企業審査|100点制・第1版
ペットボトルを分別して捨てても、それが再び飲料ボトルに戻らなければ、新しい石油由来原料への依存は残ります。回収されたボトルが繊維や別用途へ一度だけ再利用されるのではなく、また飲み物の容器として戻り、何度も循環できるかは、私たちが普段買う水やお茶の容器そのものに関係する問題です。
情報ランク:A|滋賀県日野町でその「ボトルtoボトル」を担う企業の一つが豊通ペットリサイクルシステムズ株式会社です。同社は使用済みPETボトルを選別・粉砕・洗浄し、飲料ボトルに使える再生PETペレットへ戻す工場を運営しています。会社公式では飲料ボトル用リサイクルPET樹脂を年間4万トン生産できる設備を持ち、2022年10月から24時間のフル稼働へ移行しています。
情報ランク:A|豊田通商の最新KPIでは、2026年3月期に豊通ペットリサイクルシステムズがPETボトル18億本相当をリサイクルした実績が示され、2028年3月期には20億本を目標としています。単に工場を建てただけではなく、実際の処理量が十億本単位まで拡大しています。
情報ランク:A・S|この仕事が止まれば、自治体、事業所、商業施設などから集めた使用済みPETボトルを、再び飲料容器へ戻せる高品質な樹脂へ再生する国内経路が一つ失われます。キリンビバレッジ、アサヒ飲料、伊藤園などが参加する水平リサイクルでも、豊通ペットリサイクルシステムズが再原料化を担当する事例があります。2025年には食品接触用途に関するJCIIのリサイクルプラスチック材料認証を2件取得し、2026年3月にはISO 9001も取得しています。
情報ランク:S|一方、その工場を動かす製造職は日勤8時~18時、夜勤20時~翌6時の2交替・4勤2休です。2026年1月のハローワーク求人では月平均残業26時間、36協定の特別条項ではトラブル・短納期対応時に月78時間、年720時間まで延長できるとされています。年間休日131日、固定残業代なし、賞与6カ月という長所がある一方、夜勤を含む交替勤務の身体的負担は残ります。
さらに、製造拠点は日野町の1工場に集中しています。豊田通商グループでは情報セキュリティ規程、通信の常時監視、端末挙動監視・自動隔離などが公表されていますが、豊通ペットリサイクルシステムズ単体で工場が止まった場合にどこで代替生産し、何時間・何日で復旧するのかという具体的な復旧KPIは確認できませんでした。
本記事では、水平リサイクルという社会的価値だけでなく、その仕事を支える人の待遇、安全、技術の人間への還元、災害・サイバー・財務面まで含めて審査します。
結論:総合45点/100点、シビックランクE
適用基準:100点制・第1版
評価時点:2026年9月23日
豊通ペットリサイクルシステムズ株式会社の総合点は45点/100点、シビックランクはEとしました。
最大の長所は、水平リサイクルの実績と品質の具体性です。2026年3月期にはPETボトル18億本相当までリサイクル量を拡大。日野町工場は飲料ボトル用再生PET樹脂4万トン/年の生産能力を持ち、小牧市では市民が分別した年間約400トンのPETボトルを同社が再原料化し、キリンビバレッジ、アサヒ飲料、伊藤園の飲料ボトルへ戻す仕組みが構築されています。
また、異物の少ない事業系PETボトル専用ラインを用意し、従来より処理工程を短縮してエネルギー消費を減らし、再生樹脂の歩留まりを高める取り組みも進んでいます。2025年12月には三菱UFJ銀行の関東58支店から回収するボトルをこの専用ラインへ投入する仕組みが公表されました。
働く人への待遇でも、最新求人では基本給19万~27万5000円、固定残業代なし、前年度昇給月3500~6500円、賞与6カ月、年間休日131日です。2024年度には男性の育児休業対象者1人に対して1人が取得しています。
一方でSafetyでは、工場労働に重要な会社単体の労災件数、休業災害度数率、設備災害、熱中症等の結果を確認できず、労働安全・健康は0点としました。安全管理の担当職が存在することと、安全の結果が検証できることは別だからです。
Innovationでは、機械化された選別・洗浄・ペレット化工程や低異物専用ラインを評価します。しかし、「従来人が持っていた何kgの重量物を何回減らしたのか」「残業を何時間減らしたのか」「省人化で生まれた利益を賃金や休暇へどう返したのか」といった人間への還元KPIは確認できませんでした。
Protectionでは豊田通商グループのサイバー対策を評価できる一方、日野町の単一工場への生産集中が課題です。2026年3月期に2億5500万円の純利益へ黒字転換したことはプラスですが、工場停止時の代替生産拠点や復旧時間が見えません。
| 評価軸 | 得点 | 主な評価 |
|---|---|---|
| Safety | 26/50 | 賃金、休日、福利厚生、品質認証は評価。夜勤と安全KPI非公表が課題 |
| Innovation | 11/25 | 水平リサイクル技術・専用ラインは強い。作業負担削減と成果還元の数値が不足 |
| Protection | 8/25 | グループのサイバー対策と黒字転換を評価。単一工場と復旧情報不足が課題 |
| 総合 | 45/100 | シビックランクE |
基本情報
この会社を理解するうえで重要なのは、「PETボトルを回収する会社」ではなく、回収後のPETを再び飲料容器に使える原料へ戻す製造会社だという点です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 会社名 | 豊通ペットリサイクルシステムズ株式会社 |
| 設立 | 2020年7月 |
| 本社・工場 | 滋賀県蒲生郡日野町鳥居平観音平1680-1 |
| 代表者 | 代表取締役社長 金沢良親 |
| 資本金 | 5000万円 |
| 従業員数 | 87名(会社公式、2025年4月時点) |
| 主要事業 | 飲料ボトル用リサイクルPET樹脂の製造 |
| 生産能力 | 4万トン/年 |
| 株主 | 豊田通商株式会社、ウツミリサイクルシステムズ株式会社 |
| 上場区分 | 非上場 |
| 工場稼働 | 2022年10月から24時間フル稼働 |
| 品質認証 | ISO 9001、JCIIリサイクルプラスチック材料認証2件 |
情報ランク:A|会社公式では2020年7月設立、2025年4月時点87人。フレーク洗浄棟が2021年12月、ペレット製造棟が2022年6月に稼働し、2022年7月に量産を開始、同年10月に24時間フル稼働へ移行しています。
この会社は何をしているのか
飲み終わったPETボトルを再び飲料ボトルへ戻すには、単に砕けばよいわけではありません。飲料と直接触れる材料として使える品質まで異物や汚れを除去し、再び成形可能な樹脂に戻す必要があります。
工場で誰が何をしているのか
情報ランク:S・A|製造スタッフは日野町工場で、機械を操作しながら使用済みPETボトルや原料を処理します。求人・会社資料で確認できる主な仕事は、機械オペレーション、PETボトルや原料の選別、原料投入、処理後に出る残渣の回収、設備保守・点検などです。
工場全体では、おおむね次の流れで再生PETを作ります。
- 使用済みPETボトルから異物を選別し、細かく粉砕してフレーク状にする。フレークを洗浄し、押出機などで処理した後、固相重合・除染工程を通し、飲料ボトル用の再生PETペレットへ戻す。
豊田通商の設立時資料でも、対象会社の事業を「廃PETボトルの選別・粉砕・洗浄、ペレットの製造」と明示しています。
つまり製造スタッフが一個一個ボトルを手洗いしているわけではありません。大型の処理設備を運転・監視し、原料の投入、異常確認、残渣処理、設備の点検などを担当する工場です。
原料の状態に合わせて処理ラインを変える
情報ランク:A|2025年12月に公表された三菱UFJ銀行とキリンビバレッジの取り組みでは、東京23区以外の関東58支店で回収した、飲み残しや異物が少ないPETボトルを豊通ペットリサイクルシステムズの専用ラインへ送る仕組みが採用されました。
事業所や商業施設から出るPETボトルには、飲み残しや異物が入りやすいという問題があります。逆に、利用者がきちんと飲み切り、キャップや異物を分別したボトルまで、汚染度の高い原料と同じ長い処理工程へ通す必要はありません。
そこで、状態の良いボトルを専用ラインへ分けることで、処理工程の短縮、エネルギー削減、歩留まり向上を狙います。
これは「環境技術を導入した」という抽象的な説明ではありません。
分別状態のよい原料を選び、その原料に不要な処理を省き、同じ量の使用済みPETからより多くの再生樹脂を得るという具体的な工程改善です。
主な利用企業・取引関係の例
豊通ペットリサイクルシステムズは、自社ブランドの商品を一般消費者へ販売する会社ではありません。自治体や事業所から回収されたPETを原料化し、飲料メーカーへ戻る循環の中間に位置します。
| 利用企業・関係先 | 具体的な関係 |
|---|---|
| キリンビバレッジ | 回収されたPETを同社で再原料化し、キリンの飲料PETボトルへ戻す |
| アサヒ飲料 | 小牧市の水平リサイクルで同社が再原料化したPETを飲料製品へ利用 |
| 伊藤園 | 小牧市の同じ水平リサイクルスキームへ参加 |
| 三菱UFJ銀行 | 関東58支店分の使用済みPETを低異物専用ラインへ供給 |
キリンビバレッジ
情報ランク:A|キリンとの水平リサイクルでは、商業施設や事業所等から回収されたPETボトルを中間処理し、豊通ペットリサイクルシステムズで再生PET樹脂へ戻し、再びキリンの飲料容器へ使う循環が構築されています。
キリン湘南工場では再生PET樹脂100%のプリフォーム製造も進めています。キリンは再生樹脂の製造工程について、石油由来のバージン樹脂と比較してGHG排出量を50~60%削減できると説明しています。ただし、これはキリン側の算定であり、豊通ペットリサイクルシステムズ単体のLCA実績とは区別する必要があります。
アサヒ飲料・伊藤園
情報ランク:A|愛知県小牧市では、キリンビバレッジ、アサヒ飲料、伊藤園、豊田通商、小牧市が連携。2024年4月から、市民が分別した使用済みPETボトル全量を豊通ペットリサイクルシステムズで再原料化し、3飲料メーカーの商品へ戻す仕組みが始まりました。年間約400トンが再利用される見込みとされています。
特定メーカー専用のリサイクル工場ではなく、複数メーカーの飲料容器へ戻る原料を製造していることが分かります。
事業による人間への貢献
この会社の価値を「環境に良い」という一言だけで評価すると、実際に何を変えているのか分かりません。
重要なのは、飲料ボトルとして使われたPETを一度だけ衣料・繊維などへ使って終わらせるのではなく、再び飲料ボトルへ戻すことです。
新しい石油由来原料の投入を減らせる
ボトルtoボトルが拡大すれば、同じ量の飲料容器を作るために投入する新たなPET樹脂を減らせます。
利用者から見れば、飲み終わったPETボトルが「捨てて終わる容器」ではなく、次の飲料ボトルを作る原料になります。
もちろん、PETボトル自体を減らすことや、リユース容器を使うこととは別の選択肢です。そのうえで、すでに大量に使われているPETボトルを国内で何度も循環させるインフラとして、この会社には明確な役割があります。
2026年3月期は18億本相当
情報ランク:A|豊田通商の最新サステナビリティKPIでは、2026年3月期の豊通ペットリサイクルシステムズによるプラスチックリサイクル取扱量はPETボトル18億本相当です。
2027年3月期目標も18億本、2028年3月期目標は20億本とされています。
設計上の生産能力だけでなく、実際の取扱実績を本数換算で公表している点は評価できます。
自治体の分別を実際の製造工程へつなげる
PETボトルを市民がきちんと分別しても、その後どこへ行ったのか分からなければ、分別する意味を実感しにくくなります。
小牧市の事例では、「市民が分別する→回収する→豊通ペットリサイクルシステムズでPET原料に戻す→飲料メーカーが新しいボトルへ使う」という経路まで明確です。
豊田通商は、原料となる使用済みPETを一定量確保するため、日野町や小牧市など自治体とのボトルtoボトル協定を拡大していることもCDP回答で説明しています。
労働環境
環境に良い事業であっても、その工場が長時間労働や危険な仕事へ過度に依存していれば、人間への貢献という基準では高評価にできません。
特にこの会社は24時間操業です。休日数だけではなく、夜勤、残業、安全、設備保守まで見る必要があります。
基本給、昇給、賞与
情報ランク:S|2026年の製造スタッフ求人では、基本給は月19万~27万5000円です。固定残業代はなく、時間外労働は別途支払う設計です。
前年度の昇給実績は月3500~6500円。賞与は年2回、計6カ月分でした。
会社採用ページでも高卒初任給19万円、年間賞与6カ月、新卒初年度は2カ月と掲載しています。
少なくとも今回確認できた情報は、初任給だけを引き上げたというものではなく、既存社員を含む求人票上で実際の昇給額が示されています。
一方、全社のベースアップ率、物価上昇を考慮した実質賃金、男女賃金差、利益のうちどれだけを給与へ戻したかといった会社単体KPIは確認できません。
残業と夜勤
情報ランク:S|最新のハローワーク求人では、勤務時間は日勤8時~18時、夜勤20時~翌6時。休憩90分で、4勤2休の2交替制です。
月平均時間外労働は26時間です。
36協定の特別条項では、トラブル対応・短納期対応などの場合に、年6回まで月78時間、年720時間へ延長できるとされています。
年間休日は131日あります。
休日数だけを見ればかなり多い一方、夜勤を含む24時間操業であり、生活リズムへの負担は無視できません。
また、月78時間は「実際に毎月78時間残業している」という意味ではありません。あくまで非常時・繁忙時に制度上許容されている上限です。
過去の残業値との比較
情報ランク:S|滋賀県のWORKしがでは、2024年度の所定外労働時間を月平均34時間と掲載しています。現在のハローワーク求人は26時間です。
ただし対象期間や集計対象が完全に同一とは限らないため、「34時間から26時間へ確実に8時間改善した」とまでは断定しません。
最新公開値として26時間が確認できる、という扱いにします。
福利厚生
情報ランク:S|現在の求人では、社会保険に加え、確定給付年金、勤続3年以上の退職金、60歳定年、65歳までの再雇用制度があります。
また、単身住宅・引越補助、人間ドック・予防接種費用補助、豊田通商グループの保険、保養所利用、グループ研修への参加などが掲載されています。
フォークリフト免許についても、未取得者は入社後に会社負担で取得できます。
資格がなければ働けない仕事について、入社時に本人負担で取得させるのではなく、会社が費用を負担する点は具体的な還元です。
育児・介護
情報ランク:S|WORKしがによると、2024年度は育児休業対象者1人に対して1人が取得し、取得者は男性でした。
対象者が1人なので、これだけで全社員に育児休業が取りやすい企業だとは断定できません。
ただし、「制度だけ存在して取得実績ゼロ」ではなく、男性社員が実際に取得した実績がある点は評価できます。
介護休業については取得実績なしです。
雇用の安定と公平性
情報ランク:S|2026年1月の求人では従業員85人、そのうち女性11人です。外国人雇用実績もあり、事業所内公正採用選考・人権啓発担当者が置かれています。労働組合はありません。
女性比率は約13%ですが、これだけで差別があるとは判断できません。
一方で、女性管理職比率、男女賃金差、採用後の昇進率などは会社単体では確認できませんでした。
従業員・元従業員の口コミ
転職会議、Indeed、OpenWork、エンゲージ会社の評判、Yahoo!しごとカタログを個別に確認しました。
今回の検索範囲では、豊通ペットリサイクルシステムズで実際に勤務した人による、職種・時期と本文を十分に確認できる口コミは非常に少なく、現在の労働実態を判断できるほどの内容は得られませんでした。
Yahoo!しごとカタログでは対象会社ページが存在するものの、口コミデータは確認できませんでした。転職会議でも会社・求人ページは確認できましたが、現在の残業・有休等を判断できる十分な投稿本文は得られませんでした。
Indeedでは求人・給与関連の情報は確認できるものの、今回の検索範囲では勤務経験を具体的に語る本文を確認できませんでした。
したがって、今回は「良い口コミ」「悪い口コミ」を無理に作りません。
口コミが少ないこと自体を減点理由にせず、公的求人と会社資料を中心に採点します。
Safety:26点/50点
Safetyでは、リサイクル事業の社会的意義ではなく、そこで働く人と再生樹脂を利用する人が実際に守られているかを確認します。
賃金・利益の還元:6/10
基本給19万~27万5000円、固定残業代なし、前年度昇給月3500~6500円、賞与6カ月という具体的な実績を評価します。
一方で会社全体のベア率、実質賃金、非正規雇用を含む賃上げ状況、男女賃金差、利益改善をどれだけ社員へ戻したのかというKPIはありません。
よって6点です。
労働時間・休息:6/10
年間休日131日、最新求人の月平均残業26時間という具体値が公表されています。
しかし、日勤8時~18時と夜勤20時~翌6時の2交替勤務で、24時間工場を運営しています。
さらに特別条項は月78時間・年720時間です。
十分な休日数は評価しつつ、夜勤負担とトラブル時の時間外上限を考慮し6点とします。
雇用の安定・待遇の公平性:3/5
正社員、期間の定めなし、転勤なしの製造職、退職金、65歳までの再雇用制度などを評価します。
WORKしがでは2022~2024年の新卒離職者は0人です。ただし採用人数自体が少ないため、会社全体の離職率が非常に低いとまでは判断しません。
女性85人中11人という男女構成、女性管理職比率や男女賃金差の不明点を含め3点です。
福利厚生・育児・介護:4/5
確定給付年金、退職金、住宅支援、人間ドック・予防接種費用補助、グループ保険、保養所、資格取得支援など制度は具体的です。
2024年度には男性の育児休業対象者1人が1人取得しました。
介護休業や育休の長期的な取得率まで確認できないため、満点ではなく4点です。
人権・ハラスメント・労使関係:3/5
事業所内公正採用選考・人権啓発担当者が存在し、豊田通商グループの人権管理の対象となる国内関連会社です。
一方、労働組合はありません。会社単体のハラスメント相談件数、内部通報、是正件数、労使協議による改善成果も確認できません。
3点とします。
労働安全・健康:0/10
ここは0点です。
製造工場では、機械オペレーション、原料投入、残渣の回収、設備保守などがあります。24時間操業であり、安全管理は特に重要です。
会社には安全管理や環境保全を担当する職種があり、安全巡回、安全衛生教育、リスクアセスメント、防災対応などを行う仕組み自体は確認できます。
しかし今回、会社単体の労災件数、休業災害度数率、死亡災害、設備事故、火災、熱中症、化学物質への曝露などの結果を確認できませんでした。
事故が多いと確認したわけではありません。
企業審査基準では、安全の重要結果が十分な調査後も非公表の場合、中間点で補完しないため0点とします。
商品・サービスの安全:4/5
情報ランク:S|2025年3月21日、JCIIは豊通ペットリサイクルシステムズに対して食品接触材料用のリサイクルプラスチック材料認証JA01-00005とJA01-00006を付与しています。
さらに2026年3月には「リサイクルPET樹脂の設計および製造」を登録範囲としてISO 9001を取得しました。
飲料容器へ戻す材料なので、品質・衛生を第三者認証で確認できることは大きなプラスです。
ただし会社単体の顧客クレーム、不適合件数、回収件数などの継続KPIまでは確認できないため4点です。
| Safety項目 | 点数 |
|---|---|
| 賃金・利益の還元 | 6/10 |
| 労働時間・休息 | 6/10 |
| 雇用の安定・公平性 | 3/5 |
| 福利厚生・育児・介護 | 4/5 |
| 人権・ハラスメント・労使関係 | 3/5 |
| 労働安全・健康 | 0/10 |
| 商品・サービスの安全 | 4/5 |
| Safety小計 | 26/50 |
Innovation:11点/25点
この会社は技術そのものでは高く評価できる部分があります。
ただし企業審査では「機械を導入したか」ではなく、「その機械によって人の負担や危険がどれだけ減ったか」「生まれた利益や時間が人へ戻ったか」まで確認します。
作業負担・危険の削減:2/10
選別・粉砕・洗浄・押出・除染・ペレット化は大型設備によって行われています。
製造スタッフは機械オペレーションが中心であり、求人でも力仕事だけを中心とした職場ではないことが示されています。
しかし、機械化によって従来何kgの重量物を何回運ばなくなったのか、作業時間を何時間削減したのか、必要人数を何人減らしたのか、腰痛や設備事故を何件防いだのかという定量的な結果は確認できませんでした。
設備があるという事実だけで高得点にしないため2点です。
商品・サービスの改善:5/5
ここは満点としました。
低異物PETボトル専用ラインでは、分別状態が良い原料について不要な処理を減らし、工程を短縮し、消費エネルギーと材料ロスを抑える設計が具体化しています。
さらにJCIIの食品接触材料向け認証を2件取得し、ISO 9001も取得。2026年3月期には取扱量18億本相当まで拡大しています。
品質、工程、リサイクル量の複数面で改善が確認できるため5点です。
改善成果の人間への還元:0/5
技術による生産性向上や工程短縮が、社員の残業時間短縮、増員、賃上げ、安全投資などへどれだけ戻されたのかを示す資料は確認できません。
昇給や賞与があること自体はSafetyで評価しました。
しかし、その昇給が低異物ラインや生産性向上によって生まれた利益の還元である、という因果関係までは確認できません。
推測で結び付けず0点とします。
研究開発・現場改善の継続:4/5
情報ランク:S|2026年の日本LCA学会研究発表会では、東京大学、東京都市大学、豊田通商、豊通ペットリサイクルシステムズの関係者による「固相重合法によるPETボトルの水平リサイクルシステムのライフサイクル思考」が発表されています。
リサイクルは、ただ再生すれば環境負荷が小さいとは限りません。
回収、輸送、洗浄、再生工程まで含めたライフサイクルで検証する必要があります。そうした研究に対象会社が関わっていること、低異物専用ラインや品質認証など工場稼働後にも改善を続けていることを評価し4点としました。
| Innovation項目 | 点数 |
|---|---|
| 作業負担・危険の削減 | 2/10 |
| 商品・サービスの改善 | 5/5 |
| 改善成果の人間への還元 | 0/5 |
| 研究開発・現場改善の継続 | 4/5 |
| Innovation小計 | 11/25 |
Protection:8点/25点
リサイクル設備は、通常時だけ動けばよいわけではありません。
工場が火災・地震・設備故障・サイバー攻撃などで停止した場合、大量の使用済みPETの処理先と再生PETの供給先に影響します。
そのため「工場が止まったときどうするか」まで確認します。
災害への備え・訓練:2/5
安全・環境を担当する職種が、防災関連の官公庁対応や災害予防を担うことは確認できました。
一方、豊通ペットリサイクルシステムズ単体のBCP全文、非常電源の能力、備蓄量、避難訓練回数、設備復旧訓練の結果などは確認できませんでした。
防災機能の存在は評価しますが、結果が見えないため2点です。
生産・物流・調達の代替:2/5
豊田通商はPET原料確保のため自治体などとの回収協定を広げており、特定の1カ所だけから原料を得る仕組みではありません。
小牧市、日野町、事業所系の回収など、原料ルートは複数あります。
一方、飲料用再生PET樹脂の製造は対象会社の日野町工場へ集中しています。
この工場が停止した場合、豊通ペットリサイクルシステムズ自身の別工場へ生産を切り替えられる資料は確認できません。
原料調達の分散を評価し2点です。
サイバー防衛・情報保護:3/5
情報ランク:A|豊田通商はグループ標準の情報セキュリティ規程・ガイドラインを設け、ネットワーク・メール等の共通化、サイバー攻撃対応体制、脅威情報収集、常時通信監視、端末挙動監視、自動隔離などをグループ全体で行うと公表しています。
豊通ペットリサイクルシステムズは豊田通商のサーキュラーエコノミー分野の関連会社として掲載されています。
ただし、対象会社単体のSOC監視範囲、バックアップ、復旧テスト、標的型メール訓練、サイバー事故件数などは確認できません。
グループ基盤は評価し3点です。
供給継続・復旧能力:1/5
情報ランク:S相当の官報決算情報|2026年3月期は純利益2億5500万円となり、2025年3月期の15億円赤字から黒字転換しました。総資産は49億7700万円です。
これは事業継続力にとってプラスです。
一方、利益剰余金はなおマイナス12億4400万円で、過去の累積損失は残っています。
また製造は日野町1拠点に集中しています。
工場停止時の復旧目標時間、代替生産設備、復旧日数などが確認できないため、黒字転換を評価しつつ1点です。
危機時の市民への対応:0/5
自治体との水平リサイクル協定や環境啓発は確認できます。
ただし、地震や災害などの危機時に市民へ必要物資を提供する、緊急回収を実施するなど、市民生活を直接維持する会社単体の実績は確認できませんでした。
通常時の環境貢献と緊急時の市民保護は別に評価し、0点です。
| Protection項目 | 点数 |
|---|---|
| 災害への備え・訓練 | 2/5 |
| 生産・物流・調達の代替 | 2/5 |
| サイバー防衛・情報保護 | 3/5 |
| 供給継続・復旧能力 | 1/5 |
| 危機時の市民への対応 | 0/5 |
| Protection小計 | 8/25 |
財務:2026年3月期に黒字転換
環境事業は社会的意義があっても、赤字が長期化して設備更新や安全投資ができなくなれば継続できません。
そのため財務もProtectionの一部として確認します。
情報ランク:S相当|官報決算を整理したデータでは、2023年3月期は純損失4億8200万円、2024年3月期は21億8100万円、2025年3月期は15億円の純損失でした。
2026年3月期は純利益2億5500万円となり、黒字へ転換しました。
一方、利益剰余金はマイナス12億4400万円です。過去に積み上がった損失が消えたわけではありません。
会社は2024年5月に資本金を17億円へ増資し、2025年4月には5000万円へ減資しています。会社公式にもこの沿革が掲載されています。
減資だけを経営悪化と断定することはできません。
重要なのは、単年度損益が黒字へ転じた一方、累積損失が残っているという両方の事実を見ることです。
今後、黒字が継続し、その利益が設備保全、安全対策、賃金、夜勤負担軽減、BCPへ還元されるかが注目点です。
SNS・匿名掲示板の確認結果
従業員口コミとは別工程で、X、Facebook、YouTube、TikTok、5ちゃんねる、爆サイについて、会社名と「残業」「事故」「パワハラ」「給料」「退職」「働きやすい」などの語を組み合わせて検索しました。
Xでは対象法人の従業員による投稿と確実に判断でき、かつ本文を確認できる有用な労働実態投稿は今回の検索範囲では確認できませんでした。
Facebookでも、対象会社との関係を確認できる労働実態投稿は見つけられませんでした。
YouTubeでは滋賀県内の経済番組による工場紹介など、事業内容を理解できる動画は確認しました。ただし従業員口コミではないため、労働環境の採点根拠には使用していません。
TikTokは検索を試みましたが、今回の調査環境では投稿本文を十分に確認できませんでした。「関連投稿が存在しない」という意味ではありません。
5ちゃんねる、爆サイも会社名・拠点名で検索しましたが、対象法人との関係が明確な有用投稿は今回の検索範囲では確認できませんでした。
SNSや掲示板で情報が見つからないこと自体は、企業への減点理由にはしていません。
重大事故・行政処分・不祥事の確認
会社名と「労災」「死亡事故」「書類送検」「労基署」「火災」「爆発」「行政処分」「リコール」「情報漏えい」「サイバー攻撃」「訴訟」「ハラスメント」などを組み合わせて追加検索しました。
今回の検索範囲では、対象法人について重大な死亡労災、重大な行政処分、工場の大規模火災・爆発、大規模製品回収、重大な情報漏えいなどを、公的資料や主要報道で相互確認できる事例は確認できませんでした。
ただし、「重大事故が存在しないこと」を証明したわけではありません。
特に会社単体の労災KPI自体が公開情報から確認できないため、検索で重大事故を見つけられなかったことを理由に労働安全へ高得点を与えることもしていません。
主なニュース・最近の動き
最近の動きを見ると、工場立ち上げ期から「量を増やす段階」へ進み、品質認証、専用ライン、LCA研究、黒字転換へとテーマが変わってきています。
2026年6月:2026年3月期で黒字転換
情報ランク:S相当|第6期決算では純利益2億5500万円となり、前年の15億円赤字から黒字へ転換しました。
利益剰余金はなおマイナス12億4400万円ですが、立ち上げ後に大幅な赤字が続いていた会社が単年度黒字へ転じたことは重要です。
企業審査上はProtectionの継続性へプラス材料として反映しています。
2026年3月:ISO 9001を取得
情報ランク:S|2026年3月、リサイクルPET樹脂の設計・製造を登録範囲としてISO 9001を取得しました。
飲料容器へ戻す再生樹脂では品質のばらつきを管理する必要があります。
その品質管理体系について第三者認証を取得した点を商品・サービス安全で評価しました。
2025年12月:三菱UFJ銀行58支店分を低異物専用ラインへ
情報ランク:A|三菱UFJ銀行の関東58支店から回収された使用済みPETボトルを、豊通ペットリサイクルシステムズの異物混入が少ない原料向け専用ラインへ送る仕組みが公表されました。
利用者が飲み残しや異物を減らして排出すれば、工場でも余分な処理工程を減らせる。
つまり分別品質と製造効率が直接つながる事例です。
2026年3月期:年間18億本相当をリサイクル
情報ランク:A|豊田通商の最新KPIで2026年3月期実績はPETボトル18億本相当。2028年3月期には20億本を目標としています。
工場の最大生産能力だけではなく、実際の取扱実績を継続的に開示している点を評価します。
2026年:PET水平リサイクルのLCA研究
情報ランク:S|日本LCA学会研究発表会では、東京大学、東京都市大学、豊田通商、豊通ペットリサイクルシステムズの関係者によるPETボトル水平リサイクルのライフサイクル研究が確認できます。
リサイクル工程自体にも輸送・洗浄・加熱などのエネルギーが必要です。
その全体を評価しようとする研究へ会社関係者が参加していることは、今後の改善につながる材料です。
項目別得点
| 大項目 | 小項目 | 得点 |
|---|---|---|
| Safety | 賃金・利益の還元 | 6/10 |
| Safety | 労働時間・休息 | 6/10 |
| Safety | 雇用の安定・公平性 | 3/5 |
| Safety | 福利厚生・育児・介護 | 4/5 |
| Safety | 人権・ハラスメント・労使関係 | 3/5 |
| Safety | 労働安全・健康 | 0/10 |
| Safety | 商品・サービスの安全 | 4/5 |
| Safety小計 | 26/50 | |
| Innovation | 作業負担・危険の削減 | 2/10 |
| Innovation | 商品・サービスの改善 | 5/5 |
| Innovation | 改善成果の人間への還元 | 0/5 |
| Innovation | 研究開発・現場改善の継続 | 4/5 |
| Innovation小計 | 11/25 | |
| Protection | 災害への備え・訓練 | 2/5 |
| Protection | 生産・物流・調達の代替 | 2/5 |
| Protection | サイバー防衛・情報保護 | 3/5 |
| Protection | 供給継続・復旧能力 | 1/5 |
| Protection | 危機時の市民への対応 | 0/5 |
| Protection小計 | 8/25 | |
| 総合 | 45/100 |
総合シビックランク:E
総合評価
豊通ペットリサイクルシステムズ株式会社は、「この会社が社会に何を提供しているのか」が非常に分かりやすい企業です。
使用済みPETボトルを再び飲料ボトルへ戻し、2026年3月期には18億本相当までリサイクル量を拡大しています。複数の自治体、事業者、飲料メーカーをつなぐ循環の中で、再原料化という中核工程を担当しています。
品質面でも、JCIIの食品接触用途向け認証2件とISO 9001を取得。低異物専用ラインという具体的な工程改善もあります。
単なる「環境にやさしい会社」という宣伝ではなく、どこから使用済みPETを集め、工場で何を行い、どの飲料メーカーの新しいボトルへ戻すかまで確認できる点は強みです。
労働条件でも、年間休日131日、賞与6カ月、固定残業代なし、月3500~6500円の昇給実績、確定給付年金、資格取得費用の会社負担など、公開情報から確認できる待遇は比較的充実しています。男性育休の取得実績もあります。
それでも総合45点、シビックランクEとなった最大の理由は、安全とProtectionについて「結果」が十分に見えないことです。
24時間工場で、原料投入、機械操作、残渣回収、設備点検などを行う会社なら、労災件数、休業災害、設備事故、熱中症などの会社単体KPIは、働く人にとって重要です。
安全巡回やリスクアセスメントを実施しているとしても、「その結果、事故が何件に抑えられたのか」が公開されなければ、企業外部から実効性を検証することはできません。
また、製造拠点が日野町1工場へ集中している一方、この工場が停止した際の代替生産拠点や復旧目標時間も確認できません。
豊田通商グループのサイバー防御基盤は評価できますが、サイバー対策が強いことと、地震や火災、設備故障で物理的に工場が止まった際に再生PETの供給を維持できることは別問題です。
Innovationについても同様です。
低異物専用ラインによって処理工程を短縮し、エネルギーを減らし、歩留まりを改善できるなら、次に知りたいのは「働く人へ何が返ったのか」です。
誰の作業が何分減ったのか。
重量物作業が何回減ったのか。
残業が何時間減ったのか。
省人化で生まれた利益を賃金や休日へどの程度戻したのか。
そこまで公表できれば、現在2点にとどめた「作業負担・危険の削減」や0点の「改善成果の人間への還元」は大きく上がる可能性があります。
そして2026年3月期の黒字転換は、今後を判断するうえで重要です。
立ち上げ期の巨額赤字から単年度黒字へ変わったのであれば、その収益改善を安全投資、労働時間短縮、賃上げ、夜勤負担の軽減、代替設備、BCP強化などへ戻せる余地も生まれます。
水平リサイクルそのものの社会的価値は高い。
品質改善も進んでいる。
待遇にも評価できる部分がある。
しかし、その技術・利益が「そこで働く人の安全と時間」へどう返っているか、危機が起きたときにも工場を止めずに済むのかという部分では、まだ説明が不足しています。
そのため、現時点では45点/100点、総合シビックランクEと評価します。
出典一覧
- 豊通ペットリサイクルシステムズ株式会社「会社情報」
- 豊通ペットリサイクルシステムズ株式会社「採用情報」
- 豊田通商「ペットボトルの水平リサイクル工場が本格稼働開始」
- 豊田通商「廃PETボトル再資源化事業の新会社を設立」
- 豊田通商「マテリアリティに基づく取り組み」
- 厚生労働省ハローワーク「豊通ペットリサイクルシステムズ株式会社 製造スタッフ求人票」
- WORKしが「豊通ペットリサイクルシステムズ株式会社」
- 一般財団法人化学研究評価機構「リサイクルプラスチック材料 認証取得者リスト」
- キリンホールディングス「三菱UFJ銀行関東エリア134支店、分別徹底から始まるボトルtoボトル」
- キリンホールディングス「キリンビバレッジ×アサヒ飲料×伊藤園×豊田通商×小牧市 水平リサイクル協定」
- 豊田通商「事業等のリスク」
- 豊田通商「主な関連会社(サーキュラーエコノミー)」
- 官報決算データベース「豊通ペットリサイクルシステムズ株式会社 決算公告」
- J-GLOBAL「固相重合法によるPETボトルの水平リサイクルシステムのライフサイクル思考」
- 豊田通商 CDP回答資料
情報ランクの基準
| 情報ランク | 基準 |
|---|---|
| S | 公的機関の資料で直接確認できる情報、または独立した第三者による検証・監査・認証等の裏づけがある情報 |
| A | 企業自身の公式発表・報告書・採用情報など。独立した裏づけまでは確認していない企業側の説明・自己申告 |
| B | 役職や立場が確認できる関係者への取材・発言、記者による直接取材等に基づく情報 |
| C | 一般社員・元社員・パート・アルバイトなどの勤務経験に基づく口コミ |
| D | Xなど一般SNSの投稿で、発信者の立場や内容の裏づけが十分でない情報 |
| E | 5ちゃんねる、爆サイなど匿名掲示板で、発信者の身元・関与をさらに確認しにくい情報 |
情報ランクは情報の出どころと裏づけを示すもので、企業の良し悪しを評価する総合シビックランクとは異なります。媒体だけでなく原発信者と根拠で判定するため、企業公式SNSの発表はAなどとして扱います。低い情報ランクは虚偽を意味せず、高い情報ランクも記述全体の正しさを保証するものではありません。
