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東京キリンビバレッジサービス株式会社の企業審査|総合51点・シビックランクD|AI自販機Vendyと災害協定を評価、月平均残業40時間と復旧KPI不足が課題

駅、学校、オフィス、公共施設で飲み物を買おうとしたとき、自動販売機が空だったり、季節に合わない商品ばかりだったり、機械の周囲が汚れていたりすれば、利用者はすぐに不便を感じます。自動販売機は置いてあるだけでは機能せず、売れ方を見ながら商品を補充し、現金を回収し、空容器を片付け、故障時には対応する人が必要です。

東京キリンビバレッジサービス株式会社は、東京・神奈川・千葉・埼玉の1都3県で、キリンビバレッジの自動販売機による飲料販売を担う会社です。2026年1月時点の従業員は713人、2025年売上高は226億円、20支店を持つキリンビバレッジグループ最大規模の販売会社です。エリアセールス担当者は自販機を巡回し、補充、売上金回収、清掃、商品構成の見直し、設置先との調整まで行います。近年はAI「Vendy」を使い、販売実績、天候、立地などから商品構成や補充数を考える仕組みも導入しています。

便利さの裏側では、働く人の負担も確認する必要があります。同社が掲載している採用データでは、2025年度の月平均所定外労働時間は40時間です。平均有給休暇取得日数は2024年度10日。年間休日は現在115日で、2027年から123日へ増やす予定です。現在の採用情報では固定残業制度を採用せず、時間外労働分を実時間で支給することも明記されています。

一方、過去には重大な労災があります。2010年4月、当時23歳の男性社員が自殺し、品川労働基準監督署は2011年10月、過重労働が原因で精神疾患を発症したとして労災認定しました。労基署が認定した2009年10月から2010年3月までの時間外労働は月平均81時間、最長92時間でした。これは16年前の事例であり、現在の制度や全社員の状況をそのまま示すものではありません。しかし、死亡を伴う重大労災であるため、現在の残業実績や労働時間管理がどこまで改善したかを見るうえで省略できない事実です。

100点制・第1版で採点すると、Safety 25点、Innovation 14点、Protection 12点、総合51点です。

総合シビックランクはDとします。

評価時点:2026年9月22日
適用基準:100点制・第1版

目次

結論:総合51点・シビックランクD

評価軸得点主な評価
Safety25/50実時間残業代、賞与3.9カ月、育児制度、労組、品質管理を評価。一方、月平均残業40時間、女性経営職3.2%、会社単体の最新労災KPI不足、過去の過重労働による死亡労災が課題
Innovation14/25AI「Vendy」による商品構成・補充・ルート最適化と現場改善を評価。ただし東京キリンビバレッジサービス単体で残業・負担が何時間減ったかは非公表
Protection12/25埼玉県との災害時飲料提供協定、福生市との包括連携、キリングループのCSIRT・SOCを評価。代替倉庫・代替配送能力、RTO、実復旧時間は確認できず
総合51/100シビックランクD

Dという評価は、同社が何も取り組んでいないという意味ではありません。AIによる自販機運営支援、実残業時間に応じた時間外手当、2027年からの休日増加、育児休業、災害協定など、改善を確認できる材料があります。

一方で、企業審査では「制度がある」だけではなく、結果を見ます。2025年度の月平均残業は40時間で、会社単体の最新の労災件数、交通事故件数、腰痛などの休業災害、災害時の復旧時間、拠点停止時の代替配送能力などは十分に公開されていません。AIが仕事を効率化していても、その成果が労働時間短縮へどれだけ戻ったかも確認できません。

情報ランク:A。現在の会社概要・採用情報・働き方データは企業公式または企業が掲載する採用データ。

情報ランク:S。過去の労災認定については、品川労働基準監督署による認定内容を複数の労務・報道資料で確認しています。

基本情報

項目内容
会社名東京キリンビバレッジサービス株式会社
設立2000年1月
本社東京都中央区日本橋小網町2-5 キリン日本橋ビル7階
代表者代表取締役社長 竹原佳孝
資本金1,000万円
決算期12月31日
主要事業清涼飲料水・食品の販売、自動販売機の管理・運営
営業地域東京、神奈川、千葉、埼玉
従業員数713人、2026年1月時点
売上高226億円、2025年実績
事業所20支店
平均年齢42歳
平均勤続年数13年、2025年度
上場区分非上場、キリンビバレッジグループ

2026年3月には本社を千代田区神田和泉町から中央区日本橋小網町へ移転しました。現在の公式会社概要では代表取締役社長は竹原佳孝氏です。古い求人・法人データには旧住所や旧代表者が残っている場合がありますが、本記事では2026年9月時点の公式会社概要を優先します。

情報ランク:A。

この会社は何をする会社か

東京キリンビバレッジサービスは飲料を製造する工場会社ではありません。キリンビバレッジが製造する「午後の紅茶」「生茶」などの清涼飲料を、首都圏の自動販売機という販売チャネルを通じて利用者へ届ける会社です。

会社は2000年、首都圏におけるキリンビバレッジの自動販売機の管理・運営を目的に「東京ベンディングサービス株式会社」として設立されました。2000年10月に缶・紙パック自販機のオペレーション、2001年にカップ自販機、2002年に新規設置先の開拓や営業管理も受託し、2004年に現在の社名へ変更しています。

つまり、仕事は「飲み物を運ぶ」だけではありません。自販機一台ごとを小さな売場として維持し、売れ方を見て品ぞろえを変え、設置先との関係を保ち、機械の状態を確認し、利用者がいつでも購入できる状態を作るのが中核業務です。

エリアセールス担当者の具体的な仕事

現在の採用情報から確認できる仕事には、担当ルートの車両巡回、自動販売機への商品補充、売上金回収、自販機と周辺の清掃、売上データ確認、商品ラインアップの変更、売場づくり、設置先とのコミュニケーション、AIを使った補充数の検討などがあります。

キリンビバレッジグループのエリアセールスでは、季節や地域によって異なるものの、一日約20台の自販機を巡回する仕事例も紹介されています。東京キリンビバレッジサービス全員が一律に20台という意味ではありませんが、短い停車と乗降、商品の積み下ろし、補充、現金管理を一日に何度も繰り返す仕事です。

AIが入っても、人が不要になるわけではありません。AIは「どの商品が、どの場所で、どの程度売れそうか」を補助しますが、実際の利用状況、季節、イベント、設置先からの要望などは担当者が確認します。同社も「データと現場力」を組み合わせる運営を説明しています。

20支店で1都3県を担当

会社は20支店を展開しています。

地域主な支店
東京江戸川、足立、中央、湾岸、大田、品川、府中、多摩、北東京
神奈川横浜、新横浜、大和、相模原、湘南
千葉千葉、柏、上総
埼玉埼玉南、川越、さきたま

公式事業所一覧で20支店を確認できます。

この配置は単純な営業拠点の数ではありません。自販機は商品を一度置けば終わりではなく、継続して補充する必要があるため、担当地域の近くに商品、車両、人員を置く意味があります。

一方、20支店あることだけで「災害時にも完全に代替できる」とは評価しません。例えば品川支店が停止したとき、中央支店や大田支店が何台分を代替できるのか、商品在庫を何日分移せるのか、人員・車両を何時間で振り替えられるのかは公開されていません。

情報ランク:A。

公共施設で確認できる設置例

取引先企業の実名は広く公開されていませんが、自治体の入札結果から、同社がどのような場所で自販機を運営しているかは具体的に確認できます。

利用先・施設確認できた内容同社が担う役割
横須賀市立中学校・養護学校2026年の自販機設置場所貸付4物件すべてを落札学校施設での自販機設置・運営
福生市2026年にキリンビバレッジと包括連携協定みまもり自販機、子育て応援機能付き自販機等
埼玉県災害時の飲料提供協定災害時の救援飲料供給

横須賀市では2026年2月、市立中学校・養護学校24校を4グループに分けた自販機設置場所貸付で、4物件すべてを東京キリンビバレッジサービスが落札しました。

福生市では2026年6月1日、福生市、キリンビバレッジ、東京キリンビバレッジサービスの3者が包括連携協定を締結しました。市内の公園、学校、児童館には防犯カメラを内蔵した「みまもり自動販売機」が設置され、児童館では液体ミルクや紙おむつを扱う「子育て応援機能付自動販売機」も導入されています。

飲料販売だけではなく、既存の自販機網を防犯や子育て支援へ広げている例です。

情報ランク:S。

事業による人間への貢献

東京キリンビバレッジサービスがなくなっても、首都圏の飲料販売そのものが消えるわけではありません。他社自販機、コンビニ、スーパーなどの代替手段があります。

しかし、同社が運営する自販機の補充・清掃・管理が止まれば、その設置場所では売り切れ、品ぞろえの劣化、回収ボックスの滞留、故障対応の遅れなどが起こります。特に学校、オフィス、工場、公園など、近くに売店がない場所では、自販機が飲料へのアクセスを補っています。

店員のいない売場を維持する

自動販売機の特徴は、常駐店員を置かずに商品を販売できることです。

ただし、「無人販売」は「人がいらない販売」ではありません。裏側ではエリアセールス担当者が定期巡回し、売れた商品を補充し、売上金を回収し、商品を入れ替え、売場を清掃します。

例えば気温が上がれば水や茶飲料の販売が増え、オフィスと公園でも売れる商品は変わります。売れない商品を多く積めばトラックの積載スペースを無駄にし、売れる商品を少なく積めば売り切れます。

東京キリンビバレッジサービスはAI「Vendy」を使い、過去の販売実績、天候、エリア特性などを分析して、商品構成や補充数を考える仕組みを導入しています。

利用者にとっては、欲しい商品が売り切れにくくなり、設置先にとっては自販機の利用価値や販売機会を高められる可能性があります。

清掃と空容器回収も売場維持の仕事

自販機周辺では、飲み終えた缶やペットボトルが発生します。エリアセールス業務には自販機の清掃や空容器回収も含まれています。

この作業を怠れば、機械自体が正常でも、回収ボックスがあふれたり周囲が汚れたりします。

飲料販売会社の役割は、商品を補充するだけではなく、無人の売場を利用できる状態に保つことにもあります。

防犯や子育て支援へ自販機を転用

福生市の「みまもり自動販売機」は、自販機に防犯カメラを組み込んだものです。公園、学校、児童館へ設置することで、単なる飲料販売機に地域の見守り機能を加えています。

また児童館の「子育て応援機能付自動販売機」では、液体ミルクや紙おむつも扱います。外出中に乳児用品が必要になった家庭にとって、児童館で購入できることは具体的な利便性です。

これはキリンビバレッジとの共同施策であり、東京キリンビバレッジサービスだけの開発実績としては扱いません。一方、首都圏で自販機を実際に設置・運用する販売会社だからこそ地域へ展開できる施策でもあります。

災害時には飲料を供給する協定

埼玉県の災害時応援協定一覧では、東京キリンビバレッジサービスとの「災害時における飲料の提供に関する協定」が確認できます。

締結日は2012年9月13日で、主な内容は救援物資として飲料を提供することです。

災害時には水道、店舗、物流が止まる可能性があり、飲料は生活維持に直結します。通常時に自販機へ商品を配送する販売会社が、自治体と事前に供給協力を決めていることは、既存の事業ネットワークを危機時へ転用する仕組みです。

ただし、協定があることと、実際に大規模災害で何本を何時間以内に届けられることは別です。

今回の調査では、同社単体について、直近災害での供給本数、要請から配送までの時間、通常供給への復旧時間は確認できませんでした。

情報ランク:S。

代表業務:自動販売機のエリアセールスを審査

代表業務は、自動販売機を巡回し、売場を維持・改善するエリアセールスとします。

この仕事は「配送」「営業」「小売運営」「清掃」「現金管理」「車両運転」が組み合わさっています。

補充前に売れ方を確認する

現在はAI「Vendy」を使い、販売履歴、天候、立地などから必要商品や補充量を考えます。

Vendyは販売データや巡回コスト情報を分析し、商品ラインアップ、訪問タイミング、巡回ルート、補充本数まで提案・生成する仕組みです。

キリンビバレッジの事前検証では、自販機オペレーションに関わる業務時間を約1割削減し、売上を約5%増やす効果を見込んでいます。2024年10月からグループ管理自販機への導入を始め、2025年9月までに約8万台への導入を計画しました。

ただし、この「約1割」「約5%」は東京キリンビバレッジサービス単体の2026年実績ではありません。キリンビバレッジによるグループの事前検証と導入見込みです。

現場では人が最終判断する

同社の採用説明では、AIだけに任せるのではなく、実際の利用状況や設置先の声を担当者が加えて調整する運営が説明されています。

これは人をAIへ置き換えるというより、担当者の判断材料を増やし、経験だけへの依存を減らす使い方です。

新人でも販売データとAIの提案を参照できれば、ベテランの経験だけに頼る度合いを下げられます。

効率化した時間が労働時間短縮へ戻ったか

ここがInnovation評価で最も重要です。

キリンビバレッジは、Vendyで創出した時間を新規自販機設置先の開拓や人材育成などに活用するとしています。

これは生産性向上の使い道を説明している点では評価できます。

しかし、東京キリンビバレッジサービスの2025年度の月平均所定外労働時間は40時間です。

AI導入によって一人当たり残業が何時間減ったのか、担当台数がどう変化したのか、空いた時間が研修へ何時間移ったのか、腰痛や事故が何件減ったのかという会社単体のKPIは確認できません。

そのため、「AIを導入したから働きやすくなった」とは判断せず、改善成果の人間への還元は0点とします。

労働環境

東京キリンビバレッジサービスで働く場合、給与だけでなく、車両運転、飲料の積み下ろし、繁忙期の商品入れ替え、時間外労働、休日、育児制度まで合わせて見る必要があります。

現在の採用情報では、過去の重大労災が起きた時代とは異なり、固定残業制度を使わず、実時間に応じて時間外手当を支給すると明記しています。

一方、会社自身が公表する月平均残業は40時間であり、現在も労働時間の負担は企業審査上の大きな課題です。

賃金・初任給・賞与

2027卒向け採用データでは、2026年4月実績として営業職の月給は23万5,500円です。

内訳は職能給22万5,500円と職務手当1万円。単独乗務開始後は職務手当が2万円となり、月額24万5,500円になります。

固定残業制度はなく、標準労働時間を超えた分は残業代を全額支給するとしています。

モデル月収では、入社2年目で時間外30時間の場合に約30万円。賞与は年2回で2025年度実績3.9カ月、昇給は年1回です。子ども一人につき月1万円の養育手当もあります。

一方、2026年の既存社員を対象とした東京キリンビバレッジサービス単体のベースアップ額・率は今回確認できませんでした。

初任給の額を既存社員全員への賃上げとしては扱いません。

月平均残業40時間

2025年度の会社公表値では、月平均所定外労働時間は40時間です。平均有給休暇取得日数は2024年度10日です。

会社自身の採用ページでも、新商品発売や冷温切替の時期には残業が発生する一方、労働時間短縮を進め、実時間で残業代を支払っていると説明しています。

「残業代を払っている」と「労働時間が短い」は別の評価です。

時間外手当を適切に払うことは必要ですが、月平均40時間という結果自体はSafetyで高く評価できません。

年間休日は115日、2027年から123日へ

現時点の年間休日は115日です。

採用データでは2027年から123日へ変更すると明記されています。8日増える計画です。

これは働く人へ時間を返す施策として重要です。

ただし、2026年9月22日の評価時点ではまだ実施前なので、「年間休日123日を達成済み」として現在の得点へ満額反映していません。

育児休業と男女差

2025年度の育児休業対象者は男性12人、女性1人。取得者は男性3人、女性1人で、取得率は男性25%、女性100%です。

制度の有無だけでなく取得結果を公開していることは評価できます。

一方、経営職社員62人のうち女性は2人で、女性経営職比率は3.2%です。

男女賃金差については、東京キリンビバレッジサービス単体の公開値を今回確認できませんでした。

雇用の安定性と採用後の定着

平均勤続年数は13年です。

新卒採用では2024年に14人を採用し離職者2人、定着率85.7%。2025年11人、2026年15人については掲載時点で離職者0人となっています。

短期離職が大量に発生しているデータではありません。

退職金、定年後再雇用、準中型免許取得支援、借上げ寮などの制度も確認できます。

福利厚生・教育

確認できる制度には、雇用・労災・厚生年金・キリン健保、退職金、再雇用、養育手当、交通費全額支給、準中型免許取得支援、借上げ寮、キリングループ福祉会、グループ生命保険、財形制度、通信教育、新入社員研修、外部運転研修、オペレーション研修、3年目・5年目研修、経営職養成研修などがあります。

運転を伴う業務なので、外部運転研修が明記されている点は仕事内容と直接関係した安全施策です。

労働組合・相談制度

東京キリンビバレッジサービスには労働組合があり、2026年にも労組活動を確認できます。

キリングループでは、社内・社外ホットライン、匿名通報、通報者への不利益取り扱い禁止、原則20日以内の調査実施有無の判断などを定めています。

2025年のキリングループ全体のホットライン通報は183件で、ハラスメント73件、労務・人事評価15件、職場環境・人間関係49件などでした。

ただし、この183件は東京キリンビバレッジサービス単体の件数ではありません。

同社で何件の相談があり、何件を認定し、どの程度是正したのかは公開情報から確認できませんでした。

従業員・元従業員の口コミ

口コミは、会社公式データだけでは見えない現場感を補うために確認しました。ただし匿名・自己申告であり、母集団にも偏りがあるため、口コミだけで会社全体を断定しません。

転職会議では対象企業について多くの口コミが掲載され、残業、人事、賞与、有給などの論点が確認できます。サイト側に掲載される会社情報には古い本社住所・代表者も残っているため、現在情報とは分けて扱いました。

エンの会社口コミでは24人の社員・元社員回答に基づく平均年収430万円、平均残業50時間と表示されています。サイト自身も「実際の平均値とは異なる」と注意書きを付けています。会社側は2026年3月、フレックス制、時間短縮の取り組み、実時間による残業代支給などを回答しています。

Indeedでも少数ながら口コミを確認しました。販売データを事前に見られるようになり準備時間が短くなったという趣旨の投稿がある一方、業務量や残業、家庭との両立への不満も確認できます。

OpenWorkについても確認しましたが、検索で具体的に確認できた極端な長時間労働の投稿には2015年以前の退職者によるものがあり、現在のSafety採点の主要根拠には使用していません。

口コミサイトと会社公式値を照合すると、残業については会社自身も40時間と公表しているため、現在の時間負担は無視できないと判断しました。

情報ランク:C。口コミ。

情報ランク:A。会社側の制度説明。

Safety:25/50

Safetyでは、現在の賃金・休息・制度だけでなく、過去の重大労災、現在の労災結果の公開、車両運転と重量物作業の安全まで確認します。

現在は実時間による残業代支給、運転研修、育児制度などを確認できます。一方、2025年度の月平均残業40時間と、会社単体の最新労災・交通事故KPIが見えないことが大きな弱点です。

2010年の過重労働による死亡労災

2010年4月13日、東京キリンビバレッジサービスで自販機補充などを担当していた23歳の男性社員が自殺しました。

品川労働基準監督署は2011年10月5日、過重労働によって精神疾患を発症したとして労災を認定しました。

労基署が認定した2009年10月から2010年3月までの時間外労働は月平均81時間、最長92時間。2010年4月には13日間で63時間の時間外労働があったと報じられています。

当時、自販機約80台を一人で担当していたとする報道もあります。

遺族側は残業代や勤務制度についても会社側の問題を主張し、その後損害賠償請求訴訟を提起しています。ここでは、遺族側の主張と、労基署が認定した過重労働・労災を区別します。

企業審査では、この死亡労災を福利厚生やAI導入で相殺しません。

一方、16年前の事例をそのまま現在の労働環境とみなすこともしません。現在は固定残業制度なし・実時間による残業代支給が明記され、2027年からの休日増加も予定されています。

それでも現在の月平均残業は40時間です。

さらに、会社単体の最新の休業災害度数率、交通事故件数、過重労働による休職件数などは公開情報で確認できませんでした。

車両運転と重量物作業

エリアセールスは車両で複数の自販機を巡回し、飲料を補充します。

飲料商品を扱い、乗降と持ち運びを何度も繰り返すため、腰や肩への負担、転倒、交通事故などが安全上の確認項目です。

会社は外部運転研修、オペレーション研修、準中型免許取得支援などを設けています。

しかし「研修がある」ことと「実際に事故が少ない」ことは別です。

会社単体の最新の交通事故件数、休業労災件数、腰痛による休業件数などを確認できなかったため、労働安全・健康は2/10点とします。

商品・サービス安全

自販機では、飲料の賞味期限、機械の衛生、転倒防止、故障、空容器回収などが利用者の安全に関係します。

キリンビバレッジグループでは、自販機の補充、清掃、点検、メンテナンスなどを運営プロセスとして持っています。

今回の検索範囲では、東京キリンビバレッジサービスを当事者とする直近の大規模商品回収や利用者への重大事故は確認できませんでした。

ただし、同社単体の誤投入、期限切れ、機械事故などの年間件数は公表されていないため、満点にはしません。

Safety採点

項目得点根拠
賃金・利益の還元6/10初任給23.55万円、単独乗務後24.55万円、賞与3.9カ月、実時間残業代を確認。既存社員の2026年ベア額は未確認
労働時間・休息2/10会社公表の月平均残業40時間。年休115日、平均有給10日。2027年の123日は計画段階
雇用安定・待遇公平性4/5平均勤続13年、退職金・再雇用、最近の新卒定着を評価。女性経営職は3.2%、男女賃金差は非公表
福利厚生・育児・介護4/5健保、養育手当、寮、免許支援、男性育休25%、女性100%等を確認
人権・ハラスメント・労使関係3/5労組とグループ内部通報制度を確認。会社単体の相談・是正件数は非公表
労働安全・健康2/10運転研修等はあるが、最新の単体労災・交通事故KPIは非公表。過去に過重労働による死亡労災
商品・サービス安全4/5自販機の品質・衛生・メンテナンス体制を評価。単体事故KPIは非公表
合計25/50

Innovation:14/25

Innovationでは、AIやシステムを導入した事実だけではなく、担当者の仕事がどう変わり、その成果が人へ返ったかを見ます。

Vendyで商品構成・補充・巡回を支援

Vendyは販売データや巡回コストなどをAIで分析し、商品構成、訪問時期、巡回ルート、補充本数を提案・生成する仕組みです。

キリンビバレッジの事前検証では、オペレーション業務時間約1割削減、売上約5%増加を見込んでいます。

従来、担当者が自販機ごとの販売履歴を見ながら経験中心で判断していた工程の一部をAIが補助するため、属人性を下げる可能性があります。

人間の判断を残す

同社の採用情報では、AIが出した情報と実際の利用状況、顧客の声を組み合わせて売場を作ると説明しています。

AIへすべてを任せるのではなく、人の現場判断を残している点は、自販機という設置環境ごとの差が大きい事業には合理的です。

削減時間の人間への還元は確認できない

キリンビバレッジはVendyによって創出した時間を、新規設置先の開拓や人材育成などへ活用するとしています。

しかし、企業審査で「改善成果を働く人へ還元した」と評価するには、残業削減、身体負担削減、賃上げ、休日増加、人員配置改善などとの因果関係が必要です。

東京キリンビバレッジサービス単体では、それを示す定量KPIを確認できませんでした。

2027年から年間休日を8日増やす予定ですが、会社はVendyの生産性向上が休日増加の原資になったとは明示していません。

そのため「改善成果の人間への還元」は0点とします。

Innovation採点

項目得点根拠
作業負担・危険の削減6/10Vendyのグループ検証でオペレーション時間約1割削減見込み。東京単体の削減時間・身体負担KPIは未確認
商品・サービス改善4/5AIで商品構成・補充・巡回を最適化し、現場判断と組み合わせる運用を確認
改善成果の人間への還元0/5AI効果が残業、賃金、休日、配置へ戻った定量的因果関係を確認できず
研究開発・現場改善の継続4/5実証から全国展開へ進んだVendyを同社も利用し、研修・運用改善を継続
合計14/25

Protection:12/25

東京キリンビバレッジサービスは飲料を扱い、多数の車両、支店、自販機を運営します。

地震、台風、停電、通信障害、サイバー攻撃のときにも供給を続けられるかがProtectionでは重要です。

埼玉県との災害時飲料提供協定

埼玉県の災害時応援協定一覧では、東京キリンビバレッジサービスとの「災害時における飲料の提供に関する協定」が掲載されています。

2012年9月13日締結で、救援物資として飲料を提供する内容です。

福生市との2026年の包括連携協定にも「災害対策」が含まれています。

20支店あるが代替能力は非公表

1都3県に20支店があるため、拠点自体は分散しています。

しかし、災害時に重要なのは「支店が複数あること」ではなく、「停止した支店を別支店がどの程度代替できるか」です。

主要倉庫停止時の代替先、支店間で融通できる車両数、代替可能な自販機台数、緊急在庫日数、燃料不足時の配送計画、通信停止時の手作業運用、主要拠点の目標復旧時間について、会社単体の公開情報を確認できませんでした。

十分に調査しても公開値を確認できなかったため、「生産・物流・調達の代替」と「供給継続・復旧能力」は0点とします。

キリングループのサイバー管理

キリングループではKIRIN-CSIRTとSOCを運用し、グループ共通の情報セキュリティ規程、各事業会社の情報セキュリティ管理者、従業員教育などを整備しています。

東京キリンビバレッジサービスもキリングループ会社として、このガバナンス体制の対象に位置付けられます。

一方、同社単体のISO27001認証、標的型メール訓練結果、インシデント件数、バックアップ復元時間などは確認できません。

そのため5点満点ではなく4点とします。

Protection採点

項目得点根拠
災害への備え・訓練4/5埼玉県との飲料提供協定、福生市との災害対策連携を確認。会社単体の訓練結果は未確認
生産・物流・調達の代替0/520支店は確認できるが、代替倉庫・代替配送能力・在庫日数等は非公表
サイバー防衛・情報保護4/5グループCSIRT・SOC・共通規程・事業会社管理者体制を評価。単体KPIは非公表
供給継続・復旧能力0/5RTO、実災害・システム停止時の復旧時間を確認できず
危機時の市民への対応4/5災害時の飲料提供協定、地域安全・子育て支援自販機を確認。実災害時の供給量・時間は未確認
合計12/25

重大事故・行政処分・不祥事の確認

通常調査とは別に、死亡事故、重大労災、書類送検、行政処分、火災、爆発、商品回収、情報漏えい、サイバー攻撃、大規模人員削減を追加検索しました。

重大事例として確認できたのは、2010年に発生し、2011年に労災認定された23歳社員の自殺です。過重労働と精神疾患の因果関係について労災認定が行われています。

一方、2020年代の東京キリンビバレッジサービスを当事者とする死亡労災、大規模火災、行政処分、大規模商品回収、重大な情報漏えい、大規模希望退職については、今回の公開検索範囲で具体的な事例を確認できませんでした。

これは「事故や問題が一度もない」という意味ではありません。

会社単体の事故件数が毎年公開されているわけではないため、「検索で見つからない=事故ゼロ」として加点することもしません。

SNS・匿名掲示板の確認結果

口コミサイトとは別工程で、X、Facebook、YouTube、TikTok、5ちゃんねる、爆サイを会社名と労務関連語で確認しました。

媒体確認結果
X現従業員・元従業員と確認でき、現在の労働評価に利用できる公開投稿を確認できず
Facebook会社単体の労働実態を裏づけられる社員投稿を確認できず
YouTube現在の労働評価へ利用できる社員・元社員発信を確認できず
TikTok直接検索には閲覧制限があり、検索エンジンで確認可能な範囲でも有用な対象会社投稿を確認できず
5ちゃんねる会社名の記載自体は検索されたが、労務・安全の事実確認に使える対象法人投稿を確認できず
爆サイ対象会社との関係を確認できる有用な労務投稿を確認できず

SNS・掲示板で有用な投稿が見つからなかったことを「評判が良い」として加点していません。

非公開投稿、削除済み投稿、検索エンジンに収録されていない投稿は確認できないためです。

主なニュース・最近の動き

2026年3月:本社を日本橋小網町へ移転

2026年3月、本社を東京都千代田区神田和泉町から、中央区日本橋小網町2-5のキリン日本橋ビル7階へ移転しました。

現在の公式会社概要では代表取締役社長は竹原佳孝氏です。

2026年6月:福生市と包括連携協定

2026年6月1日、福生市、キリンビバレッジ、東京キリンビバレッジサービスの3者は包括連携協定を締結しました。

連携分野は地域の安全・安心、災害対策、子ども・子育て支援、地域活性化です。

協定に基づき、公園、学校、児童館へ防犯カメラ付き「みまもり自動販売機」を設置し、児童館では液体ミルクや紙おむつを販売する自販機も導入しています。

2026年:年間休日123日への変更を公表

採用情報では、年間休日を現在の115日から2027年に123日へ変更するとしています。

8日増加は明確な改善ですが、評価時点ではまだ実施前です。

実施後に残業40時間がどう変化するか、有給取得日数も増えるかまで確認する必要があります。

2026年3月公表:2025年12月期は約8.06億円の純損失

官報決算データベースに収録された第26期決算公告では、2025年12月期の純損失は8億563万5,000円、利益剰余金はマイナス72億9,341万6,000円、総資産は32億1,121万9,000円です。

前期より純損失は拡大しています。

一方、マイナビ掲載の2025年売上高は226億円です。

赤字だから直ちに人間への貢献が低いとは評価しませんが、賃上げ、休日増、安全投資、AI投資を長期的に続けられるかを見るうえでは財務状態も重要です。

項目別得点

評価軸項目得点
Safety賃金・利益の還元6/10
Safety労働時間・休息2/10
Safety雇用の安定・待遇公平性4/5
Safety福利厚生・育児・介護4/5
Safety人権・ハラスメント・労使関係3/5
Safety労働安全・健康2/10
Safety商品・サービス安全4/5
Safety小計25/50
Innovation作業負担・危険の削減6/10
Innovation商品・サービス改善4/5
Innovation改善成果の人間への還元0/5
Innovation研究開発・現場改善の継続4/5
Innovation小計14/25
Protection災害への備え・訓練4/5
Protection生産・物流・調達の代替0/5
Protectionサイバー防衛・情報保護4/5
Protection供給継続・復旧能力0/5
Protection危機時の市民への対応4/5
Protection小計12/25
総合51/100

総合評価

東京キリンビバレッジサービスは、首都圏で自動販売機を「置く会社」ではなく、店員のいない多数の売場を人と車両とデータで毎日動かす会社です。

713人の従業員と20支店を持ち、エリアセールス担当者が補充、集金、清掃、商品構成変更、設置先対応を行います。学校や公共施設にも設置実績があり、福生市では防犯カメラ付き自販機や液体ミルク・紙おむつを扱う子育て支援型自販機にも関与しています。

InnovationではAI「Vendy」が具体的です。グループ検証では自販機オペレーション時間約1割削減、売上約5%増加が見込まれ、東京キリンビバレッジサービスも現在Vendyを実際の売場づくりに使っています。

しかし、ここで評価を止めることはできません。

会社が公表する2025年度の月平均残業は40時間です。AIで作業を効率化しても、残業が何時間減ったかという東京会社単体のKPIはありません。

労働面では、現在は固定残業制度を使わず実労働時間に応じて残業代を支給し、2027年から年間休日を115日から123日へ増やす予定です。賞与3.9カ月、養育手当、免許取得支援、借上げ寮、研修などの制度も確認できます。

一方、男性育休取得率は25%、女性経営職比率は3.2%です。平均勤続13年など安定性を示す数字はありますが、男女賃金差の単体開示は確認できません。

Safetyで無視できないのが、2010年の23歳社員の自殺と2011年の労災認定です。

労基署が認定した時間外労働は半年間で月平均81時間、最長92時間でした。

これは過去の重大事例であり、現在の社員全体が同じ状態にあることを意味しません。現在は残業代の仕組みも変わっています。

それでも、現在の平均残業が40時間である以上、労働時間は引き続き主要な確認項目です。会社単体の過重労働による休職、休業災害、交通事故などの結果指標を継続的に開示すれば、現在の安全性をより正確に判断できます。

Protectionでは、埼玉県との災害時飲料提供協定、福生市との災害対策連携、キリングループのCSIRT・SOCなどを評価できます。

一方、20支店のどこかが停止した際に別支店が何台分を代替できるのか、在庫を何日持てるのか、システム停止時に手作業へ切り替えられるのか、何時間で通常業務へ戻れるのかは確認できません。

「協定がある」「拠点が多い」「サイバー体制がある」から一段進み、実際の復旧力を数字で示すことが今後の課題です。

以上から、

Safety 25点
Innovation 14点
Protection 12点

総合51点。

100点制・第1版による総合シビックランクはDとします。

出典一覧

No.主な出典
1東京キリンビバレッジサービス株式会社「会社概要」
2東京キリンビバレッジサービス株式会社「事業所一覧」
3マイナビ2027「東京キリンビバレッジサービス株式会社 会社概要・働き方データ」
4マイナビ2027「東京キリンビバレッジサービス株式会社 採用データ」
5キリンビバレッジグループ「採用情報」
6キリンホールディングス「AIを活用した自動販売機のオペレーション最適化サービスを2024年10月から導入開始」
7福生市「福生市、キリンビバレッジ株式会社及び東京キリンビバレッジサービス株式会社との包括連携協定」
8福生市「防犯カメラ付き自動販売機『みまもり自動販売機』の設置について」
9埼玉県「災害時応援協定一覧」
10横須賀市「市立中学校及び養護学校の自動販売機設置場所貸付一般競争入札結果」
11人事Gate「23歳過労死 自殺の男性社員を労災認定」
12人事労務総合研究所「労災認定について実態調査を労基署に要請」
13MyNewsJapan「キリンビバ自販機配送の23歳社員が過労自殺」
14転職会議「東京キリンビバレッジサービスの転職・採用情報」
15エン転職・会社口コミ「東京キリンビバレッジサービス株式会社」
16官報決算データベース「東京キリンビバレッジサービス株式会社 第26期決算公告」
17キリンホールディングス「コンプライアンス」
18キリンホールディングス「サイバー攻撃への対応」

情報ランクの基準

情報ランク基準
S公的機関の資料で直接確認できる情報、または独立した第三者による検証・監査・認証等の裏づけがある情報。裏づけの対象範囲に限る
A企業自身の公式発表、報告書、採用情報など。独立した裏づけまでは確認していない企業側の説明・自己申告
B役職や立場が確認できる関係者への取材・発言、記者による直接取材など、発信者と立場を確認できる情報
C一般社員、元社員、パート、アルバイトなどの勤務経験に基づく口コミ
DXなど一般SNSの投稿で、発信者の立場や内容の裏づけが十分でない情報
E匿名掲示板など、発信者の身元や関与をさらに確認しにくい情報

情報ランクは情報の出どころと裏づけを示すもので、企業の良し悪しを評価する総合シビックランクとは別のものです。低い情報ランクだから虚偽という意味ではなく、高い情報ランクだから記述全体が必ず正しいという意味でもありません。

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