MENU

Ocean Network Express Pte. Ltd.(ONE)の企業審査|総合55点・シビックランクD|代替航路・サイバー認証を評価、賃金・実残業の開示不足とONE HENRY HUDSON火災が課題

企業審査|100点制・第1版
評価時点:2026年9月27日

スーパーに並ぶ輸入果物や冷凍食品、スマートフォンや家電の部品、衣料品、家具、工場で使う機械、病院で使う医療機器。私たちが日常的に手にする商品には、海外の工場や港からコンテナ船で運ばれてきたものが数多くあります。もし主要航路が長期間止まれば、商品が店に届かないだけではなく、国内工場が必要な部品を入手できず、生産そのものが止まる可能性があります。

Ocean Network Express Pte. Ltd.(以下ONE)は、この国際コンテナ輸送を担う世界大手の定期船会社です。シンガポールに本社を置き、280隻を超える船隊、約220万TEUの船腹量、165を超える定期サービスを通じて120カ国以上を結んでいます。公式会社案内では従業員は8,000人超、50カ国超に展開しています。

ONEが担う仕事は「船を動かす」だけではありません。どの港を何曜日に結ぶかを決めるネットワーク設計、船腹の配分、コンテナの配置、予約受付、危険品・特殊貨物の確認、港湾ターミナルとの調整、運賃管理、貨物追跡、事故時の代替ルート設定などを世界規模で組み合わせます。

2026年3月、中東情勢の悪化とホルムズ海峡周辺の安全問題を受け、ONEはペルシャ湾向け新規予約を一時停止すると同時に、影響航路で代替ルートや運航調整を実施しました。アジア―欧州航路では喜望峰経由を継続し、港の組み合わせを変えながらスケジュールの安定化を図っています。世界情勢が変化したときに「別の道を使って物を届け続ける」ことは、この会社の社会的な役割を最も分かりやすく示す部分です。

一方、安全面では重大な確認事項があります。2025年11月、ロサンゼルス港に停泊中のコンテナ船ONE HENRY HUDSONで火災が発生しました。米国家運輸安全委員会はこの事故を、損害額200万ドル超のmajor marine casualtyとして調査しています。25人が乗船していましたが、負傷者や海洋汚染は報告されませんでした。

ただし、この船はONEの自社保有・自社船員運航と単純には扱えません。ClassNKの船舶登録では登録船主はF.J. LINES INC.、管理会社はFUKUJIN KISEN CO., LTD.です。またONE自身の採用ページは、ONEが船員を直接募集していないことを明記しています。したがって本審査では、この火災をONEの貨物輸送サービス、安全管理、事故時対応には反映しますが、船員の雇用待遇や船舶保守をONE本体の直接雇用責任として採点しません。

ONEは技術・危機対応では強い一方、企業審査で重視する「会社自身の従業員が何時間働き、利益がどの程度賃金へ戻っているか」という情報は十分ではありません。2026年のシンガポール社員口コミは比較的良好ですが、ONE Pte. Ltd.単体の平均給与、基本給改定率、平均残業、有休取得率を現在値として一貫して確認できませんでした。

以上から、供給継続力とデジタル・安全管理を評価しつつ、労働条件の開示不足と重大な海上火災を反映し、総合55点、シビックランクDとします。

目次

結論:総合55点/100点、シビックランクD

評価軸得点主な評価
Safety20/50育児支援、人権制度、ISO 45001、安全KPI公開を評価。一方、賃金改定・実残業の会社単体開示不足、FY2024の高重度労災、ONE HENRY HUDSON火災を減点
Innovation17/25予約の93%デジタル化、AI・デジタル運航、低炭素輸送、顧客手続きの簡素化を評価。社員の時短・賃金への還元は不明
Protection18/25中東危機での代替航路、喜望峰経由、世界船隊・ターミナル投資、ISO/IEC 27001、事故後の貨物回収を高評価
総合55/100シビックランクD

Dランクの理由は、ONEの物流能力が低いからではありません。

むしろProtectionは非常に強い企業です。中東・紅海の航行リスクに対し、予約停止、迂回航路、サービス再編を実際に行い、2026年にはタイ・レムチャバン港のターミナル会社への30%出資契約、韓国・釜山の自動化ターミナルへの投資も進めています。特定航路や特定港が使いにくくなった場合に、船、航路、港湾容量を組み替える力があります。

Innovationでも、2026年のサステナビリティ報告で顧客予約の93%がデジタルプラットフォーム経由となり、ONE INNOVATIONは22,233TEUの積載記録を達成しています。低炭素輸送サービスONE LEAF+では、廃食油由来UCOMEを用い、通常のVLSFOに比べてwell-to-wake CO2排出を約84%削減できる燃料を選択肢として提示しています。

一方、Safetyは企業規模の割に点数が伸びません。

第一に、給与・利益還元と実労働時間の会社単体数値が見えません。社員口コミではシンガポールの職場環境を高く評価する声が多いものの、「昇進が遅い」「給与が競合より低くなり得る」という投稿もあります。口コミは補助情報であり、平均給与や賃上げ率の代わりにはできません。

第二に、安全実績は透明性こそ評価できますが、問題がないわけではありません。FY2024には死亡0を維持した一方、社員・請負を合わせて高重度の業務上負傷16件、記録対象負傷80件が報告されています。2026年にはシンガポールオフィスが初めてISO 45001を取得しましたが、安全管理制度の整備と実際の負傷件数は分けて評価します。

第三に、ONE HENRY HUDSON火災です。船主・管理会社とONEの責任範囲は分けなければなりませんが、ONEのサービスとして顧客貨物が積まれた船で大規模火災が起き、貨物の取り出しが2026年1月まで続いた事実は、サービス安全と復旧能力の両方で重要です。

基本情報

項目内容
会社名Ocean Network Express Pte. Ltd.
略称ONE
本社7 Straits View, #16-01 Marina One East Tower, Singapore
設立2017年7月7日
事業開始2018年4月
CEOTill Ole Barrelet
主な事業国際コンテナ定期船、世界のターミナル事業等
船隊280隻超
船腹量約220万TEU
サービス165超
サービス国120カ国超
従業員8,000人超、50カ国超
FY2025売上高166億2,000万米ドル
FY2025純利益3億3,800万米ドル
FY2026第1四半期売上高45億3,900万米ドル
FY2026第1四半期純利益3,100万米ドル
親会社Ocean Network Express Holdings, Ltd.が100%保有
持株会社の株主日本郵船38%、商船三井31%、川崎汽船31%

会社規模・拠点・船隊等はONE公式会社情報、持株会社の株主構成はOcean Network Express Holdingsの公式情報によります。

2026年7月1日、Till Ole BarreletがJeremy Nixonの後任としてCEOに就任しました。現在の公式会社ページもBarreletをCEOとして掲載しています。

FY2025は売上166億2,000万米ドル、純利益3億3,800万米ドルでした。2026年4~6月のFY2026第1四半期は売上45億3,900万米ドル、純利益3,100万米ドルです。中東情勢による燃料・運航コスト上昇の影響を受けながらも黒字を維持しました。

ONEは「船員の会社」と単純には言えない

ONEを審査するうえで最も重要な法人境界の一つが船員です。

ONEは世界の船を運航する定期船会社ですが、公式採用ページで「ONE does not recruit seafarers」と明記しています。多くの船では船主・船舶管理会社が船員の雇用、船体保守、日常の船舶管理を担い、ONEは運航サービス、スケジュール、貨物、ネットワーク、品質基準等を管理します。

そのため、船員の給与や乗船契約をONE Pte. Ltd.の一般社員給与として掲載しません。また個別船舶の事故についても、登録船主、管理会社、ONEの役割を確認してから採点します。

一方、ONEに責任がないという意味でもありません。

ONEは自社のONE Vessel Quality Standard、ONE-VQSを運航船に適用し、国際条約、品質規格、事故再発防止、顧客要求など260項目超を確認すると説明しています。船主・船舶管理会社と連携し、ONEが求める安全・品質水準を運航船へ反映させる立場にあります。

主な業務内容

ONEの仕事は、港から港へ船を動かす一つの工程ではなく、数百隻の船と世界中の港を一つのネットワークとして運用する仕事です。

業務主な担当具体的な仕事社会・顧客への影響
ネットワーク設計Network & Operations港の組み合わせ、寄港順、投入船、航海日程を設計世界の貨物を定期的につなぐ
船腹・貨物管理Operations・Trade Management船ごとの予約量、積載量、コンテナ配置を調整積み残しや空スペースを減らす
顧客予約Sales・Customer Service・Digital運賃提示、Booking、B/L、追跡、問い合わせ輸出入企業が船積みを手配できる
コンテナ管理Equipment・Operations空コンテナの回送、冷凍コンテナ等を配置必要な場所で容器不足を防ぐ
ターミナル連携Port・Network部門荷役枠、接続、トランシップを調整港湾混雑時の遅延を抑える
危険品・特殊貨物Cargo Safety・Operations危険物、冷凍、重量物、OOG等の条件確認火災・破損・温度逸脱等を防ぐ
船舶品質Marine Safety & QualityONE-VQS、船主・管理会社との改善安全航海と貨物保護を支える
デジタルDigital Strategy & InnovationeCommerce、AI、予約・追跡・書類電子化人手入力・確認待ちを減らす

ネットワーク設計は「毎週同じように届く」を作る仕事

定期船では「空いている船に荷物を載せる」だけではありません。

たとえば東南アジアの工場から欧州へ部品を送る場合、荷主は生産日程に合わせ、何曜日に港へ持ち込めば何週間後に欧州へ着くかを前提に計画します。ONEは複数港を一定周期で回るサービスを設計し、遅延・天候・港湾混雑・地政学リスクが起きれば船の投入や寄港地を調整します。

2026年のアジア―北欧航路では、紅海・スエズ運河ではなく喜望峰を回る航路を前提に、FE1、FE3等の寄港地を更新しました。これは地図上の経路変更ではなく、航海日数、燃料、船の回転、港の接続、コンテナ在庫をすべて組み直す仕事です。

コンテナの「空箱」まで動かす

輸入が多い国には空コンテナがたまり、輸出が多い地域ではコンテナが不足します。

ONEは貨物だけではなく空コンテナの回送も管理します。必要な場所にドライコンテナ、冷凍コンテナ、特殊コンテナがなければ、船に空きがあっても輸出できません。

したがって輸送能力は船の数だけでは決まりません。コンテナ在庫、港湾能力、内陸輸送、予約システムをまとめて動かす必要があります。

事業による人間への貢献

海運会社が止まったときに起きるのは、単なる「荷物の遅れ」ではありません。製造部品や医療機器まで含む国際物流が滞れば、企業の生産や私たちの生活にも影響が広がります。

日常品・部品・医療機器を国境越しに運ぶ

ONEの一般向け情報では、コンテナで医療機器、家具など生活を支えるさまざまな物が運ばれることを説明しています。

コンテナ化の価値は、一個一個の荷物を港で積み替えるのではなく、標準化された箱のまま船、トラック、鉄道へ移せることです。

これにより港湾作業を高速化し、貨物の紛失や損傷を抑え、大量輸送を行いやすくします。

世界的な供給停止を避ける

海運会社の人間貢献は、平常時より危機時に分かりやすくなります。

2026年3月、ホルムズ海峡周辺の安全状況が悪化した際、ONEは新規予約を一時停止し、航海ごとに安全性を判断しながら代替ルート・運航調整を行いました。

また紅海の安全問題が続く中、アジア―欧州の主要サービスを喜望峰経由で維持しています。

遠回りになるため燃料と日数は増えますが、危険区域を無理に通過するより、船員・船舶・貨物を守りながらサービスを継続するという判断です。

ターミナル容量を確保する

2026年、ONEはタイのHutchison Laemchabang Terminal Limitedの30%持分取得契約を発表しました。同社はレムチャバン港の自動化Terminal Dなどを運営しています。

さらに韓国ではDongwon Groupとの長期提携を通じ、釜山のDongwon Global Terminal Busanへ間接出資しました。DGTはAGVを使う全自動ターミナルで、最終整備後は450万TEU超の能力を持つ計画です。

船を増やしても港で荷物を降ろせなければ輸送能力は上がりません。ONEがターミナル容量へ投資するのは、ボトルネックを港側から減らすProtectionでもあります。

代表業務の審査:世界コンテナネットワークの運航・再設計

ONEの代表業務には、世界の定期コンテナ航路を設計・運航し、障害時に組み替える仕事を選びます。

この仕事では、次の条件を同時に扱います。

  • 顧客の予約量
  • 各船の積載可能量
  • 港湾の荷役枠
  • 船の到着・出港時間
  • 空コンテナの所在
  • 燃料価格
  • 荒天・台風
  • 紛争・海賊・航行規制
  • 港湾ストライキや混雑
  • 次航路への接続

たとえば紅海を使えなくなれば、「喜望峰を回れば終わり」ではありません。

航海距離が増えるため同じ週間サービスを維持するには追加の船腹が必要になり、燃料消費も増えます。到着日が変われば、欧州港の荷役予約、次のアジア向け出港、空コンテナ配置もずれます。

ONEは2026年も喜望峰経由でサービスを組み直し、中東危機では専用更新ページを設け、予約停止、運航変更等を継続的に顧客へ告知しました。

この実績はProtectionで高く評価します。

一方、迂回は燃料消費と運航費増加を伴います。危機対応としては必要でも、環境・顧客コストには負担が出るため、無条件のプラスとは扱いません。

デジタル化とInnovation

巨大な海運会社で予約や書類処理を人手に依存すると、顧客の待ち時間だけでなく社員側の転記・確認作業も増えます。ONEのInnovationでは、こうした作業をどこまでシステムへ移したかを確認します。

予約の93%をデジタルで処理

2026年のサステナビリティ報告では、顧客予約の93%がONEのデジタルプラットフォーム経由です。

従来、船積み予約では営業・カスタマーサービスとメールや電話を往復し、空き状況、料金、書類を確認する作業が必要でした。デジタル化すれば顧客自身が予約・確認でき、人による転記や回答待ちを減らせます。

ただし、「社員の作業時間が年間何万時間減った」「削減した人員をどの仕事へ移した」という人間側の効果は現在の公開情報から定量確認できません。

ONE LEAF+で低炭素輸送を選べる

ONE LEAF+は、顧客が自社のScope 3排出削減へ使える低炭素輸送サービスです。

ONEは選択燃料として廃食油由来UCOMEを利用し、通常のVLSFO比でwell-to-wake CO2を約84%削減すると説明しています。使用する物理的なバイオ燃料はISCC認証を受け、顧客には削減に関する検証文書が提供されます。

これは「船会社自身がCO2を減らす」だけではなく、製品を輸入するメーカー・小売会社が物流由来排出を減らす選択肢を持つという改善です。

Scope 1排出原単位を2008年比65%削減

2026年報告ではScope 1排出原単位を2008年基準比65%削減したとしています。

船舶大型化、運航効率、船型改善、代替燃料等を組み合わせた結果です。

ただし原単位の低下と絶対排出量の減少は同じではありません。世界規模の輸送量が増えれば総排出量が増える可能性があるため、本記事では「65%削減」を絶対排出量65%減とは書きません。

労働環境

ONEの労働環境を評価する際は、船員と陸上社員を分けます。

ONE自身は船員を直接募集していません。したがって本節は主にONE Pte. Ltd.およびONEグループの直接社員を対象とします。

賃金・利益の還元

ONEはFY2025に3億3,800万米ドルの純利益を確保しました。

しかしONE Pte. Ltd.単体について、全社員の平均給与、中央値、2025~2026年のベースアップ率、賞与平均、利益連動賞与の支給率を確認できませんでした。

Glassdoorのシンガポール給与投稿には職種別の自己申告レンジがありますが、匿名投稿であり、全社員平均や会社公式賃金ではありません。

2026年7月の口コミでは、開始時の給与交渉によっては競合より低めになり得るとする意見もあります。一方、待遇を肯定する投稿もあり、口コミだけで低賃金企業と判断できません。

本審査では「利益が出ているから従業員への還元も十分」と推定せず、会社単体の賃金改定実績が見えないため0点とします。

労働時間・休息

2026年のシンガポールGlassdoorでは、ハイブリッド勤務や良好なワークライフバランスを評価する投稿があります。

Indeedでは全体評価3.3/5、Work-life balance 3.0/5です。支援的でバランスがよいという投稿がある一方、仕事量が過大になることがある、休暇を取りにくいという投稿も確認できます。

しかし、ONE Pte. Ltd.全体の月平均残業、年間総労働時間、有休取得率を最新の公開値として確認できませんでした。

口コミ評価を残業時間の代用にはしないため、この項目は0点です。

雇用の安定・公平性

ONEは50カ国超で8,000人以上を雇用し、2018年の事業開始以降、世界ネットワークを拡大しています。2026年も採用ページを通じて各地域で募集を続けています。

DE&Iでは性別、人種・民族、障害などを重点領域として掲げています。

一方、2026年のシンガポール口コミではキャリア昇進が遅いという投稿もあります。これは個人評価であり差別の証拠ではありませんが、昇進機会の透明性を考える材料にはなります。

会社単体の最新離職率や昇進率を本記事の調査範囲で十分確認できないため3/5とします。

福利厚生・育児

ONEのサステナビリティ情報では、医療保険、傷害保険、生命保険、健康診断、EAPによる相談支援、ウェルネス施策等を説明しています。

FY2024の育児休業では、対象3,531人のうち249人が取得し、終了後の復帰率は全体88.4%でした。男性の復帰率は100%、女性は81.5%です。

制度だけでなく復帰実績を公開している点を評価します。

一方、復帰12カ月後の在籍率は73.9%であり、全員が長期定着しているわけではありません。福利厚生・育児介護は4/5とします。

人権・ハラスメント・労使関係

ONEはGlobal Compact Network Singaporeに参加し、Code of Conduct、人権方針、Compliance Committeeを設けています。

サプライチェーンでは、ターミナル会社、内陸・沿岸輸送会社、船主、コンテナ所有者、燃料会社、ITベンダーなどへSupply Chain Management Guidelineを適用し、強制労働・児童労働の排除、公平な雇用、安全衛生、適切な賃金等を求めています。

2026年報告では新規サプライヤーの98%がこのガイドラインへ適合したとしています。

Modern Slavery Statementも継続して公開しています。

ただし、ONE Pte. Ltd.の直近のハラスメント相談件数、認定件数、是正・救済件数を一貫した形で確認できないため4/5とします。

従業員・元従業員の口コミ

情報ランクCとしてGlassdoorとIndeedを確認しました。

Glassdoor全体では364件、3.8/5。シンガポールに絞ると77件、4.1/5です。

2026年のシンガポール系口コミには、ハイブリッド勤務、保険、オフィス環境、同僚の協力、ワークライフバランスを評価する声がある一方、昇進機会、意思決定速度、社内政治などへの不満も確認できます。

Indeedは78件で3.3/5、Work-life balance 3.0、Pay and benefits 3.0、Job security and advancement 2.7、Management 2.6、Culture 2.8です。

媒体によって評価が異なるため、口コミだけで職場を良い・悪いと断定しません。

労働安全・健康

大規模物流会社では、事故件数だけでなく、対象人数、請負を含む範囲、重大度、改善策まで見る必要があります。

ONEの直接社員について、2025年サステナビリティ報告では2019年以降の死亡0を維持しています。

FY2024は社員と請負を合わせ、次の結果が報告されました。

指標社員請負合計
死亡000
高重度業務上負傷10616
記録対象業務上負傷661480
記録対象業務上疾病404
記録対象負傷率/100万時間3.4216.444.09

死亡0は評価できますが、高重度負傷16件を「軽微」と扱うことはできません。

会社は主なリスクとして通勤時事故、反復作業による障害、転倒、長時間のデスクワークに伴う人間工学的リスク等を挙げ、安全教育、リスク評価、表示改善、ウェルネス施策等を進めています。

2026年にはシンガポールオフィスが初めてISO 45001を取得しました。

制度、数値開示、死亡0を評価する一方、負傷実績も考慮し6/10とします。

ONE HENRY HUDSON火災

ONEのSafetyを見るうえでは、2025年の船舶火災を避けて通れません。ただしONE自身、船主、船舶管理会社の責任を混同せずに評価します。

2025年11月21日、ロサンゼルス港Yusen Terminalに停泊していたONE HENRY HUDSONで火災が発生しました。

NTSBによると、発生時には船員23人とパイロット2人の計25人が乗船していました。危険貨物への懸念から安全区域が設定され、船は沖合へ移動し、消火活動は4日間続きました。

負傷者と海洋汚染は報告されていません。

一方、損害額は200万ドル超と推定され、米沿岸警備隊はmajor marine casualtyに指定しました。2026年9月現在、NTSBの原因調査は継続中です。

ONEの直接責任範囲を分ける

ClassNKによると、登録船主はF.J. LINES INC.、管理会社はFUKUJIN KISEN CO., LTD.です。

したがって、船体の保守や船員の雇用をすべてONE Pte. Ltd.の直接業務として扱いません。

一方、ONEは同船を自社サービスで運航し、顧客から貨物を受託しています。事故後も船主・ターミナル・行政と連携し、顧客への情報提供と貨物処理を担いました。

復旧対応

ONEは複数回のCustomer Advisoryを公開しました。

2026年1月19日に貨物の荷卸しが完了し、貨物はYusen Terminalの指定ヤードへ保管されました。船は1月21日に修理のためアジアへ向けて出港しています。

事故から荷卸し完了まで約2カ月を要しました。

重大事故を「負傷者0だったから問題なし」とはしませんが、継続的な情報公開、行政との協力、貨物回収まで追跡した点はProtectionで評価します。

Safety:20点/50点

Safetyでは、直接社員の待遇、労働安全、そして顧客貨物を安全に運ぶサービス品質を分けて確認します。

賃金・利益の還元:0/10

FY2025に黒字を確保していますが、ONE Pte. Ltd.単体の平均給与、ベースアップ、平均賞与、利益還元率を確認できません。

口コミには待遇肯定・低めとの両方の意見があり、公式数値の代替にはできません。

重要情報非公表として0点です。

労働時間・休息:0/10

ハイブリッド勤務・良好なWLBを評価する口コミはありますが、会社単体の平均残業・総労働時間・有休取得率を確認できません。

0点です。

雇用の安定・待遇の公平性:3/5

世界8,000人超の雇用、継続採用、DE&I方針を評価します。

一方、最新の離職率・昇進率等は十分確認できず、キャリア進展への不満も一部口コミで見られます。

3点です。

福利厚生・育児・介護:4/5

医療・傷害・生命保険、EAP、健康施策、育児休業を確認できます。

FY2024の育休終了後復帰率88.4%を評価します。一方、12カ月後在籍率は73.9%であり4点です。

人権・ハラスメント・労使関係:4/5

人権方針、Compliance Committee、Modern Slavery Statement、サプライチェーンガイドラインを評価します。

直近の相談・救済KPIが十分見えないため4点です。

労働安全・健康:6/10

死亡0、事故数・負傷率の公開、リスク対策、ISO 45001取得を評価します。

一方、FY2024の高重度業務上負傷16件を重く見ます。

6点です。

商品・サービスの安全:3/5

ONE-VQS 260項目超、ISO 9001、危険貨物管理、事故後の情報公開を評価します。

一方、ONE HENRY HUDSONがmajor marine casualtyに指定され、原因調査中であるため満点にはできません。

3点です。

Innovation:17点/25点

ONEのInnovationは、単に新しい船を買うことではなく、顧客の予約や運航の判断を人手からデジタルへ移し、燃料・航路・港湾の使い方を変えているかで評価します。

作業負担・危険の削減:6/10

顧客予約の93%デジタル化、eCommerce、貨物追跡、AIを使った運航・ルーティング等により、電話・メール・人手確認をシステムへ移しています。

ただし社員の作業時間や危険作業を何時間・何%削減したかという人間側KPIは不足しています。

6点です。

商品・サービスの改善:5/5

デジタル予約、世界165超のサービス、低炭素輸送ONE LEAF+、ターミナル投資、内陸物流との接続など、顧客が実際に利用できる改善が継続しています。

5点です。

改善成果の人間への還元:2/5

顧客には予約手続き簡素化、貨物可視化、低炭素輸送という利益があります。

一方、デジタル化で生まれた生産性がONE社員の労働時間短縮、賃上げ、人員配置へどの程度戻ったかは確認できません。

2点です。

研究開発・現場改善の継続:4/5

AIルーティング、デジタル基盤、代替燃料、メタノール二元燃料船への投資、ONE LEAF+、ターミナル自動化への出資など改善が継続しています。

ただしR&D投資額や人間への効果をONE Pte. Ltd.単体で一貫して確認できないため4点です。

Protection:18点/25点

海運会社のProtectionでは、危機が起きたあとに「運べなくなりました」で終わらず、別の船、港、ルートへ本当に切り替えられるかが重要です。

災害への備え・訓練:3/5

ONE-VQS、安全・品質管理、危険海域の運航判断、ISO 45001等を評価します。

一方、全社BCP訓練回数、非常電源、拠点別RTO等は十分確認できません。

3点です。

生産・物流・調達の代替:5/5

280隻超、165超のサービス、Premier Alliance、世界の港湾ネットワークを持ち、実際に紅海・スエズを避け喜望峰へ迂回しています。

2026年の中東危機でも代替ルートと運航調整を実施しました。

机上計画ではなく実際の危機で代替を動かしているため5点です。

サイバー防衛・情報保護:4/5

2026年時点でISO/IEC 27001を維持しています。予約・貨物情報を世界規模で扱う企業として第三者規格に基づく管理を継続している点を評価します。

一方、MFA、EDR、SOC、オフラインバックアップ、重大障害時RTOなど詳細な復旧KPIまでは公開情報で十分確認できません。

4点です。

供給継続・復旧能力:4/5

中東危機の代替運航、喜望峰経由、ターミナル容量投資、ONE HENRY HUDSON事故後の貨物荷卸しと顧客対応を評価します。

ただし事故貨物の処理に長期間を要したこと、全製品・航路のRTOを数値化していないことから4点です。

危機時の市民への対応:2/5

危険海域で船員・貨物を守る予約停止、事故時の顧客向け情報提供等は確認できます。

一方、一般市民向けの恒常的な緊急物資輸送協定や災害支援KPIをONE Pte. Ltd.として十分確認できないため2点です。

SNS・匿名掲示板の確認結果

従業員口コミとは別工程で、X、LinkedIn、Reddit、5ちゃんねる、爆サイ等を検索しました。

媒体結果
XONE公式・環境活動等の投稿は確認。対象法人の給与・残業を裏づける現役社員の有用投稿は確保できず
LinkedIn会社・地域法人の社員育成・DE&I・研修発信を確認。企業公式・関係者発信として扱い、匿名口コミとは分離
Reddit対象法人の現在の雇用実態を裏づける十分な投稿を確認できず
5ちゃんねるONEに言及する古い海運市況投稿はあるが、現在の社員労務を判断できる投稿は確認できず
爆サイ対象法人へ確実に帰属する有用な労務投稿を確認できず

SNS・掲示板で情報が見つからないこと自体は加点・減点に使っていません。

重大事故・行政・サイバーの確認

今回の調査では、ONE HENRY HUDSON火災を最も重要な直近事故として扱いました。

NTSBの調査は2026年9月時点で継続中で、原因は確定していません。したがって原因をONEの管理不備と断定しません。

直近のONE Pte. Ltd.について、大規模な顧客データ流出やランサムウェア被害を示す公的な重大案件は今回の検索範囲では確認できませんでした。

ただし「検索で見つからない」ことを「事故ゼロ」と同一視しません。サイバー評価はISO/IEC 27001など確認できる対策を中心に行っています。

主なニュース・最近の動き

2026年9月:Sustainability Report 2026を公表

ONEはFY2025を対象とする最新報告を公表しました。

主な内容は、Scope 1排出原単位の2008年比65%削減、予約の93%デジタル化、Singapore officesのISO 45001取得、ISO/IEC 27001維持、新規サプライヤー98%のSupply Chain Management Guideline適合などです。

環境だけでなく安全、デジタル、サイバー、サプライチェーンの数値が更新されました。

2026年8月:FY2026第1四半期は3,100万ドルの黒字

売上45億3,900万米ドル、純利益3,100万米ドルでした。

中東情勢による燃料・運航費上昇の影響を受けましたが、需要回復と船腹利用率を背景に黒字を維持しました。

2026年3月:中東危機で代替航路・運航調整

ホルムズ海峡周辺の安全問題に対し、ONEはペルシャ湾向け新規予約を一時停止し、代替ルート、運航調整、専用情報ページを導入しました。

危機時のProtectionを評価する重要な実例です。

2026年3月:タイ・釜山の港湾能力へ投資

タイではHutchison Laemchabang Terminalの30%取得契約を発表しました。

韓国ではDongwon Groupと提携し、Busanの自動化ターミナルへ投資しました。

港湾容量を自社ネットワーク側へ確保し、混雑・接続リスクを下げる狙いがあります。

2026年1月:ONE HENRY HUDSONの貨物荷卸し完了

2025年11月の火災後、2026年1月19日に貨物の荷卸しを終え、1月21日に船は修理のためアジアへ出航しました。

負傷・海洋汚染は報告されていませんが、NTSBの原因調査は継続しています。

項目別得点

評価軸項目得点評価理由
Safety賃金・利益の還元0/10黒字だが会社単体の平均給与・ベア・賞与実績を確認できず
Safety労働時間・休息0/10WLB口コミはあるが実残業・総労働時間・有休取得率を確認できず
Safety雇用の安定・待遇公平性3/5世界8,000人超、継続採用・DE&Iを評価。離職・昇進KPI不足
Safety福利厚生・育児・介護4/5保険・EAP・健康支援・育休復帰率88.4%を評価
Safety人権・ハラスメント・労使関係4/5人権方針、Compliance Committee、Modern Slavery対応、SCMGを評価
Safety労働安全・健康6/10死亡0、KPI公開、ISO45001を評価。FY2024高重度負傷16件
Safety商品・サービス安全3/5ONE-VQS、ISO9001、事故対応を評価。ONE HENRY HUDSON火災が重大案件
Safety小計20/50
Innovation作業負担・危険の削減6/10予約93%デジタル化・AI等。社員の削減時間KPIは不足
Innovation商品・サービス改善5/5デジタル予約、ONE LEAF+、航路・ターミナル改善を継続
Innovation改善成果の人間への還元2/5顧客利便性は高いが社員の時短・賃金還元は不明
Innovation研究開発・現場改善の継続4/5AI、代替燃料、二元燃料船、デジタル、港湾自動化への継続投資
Innovation小計17/25
Protection災害への備え・訓練3/5ONE-VQS、危険海域対応等を評価。BCP訓練・RTO詳細は不足
Protection生産・物流・調達の代替5/5喜望峰迂回、世界船隊、Alliance、代替ルートの実運用
Protectionサイバー防衛・情報保護4/5ISO/IEC27001維持。詳細な復旧KPIは不足
Protection供給継続・復旧能力4/5中東危機・火災後対応・港湾投資を評価。全航路RTOは不明
Protection危機時の市民対応2/5安全優先運航・顧客情報提供等。一般市民向け恒常制度は限定的
Protection小計18/25
総合55/100シビックランクD

総合評価

Ocean Network Express Pte. Ltd.は、「世界の物流を止めない力」が非常に強い企業です。

280隻を超える船隊と165超のサービスを持つこと自体も大きな強みですが、本審査でより重要なのは、実際に危機が起きたときに動かした実績です。

紅海の安全悪化では喜望峰へ迂回し、2026年の中東危機では新規予約を一部止めながら、代替ルートと運航調整を実施しました。タイ・韓国のターミナルにも投資し、港湾容量まで自ら確保しようとしています。

このためProtectionは18/25と高く評価しました。

サイバー面でもISO/IEC 27001を維持し、物理的な船だけでなく予約・貨物情報を守る仕組みを第三者規格へ合わせています。

Innovationも強いです。

顧客予約の93%がデジタル化され、低炭素輸送ONE LEAF+、AIルーティング、ターミナル自動化、代替燃料船への投資が続いています。

しかし、企業審査では物流能力だけで会社を評価しません。

最大の弱点は、直接社員の賃金と時間です。

世界8,000人超の企業でありながら、ONE Pte. Ltd.全体について、平均給与、ベースアップ、平均残業、年間労働時間、有休取得率を現在値として簡単に比較できる形では公開していません。

シンガポールの社員口コミは4.1/5と比較的良好で、ハイブリッド勤務、保険、同僚の協力、ワークライフバランスを評価する声があります。

それでも口コミは会社公式の労務KPIの代わりにはなりません。

「働きやすそうだから高得点」ではなく、会社が数字で示しているかを重視した結果、賃金と労働時間は0点としました。

労働安全は、それより情報開示が進んでいます。

死亡0を維持し、安全事故数や負傷率を公表し、2026年にはシンガポールオフィスがISO 45001を取得しました。

一方でFY2024の高重度負傷16件は無視できません。制度を整備していることと、負傷を減らせているかは別です。

ONE HENRY HUDSON火災についても同じです。

登録船主はF.J. LINES、管理会社はFUKUJIN KISENであり、ONEの直接雇用船員事故として扱うのは不正確です。

しかしONEのサービスで顧客貨物を運ぶ船がmajor marine casualtyとなったことは、商品・サービス安全上の重大事項です。原因調査が終わっていないため、誰の過失かを断定せず、事故の存在と復旧対応のみ評価へ反映しました。

ONEが今後さらに評価を上げるために重要なのは、ONE Pte. Ltd.単体の賃金改定、平均残業、有休取得率、離職・昇進、労災の継続改善、内部通報の救済実績、BCPとサイバー復旧時間、そしてデジタル化によって減った作業時間が賃金・休暇・配置へどう返ったかを具体的に示すことです。

また、ONE HENRY HUDSON事故についてNTSBの原因調査が完了した際には、最終原因と再発防止策を改めて確認する必要があります。

世界の貨物を止めない能力はすでに高い会社です。

次の評価を左右するのは、その高度な運航力・デジタル力によって生まれた成果を、ONE自身の社員の時間、安全、待遇へどこまで数字で返していけるかです。

以上から、Safety 20点、Innovation 17点、Protection 18点、総合55点/100点、シビックランクDとします。

出典一覧

1.Ocean Network Express公式 Company Profile
2.Ocean Network Express Holdings Company Profile
3.Ocean Network Express「Sustainability Report 2026」公表資料
4.Ocean Network Express「Sustainability Report 2025」
5.Ocean Network Express FY2025 Financial Results
6.Ocean Network Express FY2026 Q1 Financial Results
7.Ocean Network Express Careers
8.Ocean Network Express Sustainability Social/ONE Vessel Quality Standard
9.Ocean Network Express Supply Chain Management
10.Ocean Network Express Modern Slavery Statement
11.Ocean Network Express ONE LEAF+ Green Solutions
12.Ocean Network Express Middle East Operations Updates 2026
13.Ocean Network Express FY2026 Premier Alliance Asia-Europe Service Updates
14.Ocean Network Express Hutchison Laemchabang Terminal investment
15.Ocean Network Express Dongwon Global Terminal Busan partnership
16.NTSB「Fire Aboard Container Ship One Henry Hudson」
17.U.S. Coast Guard ONE HENRY HUDSON response updates
18.ClassNK Register of Ships「ONE HENRY HUDSON」
19.Ocean Network Express ONE HENRY HUDSON Customer Advisory Update #8
20.Glassdoor「Ocean Network Express Reviews」「Singapore Reviews」
21.Indeed「Ocean Network Express Employee Reviews」
22.ONE公式LinkedIn等の人材・DE&I関連発信
23.X、Reddit、5ちゃんねる、爆サイの対象法人検索

情報ランクの基準

情報ランク基準
S公的機関資料、または独立した第三者による検証・監査・認証等で直接裏づけられる情報
A企業自身の公式発表、報告書、採用情報などの自己開示
B役職・立場が確認できる関係者の発言、取材、労組等の当事者資料
C一般社員・元社員・契約社員等の勤務経験に基づく口コミ
DX等の一般SNS投稿で、発信者の立場や内容の裏づけが十分でない情報
E匿名掲示板など、発信者の身元・関与をさらに確認しにくい情報

情報ランクは情報源の強さを示すもので、企業そのものの良し悪しを示す総合シビックランクとは異なります。企業公式の発信はA、公的事故調査や第三者認証で直接確認できる範囲はSとして扱います。口コミは実態を補う材料にはなりますが、会社単体の給与・残業・事故率などの公式KPIを置き換えるものではありません。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

目次