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東日本旅客鉄道株式会社を企業審査|シビックランクB・76点/100点|平均43,125円・11.36%の賃金引上げと人材再配置を評価、輪軸記録書き換え・新幹線連結分離・行政指導が課題

私たちは、企業の商品を購入したり、サービスを利用したりすることで、そこで働く人たちの未来を変えることができます。

働く人に十分な賃金を払い、休暇を確保し、安全な職場をつくり、人の負担を減らす企業の商品やサービスが選ばれれば、そうした企業により多くの売上が集まります。その結果、働く人を大切にする経営を続けやすくなります。

反対に、低賃金や長時間労働、安全上の問題を改善しない企業の商品やサービスが売れ続ければ、そうした働かせ方のままでも事業を続けることができます。

だからこの企業審査では、「私たちがお金を使うなら、どの企業を選ぶことが、そこで働く人にとってより良い社会につながるのか」という視点から企業を評価します。

今回審査する東日本旅客鉄道株式会社は、総合76点、シビックランクBです。

東日本旅客鉄道株式会社の特に強い点は、利益や事業成長を実際の賃金引上げへ大きく返していることです。2026年度はベースアップ、昇給、賃金制度改正、手当改正を合わせて平均43,125円、11.36%の賃金引上げを実施します。純粋なベースアップは平均3,271円、0.92%であり、11.36%すべてがベアではありませんが、制度改正を含め月例の所得を大きく引き上げています。夏季手当も2.9カ月、平均1,093,200円で会社発足以来最高額です。

そのため、この企業の商品を買ったりサービスを利用したりすれば、事業で生み出した利益を働く人の賃金へ返し、自動化によって人が担う危険作業や単純作業を減らしながら、人材を新しい仕事へ移していく経営に売上が集まりやすくなります。賃上げと技術革新を両立する企業に強い社会になる可能性が高まります。

一方で、改善点として鉄道の安全・品質管理が残ります。過去の輪軸組立作業では規定範囲外の圧入力値を書き換えていた事実があり、国土交通省による特別保安監査と指示の対象になりました。東北新幹線では2024年9月と2025年3月に走行中の連結分離が発生し、2025年3月の事象は重大インシデントとなりました。さらに2026年には停電、架線断線、エスカレーター発煙が相次ぎ、関東運輸局から行政指導を受けています。

この記事では、東日本旅客鉄道株式会社の強みと課題をさらに詳しく企業審査していきます。

目次

東日本旅客鉄道株式会社の企業審査結果

JR東日本は、賃金、人材育成、技術開発、災害対応、サイバー防衛まで具体的な数字と制度を多数公開しています。特にInnovationとProtectionは高水準です。一方、安全を最重要課題とする鉄道会社でありながら、近年も重大インシデントや行政指導が続いているため、Safetyは満点から大きく差し引きました。

評価軸得点主な評価
Safety34/50大幅賃上げ、有休取得、低い離職率、人権・育児制度を評価。休業災害216人、鉄道の重大事象、男女賃金差などが課題
Innovation22/25ドローン、AI、ワンマン運転、工法改善、人材再配置を高く評価。自動化後の残業・休日改善の定量開示には余地
Protection20/25防災訓練、代替輸送、BRT、SOC・ASMを評価。2026年の大規模輸送障害が復旧力の課題
合計76/100シビックランクB

主な強み

  • 2026年度に平均43,125円・11.36%の賃金引上げ
  • 2026年3月期の平均年間給与は8,191,696円、前年比6.8%増
  • 2024年度の有給休暇取得は平均17.6日、取得率89.3%
  • 2024年度の離職率は1.21%
  • 2026年3月期までに重点成長分野へ累計1,200人を配置
  • 2027年度は約1,200人を採用予定で、前年度より約250人増
  • ドローン、AI、ロボットなどで危険作業や夜間作業を削減
  • 毎年の総合防災訓練、代替輸送、BRTなど災害対応が具体的
  • SOC、ASM、全社員教育などサイバー防衛体制が具体的

主な課題

  • 輪軸組立時の記録書き換え問題
  • 東北新幹線で走行中の連結分離が2回発生
  • 2026年に停電・架線断線・駅設備発煙が続き行政指導
  • 2025年度の休業災害はJR東日本社員とJES-Net等を合わせ216人
  • JR東日本単体の現在の全社平均残業時間を公式には確認できない
  • 男女賃金比率は正規社員84.3%、非正規社員64.9%
  • 自動化・省人化後に職種別の残業や休日がどの程度改善したかは公開不足

事業内容と人間への貢献

JR東日本は、日本最大級の鉄道ネットワークを運営し、首都圏の通勤・通学から東北・信越方面の新幹線、地方交通まで幅広い移動を支える企業です。

1日約1,650万人を運ぶ会社であるため、安全性や働き方の改善は社員だけでなく、非常に多くの利用者の日常生活に影響します。

基本情報

項目内容
会社名東日本旅客鉄道株式会社
英文名East Japan Railway Company
通称JR東日本
設立1987年4月1日
本社東京都渋谷区代々木二丁目2番2号
資本金2,000億円
社員数45,040人(2026年7月1日現在・会社概要)
線区数69線区
営業キロ7,418.7km(BRT含む)
駅数1,684駅(BRT含む)
列車本数1日11,843本
車両数12,103両
1日輸送人員約1,650万人

会社概要の「社員数」は2026年7月1日時点で45,040人です。一方、2026年3月期有価証券報告書の「従業員数」は39,598人で、他社への出向者を除き他社からの出向者を含むという定義です。平均年齢は39.8歳、平均勤続年数は17.1年、平均年間給与は8,191,696円です。数字の定義が異なるため混同せず扱います。

主な事業内容

JR東日本は鉄道だけを運営する会社ではありません。

  • 新幹線・在来線の旅客鉄道
  • BRT
  • Suica
  • 駅や列車のサービス
  • 旅行
  • 駅・まちづくり
  • 不動産
  • 広告
  • 金融・決済
  • IT・データ関連サービス

などを展開しています。

事業による人間への貢献

JR東日本が最も大きく減らしているのは、人が自分で長距離を移動する負担です。

鉄道がなければ、毎日の通勤・通学、通院、買い物、出張、旅行の多くを自動車や別の交通手段へ置き換える必要があります。

特に首都圏では、数百万人規模の移動を同じ時間帯に処理できる鉄道は都市生活の基盤です。

地方でも、駅と地域交通を組み合わせることで、高齢者や自動車を運転しない人が学校、病院、職場、商業施設へ移動できます。

東日本大震災で甚大な被害を受けた気仙沼線・大船渡線では、鉄道復旧に長期間を要する区間にBRTを導入しました。一般道路も活用できるため早期に運行を開始でき、現在は震災前の1.5~3倍の運行頻度を確保しています。

社会インフラとしての貢献は非常に大きい企業です。

ただし、生活に不可欠な企業だから高得点になるわけではありません。

その交通を支える社員が十分な賃金と休息を得られているか、安全上の失敗を減らせているか、人手不足を理由に危険を増やしていないかまで確認して評価します。

Safety

JR東日本のSafetyでは、賃金・休暇・雇用制度には強い成果があります。一方、鉄道そのものと保守現場では人命に関わるリスクを扱うため、通常の企業より安全上の失敗を重く評価しました。

特に大幅な賃上げと高い有休取得は評価できますが、休業災害や近年の鉄道安全問題が満点を阻んでいます。

賃金・利益の還元 8/10点

2026年度の賃金引上げは平均43,125円、11.36%です。

内訳は、

  • ベースアップ 平均3,271円・0.92%
  • 昇給 平均3,271円・0.92%
  • 制度改正による基本賃金引上げ 平均14,418円・3.88%
  • 制度改正による各種手当等引上げ 平均22,165円・5.64%

です。

つまり「11.36%のベースアップ」ではありません。

それでも月例の賃金・手当を合わせた所得を平均4万円超引き上げる内容であり、2025年度の平均21,727円・6.12%からさらに拡大しています。

夏季手当は2.9カ月、平均1,093,200円で会社発足以来最高額です。

2026年3月期の平均年間給与も8,191,696円で、前年より6.8%増えています。

利益や物価上昇を実際の社員所得へ返していることが具体的に確認できるため8/10点です。

一方、雇用区分別・職種別の賃上げ効果や、非正規を含めた全労働者への還元結果まで同じ水準で確認できる状態ではありません。

正規・非正規を含め幅広い従業員で高い賃上げが複数年継続し、利益のうち人件費へ返した割合まで確認できれば10点を検討できます。

労働時間・休息 6/10点

2024年度の年次有給休暇は平均17.6日、取得率89.3%です。

2022年度は18.5日・94.9%、2023年度は18.1日・92.3%で、近年継続して高い水準です。

社員が有給を実際に使えていることは大きな加点材料です。

一方、現在のJR東日本単体について、全社平均残業時間を会社公式の人的資本データから確認できません。

第三者の従業員投稿集計では、転職会議が月18.5時間・有給消化率85.5%、OpenWorkが月17.2時間・有給消化率86.4%としています。いずれも投稿者ベースの情報であり、公式の全社員統計ではありません。

鉄道会社には駅、乗務員、保線、電力、建設、企画など働き方が大きく違う職種があります。

全社平均だけでなく、夜勤や泊まり勤務を含む職種別の残業、勤務間インターバル、休日出勤まで公開し、十分な休息が確認できれば8~10点へ上げられます。

雇用の安定・待遇の公平性 4/5点

2024年度の離職率は1.21%です。

2025年度入社では新卒729人、経験者111人が確認され、採用も継続しています。2027年度は総合職約80人、地域総合職約1,100人など、合計約1,200人を採用する計画で、前年度より約250人増やします。

大規模な人員整理で利益を確保している状態ではなく、今後の人手不足に対応して採用を増やしていることは評価できます。

一方、2024年度の男女間賃金比率は、

  • 全労働者 89.6%
  • 正規社員 84.3%
  • 非正規社員 64.9%

です。

この数字だけで「同じ仕事の男女に違う賃金を払っている」とは判断できません。役職、勤続年数、職種、勤務時間などの構成差でも比率は変わります。

ただし特に非正規社員64.9%については、差の要因と改善状況をさらに開示する必要があります。

安定した雇用と低い離職率を評価して4/5点とし、属性別の格差縮小まで確認できれば5点とします。

福利厚生・育児・介護 4/5点

2024年度の育児休職等取得数は1,306人で、男性938人、女性368人です。

男性正規社員の育児休職等取得率は71.9%でした。2026年3月期の経営ビジョン資料では70.0%となっており、2028年3月期85%、2032年3月期90%以上を目標としています。

また、定期健康診断受診率は100%、ストレスチェック受検率は95.4%です。

鉄道は夜勤や不規則勤務があるため、育児・健康管理の制度が実際に利用されていることには意味があります。

一方、男性育休は目標85%には達しておらず、非正規社員では取得率0%とされています。

制度だけでなく雇用区分を超えた利用実績まで改善すれば5点を検討できます。

人権・ハラスメント・労使関係 4/5点

JR東日本グループは2023年3月に人権基本方針を制定し、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」等を踏まえ、人権デューデリジェンス、教育、救済を実施する方針を明記しています。

社員だけでなく、取引先で働く人なども利用できる相談・通報体制があります。

2024年にはカスタマーハラスメント方針も制定し、暴行、暴言、過剰要求などから社員を守るため、悪質な場合にはサービス対応を行わず、警察・弁護士等へ相談すると明記しています。

2025年度にはハラスメント防止や心理的安全性の教育も行っています。

制度、救済窓口、研修まで確認できるため4/5点です。

相談後に何件が是正され、ハラスメントがどれだけ減少したかという成果をさらに継続開示できれば5点を検討できます。

労働安全・健康 6/10点

2025年度の鉄道事業では死亡災害は0件でした。

一方、休業災害ではJR東日本社員とJES-Net等社員を合わせ216人が受傷しています。

内訳は、

  • JR東日本社員 重傷20人、軽傷59人
  • JES-Net等社員 重傷58人、軽傷79人

です。

死亡事故0件は重要な成果です。

また、列車接近警報装置については1998年のTC列警導入以降、この装置を使用した保守作業で触車による死亡事故は発生していません。

大雨や地震後の線路調査にドローンを使い、人が危険な場所へ入る機会も減らしています。

一方、休業災害216人、JR東日本社員だけでも重傷20人という結果は軽くありません。

安全技術と死亡事故ゼロを評価する一方、休業災害のさらなる削減が必要なため6/10点としました。

重傷事故、転落、感電、触車等が継続的に減少し、協力会社を含む安全成果が改善すれば8~10点へ上げられます。

商品・サービスの安全 2/5点

JR東日本は「グループ安全計画2028」で約1.3兆円の安全投資を見込んでいます。

安全への資金投入は非常に大きい一方、近年は安全・品質管理上の重大な問題が複数続いています。

2025年度の鉄道運転事故は122件で、このうち約7割が鉄道人身障害事故です。事故のすべてがJR東日本の管理ミスによるものではありませんが、列車事故も発生しています。

また、東北新幹線では2024年9月19日と2025年3月6日に「はやぶさ・こまち」の連結部が走行中に外れました。2025年3月の事象は重大インシデントで、約61km/hで走行中に車両が約8m分離しています。死傷者はいませんでした。

さらに輪軸組立作業では、2008年から2017年3月まで規定範囲外の圧入力値を範囲内に収まるよう記録していたことが問題となり、国土交通省が特別保安監査を実施しました。

会社は規定外の輪軸交換、新ルール制定、記録管理の見直しなどを実施しています。

重大な問題が確認されている一方、原因究明と是正を進めているため0~1点ではなく2/5点としました。

同種の重大インシデントを長期間ゼロにし、再発防止策の効果を実績で示せれば4~5点へ上げられます。

従業員・元従業員の口コミ

JR東日本は社員数が多いため、従業員口コミも非常に多く存在します。

転職会議では5,325件の口コミが掲載され、投稿者集計で残業18.5時間/月、有給消化率85.5%となっています。OpenWorkでも残業17.2時間/月、有給休暇消化率86.4%です。

情報ランクB|転職会議|2025年頃|30代後半女性・正社員・設計・主任クラス

「残業時間の管理は厳しいので、1人に負担が偏らないやうに配慮される」

という投稿があります。

一方、Indeedでは2026年7月、盛岡市の建設系業務の投稿者が、

「私の部署は残業多めだと思います。」

と書いています。

この2つは矛盾する情報ではありません。

約4万人規模で駅、乗務、保守、工事、IT、企画など多数の職場があるため、部署による負担差が存在する可能性があります。

公式の有休取得率は高い一方、職種・勤務地別の残業を公開すれば、こうした職場差をより正確に判断できます。

口コミは個人の体験であり、会社全体の事実としては扱っていません。

SNS・匿名掲示板の確認結果

Xでは「JR東日本」「残業」「社員」「パワハラ」などで検索しましたが、現在の職場実態を採点に使える、投稿者とJR東日本との雇用関係を十分に確認できる社員本人の公開投稿は今回の検索では確保できませんでした。

Xの「トレンドまとめ」はAIによる要約を含むため、採点根拠には使用していません。

5ちゃんねるでは2022年の中途採用スレッドに、

「忙しすぎる部署と定時上がりが常態化してる部署の二極化してます」

という匿名投稿があります。

同じスレッド内には、残業が少ないという投稿と、長時間勤務を訴える投稿の両方があります。

投稿者の雇用関係を独立に確認できず、2022年と古いため、現在の採点には使用していません。

Innovation

JR東日本のInnovationは今回の評価で最も強い部分の一つです。

単にAIやロボットを宣伝しているだけでなく、人が高所・斜面・夜間などで行っていた作業をドローンや新工法へ置き換える具体例があります。

さらに、省人化した人材を成長分野へ配置する方針と実績も確認できます。

作業負担・危険の削減 8/10点

鉄道設備の点検では、これまで人が近づきにくかった橋梁、高架橋、駅天井裏などにドローンを導入しています。

従来は夜間しか近づけなかった場所でも、ドローンによって昼間に点検できるようになり、人が高所・狭所へ入る負担と危険を減らしています。

高崎支社では、ドローン導入により従来点検から必要要員を1人削減できると公表しています。

駅ホーム上家の耐震補強では、現場溶接を不要にする工法によって、高崎駅の実績で従来工法より約80%の工期短縮、約30%の工事費削減を実現しました。

溶接準備、塗装除去、火花養生などの作業自体を減らせるため、時間だけでなく作業負担や火災リスクも減ります。

ワンマン運転では車載カメラに加え、AIが列車へ接近する人を検知して運転士へ知らせる仕組みを相模線に導入しています。

人の危険作業を実際に機械へ移す具体例が複数あるため8/10点です。

一方、全社で年間何時間の夜間作業、危険作業、残業が削減されたのかまでは統合された数値がありません。

そこまで確認できれば10点を検討できます。

商品・サービスの改善 5/5点

JR東日本は鉄道輸送に加え、Suica、えきねっと、チケットレス、アプリ、BRTなど、利用者が移動する際の手間を減らす仕組みを継続的に導入しています。

また、輸送障害時には別線路の利用、折返し運転、運転間隔調整、他社線への振替輸送を組み合わせます。

鉄道という既存サービスを維持するだけでなく、予約、決済、案内、代替移動まで改善を続けているため5/5点としました。

改善成果の人間への還元 4/5点

JR東日本の特徴は、省人化を単純な人員削減だけで終わらせていないことです。

2026年3月期までに、重点成長分野へ累計1,200人を配置しています。

同時に2027年度採用は約1,200人を予定し、前年度より約250人増やします。

2026年度には平均43,125円の賃金引上げも行っています。

つまり、

「技術で人が不要になった → 大量解雇」

という流れではなく、

「人手を減らせる仕事を技術へ移す → 人を成長分野へ配置する → 採用も継続する」

という方向性が公開情報から確認できます。

この点を高く評価して4/5点としました。

ただし、配置転換された1,200人について、転換前後の賃金、残業、本人希望、離職率、満足度まで公表されているわけではありません。

人材再配置後の成果まで確認できれば5点を検討できます。

研究開発・現場改善の継続 5/5点

JR東日本はAI、ロボット、ドローン、デジタルツインなどを単発の実証で終わらせず、2034年までの経営戦略の中核に位置付けています。

2026年3月期までに現場社員が開発した技術開発品は累計50件が導入されています。

また、人材育成では2024年度に社員一人当たり36時間20分、総計1,619,195時間の研修を実施し、一人当たり研修費は88,220円です。

現場改善、研究開発、人材教育を継続する体制と成果が確認できるため5/5点としました。

自動化・AI導入後の雇用状況

JR東日本ではワンマン運転、AI、ロボット、ドローン、チケットレス化など、明確な省人化が進んでいます。

会社自身も、AIやロボットを活用して少ない人数で持続可能な鉄道運営を目指す方針を示しています。

そのため、自動化によって人員整理が起きていないかを別途確認しました。

2025年3月時点の人的資本データでは単体従業員数39,660人、2026年3月期有価証券報告書では39,598人です。定義をそろえた長期分析には注意が必要ですが、大規模な人員削減を示す変化ではありません。

さらに、

  • 重点成長分野へ累計1,200人を配置
  • 2027年度採用を約1,200人へ拡大
  • 技術系メンテナンス分野の採用も増やす

という動きがあります。

今回の調査では、自動化を直接原因とする大規模な希望退職・整理解雇は確認されませんでした。

一方、Indeedの口コミには配置換えや現場の人員不足を訴える投稿があります。自動化との因果関係を示す証拠はないため、これを「AIによる人員削減」とは扱いません。

今後は、省人化前後の職場人数、残業、異動人数、異動後の離職、賃金を時系列で公開すると、人への還元をさらに評価できます。

Protection

JR東日本は地震、津波、豪雨、豪雪、停電、設備故障、サイバー攻撃など、多数の危機に備える必要がある企業です。

防災訓練や代替輸送、サイバー防御は非常に具体的です。一方、2026年には大規模な輸送障害が相次いだため、実際の供給継続・復旧能力では満点としていません。

災害への備え・訓練 5/5点

JR東日本は毎年、地震を想定した総合防災訓練を実施しています。

2025年度は都心南部を震源とするM7.3の地震を想定し、

  • 対策本部設置
  • 安否確認
  • 非常参集
  • 救助・救命
  • 避難誘導
  • 初期消火

などを実施しました。

浸水リスクのある駅では浸水訓練も行います。

地震早期検知については、検討対象の新幹線地震計で、P波検知から送電停止まで平均3.9秒だったものを1.3秒へ短縮できることを確認しています。平均2.6秒の短縮です。

例えば大地震が発生した場合、送電停止が数秒早まれば、その分だけ列車が高速のまま進む距離を短くできます。

計画だけでなく継続的訓練と技術改善が確認できるため5/5点です。

生産・物流・調達の代替 4/5点

鉄道では工場の「代替生産」より、ある線路が使えなくなった際に別の輸送手段を確保できるかが重要です。

JR東日本は輸送障害時に、

  • 並行線路を利用した運転
  • 折返し運転
  • 運転間隔調整
  • 他社鉄道への振替輸送

を行います。

東日本大震災後には、鉄道復旧に時間のかかる区間でBRTを導入し、地域交通を早期に再開しました。

代替手段を平時から実際に使っているため4/5点です。

ただし、災害時に全区間を代替できるわけではなく、地方路線など代替手段の限られる場所もあります。

サイバー防衛・情報保護 4/5点

JR東日本グループはCISOを置き、SOCで不審通信を監視しています。

さらに、

  • エンドポイントセキュリティ
  • 2025年度からASM導入
  • 全社員へのセキュリティ教育
  • 役割別研修
  • インシデント対応訓練
  • 情報セキュリティ10か条
  • 全箇所で年1回以上の個人情報管理監査

を実施しています。

Suicaや予約・決済を含む巨大な交通システムを持つ企業として、かなり具体的な体制です。

一方、攻撃を受けた場合の復旧時間や、外部第三者による現在の耐性評価などは限定的です。

制度・訓練・監視体制を評価して4/5点としました。

供給継続・復旧能力 3/5点

輸送障害発生時には折返し運転や別線路利用を行い、駅間停車列車からの利用者救出訓練も実施しています。

運転再開見込みは、輸送障害発生から概ね30分以内に発表することを目指しています。

一方、2026年1月16日には停電で山手線等が長時間運転見合わせとなり、1月30日には上野駅構内の架線断線、2月2日には京葉線八丁堀駅でエスカレーター発煙が発生しました。

関東運輸局は2月3日、鉄道の安全・安定輸送について行政指導を行っています。

危機対応手段は強いものの、実際に大規模障害が連続したため3/5点としました。

設備故障件数の継続的削減と復旧時間短縮が確認できれば4~5点へ上げられます。

危機時の市民への対応 4/5点

東日本大震災で鉄道復旧に時間を要する気仙沼線・大船渡線では、BRTによる早期復旧を選びました。

一般道路を利用できるため、鉄道施設の完全復旧を待たず地域住民の移動手段を確保できます。現在は震災前より多い1.5~3倍の運行頻度を確保しています。

また、総合防災訓練では高齢者や身体に配慮が必要な利用者を想定した降車誘導訓練も行っています。

災害発生後に交通をどう残すかという実績があるため4/5点です。

ただし、地域によって代替輸送力や復旧力に差があるため満点とはしていません。

良いニュース・最近の前向きな動き

最近のJR東日本では、賃上げ、自動化、人材再配置を同時に進めている点を特に評価できます。

技術によって必要人数を減らすだけでなく、そこで生まれた余力を成長分野へ移し、採用も増やす方向が続けば、人手不足に対応しながら社員の所得と安全を高める社会につながります。

2026年度、平均43,125円・11.36%の賃金引上げ

2026年度は平均43,125円、11.36%の賃金引上げを実施します。

2025年度の平均21,727円・6.12%からさらに拡大しました。

夏季手当も平均1,093,200円で会社発足以来最高です。

鉄道運賃や関連サービスから得た収益を社員所得へ返すことは、そこで働く人が生活費上昇に対応しやすくなり、鉄道の仕事を長く続けやすくなることにつながります。

自動化を進めながら採用を約250人増加

ワンマン運転、AI、ドローンなどを導入する一方、2026年3月期までに1,200人を重点成長分野へ配置しました。

2027年度には約1,200人を採用する計画で、前年度より約250人増やします。

少ない人数で運営する技術を導入しつつ、余力人材を別事業へ動かし、新規採用も続けている点はInnovationで高く評価できます。

危険な点検をドローンへ移す

橋梁や高架橋などでは、人が夜間に近づいて行っていた点検をドローンへ移しています。

高崎支社では必要要員を1人削減できる事例も公表しています。

人員削減そのものではなく、人が高所や危険箇所へ入る必要を減らす使い方であれば、技術進歩による明確な人間への利益があります。

悪いニュース・問題となった動き

JR東日本の最大の課題は、安全を経営の最重要課題として多額の投資を行っている一方で、記録管理、車両設計、電力設備、駅設備など異なる領域で重大な問題が繰り返されていることです。

鉄道は一度の失敗が多数の生命や生活へ影響するため、「事故後に直した」だけではなく、同種の失敗を起こさない組織・設計・点検体制へ変えられるかを重視します。

輪軸組立作業で記録書き換え

2008年から2017年3月にかけて、在来線の輪軸組立時に圧入力値が規定値を外れた際、規定範囲内の数値として記録する行為がありました。

2024年の全国緊急点検を受けて国土交通省へ報告され、同省は「安全確保の仕組みを根底から覆す行為」として特別保安監査を実施しました。

監査では教育不足や記録管理、管理者チェックなどの問題が確認され、JR東日本に指示が出されました。

現在は規定外輪軸の交換、新ルール制定、作業標準化を進めています。

過去の問題だから評価から消すのではなく、再発防止後の実績を継続して確認する必要があります。

東北新幹線で走行中の連結分離が2回

2024年9月19日と2025年3月6日、東北新幹線の「はやぶさ・こまち」で走行中に連結部が外れる事象が発生しました。

2025年3月6日は速度約61km/hで走行中に列車が分離し、停止後には約8m離れていました。死傷者はいませんでしたが、重大インシデントとして運輸安全委員会が調査しています。

JR東日本の2025年12月の検証では、2回とも同じ分割併合制御盤を搭載した状態で発生していたことが確認され、制御装置から誤出力を防止する仕組みが十分考慮されていなかった可能性が示されています。

会社はフェールセーフ設計の追加などを進めています。

事故に至らなかったことは幸いですが、新幹線という高速輸送で走行中に連結が外れる事象が繰り返されたことは重大です。

2026年、輸送障害が相次ぎ行政指導

2026年1月16日の停電では山手線などが長時間運転を見合わせました。

その後、

  • 1月30日 上野駅構内で架線断線
  • 2月2日 八丁堀駅でエスカレーター発煙

が発生しました。

関東運輸局は2月3日、原因究明、再発防止、安全・安定輸送の確保を求める行政指導を行いました。

安全設備への巨額投資だけではなく、実際の運休件数や故障件数を減らす結果まで出す必要があります。

総合評価と、これから改善してほしいこと

東日本旅客鉄道株式会社は76点/100点、シビックランクBです。

次のAランクは80点からなので、あと4点必要です。

賃金、人材育成、Innovation、防災、サイバー対策は高水準です。

一方、鉄道会社で最も重要な「安全」に、輪軸の記録問題、新幹線の連結分離、近年の輸送障害という具体的な弱点が残っています。

Aランクへ進むには、新しいサービスを増やすことより、安全問題を減らし、働き方の成果をさらに数字で公開することを優先してほしいところです。

商品・サービスの安全を2/5点から4/5点へ

現在の「商品・サービスの安全」は2/5点です。

改善条件は、

  • 新幹線を含む重大インシデントを継続的に減らす
  • 輪軸問題の再発防止策が定着していることを監査結果で示す
  • 設備故障・輸送障害を継続的に減少させる
  • 原因別件数と再発率を公開する
  • 再発防止後に同種事故が起きていないことを複数年確認する

ことです。

これらが確認できれば2→4点、+2点を想定できます。

総合点は76→78点となります。ランクはBのままですが、Aまであと2点になります。

参考企業として、当サイトで審査した株式会社フジエクスプレスは「商品・サービスの安全」4/5点です。重大事故0件を維持しながら、有責事故についても2023年度28件から2024年度18件へ減少した数字を公開しています。

事業規模や鉄道・バスという違いはありますが、「事故をゼロと宣言するだけでなく、事故件数と改善推移を公開する」という点は参考になります。

労働時間・休息を6/10点から8/10点へ

現在の「労働時間・休息」は6/10点です。

有給取得率89.3%は高く評価できます。

一方、駅、乗務員、保線、電力、工事、企画など職種別の現在の残業時間が公式の人的資本情報からは見えません。

改善条件は、

  • 全社平均残業時間を毎年公開
  • 駅・乗務・保守・企画など職種別残業を公開
  • 夜勤・泊まり勤務者の休息時間を公開
  • 休日出勤や勤務間インターバルを公開
  • 長時間労働部署を特定し、改善後の数字まで示す

ことです。

例えば全社・職種別で残業が低水準に抑えられ、十分な休息が継続して確認できれば6→8点、+2点を想定できます。

商品・サービス安全の改善と合わせれば、総合点は76→80点となり、Aランクへ上がります。

参考企業として、当サイトの株式会社JR東海リテイリング・プラス審査では「労働時間・休息」8/10点です。会社単体で平均残業7.8時間、有給休暇取得率76.1%を公開しているため、職場の時間負担を外部から直接検証できます。

JR東日本は有休ではこれを上回ります。

次は、残業についても同じように対象法人の実績を公開することで、より高く評価できます。

次のランクへ上がるための具体例

現在76点・Bランクです。

Aランクの下限80点まであと4点です。

例えば、

  • 商品・サービスの安全 2→4点 +2点
  • 労働時間・休息 6→8点 +2点

となれば、

76点 + 2点 + 2点 = 80点

となり、シビックランクAへ上がります。

情報を公開しただけでは自動的に加点しません。

事故減少、残業削減、休息確保など、人にとって実際に良い結果が確認できた場合に点数を上げます。

出典一覧

  1. JR東日本「会社概要」
    2026年7月1日時点の社員数、線区数、営業キロ、駅数、列車本数、輸送人員等を確認。
  2. 東日本旅客鉄道株式会社「2026年3月期 有価証券報告書」
    従業員39,598人、平均年齢39.8歳、平均勤続17.1年、平均年間給与8,191,696円を確認。
  3. JR東日本「2026年度の賃金引上げ・夏季手当について」
    平均43,125円・11.36%の賃金引上げ、ベースアップ・制度改正の内訳、夏季手当を確認。
  4. JR東日本「人的資本に関する情報」
    有休、離職率、男女賃金差、育児休職、人材育成等を確認。
  5. JR東日本「労働安全」
    2025年度の死亡災害0件、休業災害216人、安全装置、ドローン活用を確認。
  6. JR東日本「JR東日本の安全の現状」
    鉄道運転事故、安全投資、インシデント等を確認。
  7. 国土交通省「JR東日本における輪軸組立時の不正行為」および監査結果
    記録書き換え、特別保安監査、指示を確認。
  8. JR東日本「鉄道車両の輪軸組立作業に関する一連の対応」
    輪軸交換、新ルール、作業標準化を確認。
  9. 運輸安全委員会「東北新幹線鉄道重大インシデント経過報告」
    2025年3月6日の走行中分離、速度、分離距離、死傷者なしを確認。
  10. JR東日本「東北新幹線 走行中に連結部が外れ停車した事象に関する弊社の対応」
    2024年・2025年の事象、推定原因、フェールセーフ対策を確認。
  11. 国土交通省ネガティブ情報等検索サイト
    2026年2月3日の行政指導と、その前に発生した停電・架線断線・発煙を確認。
  12. JR東日本「技術革新」「スマートメンテナンス」
    ワンマン運転、AI、ドローンを利用した危険作業削減を確認。
  13. JR東日本「溶接不要なプラットホーム上家耐震補強工法」
    約80%の工期短縮、約30%の工事費削減を確認。
  14. JR東日本「勇翔2034」
    重点成長分野への累計1,200人配置、現場社員開発品50件等を確認。
  15. JR東日本「2027年度採用計画」
    約1,200人採用、前年度比約250人増を確認。
  16. JR東日本「総合防災訓練」「地震に対する早期検知手法」
    地震訓練、救助・避難訓練、地震検知から送電停止までの時間短縮を確認。
  17. JR東日本「情報セキュリティ」
    CISO、SOC、ASM、教育、監査等を確認。
  18. 転職会議、OpenWork、Indeed、5ちゃんねる
    労働時間・有休・職場差についての従業員投稿を補助情報として確認。

シビックランクの基準

シビックランク総合点
S90~100点
A80~89点
B70~79点
C60~69点
D50~59点
E40~49点
F20~39点
G0~19点

東日本旅客鉄道株式会社は76点のため、シビックランクBです。

情報ランクの基準

情報ランク基準
S国・自治体・規制当局・裁判所・独立第三者による調査、監査、認証、検証など
A企業公式資料、IR、有価証券報告書、公式声明、公式採用情報など、発信主体を確認できる情報
B従業員・元従業員口コミ、一般SNS、匿名掲示板など、発信者と対象企業との関係を独立に確認しにくい情報

今回の審査では、国土交通省・運輸安全委員会などによる安全問題をS情報として特に重視しました。

JR東日本の賃金、人的資本、安全投資、技術、災害、サイバー対策はA情報を中心に評価しています。

従業員口コミや匿名掲示板はB情報として職場差を確認する補助材料にとどめ、単独で重大問題を認定する根拠にはしていません。

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