株式会社MonotaROの商品を購入したりサービスを利用したりすることは、工場、建設、整備、物流、医療・介護などで必要になる間接資材を迅速に供給する仕組みを支えることにつながります。同社は約2,885万点の商品を扱い、約68.8万点を在庫化。平日17時までの注文を最短当日出荷できる地域も42都府県まで拡大しており、従来は時間のかかっていた企業の資材調達を大幅に効率化しています。
労働情報の公開も比較的充実しており、2025年の国内単体では正社員の平均残業時間15.8時間、正社員の有給休暇取得率80.9%、男性育休取得率83%を公表しています。一方で、2026年にはMonotaRO名義のパイプ丸イスが使用中に破損し、利用者が転倒・負傷する事故が発生して全数回収となりました。また、正規雇用労働者の男女賃金差は女性72.0%と、改善余地があります。
以上を踏まえ、株式会社MonotaROを76点、シビックランクBと評価します。
審査結果
| 評価項目 | 点数 |
|---|---|
| Safety | 34 / 50 |
| Innovation | 23 / 25 |
| Protection | 19 / 25 |
| 総合点 | 76 / 100 |
| シビックランク | B |
評価時点:2026年10月2日
株式会社MonotaROとは
株式会社MonotaROは2000年10月設立。大阪市北区に本社を置き、工場・建設・整備などで使われる間接資材をインターネットで販売しています。代表執行役社長は田村咲耶氏、資本金は2025年12月末時点で20億4,800万円です。
従来の間接資材調達では、必要な部品や工具を探すために複数の商社へ問い合わせたり、紙カタログから商品を探したりする必要がありました。MonotaROは商品情報、検索、注文、物流をインターネット上に集約することで、この調達作業を効率化してきました。
2025年末には登録会員数が1,126万口座を超え、ウェブ上の取扱商品は約2,885万点、在庫商品は約68.8万点まで拡大しています。
この会社がなくなると何が困るのか
MonotaROが提供している価値は、「工具を通販で販売している」ことだけではありません。
工場で機械部品が壊れた、整備工場で交換部品が必要になった、事業所で安全用品が不足したといった場合、必要な商品を探す時間と調達までの時間を短縮できます。
特に中小企業では、大企業のように専門の購買部門を持てない場合があります。約2,800万種類の商品を横断して検索し、少量でも購入できる仕組みは、こうした事業者の調達負担を減らします。MonotaRO自身も「資材調達ネットワークを変革する」を企業理念として掲げています。
つまり同社の社会的価値は、商品そのものだけでなく、働く人が「必要な物を探す・問い合わせる・購入する」ために費やしていた時間を減らすことにあります。
Safety|34点/50点
Safetyでは、従業員の労働環境、安全衛生、人権、販売商品の安全性を評価します。
労働時間は比較的良好
MonotaROが公表する2025年の国内単体データでは、正社員の月平均残業時間は15.8時間でした。
正社員の有給休暇取得率は80.9%、アルバイトは94.0%。男性育休取得率83%、女性88%となっています。健康診断受診率は100%、ストレスチェック受検率は88.2%です。
会社自身がこれだけ細かく労働KPIを継続公開している点は評価できます。
さらに、時差出社、スライド出勤、フレックス、短時間勤務、積立有給休暇などの制度を設けています。物流センターでは安全衛生委員会を毎月開催し、新規設備導入やレイアウト変更時を含むリスクアセスメントも行っています。
「プラチナえるぼし」「プラチナくるみん」を取得
MonotaROは2025年に「プラチナえるぼし」「プラチナくるみん」の認定を取得しています。プラチナえるぼしは女性活躍推進法に基づく認定の最高位です。
会社が制度を設けているだけではなく、外部の認定基準を満たしていることはプラス材料です。
ただし男女賃金差は大きい
一方、2025年の男女賃金差は全労働者で女性58.0%、正規雇用労働者でも72.0%でした。
会社は、雇用形態や職位ごとの男女構成の違いによって差が生じていると説明しています。単純に「同じ仕事をする女性の賃金が男性より28%低い」と解釈することはできませんが、役職・雇用構成を含めて大きな差が存在していること自体は改善課題です。
MonotaROブランド商品で負傷事故
Safetyで最も大きな減点要因となったのが、2026年のパイプ丸イス事故です。
MonotaROが販売した「モノタロウ パイプ丸イス」が使用中に破損し、利用者が転倒・負傷しました。調査の結果、溶接強度にばらつきがあり、使用中に破損する可能性が判明。対象ロットを全数回収しています。
これは単にMonotaROが他社製品を仲介販売した事故ではありません。対象製品には「株式会社MonotaRO」と表示されており、MonotaROブランド商品の品質管理に関わる問題として評価します。
回収を実施した対応自体は必要な措置ですが、事故が発生した事実と相殺はしません。
Innovation|23点/25点
Innovationは非常に高く評価しました。
MonotaROは約2,885万点を扱い、このうち約68.8万点を在庫商品として保有しています。平日17時までの注文について最短当日出荷の対象地域を42都府県まで拡大しました。
単純に巨大な倉庫を持っているだけではありません。
顧客の検索・購買データを利用して商品検索やレコメンドを改善し、注文頻度の上昇した商品を在庫化する仕組みを構築しています。その結果、事業者が必要な商品を探す時間だけでなく、自社で大量の資材在庫を抱える必要も減らしています。
2028年5月には水戸ディストリビューションセンターの稼働を予定しています。ロボティクスなどを利用して物流をさらに自動化・省力化し、既存物流拠点を上回る生産性を目指しています。
2026年度にはAI活用も重点施策として掲げています。
ただし、自動化によって削減された作業時間が、現場従業員の労働時間短縮、賃金上昇、身体負荷低減などにどの程度還元されたかについては、十分な定量情報がありません。
技術導入そのものではなく、技術によって働く人がどれだけ楽になったのかまで公開されれば満点に近づきます。
Protection|19点/25点
Protectionでは、人間の生活や産業を継続させる仕組みとしての価値を評価しました。
MonotaROでは工具、機械部品、補修用品だけでなく、安全保護具、手袋、マスク、安全靴、防災用品なども大量に扱っています。
工場や整備現場では、数百円・数千円の部品一つが入手できないことで設備全体が停止する場合があります。
こうした「少額だが仕事を続けるために必要な物」を短納期で提供する事業は、産業インフラを支える役割があります。
環境面では、MonotaRO国内事業のリサイクル率は2023年82.5%から2024年86.4%、2025年90.0%へ上昇しています。産業廃棄物の最終処分量も623トンから396トンへ減少しました。
2028年稼働予定の水戸DCでは太陽光発電を導入し、年間約3,855MWhの発電と約1,631トンのCO2削減を計画しています。
ただし巨大な通販・物流事業である以上、梱包材、配送、倉庫、返品、廃棄などの環境負荷そのものは存在します。リサイクル率改善を評価しつつ、事業全体の環境負荷がなくなったとは評価していません。
良いニュース
MonotaROの良いニュースでは、労働環境の数値公開、資源循環、物流・調達効率化を実際のKPIで確認できることが重要です。
2025年は正社員の月平均残業15.8時間、正社員有給取得率80.9%、男性育休取得率83%を達成しました。さらにプラチナえるぼし、プラチナくるみんを取得しています。
環境面ではリサイクル率が90.0%まで上昇しました。
地域活動については2025年に11回のCSR活動を実施し、保育所、児童支援施設、福祉作業所などで社員が清掃、設備設置、補修などを行っています。
単発の寄付だけではなく、同社が扱う工具や資材と従業員の作業能力を地域活動に利用している点は評価できます。
悪いニュース
MonotaROの悪いニュースでは、2026年に商品安全に関する問題が複数発生しており、その中には実際の負傷事故に至ったMonotaROブランド商品が含まれていることを重く見る必要があります。
特にパイプ丸イスでは、溶接強度のばらつきによる破損で利用者が転倒・負傷し、その後対象品を全数回収しました。
ほかにも2026年には、同社で販売された充電式LEDハンドランプで発煙・発火のおそれ、ヘッドライトで発煙のおそれ、業務用カーペットリンスクリーナーで異常過熱・火災のおそれなどが公表されています。ただし、これらはメーカー製品の不具合をMonotaROが販売者として告知したケースであり、MonotaROブランドのパイプ丸イスとは責任関係を分けて評価します。
また2026年9月には、販売していた太洋電機産業のソルダーポットについて電気用品安全法の技術基準不適合が公表されています。製造元による検証では本件を原因とする感電・火災のおそれはないとされています。
多数の商品を扱う企業ではメーカーリコールを完全に避けることは困難ですが、プライベートブランドについてはMonotaRO自身の品質管理責任がより大きくなります。
従業員口コミ
転職会議では、株式会社MonotaROの口コミ集計値として月平均残業約20時間、有給消化率81.1%とされています。会社公式の2025年実績である正社員平均残業15.8時間、有給取得率80.9%とも大きく離れていません。
2026年の法人営業職からは、定時退社しやすく有給も取得しやすいという投稿があります。一方、カスタマーサポートでは、チームによっては残業が多くなるとの投稿もあります。
過去には物流部門で月40時間付近まで残業していたという2021年当時の口コミも存在します。ただし古い個人投稿であり、現在の会社全体の実態として扱うことはできません。現在は会社公式の平均残業時間も継続して15~16時間台で推移しています。
物流現場については「重量物が多い」「立ち仕事で体力を使う」とする口コミも確認できます。通販会社であっても実際には大規模な物流現場を持つため、オフィス勤務と物流勤務を分けて労働環境を見る必要があります。
SNS・掲示板調査
X、5ch、Facebook、YouTube、TikTokを対象に公開検索を行いました。
今回明確に確認できたのは主に古い5ch投稿で、2021~2022年ごろの物流倉庫に関する書き込みでした。「MonotaROの倉庫で働いた」とする投稿などがありますが、匿名で本人確認ができず、現在の物流センターの実態を示す資料としては使用できません。
したがって、これらを点数の直接的な根拠にはせず、現場で確認すべき論点を探す補助情報としてのみ扱います。
総合評価
株式会社MonotaROの最大の強みは、「モノを売ること」よりも、企業がモノを探し、比較し、発注し、届くまでの時間を短縮したことにあります。
約2,885万点の商品を検索可能にし、約68.8万点を在庫化する規模は、中小企業を含む多くの事業者の調達業務を効率化しています。物流やAIへの投資も、人間が行ってきた単純な探索・発注・搬送作業を減らす方向にあります。
労働環境についても、残業時間、有給、育休、男女賃金差、健康診断、ストレスチェックなどを国内単体で毎年公開しており、情報公開姿勢は比較的高く評価できます。
しかし2026年のパイプ丸イス事故は無視できません。
MonotaRO名義の商品が強度不足によって破損し、実際に利用者が負傷しています。事後的に使用中止を呼びかけて全数回収したことは適切ですが、事故そのものを相殺するものではありません。
さらに正規雇用でも男女賃金差が72.0%にとどまっていること、物流現場の労災発生件数や度数率などを一覧で比較できる形の公開が十分ではないことも課題です。
以上から、Safety 34点、Innovation 23点、Protection 19点、総合76点、シビックランクBと評価します。
改善してほしい点
- MonotaROブランド商品の品質試験・監査方法と再発防止策をより詳しく公開する
- 物流センターごとの労働災害件数、休業災害、度数率・強度率を毎年公開する
- 男女賃金差72.0%について、職位構成だけでなく具体的な改善目標を設定する
- 物流自動化によって重量物取扱量、歩行距離、残業時間、労災がどれだけ減ったかを公開する
- AI・ロボット導入による省人化を、人員削減だけでなく労働時間短縮や待遇改善につなげ、その成果を公表する
- プライベートブランドについて、重大事故発生前に不具合を発見できる品質管理体制を強化する
情報ランク
| 情報 | 情報ランク |
|---|---|
| 厚生労働省など公的機関・第三者認定情報 | S |
| MonotaRO有価証券報告書・ESGデータ・公式発表 | A |
| 報道機関・専門媒体による確認情報 | B |
| OpenWork・転職会議など従業員口コミ | C |
| X・Facebook・YouTube・TikTok等の個人投稿 | D |
| 5chなど匿名掲示板 | E |
今回の審査では、点数の中心をAランク以上の公式・公的情報に置きました。口コミや匿名掲示板は、公式資料では見えない問題を探すために利用していますが、それだけを根拠として減点していません。
最終評価:76点/100点 シビックランクB
