかまで確認したいところです。

取引先のサイバー攻撃が実際に業績へ波及

2026年3月期第3四半期の決算短信では、カタログ販売関連事業で主要取引先がサイバー攻撃を受け、システム障害によって受注・物流機能が一時制限された影響が開示されています。

この攻撃を受けたのはセキ自身ではありません。そのため、セキがサイバー攻撃を受けた事例としては扱いません。

しかし、結果として同事業の売上高は前年同期比14.2%減、営業利益は15.6%減となっており、外部取引先の障害がセキの供給・収益へ波及することが実例として示されました。

Protectionでは自社ネットワークを守るだけでなく、依存先が止まったときの代替受注、物流、仕入、販売ルートを準備することが重要です。この事例は、サプライチェーン側のBCPをさらに強化する必要性を示します。

サプライヤーへCSR・情報管理を働きかけ

セキは主要協力会社へCSRガイドラインを展開し、情報セキュリティや品質管理についてアンケート、共有、必要に応じた監査を行っています。

供給網まで管理対象にしていることはProtection上のプラスです。ただし、特定サプライヤーへの依存度、代替調達先の確保、災害訓練の実績などは公開情報で十分把握できません。

防火・耐震、CISO、情報セキュリティ委員会、協力会社管理という基礎はあります。しかし、実際の代替生産・非常電源・サイバー復旧能力の具体的開示が弱く、取引先サイバー障害の実害も確認されたため、ProtectionはBとします。

項目別評価

項目ランク評価理由
労働環境B平均残業は月10時間台、有休取得率68.3%、年間休日120日、平均勤続15.7年、福利厚生・労働組合を評価。工場夜勤、女性管理職8.7%、男女賃金差、法定男性育休0%、有期雇用の透明性が課題
事業による人間への貢献A印刷・包装による情報伝達に加え、水性フレキソをサントリー天然水などへ社会実装し、VOC、CO2、インキ使用量を減らす方向へ本業を変えている
SafetyB水性インキ、クリーンルーム、Japan Color、オンライン検査、SIPM、事故是正委員会を評価。本体の重大事故は確認できないが、労災件数・度数率等の公開が不足
InnovationA両面水性フレキソ、IoTエネルギー管理・故障予兆、オンライン検査、予防保全、食品向けクリーン設備など、人間・資源負担を減らす技術を実装
ProtectionB防火・耐震、CISO、情報セキュリティ委員会、プライバシーマーク、協力会社管理を評価。愛媛への製造集中、非常電源・代替生産・SOC・EDR・復旧目標の開示不足、取引先サイバー障害の波及が課題
総合シビックランクA本業の印刷技術を安全・低VOC・低CO2へ転換し、実際の大手飲料へ普及させている点が強い。労働格差、安全データ、危機対応・グループ統治には改善余地

総合評価

セキ株式会社は、一般消費者が社名を意識する機会は少ないものの、日常的に手にする商品ラベルやパッケージの裏側で生活と接続している企業です。

特にサントリー天然水550mlへ2019年から水性フレキソラベルが採用されている事実は、セキの技術が研究段階ではなく、市民が実際に購入する大量流通商品へ到達していることを示します。

企業審査で高く評価するのは、単に「環境に良い印刷」を掲げているからではありません。

水性インキによってVOCを減らすことは、印刷工程の周辺環境だけでなく、そこで働く人の化学物質への接触を減らす方向に働きます。油性グラビアと比べてCO2を50%以上削減できるとする水性フレキソ、SEKI BLUE FACTORYの実質再エネ電力100%、伊予工場の太陽光発電など、資源・エネルギー面の改善も具体的です。

さらに、フジシールやサントリーとの共同開発で両面水性フレキソを実用化し、従来は適用が難しかったデザイン・加工へ範囲を広げています。IoTによるエネルギー可視化と故障予兆、SIPMによる予防保全、オンライン品質検査も、単なる設備自慢ではなく、突発停止、検査負担、廃棄ロスなどを減らす可能性があります。

この点から、事業による人間への貢献とInnovationはAが妥当です。

一方、会社の「環境にやさしい」という側面だけを見て、働く人の条件を高く評価しすぎるべきではありません。

全社平均の残業は月10時間台で、有休取得率68.3%、年間休日120日、平均勤続15.7年という数字は良好です。長時間残業を前提とした企業ではなく、福利厚生や研修、労働組合も確認できます。

しかし、伊予工場には20時から翌4時45分までの夜勤があります。印刷機を動かす人にとって、残業時間が短くても夜間勤務は生活リズムに直接影響します。工場勤務と本社勤務を一つの平均値でまとめて「働きやすい」と判断することはできません。

男女間の結果格差も大きな課題です。

女性管理職は8.7%、男女賃金差は全労働者61.9%、正規雇用75.5%、有期雇用40.9%です。これらの数字だけで違法な同一労働差別があるとは断定できませんが、企業が掲げる多様性方針と実際の結果にはまだ距離があります。

男性の育児特別休暇100%は評価できますが、法定の男性育児休業取得率は0%です。短期の休暇だけでなく、必要な人が一定期間仕事を離れて育児へ参加できる環境へ進むことが望まれます。

Safetyも同様に、仕組みは比較的整っています。

水性インキ、クリーンルーム、品質検査、予防保全、事故是正委員会などは具体的です。今回の調査ではセキ本体について総合ランクを大きく落とす死亡事故や大規模回収、重大な安全行政処分は確認できませんでした。

しかし、休業災害件数、度数率、強度率を時系列で追えないため、「どれだけ事故を減らせている会社か」を外部から判断するには情報が足りません。夜勤と大型設備のある製造企業として、今後は労働Safetyの定量開示を期待します。

Protectionでは、CISO、情報セキュリティ委員会、プライバシーマーク、セキュリティルーム、防火・耐震策を評価できます。

一方、2025年度には主要取引先へのサイバー攻撃によって、セキ側のカタログ販売事業でも受注・物流機能が一時的に制限され、業績へ影響しました。この経験は、企業が自社システムを守るだけでは十分ではなく、取引先が停止した場合の代替手段も必要だと示しています。

また、主要製造工場は愛媛県伊予市に集中しています。非常電源、工場間の代替生産、原料備蓄、SOC、EDR、オフラインバックアップ、具体的な復旧目標については公開情報で確認できません。実施していないとは判断しませんが、A評価に必要な復旧能力の根拠が不足しています。

グループガバナンスでは、2026年6月に連結子会社エス・ピー・シーがフリーランス法違反で公正取引委員会から勧告を受けたことも無視できません。これはセキ株式会社本体の違反ではありません。企業単位を分ける原則から、本体のランクを直接大きく下げる材料にはしません。

ただし、主要子会社でフリーランス84人への取引条件明示不足、31人への支払遅延、36人への振込手数料相当の報酬減額が認定されたことは、グループ内の取引管理が完全ではなかったことを示します。親会社として、再発防止が子会社だけで終わらずグループ全体へ横展開されるかは今後確認すべきです。

総合すると、セキ株式会社には無視できない課題がありますが、現時点でそれらが企業全体の人間貢献を支配するほど深刻とは判断しません。

むしろ特徴的なのは、印刷という成熟産業の中で、VOCを減らし、CO2を減らし、再生可能電力を使い、オンライン検査や予防保全を取り入れながら、実際の食品・飲料包装へ技術を広げていることです。

消費者は「サントリー天然水」を買うとき、セキ株式会社を選んでいる意識はほとんどありません。それでも、商品価格の一部はラベル、容器、印刷、設備、物流を担う企業へ流れています。商品を人間貢献度で評価するなら、ブランド企業だけでなく、こうした裏側の企業がどのような労働環境と技術で商品を支えているかを見る意味があります。

セキは、その裏側で環境負荷と作業環境を同時に改善し得る印刷方式を普及させている点で、高い評価に値します。一方、工場夜勤、男女格差、労災情報、危機復旧力、グループ取引管理を改善できれば、より強いA、将来的にはさらに上の評価を検討できる企業です。

以上から、セキ株式会社の総合シビックランクはAと判断します。

出典一覧

1.セキ株式会社「会社概要」

2.セキ株式会社「CSR活動」

3.セキ株式会社「環境配慮型経営」

4.セキ株式会社「CSRに配慮したサプライチェーン構築に向けた方針・ガイドライン」

5.セキ株式会社「沿革」

6.金融庁EDINET「セキ株式会社 第77期 有価証券報告書」

7.セキ株式会社「2026年3月期 第3四半期決算短信」

8.セキ株式会社「第77期事業報告書」

9.セキ株式会社「水性フレキソ印刷加工工場 SEKI BLUE FACTORYの使用電力を実質再生可能エネルギー由来100%に切り替え」2023年10月2日

10.セキ株式会社「両面水性フレキソ印刷が『サントリー伊右衛門』ラベルに採用」2024年4月9日

11.セキ株式会社「『サントリー烏龍茶OTPP 600ml』ラベルに水性フレキソ印刷を採用」2022年10月24日

12.セキ株式会社「JAPAN PACK 2025出展案内」2025年10月2日

13.ハローワークインターネットサービス「セキ株式会社 印刷機オペレーター」求人番号38010-19680561

14.マイナビ2027「セキ株式会社 会社概要・働き方データ」

15.マイナビ2027「セキ株式会社 採用データ」

16.マイナビ2028「セキ株式会社 会社概要・働き方データ」

17.公正取引委員会「株式会社エス・ピー・シーに対する勧告について」2026年6月18日

18.セキ株式会社「当社連結子会社に対する入札参加資格停止措置に関するお知らせ」2026年7月7日

調査時点:2026年9月6日

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