MENU

Evergreen Marine Corporation (Taiwan) Ltd.の企業審査|総合60点・シビックランクC|平均給与216.1万台湾ドルとサイバーBCPを評価、労働時間記録・港湾安全・船舶事故が課題

企業審査|100点制・第1版
評価時点:2026年9月27日

スーパーや家電量販店に並ぶ輸入品、工場へ届く部品、海外へ出荷される製品。私たちが普段「船」を意識しなくても、コンテナ船が止まれば、店頭の商品だけでなく製造業の原料や部品まで届かなくなります。海運会社は、目立たない場所で生活と産業の供給網を支える社会インフラです。

Evergreen Marine Corporation (Taiwan) Ltd.、長榮海運股份有限公司は、台湾を本拠とする世界的なコンテナ海運会社です。台湾経済部の会社登記では1968年9月25日設立、実収資本額216億5,042万9,960台湾ドル。船舶運送、船務代理、コンテナターミナル運営、港湾区域での船舶小修理などを事業としています。Evergreen Lineとして世界315超の拠点を結び、コンテナ輸送を中心に国際物流を支えています。

働く人への還元では、2025年末の会社単体従業員は3,156人で、非従業員取締役4人を除く平均給与は216.1万台湾ドルでした。2024年の264.2万台湾ドルから18.21%減少したものの、税引前利益に応じて社員報酬を配分し、その50%以上を基層社員へ留保する仕組みがあります。2025年の社員報酬計上額は3億9,176万3,000台湾ドルでした。

一方、Safetyでは無視できない問題があります。2024年には労働者の出勤記録を法定期間保存していなかったとして労働基準法違反で9万台湾ドルの処分を受けました。同年には高雄港で固定式クレーンの点検・調整時、ばね等の残圧による危険に対し、減圧や隔離など適切な対策を取っていなかったとして職業安全衛生法違反の処分も受けています。過去にはクレーン保守時の墜落死亡災害や、変圧器ファン交換時の感電・火傷事故も公的資料に残っています。

海上輸送の安全でも、2026年に台湾運輸安全委員会が公表したUni-Activeのミャンマー・ヤンゴン港衝突事故の最終報告は、後進中に船尾監視要員を配置せず、操船チームがレーダーなどの情報を十分統合できなかった結果、船尾が約3.3ノットで小型船に衝突し、2隻が沈没、1隻が損傷したと整理しています。会社のサービス安全を評価するうえで重要な事案です。

対照的にProtectionでは強い部分があります。ISO/IEC 27001:2022に基づく情報セキュリティ管理、事業継続管理、教育、社会工学演習を実施し、2025年には2,532人が情報セキュリティ研修を完了。2025年に会社へ損失を与えた情報セキュリティ事故はゼロと公表しています。

環境・技術面では、2025年からISCC認証バイオ燃料を使用し、2026年以降に受け取る新造船へメタノール対応を導入。スマート冷凍コンテナではIoTによる遠隔監視を進めています。

高い給与、グローバル輸送力、サイバーBCP、脱炭素技術を評価しつつ、労働時間管理、港湾作業の安全、船舶運航事故を別の問題として審査します。

目次

結論:総合60点・シビックランクC

評価軸得点主な評価
Safety27/50高水準の平均給与、社員報酬、福利厚生を評価。出勤記録違反、港湾設備の安全違反、過去の死亡災害、Uni-Active事故を反映
Innovation16/25スマート冷凍コンテナ、港湾自動化、バイオ燃料・メタノール、デジタル航海・環境サービスを評価。時短・賃金への定量還元は不足
Protection17/25世界的航路網、ISO 27001、事業継続訓練、情報セキュリティ教育を高評価。航路別RTOと市民向け危機支援は限定的
総合60/100シビックランクC

Cランクになった理由は、会社としての供給力と社員への経済的還元が強い一方、安全に関する実績がそれに追いついていないためです。

平均給与216.1万台湾ドル、社員報酬制度、無料昼食や健康診断、メンタルヘルス相談などは明確なプラスです。サイバー面でもISO 27001、BCP、研修、社会工学演習まで具体的です。

しかし、2024年に出勤記録の保存義務違反があり、港湾クレーン保守でも残圧対策不足を指摘されています。さらに過去の墜落死亡事故、Uni-Activeの衝突事故など、安全は「制度がある」だけで満点にはできません。

基本情報

項目内容
会社名EVERGREEN MARINE CORPORATION (TAIWAN) LTD./長榮海運股份有限公司
証券コード台湾証券取引所 2603
統一番号11337775
設立1968年9月25日
代表者張衍義
本社登記台湾・台北市中山区民生東路二段166号1~4階
実収資本額21,650,429,960台湾ドル
主な事業船舶運送、船務代理、コンテナターミナル、港湾区域での船舶小修理等
2025年末従業員3,156人、うち非従業員取締役4人
2025年平均給与216.1万台湾ドル
2025年平均従業員福利費243.8万台湾ドル
グローバル拠点Evergreen Lineとして315超の拠点
情報セキュリティISO/IEC 27001:2022、証明書は2028年12月8日まで有効

会社登記と財務情報は公的登記・監査済み財務資料で確認できます。

登記上の対象法人は台湾の長榮海運股份有限公司です。Evergreen Marine (Asia)、Evergreen Marine (Hong Kong)、Evergreen Marine Corp. America、Evergreen International Storage & Transportなどの別法人を、本記事の社員待遇や事故実績へ自動的に混ぜません。

また、Ever Givenの2021年スエズ運河座礁についても、定期傭船者であることと船舶所有者・船員雇用主であることを分けて扱います。

この会社は何をしているのか

Evergreen Marineは「船を持って貨物を運ぶ会社」だけではありません。コンテナ輸送では、荷主から予約を受け、空コンテナを用意し、港へ搬入し、船へ積み、航海し、途中港で積み替え、到着港から引き渡すまでを一つのサービスとして管理します。

業務主な担当具体的な作業顧客・社会への結果
航路設計・配船運航・営業部門港、寄港順、船腹、スケジュールを組み合わせる多国間で貨物を定期輸送できる
ブッキング営業・カスタマーサービス荷主から貨物量、港、日程、特殊条件を受け付ける輸送枠を確保する
コンテナ管理コンテナ部門・ターミナル空コンテナ配置、冷凍コンテナ状態、搬出入を管理商品の積載・保管を安定させる
ターミナル作業港湾・設備担当クレーン、ヤード、搬送設備でコンテナを積み降ろす港での滞留時間を短縮する
船舶運航船長・航海士・機関士・陸上支援航海、見張り、機関管理、安全管理を行う港と港を安全につなぐ
冷凍輸送Reefer担当温度設定、遠隔監視、異常確認食品・温度管理品の品質を守る
情報システムIT・情報セキュリティ部門予約、船積み、顧客情報、運航データを維持する世界の拠点を同じ情報で動かす
危機対応運航・管理部門港湾スト、戦争、悪天候、航路停止時の変更を判断貨物供給の途絶を抑える

コンテナ船は一隻が大きくても、船だけでは海運サービスは成立しません。港湾クレーン、ヤード、冷凍コンテナ、代理店、IT、船員、陸上担当が連動して初めて貨物が動きます。

主な利用企業・取引先の例

Evergreenは世界中の荷主・フォワーダーを相手にするため、個別の大口顧客を体系的に開示していません。本記事では、確認できない有名企業を顧客として推測しません。

サービス対象として公式に確認できるのは、一般コンテナ、冷凍コンテナ、特殊貨物などです。特に冷凍コンテナではIoT遠隔監視を導入しています。

また、他海運会社との航路協力により、自社船だけでなく共同配船・スロット交換を含むネットワークを構成します。ここでの他海運会社は「顧客」ではなく、航路・船腹を共同運用するパートナーとして区別します。

事業による人間への貢献

店頭や工場の「届かない」を減らす

コンテナ海運の社会的価値は、輸送時間そのものより「世界の生産地と消費地を定期的につなぐ」ことにあります。

衣料品、家電、家具、日用品、機械部品、食品原料など、船で運ばれる物は生活と製造業の広い範囲に及びます。Evergreen Lineは世界315超の地点でサービスを提供しており、一国・一港だけでは完結しない供給網を支えています。

ただし、「Evergreenがなければ世界物流が止まる」とは評価しません。他にも大手海運会社があり、機能には代替があります。それでも同社が大規模な航路ネットワークを供給していることは、輸送能力の一部を担う具体的な貢献です。

冷凍貨物を遠隔で監視する

冷凍コンテナでは、温度異常に気づくのが遅れれば、食品や温度管理品が大量に廃棄される可能性があります。

EvergreenはIoTによる遠隔監視装置を搭載したスマート冷凍コンテナを導入し、2023年時点で2,000台を調達、39,000台へ拡大する方針を示しました。

従来、現場でコンテナの状態を個別に確認する必要があった部分を、遠隔からデータで確認できるようにすることは、異常発見の早期化と巡回作業の削減につながります。

ただし「何人の巡回を何時間減らしたか」「温度逸脱廃棄を何%減らしたか」という横断KPIは確認できません。

港湾を自動化する

高雄港第7コンテナターミナルでは、自動化システムや無人機器、SCADAによる設備監視を導入しています。

コンテナは一個でも数トンから数十トンになるため、搬送機械の自動化・遠隔監視は、人が重量物の動線へ直接入る時間を減らす可能性があります。

一方、2024年には固定式クレーンの点検・調整時の残圧対策不足で職業安全衛生法違反が確認されました。高度な自動化設備があっても、保守作業時の基本的なエネルギー隔離が不十分なら安全は確保できません。

低炭素燃料を実運航へ入れる

Evergreenは2025年からISCC認証バイオ燃料を使用するGreen Fuel Projectを開始し、2026年以降に受け取る新造船ではメタノールを代替燃料として利用するとしています。燃料はClassNKが検証し、荷主向け排出削減証明はPwCによる検証を受ける設計です。

また、2008年を基準に2030年までに船隊のCO2排出原単位を70%削減し、2050年ネットゼロを目標としています。

ここで評価するのは、目標を掲げたことだけではありません。バイオ燃料を2025年から実際のサービスへ入れ、メタノール対応新造船へ移行している点をInnovationとして評価します。

労働環境

従業員数と雇用

2025年末の会社単体従業員数は3,156人で、うち4人は非従業員取締役です。2024年は3,112人だったため、人数は44人増えています。

少なくとも2025年に会社単体で大規模な人員削減が進んだ状態ではありません。

一方、陸上勤務と船員では雇用条件が大きく違います。会社全体の正規・有期契約比率、離職率、職種別男女賃金差を同じ粒度では確認できませんでした。

賃金・利益の還元

2025年の会社単体平均給与は216.1万台湾ドルです。2024年の264.2万台湾ドルから18.21%低下しています。

給与減少だけを見て「基本給を18.21%下げた」とは断定しません。平均給与には賞与・業績連動部分も入り、2025年の社員報酬計上額は3億9,176万3,000台湾ドルで、2024年より減少しています。

定款では、利益がある場合、社員報酬として税引前利益の0.5%以上を配分し、その50%以上を基層社員へ留保する仕組みがあります。

これは利益が大きい年に社員へ戻す仕組みとして具体的です。

一方、基本給そのものの2025年ベースアップ率、職位別中央値、船員と陸上職の賃金差は確認できません。

賃金・利益還元は8/10です。

労働時間・休息

会社の企業統治ページでは、週休2日、法定年休などの制度を示しています。業務に応じ休日が固定土日ではない場合があります。

しかし2024年6月18日、桃園市は長榮海運股份有限公司に対し、労働基準法第30条第5項に基づく出勤記録の作成・5年間保存義務違反として9万台湾ドルの処分を行いました。2016年にも同条項の出勤記録違反が公表されています。

会社単体の月平均残業、船員の実労働・休息時間、有給取得率は確認できません。制度だけでなく勤務時間を検証する基礎データの管理で処分があるため2/10とします。

福利厚生・育児・介護

台湾の陸上社員向けには、保険、無料の栄養昼食、残業・当直時の食事または手当、医師による健康相談、定期健康診断などが公開されています。

また、メンタルヘルス相談や研修、各種生活支援などの制度も会社資料で確認できます。

船員にも契約・勤続等に応じた手当、乗下船交通補助、健康診断、保険・年金等の制度があります。

利用率や育児・介護制度の男女別取得実績は十分確認できないため4/5です。

人権・ハラスメント・労使関係

会社には内部通報メールがあり、内部・外部からの通報者の身元・内容を秘密として扱い、不利益取扱いから保護する方針があります。

人権・ハラスメントについても従来から従業員苦情制度、職場ハラスメント防止のルートを設けています。

一方、2025年の会社単体ハラスメント相談件数、苦情件数、是正件数、男女賃金差等の結果KPIは今回確認できませんでした。

制度を評価し3/5です。

従業員・元従業員の口コミ

IndeedのEvergreen Marineページは3.8/5、15件のレビューで、Work-Life Balance 3.6、Pay & Benefits 3.5、Job Security 3.7、Management 3.3、Culture 3.5と表示されています。

Glassdoorでは3点台前半で、給与・福利厚生を評価する声と、昇進が遅い、伝統的な組織文化、職種によってワークライフが厳しいという声が併存しています。

ただし、IndeedやGlassdoorには台湾本社以外の海外法人・営業所の投稿も含まれます。台湾法人単体の事実として一般化せず、Cランクの補助情報として扱います。

転職会議、OpenWork、エンゲージ会社の評判も会社名で検索しましたが、台湾法人の現在の勤務実態を評価できる有用な日本語口コミは今回確認できませんでした。

労働安全・健康

現在の安全管理制度

高雄コンテナターミナルの対象拠点ではISO 45001に基づく職業安全衛生管理システムが導入されています。

会社は職業安全衛生委員会、教育、リスク管理を実施しています。

しかし認証の存在だけで事故実績を上書きしません。

2024年:固定式クレーン点検時の残圧対策不足

高雄市政府の公表資料では、2024年4月2日、固定式クレーンの検修・調整作業で、ばね等の弾性部品に残る圧力の危険に対し、減圧または隔離など適切な設備・措置を講じていなかったとして職業安全衛生法第6条第1項第1款違反、10万台湾ドルの処分を受けています。

これは「事故が起きたかどうか」だけでなく、保守時にエネルギー源を確実に遮断する基本的な安全管理に課題があったことを示します。

過去には墜落死亡災害

高雄市の公表資料では、固定式クレーンの点検・調整作業で作業監督者を指定せず、高さ2m以上で全身式安全帯等を使用させなかった結果、墜落死亡職業災害が発生した事案が確認できます。

また、高雄港116号岸壁で、高圧変圧器の冷却ファン交換作業時に電源を停止せず、労働者が感電・火傷した事案もあります。

現在の安全管理制度を評価しながらも、港湾保守の危険が実際の事故へつながった履歴を反映し、労働安全・健康は3/10です。

商品・サービスの安全

海運会社の商品・サービス安全は、船が沈まないことだけではありません。

  • 衝突・座礁を防ぐ航海安全
  • コンテナを海中へ落とさない積付け・船体運動管理
  • 冷凍貨物の温度維持
  • 危険品の適切な申告・積載
  • 港湾作業の安全
  • 情報システムが停止しないこと

まで含みます。

Uni-Active衝突事故

台湾運輸安全委員会は2026年、コンテナ船Uni-Activeがミャンマー・ヤンゴン港で起こした衝突事故の最終報告を公表しました。

船は狭いヤンゴン川で離岸・回頭中、後進しながら船尾の動きを監視する要員を配置していませんでした。操船チームは主に船首と岸の距離へ注意を向け、レーダーなどの航海情報を十分に統合できず、後進速度の増加を適時に認識できませんでした。

最終的に船尾が約3.3ノットで岸壁脇の小型船へ衝突し、2隻が沈没、もう1隻も損傷しました。

これは会社のサービス安全に直接関係するため明確な減点材料です。

Ever Lunarのコンテナ流出

2025年8月2日には、Ever Lunarがペルー・Callao沖で激しいローリングを受け、約50個のコンテナを海へ失ったと海事事故情報会社が報じました。乗組員は無事で、危険物コンテナは含まれていないとされています。

悪天候・大きなうねりが背景にあり、会社の過失が確定した事故としては扱いません。ただしコンテナ船の貨物安全・海上リスクを考えるうえでは記録します。

Ever Lovelyへの攻撃

2026年6月25日には、ホルムズ海峡近くでEver Lovelyが飛来物による攻撃を受けました。Reutersによれば船橋窓などが損傷したものの、乗組員、船、貨物は安全で、船は海峡を離脱しました。

これは戦争・地政学による外部攻撃でありEvergreenの過失ではありません。むしろProtectionでは、乗組員と貨物を守りながら航路リスクへ対応する必要性を示す事例です。

商品・サービス安全は、事故調査で具体的な操船上の弱点が指摘されたことを反映し3/5とします。

Safety:27/50

賃金・利益の還元:8/10

2025年平均給与216.1万台湾ドル、社員報酬3億9,176万3,000台湾ドル、利益の0.5%以上を社員へ配分し50%以上を基層社員へ留保する制度を評価します。

一方、2024年から平均給与が18.21%低下し、基本給の一般賃上げ率が分からないため満点にはしません。

8点です。

労働時間・休息:2/10

週休2日等の制度はありますが、2024年に出勤記録保存義務違反で行政処分を受けています。

平均残業、有給取得、船員の実休息時間も会社単体で十分に確認できません。

2点です。

雇用の安定・待遇公平性:4/5

会社単体従業員は2024年3,112人から2025年3,156人へ増えています。社員報酬の50%以上を基層社員へ留保する制度も公平性面で評価できます。

一方、雇用区分、離職率、男女賃金差が十分に見えないため4点です。

福利厚生・育児・介護:4/5

保険、無料昼食、健康診断、医療相談、メンタルヘルス、研修、各種生活補助など幅広い制度があります。

制度利用率や育児・介護の男女別実績が不足するため4点です。

人権・ハラスメント・労使関係:3/5

内部通報・苦情制度、通報者保護、人権・ハラスメント対策を評価します。

最新の苦情・是正KPIや賃金格差が不足するため3点です。

労働安全・健康:3/10

安全管理制度はありますが、2024年のクレーン残圧対策不足、過去の墜落死亡・感電災害を重く反映します。

3点です。

商品・サービス安全:3/5

船舶安全管理、冷凍監視等を評価する一方、Uni-Active事故で船尾監視と状況認識の不足が公的事故調査で指摘されています。

3点です。

Innovation:16/25

作業負担・危険の削減:6/10

スマート冷凍コンテナの遠隔監視、高雄港第7ターミナルの自動化・無人設備、SCADA監視などは、人が現場へ直接行って確認する作業を減らす方向の技術です。

一方、巡回時間が何時間減ったか、港湾作業員が危険区域へ入る時間が何%減ったか、労災が何件減ったかという定量成果は十分確認できません。

6点です。

商品・サービス改善:5/5

ISCC認証バイオ燃料、メタノール対応新造船、スマート冷凍コンテナ、炭素排出量計算サービス、港湾自動化など、実運用へ入った改善が複数あります。

5点です。

改善成果の人間への還元:0/5

デジタル化・自動化・大型船化による生産性向上が、社員の時短、賃金、休日日数へどれだけ返ったかを直接示すKPIは確認できません。

社員報酬制度はSafetyの賃金還元で評価しており、Innovationとの因果が確認できないため二重加点しません。

0点です。

研究開発・現場改善の継続:5/5

バイオ燃料実証、e-methanol供給者とのMOU、メタノール二元燃料船、スマートリーファー、港湾自動化などを継続しています。

単発実証だけでなく、船隊更新・実航路サービスへつなげているため5点です。

Protection:17/25

災害への備え・訓練:4/5

情報システムについては事業継続計画を策定し、切替訓練を行ってきたことが確認できます。

一方、各港・各本社機能の災害別RTO、非常電源時間等は一貫して公開されていません。

4点です。

生産・物流・調達の代替:4/5

Evergreen Lineは世界315超の拠点を持ち、複数航路・港・船舶を組み合わせています。

一隻・一港だけに依存する事業ではなく、港湾スト、地政学、悪天候によるサービス変更に対応できる構造を評価します。

ただし、特定航路が停止した場合の代替所要日数や顧客別復旧目標までは公開されていないため4点です。

サイバー防衛・情報保護:4/5

ISO/IEC 27001:2022、Information Security Management Committee、事業継続管理、教育、社会工学演習を確認できます。

2025年には2,532人が情報セキュリティ研修を完了し、会社へ損失を与える情報セキュリティ事故はゼロと公表しています。ISO 27001証明書は2028年12月8日まで有効です。

バックアップ復旧の実測時間、重大システムごとのRTOまでは公開されていないため4点です。

供給継続・復旧能力:4/5

世界的な航路・代理店・ターミナル網により、港や航路の状況変化へ対応する能力があります。

Ever Lovelyの攻撃のような地政学リスクでも乗組員・船・貨物を安全に海峡から離脱させた事例があります。

一方、全航路での顧客貨物の実測復旧時間は確認できません。

4点です。

危機時の市民対応:1/5

学校への太陽光設備支援などの社会貢献は確認できますが、Evergreen Marine台湾法人自身が災害時に一般市民へ船腹・物資・施設を提供する恒常的な緊急協定・KPIは十分確認できません。

通常の寄付と危機対応を分け、1点です。

SNS・匿名掲示板の確認結果

口コミサイトとは別工程で、X、Facebook、YouTube、TikTok、LinkedIn、Reddit、PTT、Dcard、5ちゃんねる、爆サイを会社名、長榮海運、Evergreen Marine、給与、残業、船員、工安、事故等と組み合わせて検索しました。

媒体確認結果
X今回の検索範囲で台湾法人の賃金・残業・労災を裏づけられる有用な社員投稿を確認できず
Facebook公式・一般投稿はあるが、採点に使える勤務実態の一次投稿を確認できず
YouTube船舶・企業・事故動画はあるが、社員の労働実態の検証材料としては限定的
TikTok閲覧制限があり、投稿本文を十分確認できず
LinkedIn会社・社員・事業情報は確認できるが、勤務口コミとしては扱わず
Reddit海運関連の議論は多いが、台湾法人社員の現在の労働条件を裏づける情報は確認できず
PTT長榮・海運・賞与等の投稿はあるが、匿名投稿であり会社単体の現行制度を確定する証拠には使わず
Dcard就職・給与関連の投稿を検索したが、公式資料を上回る検証可能な情報は採点に使用せず
5ちゃんねる対象台湾法人の有用な勤務情報を確認できず
爆サイ対象台湾法人の有用な勤務情報を確認できず

SNSや匿名掲示板の情報が少ないこと自体は加点・減点しません。

主なニュース・最近の動き

2026年6月25日:Ever Lovelyがホルムズ海峡近くで攻撃

Reutersによると、Ever LovelyはOman近くで飛来物の攻撃を受け、船橋窓等が損傷しました。乗組員・船・貨物は安全で、船は海峡から離脱しました。

これは戦争・地政学リスクによる外部要因であり、Evergreenの安全違反としては扱いません。一方、海運会社にとって航路判断と危機対応がProtectionの核心であることを示します。

2026年:Uni-Active衝突事故の最終報告

台湾運輸安全委員会は、ミャンマー・ヤンゴン港で発生したUni-Active衝突事故について最終報告を公表しました。船尾監視要員の未配置、船橋チームの状況認識・航海情報統合不足が指摘され、小型船2隻が沈没、1隻が損傷しました。

これはサービス安全上の重要な改善課題です。

2025年8月2日:Ever Lunarで約50コンテナが海中へ

ペルー・Callao沖でEver Lunarが激しくローリングし、約50個のコンテナが海へ落下したと報告されました。乗組員は無事で危険物貨物もなかったとされています。

原因を会社の過失と断定せず、荒天下の積付け・航行リスク事例として記録します。

2025年:Green Fuel Projectを開始

Evergreenは2025年からISCC認証バイオ燃料を実航路へ導入し、Asia-Europe、Americas-Europe間で荷主が低炭素燃料を選べるGreen Fuel Projectを開始しました。燃料検証をClassNK、排出削減証明をPwCが担います。

単なる目標ではなく、顧客サービスへ組み込んだ点を評価します。

項目別得点

大項目小項目得点
Safety賃金・利益の還元8/10
Safety労働時間・休息2/10
Safety雇用の安定・待遇公平性4/5
Safety福利厚生・育児・介護4/5
Safety人権・ハラスメント・労使関係3/5
Safety労働安全・健康3/10
Safety商品・サービス安全3/5
Safety小計27/50
Innovation作業負担・危険の削減6/10
Innovation商品・サービス改善5/5
Innovation改善成果の人間への還元0/5
Innovation研究開発・現場改善の継続5/5
Innovation小計16/25
Protection災害への備え・訓練4/5
Protection生産・物流・調達の代替4/5
Protectionサイバー防衛・情報保護4/5
Protection供給継続・復旧能力4/5
Protection危機時の市民対応1/5
Protection小計17/25
総合60/100・C

総合評価

Evergreen Marine Corporation (Taiwan) Ltd.は、「人間への貢献」という視点で見ると、強い社会インフラ機能と、安全管理上の課題が同時に存在する会社です。

最も評価できるのは、世界規模の物流を維持する事業基盤と、利益を社員へ返す仕組みです。

2025年の会社単体平均給与は216.1万台湾ドル。2024年より低下したとはいえ、利益に応じて0.5%以上を社員報酬へ配分し、その50%以上を基層社員へ留保する仕組みがあります。

Innovationも実態があります。

IoTで冷凍コンテナを遠隔監視し、高雄港では自動化・SCADAを使い、2025年から認証バイオ燃料を運航へ入れ、2026年以降はメタノール対応船を投入します。

Protectionでは情報セキュリティが特に強いです。

ISO/IEC 27001:2022、Information Security Management Committee、BCP、訓練、社会工学演習があり、2025年は2,532人が研修を完了。損失を伴う情報セキュリティ事故ゼロを公表しています。

しかし、この強みだけでB以上にはできません。

2024年には出勤記録を適切に保存していなかったとして労働基準法違反の処分がありました。海運では勤務・休息時間の管理そのものが安全につながるため、記録管理の問題は小さくありません。

港湾現場では、2024年に固定式クレーン保守時の残圧対策不足で処分されました。過去にはクレーン点検中の墜落死亡、変圧器作業時の感電・火傷も確認されています。

海上ではUni-Active事故の最終報告が、船尾監視要員の未配置や船橋チームの状況認識不足を具体的に指摘しました。小型船2隻が沈没した結果は重く見る必要があります。

高い給与を払うこと。

省エネ船を導入すること。

世界中に航路を持つこと。

ISO認証を取ること。

これらはいずれも価値があります。

しかし、港で機械を保守する人、船上で航海する人、周囲を航行する別の船、荷物を預ける顧客まで安全でなければ、「人間への貢献」は完成しません。

今後、会社単体の月平均残業と有給取得率、船員の実労働・休息時間、港湾作業のTRIR・休業災害、Uni-Active事故後の橋上チーム改善、自動化による危険作業時間の削減、港・航路・ITごとのRTOなどまで継続公開できれば、CからBへ上がる余地があります。

以上から、Safety 27点、Innovation 16点、Protection 17点、総合60点/100点。

100点制・第1版による総合シビックランクはCとします。

出典一覧

1.台湾経済部商工登記公示資料「長榮海運股份有限公司」

2.Evergreen Marine Corporation (Taiwan) Ltd. 2025 Parent Company Only Financial Statements and Independent Auditors’ Report

3.Evergreen Marine公式 Information Security Policy

4.Evergreen Marine公式 The Implementation Status of Corporate Governance

5.Evergreen Marine 2023 Sustainability Report/Highlights of the Year

6.Evergreen Marine公式 Evergreen’s Support for Green Fuel Project

7.Evergreen Marine公式 Carbon Emission Calculator/Fleet Greenhouse Gas Emission Reduction Roadmap

8.台湾労働部「違反勞動法令事業單位(雇主)查詢系統」長榮海運股份有限公司

9.高雄市政府「依職業安全衛生法第49條規定公布事業單位等名稱公告名單」2024年6月

10.高雄市政府「依職業安全衛生法第49條規定公布事業單位等名稱公告名單」2021年8月

11.Taiwan Transportation Safety Board「TTSB Releases Final Report on Container Vessel Uni-Active Collision at Yangon Port, Myanmar」2026年

12.Reuters「UN halts escort of ships through Hormuz after vessel comes under attack」2026年6月25日

13.W.E. Cox Claims Group「New Casualty – EVER LUNAR – Collapse and Loss of Stowed Containers」2025年

14.Indeed「Evergreen Marine Employee Reviews」

15.Glassdoor「Evergreen Marine Reviews」

16.Evergreen Marine公式 Ethical Corporate Management Best Practice Principles/内部通報制度

17.転職会議、OpenWork、エンゲージ会社の評判の対象法人検索

18.X、Facebook、YouTube、TikTok、LinkedIn、Reddit、PTT、Dcard、5ちゃんねる、爆サイの対象法人検索

情報ランクの基準

情報ランク基準
S公的機関資料、法定開示、または独立した第三者による検証・監査・認証等で直接裏づけられる情報
A企業自身の公式発表、報告書、採用情報などの自己開示
B役職・立場が確認できる関係者への取材、記者による直接取材等
C一般社員・元社員・契約社員等の勤務経験に基づく口コミ
DXなど一般SNS投稿で、発信者の立場や内容の裏づけが十分でない情報
E匿名掲示板など、発信者の身元・関与をさらに確認しにくい情報

情報ランクは情報源の強さを示すもので、企業そのものの良し悪しを示す総合シビックランクとは異なります。低い情報ランクは虚偽を意味せず、高い情報ランクも記事全体の正しさを自動的に保証するものではありません。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

目次