ネット通販で欲しい商品を探したとき、店舗ごとに別々の会員登録、決済、ポイント管理をしなければならなければ、買い物にかかる手間は大きく増えます。地方の小さな店舗にとっても、自前で全国向けの通販システムを作り、集客し、決済や不正対策まで整えるのは簡単ではありません。楽天グループ株式会社は、楽天市場を中心に、検索、注文、ポイント、広告、店舗支援、旅行予約、デジタルサービスなどを共通基盤として提供し、こうした手間を減らしてきた会社です。
一方で、プラットフォームを運営する会社には別の責任があります。検索順位、出店条件、販促ルールを決める力が強ければ、出店者へ過度な負担を押し付ける危険があります。大量の顧客情報を扱う会社で情報漏えいが起きれば、便利さそのものが利用者のリスクに変わります。働く側でも、高い給与や無料の食事だけでなく、実際の残業、休息、労災、安全、AI導入後の仕事の変化まで見る必要があります。
今回、楽天グループ株式会社を「100点制・第1版」で再審査しました。2026年8月までの決算、2025年有価証券報告書、最新の人事・福利厚生・リスク管理・情報セキュリティ資料、社員口コミ、SNS・掲示板検索、公正取引委員会資料、直近の情報漏えい公表などを確認しています。
結論は総合72点、シビックランクBです。平均年間給与約850.8万円、女性管理職比率約34%、無料の食事、育児・健康支援、AI・データ開発、ISO27001を基礎にした情報セキュリティ、BCP訓練などは高く評価できます。一方、口コミでは残業が月26~30時間前後で、会社単体の最新労災件数・度数率など比較可能な安全KPIは十分ではありません。また2024年と2025年には楽天市場で特定利用者情報に関する漏えい事案が公表されており、サイバーProtectionを満点にはしていません。
結論|総合72点・シビックランクB
楽天グループ株式会社は、給与、福利厚生、人材育成、AI開発、災害対応、情報セキュリティ体制など、多くの項目で具体的な仕組みを持っています。
特に評価した点は次の通りです。
- 2025年12月末時点で単体9,989人を雇用し、平均年間給与が8,508,495円であること
- 本社などで朝食・昼食・夕食を基本無料で提供し、社内託児所、ベビーシッター割引、健康支援、退職金など生活面を広く支援していること
- 女性管理職比率が約34%まで上昇し、育児との両立支援を継続していること
- 楽天市場を通じて多数の事業者へ全国販売の仕組みを提供し、消費者には検索、注文、決済、ポイント、レビュー、補償をまとめて提供していること
- AI・データ活用を全社的に進め、AIガバナンス委員会、社内ガイドライン、従業員教育を整備していること
- BCPで脅威評価、事業影響分析、代替策、訓練計画まで具体的な手順を定め、首都圏外から本社機能を代替する体制も整備していること
- ISO/IEC27001を基礎にしたISMSを運用し、楽天市場を含む多数の組織で第三者認証を取得していること
楽天はBCPについて、リスク評価、事業影響分析、経営資源分析、代替策、危機時体制、訓練計画まで公開し、自然災害では首都圏外から本社機能を代替する体制も進めています。【情報ランクA】
ただし、B評価にとどめた理由も明確です。
第一に、労働時間の実態には部署差があります。会社の標準勤務は7.5時間で、フレックスや休暇制度もありますが、OpenWorkでは月26.7時間、転職会議では月30.1時間程度の残業が示されています。公式制度が良好でも、実際の負担まで同じとは限りません。
第二に、労働安全では健康管理や内部監査の仕組みは確認できる一方、楽天グループ株式会社単体について、最新の労災件数、休業災害度数率、死亡事故、車両事故などを一つの表で継続比較できる公開情報が弱い状態です。
第三に、情報セキュリティでは強い管理体制を持ちながら、2024年12月と2025年10月に楽天市場で利用者情報の表示・メール送信に関する漏えい事案が発生しました。いずれも会社は修正と再発確認を行っていますが、認証取得だけで事故を相殺することはできません。
第四に、AI導入を積極的に進めていますが、AIによって削減できた労働時間が何時間で、その時間が短時間勤務、休暇、賃上げ、人員再配置へどの程度返ったのかという人間側の成果KPIはまだ限定的です。
基本情報
楽天という名前はカード、銀行、証券、モバイルなどにも付いていますが、これらは別法人が運営する事業を含みます。今回の対象は楽天グループ株式会社そのものです。子会社の労働条件や事故を、そのまま対象会社の実績として扱いません。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 会社名 | 楽天グループ株式会社 |
| 英文名 | Rakuten Group, Inc. |
| 設立 | 1997年2月7日 |
| 本社 | 東京都世田谷区玉川一丁目14番1号 楽天クリムゾンハウス |
| 代表者 | 代表取締役会長兼社長 最高執行役員 三木谷浩史 |
| 資本金 | 4,595億800万円。2025年12月31日現在 |
| 従業員数 | 単体9,989人、連結29,419人。2025年12月31日現在 |
| 上場 | 東京証券取引所プライム市場、証券コード4755 |
| 主な事業 | インターネットサービス、フィンテック、モバイル等のグループ経営と一部事業の直接運営 |
| 2025年度連結売上収益 | 2兆4,965億7,500万円 |
| 2025年度IFRS営業利益 | 143億8,200万円 |
| 2025年度親会社所有者帰属損失 | 1,778億8,600万円の損失 |
| 2026年第2四半期 | 売上収益6,655億円、IFRS営業利益200億円。四半期では6年ぶりの親会社帰属黒字を公表 |
【情報ランクA・S】会社概要と従業員・給与は楽天公式資料と有価証券報告書で確認しました。
2025年は連結売上収益が前年比9.5%増え、IFRS営業利益も黒字でしたが、年間の親会社所有者帰属損益は赤字でした。2026年第2四半期には業績が改善し、四半期ベースで親会社所有者帰属利益77億円を計上しています。財務余力の改善は雇用、安全投資、AI開発を続けるうえでプラスですが、利益が出たこと自体を従業員への還元とはみなしません。
主な業務内容と拠点
楽天グループ株式会社の仕事は「通販サイトを表示する」だけではありません。店舗営業、ECコンサルティング、広告、検索、AI、セキュリティ、顧客対応、旅行予約など、人が担当する仕事が複数あります。
| 業務 | 担当する人・部門 | 具体的な作業 | 届け先・成果 |
|---|---|---|---|
| 楽天市場運営 | 企画・事業担当 | 出店制度、検索、キャンペーン、注文、レビュー等を企画 | 消費者が複数店舗の商品を比較・購入できる |
| 新規出店営業 | 営業担当 | 出店候補企業への説明、契約、開店支援 | 地方・中小事業者が全国販売へ参加できる |
| ECコンサルティング | ECコンサルタント | 売上分析、ページ改善、広告、キャンペーン提案 | 出店店舗の販売改善 |
| 開発 | エンジニア・データ担当 | Web、アプリ、検索、注文、AI、データ基盤の開発・保守 | サービスを継続利用できる状態を作る |
| UX | デザイナー・リサーチ担当 | 画面設計、利用者調査、購入動線改善 | 購入までの迷い・操作負担を減らす |
| 安全・不正対策 | 審査・セキュリティ担当 | 出店審査、商品監視、不正注文、権利侵害、情報セキュリティ対応 | 利用者・店舗の取引リスクを減らす |
| 顧客対応 | カスタマーサポート | 注文、会員、ポイント、店舗トラブル、補償の受付 | 問題発生時の解決手段を提供 |
| 本社共通部門 | 人事・法務・経理・財務等 | 採用、労務、資金、法令対応、リスク管理 | 事業継続と社内共通基盤 |
本社は楽天クリムゾンハウスにあり、札幌、仙台、金沢、名古屋、大阪、福岡、那覇など国内各地に営業・事業支援拠点があります。ただし公式拠点一覧には子会社等が含まれる場合があるため、各支社の人数を楽天グループ株式会社単体の人数として推計していません。
楽天市場での役割
楽天市場では、楽天グループ株式会社がすべての商品を仕入れ、検品し、発送しているわけではありません。基本的には各出店店舗が商品選定、価格設定、在庫、発送、返品等を担い、楽天側は共通の販売基盤を提供します。
そのため、楽天市場で食品や家電に欠陥があった場合、その製造責任まで楽天グループへ自動的に移すことはできません。一方、プラットフォームとして、出店審査、商品監視、補償、不正対策、検索表示、利用規約を適切に運用する責任があります。
主な利用企業・取引先の例
個別商品の販売関係は店舗ごとに異なりますが、楽天市場そのものは5万店を超える出店者が利用する大規模な販売基盤です。メーカー直営店、地方事業者、中小小売業者などが共通の検索・注文・ポイント基盤を利用します。
物流では、日本郵便との共同出資会社JP楽天ロジスティクスが楽天スーパーロジスティクス等を担います。ただし、楽天市場の商品すべてが同社倉庫を通るわけではなく、店舗自身や別の配送会社が発送する商品もあります。
事業による人間への貢献
楽天の社会的な価値を売上高だけで判断すると、利用者が何を得ているのかが分かりません。ここでは、消費者、出店者、働く人の時間と選択肢がどう変わるかを見ます。
全国販売の入口を小規模事業者にも開く
楽天市場では、店舗が独自に大規模な会員基盤、検索機能、決済、ポイント、レビュー、キャンペーンシステムを構築しなくても全国販売へ参加できます。
小さな店舗が自社サイトだけで全国から集客するには、サイト構築、広告、決済、不正対策、SEO、顧客管理まで自前で準備する必要があります。楽天市場を使えば費用はかかるものの、これらの一部を共通基盤として利用できます。
これは地域商品や専門性の高い商品が、所在地以外の消費者へ届く可能性を広げます。売上が必ず増えるわけではなく、手数料や広告費が利益を圧迫する場合もありますが、「販売場所への参加可能性」を広げる人間貢献は明確です。
消費者の比較・注文の手間を減らす
利用者は同じ楽天ID、買い物かご、ポイント、購入履歴を複数店舗で共通利用できます。店舗ごとに会員登録と決済設定をやり直す必要がなく、価格、送料、レビュー等を比較できます。
一方、店舗ごとに発送速度、返品条件、商品品質が異なります。楽天市場に掲載されているだけで、すべての商品を楽天が保証しているわけではありません。この責任分担を利用者が理解しやすく表示することもプラットフォームの重要な仕事です。
取引後の補償を用意する
楽天あんしんショッピングサービスでは、商品が届かない、著しく異なる商品、欠陥品、模倣品疑いなど一定条件のトラブルに補償制度を設けています。
販売者との交渉だけに購入者を残さず、プラットフォームが一定範囲で取引後の安全網を持つことは評価できます。ただし申請期限、店舗への事前連絡、返品等の条件があり、すべての損害が自動的に補償されるわけではありません。
プラットフォームの強い力が出店者を圧迫した事例
公正取引委員会は2021年、楽天市場の「共通の送料込みライン」に関する審査結果を公表しました。店舗が参加しない場合に、検索結果、出店プラン、契約更新等で不利に扱うことを営業担当者等が示唆した事例を確認しています。【情報ランクS】
楽天はその後、店舗の選択を尊重し、不参加店舗を不利に扱わないことなどを申し出ました。この事案は現在の施策が同じ状態だという意味ではありませんが、プラットフォーム運営会社が検索、契約、販促条件を同時に握ると、店舗と対等でなくなる危険を示す重要な過去事例です。
代表業務の審査|楽天市場のプラットフォーム運営
楽天グループ株式会社を最も象徴する業務として、楽天市場のプラットフォーム運営を取り上げます。
商品そのものは各店舗が販売しますが、利用者が商品へ到達し、注文し、支払い、レビューを書き、問題が起きた場合に補償を申請するまでの共通基盤を楽天が作ります。
店舗側では、ECコンサルタントが売上データを見ながら商品ページ、広告、キャンペーン等を提案します。企画担当者は大型販促や検索・表示の制度を設計し、エンジニアは注文・検索・データ基盤を保守します。不正対策担当はアカウントや取引を監視します。
この仕組みは、一社で全国規模のEC基盤を作れない事業者の参入コストを下げます。反対に、出店者が楽天市場への売上依存を強めるほど、規約変更や手数料、検索施策の影響も大きくなります。
したがって代表業務の評価では、「販売機会を提供している」という長所だけでなく、出店者の選択権、規約変更の透明性、苦情処理、検索の公平性まで継続的に確認する必要があります。
労働環境
高い平均給与だけで働きやすさは決まりません。楽天グループ株式会社では、オフィス職、営業、開発、セキュリティなど仕事内容が大きく異なります。給与、残業、休暇、福利厚生、育児、口コミを分けて確認します。
賃金・賞与・利益還元
2025年12月末時点の楽天グループ株式会社単体の平均年間給与は8,508,495円です。平均年齢36.0歳、平均勤続年数6.3年、従業員9,989人でした。【情報ランクS】
平均年間給与には賞与と基準外賃金が含まれます。管理職、高度専門職も含まれるため、新入社員や転職者全員が約851万円を受け取るという意味ではありません。
現在の中途採用ページでは、報酬は経験・能力等を考慮して個別決定し、給与改定と賞与の仕組みを案内しています。旧求人で使われていた固定残業代の条件を、現在の全求人に一律適用されるものとしては扱いません。
賃金水準は高く、2025年の平均年収も前年から上昇していますが、平均値の上昇をベースアップと同一視しません。会社利益やAIによる生産性向上が、既存社員の基本給へ何円還元されたかを示す全社共通KPIは限定的です。
このため賃金・利益還元は8/10点です。
労働時間・休息
現行の中途採用ページでは、フレックスタイムのコアタイムを通常11時から15時、朝会実施日は8時から12時としています。土日祝日、年次有給、夏季、年末年始、育児、介護等の休暇制度があります。【情報ランクA】
会社は勤怠データをBIで可視化し、長時間労働になりそうな従業員と管理職へ警告を出す仕組みを公開しています。
一方、口コミサイトでは実態に幅があります。OpenWorkでは平均残業時間が月26.7時間、有給休暇消化率70.4%。転職会議では月30.1時間、有給消化率67.4%と表示されています。【情報ランクC】
極端な長時間労働を示す平均ではありませんが、企画、営業、開発、障害対応などで繁忙の性質が違います。公式の全社実残業KPIを口コミと同じ粒度で継続比較できる情報は十分ではないため、労働時間・休息は6/10点です。
雇用の安定・待遇の公平性
単体従業員は2024年末9,885人から2025年末9,989人へ増えています。中途採用比率も2024年、2025年は80%とされ、多様な経歴の採用を続けています。【情報ランクA・S】
女性管理職比率は2025年に約34%まで上がっています。一方、男女間賃金比率には差が残っています。職位、職種、雇用形態等の構成が違うため、この比率だけで同一労働同一賃金違反と判断はできませんが、結果差を小さくする余地はあります。
平均勤続年数6.3年は、長期雇用型の大企業としては必ずしも長くありません。ただしIT業界の人材移動もあるため、勤続年数だけで雇用不安と断定しません。
雇用安定・公平性は4/5点です。
福利厚生・育児・介護
楽天クリムゾンハウスなどでは朝食、昼食、夕食を基本無料で提供します。食費そのものだけでなく、忙しい日に食事を探す時間を減らせる点も実生活への還元です。
その他にも、社内託児所、授乳・搾乳室、ベビーシッター割引、短時間勤務、介護休業・休暇、フィットネス、健康相談、退職金、社員持株会、研修などを用意しています。【情報ランクA】
2025年の女性の産休・育休後復職率は96.2%と公式福利厚生ページで公表されています。設備や食事提供は拠点によって差があり、地方拠点や契約社員へ本社と同条件を広げてはいけません。
制度内容と利用実績を評価し、福利厚生・育児・介護は4/5点です。
人権・ハラスメント・労使関係
楽天は行動規範、内部通報、人権方針、ダイバーシティ施策を持ち、サプライヤーにも人権・環境・倫理に関する確認を進めています。2025年にはサプライヤー質問票への参加率88%等を開示しています。【情報ランクA】
有価証券報告書では、親会社の楽天グループ株式会社には労働組合がない一方、一部子会社には組合があり、労使関係に特記すべき事項はないとしています。【情報ランクS】
組合がないこと自体を悪いと断定しませんが、経営と異なる立場から労働条件を交渉する仕組みの開示は限定的です。人権・ハラスメント・労使関係は4/5点です。
労働安全・健康
楽天は最高ウェルビーイング責任者と担当部門を置き、ストレスチェック、産業医・保健師面談、勤怠監視、ウェルビーイング調査を実施しています。倉庫や基地局関連では安全衛生内部監査を実施し、その他の事業でも労災状況を監視すると説明しています。【情報ランクA】
2025年のウェルビーイングスコアは55点で、会社目標53点を上回りました。
ただし、今回の調査では楽天グループ株式会社単体について、最新の労災件数、休業災害度数率、死亡労災、職業病、重大事故を継続比較できるまとまった開示を確認できませんでした。重大労災が多いと認定したわけではなく、安全成果を外部から検証する情報が不足しています。
制度と管理プロセスは評価する一方、結果KPI不足から労働安全・健康は4/10点です。
従業員・元従業員の口コミ
口コミは個人経験であり、会社全体の事実を確定する資料ではありません。ただし公式制度と現場感の差を見る補助資料になります。【情報ランクC】
Indeedでは2026年8月31日時点で31件、総合3.9/5と表示され、勤務時間・残業4.4、給与・福利厚生4.4、経営陣4.6、企業文化4.4でした。2026年8月の東京勤務者の投稿では、裁量、周囲との関係、意見を言いやすい環境を肯定する内容が確認できます。
OpenWorkでは総合3.90、平均残業26.7時間、有給消化70.4%。転職会議では総合4.47、平均残業30.1時間、有給消化67.4%。エンゲージ会社の評判では約5,800件の口コミがあり、挑戦や成長機会を評価する投稿がある一方、業務量、急な方針変更、住宅補助がないことなどへの不満も確認できます。【情報ランクC】
複数媒体を横断すると、若手が早く仕事を任されること、国際的な職場、食事等の福利厚生は比較的好意的に語られています。一方、部署や上司による働き方の差、仕事量、スピード重視の文化は注意点です。
SNS・匿名掲示板の確認結果
Xについて、「楽天グループ」「楽天株式会社」と「残業」「退職」「パワハラ」「給料」等を組み合わせ、検索エンジン経由で別工程として確認しました。今回取得できた範囲では、投稿者が楽天グループ株式会社の従業員であることを確認でき、企業評価の根拠として使える労働実態投稿は確認できませんでした。
5ちゃんねるについても「楽天グループ」「楽天株式会社」と労働条件の語を組み合わせて検索しましたが、対象法人との関係を確認できる有用な本文は今回の検索範囲では確認できませんでした。
爆サイも会社名で検索しましたが、対象法人の労働実態を裏づけられる投稿は確認できませんでした。
これはSNSや掲示板に不満が存在しないという意味ではありません。また、投稿が見つからないこと自体を会社の情報非公表として減点していません。
Safety|働く人と利用者を守れているか
楽天のSafetyでは、オフィス従業員の健康だけでなく、楽天市場の利用者や出店者が安心して取引できるかも重要です。給与・福利厚生は強い一方、労働安全KPIとプラットフォーム上の責任には改善余地があります。
商品・サービス安全
楽天市場は製造者ではありませんが、出店審査、商品監視、権利侵害対策、不正取引対策を行っています。リコール情報ページも設け、行政等の回収情報へ利用者を誘導しています。【情報ランクA】
購入後には楽天あんしんショッピングサービスがあり、不着、欠陥品、模倣品疑い等を一定条件で補償します。
一方、5万店を超える市場では、すべての商品品質を楽天自身が製造時点から管理できるわけではありません。販売者との責任分担が複雑で、購入者が店舗へ先に連絡しなければならない場合もあります。
歴史的には送料施策で出店者への働き掛けが公正取引委員会から問題視されたこともあり、利用者だけでなく取引事業者への公平性もサービス安全の一部として見ています。
製品・サービス安全は3/5点です。
Innovation|AIや技術は人の負担を減らしているか
楽天はAIを重要な成長軸に置いています。しかし、AIモデルが高度であることと、働く人の負担が減ったことは同じではありません。今回のInnovationでは、実装と人への還元を分けて評価します。
AI・データの全社展開
楽天はAI & Data Committeeを設け、AIリスク管理、研究開発、セキュリティ、対外政策、データ活用を横断管理しています。全従業員向けのAI教育や社内ガイドラインも整備しています。【情報ランクA】
2025年には経済産業省・NEDOのGENIAC事業を活用したRakuten AI 3.0を発表し、日本語性能とコスト効率の向上を進めました。社内でもコーディング、文書作成、分析等へのAI利用を広げています。
これは単なる実証ではなく、サービス開発と社内利用の双方へ実装が進んでいるため、研究開発・継続改善は高く評価します。
店舗や利用者の負担軽減
楽天市場では、AIを商品探索、店舗支援、広告、問い合わせ等へ利用しています。小規模店舗にとって、商品説明の下書き、データ分析、販促支援をAIが補助できれば、専任のマーケティング人材を置く負担を下げられます。
利用者側でも、膨大な商品の中から条件に合うものを見つけやすくする検索・推薦改善は時間短縮につながります。
ただし「従来1時間かかった店舗作業が何分になったか」「削減された社員の作業時間が休暇や短時間勤務へ何時間返ったか」という全社横断の実績は十分に公開されていません。
そのため作業負担・危険削減は6/10点、商品・サービス改善は5/5点です。
生産性向上の人への還元
無料食事、育児支援、研修、給与水準など、人への還元策は多くあります。しかし、それらがAIによる生産性向上で新たに生まれた利益や時間とどの程度直接結びつくのかは確認できません。
AIで業務が減った部署の人員がどこへ再配置され、賃金や労働時間がどう変わったかというKPIも限定的です。そこで改善成果の人間への還元は3/5点です。
Innovation合計は19/25点です。
Protection|災害・サイバー攻撃・停止から生活を守れるか
楽天はEC、旅行、決済、通信等の生活インフラに近いデジタルサービスを持ちます。止まった場合、買い物だけでなく店舗売上、旅行予約、決済、情報取得にも影響するため、復旧能力が重要です。
BCPと災害訓練
楽天はBCP策定手順として、リスク評価、事業影響度分析、優先業務の特定、経営資源分析、代替策、事業継続戦略、緊急連絡網、訓練計画まで公開しています。【情報ランクA】
自然災害では、グループ規模の情報収集・連携体制を見直し、定期訓練を行っています。首都圏の社会機能が停止するケースを想定し、首都圏外から本社機能を代替する体制整備も進めています。
ウクライナ危機、中東情勢、台湾有事等も念頭に備蓄品や海外危機対応の訓練を進めています。
計画だけでなく定期訓練まで確認できるため、災害への備え・訓練は4/5点です。
サイバー防衛と情報漏えい
楽天グループはISO/IEC27001を基礎としたISMSを構築しています。楽天市場は2006年からISO27001認証を取得し、現在はグループ内の多数の会社・組織へ認証範囲を広げています。CISOを中心とした情報セキュリティガバナンスも整備しています。【情報ランクS・A】
一方、楽天市場では直近に二つの特定利用者情報漏えい事案を公表しています。
- 2024年12月、顧客ページのメール履歴表示に不具合があり、別の利用者のメールが表示される事象が発生
- 2025年10月、定期購入の変更・キャンセル通知で、本来「安心メルアド」によって暗号化されるべき顧客・店舗メールアドレスが暗号化されず送信される事象が発生
会社はいずれも修正し、再発していないことを確認したと説明しています。【情報ランクA】
外部攻撃による大規模侵入とは性質が異なりますが、個人情報を扱うプラットフォームとして無視できません。強い認証・管理体制と実際の漏えい事案を両方評価し、サイバー防衛・情報保護は4/5点です。
供給継続・復旧能力
楽天は物理的な一工場へ依存する製造会社ではありませんが、データセンター、ネットワーク、外部クラウド、物流、決済等への依存があります。BCPで優先事業と代替策を整理している点は評価できます。
ただし、主要サービスについて障害発生から全面復旧までの目標時間と実績を横断比較できる公開KPIは限定的です。供給継続・復旧能力は4/5点としました。
危機時の市民対応
楽天は災害時に「楽天クラッチ募金」を通じて寄付を受け付け、楽天ポイント等を使った支援手段を提供しています。2026年の熊本地震でも募金受付や、楽天トラベル上で交通・旅行関連情報の提供を行いました。【情報ランクA】
飲料や医薬品を直接製造して供給する企業とは役割が違いますが、決済・会員基盤を使って市民の支援行動をすぐ寄付へ変えられる点は評価できます。危機時の市民対応は4/5点です。
Protection合計は20/25点です。
主なニュース・最近の動き
直近の動きでは、業績改善、AI投資、情報セキュリティ、災害対応が評価へ直接関係します。
1.2026年8月|第2四半期で6年ぶりの親会社帰属黒字
2026年8月発表の第2四半期では、売上収益6,655億円、IFRS営業利益200億円、親会社所有者帰属利益77億円となりました。四半期ベースでは6年ぶりの親会社帰属黒字です。【情報ランクA】
2025年通期は最終赤字だったため、財務改善は大きな変化です。ただし、ここから従業員給与、安全投資、AI再教育へいくら追加配分されたかは別途確認が必要です。
2.2026年|BCPの地政学・自然災害対応を継続強化
楽天は最新のリスク管理ページで、ウクライナ危機、中東情勢、台湾有事等を念頭に、海外危機情報の収集、備蓄、訓練を継続すると説明しています。自然災害でも首都圏外から本社機能を代替する体制を進めています。【情報ランクA】
グループのデジタルサービスが一斉停止した場合の社会影響が大きいため、計画の存在だけでなく実際の訓練を行っている点をProtectionで評価しました。
3.2026年|熊本地震で募金・旅行情報を提供
2026年の熊本地震では楽天クラッチ募金で支援金を受け付け、楽天トラベルでも交通等の関連情報を案内しました。【情報ランクA】
自社の商品を被災地へ運ぶタイプの支援ではありませんが、既存の会員・ポイント・決済基盤を被災地支援へ転用できることは、デジタル企業ならではの市民対応です。
4.2025年12月|楽天市場の特定利用者情報漏えいを公表
楽天は2025年12月、電気通信事業法に基づく特定利用者情報の漏えいとして、2024年12月と2025年10月の楽天市場事案を公表しました。【情報ランクA】
一件はメール履歴の誤表示、もう一件はメールアドレスが暗号化されない状態で通知された問題です。いずれも修正後に再発がないことを確認しています。
ISO27001等の認証があっても、アプリケーション実装や更新作業のミスが残ることを示す事例であり、Cyber Protectionでは満点評価にしていません。
5.2025年12月以降|Rakuten AI 3.0と全社AI活用を拡大
楽天はRakuten AI 3.0を発表し、生成AIを社内業務とサービスへ広げています。AI & Data Committeeによるガバナンス、社内ルール、従業員教育も進めています。【情報ランクA】
研究開発力は高く評価できますが、2026年時点では「AIで浮いた時間が何時間の労働時間短縮へつながったか」「再配置された社員が何人か」といった人間側の成果は十分には見えません。Innovationでは技術導入と人への還元を分けて採点しました。
項目別スコア
適用基準は「100点制・第1版」、評価時点は2026年9月28日です。
Safety 33/50
| 評価項目 | 点数 | 主な根拠 |
|---|---|---|
| 賃金・利益の還元 | 8/10 | 単体平均年間給与850.8万円。給与改定・賞与制度あり。一方、AI・利益増から基本給への還元KPIは限定的 |
| 労働時間・休息 | 6/10 | 7.5時間勤務、休日・フレックス制度あり。口コミでは残業26.7~30.1時間、有休67~70%程度で部署差 |
| 雇用安定・待遇公平 | 4/5 | 単体人員増、中途採用80%、女性管理職約34%。男女賃金結果差や平均勤続6.3年は課題 |
| 福利厚生・育児・介護 | 4/5 | 無料食事、託児、育児・介護、健康、退職金等。女性復職率96.2%。拠点・雇用形態差あり |
| 人権・ハラスメント・労使 | 4/5 | 人権方針、通報、サプライヤー調査等を評価。親会社に労働組合はなく、労使交渉実績の詳細は限定 |
| 労働安全・健康 | 4/10 | ストレスチェック、勤怠監視、内部監査あり。単体の最新労災件数・度数率等の比較可能KPIが不足 |
| 商品・サービス安全 | 3/5 | 出店審査、商品監視、リコール情報、購入補償を実施。市場型のため品質責任は店舗と分かれ、過去に出店者公平性の行政問題も確認 |
Safetyは33点です。
Innovation 19/25
| 評価項目 | 点数 | 主な根拠 |
|---|---|---|
| 作業負担・危険の削減 | 6/10 | AI、BI、店舗支援を実装しているが、削減時間・配置転換の全社実績が限定的 |
| 商品・サービス改善 | 5/5 | 検索、推薦、AI、購入・決済・補償等を継続改善 |
| 改善成果の人間への還元 | 3/5 | 高給与、福利厚生、研修はあるが、AI生産性向上との直接的な還元KPIが不足 |
| 研究開発・継続改善 | 5/5 | Rakuten AI 3.0、AI & Data Committee、社内教育、外部研究事業への参加を評価 |
Innovationは19点です。
Protection 20/25
| 評価項目 | 点数 | 主な根拠 |
|---|---|---|
| 災害への備え・訓練 | 4/5 | BCP策定手順、定期訓練、海外危機対応、首都圏外からの本社代替体制を確認 |
| 生産・物流・調達の代替 | 4/5 | 優先業務・経営資源・代替策をBCPで設定。個別サービスの代替先詳細は限定的 |
| サイバー防衛・情報保護 | 4/5 | ISO27001、ISMS、CISO体制を評価。一方、2024・2025年の楽天市場情報漏えいを減点 |
| 供給継続・復旧能力 | 4/5 | BCPと復旧プロセスあり。主要サービスごとの復旧時間実績の横断開示は限定的 |
| 危機時の市民対応 | 4/5 | 楽天クラッチ募金、旅行情報等で災害支援。物資直接供給とは役割が異なる |
Protectionは20点です。
総合評価
Safety 33点、Innovation 19点、Protection 20点、合計72点です。
総合シビックランクはBです。
旧基準の記事では楽天グループ株式会社をAと評価していましたが、今回は旧ランクを点数へ換算していません。現行の「100点制・第1版」で、最新資料から15項目を一つずつ再採点した結果です。
楽天の強みは、働く人への給与・福利厚生と、デジタル技術を実際の大規模サービスへ投入できる開発力です。平均年間給与約851万円、無料食事、育児支援、女性管理職比率約34%、柔軟勤務など、制度として具体性があります。楽天市場も、小規模な店舗が全国販売へ参加できる仕組みを作り、消費者の検索・購入・決済の手間を大きく減らしています。
Innovationでも、AIを単なる研究テーマではなく、検索、広告、店舗支援、社内業務へ広げています。AI & Data Committeeによってリスク管理と利用拡大を同時に進めている点は評価できます。
しかし、現行基準でA以上へ進むには「制度を持っている」だけでは足りません。
労働面では、口コミで月26~30時間程度の残業が示され、部署差もあります。健康管理の仕組みは強いものの、楽天グループ株式会社単体の最新労災件数や度数率など、外部から安全成果を比較できる数字が不足しています。
AIについても、人の仕事を効率化した後の成果が十分見えません。AIで削減できた時間が休暇や労働時間短縮へ返ったのか、賃上げへ回ったのか、別の高付加価値業務へ配置転換されたのかを定量的に公開できれば、Innovationの評価はさらに上げられます。
Protectionは比較的強い分野です。楽天はBCPを具体的な手順まで公開し、定期訓練、海外危機対応、首都圏外からの本社代替を進めています。サイバーでもISO27001とCISO体制があります。
一方で、楽天市場では2024年と2025年に特定利用者情報の漏えい事案が起きています。会社が自ら公表し、修正と再発確認を行ったことは評価しますが、「認証を持っているから安全」とは扱いません。事故の存在と事故後の対応を分けて評価しています。
また、楽天市場の便利さは、出店者との力関係を適切に制御して初めて人間への貢献になります。公正取引委員会が確認した過去の送料施策問題は、巨大プラットフォームが店舗の販売条件を左右できる危険を示しました。現在の改善を評価しながら、出店者が異議を述べられる仕組み、苦情件数、解決状況の透明性を今後も確認する必要があります。
以上から、楽天グループ株式会社は、高い待遇、デジタル基盤、AI研究、BCPを持つ一方、労働安全の結果開示、AI成果の人への還元、情報漏えい防止、プラットフォームと出店者の公平性に課題を残す企業として、72点・シビックランクBと評価します。
出典一覧
1.楽天グループ株式会社「企業情報」【情報ランクA】
2.楽天グループ株式会社「第29期有価証券報告書」【情報ランクS】
3.楽天グループ株式会社「2025年度通期及び2026年第2四半期決算資料」【情報ランクA】
4.楽天グループ株式会社「人材マネジメント/福利厚生/健康・安全・ウェルネス」【情報ランクA】
5.楽天グループ株式会社「サステナビリティ戦略・社会指標」【情報ランクA】
6.楽天グループ株式会社「リスクマネジメント/事業継続管理」【情報ランクA】
7.楽天グループ株式会社「情報セキュリティ」【情報ランクA】
8.楽天グループ株式会社「特定利用者情報の漏えいに関する公表」2025年12月【情報ランクA】
9.楽天グループ株式会社「Responsible AI/AI & Data Committee」【情報ランクA】
10.楽天グループ株式会社「Rakuten AI 3.0」【情報ランクA】
11.公正取引委員会「楽天グループ株式会社に対する独占禁止法違反被疑事件の処理について」2021年12月6日【情報ランクS】
12.楽天市場「リコール情報」「楽天あんしんショッピングサービス」【情報ランクA】
13.OpenWork「楽天グループ株式会社 社員クチコミ」【情報ランクC】
14.Indeed「楽天グループ株式会社のクチコミ」【情報ランクC】
15.転職会議「楽天グループ株式会社の評判・口コミ」【情報ランクC】
16.エンゲージ会社の評判「楽天グループ株式会社」【情報ランクC】
17.楽天グループ株式会社「楽天クラッチ募金」【情報ランクA】
18.楽天トラベル「2026年熊本地震に関する案内」【情報ランクA】
情報ランクの基準
| 情報ランク | 基準 |
|---|---|
| S | 公的機関の資料で直接確認できる情報、または独立した第三者による検証・監査・認証等の裏づけがある情報。裏づけの対象範囲に限る |
| A | 企業自身の公式発表・報告書・採用情報など。独立した裏づけまでは確認していない企業側の説明・自己申告 |
| B | 役職や立場が確認できる関係者への取材・発言、記者による直接取材等に基づく情報 |
| C | 一般社員・元社員・パート・アルバイトなどの勤務経験に基づく口コミ |
| D | Xなどの一般的なSNS投稿で、発信者の立場や内容の裏づけが十分でない情報 |
| E | 匿名掲示板など、発信者の身元や関与をさらに確認しにくい情報 |
情報ランクは情報の出どころと裏づけを示すもので、企業の良し悪しを評価する総合シビックランクとは異なります。媒体だけでなく原発信者と根拠で判定するため、企業公式SNSの発表はAなどとして扱います。低い情報ランクは虚偽を意味せず、高い情報ランクも記述全体の正しさを保証するものではありません。
