私たちは、企業の商品を購入したり、サービスを利用したりすることで、そこで働く人たちの未来を変えることができます。
働く人に十分な賃金を払い、休暇を確保し、安全な職場をつくり、人の負担を減らす企業の商品やサービスが選ばれれば、そうした企業により多くの売上が集まります。その結果、働く人を大切にする経営を続けやすくなります。
反対に、低賃金や長時間労働、安全上の問題を改善しない企業の商品やサービスが売れ続ければ、そうした働かせ方のままでも事業を続けることができます。
だからこの企業審査では、「私たちがお金を使うなら、どの企業を選ぶことが、そこで働く人にとってより良い社会につながるのか」という視点から企業を評価します。
なぜ企業を審査するのか?――このサイトの目的と、利用するメリット
今回審査するイオンスマートテクノロジー株式会社は、総合74点、シビックランクBです。
イオンスマートテクノロジー株式会社の特に強い点は、AI・データ基盤によって店舗現場の商品検索作業を月200時間削減するなど、人が行っていた作業を具体的に減らしていることです。さらに同社が提供するiAEONは2025年12月に2,000万ダウンロードを突破し、電子レシートも2026年1月末に累計1億枚へ達しました。そのため、この企業のサービスを利用すれば、小売店舗で働く人の反復作業を減らし、消費者の買い物を便利にする技術へ需要と資金が集まりやすくなる可能性があります。
一方で、改善点として、正規雇用労働者の男女賃金比が75.0%まで開いていること、対象会社単体の労働災害件数・残業実績・サイバー事故件数・RTO・RPOなどの結果情報が十分に公開されていないことが残ります。
この記事では、イオンスマートテクノロジー株式会社の強みと課題をさらに詳しく企業審査していきます。
イオンスマートテクノロジー株式会社の企業審査結果
イオンスマートテクノロジーは、イオングループ約300社のIT・DXを支える中核企業です。特にInnovationは非常に強く、AI、データ基盤、iAEON、従業員向けモバイルシステム、SREなどを実際の業務へ実装しています。
一方、働く人に関する結果情報では、年間休日や男性育休などは強いものの、男女賃金差や労災・残業実績の単体開示に改善余地があります。Protectionでも大規模システムを支える高度な技術は確認できますが、一般利用者が「何%稼働し、障害時に何分で戻るのか」を比較できるKPIは不足しています。
| 評価軸 | 得点 |
|---|---|
| Safety | 34/50 |
| Innovation | 23/25 |
| Protection | 17/25 |
| 総合点 | 74/100 |
| シビックランク | B |
| 主な強み | 主な課題 |
|---|---|
| 年間休日120~125日、長期休日20日 | 正規雇用の男女賃金比75.0% |
| 男性育児休業等取得率100% | 女性管理職比率14.1% |
| 在宅勤務・コアタイムなしのフレックス | 単体の平均残業時間・有給取得率の公式実績開示が不足 |
| AI・検索基盤で現場の商品検索を月200時間削減 | 労災件数・度数率・強度率の継続開示が不足 |
| iAEON 2,000万ダウンロード | AI・DX成果が自社社員の残業・休日へどう返ったか不明 |
| 電子レシート累計1億枚 | RTO・RPO・年間稼働率の公開不足 |
| iAEON重大障害比率を2023年度比で約4分の1まで削減 | 会員・購買・健康関連データを扱うため情報保護責任が大きい |
| 数十万人のID、約6万台の端末を対象にセキュリティ基盤を運用 | 会員基盤には可用性・セキュリティ面の再構築課題が残る |
事業内容と人間への貢献
イオンスマートテクノロジー株式会社は、イオン株式会社100%出資のIT企業です。2020年10月に設立され、2024年12月にはイオンアイビス株式会社のIT事業を統合しました。
2025年12月時点の従業員数は448人です。2026年3月1日付で太田卓也氏が代表取締役社長に就任し、イオン株式会社の執行役デジタル担当も兼務しています。現在の公式会社概要では資本金84億9,000万円とされています。
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 会社名 | イオンスマートテクノロジー株式会社 |
| 英文名 | AEON Smart Technology Co., Ltd. |
| 設立 | 2020年10月 |
| 本社 | 千葉県千葉市美浜区中瀬1-5-1 |
| 株主 | イオン株式会社100% |
| 代表者 | 代表取締役社長 太田 卓也 |
| 資本金 | 84億9,000万円 |
| 従業員数 | 448人(2025年12月時点) |
| 主な事業 | 情報システムサービス、iAEON、店舗・基幹システム、データ基盤、DX、ITインフラ等 |
情報ランク:A。
主な事業内容
イオンスマートテクノロジーの仕事は、スマートフォンアプリの開発だけではありません。
消費者向けには、AEON Pay、WAON POINT、クーポン、電子レシートなどをまとめた「iAEON」を提供しています。
従業員向けには、携帯端末から在庫確認や発注を行える「stoNavi(モバイルアシスタント)」などを開発し、50万人を超えるイオングループ従業員の業務DXを進めています。
さらに、国内外300社以上の基幹システム、ネットスーパー、EC、会員認証、購買・会員データ基盤、ITインフラ、サイバーセキュリティも担当しています。
事業による人間への貢献
同社の人間への貢献は、「小売業で人が行ってきた情報確認・検索・入力・発注などの仕事を、技術で減らすこと」にあります。
例えば店舗従業員が商品情報を探すために複数の資料やシステムを検索していた場合、その時間は商品補充や利用者対応に使えません。
イオンスマートテクノロジーは、Google検索のトレンド情報と自社商品データをAIで自動照合する仕組みによって、現場で発生していた商品検索作業を月約200時間削減したと公表しています。
同社のシステムは、自社448人だけが使うものではありません。
店舗従業員、イオン各社の従業員、iAEON利用者など、数十万人から数千万人規模へ影響します。
少人数の技術会社が小売現場全体の作業を減らせるという点は、事業による人間への貢献として非常に大きいと評価できます。
Safety|34/50
Safetyでは、イオンスマートテクノロジー自身で働く人の賃金、労働時間、雇用の公平性、育児、安全と、同社のシステムを利用する人の安全を評価します。
柔軟な働き方、年間休日、育休は強い一方、正規社員の男女賃金差と、労働時間・労災実績の会社単体開示が大きな課題です。
賃金・利益の還元|6/10
2026年の求人では、システムエンジニアで年収400万~710万円程度、IT戦略・システム企画で600万~800万円、プロジェクトマネージャーで700万~950万円、スマートフォンアプリ系では680万~1,200万円など、職種・責任に応じた幅広い給与水準が確認できます。
転職会議には2023年頃の30代前半・正社員エンジニアで年収760万円という投稿もあります。
昇給年1回、賞与年3回、住宅助成金、退職金などもあります。
一方、イオンスマートテクノロジー単体の平均年収、2025~2026年のベースアップ額・率、実質賃金の推移は公開情報が不足しています。
求人時の高い提示年収と、既存社員に利益を継続還元しているかは別の問題です。
そのため6/10点です。
全社員の平均基本給、職種・等級別賃金、ベースアップ、賞与実績を年度ごとに開示し、物価上昇を上回る実質賃金改善が確認できれば8~10点を検討できます。
情報ランク:A~B。
労働時間・休息|8/10
年間所定労働時間は1,920時間、年間休日は120~125日で、20日の長期休日制度があります。
在宅勤務とコアタイムのないスーパーフレックスタイム制を導入し、求人によっては毎週金曜日をNo残業デーとしています。
転職会議の投稿者集計では月平均残業15.5時間、有給消化率95%です。
2023年頃の30代前半男性・正社員エンジニアからは、
「完全在宅勤務のおかげで、通勤時間がなくなり」
という投稿があり、有給も取得しやすいと評価されています。
口コミ件数が少ないため会社全体の統計として扱うことはできませんが、少なくとも柔軟な働き方が実際に利用されている例は確認できます。
そのため8/10点です。
対象会社自身が月平均残業、年間実労働時間、有給取得率を毎年公開し、月15時間以下・有給80~90%以上を継続していることが確認できれば10/10点を検討できます。
情報ランク:A~B。
雇用の安定・待遇の公平性|3/5
2025年12月時点の従業員は448人です。2024年12月のイオンアイビスIT事業統合によって組織規模が大幅に拡大しました。
男性育児休業等取得率は100%ですが、女性管理職比率は14.1%です。
女性の平均年間賃金を男性100とした場合、2025年度は全労働者66.3%、正規雇用75.0%、パート・有期73.2%となっています。
前年の開示では正規雇用の男女賃金比は91.1%だったため、2025年度は大きく低下しています。ただし2024年12月にイオンアイビスIT部門を統合しており、社員構成が大きく変わった時期でもあります。したがって「同じ職務の女性の給与を引き下げた」とは判断できません。
それでも、現在の正規雇用75.0%という結果は改善が必要です。
そのため3/5点です。
職種、等級、年齢、勤続年数をそろえた男女差を公開し、正規雇用で90%以上へ戻すことができれば4~5点を検討できます。
情報ランク:S。
福利厚生・育児・介護|5/5
男性育児休業等取得率は2025年度100%です。
育児休職、短期育児休職、育児勤務、看護休暇、介護休職、介護勤務、時短勤務を設けています。
さらに年間休日のうち20日を1~4回の連続休日として取得でき、住宅助成、社宅、退職金、企業年金、共済会、従業員買物割引なども利用できます。
男性育休100%という利用実績まで確認できるため5/5点です。
情報ランク:S~A。
人権・ハラスメント・労使関係|4/5
求人情報では労働組合の存在を確認できます。
また、採用活動について「イオンの人権基本方針」をもとにハラスメント防止ガイドラインを定め、威圧的な面接、私的な接触、飲酒を伴う場への参加要請などを禁止しています。
相談窓口も設け、相談を理由とした不利益な扱いを禁止しています。
制度としてはかなり具体的です。
一方、イオンスマートテクノロジー単体のハラスメント相談件数、内部通報件数、認定件数、是正後の再発件数までは公開されていません。
そのため4/5点です。
制度が存在するだけでなく、実際の相談・是正結果まで公開できれば5/5点を検討できます。
情報ランク:A。
労働安全・健康|4/10
イオンスマートテクノロジーは主にIT・オフィス業務を行うため、工場や物流会社と比べて重量物・機械設備による重大労災リスクは小さい会社です。
在宅勤務、フレックス、No残業デーなど、長時間労働を抑えやすい制度もあります。
一方、システム障害や大型プロジェクトでは夜間・休日対応が発生する可能性があるIT企業でもあります。
対象会社単体について、労災件数、死亡・重篤事故、精神疾患による休職率、長時間労働者数、度数率などの結果は公開情報が不足しています。
そのため4/10点です。
例えばKDDIは、死亡事故0件、労働災害1件、度数率0.05などを会社単体で公開しています。イオンスマートテクノロジーでも同様に結果まで示せれば6~10点を検討できます。
情報ランク:A。結果KPIは公開不足。
商品・サービスの安全|4/5
iAEONはポイント、決済、購入履歴など生活に密接した情報を扱っています。
同社はセキュリティ基盤を構築し、数十万人のID、約6万台のエンドポイント端末を対象に、認証、アクセス制御、鍵管理、デバイス管理などを行っています。
iAEON開発では内製化とSRE改善を進め、2024年度の「iAEONが利用できないなどの重大障害発生比率」を2023年度比で約4分の1まで下げたとしています。
重大障害を実際に減らしている点は評価できます。
ただし、年間稼働率、重大障害件数、利用不能時間、セキュリティインシデント件数を継続比較できる公開データは不足しています。
そのため4/5点です。
重大障害0や99.99%級の可用性を長期継続し、結果を公開できれば5/5点を検討できます。
情報ランク:A。
従業員・元従業員の口コミ
転職会議では口コミが17件と少なく、うち面接関連が多いため、勤務実態について強い一般化はできません。
投稿者集計では月平均残業15.5時間、有給消化率95%です。
2023年頃の30代前半男性・正社員エンジニアからは、在宅勤務によって通勤時間を削減でき、有給休暇も取りやすいという内容が確認できます。
一方、2022年頃の古い口コミには、人員不足で時間内に業務を終わらせにくいという投稿もあります。ただし、これは2024年12月のイオンアイビスIT事業統合前であり、現在の448人規模の組織をそのまま示すものではありません。
情報ランク:B。
SNS・匿名掲示板の確認結果
X、5ちゃんねるなどについて、社名と「残業」「退職」「パワハラ」「障害」「人員削減」などを組み合わせて確認しました。
今回確認できた範囲では、投稿者が同社社員であること、時期、職種、雇用形態をある程度確認でき、今回の採点を変更できるほど具体的な原文投稿は確認できませんでした。
採点では、会社公式資料、親会社有価証券報告書、本文確認が可能な転職会議等を優先しています。
Innovation|23/25
Innovationはイオンスマートテクノロジーの最大の強みです。
新しいIT技術を研究しているだけでなく、小売店舗、イオン各社、消費者へ実際に導入し、「人がしていた作業をどれだけ減らしたか」を具体的に示す事例があります。
作業負担・危険の削減|10/10
2026年2月に公開された事例では、Google検索のトレンド情報とイオンの商品データをAIで組み合わせ、従来人が行っていた商品検索を自動化しました。
その結果、現場で発生していた検索作業を月約200時間削減したとしています。
200時間は、単純に8時間勤務へ換算すると約25人日です。
これまで人が検索・照合へ費やしていた時間をAIへ任せれば、従業員は商品戦略、顧客対応、改善判断など、人が行う価値の高い仕事へ時間を移せます。
さらに、50万人超のグループ従業員を対象としたstoNaviでは、在庫確認や発注を携帯端末上で行える環境を整えています。
人の反復作業を具体的な時間単位で減らした実績があり、大規模展開も確認できるため10/10点です。
情報ランク:A。
商品・サービスの改善|5/5
iAEONは2025年12月に累計2,000万ダウンロードを突破しました。
2026年4月にはトップ画面を刷新し、会員コードを起動直後に表示し、AEON Payを親指で押しやすい画面下部中央へ配置するなど、日常の買い物動線を改善しています。
電子レシートは2026年1月末で累計1億枚を突破し、約4,000店舗で利用できるまで拡大しました。
また、「iAEONレポート」では購入履歴、カテゴリー別支出、クーポンによる節約額などを自動表示し、家計管理を支援しています。
継続的な改善と大規模利用実績があるため5/5点です。
情報ランク:A。
改善成果の人間への還元|3/5
店舗現場で月200時間を削減した事例や、50万人超の従業員向けDXは、人の負担を直接減らしています。
一方、このInnovation項目では「イオンスマートテクノロジー自身の従業員へ技術成果がどう戻ったか」も確認する必要があります。
同社社員には在宅勤務、フレックス、長期休日があり、口コミ上の残業も15.5時間程度ですが、「AIや開発自動化によってAST社員の残業が何時間減った」「削減利益を賃上げへ何%戻した」といった直接的な成果は公開されていません。
そのため3/5点です。
社内開発の自動化・AI利用について、導入前後の残業、開発時間、夜間障害対応時間、賃金、休日を比較し、人間への還元を示せれば4~5点を検討できます。
情報ランク:A~B。
研究開発・現場改善の継続|5/5
iAEONの内製開発、アプリのリアーキテクチャ、SRE、AI Agent、New Relic、Azure、Snowflake、Vertex AI Search、TiDBなど、複数分野の技術を継続して実装しています。
iAEONでは2022年度から内製化を進め、2024年度には原則内製開発へ移行する取り組みを進めました。
その結果として重大障害比率の改善も確認されています。
新しい技術を実験で終わらせず、実際の買い物・店舗業務へ導入し続けているため5/5点です。
情報ランク:A。
自動化・AI導入後の雇用状況
2025年12月時点の従業員数は448人です。
2024年12月にはイオンアイビスのIT事業を統合しているため、過去の85人規模などの数字と単純比較して「AI導入後に雇用が急増した」と評価することはできません。
現時点では、AIや開発自動化を理由とする大規模希望退職、人員整理、契約終了を示す公開情報は確認していません。
現在も多数のIT・セキュリティ・データ・プロジェクト管理職を募集しており、人材採用自体は継続しています。
一方、AIによって削減した社内業務時間、採用人数、配置転換、再訓練、退職者数を時系列でまとめた公開情報はありません。
自動化が進むほど、「仕事を奪ったのか、負担を減らしたのか」を継続して確認する必要があります。
Protection|17/25
Protectionでは、サイバー攻撃、システム障害、クラウド障害、災害などが発生した場合でも、イオングループの店舗・アプリ・基幹システムを使い続けられるかを評価します。
技術面では高水準ですが、利用者が結果を比較できる可用性KPIと復旧時間の公開は十分ではありません。
災害への備え・訓練|3/5
イオンスマートテクノロジーは、イオングループのITインフラと基幹システムを担います。
イオングループ全体には防災・BCP体制がありますが、AST単体でデータセンター停止、クラウドリージョン障害、本社機能停止などを想定した訓練頻度と実測復旧時間は十分に公開されていません。
SRE、インシデント管理、オブザーバビリティなど平時の障害対応能力は確認できます。
そのため3/5点です。
大規模災害を想定したシステム切替訓練の頻度、対象システム、実測復旧時間を公開できれば4~5点を検討できます。
情報ランク:A。
生産・物流・調達の代替|3/5
IT企業では「生産・物流・調達の代替」を、クラウド、データベース、認証基盤、開発運用拠点の代替性として評価します。
ASTはAzureを利用したDX基盤を運用し、TiDBの分散型アーキテクチャなど、拡張性と可用性を意識した技術検証も行っています。
ただし、iAEON、会員認証、店舗基幹システムについて「東京リージョン停止なら大阪へ何分で切り替える」といった具体的な代替構成や訓練結果は公開されていません。
そのため3/5点です。
情報ランク:A。
サイバー防衛・情報保護|4/5
同社は数十万人のID、約6万台の端末を対象としたセキュリティ基盤を運用し、認証、アクセス制御、鍵管理、デバイス管理などを担っています。
またAzure上で社内システムを安全に利用するDX・セキュリティ基盤も構築しています。
2026年4月にはiAEONのプライバシーポリシーを改定し、健康関連データについてマーケティング、広告、信用判断、融資目的等には利用・提供しないことを明記しました。
数千万人規模の会員・購買データを扱う企業として、具体的なセキュリティ基盤を持つ点を評価して4/5点です。
一方、MFA適用率、重大漏えい件数、外部侵入テスト、検知時間、封じ込め時間などの年次成果を公開できれば5/5点を検討できます。
情報ランク:A。
供給継続・復旧能力|4/5
ASTではSREとオブザーバビリティを強化し、障害対応を一部担当者だけに依存しない仕組みへ変えています。
PagerDutyなどを使ったインシデント管理、ポストモーテム、障害対応記録の標準化を進めています。
iAEONでは2024年度の重大障害発生比率を2023年度比約4分の1へ下げた結果も確認できます。
実際に障害を減らした点を評価して4/5点です。
ただし、サービス別の年間稼働率、RTO、RPO、平均復旧時間を継続公開していません。
例えばセブン銀行はATM稼働率99.98%を公開し、東西に重要システムを配置していることまで示しています。ASTも主要サービスの稼働率と復旧時間を示せれば5/5点を検討できます。
情報ランク:A。
危機時の市民への対応|3/5
AST自身が災害現場へ食料や水を届ける企業ではありません。
一方、同社が維持する店舗、決済、会員、ネットスーパーなどのシステムは、災害時にも市民が商品を購入するための生活インフラの一部です。
システムを止めないこと自体に社会的価値はありますが、AST単体で災害時に特別な機能提供、被災者支援、通信・決済無償化などを実施した具体的な公開実績は不足しています。
そのため3/5点です。
有事のシステム優先復旧や被災者支援の実績を対象会社単体で公開できれば4~5点を検討できます。
良いニュース・最近の前向きな動き
直近のイオンスマートテクノロジーでは、単に新しいアプリ機能を増やすだけでなく、「現場の時間を減らす」「障害を減らす」「利用者の操作を減らす」という人間側の成果が目立ちます。
Innovationの点数が高い最大の理由です。
2026年2月 AI・データ基盤で現場作業を月200時間削減
商品データとGoogle検索トレンドをAIで照合する仕組みにより、従来現場が手作業で行っていた商品検索作業を月200時間削減しました。
これは単に「AIを導入した」という話ではありません。
人が使っていた時間が200時間減ったという結果まで確認できます。
今後、その200時間が残業削減、教育、休日、顧客対応などへどう使われたかまで示せれば、人への還元をさらに高く評価できます。
2026年2月 電子レシート累計1億枚
2024年6月に全国展開した電子レシートは、2026年1月末に累計1億枚を突破しました。
紙換算で約125トンを削減するとしています。
利用者はレシートを保管・廃棄する手間を減らし、購入履歴をスマートフォンで確認できます。
店舗側でも紙の交換・補充・廃棄作業を減らせる可能性があります。
2026年4月 iAEONを大幅リニューアル
会員コードを起動後すぐに表示し、AEON Payボタンを親指で押しやすい位置へ移すなど、日常利用時の操作回数を減らす改善を行いました。
2,000万ダウンロード規模のアプリでは、一人あたり数秒の操作改善でも、社会全体では大きな時間削減になります。
2026年 SREとAIによる障害対応高度化
2026年には、SREとAIを組み合わせ、アラート分析やインシデント対応を高度化する取り組みを外部イベントでも公開しています。
システム障害時に人が大量のログを手作業で確認する負担をAIへ移せれば、復旧速度と夜間対応負担の双方を改善できる可能性があります。
悪いニュース・問題となった動き
今回の調査では、2026年時点でAST単体の大規模情報漏えいや行政処分は確認していません。
一方、「事故が確認されない」ことと「課題がない」ことは別です。
現在は男女賃金差、技術負債、会員基盤の再構築、結果KPIの不足が主な問題です。
正規雇用の男女賃金比が75.0%
2025年度の女性の平均年間賃金は、男性を100とした場合、正規雇用で75.0%です。前年は91.1%でした。
イオンアイビスIT事業統合による人員構成変化が影響している可能性があるため、前年から低下したことだけで差別的賃金だとは判断できません。
しかし、現在の結果が75%であること自体は改善対象です。
会社には、職種、役職、等級、勤続年数別に原因を説明し、差を縮める責任があります。
iAEONには技術負債とリアーキテクチャ課題
現在のiAEONについて、会社自身がWebViewベースのハイブリッドアプリに「コードの可読性・保守性の低さ」「モノリシックな構造による開発効率低下」という課題があると説明しています。
現在は全面的なリアーキテクトを進めています。
問題を公開し、改善していることはプラスですが、2,000万人以上が使うアプリだけに、移行時の障害を抑えることが重要です。
会員認証基盤にもセキュリティ・可用性の再構築課題
iAEON IDの統合が進む一方、会社は現在の会員認証基盤について、セキュリティ、可用性、スケーラビリティの観点から体制とシステムを再構築する必要があると明記しています。
90以上存在するIDを一つへ統合すれば便利になりますが、一つの認証基盤へ依存する範囲も大きくなります。
攻撃や障害が起きた場合に影響範囲を限定できる設計と、復旧時間の公開が重要です。
健康関連データを含むデータ利用範囲が拡大
2026年4月のプライバシーポリシー改定では、利用者の同意を前提に、Google Fit、Health Connect、Apple HealthKit等から歩数や体重などのデータをiAEON経由で連携する仕組みが追加されました。
会社はこれら健康関連データを広告、マーケティング、信用判断、融資等へ利用・提供しないと明記しています。
この明記は評価できます。
一方、扱うデータの機微性が高まるほど、事故時の影響も大きくなるため、セキュリティKPIの公開は今後さらに重要になります。
総合評価と、これから改善してほしいこと
現在74点・シビックランクBです。
次のAは80点からなので、あと6点必要です。
イオンスマートテクノロジーは、Innovationだけを見ればA~S級に近い企業です。
AIで月200時間を削減し、50万人超の従業員環境をDX化し、2,000万ダウンロード規模のアプリを運営しながら、重大障害比率も改善しています。
Bにとどまった理由は、「技術が弱いから」ではありません。
男女賃金差、労働安全KPI、DX成果の自社社員への還元、システム復旧結果の公開がInnovationに追いついていないためです。
正規雇用の男女賃金比を90%以上へ戻してほしい
現在の「雇用の安定・待遇の公平性」は3/5点です。
正規雇用の男女賃金比は75.0%です。
職種、等級、年齢、勤続年数ごとの差を分析・公開し、正規雇用全体でも90%以上まで縮小できれば3→4点を検討できます。
加点は+1点で、総合74→75点です。
同じイオングループでは、イオンアグリ創造株式会社の正規雇用男女賃金比は100.7%です。職種構成が異なるため直接比較はできませんが、「グループ企業だから大きな差が避けられない」というものではありません。
労働時間・労災を会社自身の数値で公開してほしい
現在の「労働時間・休息」は8/10点、「労働安全・健康」は4/10点です。
年間休日125日、在宅勤務、フレックスは確認できますが、公式の月平均残業、長時間労働者数、労災件数、精神疾患休職率は十分に公開されていません。
残業15時間以下、死亡・重篤事故0、労災件数、長時間労働者数などを毎年公開し、良好な結果を継続できれば、「労働安全・健康」を4→6点とすることを検討できます。
加点は+2点で、総合74→76点です。
参考企業のKDDIは、労災件数、死亡事故、度数率、残業、年間総実労働時間まで年次比較できる形で公開しています。
AI・自動化でAST社員自身の自由時間を増やしてほしい
現在の「改善成果の人間への還元」は3/5点です。
グループ店舗では月200時間を削減する成果があります。
次は、AST自身のエンジニアについて、AI Agent、テスト自動化、IaC、SREなどによって夜間対応、障害調査、開発工数が何時間減ったかを測定する必要があります。
導入前後で残業、休日対応、呼び出し回数、開発工数、教育時間を公開し、社員自身の自由時間増加が確認できれば3→5点を検討できます。
加点は+2点で、総合74→76点です。
iAEONと基幹システムの稼働率・復旧時間を公開してほしい
現在の「供給継続・復旧能力」は4/5点です。
重大障害比率を約4分の1まで減らしたことは高く評価できます。
次の段階は、「どれだけ減ったか」だけでなく、サービスの年間稼働率と復旧時間を公開することです。
iAEON、会員認証、店舗・基幹システムについて年間稼働率、重大障害件数、平均復旧時間、RTO・RPOを公開し、高水準を継続できれば4→5点を検討できます。
加点は+1点で、総合74→75点です。
参考企業のセブン銀行はATM稼働率99.98%を公開し、東西のシステム拠点を同時稼働させています。
次のランクへ上がるための具体例
| 改善項目 | 現在の問題 | 現在点→改善後 | 加点 |
|---|---|---|---|
| 雇用の安定・待遇の公平性 | 正規雇用男女賃金比75.0% | 3→4 | +1 |
| 労働安全・健康 | 労災・健康KPIの単体開示不足 | 4→6 | +2 |
| 改善成果の人間への還元 | DX成果とAST社員の残業・休日の因果不足 | 3→5 | +2 |
| 供給継続・復旧能力 | 稼働率・RTO・RPOの公開不足 | 4→5 | +1 |
| 合計 | 74→80 | +6 |
この4項目で実際の改善が確認できれば、74点から80点となり、シビックランクAへ上がります。
重要なのは「情報を公開したから加点する」のではありません。
男女賃金差が実際に縮まった、事故・過重労働が低水準だった、AIによって社員自身の自由時間が増えた、システムを目標時間内に復旧できたという結果が確認できた場合に点数を更新します。
出典一覧
1.イオンスマートテクノロジー株式会社「企業情報」
2.イオン株式会社「グループ採用情報・イオンスマートテクノロジー」
3.イオンスマートテクノロジー株式会社「代表取締役の異動に関するお知らせ」
4.イオンスマートテクノロジー株式会社「働く環境・制度一覧」
5.イオンスマートテクノロジー株式会社「セキュリティシステムエンジニア求人」
6.イオン株式会社「2026年2月期有価証券報告書」
7.イオン株式会社「2025年2月期有価証券報告書」
8.イオンスマートテクノロジー株式会社「事業紹介」
9.AEON TECH HUB「Google検索×自社データで現場の200時間を取り戻すまで」
10.イオンスマートテクノロジー株式会社「iAEON 2,000万ダウンロード」
11.イオンスマートテクノロジー株式会社「電子レシート1億枚突破」
12.イオンスマートテクノロジー株式会社「iAEONトップ画面リニューアル」
13.イオンスマートテクノロジー株式会社「プライバシーポリシー改定」
14.AEON「内製開発Summit 2025」発表資料
15.AEON TECH HUB「SRE×AI・インシデント対応」関連資料
16.イオンスマートテクノロジー株式会社「会員認証基盤開発求人」
17.イオンスマートテクノロジー株式会社「iAEONリアーキテクト求人」
18.転職会議「イオンスマートテクノロジー株式会社」
19.KDDI株式会社「社会データ」
20.セブン銀行「止まらない金融インフラをつくる」
シビックランクの基準
| シビックランク | 点数 |
|---|---|
| S | 90~100点 |
| A | 80~89点 |
| B | 70~79点 |
| C | 60~69点 |
| D | 50~59点 |
| E | 40~49点 |
| F | 20~39点 |
| G | 0~19点 |
イオンスマートテクノロジー株式会社は74点のため、今回のシビックランクはBです。
情報ランクの基準
| 情報ランク | 基準 |
|---|---|
| S | 公的機関、裁判所、規制当局、独立した第三者機関の調査・監査・検証・認証など、内容そのものに独立した裏づけがある情報 |
| A | 企業公式資料、採用情報、公式声明・SNS、または氏名・役職・立場が確認できる公表情報 |
| B | 従業員・元従業員の口コミ、一般SNS、匿名掲示板など、発信者の身元や対象企業との関係を独立に確認しにくい情報 |
Sは第三者による裏づけがある情報として最も強く扱います。AとBは情報の性質が異なり、働き方の実態確認ではBが有用な場合もあります。口コミは時期・職種・拠点・件数を確認し、公式・公的情報と照合して使用します。
