私たちは、企業の商品を購入したり、サービスを利用したりすることで、そこで働く人たちの未来を変えることができます。
働く人に十分な賃金を払い、休暇を確保し、安全な職場をつくり、人の負担を減らす企業の商品やサービスが選ばれれば、そうした企業により多くの売上が集まります。その結果、働く人を大切にする経営を続けやすくなります。
反対に、低賃金や長時間労働、安全上の問題を改善しない企業の商品やサービスが売れ続ければ、そうした働かせ方のままでも事業を続けることができます。
だからこの企業審査では、「私たちがお金を使うなら、どの企業を選ぶことが、そこで働く人にとってより良い社会につながるのか」という視点から企業を評価します。
なぜ企業を審査するのか?――このサイトの目的と、利用するメリット
今回審査する株式会社マルエツは、総合57点、シビックランクDです。
株式会社マルエツの特に強い点は、2026年春闘で正社員組合員2,703人に5.14%、有期・短時間・契約等4,565人に6.27%の賃上げ回答が出ていることです。そのため、この企業の商品を購入したりサービスを利用したりすれば、スーパーの店舗を支える正社員と短時間労働者の両方へ売上を還元し、働いて生活を維持しやすい社会につながる可能性が高まります。
一方で、改善点として法人単体の死亡労災・休業災害件数・度数率・強度率と、サイバー攻撃や基幹システム停止からの復旧結果が公表されていないことが残ります。
この記事では、株式会社マルエツの強みと課題をさらに詳しく企業審査していきます。
株式会社マルエツの企業審査結果
マルエツは、東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、茨城県、栃木県の1都5県で「マルエツ」「マルエツ プチ」「リンコス」を展開する食品スーパーマーケット会社です。
2026年8月31日時点で308店舗を運営しています。2026年2月期の営業収益は単体4,092億5,300万円、連結4,094億3,100万円。連結従業員数は15,460人で、このうちパートタイマー11,672人を含みます。[出典1]
| 評価軸 | 得点 | 主な評価 |
|---|---|---|
| Safety | 29/50 | 正社員5.14%、短時間等6.27%の賃上げ、年間休日120日、男性育休100%を評価。労災KPI非公表が最大の課題 |
| Innovation | 18/25 | Uber Eatsほぼ全店化、PPP、セルフレジ等を評価。省力化成果が残業・休日へどう返ったかは不足 |
| Protection | 10/25 | 自治体との災害物資供給協定と308店舗網を評価。サイバー・復旧結果、物流代替の定量情報が不足 |
| 総合 | 57/100 | シビックランクD |
主な強み
・2026年春闘で正社員組合員2,703人に平均17,826円、5.14%の賃上げ回答
・有期・短時間・契約等組合員4,565人に時給83.26円、6.27%の引き上げ回答
・2025年度の年間休日120日
・2026年度新卒大卒初任給27万134円
・男性育児休業取得率100%、平均取得日数32.7日
・健康診断受診率100%
・女性活躍推進法「えるぼし」2段階目
・2026年8月末で308店舗
・2026年2月から魚悦糀谷店を除く全店舗でUber Eats利用可能
・Uber Eatsでは配達員がピッキングから会計まで担う「ピック・パック・ペイ」を導入
・放射性物質の自主検査結果を2026年10月6日まで継続公開
・浦安市、墨田区、狭山市など複数自治体と災害時の物資供給協定を締結
主な課題
・法人単体の死亡労災件数が公表されていない
・休業災害件数、度数率、強度率が公表されていない
・女性管理職比率は最新確認値で10.2%
・日給月給社員の男女賃金比率は79.9%
・全社員の月平均残業時間・有休取得率を法人単体の最新値として確認できない
・セルフレジやデリバリー省力化によって従業員の作業時間が何時間減ったか公表されていない
・DX後の配置転換、契約更新、必要人数の変化が公表されていない
・法人単体のMFA、EDR、SOC、バックアップ復旧訓練等の公開が不足
・主要システムや店舗停止時のRTO・RPOが公表されていない
・物流拠点停止時の代替拠点、安全在庫日数、代替輸送実績の公開が不足
事業内容と人間への貢献
マルエツは1945年、埼玉県浦和市で鮮魚店として創業しました。現在は首都圏を中心に308店舗を展開し、生鮮食品、加工食品、惣菜、日用品などを日常的に購入できる売場を運営しています。[出典1・2]
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 会社名 | 株式会社マルエツ |
| 創業 | 1945年10月 |
| 設立 | 1952年6月16日 |
| 本社 | 東京都豊島区東池袋5-51-12 |
| 代表取締役社長 | 本間 正治 |
| 資本金 | 1億円 |
| 営業収益 | 単体4,092億5,300万円、連結4,094億3,100万円 |
| 店舗数 | 308店舗 |
| 従業員数 | 連結15,460人、うちパートタイマー11,672人 |
| 主な業態 | マルエツ、マルエツ プチ、リンコス |
| 出店地域 | 東京、神奈川、千葉、埼玉、栃木、茨城 |
情報ランク:A。[出典1]
主な事業内容
食品スーパーでは、商品を仕入れて棚へ並べるだけでなく、青果・鮮魚・精肉・惣菜の加工、発注、品出し、鮮度確認、値引き、レジ、ネット注文のピッキングなど多数の作業を行います。
マルエツの新卒総合職も、青果、精肉、鮮魚、惣菜、日配加食、ベーカリー、レジなどから店舗経験を始めます。販売実績、曜日、天候などを使って販売計画を組み、発注や売場づくりへ反映します。[出典5]
事業による人間への貢献
308店舗が首都圏にあることで、利用者は自宅や職場の近くで、生鮮食品、惣菜、飲料、日用品などを購入できます。
東京都内では155店舗、埼玉県53店舗、神奈川県52店舗、千葉県46店舗、茨城県・栃木県に各1店舗があります。日常的な食料の調達先が地域内に複数存在すれば、一つの店舗が改装や設備故障で利用できない場合にも別店舗を利用できる余地があります。[出典1]
さらにデリバリーやScan & Goなどを組み合わせることで、店舗へ行く負担や会計待ち時間を減らす方向の改善も進めています。
Safety 29/50
Safetyでは、店舗や加工現場で働く人の賃金、休息、安全、育児・公平性と、利用者が購入する食品の安全を確認しました。
2026年の賃上げは正社員と短時間労働者の双方で具体的な結果があり、男性育休や健康診断にも強みがあります。一方、従業員数が1万人を超える会社で労災件数・度数率などの結果が公開されていないことが、Safety全体を大きく押し下げました。
賃金・利益の還元:8/10
連合の2026春季生活闘争によると、マルエツ労働組合の正社員等2,703人について、平均賃金34万6,695円を基礎に、平均17,826円、5.14%の引き上げ回答が出ました。
内訳は賃金カーブ維持分5,692円、賃上げ分1万2,134円です。2025年実績も18,868円、5.68%でした。[出典3]
有期・短時間・契約等では4,565人を対象に、現行平均時給1,329円に対して83.26円、6.27%の引き上げ回答が出ています。[出典4]
パートタイマーを多く雇用する食品スーパーでは、正社員だけを賃上げしても店舗で働く人全体への還元にはなりません。今回は4,000人を超える短時間等の組合員にも6%を超える引き上げが確認できる点を高く評価します。
一方、管理職を含む全従業員の賃金中央値や職種別平均賃金、会社利益のうち人件費へ何%を還元したかまでは公開されていません。
そのため8/10点です。
10/10点を検討するには、雇用区分・職種別の賃金中央値と賃上げ率を継続公開し、正社員・短時間社員の双方で高水準の実質賃金改善を複数年確認できる必要があります。
情報ランク:A。[出典3・4]
労働時間・休息:6/10
2027年卒向け採用情報では、週実働40時間の月間変形労働時間制で、休日は月9~10日、バースデイ休日を含め年間休日120日です。原則として転居を伴う異動もないとしています。[出典5]
えるぼし認定でも、すべての雇用管理区分について月ごとの平均時間外労働が45時間未満という基準を満たしています。[出典6]
Indeedでは2026年9月、埼玉県の総合職から、
「残業は月10時間前後と少なめ」
という投稿もあります。[出典7・情報ランクB]
年間休日120日は、1年の約3分の1を休日として確保できる水準です。一方、会社全体の月平均残業、有給休暇取得率、月45時間・60時間超の人数比率について最新の法人単体実績を確認できません。
そのため6/10点です。
8/10点を検討するには、会社全体と主要職種別の月平均残業、有休取得率、長時間労働者比率を毎年公開し、例えば平均残業15時間以下、有休取得率80%以上などの結果を継続して確認できる必要があります。
情報ランク:S・A・B。[出典5・6・7]
雇用の安定・待遇の公平性:3/5
U.S.M.Hの統合報告書で確認できるマルエツの女性管理職比率は10.2%、日給月給社員の男女賃金比率は79.9%です。[出典8]
女性管理職を増やす取り組みを行い、えるぼし2段階目も取得しています。中途採用比率は2023年度28.9%、2024年度52.6%、2025年度37.1%で、新卒だけに雇用機会を限定していません。[出典5・6]
一方、女性管理職は約1割で、男女賃金比率にも約20ポイントの差があります。
雇用の多様化や登用施策は確認できるものの、結果には改善余地があるため3/5点です。
4/5点を検討するには、女性管理職比率を20%以上、同条件に近い正社員の男女賃金比率を90%以上へ引き上げ、職種・職位・勤続年数別に差の原因と改善結果を公開する必要があります。
情報ランク:A・S。[出典5・6・8]
福利厚生・育児・介護:4/5
最新の統合報告書で確認できるマルエツの男性育児休業取得率は100%、平均取得日数は32.7日です。健康診断受診率も100%です。[出典8]
マルエツ自身も男性育児休業100%取得を掲げています。育児・介護時短、介護休職、財形、退職金、従業員持株、共済制度なども用意しています。[出典9]
男性育休100%だけでなく平均32.7日という利用期間まで確認できる点は、制度を置いているだけの企業より強い結果です。1カ月程度仕事を離れられれば、出産直後の育児・家事へ実際に時間を使えます。
一方、女性を含む復職率、介護休業の利用人数、育児休業取得後の長期定着などは十分に公開されていません。
そのため4/5点です。
5/5点を検討するには、男女別の育休取得日数、復職率、介護制度利用率を複数年公開し、高い利用と復職を継続確認する必要があります。
情報ランク:A。[出典8・9]
人権・ハラスメント・労使関係:4/5
マルエツの企業行動規範は、人種、国籍、性別、年齢などによる差別とハラスメントを禁止し、社内・社外の相談窓口を設けています。報告・通報した従業員への報復や不利益な取り扱いを行わないことも明記しています。[出典10]
さらに2026年春闘では、マルエツ労働組合が正社員等と有期・短時間等の双方について会社と実際に賃金交渉し、具体的な引き上げ回答を得ています。[出典3・4]
労使関係が制度上存在するだけでなく、賃金改善という結果につながっているため評価します。
一方、ハラスメント相談件数、認定件数、是正件数、再発件数、相談後の救済結果について法人単体の年次情報がありません。
そのため4/5点です。
5/5点を検討するには、相談件数だけでなく調査・是正・再発防止まで継続公開し、制度が実際の問題解決へつながっていることを確認する必要があります。
情報ランク:A。[出典3・4・10]
労働安全・健康:0/10
健康経営では、健康診断受診率100%や保健指導、女性向け検診などが確認できます。2026年には「健康経営優良法人2026」の大規模法人部門にも認定されています。[出典11]
一方、株式会社マルエツ単体について、直近の死亡労災、休業災害件数、労働災害度数率、強度率を確認できる公開情報がありません。
スーパーでは、包丁・スライサーによる切創、床での転倒、品出しや荷役による腰痛、バックヤードでの運搬など、店舗特有の労働災害があります。従業員が1万人規模の企業では、対策制度だけでなく「実際に何件起きたか」を確認する必要があります。
こうした重要な結果情報が公開されていない点は課題であり、採点上も減点対象です。
そのため0/10点です。
2~4点を検討するには、死亡・重大・休業災害件数、度数率、強度率を公開し、事故原因と再発防止策まで確認できる必要があります。6点以上には、重大事故0と事故件数・度数率の改善を複数年確認する必要があります。
商品・サービスの安全:4/5
マルエツは2012年から商品の放射性物質自主検査結果を公開しており、2026年度もほぼ毎週結果を更新しています。最新確認日は2026年10月6日です。[出典12]
対象は精肉、青果、鮮魚などで、品目ごとに月1回や週2~3品など検査頻度を定めています。
またグループ会社に株式会社食品品質管理センターがあり、食品の品質・安全・衛生検査を専門に担っています。[出典1]
2025~2026年の公式「重要なお知らせ」では大規模な商品回収は掲載されていません。一方、事故・苦情件数や食品表示ミスの年間件数、店舗衛生監査の合格率などを一括して比較できる年次KPIは公表されていません。[出典13]
継続的な食品検査を評価する一方、商品安全全体の結果開示には改善余地があるため4/5点です。
5/5点を検討するには、商品回収、表示ミス、異物・衛生問題、店舗監査結果などを年次公開し、重大事故が低い状態を複数年確認できる必要があります。
従業員・元従業員の口コミ
Indeedには2026年10月時点で170件を超える口コミがあります。
2026年9月の埼玉県・総合職の投稿では、
「残業は月10時間前後と少なめ」
とされています。休日数が多く、有休も申請すればほぼ取得できるという内容です。[出典7・情報ランクB]
一方、2026年8月の匿名投稿では、
「配属先によっても人間関係の劣悪さ」
という指摘があり、人手不足や上司の言動について否定的な体験も投稿されています。[出典7・情報ランクB]
また2026年9月には、店舗や部門による差が大きいという趣旨の投稿もあります。[出典7]
口コミからは、休暇・残業を高く評価する職場と、人間関係・人手不足に不満を持つ職場の両方が存在する可能性が見えます。匿名・個人体験であるため、個別投稿のみで会社全体を加点・減点していません。
SNS・匿名掲示板の確認結果
X、5ちゃんねる、爆サイについて、株式会社マルエツと「残業」「給与」「退職」「労災」「人員削減」「セルフレジ」などを組み合わせて確認しました。
今回の公開検索では、現在の従業員・元従業員であることと投稿本文を確認でき、採点を変更できる具体的な投稿は確認できませんでした。
そのためSNS・匿名掲示板による加点・減点は行いません。
Safety小計:29/50点
Innovation 18/25
Innovationでは、レジ、商品ピッキング、価格変更など大量の反復作業を持つ食品スーパーで、技術が人の作業をどこまで減らしているかを評価しました。
マルエツはセルフレジ、Scan & Go、電子棚札、ネットデリバリー、Uber Eatsの「ピック・パック・ペイ」などを継続して拡大しています。一方、省力化した時間が残業減少や休日増加へ何時間返ったかは公開されていません。
作業負担・危険の削減:6/10
2026年2月16日からUber Eats対象店舗をさらに4店舗増やし、魚悦糀谷店を除く全店舗でUber Eatsを利用できる体制となりました。[出典14]
特に「ピック・パック・ペイ」では、Uber Eatsの配達パートナーが店舗内で商品のピッキング、袋詰め、会計を行い、そのまま配送します。
通常のネットスーパーでは注文が増えると、店舗従業員が売場を歩いて商品を集める仕事も増えます。配達パートナーがこの工程を担えば、既存の店員へ追加のピッキング作業を集中させずに配送サービスを増やすことができます。
セルフレジ、電子棚札等の導入も進めています。
一方、導入前と比べて従業員1人あたりの歩行時間、レジ人時、価格変更作業、残業が何時間減ったかは公表されていません。
人が担当していた作業を具体的に代替しているため6/10点です。
8/10点を検討するには、導入前後の作業時間、必要人数、残業、身体負担を計測し、大きな削減結果まで公開する必要があります。
情報ランク:A。[出典14]
商品・サービスの改善:5/5
2026年8月末時点で、Uber Eatsは魚悦糀谷店を除く全店へ拡大しています。生鮮食品、惣菜、飲料、日用品などを注文し、自宅等で受け取れます。[出典14]
Scan & Goなど、レジ待ちを減らすデジタルサービスも提供しています。
高齢者、育児中の家庭、体調不良で外出しにくい人は、店舗まで移動せず食料や日用品を受け取れます。
店舗数の拡大だけでなく、買物そのものに必要な移動・待ち時間を減らすサービスを継続しているため5/5点です。
改善成果の人間への還元:2/5
2026年には正社員・短時間社員の双方で大幅な賃上げが行われています。
しかし、Uber Eats PPP、セルフレジ、電子棚札などによって浮いた時間や利益が、何円の賃上げ、何時間の残業減少、何日の休日増加へつながったかという因果関係は公表されていません。
技術で作業量が減っても、その分だけ人員を削減すれば、残った人の自由時間が増えるとは限りません。
現在は賃上げという人への還元そのものは別項目で確認できる一方、DX成果との接続を確認できないため2/5点です。
3/5点を検討するには、導入前後の店舗人時、残業、従業員数、配置転換、契約更新、休日を公開し、省力化によって生まれた余力が人へ返った結果を確認する必要があります。
研究開発・現場改善の継続:5/5
マルエツは1986年からPOSシステム導入を始め、その後もセルフレジ、デジタルサービス、電子棚札、オンライン配送など、店舗運営の仕組みを継続して更新しています。[出典2]
2024年からUber EatsのPPPを導入し、2026年にはほぼ全店舗へデリバリーを拡大しました。
一度限りの実証ではなく、販売・会計・配送の複数工程で改善が続いているため5/5点です。
自動化・AI導入後の雇用状況
マルエツではセルフレジ、電子棚札、Scan & Goなど、人が担っていた店舗作業を減らす仕組みが導入されています。
2026年2月末の連結従業員数は15,460人で、パートタイマー11,672人を含みます。2026年春闘でも正社員等2,703人、有期・短時間等4,565人を対象とする賃金交渉が確認できています。[出典1・3・4]
2027年卒向け新卒採用も継続しています。[出典5]
今回確認した公式資料、労働組合資料、求人、口コミ、X、5ちゃんねる、爆サイでは、セルフレジやDX導入を理由とした大規模な解雇・希望退職・採用停止を示す公開情報は確認できませんでした。
一方、セルフレジ導入前後で各店舗のレジ担当者が何人から何人になったのか、契約更新がどう変わったのか、配置転換後に何人が退職したのかは公開されていません。
したがって、大規模な雇用削減は確認できないものの、DXが個々の職種の雇用へ与えた影響まで断定できる状態ではありません。
Innovation小計:18/25点
Protection 10/25
Protectionでは、地震、台風、停電、物流停止、サイバー攻撃が起きても、食料や日用品を地域へ届け続けられるかを確認しました。
マルエツは308店舗を持ち、複数自治体と災害時の物資供給協定を結んでいます。一方、店舗や物流拠点が止まった場合の具体的な切替時間、サイバー攻撃からの復旧結果など、実際の復旧能力を外部から検証できる数字が不足しています。
災害への備え・訓練:3/5
マルエツは複数自治体と現在も災害協定を維持しています。
浦安市では1987年から「災害時における物資の供給協力に関する協定」を結んでおり、市の2026年9月更新ページでも現在の協定として掲載されています。[出典15]
墨田区でもマルエツは災害時の応急食料品・日用品の優先供給協定先です。[出典16]
狭山市でも生活必需物資の供給協定先となっています。[出典17]
例えば大地震で水・食料・紙製品が不足した場合、自治体は既存協定を使ってマルエツへ供給協力を求めることができます。
一方、マルエツ単体でのBCP訓練回数、参加率、停電訓練、物流切替訓練の結果は公表されていません。
自治体との具体的な備えを評価して3/5点です。
4~5点を検討するには、年次の訓練回数、店舗・物流センター停止を想定した切替時間と改善結果まで公開する必要があります。
情報ランク:S。[出典15・16・17]
生産・物流・調達の代替:3/5
マルエツは1都5県に308店舗を持ち、東京都だけでも155店舗、埼玉県53店舗、神奈川県52店舗、千葉県46店舗があります。[出典1]
一店舗が停止しても、都市部では別店舗を利用できる可能性があります。またU.S.M.Hグループとして商品開発や物流基盤を共有しています。[出典18]
一方、物流センターが停止した際にどのセンターへ切り替えるのか、重要商品の複数調達率、店舗の安全在庫日数、代替配送会社、切替訓練時間について、マルエツ単体の公開情報がありません。
複数店舗・グループ基盤による代替余地は評価しますが、実効性を定量確認できないため3/5点です。
4~5点を検討するには、物流拠点間の代替対象地域、緊急在庫日数、代替配送・仕入れルート、実際の切替訓練または災害時実績を公開する必要があります。
サイバー防衛・情報保護:0/5
マルエツは2026年3月改定のプライバシーポリシーで、個人情報保護管理責任者、教育訓練、監査、不正アクセス・紛失・改ざん・漏えい防止などを定めています。[出典19]
しかし、株式会社マルエツ単体について、多要素認証の範囲、EDR、SOC・CSIRT、ネットワーク分離、オフラインバックアップ、復旧訓練、重大インシデント件数、RTO・RPOについて公開情報がありません。
オンラインデリバリー、会員サービス、スマートフォンアプリ、店舗決済などデジタルサービスが増えるほど、システム停止時の生活への影響は大きくなります。
重要な防御・復旧結果が公開されていない点は課題であり、採点上も減点対象です。
そのため0/5点です。
3点以上を検討するには、マルエツ単体でのMFA・EDR等の対象範囲、復元可能なバックアップ、訓練結果、重大事故件数と復旧時間を確認できる必要があります。
供給継続・復旧能力:0/5
308店舗を展開していることや物流基盤を持つことは確認できますが、大規模停電、物流センター停止、サイバー攻撃などで主要機能が止まった際、「何時間で営業・配送を再開できたか」という法人単体の具体的な結果を確認できません。
主要システム、店舗、物流センターの目標復旧時間や実際の復旧時間も公表されていません。
計画や拠点数だけから復旧能力を推測しないため0/5点です。
2~3点を検討するには、重要拠点・システムごとのRTOを定め、訓練または実際の障害で目標時間内に復旧できた結果を公開する必要があります。
危機時の市民への対応:4/5
浦安市、墨田区、狭山市などでは、マルエツが災害時の食料・生活必需品の供給先として現在の自治体資料へ掲載されています。[出典15・16・17]
墨田区の協定は、応急食料品や日用品の優先供給に加え、店舗の営業継続または早期開店によって区民生活を安定させることを目的としています。
例えば大地震で家庭の備蓄を使い切り、通常の物流も混乱した場合、店舗の営業を早く戻したり、自治体へ物資を優先供給したりできれば、住民が水や食料を得られない時間を短くできます。
複数自治体で現在も具体的な協定を確認できるため4/5点です。
5/5点を検討するには、実際の災害で何ケース・何食を何時間以内に供給したか、避難者や住民へどれだけ届いたかという実績まで継続して公開する必要があります。
情報ランク:S。
Protection小計:10/25点
良いニュース・最近の前向きな動き
最近の前向きな動きでは、正社員と短時間労働者の双方への賃上げと、デリバリーのほぼ全店展開が目立ちます。働く人への利益還元と、利用者の買物負担削減を同時に進めている点が現在のマルエツの強みです。
2026年3月 正社員5.14%・短時間等6.27%の賃上げ回答(Safety)
2026年春闘では、正社員等2,703人に平均17,826円、5.14%の引き上げ回答が出ました。有期・短時間・契約等4,565人では時給83.26円、6.27%です。[出典3・4]
正社員だけでなく、スーパー店舗の運営を大きく支える短時間労働者まで6%を超える引き上げ対象となっています。
例えば食料品や光熱費が上がったとき、時給が増えれば同じ労働時間でも家計へ回せる金額が増えます。
マルエツの商品を購入し、こうした賃上げを継続できる売上が集まれば、スーパーが低い人件費だけに頼らず運営する方向を支えることにつながります。
2026年2月 Uber Eatsが魚悦糀谷店を除く全店へ拡大(Innovation)
2026年2月16日、新たに4店舗でUber Eatsを開始し、魚悦糀谷店を除くマルエツ全店で利用可能になりました。[出典14]
2024年から導入したPPPでは、配達パートナーが商品を店内で集め、袋詰め、会計、配送まで担当します。
利用者は外出せず食品・日用品を受け取れ、店舗側もデリバリー拡大のためだけに店員のピッキング作業を同じ割合で増やす必要を抑えられます。
2026年10月 食品の放射性物質自主検査を継続公開(Safety)
マルエツは2026年10月6日にも放射性物質自主検査結果を更新しています。2026年度は3月以降、継続的に検査結果が公開されています。[出典12]
一度だけ「安全」と宣言するのではなく、食品を繰り返し検査し結果を公開することで、利用者は現在販売される商品の安全管理を継続して確認できます。
悪いニュース・問題となった動き
現在の弱点は、重大事故が確認されたことよりも、従業員の安全と事業継続について結果指標が十分に公開されていないことです。また2025年にはスマートフォンアプリの障害も実際に発生しており、店舗サービスのデジタル化と同時に復旧力を高める必要があります。
2025年7月 マルエツチラシアプリでID連携・Vカード表示障害(Innovation・Protection)
2025年7月2日のアプリアップデート後、一部スマートフォンでID連携を何度も求められる、モバイルVカードやVカードクーポンが表示されない不具合が発生しました。[出典20]
会社は翌7月3日午後1時30分ごろに不具合を解消したと発表しています。[出典21]
翌日には復旧しているため長期障害ではありません。しかし会員証やクーポンをアプリへ移すほど、障害時にも買物機能を使い続けられる設計と復旧時間の管理が重要になります。
2026年現在 労災の結果KPIを法人単体で確認できない(Safety)
マルエツは健康経営や従業員支援について多くの情報を公開していますが、死亡・休業労災件数、度数率、強度率については法人単体の最新公開情報がありません。
事故が多いと判断しているわけではありません。事故が少ないのか多いのかを、市民が外部から比較できない状態そのものが今回の評価上の問題です。
制度を増やすより先に、「年間何件起きたか」「前年比で何件減ったか」を公開することが求められます。
総合評価と、これから改善してほしいこと
現在57点・シビックランクDです。次のCランクは60点からなので、あと3点必要です。
マルエツは、正社員・短時間労働者の賃上げ、男性育休、食品検査、デリバリー・店舗DXなどで具体的な強みがあります。
一方、約1万5,000人規模の雇用を持ちながら労災の結果が見えず、308店舗とデジタルサービスを持ちながらサイバー・復旧力の結果も見えません。次のランクへ進むには、この二つを「方針」から「測定できる実績」へ進めることが最優先です。
労災件数と度数率を公開し、店舗事故を減らす:労働安全・健康 0→4/10
現在の「労働安全・健康」は0/10点です。
死亡・休業労災件数、度数率、強度率が法人単体で公表されていません。
まず店舗・物流・加工拠点について、死亡災害、休業災害、転倒、切創、腰痛、荷役事故などを毎年集計し、度数率・強度率とともに公開する必要があります。
さらに事故原因ごとに、床面対策、包丁・スライサー対策、荷役方法、重量物運搬、教育などを改善し、重大事故0と事故減少を確認できれば0→4/10点を検討できます。
現在:0/10点
改善後:4/10点
加点:+4点
総合:57→61点
ランク:D→C
働く人にとっては、事故によるけがや休業を避け、仕事と生活を継続できる可能性が高まります。
参考企業は株式会社セブン&アイ・ホールディングスです。Google Drive上の現行企業審査は81点・シビックランクAで、持株会社単体の労働災害度数率・強度率を2020~2024年度の5年間0.00と公開しており、「労働安全・健康」は10/10点です。
サイバー防御と復旧訓練を結果まで公開する:サイバー防衛・情報保護 0→3/5
現在の「サイバー防衛・情報保護」は0/5点です。
個人情報保護管理責任者、監査、教育、不正アクセス防止方針は確認できますが、マルエツ単体の技術的な防御と復旧結果が公表されていません。[出典19]
店舗、アプリ、会員情報、デリバリー、決済、発注システムについてMFA、EDR、ネットワーク分離、改ざん耐性のあるバックアップを整備し、年1回以上の攻撃・復旧訓練を行います。
訓練で重要システムを目標時間内に復元できたこと、重大インシデント件数、実際の復旧時間を公開できれば0→3/5点を検討できます。
現在:0/5点
改善後:3/5点
加点:+3点
総合:57→60点
ランク:D→C
参考企業は株式会社セブン&アイ・ホールディングスです。Drive上の現行企業審査では7&i CSIRT、外部機関との情報共有、年2回以上のサイバーセキュリティ訓練などが確認でき、「サイバー防衛・情報保護」は5/5点です。
省力化の成果を従業員の時間へ返す:改善成果の人間への還元 2→3/5
現在の「改善成果の人間への還元」は2/5点です。
セルフレジ、電子棚札、Uber Eats PPPなどが広がっていますが、導入前後の残業、作業時間、必要人数、配置転換の変化が公表されていません。
店舗ごとに、レジ人時、価格変更作業時間、ネット注文ピッキング時間、月残業、配置人数を導入前後で比較し、雇用を維持しながら残業や単純反復作業が実際に減ったことを公開してほしいところです。
例えば主要なDX導入店舗で反復作業時間を20%以上減らし、その結果として残業減少または休日・教育時間の増加が確認できれば2→3/5点を検討できます。
現在:2/5点
改善後:3/5点
加点:+1点
総合:57→58点
ランク:Dのまま
参考企業はキリンビバレッジ株式会社です。Drive上の現行企業審査は74点・シビックランクBで、最大約25kgの茶葉原料を扱う重筋作業をロボットへ移すなど、技術による負担削減と人員再配置を具体化しており、「改善成果の人間への還元」は4/5点です。
次のランクへ上がるための具体例
現在57点・シビックランクDです。Cランクは60点からなので、あと3点必要です。
最も直接的な方法は、労働安全を改善することです。
全店舗・拠点の死亡・休業災害、度数率、強度率を毎年公開し、事故原因を分析して転倒、切創、重量物作業などを改善します。重大事故0と事故減少まで確認できれば、「労働安全・健康」を0→4点とし、+4点を検討できます。
57+4=61点となり、Cランクへ上がります。
別の方法はサイバー防御です。
MFA、EDR、バックアップ等の対象範囲を明確にし、攻撃・復旧訓練を実施して、重要システムを目標時間内に戻せた結果まで公開します。これが確認できれば、「サイバー防衛・情報保護」を0→3点、+3点と評価できます。
57+3=60点となり、同じくCランクへ到達します。
つまり、マルエツが次のランクへ上がるために必要なのは、新しい店舗やデジタルサービスをさらに増やすことより、現在の約1万5,000人の従業員が実際に安全に働けていることと、308店舗を支えるシステムが有事にも復旧できることを数字で証明することです。
現時点の総合評価は57点/100点、シビックランクDです。
出典一覧
1.株式会社マルエツ「会社概要」【情報ランクA】
2.株式会社マルエツ「沿革・会社情報」【情報ランクA】
3.連合「2026春季生活闘争 共闘連絡会議 回答速報」マルエツ労働組合【情報ランクA】
4.連合「2026春季生活闘争 有期・短時間・契約等賃金 回答速報」マルエツ労働組合【情報ランクA】
5.株式会社マルエツ「2027新卒採用 募集要項」【情報ランクA】
6.株式会社マルエツ「女性活躍推進法に基づく当社の取り組み」【情報ランクA・S】
7.Indeed「株式会社マルエツの社員クチコミ・評判」【情報ランクB】
8.ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス「統合報告書2025」人的資本関連データ【情報ランクA】
9.株式会社マルエツ「健康経営・ダイバーシティ/福利厚生」【情報ランクA】
10.株式会社マルエツ「企業行動規範」【情報ランクA】
11.株式会社マルエツ「健康経営宣言」【情報ランクA・S】
12.株式会社マルエツ「放射性物質問題への当社の対応・自主検査結果」【情報ランクA】
13.株式会社マルエツ「重要なお知らせ一覧」【情報ランクA】
14.株式会社マルエツ「Uber Eatsが全店で使えるようになります」2026年2月13日【情報ランクA】
15.浦安市「災害協定(物資供給)」【情報ランクS】
16.墨田区「災害時の協力協定」【情報ランクS】
17.狭山市「災害時の応援協力体制」【情報ランクS】
18.株式会社マルエツ「マルエツの基礎/U.S.M.Hグループ力」【情報ランクA】
19.株式会社マルエツ「プライバシーポリシー」2026年3月1日改定【情報ランクA】
20.株式会社マルエツ「マルエツチラシアプリの不具合について」2025年7月2日【情報ランクA】
21.株式会社マルエツ「マルエツチラシアプリ不具合解消について」2025年7月3日【情報ランクA】
22.Google Drive「株式会社セブン&アイ・ホールディングスを企業審査」現行版【参考企業】
23.Google Drive「キリンビバレッジ株式会社の企業審査」現行版【参考企業】
シビックランクの基準
| ランク | 点数 |
|---|---|
| S | 90~100点 |
| A | 80~89点 |
| B | 70~79点 |
| C | 60~69点 |
| D | 50~59点 |
| E | 40~49点 |
| F | 20~39点 |
| G | 0~19点 |
情報ランクの基準
| 情報ランク | 基準 |
|---|---|
| S | 公的機関、裁判所、規制当局、独立した第三者機関の調査・監査・検証・認証など、内容そのものに独立した裏づけがある情報 |
| A | 企業公式資料、採用情報、公式声明・SNS、または氏名・役職・立場が確認できる公表情報 |
| B | 従業員・元従業員の口コミ、一般SNS、匿名掲示板など、発信者の身元や対象企業との関係を独立に確認しにくい情報 |
