同じ値段の商品が並んでいたら、働く人を大切にしている会社の商品を選びたい。転職先を探すなら、求人票の「働きやすい」という言葉より、実際の残業や休みの取りやすさを知りたい。
ところが、企業の知名度や売上だけでは、その違いは分かりません。便利な商品を届ける裏側で、誰かが無理をしていることもあります。反対に、問題を公表して改善を進めている会社が、何も説明しない会社より悪く見えてしまうこともあります。
当サイトでは、企業が人間の生活をどう良くしているかを「シビックランク」で評価しています。今後の企業審査では、評価の理由と差を分かりやすくするため、「100点制・第1版」を採用します。
なぜ点数制に変えるのか
これまでの審査では、企業ごとの強みや問題を説明していても、総合ランクがBに集まり、違いを十分に伝えられないという課題がありました。
そこで、何を調べ、どの項目で何点を付けたのかを示す方式に変更します。情報が足りない項目を、なんとなく中間評価で埋めることもしません。
点数は当サイトの基準に基づく評価であり、公的な認証や企業の絶対的な順位ではありません。読者が採点の根拠を読み、自分の購入先や働き先を考えるための材料です。
何を審査するのか――安全50点、改善25点、危機への備え25点
総合点は、Safety・Innovation・Protectionの3つを合計した100点満点です。働く人と利用者の生活・健康・安全に関わるSafetyへ、全体の半分を配分します。
Safety:働く人と利用者を守る力〈50点〉
給与だけでなく、休めるか、安心して働けるか、事故を防げているかまで確認します。
- 賃金・利益の還元:10点。基本給、賃上げ、賞与など、働く人へどの程度還元しているか。
- 労働時間・休息:10点。実際の残業、休日、有休取得、夜勤や交替勤務の負担。
- 雇用の安定・待遇の公平性:5点。雇用継続、非正規の待遇、正社員との格差。
- 福利厚生・育児・介護:5点。制度の内容と利用実績、仕事との両立。
- 人権・ハラスメント・労使関係:5点。差別や嫌がらせへの対応、通報者の保護、従業員が意見を言える仕組み。
- 労働安全・健康:10点。労災、危険作業、予防策、被害者への対応と改善。
- 商品・サービスの安全:5点。製品事故、回収、品質管理、利用者への説明と救済。
例えば、「平均年収が高い」という数字だけで全社員の待遇が良いとは判断しません。本社の正社員と工場のパートで条件が違うなら、分けて確認します。親会社の待遇を子会社の待遇として紹介することもしません。
Innovation:技術や改善で人の負担を減らす力〈25点〉
AIやロボットの導入そのものより、それによって誰の仕事や暮らしがどう変わったかを見ます。
- 作業負担・危険の削減:10点。重い荷物を持つ作業や危険な手作業が、実際に減ったか。
- 商品・サービスの改善:5点。利用者の待ち時間、手間、使いにくさなどが改善したか。
- 改善成果の人間への還元:5点。生産性の向上が、労働時間の短縮、賃金、価格などへ反映されたか。
- 研究開発・現場改善の継続:5点。研究成果の実用化や、現場の提案を採用する取り組みが続いているか。
例えば、機械で箱を運べるようになっても、その分だけ担当者の仕事量が増えたなら、「従業員が楽になった」とは限りません。設備の導入と、働く人への効果を分けて評価します。同じ成果を重複して加点することも避けます。
Protection:災害や障害が起きても生活を守る力〈25点〉
水や食品が届かない、注文できない、個人情報が漏れる。こうした危機に、企業がどう備え、どう対応したかを確認します。
- 災害への備え・訓練:5点。備蓄、非常電源、避難・復旧訓練など。
- 生産・物流・調達の代替:5点。工場や配送拠点が止まったとき、別の手段へ切り替えられるか。
- サイバー防衛・情報保護:5点。侵入防止、異常の検知、被害を広げない仕組み。
- 供給継続・復旧能力:5点。危機や訓練の際に、供給をどれだけ維持し、復旧できたか。
- 危機時の市民への対応:5点。必要物資の供給、利用者への連絡、地域との協力。
「計画があります」という説明だけで高評価にはしません。実際の対応や訓練の結果まで確認します。
総合ランクはどう決まるのか
16項目の得点を合計し、次の区分で総合シビックランクを決めます。
- S:90点以上100点以下
- A:80点以上90点未満
- B:70点以上80点未満
- C:60点以上70点未満
- D:50点以上60点未満
- E:40点以上50点未満
- F:0点以上40点未満
例えば、合計72点なら「総合72点/100点・シビックランクB」と表示します。これは説明用の例です。会社の知名度や担当者の印象で、合計後にランクを上書きすることはありません。
情報を公開しないことも、評価の対象にします
残業時間や労災の実態を公開している会社と、十分に調べても実態が分からない会社を、同じようには評価しません。
働く側や買う側が判断できる情報を示すことも、企業の責任だと考えるためです。「問題が見つからなかったから普通」として、中間点を付けることはやめます。
各項目は、次の共通段階で採点します。10点満点の項目では、5点満点の点数を2倍にします。
- 5点/10点:高水準の実績を具体的に公表し、継続性も確認できる。
- 4点/8点:良好な実績を公表しているが、一部に課題がある。
- 3点/6点:実態を公表しており、良い点と改善課題がある。
- 2点/4点:問題が大きいが、自ら公表し、救済や改善を進めている。
- 1点/2点:深刻な実態を自ら公表しているが、改善が不十分。
- 0点:十分な調査後も重要情報が非公表。または、非公表だった重大問題が外部から発覚し、説明や是正も不十分。
「社員を大切にしています」という理念だけでは、実態の公開とは扱いません。どの会社の、どの従業員について、いつの数字や実績を示しているのかを確認します。
非公表と外部発覚は同じ最低帯になる場合がありますが、理由は分けて記載します。外部から問題が明らかになった企業も、その後の説明、救済、改善実績が確認できれば再評価します。
問題を公表すれば、高評価になるのか
自主的に問題を公表する姿勢には、非公表より評価の余地を残します。ただし、公表しただけで高得点になるわけではありません。深刻な問題があり、改善も不十分なら、該当項目は低得点です。
死亡事故や重大な人権問題などは、被害の深刻さと情報公開を分けて説明します。賃上げや便利な商品の存在を理由に、被害を軽く扱いません。
なお、第1版では、重大事故があった場合の総合点の一律上限は設定していません。固定配点で計算した総合点と重大事項を併記するため、総合ランクだけでなく、冒頭と各項目の評価理由も確認してください。
調査不足を、企業の0点にしません
非公表による0点は、「劣悪な実態が確認された」という意味ではありません。重要情報を十分に説明していないことへの評価です。
また、記事に書いていなかった、資料を取得できなかった、こちらがSNSを調べていなかったという事情を、企業の非公表に置き換えることはしません。追加調査が必要なら、審査が完了していないものとして扱います。
公開を求める対象は、集計値、対応実績、体制などです。被害者の個人情報や、攻撃に悪用できるセキュリティの詳細まで公開するよう求めるものではありません。
口コミ・X・匿名掲示板も調べます
会社の公式説明だけでは分からない働き方を確認するため、従業員口コミ、XなどのSNS、匿名掲示板を、それぞれ独立した調査工程にします。
例えば「人権・ハラスメント・労使関係」では、次のような内容を調べます。
- 上司の暴言や嫌がらせに対し、相談後に会社がどう対応したか。
- 性別、国籍、雇用形態などを理由とする差別や不利益が指摘されていないか。
- 相談窓口があるだけでなく、対応実績や通報者を守る仕組みが説明されているか。
- 労働組合との交渉や、従業員の要望を受けた改善が確認できるか。
公式資料、公的資料、報道、労働組合の発信と、勤務経験に基づく口コミを照合します。悪い評判だけでなく、良い経験や改善の声も探します。
ただし、匿名投稿に「パワハラがある」と書かれているだけで、会社全体の事実とは断定しません。対象の会社、投稿時期、職場、具体的な内容、別の根拠による裏づけを確認します。
各記事には「SNS・匿名掲示板の確認結果」を掲載します。「検索したが有用な投稿を確認できなかった」「閲覧制限で本文を読めなかった」「未調査」を区別し、全投稿を確認したかのようには書きません。投稿が見つからないこと自体を、企業の減点理由にもしません。
過去の記事はどうなるのか
旧基準のBを機械的に75点へ換算するような変更は行いません。過去の記事を新基準へ更新する際は、根拠となる資料へ戻り、必要な追加調査をして採点します。
そのため、新旧基準の記事が併存する間は、同じランクでも評価方法が異なります。各記事に適用基準と評価時点を示します。既存記事だけを使った試算は、追加調査を終えた正式な再審査と区別します。
点数だけでなく、どこが良く、どこに問題があり、何が公開されていないのかを伝えることが、この変更の目的です。新しい根拠や改善実績が確認できた場合は、採点を見直します。
審査基準について、「この項目も評価してほしい」「この配点は変えたほうがよい」「この説明では分かりにくい」などのご意見がありましたら、ぜひコメント欄でお知らせください。いただいたご意見を参考に、基準や説明の改善を検討していきます。
情報ランクの基準
企業を評価する「総合シビックランク」とは別に、情報の出どころを「情報ランク」で表示します。
- S:公的機関の資料で直接確認できる情報、または独立した第三者の検証・監査・認証などで裏づけられた情報。確認された範囲に限ります。
- A:企業の公式発表、報告書、採用情報など、企業自身の説明。独立した裏づけまでは確認していない情報です。
- B:役職や立場が確認できる関係者への取材・発言、記者の直接取材などに基づく情報。
- C:一般社員、元社員、パート、アルバイトなどの勤務経験に基づく口コミ。
- D:Xなどの一般的なSNS投稿で、発信者の立場や内容の裏づけが十分でない情報。
- E:匿名掲示板など、発信者の身元や関与をさらに確認しにくい情報。
情報ランクAが多い会社だから、総合シビックランクもAになるわけではありません。情報源のランクを、そのまま点数の倍率として使うこともしません。
媒体名だけでなく、誰が何を根拠に発信したかで分類します。例えば企業の公式Xでの発表は、一般投稿のDではなくAとして扱います。低い情報ランクは虚偽を意味せず、高い情報ランクも記述全体の正しさを保証するものではありません。情報そのものが得られなかった場合は、Eを付けず、その状態を説明します。
