私たちは、企業の商品を購入したり、サービスを利用したりすることで、そこで働く人たちの未来を変えることができます。
働く人に十分な賃金を払い、休暇を確保し、安全な職場をつくり、人の負担を減らす企業の商品やサービスが選ばれれば、そうした企業により多くの売上が集まります。その結果、働く人を大切にする経営を続けやすくなります。
反対に、低賃金や長時間労働、安全上の問題を改善しない企業の商品やサービスが売れ続ければ、そうした働かせ方のままでも事業を続けることができます。
だからこの企業審査では、「私たちがお金を使うなら、どの企業を選ぶことが、そこで働く人にとってより良い社会につながるのか」という視点から企業を評価します。
なぜ企業を審査するのか?――このサイトの目的と、利用するメリット
今回審査するKDDI株式会社は、総合82点、シビックランクAです。
KDDI株式会社の特に強い点は、平均年収1,051万円、3年連続の賃上げ、AIによる具体的な業務削減、災害時の通信復旧・市民支援を数値と実績で示していることです。そのため、この企業の商品を購入したりサービスを利用したりすれば、通信を止めにくくしながら、働く人の賃金と自由時間を改善し、災害時にも連絡手段を確保できる社会につながる可能性が高まります。
一方で、改善点として2026年にISP事業者向けメール基盤への不正アクセスで約1,223万件のメールアドレスと約762万件のパスワードが漏えいしたこと、男女賃金差が残ることが残ります。
この記事では、KDDI株式会社の強みと課題をさらに詳しく企業審査していきます。
KDDI株式会社の企業審査結果
| 評価軸 | 得点 |
|---|---|
| Safety | 40/50 |
| Innovation | 21/25 |
| Protection | 21/25 |
| 総合点 | 82/100 |
| シビックランク | A |
| 主な強み | 主な課題 |
|---|---|
| 2026年に平均5.1%の賃上げ、3年連続で賃上げ | ISP向けメール基盤で約1,223万件のメールアドレス漏えい |
| 2025年度の平均年間給与1,051万939円 | 約762万件のパスワード漏えい |
| 年間総実労働時間1,857.7時間、有給取得16.8日 | 月平均残業25.1時間 |
| 労災1件、死亡0、度数率0.05 | 男女賃金差は全社員83.3%、正社員81.7% |
| AIで年間750時間削減、レポート作成5時間→1時間 | AI・DXの成果と全社残業・休日改善の因果が十分に公開されていない |
| 東京・大阪の監視機能二重化、複数ルート、Starlink | 2022年には61時間25分の大規模通信障害 |
| 非常時のJAPANローミングを2026年4月開始 | 子会社架空取引に伴う過年度決算訂正と東証処分 |
| 熊本地震でStarlink30台を熊本県・DMATへ無償提供 | 女性管理職比率はなお低い水準 |
事業内容と人間への貢献
KDDI株式会社は、携帯電話のau、UQ mobile、povo、固定通信、法人向けネットワーク、データセンター、クラウド、AI、金融・決済などを展開する総合通信会社です。1984年6月1日に設立され、本社は東京都港区高輪、代表取締役社長CEOは松田浩路氏、資本金は1,418億5,200万円です。2026年3月末の連結社員数は7万3,198人、KDDI単体は9,891人です。[出典1・2]
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 会社名 | KDDI株式会社 |
| 法人番号 | 9011101031552 |
| 設立 | 1984年6月1日 |
| 本社 | 東京都港区高輪2丁目21番1号 THE LINKPILLAR 1 NORTH |
| 本店 | 東京都新宿区西新宿2丁目3番2号 |
| 代表者 | 代表取締役社長CEO 松田浩路 |
| 資本金 | 141,852百万円 |
| 社員数 | 単体9,891人、連結73,198人(2026年3月末) |
| 平均年齢 | 42.3歳 |
| 平均勤続年数 | 16.4年 |
| 平均年間給与 | 10,510,939円 |
| 主な事業 | モバイル通信、固定通信、法人ICT、データセンター、クラウド、AI、金融・決済など |
2025年度の連結売上高は6兆719億1,500万円、営業利益は1兆991億2,500万円でした。企業審査では売上や利益の大きさ自体ではなく、その資金を働く人、安全、技術、災害対応へどう戻しているかを評価します。[出典1・2]
主な事業内容
KDDIの中心は、スマートフォンやIoT機器を基地局・光ファイバー・交換設備・データセンターへつなぎ、人や企業が電話、メッセージ、インターネット、クラウドを使えるようにする仕事です。
通信は、日常の会話に加え、119番などの緊急通報、物流、ATM、公共交通、企業システム、医療・災害対応にも使われます。2022年の大規模障害では物流、銀行、交通、行政にも影響が広がったことからも、通信会社の設備は生活インフラそのものです。[出典15]
法人向けでは、企業のネットワーク、セキュリティ、クラウド、AI導入まで支援しています。近年は生成AIを自社業務にも導入し、実際の作業時間を削減した結果を外部向けサービスへ展開しています。[出典7・8]
主な利用者・取引の関係
KDDIのサービスは、個人のau・UQ mobile・povo利用者、企業、自治体、公共機関など幅広い利用者が直接使います。
携帯料金や法人回線、クラウド、データセンター、セキュリティなどの利用料がKDDIの売上となり、基地局・光回線・災害対策設備・セキュリティ人材・AI開発・社員の給与などへ使われます。
事業による人間への貢献
通信の最大の人間貢献は、距離に関係なく情報へアクセスし、人と人、人と社会機能をつなげることです。
例えば地震で道路が寸断されても、通信が使えれば家族の安否確認、避難所情報の確認、医療チーム間の連絡、行政からの情報取得ができます。KDDIは熊本地震でStarlink30台を熊本県とDMATへ無償提供し、避難所や病院でau以外の利用者もWi-Fiを利用できるようにしました。[出典12]
平時には全国の通信を維持し、有事には地上回線、移動基地局、衛星通信、他社網へのローミングを組み合わせて代替経路を作ることが、KDDIの社会的役割です。
Safety|40/50
Safetyでは、KDDIで働く人の賃金・時間・健康・人権と、利用者が安全に通信サービスを使えるかを評価します。KDDIは賃金、育児支援、労災、内部通報などを単体数値で多く公開しており、高得点です。一方、月平均残業25.1時間、男女賃金差、過去の長時間労働問題、通信障害の経験が満点を妨げています。
賃金・利益の還元|8/10
2025年度のKDDI単体平均年間給与は10,510,939円で、前年比3.2%増です。[出典2]
2026年4月から基幹職の非管理職に月8,000円のベースアップを行い、平均1万円の定期昇降給、評価上位者約3割を対象とした平均1万2,000円の特別昇給と平均40万8,000円の特別賞与を組み合わせ、平均5.1%の賃上げを実施します。賃上げは3年連続です。新卒初任給も31万3,000円以上へ引き上げています。[出典3]
利益が増えたときに固定給と賞与を引き上げれば、社員は残業を増やさなくても生活水準を改善しやすくなります。
一方、5.1%の中には評価上位者向けの特別昇給・賞与が含まれ、全社員が同じ割合で賃上げされるわけではありません。非正規・派遣を含む全就業者への還元も同じ水準とは確認できません。
そのため8/10点です。雇用区分を問わず物価上昇を上回る基本給改善を継続し、実質賃金と職種別賃金の推移を公開できれば10/10点を検討できます。
労働時間・休息|8/10
2025年度の非管理職正社員は、月平均残業25.1時間、年間総実労働時間1,857.7時間、年次有給休暇は19.7日付与に対し16.8日取得しています。有給取得率は約85%です。年間総実労働時間は2022年度1,992.1時間、2024年度1,882.2時間から改善しています。[出典2]
労働時間が減れば、社員が家族、睡眠、学習、地域活動へ使える時間が増えます。通信障害やサイバー対応など緊急業務がある会社で年間1,900時間を下回る水準まで下げている点は評価できます。
一方、月平均残業25.1時間は20時間を上回ります。口コミでは部署による負荷差も確認されます。
またKDDIは2019年、2015年に社員が自殺し、月90時間を超える時間外労働などから2018年に労災認定されたこと、長時間労働・サービス残業について是正勧告を受けたことを公表しています。その後、客観的な勤務記録や退社管理、健康管理体制を強化し、現在の公開数値は当時から大きく改善しています。[出典6]
現在の結果を評価して8/10点です。全社平均残業を15時間以下へ下げ、部署別でも長時間労働の偏りが小さく、有給取得率90%以上を複数年継続できれば10/10点を検討できます。
雇用の安定・待遇の公平性|3/5
KDDI単体の平均勤続年数は16.4年です。2025年度の社員数は9,891人で、平均勤続が長いことは雇用安定の材料です。[出典2]
女性社員比率は25.1%、2024年度の女性管理職比率は10.5%です。男女賃金差は2025年度で全社員83.3%、正社員81.7%、パート・有期社員90.9%です。[出典2]
女性管理職は増加傾向ですが、女性の平均賃金は正社員で男性の約82%にとどまります。職種、等級、勤続年数の構成差が影響する可能性はありますが、差そのものは残っています。
そのため3/5点です。女性管理職比率を20%以上へ高め、正社員の男女賃金差を90%以上へ縮小し、同一等級・職種での差も継続開示できれば4~5/5点を検討できます。
福利厚生・育児・介護|5/5
2024年度の男性育児休業取得率は75.4%、女性は100%で、育児休職からの復職率は男女とも100%です。育児短時間勤務、子の看護休暇、介護休職・介護休暇の利用実績も公開しています。[出典2]
男性が育児休業を取り、復職後も働き続けられると、育児負担を家庭内で分けやすくなり、女性だけが退職・時短を選ばざるを得ない状況を減らせます。
制度だけでなく取得人数・率・復職率まで確認できるため5/5点です。
人権・ハラスメント・労使関係|4/5
KDDIは企業倫理ヘルプライン、社外専門カウンセラーが対応するハラスメントホットラインを設置し、通報者への不利益取り扱いを禁止しています。2025年度はKDDI単体で差別・ハラスメント違反6件を公表し、被害者に不利益が生じないよう調査・是正し、全従業員へハラスメント防止研修を実施しました。[出典4・5]
問題件数を隠さず、救済と再発防止まで公開することは、制度が実際に動いているかを判断する材料になります。
一方、6件の違反が発生しているため5点満点とはしません。相談件数、認定件数、再発件数、是正後の継続確認をさらに詳しく公開し、違反を減少させられれば5/5点を検討できます。
労働安全・健康|8/10
2025年度のKDDI単体では、労働災害1件、死亡0件、工事中の重篤人身事故0件、労働災害度数率0.05、強度率0.00382です。[出典2]
度数率0.05は、100万延べ実労働時間当たりの休業災害発生頻度が非常に低い水準であることを示します。死亡0と重篤工事事故0も確認できます。
一方、事故は1件発生しており、強度率は前年度0.00064から0.00382へ上昇しています。事故原因と再発防止後の推移まで確認できれば安全成果をさらに判断しやすくなります。
そのため8/10点です。死亡・重篤事故0を維持し、労災0または度数率をさらに低下させ、原因・再発防止を継続公開できれば10/10点を検討できます。
商品・サービスの安全|4/5
2025年度の重大事故発生件数(設備障害)は0件です。KDDIは全国の通信設備を監視し、東京・大阪の監視機能、複数ルート、移動基地局、衛星回線などを使って障害時の復旧に備えています。[出典10・18]
一方、2022年7月には全国で61時間25分に及ぶ大規模通信障害が発生し、音声約2,278万人、データ通信765万人以上に影響しました。物流、銀行、行政、交通にも影響が広がっています。[出典15]
2025年度の重大設備事故0は改善成果として評価できますが、通信インフラの重要性と過去の大規模障害を踏まえ4/5点です。重大設備事故0を長期継続し、復旧時間も短縮できれば5/5点を検討できます。
従業員・元従業員の口コミ
転職会議ではKDDIの残業に関する口コミが704件あり、投稿者集計は月平均残業27.9時間、有給消化率69.2%です。会社公式の25.1時間、有給約85%とは母集団や時期が異なるため、口コミ集計を全社実績へ置き換えません。[出典16]
2026年頃の20代後半男性・正社員・プロジェクトマネージャーの投稿には、
「プライベートはない。仕事こそプライベートである。残業時間は青天井。」
という記述があります。特定部署・個人の経験ですが、会社平均だけでは見えない高負荷部署が存在する可能性を示す情報ランクBの補助情報です。[出典16]
一方、2026年頃の30代前半女性・正社員の投稿には、有休消化率目標が80%に設定され、取得を促されるため休みやすいという内容もあります。口コミ間にも部署差があります。[出典16]
Indeedでは2026年1月の匿名投稿に、
「部署によっては残業が多かったり、伝統的で保守的な文化が根強い。」
との記述があります。公式の平均値は改善していますが、部署別の残業分布も公開されれば実態をさらに判断しやすくなります。[出典17]
SNS・匿名掲示板の確認結果
Xなどの一般SNS、5ちゃんねる、爆サイについて、KDDIと「残業」「給料」「パワハラ」「退職」「障害」「AI」「省人化」などを組み合わせて個別に調べました。
Xでは年収・採用情報を紹介する投稿などは確認できましたが、投稿者がKDDI社員であることや具体的な職場条件を確認でき、今回の採点を変更できる投稿は使用していません。5ちゃんねるでは過去の長時間労働問題を扱う投稿などが見つかりましたが、2019年にKDDI自身が公表した労災認定情報の方が根拠として強いため、公的・公式情報を優先しました。爆サイでも採点を変更できる具体的な原文投稿は使用していません。
Innovation|21/25
Innovationでは、新技術を売っていること自体ではなく、KDDI自身の仕事から人の検索、入力、報告書作成、分析などをどれだけ減らしたかを評価します。KDDIは生成AIの成果を時間で公表しており、Innovationは非常に強い企業です。一方、削減した時間が全社の残業・休日・雇用へどこまで返ったかは、まだ完全には結び付けて公開されていません。
作業負担・危険の削減|8/10
KDDI社内では、ELYZA Worksを利用した報告書作成で約27%の時間短縮、代理店からの要望・意見の収集分析で年間750時間削減、セキュリティアセスメントレポート作成で平均5時間から1時間へ約80%短縮した実績を公表しています。[出典7]
KDDI Conata Data Agentの社内実証では、1人あたり週約8時間かかっていた資料検索、分析、資料作成の作業負荷を約3割削減しました。法人営業部門へ先行導入後、利用者の8割以上が調査時間短縮や情報検索の容易さを実感しています。[出典8]
人が資料を探し、転記し、同じ形式の文書を繰り返し作る時間をAIへ移すことで、より判断や顧客対応に時間を使えます。
複数業務で定量成果があるため8/10点です。対象部署だけでなく全社で削減時間を集計し、残業・ストレス・人員配置の改善まで確認できれば10/10点を検討できます。
商品・サービスの改善|5/5
KDDIは社内で検証した生成AIやデータ検索技術を、ELYZA Works with KDDIやKDDI Conata Data Agentとして法人向けに提供しています。さらに5G、Starlink、JAPANローミング、データセンター、セキュリティなど通信サービスそのものも継続的に改善しています。[出典7・8・10・11]
例えば企業が社内資料を探す時間を3割減らせれば、同じ人数でも顧客対応や企画へ使える時間が増えます。災害時には他社網へ接続できるJAPANローミングによって、KDDI網が使えない地域でも一部の通話・通信を代替できます。
社内実証から外部提供まで継続して改善しているため5/5点です。
改善成果の人間への還元|3/5
AIによる年間750時間削減、レポート作成80%短縮などが確認できる一方、2025年度の月平均残業は25.1時間です。年間総実労働時間は1,857.7時間まで減少し、2026年には平均5.1%の賃上げも行っています。[出典2・3・7]
つまり、会社全体では時間短縮と賃金改善が同時に進んでいます。
ただし、AIで削減した時間が直接どの程度残業減少、休日増加、賃上げへ変換されたかという因果は公表されていません。AI導入部署の導入前後残業、人員配置、採用、退職などの比較も十分ではありません。
そのため3/5点です。AI導入部署ごとに残業・必要人数・配置転換・賃金・休日を導入前後で公開し、削減時間が社員の自由時間や賃金へ継続して返っていると確認できれば4~5/5点を検討できます。
研究開発・現場改善の継続|5/5
KDDIは通信、衛星、AI、サイバーセキュリティ、データセンターなど複数分野で継続的に研究・実装しています。
2026年度から2028年度の中期目標では、KDDI単体のAI活用・実装組織比率を段階別に100%まで広げる目標を設定しています。通信では主要都市のSub6基地局強化、Connected回線数8,000万回線を目標にしています。[出典18]
研究だけで終えず、社内業務、法人サービス、災害通信へ実装しているため5/5点です。
自動化・AI導入後の雇用状況
KDDIでは生成AI・AIエージェントによる業務削減が進んでいますが、2026年時点でAI導入を理由とする大規模希望退職、人員整理、契約終了を示す公開情報はありません。
KDDI単体の社員数は2024年度9,483人から2025年度9,891人へ増えています。ただし2025年度は従業員数の集計方法が一部変更されているため、この増加だけをAI導入後の純増とは判断しません。[出典2]
採用は継続され、AI利用対象も拡大しています。一方、AI導入部署の必要人数、配置転換人数、再訓練人数、採用抑制、退職者数を時系列でまとめた公開情報はありません。
現在は大規模雇用削減を確認していませんが、AIが人の仕事を代替する領域が広がるほど、雇用維持・再訓練・配置転換の実績を追う必要があります。
Protection|21/25
Protectionでは、地震、停電、海底・地上回線の断線、大規模通信障害、サイバー攻撃が起きても、人々が電話・インターネットを使い続けられるかを評価します。KDDIは災害対策と代替通信では最高水準に近い一方、2026年の大規模メール情報漏えいがサイバー評価を大きく下げました。
災害への備え・訓練|5/5
KDDIは大規模自然災害BCPを持ち、通信ビルの非常用発電機、基地局のバッテリー、車載・可搬型基地局、船舶基地局、Starlinkなどを準備しています。全国の通信設備を24時間365日監視し、災害訓練も実施しています。[出典10]
東京・大阪の監視・運用機能を二重化し、一方が被災した場合でも他方から運用できる構成を取っています。
例えば首都直下地震で東京側の監視拠点が使えなくなっても、大阪側から通信網を監視・復旧できれば、障害地域の特定と現場への指示を早く出せます。
設備、代替手段、訓練、実災害対応まで確認できるため5/5点です。
生産・物流・調達の代替|5/5
通信会社では「生産・物流の代替」は、通信経路と基地局・監視機能の代替として評価します。
KDDIは地上の光ファイバーを複数ルート化し、障害時に経路を切り替えます。移動基地局、可搬型基地局、船舶基地局、Starlinkも使えます。2026年4月には携帯5社によるJAPANローミングを開始し、大規模災害や障害時に契約中の通信会社が使えなくても他社の4G LTE網へ接続できる仕組みを整えました。[出典10・11]
一つの設備や一社のネットワークへ依存しない代替手段が複数あるため5/5点です。
サイバー防衛・情報保護|2/5
KDDIはISO/IEC27001:2022のISMS認証を取得し、2026年4月時点で情報処理安全確保支援士329人、社員1万1,000人を対象とした情報セキュリティ研修、CSIRT・SSIRT、専門エンジニアによる24時間365日の監視、委託先の年1回以上の監査、事業継続訓練などを行っています。[出典9]
しかし2026年、ISP事業者向けメールシステムで第三者製ソフトウェアの脆弱性を悪用した不正アクセスが発生しました。KDDIは6月17日に不正アクセスを確認し、調査の結果、12,231,954人分のメールアドレスと7,616,173人分のパスワード漏えいを確認しました。総務省から電気通信事業法に基づく報告も求められています。[出典13]
KDDIはシステム改修、外部通信を制御する全サーバーへのEDR導入、第三者フォレンジック調査、パスワード強制変更を進めています。原因となった脆弱性は6月17日時点でソフトウェアベンダーも認識していなかったものですが、大規模な認証情報漏えいという結果は重大です。[出典13]
強いセキュリティ体制と具体的な是正を確認できる一方、漏えい規模を重く見て2/5点です。再発防止後に重大漏えい0を複数年継続し、第三者製品を含む脆弱性管理・侵入検知・復旧演習の結果を公開できれば4~5/5点を検討できます。
供給継続・復旧能力|4/5
2025年度の重大事故発生件数(設備障害)は0件です。災害時には復旧状況を可視化するシステム、移動基地局、Starlink、他社網へのローミングなどを利用できます。[出典10・11・18]
2026年2月には、基地局のバックホールを遠隔操作でStarlinkへ切り替える仕組みを検証し、災害時の復旧装備も増強しています。
一方、2022年の全国障害は61時間25分続きました。現在の主要システムについて、目標復旧時間と実測復旧時間をサービス別に継続公開しているわけではありません。[出典15]
現在の改善実績を評価して4/5点です。大規模障害0を長期継続し、主要設備のRTOを公開して訓練で達成できれば5/5点を検討できます。
危機時の市民への対応|5/5
2026年7月の熊本地震では、KDDIはStarlink30台を熊本県とDMATへ無償提供し、避難所や病院へ設置を進めました。Wi-Fi機器があればau以外の利用者も無料で使えます。通信エリア復旧にもStarlinkをバックホールとする移動基地局を利用しています。[出典12]
さらに災害救助法適用地域では料金支援、端末対応、充電設備、車両型auショップ、通信機材貸与、支援物資なども実施しています。
例えば病院の固定回線と携帯基地局が同時に被災しても、Starlinkを設置すれば医療チームが外部と連絡を取り、患者搬送や物資要請を行いやすくなります。
実災害で具体的に市民・医療機関を支援しているため5/5点です。
良いニュース・最近の前向きな動き
最近のKDDIでは、賃上げ、AIによる作業時間削減、非常時の通信代替が同時に進んでいます。Safety・Innovation・Protectionの3軸すべてで、人の生活に直接返る取り組みです。KDDIの通信や法人サービスが選ばれれば、利益を賃金と技術へ回し、災害時にも通信手段を複数持つ方向を支えられます。
2026年3月 平均5.1%の賃上げ、3年連続で給与を改善(Safety)
KDDIは2026年3月18日、基幹職の非管理職に平均5.1%の賃上げを実施すると発表しました。月8,000円のベースアップ、定期昇降給、高評価者向けの特別昇給・賞与を組み合わせています。[出典3]
平均年間給与も2023年度986万9,482円、2024年度1,018万3,458円、2025年度1,051万939円と上昇しています。[出典2]
給与が継続して増えれば、通信事業で生まれた利益を働く人の生活へ戻すことができます。利用者が料金を支払う会社が賃金改善を続けることで、「人件費を削るほど競争力が高い」という方向ではなく、働く人へ利益を返す企業が市場に残りやすくなります。
2026年4月 非常時のJAPANローミングを開始(Protection)
KDDI、NTTドコモ、ソフトバンク、楽天モバイル、沖縄セルラーの携帯5社は、2026年4月1日からJAPANローミングを開始しました。大規模災害や重大障害で契約中の通信会社が利用できない場合、他社の4G LTE網へ一時的に接続できます。[出典11]
フルローミング方式では音声、データ、SMSを使え、緊急通報にも対応します。
例えば地震でKDDIの基地局が停止しても、近くの他社基地局が動いていれば、対応端末は代替網を使える可能性があります。一社の設備障害がそのまま通信不能になる範囲を小さくする仕組みです。
2026年7月 熊本地震でStarlink30台を熊本県・DMATへ提供(Protection)
2026年7月30日、KDDIは熊本県とDMATへStarlink30台を無償提供しました。避難所や病院などで設置を進め、au以外の利用者もWi-Fiを利用できる仕組みです。[出典12]
被災地では基地局だけでなく光回線や電柱も壊れる場合があります。衛星通信を持ち込めば、地上設備の復旧を待たずに連絡手段を確保できます。
KDDIの通信サービスが選ばれ、こうした装備と災害対応へ資金が回れば、有事に通信を失う時間を短くできる社会へ近づきます。
2025年~2026年 生成AIで年間750時間、作業時間80%削減などを実現(Innovation)
KDDIは社内で生成AIを使い、代理店要望の収集・分析で年間750時間、アセスメントレポートで5時間から1時間、顧客向け報告書で約27%の時間削減を公表しています。[出典7]
Conata Data Agentでは週8時間程度かかっていた検索・分析・資料作成を約3割削減しました。[出典8]
数字として削減量が確認できるため、AIの導入数ではなく「人がしなくてよくなった仕事」を評価できます。今後これが残業減少や休日増加へつながれば、人への還元はさらに強くなります。
悪いニュース・問題となった動き
KDDIの弱点は、社会インフラを担う企業だからこそ、一度の障害・情報漏えい・開示不備が非常に多くの人へ広がることです。2026年には大規模な認証情報漏えいと、子会社の架空取引に伴う過年度決算訂正が発生しました。強い平時の仕組みがあっても、実際に起きた問題は別に評価する必要があります。
2026年6~7月 約1,223万件のメールアドレス、約762万件のパスワード漏えい(Protection)
KDDIがISP事業者向けに提供していたメール基盤で、第三者製ソフトウェアの未知の脆弱性を悪用した不正アクセスが発生しました。KDDIは6月17日に把握し、7月6日公表、7月21日更新の資料で12,231,954人分のメールアドレスと7,616,173人分のパスワード漏えいを確認しています。[出典13]
パスワードが漏れると、同じパスワードを別サービスでも使っている利用者は、不正ログインやアカウント乗っ取りの危険が高まります。
KDDIは対象システムを改修し、全対象サーバーへEDRを導入し、第三者によるフォレンジック調査とパスワード変更を進めています。
既存のISMS、CSIRT、24時間監視があっても大規模漏えいを防げなかったため、今回のProtection「サイバー防衛・情報保護」は2/5点まで下げました。
2026年4月 子会社架空取引を巡り東証が改善報告書を要求、違約金9,120万円(ガバナンス)
東京証券取引所は2026年4月30日、KDDIに改善報告書の提出を求め、上場契約違約金9,120万円を科しました。子会社の広告代理事業で実体のない架空取引が行われ、2023年3月期から2026年3月期第2四半期までの決算短信などに虚偽と認められる開示があったためです。[出典14]
訂正によって累計売上高2,256億円、営業利益1,333億円、親会社所有者帰属利益1,134億円が過大計上されていたことが判明しました。
これはSafety・Innovation・Protectionの小項目へ機械的に二重減点する問題ではありませんが、企業が公表する数字を利用者・投資家が信頼できるかという企業責務に関わる重大事例です。KDDIは6月2日に改善報告書を提出しています。今後はグループ会社を含む内部統制と再発防止の実効性を確認する必要があります。
2022年7月 全国通信障害が61時間25分継続(Protection・Safety)
2022年7月2日から4日にかけて、KDDIの通信障害が61時間25分続きました。KDDI単体で音声約2,278万人、データ通信765万人以上に影響し、物流、銀行、行政、交通にも影響しました。[出典15]
この障害以降、KDDIは監視・復旧体制、代替通信、災害装備を強化し、2025年度の重大設備障害は0件です。2026年にはJAPANローミングも始まりました。[出典11・18]
現在の改善は評価できますが、通信会社では一度の長時間停止が人の連絡、決済、物流、公共サービスへ波及するため、重大障害0の長期継続が必要です。
総合評価と、これから改善してほしいこと
現在82点・シビックランクAです。Sは90点からなので、次のランクまであと8点です。
KDDIは、高水準の賃金、労働時間の改善、AIによる具体的な作業削減、通信経路の多重化、実災害支援まで確認できる企業です。一方、サイバー事故の規模が大きく、月平均残業25.1時間と男女賃金差も残ります。Sへ進むには、新しい技術を増やすことより、現在の技術と利益を「重大漏えいを起こさない」「残業をさらに減らす」「AI削減時間を社員の自由時間へ返す」という結果までつなげることが重要です。
平均残業を15時間以下へ下げ、有給90%以上を継続してほしい(Safety)
現在の「労働時間・休息」は8/10点です。
2025年度は月平均残業25.1時間、年間総実労働時間1,857.7時間、有給取得16.8日です。年間労働時間は改善していますが、口コミでは高負荷部署も確認されています。[出典2・16・17]
AIや業務改革で削減した時間を残業削減へ移し、全社平均残業15時間以下、年間総実労働時間1,800時間以下、有給取得率90%以上を複数年継続できれば8→10点を検討できます。
加点は+2点で、総合82→84点、Aのままです。
改善すれば、社員は睡眠、育児、学習、私生活へ使える時間を増やせます。
参考企業は東京アート株式会社です。Google Drive上の現行審査では2024年度の平均残業6.9時間、有給取得率75.2%を公開し、「労働時間・休息」8/10点です。KDDIは有給取得で上回りますが、残業をさらに下げる余地があります。
3年連続の賃上げを全雇用区分の実質賃金改善へ広げてほしい(Safety)
現在の「賃金・利益の還元」は8/10点です。
平均年収1,051万円、2026年平均5.1%賃上げは高水準ですが、5.1%には高評価者向けの特別昇給・賞与が含まれます。非正規・派遣を含む全就業者の基本給が同じ方向で改善したかは公表情報が十分ではありません。[出典2・3]
正社員・有期社員など雇用区分別の基本給と実質賃金を公開し、全区分で物価上昇率を上回る基本給改善を複数年続けられれば8→10点を検討できます。
加点は+2点で、総合82→84点です。
参考企業は伊藤忠商事株式会社です。Google Drive上の現行審査では平均給与1,991万円、固定給2~3%引き上げ、株式報奨拡充を確認し、「賃金・利益の還元」10/10点、総合83点・Aです。
AI削減時間を残業・休日・配置転換の結果までつなげてほしい(Innovation)
現在の「改善成果の人間への還元」は3/5点です。
KDDIは年間750時間削減、作業5時間→1時間、週8時間の作業負荷を約3割削減などの成果を公開しています。[出典7・8]
しかし、AI導入部署で残業が何時間減ったか、削減した人員をどこへ配置したか、AI導入後の退職・採用・再訓練がどう変わったかは十分に公開されていません。
AI導入部署の残業・休日・必要人数・配置転換・再訓練を導入前後で公開し、複数部署で残業減少や有給増加、雇用維持が確認できれば3→5点を検討できます。
加点は+2点で、総合82→84点です。
参考企業はキリンビバレッジ株式会社です。Google Drive上の現行審査では、重量ケース物流の自動化で生産性42%向上と人員の別業務への再配置を確認し、「改善成果の人間への還元」4/5点です。
ISPメール漏えい後の再発防止を結果で証明してほしい(Protection)
現在の「サイバー防衛・情報保護」は2/5点です。
KDDIはISMS、CSIRT、24時間365日監視、1万1,000人への研修など高度な仕組みを持ちますが、2026年には約1,223万件のメールアドレスと約762万件のパスワードが漏えいしました。[出典9・13]
第三者製ソフトウェアを含む脆弱性管理、EDR、侵入監視、フォレンジック、パスワード・認証方式の改善、第三者攻撃演習を継続し、重大な認証情報漏えい0を複数年維持してください。演習結果、検知時間、封じ込め時間、復旧時間まで公開できれば2→4点を検討できます。高水準の結果を長期継続できれば5/5点も検討できます。
まず4点まで改善した場合は+2点で、総合82→84点です。
参考企業は伊藤忠商事株式会社です。Google Drive上の現行審査では、ITCCERTによる常時監視、年2回の標的型メール訓練、年1回以上の第三者サイバー攻撃演習、2025年度の重大漏えい0を確認し、「サイバー防衛・情報保護」5/5点です。
次のランクへ上がるための具体例
| 改善項目 | 現在の問題 | 企業が実行すること | 達成条件 | 現在点→改善後 | 加点 | 参考企業 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 労働時間・休息 | 月平均残業25.1時間 | AI削減時間を残業削減へ移し、部署別残業・有給を公開 | 全社残業15時間以下、年間実労働1,800時間以下、有給90%以上を複数年継続 | 8→10 | +2 | 東京アート:残業6.9時間、同項目8/10 |
| 賃金・利益の還元 | 5.1%賃上げに評価上位者向け部分を含む | 雇用区分別の基本給・実質賃金を公開し全区分を継続改善 | 全雇用区分で物価上昇を上回る基本給改善を複数年確認 | 8→10 | +2 | 伊藤忠商事:固定給引上げ・平均給与上昇、10/10 |
| 改善成果の人間への還元 | AIの削減時間と残業・休日・雇用の因果が不足 | AI導入前後の残業、休日、人員、配置転換、再訓練を公開 | 複数部署で残業減少・有給増加・雇用維持を確認 | 3→5 | +2 | キリンビバレッジ:生産性42%向上と人員再配置、4/5 |
| サイバー防衛・情報保護 | 2026年に大規模な認証情報漏えい | 第三者製品を含む脆弱性管理、EDR、攻撃演習、復旧測定を強化 | 重大漏えい0を複数年、検知・封じ込め・復旧時間も公開 | 2→4 | +2 | 伊藤忠商事:常時監視・年2回訓練・年1回以上攻撃演習、5/5 |
82点+2点+2点+2点+2点=90点となり、シビックランクSへ上がります。
つまり、KDDIがSへ上がるためには、現在の高い給与・AI・BCP水準をさらに増やすことより、AIで生まれた時間を残業削減へ返し、すべての雇用区分へ賃金改善を広げ、2026年の大規模情報漏えい後に重大サイバー事故0を継続することが重要です。
出典一覧
1.KDDI株式会社「会社概要」
2.KDDI株式会社「社会データ」
3.KDDI株式会社「平均5.1%の賃上げ、KDDI版ジョブ型の評価に応じて特別昇給・賞与も実施」
4.KDDI株式会社「人権尊重への取り組み」
5.KDDI株式会社「ガバナンスデータ」
6.KDDI株式会社「働き方改革の実行と健康経営の推進について」
7.KDDI株式会社「ELYZA Works with KDDI」
8.KDDI株式会社「KDDI Conata Data Agent」
9.KDDI株式会社「セキュリティポータル」
10.KDDI株式会社「KDDIの備え/災害発生時の対応」
11.携帯5社「非常時の通信を支えるJAPANローミングを4月1日に提供開始」
12.KDDI株式会社「令和8年熊本地震に伴い、Starlinkを熊本県とDMATに無償提供」
13.KDDI株式会社「ISP事業者向けメールシステムに対する不正アクセスについてのお詫びとご報告」
14.東京証券取引所「改善報告書及び上場契約違約金の徴求:KDDI」
15.KDDI株式会社「7月2日に発生した通信障害について」
16.転職会議「KDDI株式会社の残業・ワークライフバランス口コミ」
17.Indeed「KDDI株式会社の社員クチコミ」
18.KDDI株式会社「サステナビリティ中期目標(2026年度~2028年度)」
参考比較:Google Drive内の現行企業審査記事「伊藤忠商事株式会社」「キリンビバレッジ株式会社」「東京アート株式会社」
シビックランクの基準
| シビックランク | 点数 |
|---|---|
| S | 90~100点 |
| A | 80~89点 |
| B | 70~79点 |
| C | 60~69点 |
| D | 50~59点 |
| E | 40~49点 |
| F | 20~39点 |
| G | 0~19点 |
KDDI株式会社は82点のため、今回のシビックランクはAです。
情報ランクの基準
| 情報ランク | 基準 |
|---|---|
| S | 公的機関、裁判所、規制当局、独立した第三者機関の調査・監査・検証・認証など、内容そのものに独立した裏づけがある情報 |
| A | 企業公式資料、採用情報、公式声明・SNS、記名取材など、発信主体を確認できる公表情報 |
| B | 従業員・元従業員の口コミ、一般SNS、匿名掲示板など、発信者の身元や対象企業との関係を独立に確認しにくい情報 |
Sは第三者による裏づけがある情報として最も強く扱います。AとBは情報の性質が異なり、働き方の実態確認ではBが有用な場合もあります。口コミは時期・職種・拠点・件数を確認し、公式・公的情報と照合して使用します。
