株式会社ファミリーマートの商品を購入したり、店舗やファミペイなどのサービスを利用したりすることは、全国約1万6,500店規模の国内店舗網、その加盟店、商品製造会社、物流会社などを含む巨大なサプライチェーンを間接的に支えることにつながります。
今回の審査で特に高く評価できたのは、社員への賃上げ、労災データの公開、店舗業務の省力化、食品ロス削減、災害時の商品供給体制です。
2025年度の平均年間給与は786万3,688円。2026年度には4年連続となるベースアップを実施し、正社員組合員約4,300人について定期昇給と合わせ月例給を16,117円引き上げました。さらに全社員へ6万円の特別一時金を支給しています。
労働安全についても、2025年度は労働災害11件、死亡者0人、労災度数率0.70を公開しています。2023年度の21件から労災件数は減少しました。
一方で、問題がないわけではありません。
コンビニ店舗の多くはフランチャイズ加盟店であり、店舗スタッフの多くは株式会社ファミリーマートではなく、加盟店オーナーや加盟企業との雇用契約です。そのため、本部社員の高い平均給与や福利厚生を、そのまま全国のファミリーマート店舗で働く人の待遇とみなすことはできません。厚生労働省も、加盟店スタッフの多くは株式会社ファミリーマートとの直接雇用ではないと説明しています。
また、2026年だけでもアレルゲン表示漏れや金属・プラスチック片混入の可能性を理由とする商品回収が複数発生しています。品質管理体制は高度ですが、実際の事故をゼロにはできていません。
総合点は83点。シビックランクはAと評価します。
審査結果
| 評価項目 | 点数 |
|---|---|
| Safety | 39 / 50 |
| Innovation | 21 / 25 |
| Protection | 23 / 25 |
| 総合点 | 83 / 100 |
| シビックランク | A |
ファミリーマートは、「方針を掲げているだけ」の企業ではありません。
賃金、残業、有給、労災、離職率、男女賃金差、サプライチェーン監査、CO2排出量などを数値で公開しており、人への還元や安全対策について実績を確認できます。
その一方で、全国の店舗スタッフの多くが加盟店雇用であるため、本部社員の労働環境だけではファミリーマートというチェーン全体の労働環境を把握できません。
ここが、この会社を評価するときの最大の注意点です。
事業内容と人間への貢献
株式会社ファミリーマートは、フランチャイズシステムによるコンビニエンスストア事業を展開しています。
2026年4月末の従業員数は5,109人。2026年2月末時点の国内外店舗数は25,263店、2026年2月期のチェーン全店売上高は3兆3,002億800万円です。
伊藤忠商事はファミリーマートを子会社として掲載しており、伊藤忠グループの小売事業における重要企業でもあります。
人間への主な貢献は、単に食品や日用品を販売することではありません。
全国規模の店舗網によって、
- 食品・飲料・日用品の供給
- ATMや各種決済
- 宅配・行政サービスの窓口
- 災害時の商品供給
- 高齢者・こどもの見守り
- 食品寄付
- 地域コミュニティとの接点
といった生活インフラ機能を担っています。
特に災害対応では、内閣総理大臣から災害対策基本法上の「指定公共機関」に指定されており、通常の小売企業より公共性の高い役割を持っています。
Safety|39 / 50点
Safetyでは、働く人と利用者が「傷つけられないこと」を中心に審査します。
賃金・利益の人への還元|9 / 10点
2025年度の平均年間給与は786万3,688円です。
2023年度の677万3,067円、2024年度の730万3,029円から上昇しています。
さらに2026年度は、
- 4年連続ベースアップ
- 定期昇給と合わせ月例給16,117円増
- 大卒初任給27万円
- 全社員へ6万円の特別一時金
を実施しました。
2025年度にも正社員組合員の賞与を含む年収を平均8.9%引き上げており、利益を社員へ戻そうとする動きはかなり明確です。
ただし、これらは主として株式会社ファミリーマート本体の社員です。
全国のフランチャイズ店舗で働くアルバイト・パート等の賃金を同じ基準で評価することはできないため、満点とはしません。
労働時間・休息|7 / 10点
2025年度の実績は、
- 年間総労働時間:1,969時間
- 1人当たり平均月間残業時間:20.2時間
- 有給休暇取得率:64.3%
でした。
2026年度から年間休日は122日、標準勤務時間は1日7時間30分です。
極端な長時間労働を示す数字ではありませんが、月20時間程度の残業が残っており、有休取得率も100%には遠いため7点としました。
ここでも加盟店スタッフについては別の雇用主となる場合が多いため、本部の数字をチェーン全体へ一般化できません。
雇用安定・公平性|3 / 5点
2025年度の離職率は3.7%、平均勤続年数は14.8年です。数字だけを見ると雇用の安定性は比較的高いと考えられます。
一方、2025年度の女性管理職比率は**4.8%**にとどまります。
男女間賃金差は、男性を100とした場合、
- 全労働者:69.6%
- 正規労働者:79.2%
- 非正規労働者:68.5%
でした。会社側も、40代以上の女性比率が低く、役職登用候補者が少ないことなどを原因として説明しています。
制度上の差別が確認されたという意味ではありませんが、結果としての男女差は大きく、改善余地があります。
福利厚生・育児介護|5 / 5点
年間休日122日に加え、
- 退職金
- 確定拠出企業年金
- 財形貯蓄
- 社員共済会
- 育児休暇
- 介護制度
- 伊藤忠グループ関連優待
などを整備しています。
2025年度の育児休職取得率は67.2%。女性100%、男性54.2%です。復職率は95.1%でした。
制度だけでなく利用実績も公開されているため、ここは満点とします。
人権・ハラスメント・労使関係|4 / 5点
ファミリーマートは「国連ビジネスと人権に関する指導原則」「国際人権章典」「ILO宣言」などを踏まえた人権方針を制定しています。
人権デューデリジェンスを実施し、従業員・加盟店・取引先などを対象とする相談・通報窓口も設置しています。
2025年度には内部通報・相談窓口への問い合わせが94件あり、コンプライアンス研修受講率は100%でした。
ただしフランチャイズ加盟者と本部との関係については、長年にわたり労働者性や団体交渉をめぐる争いがありました。
2024年3月13日の東京高裁判決では、加盟者は労働組合法上の労働者には当たらないとした中央労働委員会判断を支持し、加盟店ユニオン側の控訴を棄却しています。これはファミリーマートの違法行為が認定された事件ではありませんが、本部と加盟者との力関係を考える上では重要な経緯です。
労働安全衛生|8 / 10点
2025年度は、
- 労働災害死亡者:0人
- 労働災害:11件
- 度数率:0.70
- 強度率:0.021
- 定期健康診断受診率:100%
でした。
労災件数は2023年度21件、2024年度18件、2025年度11件と減少しています。
本社だけでなく全国の拠点で安全衛生委員会を毎月開催し、全国の労災事例を共有しています。
死亡労災ゼロと改善傾向を評価します。
ただし労災そのものは11件発生しており、チェーン全体の加盟店従業員を完全に包含した数値でもないため、8点です。
商品・サービス安全|3 / 5点
中食商品は72の製造拠点で製造され、すべての製造委託先がJFS-B規格以上の認証を取得しています。
さらに、
- 全工場への点検
- 外部機関による年2回の監査
- 発売前の良品保証会議
- 毎週の抜き打ち商品検査
を実施しています。
2025年度の中食製造委託先工場点検率も100%です。
しかし、2026年には商品安全上の問題が複数発生しました。
1月にはスープへのプラスチック片混入可能性、3月には焼ビーフンのアレルゲン「りんご」表示漏れ、7月には冷し麺5品で金属片混入可能性、8月にはお好み焼きの「もも」アレルゲン表示欠落が公表されています。
管理体制そのものは高水準ですが、実際の商品事故が続いているため3点としました。
従業員・店舗スタッフの口コミ
口コミは、本部社員とフランチャイズ加盟店スタッフを混同しないことが重要です。
Indeedでは2026年9月時点で1,366件の口コミがあり、総合評価は5点中3.3。給与・福利厚生2.6、上司との関係2.7、勤務時間・残業3.2となっています。
確認できた投稿には、
「休みは比較的取りやすい。」
という声がある一方、
「全て、各店舗次第。」
という投稿もあります。
特にコンビニ店舗の口コミでは、実際の雇用主が株式会社ファミリーマートではなく加盟店であるケースが多く、店舗ごとの差が非常に大きいと考える必要があります。
口コミは参考情報として使用し、株式会社ファミリーマート本体の制度を示す公式ESGデータより優先して断定材料には使いません。
X、5ch、Facebook、YouTube、TikTokについても検索しましたが、今回の調査では対象法人・時期・職種を明確に特定でき、企業審査の点数を変更できるほど信頼性を確保できた投稿は確認できませんでした。
Innovation|21 / 25点
Innovationでは、新技術や改善によって人間の負担・危険をどれだけ減らしているかを評価します。
人の負担・危険を減らす技術|9 / 10点
特に強いのが店舗省力化です。
2026年9月から全国約16,500店舗へ新型POSレジの導入を開始し、レジ関連業務を1日当たり約2割削減する計画です。
また、AIレコメンド発注では、発注業務を1店舗当たり週約6時間削減するとしています。
2030年度までには、店舗1日当たりの総労働時間を2025年度比で約2割削減する目標も設定しました。
単なる「AI導入」という宣伝ではなく、人間の作業時間削減量が数値化されている点を高く評価できます。
商品・サービス改善|4 / 5点
食品ロス削減、無人決済店舗、多言語対応、セルフレジ、ファミペイなど、コンビニの使い方そのものを継続的に改善しています。
無人決済店舗は2026年4月時点で60店舗まで拡大しています。
また、「涙目シール」による値下げ施策は、食品を捨てる前に消費者へ購入を促す仕組みとして成果を出しています。
利益・技術成果の人への還元|4 / 5点
AIや自動化を単純な人員削減だけに使用するのではなく、本部社員については賃上げも同時に実施しています。
2026年度は社員へのベースアップや6万円の特別一時金を実施しました。
ただし、店舗省力化によって生まれる経済的利益が、フランチャイズ店舗スタッフの賃金上昇へどの程度還元されているかについては、全国共通の公開実績を確認できません。
このため満点にはしません。
継続的研究・現場改善|4 / 5点
AIレコメンド発注、AI売場スコアリング、無人決済、新型POS、物流AIなど、複数分野で継続的な実証と導入を行っています。
単発の実験ではなく全国展開へ進んでいる技術も多く、Innovationは高評価です。
Protection|23 / 25点
Protectionでは、災害・事故・サイバー攻撃・供給停止などが起きても、人々の生活を守れる仕組みがあるかを評価します。
防災|5 / 5点
ファミリーマートは国の「指定公共機関」です。
本社屋上には衛星通信設備を設置し、総理大臣官邸や中央官庁などを結ぶ中央防災無線網にも参加しています。
毎年、災害対策本部設置訓練も行っています。
小売企業としては非常に強い防災体制です。
代替・バックアップ体制|5 / 5点
大規模災害に備え、
- 本社機能の維持
- 中食製造拠点のバックアップ
- 物流網のバックアップ
- 緊急時の商品供給
- 被災店舗の運営方法
をBCPとして定めています。
物流センターが停止した場合には、被災していない近隣拠点から配送へ切り替える仕組みもあります。
ここは満点です。
サイバーセキュリティ|3 / 5点
サイバーセキュリティを重要リスクとして明示し、IT環境の整備、技術的セキュリティ対策、危機管理を実施しています。
2025年度の情報セキュリティeラーニング受講率は100%です。
一方、訓練受講率以外については、サイバー攻撃への具体的な防御能力や侵入テスト結果、重大インシデント件数など外部から比較可能な成果指標は限定的です。
そのため3点にとどめます。
商品供給の継続|5 / 5点
物流拠点の立地選定でハザードマップを確認し、浸水リスクの低い場所への建設や盛り土を実施しています。
災害時には食料、水、日用品など必要性の高い商品を優先配送する体制も構築しています。
生活インフラ企業として非常に重要な機能です。
市民・顧客への対応|5 / 5点
2025年度にお客様相談室へ寄せられた声は82,661件。
受け付けた内容を社内システムから担当部署へ送り、商品やサービス改善につなげています。
さらに全国47都道府県と包括提携・災害時物資支援協定を締結しています。
企業規模を生かした市民支援体制として高く評価します。
良いニュース
直近では、利益拡大だけではなく、食品ロス、労働負担削減、賃金、人へのアクセス改善など、人間や社会へ直接影響する取り組みが複数確認できます。
「涙目シール」が国の食品ロス削減表彰を受賞
2026年9月、環境省・消費者庁による「令和8年度食品ロス削減推進表彰」で、ファミリーマートの「涙目シール」が環境事務次官賞を受賞しました。
さらに農林水産省が公表した第14回「食品産業もったいない大賞」でも、農林水産省大臣官房総括審議官賞を受賞しています。
企業自身の宣伝だけではなく、公的機関側からも成果が確認された点は重要です。
4年連続ベースアップ
2026年4月、4年連続のベースアップを決定しました。
正社員組合員約4,300人の月例給を定期昇給込みで16,117円引き上げ、全社員に6万円の一時金を支給しています。
全国店舗へ省力化POSを導入
2026年9月から全国約16,500店舗への新型POS導入を開始。
レジ業務を1日約2割削減する計画で、人手不足を「従業員の負担増」だけで補うのではなく、機械による省力化を進めています。
悪いニュース
高度な品質管理制度を持つ一方で、2026年にも食品安全上の問題が複数確認されています。また過去には公的機関から法令違反を認定された事例もあります。
2026年1月:プラスチック片混入の可能性
「根菜入りつくねの和風スープ」でプラスチック片混入の可能性が判明し、商品を撤去しました。
2026年3月:アレルゲン表示漏れ
「海老の香ばし炒め オイスターソース焼ビーフン」で、本来表示すべき「りんご」のアレルゲン表示が欠落していました。
2026年7月:冷し麺5品で金属片混入の可能性
錦糸卵の一部に金属片が混入した可能性が判明し、約3,000店舗が対象となりました。
2026年8月:アレルゲン表記欠落
「ふんわり食感!豚玉お好み焼&焼そば」で、「もも」のアレルゲン表示が欠落していました。
2016年:下請法違反で公正取引委員会が勧告
公正取引委員会は2016年、下請代金の減額禁止に違反する行為を認定し、ファミリーマートへ勧告を行いました。
古い事例ではありますが、取引先との関係を審査する上では記録しておく必要があります。
2020年:景品表示法に基づく措置命令
北海道で販売していた食パンについて、原材料としてバターともち米粉を使用しているように表示していたものの、実際の内容と異なっていたとして、景品表示法上の優良誤認が認定されました。
現在の商品管理体制とは時期が異なりますが、企業の過去のコンプライアンス記録として残します。
総合評価
株式会社ファミリーマートは、企業審査上かなり評価しやすい会社です。
理由は、単に大企業だからではありません。
賃金、残業、有給、離職、男女賃金差、女性管理職、労災、死亡事故、サプライチェーン監査など、不都合になり得る数字まで比較的細かく公開しているからです。
さらに、
- 平均給与の上昇
- 4年連続ベースアップ
- 労災件数の減少
- AIによる店舗負担軽減
- 食品ロス削減
- 国から指定公共機関に指定される防災能力
- 全国規模の物流バックアップ
と、「人への貢献」を実績として確認できる項目が多くあります。
一方で最大の課題は、ファミリーマートというブランドで働く人すべてを、本部社員の良好な労働条件だけでは評価できないことです。
フランチャイズ店舗では加盟店が雇用主となる場合が多く、給与、休暇、人員配置、店長との関係などには店舗差があります。
チェーン全体の人間への影響をさらに評価できるようにするには、本部社員だけでなく、
加盟店スタッフの平均賃金、離職率、有給取得率、ワンオペ発生状況、労災、加盟店オーナーの実労働時間
などを全国集計して公開してほしいところです。
また、2026年にアレルゲン表示漏れや異物混入可能性による商品回収が複数発生している点から、食品安全については「制度が充実しているから満点」とはできません。
改善してほしい優先順位は、
- 加盟店スタッフ・加盟者を含む労働実態の公開
- 異物混入・アレルゲン表示漏れの再発防止と件数推移の公開
- 女性管理職比率と男女賃金差の改善
- サイバーセキュリティ成果指標の拡充
です。
以上から、
Safety 39点、Innovation 21点、Protection 23点、総合83点。
株式会社ファミリーマートのシビックランクはAと評価します。
主な出典
今回の審査では、株式会社ファミリーマートの会社概要、ESGデータ、サステナビリティ情報、採用情報、ニュースリリースに加え、公正取引委員会、厚生労働省、環境省、農林水産省などの公的資料を照合しました。
口コミについてはIndeed等を補助情報として利用しましたが、フランチャイズ店舗勤務者と株式会社ファミリーマート本体社員を区別できない投稿は、企業本体の事実として断定していません。
情報ランク
情報ランク:S
公正取引委員会、厚生労働省、環境省、農林水産省などの第三者・公的機関による直接確認可能な資料があり、株式会社ファミリーマート自身も給与、労働時間、労災、男女賃金差、サプライチェーン監査等を具体的な数値として公開しています。
一方、店舗スタッフの労働環境についてはフランチャイズ加盟店ごとの差が大きく、チェーン全体を一つの雇用環境として評価できない部分が残ります。
シビックランク:A(83 / 100)
情報ランク:S
