私たちは、企業の商品を購入したり、サービスを利用したりすることで、そこで働く人たちの未来を変えることができます。
働く人に十分な賃金を払い、休暇を確保し、安全な職場をつくり、人の負担を減らす企業の商品やサービスが選ばれれば、そうした企業により多くの売上が集まります。その結果、働く人を大切にする経営を続けやすくなります。
反対に、低賃金や長時間労働、安全上の問題を改善しない企業の商品やサービスが売れ続ければ、そうした働かせ方のままでも事業を続けることができます。
だからこの企業審査では、「私たちがお金を使うなら、どの企業を選ぶことが、そこで働く人にとってより良い社会につながるのか」という視点から企業を評価します。
なぜ企業を審査するのか?――このサイトの目的と、利用するメリット
今回審査する東洋エンジニアリング株式会社は、総合73点、シビックランクBです。
東洋エンジニアリング株式会社の特に強い点は、単体平均年間給与約920万円という給与水準を維持しながら、DXoTによるEPC業務の効率化を進め、そこで生まれる人財の余力を新技術・事業開拓へ振り向ける方針を明示していることです。そのため、この企業の商品を購入したりサービスを利用したりすれば、技術によって人の作業負担を減らし、その余力を脱炭素や新しい産業基盤づくりへ振り向ける企業が残りやすい社会につながる可能性が高まります。
一方で、改善点として現場安全と海外コンプライアンスの実効性が残ります。
この記事では、東洋エンジニアリング株式会社の強みと課題をさらに詳しく企業審査していきます。
東洋エンジニアリング株式会社の企業審査結果
東洋エンジニアリングは、高い給与水準、育児支援、ISO認証、DX、BCP、サイバー対策など、制度と基盤がかなり充実しています。一方、2023年に発生した死亡労災を巡って2025年に労働安全衛生法違反の疑いで書類送検され、ブラジルでは2025年に行政制裁の決定を受けています。制度が整っていることと、重大事故・コンプライアンス問題を実際に防げることは別であるため、確認された問題を相殺せずに減点しました。
| 評価軸 | 得点 | 主な評価 |
|---|---|---|
| Safety | 33/50 | 平均年収約920万円、育休・福利厚生、人権・ISO45001を評価。死亡労災を巡る書類送検、男女賃金差、海外行政制裁が課題 |
| Innovation | 19/25 | DXoT、アンモニア燃焼技術、継続R&Dを評価。工数削減の現在実績と人への還元の定量開示が不足 |
| Protection | 21/25 | 24時間BCP、72時間参集、ISO27001、複数海外拠点を評価。大型案件の収益・契約リスクが課題 |
| 合計 | 73/100 | シビックランクB |
主な強み
- 平均年間給与9,202,714円
- 2025年度の月平均所定外労働時間21.9時間
- 男性育児休業取得率77.4%、女性100%
- 労働組合員577人、労使関係に特記すべき事項なし
- 国内建設現場でISO45001を取得
- ISO27001を2006年から維持し、2025年度の重大情報インシデント0件
- BCPを24時間以内に発令し、72時間以内の復旧要員参集を目標
- DXoTでEPC工数半減を目標とし、人財を新技術・事業開拓へ配置する方針
- 2026年9月にナフサ分解炉でアンモニア混焼率85%を達成
- 2026年度に新入社員66人を採用
主な課題
- 平均年間給与は前年度比3.9%減
- 月平均所定外労働時間21.9時間で、繁忙期・現場の負担差が残る
- 女性管理職比率5.6%
- 男女賃金比率は全労働者73.0%、正規73.5%、パート・有期61.3%
- 2023年の死亡労災を巡り2025年に労働安全衛生法違反の疑いで書類送検
- ブラジルCGUの行政手続で約5.66億レアルの制裁決定
- 2026年3月期はブラジルガス火力案件等の影響で149億円の最終赤字
- DXoTの2025年「生産性6倍」目標に対する最終実績が公開されていない
- 自動化後の配置転換人数、残業・休日・賃金への効果が不足
事業内容と人間への貢献
東洋エンジニアリングは、工場や発電所などの巨大設備を、企画・設計・調達・建設・試運転まで統合して実現する総合エンジニアリング会社です。石油・ガスだけでなく、化学、発電、水、医薬、食品、工場自動化、環境、人工知能など幅広い分野を対象にしています。
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 会社名 | 東洋エンジニアリング株式会社 |
| 英文名 | Toyo Engineering Corporation |
| 創業 | 1961年5月1日 |
| 資本金 | 18,198,978,851円 |
| 本社 | 千葉県千葉市美浜区中瀬1丁目1番地 |
| 単体従業員数 | 973人(2026年3月31日、有価証券報告書基準) |
| 連結従業員数 | 4,559人(有価証券報告書基準) |
| 会社概要掲載の連結従業員数 | 5,672人(2026年3月31日、会社定義) |
| 平均年齢 | 42.4歳 |
| 平均勤続年数 | 15.3年 |
| 平均年間給与 | 9,202,714円 |
会社公式の会社概要では連結従業員5,672人と掲載されていますが、有価証券報告書基準では4,559人です。集計範囲・定義が異なる数値を同じものとして混同せず、人的資本の採点では提出会社973人の単体データを優先します。
主な事業内容
東洋エンジニアリングは、顧客が必要とするプラントや産業設備について、研究・開発協力、事業計画、基本設計、詳細設計、機器調達、建設管理、試運転、保守までを統合します。
例えば肥料プラントを建設すれば、農業で必要な肥料を大量・安定的に生産できる産業基盤になります。発電設備は電力供給を支え、医薬・食品プラントは生活に必要な製品の製造基盤になります。工場自動化では人が行う危険・反復作業を機械へ移せる可能性があります。
主要な顧客・パートナー
個別案件ごとに顧客は異なりますが、2026年9月のアンモニア燃焼技術ではNEDO、三井化学、丸善石油化学、双日マシナリーと共同で実証を進めています。東洋エンジニアリングの価値は、自社だけで製品を売るのではなく、技術企業、素材メーカー、公的研究機関をつないで大規模な設備として実装する点にあります。
事業による人間への貢献
エンジニアリング会社の仕事は一般消費者から見えにくいですが、人が生活するための「つくる仕組み」を支えています。
肥料プラントなら食料生産を支えます。発電設備なら家庭・病院・工場へ電力を供給する基盤になります。水処理設備なら安全な水利用を支えます。医薬・食品工場なら医薬品や食料を安定供給できます。
さらに、現地で職業訓練センターを設け、溶接、電気、配管などの技能訓練を行う事例や、JICA関連の技術移転セミナーも実施しています。設備を建設して終わるのではなく、現地で働く人の技能形成にも関わっています。
Safety
Safetyでは、給与や休暇だけでなく、国内外の建設現場で働く社員・協力会社の生命を実際に守れているかを重視します。東洋エンジニアリングは制度と認証が充実していますが、死亡労災を巡る書類送検という確認された問題があるため、安全制度だけで高得点にしていません。
賃金・利益の還元 6/10点
2026年3月期の東洋エンジニアリング単体の平均年間給与は9,202,714円です。平均年齢42.4歳、平均勤続15.3年で、賞与・基準外賃金を含む数値です。
給与水準そのものは高く、働く人が住居、教育、医療、余暇などへ使える選択肢を広げるため6点としました。
一方、前年度比では3.9%減少しています。現在のベースアップ額、職種別賃金、パート・有期労働者を含む賃上げ率、利益のうち人件費へ還元した割合は公表されていません。公開情報がない点は課題です。採点上も減点対象です。
複数年のベースアップ額を公表し、正規・非正規を含めて実質的な賃金上昇が確認できれば8点以上を検討できます。
労働時間・休息 6/10点
会社提供の採用情報では、2025年度の月平均所定外労働時間は21.9時間、平均有給休暇取得日数は12.4日です。フレックスタイム、完全週休2日、年5日の有給取得奨励日、夏季の連続休暇推奨、勤続10年ごとのリフレッシュ休暇などもあります。
休暇制度と実績が確認できるため6点です。
一方、建設現場、設計、営業、海外案件などで働き方が大きく異なります。全社平均だけでは繁忙期や現場の負担を十分に確認できません。転職会議の投稿者集計では残業月35時間前後、有給消化率約53%と、会社提供データより厳しい数字も出ています。口コミ集計は母集団が異なるため公式値より優先しませんが、職場差を確認する補助情報として扱います。
職種・現場別の残業、休日出勤、海外長期出張中の休息、勤務間インターバルを公開し、月15時間以下などの低い残業が広く確認できれば8点以上を検討できます。
雇用の安定・待遇の公平性 3/5点
単体従業員数は2022年989人、2023年974人、2024年968人、2025年975人、2026年973人と大きく崩れておらず、DXを進めながらも単体で大規模な人員削減は確認できません。2026年度には新入社員66人を迎えています。
労働組合には577人が加入し、会社は労使関係について特記すべき事項はないと開示しています。
一方、女性管理職比率は5.6%、男女賃金比率は全労働者73.0%、正規73.5%、パート・有期61.3%です。会社は工学系採用の男女構成などが影響すると説明していますが、結果として差が大きいことは課題です。
雇用安定性は評価できますが、管理職・賃金格差の改善が必要なため3/5点です。女性管理職比率や賃金差が継続的に改善し、雇用区分別の待遇差の要因と改善結果が明確になれば4~5点を検討できます。
福利厚生・育児・介護 4/5点
2025年度の男性育児休業取得率は77.4%、女性は100%です。
育児休業は子どもが満2歳になるまで延長可能で、短時間勤務は小学校卒業まで利用できます。配偶者の転勤や介護などで退職した場合、3年以内なら原則再雇用する「ウェルカムリターン制度」もあります。借上げ社宅では自己負担1割とする制度も案内されています。
制度だけでなく男性育休の取得実績まで確認できるため4/5点です。
介護制度の利用率、男性育休100%への到達、育休後の昇進・賃金への影響なども継続開示できれば5点を検討できます。
人権・ハラスメント・労使関係 4/5点
人権基本方針はグループの役員・従業員・派遣社員・出向者に適用し、サプライチェーンの取引先にも支持を求めています。差別、ハラスメント、労働時間、休暇、適正賃金、安全な職場などを取引先の要求事項に含めています。
内部通報は社内・社外に設置し、通報者への不利益取扱いを禁止しています。2025年度の内部通報件数は64件で、コンプライアンス研修・eラーニング・ミニテストも実施しています。
制度と運用実績を評価して4/5点です。
一方、ブラジルの行政手続で重大なコンプライアンス問題について制裁決定を受け、会社は異議申立てを行っています。制度があるだけで5点にはせず、海外拠点・案件を含む再発防止の実効性を継続確認する必要があります。
労働安全・健康 6/10点
2024年度の休業災害度数率LTIRは0.06です。2024年2月には国内建設現場を対象としてISO45001を取得しています。
一方、2023年2月、静岡県御前崎市のバイオマス発電所建設現場で、下請け会社の70歳男性が一酸化炭素中毒で死亡しました。近くでは別の下請け業者が乾燥焚き作業を行っており、磐田労働基準監督署は必要な連絡・調整を行わなかった疑いで、2025年1月に元請けの東洋エンジニアリングと現場代理人を労働安全衛生法違反の疑いで書類送検しました。これは有罪確定を意味するものではありませんが、死亡事故を巡って元請けの作業調整が問われた重大な事実です。
LTIRとISO45001を評価しつつ、この死亡事案を重く見て6/10点としました。
死亡・重傷事故を複数年ゼロにし、社員と協力会社を分けた労災件数、原因、再発件数、是正後の効果を毎年公開できれば8~10点へ上げられます。
商品・サービスの安全 4/5点
東洋エンジニアリングはISO9001を1994年から取得し、現在はグループ複数社を含む認証体制を維持しています。受注前には案件リスクを評価し、受注後も定期的なモニタリングを行うプロジェクトリスク管理体制があります。
巨大プラントでは設計・調達・施工の不具合が多数の利用者や作業者へ影響するため、品質管理と案件審査は重要です。
今回の調査では、東洋エンジニアリングが納入した設備そのものを原因とする最近の大規模な製品回収型事故は確認できませんでした。
一方、2026年3月期には国内案件やブラジルガス火力案件で大きな損失を計上し、会社自身が案件ごとの採算変動やリスク審査に課題が残ったと認めています。品質事故と同一ではありませんが、巨大設備を予定どおり完成・提供する能力に関わるため満点とはせず4/5点です。
従業員・元従業員の口コミ
情報ランクB|転職会議|投稿日2025年8月27日|20代後半男性・正社員
「ワークライフバランスは総じて良好だと評価します。」
同じ投稿では、繁忙期の業務偏在や属人化が改善点として挙げられています。
転職会議の投稿者集計は残業月35時間前後、有給消化率約53%です。会社提供の2025年度データは月平均所定外労働21.9時間、平均有給取得12.4日なので差があります。口コミは回答者の部署・時期・繁忙度に偏り得るため公式値を優先しますが、「プロジェクトや部署で負荷に差がある可能性」を確認する補助材料として使用しました。
SNS・匿名掲示板の確認結果
Xでは「東洋エンジニアリング」と残業・退職等を組み合わせて検索しましたが、今回の調査では投稿者が現社員・元社員だと確認でき、本文まで検証できる現在の労働環境投稿を確保できませんでした。
5ちゃんねるでも検索しましたが、就職先一覧、大学・就活スレッド、株式関連の投稿が中心で、対象会社の現在の職場環境を具体的に検証できる社員投稿は確認できませんでした。
確認できない匿名情報を推測で採点には使っていません。
Innovation
Innovationでは、AIやDXを導入したという事実だけでなく、働く人の工数・危険・残業が実際に減ったか、削減した人財を解雇ではなく別の価値創造へ移したかを見ます。
作業負担・危険の削減 6/10点
東洋エンジニアリングは2019年度からDXoTを本格化し、EPC生産性6倍、粗利額3倍、工数半減を2025年の目標として掲げていました。工数が減った場合には、その人財を新技術・事業開拓へ振り向ける方針も明記しています。
デジタルツール、データ活用、グローバル拠点分業などによって設計・調達・プロジェクト管理の負担を減らす方向は明確です。
一方、2026年現在、「生産性6倍」「工数半減」という目標に対する最終達成率や、1人当たり何時間削減したかは公表されていません。目標を成果として扱わないため6/10点です。
導入前後の設計人時、会議時間、現場移動、残業、再作業時間を開示し、30~50%以上の継続的な削減が確認できれば8~10点を検討できます。
商品・サービスの改善 5/5点
2026年9月、NEDO、三井化学、丸善石油化学、双日マシナリーと共同で、ナフサ分解炉の試験運転においてアンモニア混焼率85%を達成しました。既設炉と同水準のNOx排出量を維持しながら世界最高水準の混焼率とし、今後は100%専焼を目指しています。
石油化学産業の高温炉で化石燃料使用を減らせれば、製品を作るためのCO2削減につながります。
既存のEPCだけでなく、脱炭素、アンモニア、メタノール、工場自動化など新しい社会課題へ技術を広げているため5/5点です。
改善成果の人間への還元 3/5点
会社のDXoT戦略は、EPC工数が減った場合に「余った人を減らす」のではなく、新技術・事業開拓へ人財をアサインする方向を明示しています。
単体従業員は2022年989人から2026年973人で大幅減ではなく、2026年度にも新入社員66人を採用しました。今回の調査では、DXやAIを直接理由とした大規模な希望退職・整理解雇は確認できませんでした。
ただし、DXで何人をどの部署へ配置転換したのか、配置転換後に残業・給与・満足度がどう変わったのかは公表されていません。
人を減らすのではなく新事業へ移す方針と採用継続を評価して3/5点です。配置転換人数と人間側の成果まで公開できれば4~5点へ上げられます。
研究開発・現場改善の継続 5/5点
技術研究所T-Labo!を持ち、アンモニア燃料、メタノール、肥料技術、工場自動化、DXなど複数領域で開発を続けています。2026年9月のアンモニア85%混焼も、複数年の研究を実装へ進めた成果です。
2026年3月期の従業員満足度も5段階3.8となり、前回3.58から改善しました。技術だけでなく組織側のKPIも追跡しています。
研究開発と改善を継続する仕組み・成果が確認できるため5/5点です。
自動化・AI導入後の雇用状況
東洋エンジニアリングはDXoTでEPC工数半減を目標としてきたため、自動化後の雇用を別途確認しました。
単体従業員数は2022年989人、2023年974人、2024年968人、2025年975人、2026年973人で推移しており、大幅な人員整理は確認できません。
連結では2026年3月期に前年度より615人減り4,559人となりました。ただし有価証券報告書は、主に海外子会社のプロジェクトが終盤となり、その業務に従事していた従業員が退職したためと説明しています。自動化による削減とは記載されていません。
2026年度には新入社員66人を採用しています。DX後の人員削減を進める一方で採用を止めたという状況ではありません。
一方、新技術・事業開拓人財は2026年3月期で約120人で、過去に掲げた110人から倍増という目標には届いていません。
今後は自動化対象業務ごとに、削減人時、削減人数、配置転換先、配置転換後の賃金・残業・離職を公開すると、人への還元をより正確に評価できます。
Protection
Protectionでは、地震などの自然災害だけでなく、海外案件の中断、サイバー攻撃、調達停止、契約紛争などでも事業と人を守れるかを評価します。
災害への備え・訓練 5/5点
東洋エンジニアリングは2007年からBCPを策定し、継続的に見直しています。
発災時は社長をトップとする対策本部を中心に24時間以内のBCP実施発令を目指し、その後72時間以内に復旧作業へ従事できる従業員を参集できるよう、年2回の安否確認訓練を行っています。
メール・社内SNSだけでなくアナログ電話、衛星電話、気象庁データと連動した安否確認システムも用意しています。
発令目標、参集目標、訓練頻度まで数値化されているため5/5点です。
生産・物流・調達の代替 4/5点
東洋エンジニアリングは日本だけでなく、インド、韓国、インドネシアなどの海外拠点をEPCの中核として活用するグローバルオペレーションを進めています。インドはEPC全般、韓国はポリマー、インドネシアは発電設計など、拠点ごとに専門機能を持たせています。
有価証券報告書でも、資材価格や供給リスクに対し、調達先候補の多様化、調達先の振替などで対応するとしています。
複数拠点・複数調達先を利用できるため4/5点です。
一方、一拠点停止時に何%の設計・調達能力を何時間で他拠点へ切り替えられるのかという訓練結果は公表されていません。これを実証できれば5点を検討できます。
サイバー防衛・情報保護 5/5点
ISO/IEC27001は2006年から認証を維持し、2025年3月に2022年版へ更新しています。
2025年度の重大な情報インシデントは0件で、2024年度も0件でした。
巨大プラントの設計データ、顧客情報、技術ノウハウを扱う企業として、国際認証を長期維持し、重大事故0件まで公開しているため5/5点です。
供給継続・復旧能力 4/5点
BCPでは24時間以内の発令と72時間以内の復旧要員参集を目標とし、海外拠点にも役割を分散しています。これらは事業継続力として評価できます。
一方、2026年3月期にはブラジル向けガス火力発電案件の収支悪化などにより、親会社株主に帰属する当期純損失149億円を計上しました。会社は案件ごとの採算変動やリスク審査に課題が残ったとして、2025年1月にプロジェクト管理本部を新設しています。
自然災害への備えは強い一方、大型プロジェクトの契約・工程・回収リスクが財務基盤を大きく揺らしたため4/5点です。
危機時の市民への対応 3/5点
大災害時には食料支援や関係機関・現地商工会議所を通じた支援を行っています。海外ではプロジェクト期間中に地域技能者を訓練し、JICA関連の技術移転セミナーではカザフスタン、ウズベキスタン、マレーシア、ベトナム、インドネシア、ミャンマー、モザンビークなどから研修生を受け入れています。
社会への還元は確認できるため3/5点です。
一方、災害時に自社の設備・技術を使い、何人・何地域へどの程度の緊急支援を行ったかという近年の定量実績は限定的です。危機対応の具体的な規模を継続開示できれば4~5点を検討できます。
良いニュース・最近の前向きな動き
最近の前向きな動きでは、技術革新そのものに加え、人を新しい領域へ採用・育成しながら脱炭素技術を実装しているかを重視します。
2026年9月:アンモニア混焼率85%を達成(Innovation)
2026年9月17日、NEDO、三井化学、丸善石油化学、東洋エンジニアリング、双日マシナリーは、ナフサ分解炉の試験炉でアンモニア混焼率85%を達成しました。NOx排出量も既設炉と同水準です。
アンモニアは燃焼時にCO2を出さないため、化学産業で大きなエネルギーを使う炉の燃料を置き換えられれば、製造時のCO2排出を減らせます。
東洋エンジニアリングのサービスを選ぶことで、既存の化石燃料設備を作るだけでなく、産業の脱炭素を実装する企業へ需要を集めることにつながります。
2026年4月:新入社員66人を迎え、DX下でも採用を継続(Safety/Innovation)
2026年度の新入社員は66人で、男性52人、女性14人、総合職62人、一般職4人です。
DXoTで工数削減を掲げる企業が、同時に新卒採用を続けていることは重要です。
技術で仕事を減らした結果を大量解雇へ直結させるのではなく、新技術・新事業を担う人財を育てる方向へ進めば、AIや自動化の恩恵を人間の成長へ戻すモデルになります。
2026年3月期:従業員満足度が3.58から3.8へ改善(Safety)
会社のKPIでは、従業員満足度が前回の5段階3.58から3.8へ改善しました。
給与や制度が良くても、実際に働く人が職場を肯定的に評価しなければ意味がありません。
この改善は、働き方や組織施策が一定程度社員側に届いている可能性を示します。ただし、部署別の差や改善要因はさらに開示してほしいところです。
悪いニュース・問題となった動き
悪いニュースでは、単なる業績悪化と、人の生命・法令・公正な取引に関わる問題を分けて扱います。
2025年1月:2023年死亡労災を巡り労安法違反容疑で書類送検(Safety)
2023年2月、御前崎市のバイオマス発電所建設現場で下請け会社の70歳男性作業員が一酸化炭素中毒で死亡しました。
2025年1月、磐田労働基準監督署は、近くで行われていた乾燥焚き作業との間で必要な連絡・調整をしなかった疑いがあるとして、元請けの東洋エンジニアリングと現場代理人を労働安全衛生法違反の疑いで書類送検しました。
書類送検は有罪確定ではありません。
しかし元請け企業には複数の協力会社が同時に作業する現場を調整し、互いの作業が別の人を危険にさらさないよう管理する責任があります。安全認証や低いLTIRがあっても、死亡事案の重大性は相殺しません。
2025年4月:ブラジルCGUが約5.66億レアルの行政制裁を決定(Safety)
ブラジル連邦監察庁CGUの行政責任手続では、COMPERJ関連契約を巡って東洋エンジニアリングと現地子会社PPIの責任が審査されました。CGUの最終報告では、東洋エンジニアリングについて5億6,660万2,792.83レアルの罰金等が示され、不当な利益供与、違法行為への助成、入札・契約の不正が論点となりました。
一方、東洋エンジニアリングは2025年4月の決定後も、PPIおよび同社は当該不正行為に関与していないとの立場を維持し、異議申立て手続きを取ったと有価証券報告書で説明しています。
したがってこの記事では「刑事事件で有罪が確定した」とは扱いません。
ただし、外国当局から巨額制裁の行政決定を受けた事実は、海外事業のコンプライアンス実効性を評価するうえで重大なマイナス材料です。
2026年3月期:ブラジルガス火力案件などで149億円の最終赤字(Protection)
2026年3月期は売上高1,829億円、親会社株主に帰属する当期純損失149億円となりました。主因の一つはブラジル向けガス火力発電案件の収支悪化で、自己資本比率も20.9%から16.7%へ低下しました。
これは労働者の責任ではありません。
むしろ大型案件で大きな損失が出れば、将来の賃金、採用、研究開発、安全投資などに使える資本が減る可能性があります。
会社は2025年1月にプロジェクト管理本部を新設し、受注前から完工までのリスク管理を強化しています。今後は同規模の損失を再発させない成果が必要です。
総合評価と、これから改善してほしいこと
東洋エンジニアリング株式会社は73点/100点、シビックランクBです。
次のAランクは80点からなので、あと7点必要です。
平均年収約920万円、男性育休77.4%、ISO45001・ISO27001、24時間BCP、DX・研究開発など、基盤はかなり強い企業です。
一方、死亡労災を巡る書類送検、海外での行政制裁、大型プロジェクトの巨額損失が確認されています。Aランクへ進むには、「制度を持っている」だけでなく、その制度によって重大事故・重大違反・大規模損失を実際に減らす成果が必要です。
賃金を再び継続的に引き上げる:賃金・利益の還元 6→8/10
現在は6/10点です。
平均年収9,202,714円は高い一方、前年度比3.9%減です。また、現在のベースアップ額や雇用区分別の賃上げ率は公表されていません。
改善条件は、ベースアップ額、全社員の賃上げ率、非正規を含む反映率を毎年公開し、物価上昇を上回る実質賃金改善を複数年継続することです。
これが確認できれば6→8点、プラス2点を想定し、総合73→75点となります。
参考企業は株式会社JR東海リテイリング・プラスです。Drive上の最新版企業審査では「賃金・利益の還元」8/10点で、2025年に平均8,500円、2026年にも8,000円のベースアップを2年連続で実施したことを評価しています。
給与水準の高さだけでなく、「今年いくら改善したか」を継続して示すことが重要です。
残業を月15時間以下へ近づける:労働時間・休息 6→8/10
現在は6/10点です。
会社提供データでは月平均所定外労働21.9時間、平均有給取得12.4日です。制度は充実していますが、プロジェクト繁忙期や建設現場の部署差も残ります。
改善条件は、全社平均残業を15時間程度以下へ下げ、職種・現場別でも極端な長時間労働がないことを開示し、有給取得率も70~80%以上へ引き上げることです。
これが確認できれば6→8点、プラス2点で総合75点です。
参考企業は株式会社JR東海リテイリング・プラスです。Drive上の最新版審査では平均残業7.8時間、有給取得率76.1%を会社単体で公開し、「労働時間・休息」8/10点と評価しています。
巨大プロジェクト業と小売・食品事業で勤務形態は異なりますが、職種差を含めて労働時間を見えるようにし、実際に下げる点は参考になります。
死亡・重傷事故を継続的にゼロへ:労働安全・健康 6→8/10
現在は6/10点です。
LTIR0.06やISO45001は評価できますが、2023年の死亡事故を巡り元請けとしての作業調整が刑事手続の対象になった事実は重い問題です。
改善条件は、社員・協力会社を含む死亡事故0、重傷事故の継続削減、事故原因・再発防止・是正後の結果を毎年公開し、同種の作業調整事故を再発させないことです。
これが複数年確認できれば6→8点、プラス2点で総合75点です。
参考企業はキリンビバレッジ株式会社です。Drive上の最新版企業審査では死亡事故0、LTIR0.58、重量物作業の自動化を評価し、「労働安全・健康」8/10点としています。
エンジニアリング業はリスクが高いため、事故ゼロだけでなく、協力会社を含めたリスクの制御実績を示すことが重要です。
DXの削減効果を人の時間で示す:作業負担・危険の削減 6→8/10
現在は6/10点です。
DXoTは生産性6倍・EPC工数半減という大きな目標を掲げていますが、2026年時点の最終達成率や、働く人の時間が何時間減ったかは公開されていません。
改善条件は、代表的な業務について導入前後の設計人時、再作業、移動、会議、残業を公開し、少なくとも30~50%程度の負担削減が実測で確認できることです。
これが確認できれば6→8点、プラス2点を想定できます。
参考企業はキリンビバレッジ株式会社です。Drive上の最新版審査では湘南工場の茶葉投入自動化によって年間約2,300時間の業務負荷削減と重筋作業廃止を公表しており、「作業負担・危険の削減」10/10点です。
東洋エンジニアリングでも「生産性が上がった」だけでなく、「人が何時間自由になったか」まで示せれば評価を上げられます。
次のランクへ上がるための具体例
現在73点・Bランクです。
Aランクの下限80点まであと7点です。
例えば、
- 賃金・利益の還元 6→8点 プラス2点
- 労働時間・休息 6→8点 プラス2点
- 労働安全・健康 6→8点 プラス2点
- 作業負担・危険の削減 6→8点 プラス2点
まで改善すれば、
73点 + 8点 = 81点
となり、シビックランクAへ上がります。
4項目すべてを同時に改善する必要はありません。例えば安全でプラス2点、労働時間でプラス2点、賃金でプラス2点を取り、さらに男女賃金差・雇用公平性やDX成果還元などで1点以上改善しても80点へ到達できます。
重要なのは情報公開だけではありません。公開した数字から、給与が上がった、残業が減った、死亡・重傷事故が減った、DXで人の作業時間が減ったという実際の人間側の成果が確認できた場合に点数を更新します。
出典一覧
- 東洋エンジニアリング株式会社「会社概要」
- 2026年3月期有価証券報告書・従業員情報
- マイナビ「東洋エンジニアリング 働き方データ」
- 東洋エンジニアリング「採用サイト よくある質問」
- 2026年3月期有価証券報告書・女性管理職、育休、男女賃金差
- 東洋エンジニアリング「コンプライアンス」
- 東洋エンジニアリング「人権基本方針」
- 東洋エンジニアリング「取引先の皆様への期待」
- 東洋エンジニアリング「サステナビリティ」
- 東洋エンジニアリング「ISO認証」
- 東洋エンジニアリング「事業戦略・リスクマネジメント」
- 東洋エンジニアリング「アンモニア燃料によるナフサ分解炉運転で混焼率85%」
- 東洋エンジニアリング「2026年度新入社員 合計66名」
- 静岡朝日テレビ「御前崎市の死亡労災を巡る書類送検」
- ブラジル連邦監察庁CGU「Toyo Engineering/PPI 行政責任手続」
- 2026年3月期有価証券報告書「ブラジルCGU決定に対する会社の見解・異議申立て」
- 2026年3月期有価証券報告書「ブラジルガス火力案件・業績」
- 東洋エンジニアリング「社会貢献活動」
- 東洋エンジニアリング「社会への取り組み」
- 転職会議「東洋エンジニアリング株式会社」
- 東洋エンジニアリング「数値目標」
シビックランクの基準
| シビックランク | 総合点 |
|---|---|
| S | 90~100点 |
| A | 80~89点 |
| B | 70~79点 |
| C | 60~69点 |
| D | 50~59点 |
| E | 40~49点 |
| F | 20~39点 |
| G | 0~19点 |
東洋エンジニアリング株式会社は73点のため、シビックランクBです。
情報ランクの基準
| 情報ランク | 基準 |
|---|---|
| S | 国・自治体・規制当局・裁判所・独立した第三者機関による調査、処分、認証、検証など |
| A | 企業公式サイト、有価証券報告書、公式採用情報、公式声明など |
| B | 従業員・元従業員口コミ、一般SNS、匿名掲示板など |
今回の審査では、ブラジルCGUの行政手続や労働安全に関する書類送検など、確認された公的問題を最も重く扱いました。
東洋エンジニアリング自身が公開する給与、育休、DX、BCP、ISO認証、セキュリティ情報はAランク情報として評価しています。
従業員口コミはBランク情報として補助的に利用し、公式データと異なる場合には公式の対象・年度を優先しました。
SNS・匿名掲示板については、対象会社の現在の職場実態を確実に確認できる投稿が得られなかったため、推測で加点・減点していません。
