私たちは、企業の商品を購入したり、サービスを利用したりすることで、未来の社会を形作ることができます。
鈴与シンワ物流株式会社は、食品・飲料・小麦粉・セメントなどを扱い、倉庫、港湾荷役、陸上輸送を担う物流会社です。2026年7月時点で社員71人を抱え、鈴与シンワート株式会社の100%子会社として事業を行っています。
物流DX、年間休日124日の求人、有給休暇取得の増加、時間外労働の削減など、人の負担を減らす具体的な動きが確認できました。
一方、倉庫・港湾作業を含む会社全体の労働災害件数、男女別賃金、離職率、DX導入後の配置転換や人員削減、災害時の市民支援などには公開情報がありません。
公開情報がないこと自体が課題であり、採点上も減点対象としました。
今回の審査結果は70点/100点、シビックランクBです。
審査結果
| 評価軸 | 得点 | 満点 |
|---|---|---|
| Safety | 38 | 50 |
| Innovation | 18 | 25 |
| Protection | 14 | 25 |
| 総合 | 70 | 100 |
| シビックランク | B | — |
強いのは、労働時間改善の実績、福利厚生、物流DX、複数拠点を利用した物流網です。
弱いのは、労災や雇用へのDXの影響、サイバーセキュリティ、災害後の復旧目標など「実際に人をどこまで守れているか」を判断する数値の不足です。
事業内容と人間への貢献
鈴与シンワ物流は2011年に物流事業を分社して設立され、貨物利用運送、港湾運送、倉庫事業を行っています。2026年7月時点の社員数は71人、資本金は5,000万円です。
倉庫では食品、飲料水、コンピューター機器、一般雑貨などを扱い、港湾では芝浦・大井・東扇島・大黒・本牧などで貨物を取り扱っています。
陸運では小麦粉、セメント、住宅機器、食品などを関東・新潟方面へ輸送しています。
つまり同社が機能しなくなれば、単に「荷物が遅れる」だけではありません。
食品や小麦粉の供給、建築に必要なセメントや骨材、輸出入貨物の流れにも影響します。
社会の基礎的な物流を支えるという意味で、人間への貢献が明確な事業です。
Safety:38/50点
賃金・利益還元 8/10点
2026年の総務人事求人では予定年収400万~600万円、基本給月23万5,000~32万円、昇給年1回、賞与は2025年実績4.2カ月分とされています。
運行管理職でも月給23万7,500~33万2,500円、賞与4.2カ月分、時間外手当100%支給などが確認できます。
さらに親会社の最新有価証券報告書ベースでは、鈴与シンワ物流は売上高約33.31億円、経常利益約2.40億円、純利益約1.66億円を計上しています。
利益を出しながら賞与・昇給を実施している点は評価できます。
ただし、社員全体の平均給与、賃上げ率、利益のうちどれだけを労働者に還元したかは公開されていません。
ここまで公開されれば満点に近づきます。
労働時間・休息 9/10点
国土交通省に提出された2025年10月の進捗報告では、2024年度の有給休暇取得実績は1人平均12.7日、時間外労働は2023年度から2024年度にかけて21%削減したと報告されています。
同社自身が2030年までの目標として「時間外30%削減」を掲げています。
直近求人でも年間休日124日、入社時から有給14~24日などが確認できます。
実績値まで公表している点は高く評価できます。
ただし、30%削減という自社目標にはまだ達しておらず、職種別では倉庫作業求人に月20時間程度の残業も確認されます。
雇用安定・待遇公平 4/5点
国交省へのSDGs申請資料では、同一労働同一賃金への対応、育児・介護休業規程、定年退職者再雇用規程などを整備していると報告しています。
2024年の社員数66人に対して、2026年7月は71人となっており、少なくとも会社全体の公開人数では大幅な人員縮小は見られません。
ただし、正規・非正規の待遇差、男女賃金差、離職率、平均勤続年数は十分に公開されていません。
福利厚生 4/5点
社会保険、退職金、財形貯蓄、社員持株会、産休・育休、保養施設、資格取得費用の補助、インフルエンザ予防接種補助などが確認できます。
近年の求人には奨学金返還補助制度も記載されています。
制度の種類は充実していますが、育休取得率など「実際にどれくらい利用されているか」の数値が不足しています。
人権・ハラスメント・労使関係 3/5点
国交省への提出資料では、差別防止の教育・相談体制、ハラスメント防止規程を整備し、管理職を対象にパワーハラスメント防止の外部研修を実施したとしています。
一方、相談件数、是正件数、労働組合・従業員代表との対話実績などは公開されていません。
社員口コミでは、2024年の現職社員から「システム刷新や電子化が進み、従業員からの改善提案を歓迎する文化ができてきた」とする投稿があります。
一方、2020年に退職した社員からは「経営陣と現場との温度差」「相談や提案がしにくい」とする投稿もありました。
口コミは少数なので、会社全体を代表するものとは扱えません。
労働安全・健康 6/10点
月1回の安全衛生委員会、安全パトロール、健康診断の完全実施、インフルエンザ予防接種補助などが国交省提出資料に記載されています。
しかし、鈴与シンワ物流本体について、倉庫・港湾を含めた年間労働災害件数、休業災害度数率、死亡事故件数などの公開情報は確認できませんでした。
物流会社ではフォークリフト、荷役、クレーン、港湾作業など身体的危険を伴う業務が多いため、この情報不足は小さくありません。
商品・サービスの安全 4/5点
2024年度について同社が国交省へ報告した「法令違反」はゼロです。
また、安全パトロールなどの仕組みも確認できます。
ただし事故・貨物破損・誤配送などを会社全体で数値化した品質指標は確認できませんでした。
口コミ・SNSの確認
転職会議では口コミ件数が1件と非常に少なく、表示上の総合評点は2.71です。
この数字だけで職場全体を評価するのは困難です。
エン系の口コミでは、2024年の現職社員がDXや改善提案の増加を評価する一方、2020年の元社員は現場との温度差や人材育成への懸念を投稿しています。
年代が異なるため、2020年の問題が現在も続いているとは断定できません。
Xでは物流拠点開設などのニュース投稿は確認できましたが、今回の調査では会社固有の労働環境を判断できる社員投稿は十分に確認できませんでした。
5ちゃんねる、爆サイについても、採点に使える具体的内容を確認できませんでした。
投稿が見つからないこと自体は減点していません。
Innovation:18/25点
| 項目 | 得点 |
|---|---|
| 作業負担・危険の削減 | 7/10 |
| 商品・サービスの改善 | 4/5 |
| 改善成果の人間への還元 | 3/5 |
| 研究開発・現場改善の継続 | 4/5 |
同社は物流DXを数年かけて進めています。
運行前点検をスマートフォンで記録する仕組みを導入し、正確な勤務時間を把握できるようにしたほか、IoT機器と動態管理システムを連携させ、渋滞・荒天時の経路誘導や車載カメラによる状況把握を進めています。
2026年8月に本格稼働した平和島営業所でも、無線LANとタブレット端末を導入し、倉庫作業のデジタル化を進めています。
ここで重要なのは、「DXをした」というだけではありません。
国交省報告では時間外労働が21%減少しているため、改善が人の時間にも還元されている可能性があります。
ただし、DX導入前→導入時→数カ月後→翌年度という形で、必要人員、配置転換、退職者、人員整理、求人、労働時間を一体的に追跡した公開資料はありません。
技術によって人を楽にしたのか、人を減らしたのかまで確認できないため、Innovationは18点に抑えています。
Protection:14/25点
| 項目 | 得点 |
|---|---|
| 災害への備え・訓練 | 4/5 |
| 生産・物流・調達の代替 | 4/5 |
| サイバー防衛・情報保護 | 2/5 |
| 供給継続・復旧能力 | 3/5 |
| 危機時の市民への対応 | 1/5 |
国交省への提出資料には、鈴与グループ全体でBCPを立案し各社で取り組んでいること、防災品を備蓄していることが記載されています。
さらに倉庫、複数港湾、関東・新潟の営業所、子会社車両と協力会社車両を組み合わせた物流網を持っています。
小麦粉輸送だけでも子会社22両、協力会社40両を利用するなど、一つの輸送手段だけに依存しない構造です。
2026年には平和島営業所も加わり、東京湾岸の物流拠点が拡充されました。
一方、サイバー面では個人情報保護方針やセキュリティシステム、社員教育についての記載はありますが、ISO/IEC 27001の取得、侵入テスト、インシデント件数、バックアップ・復旧時間などの具体的公開は確認できません。
災害時に地域住民へ物資を提供する仕組みなど、市民を直接守る活動についても公開情報が不足しています。
良いニュース
Safetyでは労働時間の改善、Innovationでは物流DX、Protectionでは新拠点による物流網の強化が確認できました。
これらは会社の効率だけでなく、社員の休息時間を増やし、食品や建材などを社会へ安定して届けることにつながる取り組みです。
2025年10月|有給12.7日・時間外労働21%削減【Safety】
2024年度の有給取得実績が1人12.7日に達し、会社目標の「10日」を上回りました。
また時間外労働も前年度比21%削減しています。
単に「働き方改革に取り組む」と発表するだけでなく、数字を国交省へ報告している点は評価できます。
2026年8月|平和島営業所を新設し物流DXを導入【Innovation・Protection】
東京都大田区で約970坪の平和島営業所を本格稼働させ、無線LANとタブレットを使った倉庫運営を開始しました。
既存拠点との連携や貨物集約も進めるとしています。
物流能力の追加とデジタル化を同時に進めている点は、物流需要の増加や人手不足への対応として評価できます。
悪いニュース
物流会社では、効率化以上に「人が事故に遭わないこと」が重要です。
鈴与シンワ物流本体の重大な行政処分や死亡事故は今回確認した公開資料からは見つかりませんでしたが、実運送を担う子会社で事故件数が増えたことと、本体の労災情報が十分に公開されていないことはSafety上の課題です。
2025年度|実運送子会社で人身事故4件・自責物損事故16件【Safety】
鈴与シンワ物流の実運送子会社であるシンワ運輸東京は、2025年度の目標を「人身事故0件・自責物損事故7件以下」としていましたが、実績は人身4件・物損16件となり、目標未達でした。
一方、自動車事故報告規則に該当する重大事故は0件です。
これは鈴与シンワ物流本体の事故件数ではありません。
しかし、同社の陸運事業はシンワ運輸東京を実運送子会社として利用しているため、サービス全体のSafetyを考えるうえでは無関係とは扱えません。
事故後にはバック事故対策、デジタコ管理、eラーニングなどの再発防止策が強化されています。
2026年時点|本体の労災実績が十分に公開されていない【Safety】
鈴与シンワ物流自身は安全パトロールや安全衛生委員会などを公開していますが、倉庫・港湾・荷役を含む労働災害件数や休業災害率などを確認できません。
公開情報がありません。
これは課題であり、採点上も減点対象です。
総合評価と改善してほしい点
鈴与シンワ物流は、単に昔ながらの物流会社を続けている企業ではありません。
物流DX、時間外労働削減、福利厚生、新倉庫開設、BCPなど、Safety・Innovation・Protectionの各分野で具体的な取り組みがあります。
特に国交省への報告で有給取得と時間外削減を数値公開している点は重要です。
一方で、次に公開してほしいのは、倉庫・港湾を含む労災件数、離職率、男女賃金差、DX後の人員推移・配置転換、サイバー事故件数、災害時の復旧目標と地域支援実績です。
効率化したこと自体ではなく、
「社員の時間が増えた」
「事故が減った」
「雇用を維持しながら負担を減らした」
というところまで公開できれば、現在のBランクからさらに上を狙える企業です。
総合得点:70/100点
シビックランク:B
出典
| 情報源 | 主な確認内容 |
|---|---|
| 国土交通省「みなとSDGsパートナー」資料 | 有給取得、時間外削減、法令違反、BCP、人権・労働施策 |
| 鈴与シンワ物流公式サイト | 会社概要、事業、拠点、SDGs、平和島営業所 |
| 鈴与シンワート物流DX導入事例 | 運行管理システム、IoT、スマホ点検、DX |
| 鈴与シンワート有価証券報告書 | 親子関係、売上・利益 |
| doda・マイナビ等 | 給与、休日、福利厚生 |
| エン転職・転職会議 | 社員・元社員口コミ |
シビックランク基準
| ランク | 点数 |
|---|---|
| S | 90~100 |
| A | 80~89 |
| B | 70~79 |
| C | 60~69 |
| D | 50~59 |
| E | 40~49 |
| F | 20~39 |
| G | 0~19 |
情報ランク
情報ランク:S
国土交通省への提出資料という公的資料を中心に、企業公式資料、有価証券報告書、求人情報、社員口コミまで照合できました。
ただし、労災・離職率・DX後の雇用変化など一部の重要情報は非公開です。補助的に企業公式資料や口コミ情報も使用しています。
