私たちは、企業の商品を購入したり、サービスを利用したりすることで、そこで働く人たちの未来を変えることができます。
働く人に十分な賃金を払い、休暇を確保し、安全な職場をつくり、人の負担を減らす企業の商品やサービスが選ばれれば、そうした企業により多くの売上が集まります。その結果、働く人を大切にする経営を続けやすくなります。
反対に、低賃金や長時間労働、安全上の問題を改善しない企業の商品やサービスが売れ続ければ、そうした働かせ方のままでも事業を続けることができます。
だからこの企業審査では、「私たちがお金を使うなら、どの企業を選ぶことが、そこで働く人にとってより良い社会につながるのか」という視点から企業を評価します。
なぜ企業を審査するのか?――このサイトの目的と、利用するメリット
今回審査する東洋紡株式会社は、総合75点、シビックランクBです。
東洋紡株式会社の特に強い点は、年次有給休暇取得率80.8%、男性育児休業取得率116.2%という働き方の実績に加え、つるがフイルム工場のAI予兆検知で異常8件に早期対応し、従来より10時間以上の復旧作業を削減したことです。そのため、この企業の商品を購入したりサービスを利用したりすれば、働く人が休みを確保しやすく、工場では異常発生後の長時間の復旧作業を減らしながら製品を安定供給できる社会につながる可能性が高まります。
一方で、改善点として、全労働者の男女賃金比率66.8%、女性管理職比率5.6%という大きな結果差が残ることに加え、2026年9月にはグループ会社のメールアカウントへの不正アクセスから約1,500件の不審メールが送信され、別のグループ会社従業員2人にもフィッシング被害が広がったことが残ります。
この記事では、東洋紡株式会社の強みと課題をさらに詳しく企業審査していきます。
東洋紡株式会社の企業審査結果
東洋紡株式会社は、フィルム、ライフサイエンス、環境・機能材、機能繊維などを扱う素材メーカーです。2026年3月末時点の従業員数は単体2,885人、連結9,398人です。単体の平均年齢は40.1歳、平均勤続年数14.2年、平均年間給与は685万3,737円でした。[出典1・2]
2025年度には年休取得率80.8%、過重労働者比率0.13%、男性育児休業取得率116.2%を公表しています。一方、女性管理職比率は5.6%、男女賃金比率は全労働者66.8%、正規雇用68.8%でした。[出典2・3]
| 評価軸 | 点数 |
|---|---|
| Safety | 36/50 |
| Innovation | 21/25 |
| Protection | 18/25 |
| 総合点 | 75/100 |
| シビックランク | B |
評価時点:2026年10月13日
主な強み
・平均年間給与685万3,737円、前年比6.8%上昇
・年次有給休暇取得率80.8%
・過重労働者比率0.13%で前年0.26%から改善
・年間休日123日
・男性育児休業取得率116.2%、男性の平均育休日数35.7日
・育児短時間勤務108人、在宅勤務制度利用者1,821人
・重大労働災害0件、火災・爆発0件
・休業災害度数率0.62を公開
・製品事故0件、製品安全・品質保証教育100%
・コンプライアンス相談100件の内訳と対応フローを公開
・AI予兆検知で異常8件へ早期対応し、復旧作業を10時間以上削減
・抗体医薬品の精製工程を4分の1に削減できる分離膜を開発
・ウイルス除去膜で処理時間を3分の1以下へ短縮
・2026年3月期の研究開発費141億13百万円
・主要拠点で大規模地震を想定したBCP訓練を実施
・複数国・地域からの調達、代替輸送手段・ルートを整備
・AIを活用した24時間のサイバー監視と自動遮断
・2026年熊本地震で非常用トイレ16,800回分相当、冷感敷きパッド200枚、義援金1,000万円を支援
主な課題
・全労働者の男女賃金比率66.8%、正規雇用68.8%
・女性管理職比率5.6%
・従業員1人当たり教育時間12.21時間で目標21時間に未達
・休業災害度数率0.62で自社目標0.25以下に未達
・2020年の犬山工場火災では従業員2人が死亡、1人が負傷
・過去にPBT樹脂「プラナック」等で認証に関する不適切事案が発生
・AIや自動化で削減した時間が、賃金・休日・人員配置へどれだけ還元されたか全社での定量開示が不足
・単体従業員数は3,030人から2,885人へ減少しているが、AI・自動化との因果は確認できない
・2026年9月、グループ会社でメールアカウントへの不正アクセスが発生
・約1,500件のフィッシング誘導メールが送信され、別会社従業員2人にも被害が拡大
・主要事業のRTO・RPO、代替生産能力、実測復旧時間の横断開示が不足
事業内容と人間への貢献
東洋紡は、包装用・工業用フィルム、診断薬用酵素、医用膜、医療用具、機能フィルター、水処理膜、エンジニアリングプラスチック、機能繊維などを製造・販売しています。[出典1]
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 会社名 | 東洋紡株式会社 |
| 英文名 | TOYOBO CO., LTD. |
| 創立 | 1882年5月3日 |
| 設立 | 1914年6月26日 |
| 代表者 | 代表取締役社長 竹内郁夫 |
| 本社 | 大阪府大阪市北区梅田一丁目13番1号 |
| 資本金 | 517億30百万円 |
| 従業員数 | 単体2,885人、連結9,398人(2026年3月末) |
| 平均年間給与 | 685万3,737円 |
| 主な事業 | フィルム、ライフサイエンス、環境・機能材、機能繊維・商事等 |
主な事業内容
フィルム分野では、食品などに使われる包装用フィルムや工業用フィルムを扱います。ライフサイエンス分野では、診断薬用酵素、医薬品、医用膜、医療機器などを提供します。
環境・機能材では、エンジニアリングプラスチック、接着剤、機能フィルター、水処理膜、高機能繊維などを扱います。機能繊維ではエアバッグ用生地など、人の安全に直接関わる材料も供給しています。[出典1]
主な利用企業・取引先
東洋紡の素材は、食品・飲料、医薬品、医療、化学、自動車、電子・電機、水処理、衣料など幅広い産業で使われます。
消費者が東洋紡の社名を直接見る機会が少ない製品でも、食品を守る包装、医薬品の製造工程、透析などの医療、水や空気の浄化、自動車の安全部材を通じて生活を支えています。
事業による人間への貢献
東洋紡の技術は、人が安全に食べる、治療を受ける、水や空気をきれいにする、工場で効率よく生産するといった場面に使われています。
例えば、抗体医薬品の精製工程向けに開発した分離膜デバイスは、従来のカラムクロマト方式と比べて作業工程数を4分の1に減らせます。工程が減れば、製薬現場で人が行う洗浄・精製・回収などの作業を減らし、医薬品を作る時間や設備負担を小さくできます。[出典10]
別のウイルス除去膜では、従来品より透過量を約2倍にし、ウイルス除去工程の処理時間を3分の1以下へ短縮できます。医薬品生産のボトルネックが短くなれば、同じ設備と人員でより多くの製造を進めやすくなります。[出典11]
Safety|36/50
Safetyでは、賃金、休息、雇用の公平性、育児・介護、人権、工場の労働災害と、製品の品質・安全を評価します。
東洋紡は有休、育休、給与、安全事故、相談件数などを具体的に公開している点が強みです。一方、男女賃金・管理職格差と、休業災害度数率が自社目標を上回っている点は明確な改善課題です。
賃金・利益の還元|6/10
2026年3月期の東洋紡単体の平均年間給与は685万3,737円で、前年から6.8%上昇しました。賞与と基準外賃金を含む有価証券報告書の数値です。[出典2]
平均給与が前年から大きく増えている点を評価します。2025年度入社実績の初任給は、学部卒26万円、修士修了28万円、博士修了30万7,600円で、時間外勤務手当も別途支給されます。[出典4]
一方、賃金中央値や既存社員のベースアップ率は公表されておらず、男女賃金比率は全労働者66.8%、正規雇用68.8%です。会社は同一労働で賃金制度上の差はなく、等級構成や夜勤従事者の男女差などを要因として説明していますが、実際に受け取る年間賃金には大きな差が残っています。[出典2]
そのため6/10点です。
8/10点を検討するには、既存社員のベースアップ率と職種・等級別の賃金中央値を毎年公開し、男女賃金比率を80%以上へ改善しながら、物価上昇を上回る賃金改善を複数年確認する必要があります。
労働時間・休息|8/10
2025年度の年次有給休暇取得率は80.8%で、会社目標75%以上を上回りました。過重労働者比率は0.13%で、2024年度の0.26%から半減しています。[出典3]
採用情報では年間休日123日、完全週休2日制です。[出典4]
転職会議の投稿者集計では残業15.8時間/月、有給消化率64%台です。2025年頃在籍の30代後半男性・正社員・生産技術/生産管理の投稿には「昔と比べ残業も減り、年休も取得しやすい為、ワークライフバランスは良い方だと思う。」とあります。[出典18・情報ランクB]
一方、2026年頃在籍の20代後半男性・正社員・社内SEからは「部署や時期にもよると思うけど、正直ワークライフバランスはあまり良くないと感じた。」という投稿もあります。全社平均では改善していても、繁忙部署では負担差が残る可能性があります。[出典18・情報ランクB]
有休80.8%と過重労働者比率の改善を評価して8/10点です。
10/10点を検討するには、会社全体の月平均残業、部署別残業、月45時間超・60時間超の人数を公開し、有給取得率90%以上、長時間労働者ほぼ0を複数年維持する必要があります。
雇用の安定・待遇の公平性|3/5
2026年3月末の平均勤続年数は14.2年で、2027年卒・2028年卒の新卒採用も継続しています。2025年の新卒採用実績は62人でした。[出典2・4]
単体従業員数は2025年3月末の3,030人から2026年3月末の2,885人へ145人減っています。一方、AIや自動化を理由とする大規模解雇・希望退職・採用停止を裏づける公開情報は確認していません。
公平性では、女性管理職比率5.6%、男女賃金比率66.8%です。正規雇用でも68.8%にとどまります。2026年度からの会社目標も2030年度末の女性管理職比率6.5%以上であり、管理職の男女差を大きく縮めるには低い目標水準です。[出典2・5]
長期雇用と採用継続を評価する一方、男女の結果差が大きいため3/5点です。
4~5点を検討するには、女性管理職比率20%以上、正規雇用の男女賃金比率90%以上を実現し、昇進率・職位構成を男女別に公開する必要があります。
福利厚生・育児・介護|5/5
2025年度の男性育児休業取得率は116.2%で、男性79人が取得しました。男性の平均育休日数は35.7日まで伸びています。女性の育休取得率は125%、育児短時間勤務利用者は108人、在宅勤務制度利用者は1,821人です。[出典3]
育児休業、育児・介護短時間勤務、テレワーク、フレックスタイムなどを併用でき、制度だけでなく利用人数まで公開されています。
取得率が100%を超えるのは、当年度に子どもが生まれた人を分母にしつつ、前年度出生分などの取得者が当年度の分子へ入る場合があるためです。
制度と利用実績の両方が確認できるため5/5点です。
人権・ハラスメント・労使関係|4/5
東洋紡グループは社内、外部専門会社、社外弁護士、監査等委員会など複数の相談窓口を設けています。相談者の秘密保持、不利益取扱いの禁止、匿名相談にも対応しています。[出典7]
2025年度の相談件数は100件で、そのうちコミュニケーション・人間関係・ハラスメントが42件、人事・労務関係が15件でした。問題が認められた場合は是正措置、再発防止、行為者への指導・懲戒まで行う対応フローも公開しています。[出典7]
相談が42件あることだけで職場全体が悪いとは判断しません。むしろ相談件数と内容を公表し、調査・是正手順まで示していることは透明性として評価できます。
一方、ハラスメントとして事実認定された件数、是正完了率、再発率は公表されていません。
そのため4/5点です。認定件数と是正・再発結果まで毎年公開できれば5/5点を検討できます。
労働安全・健康|6/10
2025年の東洋紡グループは重大災害0件、火災・爆発0件でした。休業災害度数率は協力事業所を含め0.62です。敦賀、岩国、宇都宮、犬山の4拠点でISO45001を取得しています。[出典5]
厚生労働省の2025年労働災害動向調査では、製造業の度数率は1.33です。東洋紡の0.62は製造業平均の半分以下であり、相対的には低い事故頻度です。[出典6]
一方、会社自身の目標は0.25以下であり、実績0.62は目標の2倍を超えました。また2020年9月の犬山工場火災では従業員2人が死亡、1人が負傷しています。現在は事故の教訓を伝える安全・防災教育や設備改善を進め、2025年の重大災害・火災は0ですが、過去の重大事故を他の項目で相殺しません。[出典5・16]
業界平均より低い度数率と重大災害0を評価しつつ、自社目標未達と重大事故の履歴を踏まえて6/10点です。
8/10点を検討するには、重大災害0を継続し、休業災害度数率0.25以下を複数年達成し、事故類型・原因・再発防止後の推移を公開する必要があります。
商品・サービスの安全|4/5
2025年度の製品事故は0件、製品安全・品質保証教育の実施率は100%です。品質保証本部会を毎月開き、PS/QA推進委員会を年6回実施しています。2021年度からは事業部門、品質保証、内部監査の3ラインで不正の発見・予防を行っています。[出典8]
一方、2020年にはPBT樹脂「プラナック」のUL確認試験で実際に販売する商品と異なる組成のサンプルを提出していた問題が判明し、追加調査では他の6製品でもUL認証に関する不適切事案が確認されました。原因として監査・チェック体制の不備、内部通報制度の機能不全などが挙げられました。[出典17]
その後、品質管理体制とガバナンスを再構築し、事業を承継した東洋紡エムシーは2024年5月に関連するISO9001認証を再取得しています。[出典17]
現在の製品事故0・教育100%と改善を評価する一方、重大な品質不正の履歴を踏まえて4/5点です。重大事故・認証不正0を複数年継続し、外部監査結果も継続公開できれば5/5点を検討できます。
従業員・元従業員の口コミ
転職会議の投稿者集計は残業15.8時間/月、有給消化率64%台です。公式の有休取得率80.8%とは母集団や算出方法が異なります。[出典18]
2025年頃在籍の30代後半男性・正社員・生産技術/生産管理は、「昔と比べ残業も減り、年休も取得しやすい為、ワークライフバランスは良い方だと思う。」と投稿しています。[出典18、情報ランクB]
一方、2026年頃在籍の20代後半男性・正社員・社内SEは、「部署や時期にもよると思うけど、正直ワークライフバランスはあまり良くないと感じた。」と投稿しています。[出典18、情報ランクB]
会社全体では休暇取得が改善している一方、職種・部署による仕事量の差を確認する必要があります。
SNS・匿名掲示板の確認結果
X、5ちゃんねる、爆サイについて、東洋紡、工場、残業、給料、退職、パワハラ、事故、AI、人員削減などを個別に検索しました。
匿名掲示板では工場の安全や職場環境に関する書き込みが見つかるものの、投稿者が東洋紡の従業員であること、勤務時期、職種を独立して確認できません。今回の採点を変更する根拠には使用していません。
Xでも、2026年時点の従業員本人と確認でき、今回の採点を変更できる具体的な投稿は確認できませんでした。
Innovation|21/25
Innovationでは、工場の異常対応や医薬品製造の複雑な工程を技術で減らし、その削減効果が人へどの程度返っているかを評価します。
東洋紡はAI予兆検知で実際の復旧作業を10時間以上削減し、医薬品用膜では作業工程や処理時間を3分の1~4分の1へ減らしています。定量的な改善実績は強い一方、社内DXによる削減時間を全社の残業・休日・人員配置へどう返したかの開示はまだ不足しています。
作業負担・危険の削減|8/10
2025年、東洋紡はJR西日本と共同開発したAI異常予兆検知システムを、つるがフイルム工場へ導入しました。従来は工程値が基準を外れたり異常が発生した後にオペレーターが対応していましたが、AIは正常範囲にある段階から不具合の兆候を検知します。[出典9]
実際にAIが検知した異常8件で、要因特定、早期対応、予防保全を行い、異常発生後に対応する場合と比べて復旧作業時間を10時間以上削減し、生産ロスを防ぎました。異常設備の復旧作業を減らすことは、作業時間だけでなく、停止設備周辺での緊急対応や夜間対応などの負担を減らす方向にも働きます。[出典9]
一方、現時点ではつるがフイルム工場の実績が中心で、全工場合計の削減時間や事故減少率は公表されていません。
そのため8/10点です。主要工場へ展開し、全社で年間削減時間、緊急対応回数、危険作業時間を定量公開できれば10/10点を検討できます。
商品・サービスの改善|5/5
2025年に開発した抗体医薬品精製用の分離膜デバイスは、従来のカラムクロマト方式に比べて作業工程数を4分の1へ削減できます。大型洗浄設備や廃液処理設備も不要にでき、交換頻度や労務費の低減にもつながります。[出典10]
同年に開発したウイルス除去膜は、従来品比で単位時間当たりの透過量を約2倍にし、ウイルス除去工程の処理時間を3分の1以下へ短縮できます。[出典11]
顧客側の人手・時間・設備負担を具体的な倍率で減らす製品改善が確認できるため5/5点です。
改善成果の人間への還元|3/5
2025年度は平均年間給与が前年比6.8%上昇し、年休取得率80.8%、過重労働者比率0.13%まで改善しました。[出典2・3]
同時期にAI予兆検知や業務変革を進めていますが、「AIで削減した10時間が従業員の残業削減へ何時間返ったか」「自動化した部署で休日・教育・賃金がどれだけ改善したか」という直接の因果は公表されていません。
そのため3/5点です。
5/5点を検討するには、AI・自動化導入部門で導入前後の残業、休日、配置転換、再教育、賃金を同じ期間で公開し、複数拠点で残業10%以上削減や教育時間増加など、人への還元を継続確認する必要があります。
研究開発・現場改善の継続|5/5
2026年3月期の研究開発費は141億13百万円です。2022年3月期以降、毎年100億円を超える研究開発費を継続しています。[出典12]
2030中期経営計画では、先端材料、ヘルスケア、環境・エネルギーを重点領域とし、ロボティクスやAIを含む業務変革も進めています。AI予兆検知、医薬品用分離膜、ウイルス除去膜など、研究から現場実装まで複数分野で成果が続いています。[出典9~12]
継続的な研究開発と現場実装が確認できるため5/5点です。
自動化・AI導入後の雇用状況
東洋紡単体の従業員数は2025年3月末の3,030人から2026年3月末の2,885人へ145人減少しました。連結では9,976人から9,398人へ減っています。[出典1・2]
一方、2027年卒・2028年卒の新卒エントリーやキャリア採用は現在も継続しています。2025年の新卒採用実績は62人です。[出典4]
2025年度決算では連結子会社に関する割増退職金の計上がありますが、東洋紡単体のAI予兆検知や自動化による人員整理と結びつける根拠はありません。従業員数の減少を「AIで人を削減した」とは評価しません。
公式資料、求人、口コミ、SNS・匿名掲示板を確認した範囲では、AI導入を理由にした東洋紡単体の大規模希望退職、採用停止、一斉解雇を示す情報は確認できませんでした。
今後、AI導入部門の配置転換人数、再教育時間、採用人数、退職者数を公開すれば、「人の作業を減らした結果、人がどう扱われたか」をより正確に評価できます。
Protection|18/25
Protectionでは、大規模地震、原材料途絶、物流障害、サイバー攻撃が起きても、医療・包装・水処理などの素材供給を続けられるかを評価します。
東洋紡は主要拠点で地震BCP訓練を実施し、複数地域調達や代替輸送、AIを使った24時間サイバー監視を整備しています。一方、2026年9月には実際にグループ会社のメールアカウントが侵害され、フィッシング被害が別会社へ広がりました。主要事業の実測復旧時間も十分に公開されていません。
災害への備え・訓練|4/5
東洋紡グループは2024年度に震度5強以上の大規模地震を想定したBCPガイドラインを策定し、被災状況の確認、連絡、指揮責任者、復旧体制、優先順位を定めました。2025年度には各事業部のBCPに基づき、主要拠点で大規模地震を想定した訓練を実施しています。[出典13]
例えば南海トラフ地震で工場や交通網が同時に被災した場合、誰が被害状況を集約し、どの製品・設備から復旧するかを事前に決めておけば、現場がその場で優先順位を決める時間を減らせます。
計画だけでなく主要拠点で訓練まで行っているため4/5点です。
一方、訓練で何分で安否確認が完了したか、何時間で代替運用へ切り替えられたかは公表されていません。実測結果まで公開できれば5/5点を検討できます。
生産・物流・調達の代替|4/5
東洋紡は原材料調達について複数の国・地域からの供給を進め、物流業者と代替輸送手段・代替輸送ルートを設定しています。国内にも敦賀、岩国、宇都宮、高砂、大津、大館など複数の生産拠点があります。[出典1・13]
例えば特定地域の港湾や道路が使えなくなった場合、別の国・地域から原料を調達し、物流会社と別ルートへ切り替える仕組みがあれば、包装材や医療関連素材の供給停止期間を短くできます。
複数調達と代替輸送を具体化しているため4/5点です。
一方、主要製品ごとに別工場で何%代替できるか、切替に何時間かかるかは公表されていません。代替生産能力と切替訓練の実測値まで示せれば5/5点を検討できます。
サイバー防衛・情報保護|3/5
2025年度はネットワーク・コンピューターセキュリティ基盤の刷新を100%完了し、情報セキュリティ教育を26回実施しました。2025年度のグループ事故件数は0件でした。AIを使った24時間監視、重大インシデント検知時の自動遮断、インシデント対応訓練、IT-BCPも実施しています。[出典13]
しかし2026年9月、グループ会社の東洋紡せんいで従業員のメールアカウントが不正アクセスを受け、約1,500件のフィッシング誘導メールが送信されました。その後、メールを受け取った東洋紡エムシーの従業員2人にもフィッシング被害とアカウントへの不正アクセスが確認されました。[出典14]
監視体制や教育が存在していても、実際に認証情報を狙う攻撃がグループ内で連鎖したため満点にはできません。
一方、公表後にはパスワード変更や認証セッション失効などの対応が行われ、基幹システムへの侵入や具体的な二次被害は公表時点で確認されていません。
そのため3/5点です。フィッシング耐性の高い多要素認証、条件付きアクセス等を強化し、重大なアカウント侵害0を複数年継続し、検知・封じ込め・復旧時間を公開できれば4~5/5点を検討できます。
供給継続・復旧能力|3/5
大規模地震BCP、複数地域調達、代替輸送、IT-BCPを整備しており、供給を止めないための仕組みは確認できます。[出典13]
一方、主要製品のRTO、RPO、代替生産量、供給維持率、工場停止から実際に何時間で復旧したかという横断的な結果は公表されていません。
医療膜や包装材など生活に必要な製品を扱う以上、計画の存在だけでなく「止まった後に何時間で戻せるか」が重要です。
そのため3/5点です。主要事業で年1回以上の停止・復旧訓練を行い、目標時間内の復旧と代替供給率を公開できれば4~5/5点を検討できます。
危機時の市民への対応|4/5
2026年の熊本地震で、東洋紡グループは日本赤十字社を通じて1,000万円を寄付しました。さらに東洋紡のフィルムを使用した非常用トイレセット140セット、合計16,800回分相当と、東洋紡エムシーの素材を使った接触冷感敷きパッド200枚を被災地へ提供しています。[出典15]
例えば断水で水洗トイレが使えない避難所では、非常用トイレがあれば排泄物を衛生的に処理できます。16,800回分は、単なる金銭寄付ではなく、被災者が毎日直面する衛生問題を直接軽減する数量です。猛暑時には冷感敷きパッドも睡眠時の暑熱負担を軽減できます。
2024年の能登半島地震でも非常用トイレ12,000回分相当を届けるなど、素材メーカーとして自社技術を災害支援へ活用した実績があります。
具体的な数量と複数災害での継続支援を評価して4/5点です。
満点としない理由は、自治体等との常設の緊急供給協定、初動時間、継続供給能力までの公開が限定的だからです。
良いニュース・最近の前向きな動き
最近の東洋紡では、人の作業時間を直接減らすAI・膜技術と、災害時に自社素材を生活支援へ使う取り組みが進んでいます。これらはInnovationとProtectionに関係し、東洋紡の製品・サービスが選ばれることで、工場や医薬品製造の作業負担が減り、災害時には衛生・暑熱対策に使える物資の供給を支えることにつながります。
2026年8月 熊本地震へ非常用トイレ16,800回分相当などを提供(Protection)
東洋紡グループは、義援金1,000万円に加え、非常用トイレ16,800回分相当と接触冷感敷きパッド200枚を提供しました。[出典15]
断水時にトイレを流せない避難所では、衛生状態の悪化が感染症や生活ストレスにつながります。自社フィルムを使った非常用トイレを具体的な数量で届けたことは、素材技術を被災者の生活維持へ直接つなげた実績です。
2025年9月 AI予兆検知で復旧作業を10時間以上削減(Innovation)
つるがフイルム工場でAIが8件の異常兆候を検知し、異常発生前に予防保全へつなげました。従来の異常発生後対応と比べ、復旧作業を10時間以上削減しました。[出典9]
工場停止後に担当者が原因を探し続ける時間を減らし、生産ロスと緊急復旧作業の両方を減らせる点を評価します。今後、他工場へ展開し、全社の削減時間まで公開できればさらに評価が上がります。
2025年度 年休取得80.8%、過重労働者比率0.13%(Safety)
年休取得率は会社目標75%を上回る80.8%でした。過重労働者比率は前年0.26%から0.13%へ半減しました。[出典3]
休暇を実際に使える人が増え、極端な長時間労働に該当する人を減らしているため、働く人の自由時間・睡眠・健康を守る結果として評価できます。
悪いニュース・問題となった動き
直近の問題では、男女の賃金・管理職格差、休業労災の自社目標未達、2026年9月のグループ不正アクセスが重要です。これらはSafetyとProtectionに関係し、改善されなければ、女性が高い職位・賃金へ進みにくい状態、工場で休業を伴う事故が起きるリスク、従業員や取引先がフィッシング被害を受けるリスクが残ります。
2026年9月 グループ会社で約1,500件の不審メール、従業員2人にも被害(Protection)
東洋紡せんいの従業員メールアカウントが第三者の不正アクセスを受け、社内外へ約1,500件のフィッシング誘導メールが送信されました。その後、受信した東洋紡エムシーの従業員2人にもフィッシング被害と不正アクセスが確認されました。[出典14]
2025年度にはセキュリティ事故0件を公表していましたが、翌年度に実事故が起きています。教育・監視だけでなく、認証情報が盗まれても侵入を止める仕組みと、グループ内への被害連鎖を防ぐ設計の強化が必要です。
2025年度 休業災害度数率0.62で自社目標0.25以下を未達(Safety)
2025年の重大災害と火災・爆発は0件でしたが、休業災害度数率は0.62で目標0.25以下を上回りました。[出典5]
製造業平均1.33よりは低いものの、東洋紡自身が目指す水準には届いていません。重大災害ゼロを維持しながら、休業を伴う事故の頻度をさらに半分以下へ下げる必要があります。
2025年度 男女賃金比率66.8%、女性管理職5.6%(Safety)
全労働者の男女賃金比率は66.8%、正規雇用でも68.8%です。女性管理職比率は5.6%でした。[出典2・5]
同一労働の賃金制度そのものに差はないと会社は説明していますが、女性が高い等級、管理職、夜勤を含む職務へ進む割合が低い構造が年間給与の差として表れています。2030年度の女性管理職目標6.5%では格差解消まで時間がかかるため、登用目標をさらに高める必要があります。
総合評価と、これから改善してほしいこと
東洋紡株式会社は75点・シビックランクBです。次のAランクは80点からなので、あと5点必要です。
東洋紡は、年休80.8%、男性育休116.2%、重大災害0、製品事故0などSafetyの結果を幅広く公開し、AIや医薬品用膜では人の作業を何時間・何分の1へ減らしたかまで示しています。災害時には自社素材を使った生活物資を具体的な数量で届けています。
一方、Aランクへ上がるには、工場の休業災害を自社目標まで下げ、AIで減らした工数を働く人の時間・教育・配置へどう返したかを示し、グループのフィッシング被害を再発させないことが重要です。
休業災害度数率を自社目標0.25以下へ下げてほしい|労働安全・健康:6→8/10
現在の「労働安全・健康」は6/10点です。
2025年は重大災害0、火災・爆発0で、度数率0.62も製造業平均1.33を下回ります。一方、自社目標0.25以下には届いていません。[出典5・6]
企業が実行してほしいのは、休業災害を転倒、挟まれ・巻き込まれ、切創、設備、化学物質などに分類し、発生工程ごとの原因・対策・再発件数を毎年公開することです。高リスク工程では設備側の安全対策を優先し、個人の注意だけに依存しない設計へ変える必要があります。
重大災害0を継続し、休業災害度数率0.25以下を複数年達成できれば6→8/10点、+2点を検討できます。
現在:6/10点
改善後:8/10点
加点:+2点
総合:75→77点
ランク:Bのまま
参考企業はKDDI株式会社です。当サイトの現行審査では、2025年度単体の労働災害1件、死亡0件、重篤工事事故0件、度数率0.05、強度率0.00382まで公開し、「労働安全・健康」8/10点、総合82点・Aです。業種は異なりますが、事故頻度と重大度を数値化して管理する方法が参考になります。[比較資料19]
AI・自動化で減らした時間を人へ返した結果を公開してほしい|改善成果の人間への還元:3→5/5
現在の「改善成果の人間への還元」は3/5点です。
つるがフイルム工場ではAIで復旧作業を10時間以上削減しています。全社でも年休取得率や過重労働者比率は改善していますが、AI・自動化と働き方改善の因果は公表されていません。[出典3・9]
企業が実行してほしいのは、主要なAI・自動化施策ごとに削減人時を集計し、その部門の残業、有休、教育時間、配置転換、採用、離職を導入前後で公開することです。
複数工場で作業時間20%以上削減を確認し、その時間を残業10%以上削減、教育時間増加、別業務への配置転換などへ継続的に還元できれば3→5/5点、+2点を検討できます。
現在:3/5点
改善後:5/5点
加点:+2点
総合:77→79点
ランク:Bのまま
参考企業はキリンビバレッジ株式会社です。当サイトの現行審査では、最大約25kgの茶葉原料を扱う工程をロボット化し、物流自動化で生産性42%向上と人員の別業務への再配置を確認し、「改善成果の人間への還元」4/5点、総合74点・Bです。東洋紡には、さらに一歩進めて複数拠点で人への還元まで追跡することが参考になります。[比較資料20]
フィッシング被害を再発させず認証防御と復旧結果を公開してほしい|サイバー防衛・情報保護:3→4/5
現在の「サイバー防衛・情報保護」は3/5点です。
AIによる24時間監視、基盤刷新100%、教育26回などの対策は強い一方、2026年9月にはグループ会社のアカウント侵害から約1,500件の不審メールが送られ、別会社従業員2人にも被害が拡大しました。[出典13・14]
企業が実行してほしいのは、多要素認証をフィッシング耐性の高い方式へ強化し、条件付きアクセス、異常ログイン検知、認証セッション制御をグループ全体で統一することです。さらに、検知から遮断、パスワード・セッション失効、業務復旧までの時間を訓練と実事故の両方で測定する必要があります。
重大なアカウント侵害・情報漏えい0を複数年継続し、検知・封じ込め・復旧時間を公開できれば3→4/5点、+1点を検討できます。
現在:3/5点
改善後:4/5点
加点:+1点
総合:79→80点
ランク:Aへ上昇
参考企業は株式会社ミツウロコグループホールディングスです。当サイトの現行審査では、契約社員・協力会社を含むセキュリティ教育と抜き打ち標的型メール訓練などを確認し、「サイバー防衛・情報保護」4/5点、総合84点・Aです。[比較資料21]
次のAランクへ上がるための具体例
現在75点・Bで、Aランクは80点からです。あと5点必要です。
・重大災害0を維持し、休業災害度数率0.25以下を複数年達成する。事故類型・原因・再発防止結果も公開する。「労働安全・健康」6→8/10で+2点。
・AI・自動化の削減人時を全社集計し、複数工場で作業時間20%以上削減、その結果として残業10%以上削減、教育時間増加、配置転換などを確認する。「改善成果の人間への還元」3→5/5で+2点。
・グループ全体の認証防御を強化し、重大なアカウント侵害・情報漏えい0を複数年継続し、検知・遮断・復旧時間を公開する。「サイバー防衛・情報保護」3→4/5で+1点。
75点+2点+2点+1点=80点となり、シビックランクAへ到達します。
つまり、東洋紡が次のランクへ上がるためには、すでに進んでいる「休める働き方」と「人の作業を減らす技術」を、工場事故の削減、AI導入後の残業・配置転換、サイバー事故ゼロという結果へつなげることが最短です。
最終評価は、
Safety:36/50
Innovation:21/25
Protection:18/25
総合:75/100
シビックランク:B
とします。
出典一覧
1.東洋紡株式会社「会社概要」「事業内容」【情報ランクA】
2.東洋紡株式会社「有価証券報告書 第168期(2026年3月期)」【情報ランクS】
3.東洋紡株式会社「人材マネジメント」2025年度実績【情報ランクA】
4.東洋紡株式会社「新卒採用 募集要項」【情報ランクA】
5.東洋紡株式会社「安全・防災」2025年度実績【情報ランクA】
6.厚生労働省「2025年労働災害動向調査」【情報ランクS】
7.東洋紡株式会社「コンプライアンス」2025年度実績【情報ランクA】
8.東洋紡株式会社「品質」2025年度実績【情報ランクA】
9.東洋紡株式会社「製造工程の異常を予兆で捉えるAIシステムをJR西日本と共同開発」2025年9月16日【情報ランクA】
10.東洋紡株式会社「抗体医薬品製造プロセス精製工程向けに分離膜デバイスを新開発」2025年6月16日【情報ランクA】
11.東洋紡株式会社「バイオ医薬品精製プロセス向けウイルス除去膜を新開発」2025年5月19日【情報ランクA】
12.東洋紡株式会社「財務ハイライト」2026年3月期【情報ランクA】
13.東洋紡株式会社「リスクマネジメント」2025年度実績【情報ランクA】
14.東洋紡株式会社・東洋紡エムシー株式会社「グループ会社メールアカウントへの不正アクセス」2026年9月25日・30日【情報ランクA】
15.東洋紡株式会社「令和8年熊本地震による被害に対する支援について」2026年8月4日【情報ランクA】
16.東洋紡株式会社「犬山工場における火災について(経緯のまとめ)」2020年11月19日【情報ランクA】
17.東洋紡株式会社・東洋紡エムシー株式会社「プラナック等の品質不適切事案」「ISO9001認証再取得」【情報ランクA】
18.転職会議「東洋紡株式会社の社員口コミ・残業」2025~2026年投稿【情報ランクB】
19.シビックギルド「KDDI株式会社を企業審査」【比較資料】
20.シビックギルド「キリンビバレッジ株式会社を企業審査」【比較資料】
21.シビックギルド「株式会社ミツウロコグループホールディングスを企業審査」【比較資料】
シビックランクの基準
| ランク | 総合点 |
|---|---|
| S | 90~100点 |
| A | 80~89点 |
| B | 70~79点 |
| C | 60~69点 |
| D | 50~59点 |
| E | 40~49点 |
| F | 20~39点 |
| G | 0~19点 |
東洋紡株式会社は75点のため、今回の評価はシビックランクBです。
情報ランクの基準
| 情報ランク | 基準 |
|---|---|
| S | 行政、公的機関、裁判所、規制当局、独立第三者機関の調査・監査・検証・認証など、内容そのものに独立した裏づけがある情報 |
| A | 企業公式資料、採用情報、公式声明・SNS、氏名・役職・立場が確認できる記名取材や公表発言など、発信主体を確認できる公表情報 |
| B | 従業員・元従業員口コミ、一般SNS、匿名掲示板など、発信者の身元や対象企業との関係を独立に確認しにくい情報 |
