私たちは、企業の商品を購入したり、サービスを利用したりすることで、そこで働く人たちの未来を変えることができます。
働く人に十分な賃金を払い、休暇を確保し、安全な職場をつくり、人の負担を減らす企業の商品やサービスが選ばれれば、そうした企業により多くの売上が集まります。その結果、働く人を大切にする経営を続けやすくなります。
反対に、低賃金や長時間労働、安全上の問題を改善しない企業の商品やサービスが売れ続ければ、そうした働かせ方のままでも事業を続けることができます。
だからこの企業審査では、「私たちがお金を使うなら、どの企業を選ぶことが、そこで働く人にとってより良い社会につながるのか」という視点から企業を評価します。
なぜ企業を審査するのか?――このサイトの目的と、利用するメリット
今回審査する旭化成株式会社は、総合84点、シビックランクAです。
旭化成株式会社の特に強い点は、平均年間給与848万3,519円、有給休暇取得率84.6%という働く人への還元に加え、生成AIの活用で書類作成・社内資料検索などを月2,157時間削減し、書類監査対応でも年間1,820時間の作業削減を実現していることです。そのため、この企業の商品を購入したりサービスを利用したりすれば、高い賃金と休暇を維持しながら、人が行っていた反復作業をAIやデジタル技術へ移す企業が広がる社会につながる可能性が高まります。
一方で、改善点として、2025年度の旭化成単体では正規雇用労働者の男女賃金比が83.2%、女性管理職比率が7.7%にとどまること、国内グループでは労働災害が残っていること、主要拠点停止時の代替生産率やRTO・RPOなどの復旧指標が十分に公開されていないことが残ります。
この記事では、旭化成株式会社の強みと課題をさらに詳しく企業審査していきます。
旭化成株式会社の企業審査結果
旭化成は、マテリアル、住宅、ヘルスケアをまたぐ大規模企業グループを持ちながら、対象会社単体でも8,233人を雇用する事業会社です。2026年3月期の単体平均年間給与は848万3,519円で、前年から6.0%増加しました。会社はこの増加について、継続的なベースアップと業績拡大を反映した賞与増額によるものと説明しています。
DXでは全社共通の生成AI基盤やスマートファクトリーを進め、具体的な削減時間まで公開しています。Protectionでは国内外の製造拠点、BCP、サイバー訓練、災害時の寄付・物資支援などを確認できます。
一方、正規雇用の男女賃金比83.2%、女性管理職比率7.7%は改善余地があります。また2025年度は死亡災害0件を達成した一方、後遺症災害2件が発生しました。
| 評価軸 | 得点 |
|---|---|
| Safety | 40/50 |
| Innovation | 24/25 |
| Protection | 20/25 |
| 総合点 | 84/100 |
| シビックランク | A |
主な強み
・2026年3月期の単体平均年間給与848万3,519円、前年比6.0%増
・平均有給休暇取得率84.6%
・旭化成単体の男性育児休業取得率99.4%
・生成AI活用で月2,157時間の業務時間を削減
・書類監査対応で年間1,820時間の時間短縮
・2025年度の国内グループ休業度数率0.29
・2025年度の死亡災害0件
・2025年度の重大製品事故0件、製品安全・化学品管理に関する法規制違反0件
・グローバルなセキュリティ訓練、インシデント対応体制
・2026年熊本地震で旭化成本体が1,000万円を寄付
主な課題
・正規雇用の男女賃金比83.2%
・女性管理職比率7.7%
・死亡災害は0件だが後遺症災害2件
・三交替勤務など工場ごとの勤務負担が残る
・2025年度の保安事故1件、保安軽微事故11件
・主要工場停止時の代替生産率、RTO・RPOが非公表
・AI・自動化によって減った時間が、部署ごとの残業・休日・人員配置へどう返ったかの全社定量開示は限定的
・2026年度に別法人の旭化成セラピューティクスで個人情報インシデント1件
事業内容と人間への貢献
旭化成は、生活や産業の基盤となる素材、住宅、医療、電子材料などを幅広く扱う企業グループです。対象会社である旭化成株式会社自身は、主にマテリアル領域とグループ全社機能を担っています。
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 会社名 | 旭化成株式会社 |
| 創業 | 1922年5月25日 |
| 設立 | 1931年5月21日 |
| 本社 | 東京都千代田区有楽町1丁目1番2号 |
| 代表者 | 代表取締役社長 工藤幸四郎 |
| 資本金 | 1,033億8,900万円 |
| 単体従業員数 | 8,233人 |
| 連結従業員数 | 47,895人 |
| 単体平均年齢 | 41.9歳 |
| 単体平均勤続年数 | 17.1年 |
| 単体平均年間給与 | 848万3,519円 |
| 2026年3月期連結売上高 | 約3兆745億円 |
| 主要領域 | マテリアル、住宅、ヘルスケア |
会社概要の資本金・連結従業員数は2026年3月31日時点、単体従業員・給与等は2026年3月期有価証券報告書に基づきます。
主な事業内容
旭化成グループは、マテリアル、住宅、ヘルスケアの3領域で事業を行っています。
対象会社単体ではマテリアル領域を中心に、樹脂、繊維、電子材料、電池材料、化学品、膜・フィルターなどを扱い、同時にグループ全体の研究開発、DX、リスク管理、人事などの本社機能も担います。
例えば半導体向け感光性材料「サンフォート TAシリーズ」は、AIサーバーなどに使う先端半導体パッケージの微細回路形成に使われ、LDI露光で1.0μm幅のパターン形成を実現しています。
事業による人間への貢献
旭化成の価値は、一般消費者が直接「旭化成」という名前で買う商品だけにありません。
例えばスマートフォンやAIサーバーの半導体製造では、回路を細かく形成できる材料が必要です。旭化成の感光性材料が高精細化すれば、先端半導体パッケージの高密度化や生産性向上を支えられます。
また、生成AI・データ解析を自社業務だけでなく森林管理にも応用しています。宮崎県延岡市との森林由来J-クレジット実証では、従来1.5~3カ月を要した申請作業を約4~5日へ短縮し、作業量を約90%削減しました。行政職員や森林関係者が書類作成へ使う時間を減らし、森林管理や地域業務へ時間を回しやすくなります。
Safety|40/50
Safetyでは、旭化成株式会社単体の賃金・男女待遇・育児制度を中心に、労働時間や安全では対象範囲を明示しながら旭化成と主要事業会社、国内グループの公開データも補助的に使用します。
平均給与、育休、有給、労使関係は高水準です。一方、男女の登用差と製造現場の労災は改善が必要です。
賃金・利益の還元|8/10
2026年3月期の旭化成単体の平均年間給与は848万3,519円で、前年800万906円から6.0%増加しました。会社はこの増加について、継続的なベースアップと業績拡大を反映した賞与増額によるものと説明しています。
平均給与だけで全社員の生活実感を判断することはできませんが、単体8,233人という大規模な会社で平均年間給与が6%上昇し、その理由としてベースアップを明示していることは強い実績です。
一方、ベースアップ分と賞与増額分を切り分けた全社員の平均増額や、職種・等級別の賃金中央値までは公表されていません。
そのため8/10点です。
ベースアップ額・率を賞与と分けて毎年公開し、物価上昇を上回る実質賃金上昇を複数年継続できれば10/10点を検討できます。
労働時間・休息|8/10
旭化成および主要5事業会社を対象とした2025年度の総実労働時間は1,937時間、時間外労働時間は年間265時間、平均有給休暇取得日数は16日、有給取得率は84.6%です。年間265時間を12カ月で割ると、単純平均で月約22.1時間です。
総実労働時間は2021年度1,992時間から2025年度1,937時間へ55時間減っています。有休取得率84.6%は、制度があるだけでなく実際に休暇を利用できていることを示します。
一方、製造現場には交替勤務があります。Indeedの2026年8月、滋賀県守山市の製造オペレーターによる投稿では、
「三交代勤務者は3勤1休で長期連休は無い」
と記載されています。情報ランクBの一人の投稿であり全工場へ一般化はしませんが、全社平均だけでは見えない交替勤務の負担を示します。
そのため8/10点です。
時間外労働を年間180時間以下、平均月15時間以下まで下げ、交替勤務者の休日・勤務間インターバルも職場別に公開できれば10/10点を検討できます。
雇用の安定・待遇の公平性|3/5
2025年度の旭化成単体では、女性管理職比率7.7%、男性育児休業取得率99.4%です。男女賃金比は全労働者76.6%、正規雇用83.2%、パート・有期69.3%です。
会社は正規雇用の賃金差について、賃金制度そのものの男女差より、上位職・等級への登用実績の差などが影響していると説明しています。
男性育休取得率99.4%は高く、育児を女性だけへ偏らせにくい制度利用が進んでいる点は評価できます。
一方、女性管理職7.7%、正規雇用賃金比83.2%はまだ差が大きいため3/5点です。
女性管理職比率15%以上、正規雇用男女賃金比90%以上を実現し、同水準を継続できれば5/5点を検討できます。
福利厚生・育児・介護|5/5
旭化成単体の男性育児休業取得率は99.4%です。旭化成と主要事業会社を含む範囲では、育児休業を利用する男性社員も多数に上っています。
2025年度のESGデータでは男性641人、女性313人が育児休業を取得し、介護休業も男性10人、女性4人が利用しています。
育休・介護休業を制度として用意するだけでなく、男性にも実利用が広がっているため5/5点です。
人権・ハラスメント・労使関係|4/5
旭化成および一部関係会社には労働組合が組織され、2026年3月期には賃金改定や労働協約改定について交渉し、いずれも円満解決したと有価証券報告書に記載されています。
2025年度は内部通報制度に102件の通報・相談があり、そのうち5件が差別やハラスメントなどの人権問題に関連するものでした。会社は社外専門家を含む部署で調査し、改善につなげる仕組みを設けています。
問題が発生していること自体は課題ですが、件数を公表し、通報後の調査・救済の仕組みが確認できる点を評価して4/5点です。
確認された人権問題の件数を継続して減らし、是正・再発防止結果まで年度別に公開できれば5/5点を検討できます。
労働安全・健康|8/10
2025年度の国内グループ休業度数率は0.29で、2021年度0.38から低下しています。
サステナビリティ目標では2025年度の死亡災害は0件でした。一方、後遺症災害は2件発生しています。
化学工場では高温、高圧、可燃物、化学物質、大型設備などを扱うため、一度の事故が重い被害につながる可能性があります。死亡災害0を維持しながら度数率を低下させていることは評価できますが、後遺症災害が残っているため満点にはできません。
そのため8/10点です。
死亡・後遺症災害0を複数年継続し、国内グループ休業度数率を0.1以下へ下げることが確認できれば10/10点を検討できます。
商品・サービスの安全|4/5
旭化成グループは重大製品事故0件、製品安全・化学品管理に関する法規制違反0件を目標としており、2025年度は両方とも0件を達成しました。
開発段階と供給段階の双方で品質リスクアセスメントを行い、重大な製品トラブルが発生するおそれがある場合の対応も社内規程で定めています。
一方、旭化成株式会社単体だけに限定した重大不具合・回収件数を全製品群で一覧化した公開情報は限定的です。
そのため4/5点です。
旭化成単体の重大不具合・回収・品質事故を製品群別に公開し、重大事故0を複数年維持できれば5/5点を検討できます。
従業員・元従業員の口コミ
Indeedでは2026年8月時点で64件の口コミが掲載され、総合評価3.7、給与・福利厚生4.1、勤務時間と残業3.6となっています。
2026年8月の滋賀県守山市・製造オペレーターの投稿には、
「福利厚生も整っていて有給も自由に取れる」
との記述がある一方、
「三交代勤務者は3勤1休で長期連休は無い」
とも記載されています。
情報ランクBの一人の投稿なので、会社全体へ一般化はしません。福利厚生・休暇を評価する声と、交替勤務特有の負担が同じ投稿内で確認できます。
転職会議でも多数の口コミがあり、会社の公式平均だけでは見えない職場・職種差の確認材料になります。
SNS・匿名掲示板の確認結果
X、5ちゃんねる、爆サイについて、旭化成と「残業」「夜勤」「退職」「パワハラ」「省人化」「人員削減」「配置転換」などを組み合わせて確認しました。
今回の調査では、旭化成株式会社の現社員・元社員であること、投稿時期、職種、拠点まで確認でき、採点を変更するだけの具体性を持つ本文付き投稿は確認できませんでした。
そのためSNS・匿名掲示板による追加の加点・減点は行っていません。
Innovation|24/25
Innovationは旭化成の最大の強みです。
研究開発だけでなく、生成AI、マテリアルズ・インフォマティクス、スマートファクトリーなどを社内実務へ導入し、実際に削減できた作業時間まで公表しています。
作業負担・危険の削減|10/10
書類作成や社内資料検索などへの生成AI利用では、業務全体で月2,157時間を削減しています。年間へ単純換算すると約2万5,884時間です。
さらに書類監査対応では、業務に合わせた生成AIを開発し、年間1,820時間を削減しています。
人が検索、読み込み、転記、定型文章作成へ使っていた時間をAIへ移すことで、社員は研究、判断、顧客対応、安全管理など人が担う価値の大きい仕事へ時間を振り向けやすくなります。
削減対象と削減時間が具体的に公表されているため10/10点です。
商品・サービスの改善|5/5
旭化成は2025年、AIサーバーなどに使う先端半導体パッケージ向け感光性ドライフィルム「サンフォート TAシリーズ」を開発し、LDI露光で1.0μm幅のパターン形成を実現しました。
森林由来J-クレジット支援システムでは、宮崎県延岡市で申請業務を約90%削減し、従来1.5~3カ月かかった作業を約4~5日に短縮しています。
製品性能と利用者の作業時間の双方で具体的な改善を確認できるため5/5点です。
改善成果の人間への還元|4/5
旭化成と主要事業会社の総実労働時間は2021年度1,992時間から2025年度1,937時間へ55時間減少し、有給取得率は77.6%から84.6%へ上昇しています。旭化成単体の平均年間給与も848万3,519円となり、前年比6.0%増えています。
AI・DXの拡大と同時に、労働時間減少、休暇利用、給与増加が確認できるため、人への還元は進んでいると評価できます。
一方、月2,157時間削減したAI施策が、どの部署の残業を何時間減らし、教育や配置転換へ何時間使われたかまで一対一で追える全社データは公開されていません。
そのため4/5点です。
AI削減時間を部署別の残業、有休、教育時間、配置転換と対応させて公開できれば5/5点を検討できます。
研究開発・現場改善の継続|5/5
旭化成は生成AI共通基盤、スマートファクトリー、マテリアルズ・インフォマティクスなどを複数年にわたり展開しています。生成AIについても個人利用だけでなく、各組織が社内業務向けAIを構築・管理できる基盤を整えています。
2025年にはサンフォートTAシリーズ、2026年には先端半導体パッケージ向け感光性ポリイミドフィルムなど新しい材料を継続投入しています。
単発のIT導入ではなく、研究・製造・需給・顧客対応へ改善を横展開しているため5/5点です。
自動化・AI導入後の雇用状況
旭化成単体の2026年3月末の従業員数は8,233人です。生成AIや自動化が大規模に導入されていますが、今回の調査では「生成AI導入を理由とする旭化成株式会社の大規模希望退職・解雇」を示す公開情報は確認していません。
会社は生成AIと同時に、従業員向けのDX教育や生成AI研修を実施しています。
一方、自動化後に何人を配置転換したか、再訓練後にどの業務へ移ったか、採用数がどの程度変化したかを一貫して追える公開情報はありません。
人員削減ではなく、浮いた時間をより人間的な仕事へ移すことを定量的に示せれば、Innovationの人間への還元をさらに高く評価できます。
Protection|20/25
Protectionでは、化学工場の事故・自然災害、サイバー攻撃、物流停止などが起きても製品・サービスを供給し続けられるかを評価します。
旭化成はグローバルな拠点分散、BCP、訓練、サイバー対策、災害支援を実施していますが、主要拠点ごとの復旧時間や代替生産率の公開は限定的です。
災害への備え・訓練|4/5
旭化成は自然災害などを重要リスクとして管理し、各製造拠点で減災計画と緊急時対応計画を策定し、継続的に訓練しています。本社地区でも大規模地震を想定した対策本部体制と定期訓練を設けています。
例えば大地震で工場設備が損傷した場合、平時から指揮命令系統と訓練があれば、避難、設備停止、漏えい防止などを早く実行し、従業員と周辺住民への被害拡大を防ぎやすくなります。
一方、拠点別の実地訓練頻度と実測復旧時間は十分に公開されていません。
そのため4/5点です。
訓練結果と復旧所要時間まで公開できれば5/5点を検討できます。
生産・物流・調達の代替|4/5
旭化成グループは約40カ国で事業を展開し、複数の国内外製造拠点を持っています。
2026年には台湾で先端半導体パッケージ向け「サンフォート」の新たなスリット加工工場を竣工するなど、需要増に対応して供給拠点を増強しています。
一方、特定工場が地震や火災で停止した場合に「どの工場へ何%を何日以内に振り替えられるか」という製品別代替率は公開情報が不足しています。
そのため4/5点です。
主要製品ごとの第二製造拠点、代替率、切替日数を公開できれば5/5点を検討できます。
サイバー防衛・情報保護|4/5
旭化成グループはサイバー攻撃の検知・対応ツールを強化し、インシデント時のエスカレーション体制、eラーニング、メール訓練、海外拠点のセキュリティモニタリング、官民合同演習への参加を行っています。
2026年度には別法人の旭化成セラピューティクスで個人情報インシデント1件が発生しています。旭化成株式会社単体の情報漏えいとしては扱いませんが、グループ全体として再発防止が必要です。
実装と訓練を確認できる一方、旭化成単体のMFA適用率、主要システムのRTO・RPO、バックアップ復旧テスト時間などは公開情報が不足しています。
そのため4/5点です。
供給継続・復旧能力|4/5
旭化成は複数国・複数事業に拠点を持ち、自然災害時のBCP訓練や代替資材調達の準備を進めています。
供給不安となる設備・資材について代替先を探索・確保し、納期や更新時期の管理を見直すこともリスク対策として明示しています。
一方、工場が完全停止した際の製品別RTO、RPO、代替生産率は公表されていません。
そのため4/5点です。
主要製品の復旧目標と訓練結果を数値で公開できれば5/5点を検討できます。
危機時の市民への対応|4/5
2026年7月28日の熊本地震後、旭化成株式会社は日本赤十字社を通じて1,000万円を寄付しました。子会社の旭化成ホームプロダクツも被災地域へサランラップ3万本を提供する準備を進めました。
例えば避難所で食品を小分け保存したり、容器を衛生的に保ったりする必要がある場合、ラップ類は日常生活を維持する実用品になります。
旭化成本体の寄付とグループの物資支援を評価して4/5点です。
旭化成本体が直接供給できる素材・生活必需品について、災害時の供給数量と配送実績を継続公開できれば5/5点を検討できます。
良いニュース・最近の前向きな動き
直近では、DXによる作業時間削減、賃金改善、製品安全、被災地支援が同時に進んでいます。
旭化成の商品・サービスが選ばれることは、研究開発だけでなく、人の時間を削減しながら賃金と休息を維持する経営を需要面から支えることにつながります。
2026年3月期 平均年間給与848万円、前年比6.0%増
旭化成単体の平均年間給与は848万3,519円となり、前年から6.0%増加しました。会社は継続的なベースアップと賞与増額が理由と説明しています。
賃金が物価上昇に追いつかなければ、名目給与が同じでも生活の余裕は減ります。継続的なベースアップは、その圧力を和らげる直接的な人への還元です。
生成AIで月2,157時間を削減
書類作成・資料検索などの生成AI利用により、月2,157時間の業務時間を削減しています。書類監査では年間1,820時間を削減しました。
月2,157時間は、1人月160時間で単純換算すると約13.5人分の月間労働時間です。
人を減らすためではなく、判断、研究、安全管理、教育へ時間を振り向ける運用を続ければ、人が単純作業へ拘束される時間を大きく減らせます。
森林J-クレジット申請作業を約90%削減
宮崎県延岡市の実証では、従来1.5~3カ月必要だった作業を約4~5日へ短縮しました。
行政職員や森林関係者が複雑な転記・照合作業へ使う時間を減らし、森林保全そのものへ時間を使いやすくします。
2025年度 重大製品事故0件
2025年度は重大製品事故0件、製品安全・化学品管理に関する法規制違反0件を達成しました。
化学・電子材料は顧客の大量生産工程へ組み込まれるため、重大品質事故ゼロを維持することは顧客企業の生産停止や大量回収を防ぐことにつながります。
悪いニュース・問題となった動き
現在の主要課題は、男女の登用差、労働災害、保安事故です。
制度や技術が優れていても、実際に事故や格差が残れば人への負担は消えません。改善されない場合、女性が上位職へ進みにくい構造や、化学工場で働く人の事故リスクが残ります。
正規雇用の男女賃金比83.2%
2025年度の旭化成単体では、正規雇用の男女賃金比は83.2%、女性管理職比率は7.7%です。
女性管理職比率が低いことは、上位職の賃金を受け取る女性が少ないことにもつながります。
同じ賃金制度を用意するだけでなく、実際の登用結果まで差を縮める必要があります。
2025年度 後遺症災害2件
2025年度は死亡災害0件を達成した一方、後遺症災害が2件発生しています。
化学・製造現場では、巻き込まれ、被液、転落など一度の事故で長期間の身体影響が残る可能性があります。
死亡事故だけでなく、後遺症を残す事故もゼロへ近づける必要があります。
2025年度 保安事故1件
2025年度は保安重大事故0件でしたが、海外工場で非定常作業管理の不備により大きな設備損傷を伴う保安事故1件が発生しました。さらに保安軽微事故は11件でした。
火災や漏えいが重大化すれば、工場社員だけでなく周辺住民や供給先にも影響します。
非定常作業を含めた本質安全化を続ける必要があります。
総合評価と、これから改善してほしいこと
現在84点・シビックランクAです。
次のSランクは90点からなので、あと6点必要です。
旭化成はすでに高い平均給与、有休取得率、育休、AIによる時間削減、重大製品事故0、災害・サイバー訓練を実現しています。
Sへ上がるために重要なのは、さらに新しい制度を増やすことより、男女の登用差、重篤労災、AI成果の人への還元、復旧KPIを改善することです。
男女の登用差を縮める|雇用の安定・待遇の公平性 3→5点
現在は3/5点です。
正規雇用の男女賃金比83.2%、女性管理職比率7.7%です。
女性管理職比率を15%以上、正規雇用男女賃金比を90%以上へ高め、同一等級内でも大きな差がないことを公開できれば5/5点を検討できます。
改善すると+2点で、総合84→86点です。
参考企業はイオン商品調達株式会社です。同社は正規雇用の男女賃金比106.0%を公開しており、現行企業審査では「雇用の安定・待遇の公平性」4/5点です。旭化成も賃金制度だけでなく、管理職登用を含めた実際の結果を縮めることが参考になります。
死亡・後遺症災害ゼロを継続する|労働安全・健康 8→10点
現在は8/10点です。
死亡災害0は達成しましたが、後遺症災害2件が発生し、国内グループ休業度数率も0.29です。
設備の本質安全化、非定常作業の手順標準化、センサーによる危険予兆検知を進め、死亡・後遺症災害0を複数年継続し、休業度数率を0.1以下にできれば10/10点を検討できます。
改善すると+2点で、総合84→86点です。
参考企業はKDDI株式会社です。現行企業審査では死亡事故0件、労働災害1件、度数率0.05まで公開しており、事故結果を具体的に確認できます。業種の事故リスクは異なりますが、「事故を結果指標まで公開し低水準を継続する」という点は参考になります。
AI削減時間を残業・教育へ直接返す|改善成果の人間への還元 4→5点
現在は4/5点です。
月2,157時間、年間1,820時間という削減量は明確ですが、その時間が部署別にどれだけ残業減少、教育、休暇へ移ったかまでは公開されていません。
例えば「生成AI導入部門の残業を前年比20%削減」「削減時間の30%を研修・研究へ再配分」といった使い道まで測定して公開できれば5/5点を検討できます。
改善すると+1点で、総合84→85点です。
参考企業はイオンリテール株式会社です。同社はAI発注で1部門あたり約90分だった発注作業を約45分へ半減させています。旭化成は削減時間の規模ではさらに大きいため、次は削減した時間の行き先まで示すことで満点へ近づけます。
RTO・代替生産率を公開する|供給継続・復旧能力 4→5点
現在は4/5点です。
BCP訓練、代替資材調達、サイバー監視は確認できますが、主要製品・システムごとの復旧目標時間や代替生産率は公開情報が不足しています。
例えば主要製品について「工場停止後24時間以内に代替生産判断」「第二拠点で平常時供給量の80%を3日以内に確保」など、外部から確認できる目標と訓練実績を公開し、その水準を達成できれば5/5点を検討できます。
改善すると+1点で、総合84→85点です。
参考企業はセブン銀行株式会社です。同社はATM稼働率や東西のシステム拠点など、サービスを止めない仕組みを利用者が確認できる形で公開しています。
次のSランクへ上がるための具体例
| 改善項目 | 具体的な達成条件 | 現在点→改善後 | 加点 |
|---|---|---|---|
| 雇用の安定・待遇の公平性 | 女性管理職15%以上、正規雇用男女賃金比90%以上 | 3→5 | +2 |
| 労働安全・健康 | 死亡・後遺症災害0を複数年、休業度数率0.1以下 | 8→10 | +2 |
| 改善成果の人間への還元 | AI削減時間を部署別残業・教育・休暇へ接続して公開 | 4→5 | +1 |
| 供給継続・復旧能力 | 主要製品のRTO・代替生産率と訓練実績を公開 | 4→5 | +1 |
| 合計 | 84→90 | +6 |
この4項目を実際に改善できれば、総合84点から90点となり、シビックランクSへ上がります。
つまり、旭化成が次のランクへ上がるためには、AIをさらに導入するだけでは足りません。
女性が上位職へ進める結果を出し、後遺症を残す事故をゼロへ近づけ、AIで浮いた時間を人の自由時間・教育へ戻し、工場が止まった場合にどれだけ早く別拠点へ切り替えられるかまで数値で示すことが必要です。
出典一覧
1.旭化成株式会社 第135期有価証券報告書・従業員の状況
2.旭化成株式会社「ESGデータ」
3.旭化成株式会社「サステナビリティ・マネジメント」
4.旭化成株式会社「会社概要」「ひと目でわかる!旭化成」
5.旭化成株式会社「サンフォート TAシリーズ」
6.旭化成株式会社「森林由来J-クレジット創出支援システム」
7.Indeed「旭化成株式会社の社員クチコミ」
8.旭化成株式会社・有価証券報告書「労働組合の状況」
9.旭化成株式会社「人権」
10.旭化成株式会社「サステナビリティ・マネジメント」安全実績
11.旭化成株式会社「品質保証」
12.転職会議「旭化成株式会社」
13.旭化成株式会社「生成AIを新規用途探索の自動化や製造現場の技術伝承において活用開始」
14.旭化成株式会社「サンフォート TAシリーズ」
15.旭化成株式会社「森林由来J-クレジット創出支援システム」
16.旭化成株式会社 DX関連情報
17.旭化成株式会社 過年度・最新有価証券報告書
18.旭化成株式会社「リスクマネジメント」
19.旭化成株式会社「保安防災」
20.旭化成株式会社 先端半導体材料関連ニュース
21.旭化成株式会社「令和8年熊本地震で被災された方々と被災地への支援について」
22.旭化成株式会社「品質保証・リスク管理・安全関連公開情報」
シビックランクの基準
| シビックランク | 点数 |
|---|---|
| S | 90~100点 |
| A | 80~89点 |
| B | 70~79点 |
| C | 60~69点 |
| D | 50~59点 |
| E | 40~49点 |
| F | 20~39点 |
| G | 0~19点 |
旭化成株式会社は84点のため、今回のシビックランクはAです。
情報ランクの基準
| 情報ランク | 基準 |
|---|---|
| S | 公的機関、裁判所、規制当局、独立した第三者機関による調査・監査・検証・認証 |
| A | 企業公式資料、採用情報、公式声明・SNS、実名・役職等を確認できる公表情報 |
| B | 従業員・元従業員の口コミ、一般SNS、匿名掲示板など、発信者との関係を独立に確認しにくい情報 |
有価証券報告書など法定開示や公的機関による資料はS相当の情報として重視します。旭化成公式のESG、サステナビリティ、ニュースリリースはAとして扱います。Indeed・転職会議などの口コミはBとして扱い、会社公式・公的データと照合して使用します。