私たちは、企業の商品を購入したり、サービスを利用したりすることで、その企業の働き方や安全対策、事業のあり方を間接的に支えています。
ゆうちょ銀行で口座を持ち、ATM、送金、決済、資産運用などのサービスを利用すれば、手数料や運用・決済を通じた収益は株式会社ゆうちょ銀行の事業を支えます。そこで得られた利益が、社員の賃金や休暇、安全対策、システムの安定運用、サイバー防御、サービス改善、人材育成などにどう使われるのかは、利用する側にとっても無関係ではありません。
今回の審査では、2025年度の正社員平均給与が約730万円、月平均時間外労働が6.3時間、有給休暇取得率が96.2%、男女とも育児休業取得率が100%であることを確認しました。健康診断受診率も100%で、働く人の休息や育児支援についてはかなり具体的な成果が公開されています。[出典3]
また、全国23,306店舗、通常貯金約1.2億口座という巨大な金融ネットワークを持ち、災害時には通帳や印章を失った被災者への非常払い戻しや義援金の無料送金を実施しています。BCP訓練を年1回以上行い、サイバー分野でも専任CISO、CSIRT、SOC、第三者評価、サイバー演習まで確認できます。[出典4・7・8]
一方で、2024年に郵便局で、利用者の同意を得ず、ゆうちょ銀行の貯金残高などの非公開金融情報を保険営業目的で利用した事案が発覚しました。その後も再発防止対応は続いており、2026年4月23日にはゆうちょ銀行を含む4社に金融庁の報告徴求命令が出され、2026年9月24日に再発防止策の実施状況を報告しています。金融機関にとって顧客の金融情報を適切に扱うことは根幹的な安全性に関わるため、大きな減点要因としました。[出典10・11]
そのため、今回の総合点は80/100点、シビックランクAとしました。働く人の休息、育児、健康、災害対応、サイバー防御には非常に具体的な強みがありますが、顧客情報管理の再発防止、男女賃金差、労災増加、AI・自動化による成果を働く人へどこまで還元できるかが今後の重要課題です。
株式会社ゆうちょ銀行の企業審査結果
| 評価軸 | 得点 |
|---|---|
| Safety | 38/50 |
| Innovation | 21/25 |
| Protection | 21/25 |
| 総合 | 80/100 |
| シビックランク | A |
| 主な強み | 主な課題 |
|---|---|
| 月平均時間外労働6.3時間 | 男女の賃金差が全従業員で68.8% |
| 有給休暇取得率96.2%、平均19日 | 社員エンゲージメント48.1 |
| 男女とも育児休業取得率100% | 労災年千人率が1.10へ上昇 |
| 健康診断受診率100% | 非公開金融情報の不適切利用問題 |
| BCP訓練を年1回以上実施 | 復旧時間の実測値は十分公開されていない |
| CSIRT・SOC・サイバー演習 | AI導入前後の残業・人員・賃金への効果が不十分 |
| 全国23,306店舗の金融ネットワーク | 従業員数は減少傾向 |
| 被災者への非常払い戻し・義援金無料送金 | 情報管理の再発防止が継続中 |
事業内容と人間への貢献
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 会社名 | 株式会社ゆうちょ銀行 |
| 設立 | 2006年9月1日 |
| 本社 | 東京都千代田区大手町二丁目3番1号 |
| 資本金 | 3兆5,000億円 |
| 従業員数 | 10,659人 |
| 営業所 | 235 |
| 業務内容 | 銀行業 |
| 通常貯金口座数 | 約1.2億口座 |
| 総店舗数 | 23,306店 |
| 貯金残高 | 約186兆円 |
従業員数は2026年3月31日時点です。通常貯金口座数、店舗数、貯金残高も2026年3月末時点の公表値です。[出典1・4]
事業による人間への貢献
ゆうちょ銀行の最大の役割は、全国どこに住んでいても、預金、現金の入出金、送金、決済などの基本的な金融サービスへアクセスできる環境を維持することです。
2026年3月末時点で総店舗数は23,306店、通常貯金口座数は約1.2億口座です。都市部だけでなく、民間銀行の店舗が少ない地域でも郵便局ネットワークを通じて金融サービスを利用できることは、生活インフラとして大きな意味があります。[出典4]
目の不自由な利用者向けには音声ガイド・点字対応ATM、点字通帳・キャッシュカード、聴覚障がい者向けの筆談器なども用意されています。金融サービスから取り残されやすい人も利用できるようにする取り組みとして評価できます。[出典9]
Safety 38/50
Safetyでは、社員が安全・健康に働けるか、利益が働く人へ還元されているか、利用者が安心して金融サービスを使えるかを評価します。
ゆうちょ銀行は、残業、有給、育児、健康、賃金などをかなり細かく数値公開しています。この透明性自体も評価できます。
一方、男女賃金差、労災指標の悪化、非公開金融情報の不適切利用は、高評価の中でも無視できない課題です。
賃金・利益の還元 6/10
2025年度の正社員平均給与は約730万円で、2024年度の約716万円から約14万円増えています。
男性平均は約810万円、女性平均は約641万円です。[出典3]
平均給与が継続的に上昇し、詳細を公開していることは評価できます。
一方、男女の平均賃金差は2025年度で全従業員68.8%、正規雇用従業員67.3%です。
会社は男女で賃金体系や昇進・昇給制度に差を設けていないと説明し、年齢構成や役職構成の偏りを理由として挙げています。それでも、結果として大きな差が残っています。
そのため6/10点です。
女性管理職の増加とともに賃金差が継続的に縮小し、平均賃金の上昇が物価上昇率なども上回る状態が確認できれば8点以上を検討できます。
労働時間・休息 10/10
2025年度の月平均時間外労働は6.3時間です。
2021年度6.2時間、2022年度6.6時間、2023年度6.8時間、2024年度6.7時間と、5年間を通して一桁台を維持しています。
有給休暇は2025年度に平均19.0日取得し、取得率は96.2%でした。過去5年間も96~97%台で推移しています。[出典3]
残業時間と有給取得の両方について高い水準が継続しているため10/10点としました。
従業員口コミサイトでは、転職会議の投稿者集計で残業月14.7時間、有給消化率87.5%、OpenWorkでは残業約13時間、有給消化率約90%という数字も出ています。公式平均より残業が多い層が存在する可能性はありますが、それでも一般的には比較的短い水準です。[出典14・15]
雇用の安定・待遇の公平性 3/5
2025年度の離職率は4.8%、3年間の新卒定着率は90.1%です。
契約従業員比率は2021年度21.4%から2025年度17.9%へ低下しています。また、2026年4月には契約従業員34人を正社員へ登用しています。障がい者雇用率も2026年6月時点で3.26%です。[出典3]
一方、正社員数は2021年度末の12,169人から2025年度末の10,659人へ減少しています。
人口減少や業務効率化を踏まえた人員構成の見直しを会社自身も明示しており、AIで創出した人材を重点分野へ再配置する方針を示しています。大量解雇を示す材料は確認できませんが、今後も自動化と人員減少の関係を追う必要があります。[出典5]
そのため3/5点です。
福利厚生・育児・介護 5/5
2025年度の育児休業取得率は男性100%、女性100%です。
男性の4週間以上の育児休業取得率も86.8%まで高まっています。
育休からの復帰率は98.5%、復帰後12か月の定着率は96.8%です。
子の看護休暇取得者は1,375人、介護休業取得者は43人でした。[出典3・4]
制度を設けているだけでなく、実際に男女ともほぼ全員が育休を取得し、高い復職率まで確認できるため5/5点です。
人権・ハラスメント・労使関係 4/5
ゆうちょ銀行は、差別や人権侵害を禁止し、セクシュアルハラスメント、パワーハラスメント等を排除して安全で働きやすい職場環境を確保すると明記しています。
また、人権レポートを国連指導原則報告フレームワークに基づいて公表しています。[出典6・13]
2026年9月には、カスタマーハラスメント対策として、生成AIを利用したAIアバターロールプレイング「Talktice」を2026年12月から導入すると発表しました。顧客対応で受ける心理的負担を減らし、実践的な対応力を身につける目的です。[出典16]
制度面は充実しているため4点です。
一方、社員エンゲージメントは2025年度48.1で、使用している外部調査の参加企業平均50を下回っています。社員満足度も65.5%です。制度だけでなく職場の実感をさらに改善する余地があります。[出典3]
労働安全・健康 8/10
健康診断受診率は2021~2025年度まで毎年100%です。
2025年度のストレスチェック受検率は98.7%、健康イベント参加率は33.1%でした。高ストレス者割合は17.1%で、前年18.4%から改善しています。[出典3]
一方、労働災害年千人率は、
2021年度 0.38
2022年度 0.46
2023年度 0.61
2024年度 0.93
2025年度 1.10
と上昇しています。[出典3]
健康管理の仕組みと実績は非常に具体的ですが、労災指標が5年間上昇しているため満点とはせず8/10点です。
事故の種類や原因を公開し、年千人率を再び低下させることが確認できれば10点を検討できます。
商品・サービスの安全 2/5
サイバーセキュリティについては非常に強い仕組みがあります。
代表執行役社長とCISOの下に専門組織を設置し、ゆうちょCSIRTとゆうちょSOCがインシデント対応と監視を担当しています。
FIDO認証、ワンタイムパスワード、eKYC、不正取引モニタリング、サイバー演習、第三者評価も確認できます。[出典8]
不正に預金が引き出された場合についても、一定条件のもとで全部または一部を補償する制度があります。[出典17]
しかし、金融サービスの安全はサイバー攻撃だけではありません。
2024年には、郵便局で顧客の同意を得ず、ゆうちょ銀行の非公開金融情報を保険営業目的で利用した事例が確認されました。
2025年、2026年と金融庁による報告徴求命令を受け、2026年9月時点でも再発防止策の実施状況を報告している段階です。[出典10・11]
銀行にとって口座残高や取引状況は極めて重要な個人情報です。
技術的なセキュリティ対策は非常に強いものの、人による情報利用の内部統制で重大な問題が確認されたため2/5点としました。
従業員・元従業員の口コミ
口コミサイトでは、公式数値ほど一様に良い評価ではありません。
転職会議では投稿者集計で残業月14.7時間、有給消化率87.5%です。公式の6.3時間・96.2%とは対象者や算出方法が異なるため、単純比較はできません。[出典14]
Indeedでは2026年4月時点で39件の口コミによる総合評価が2.6/5です。
2026年4月10日に青森県の事務職として投稿された口コミには、
「目標必達の企業文化でノルマがきつい。」
という記述があります。情報ランクBとして扱います。[出典15]
一方、2026年2月の投稿では、育児休暇や両立支援制度を評価する声も確認できます。
公式の育休取得率100%とも方向性が一致しています。
SNS・匿名掲示板の確認結果
X、5ちゃんねる等について、ゆうちょ銀行と残業、ノルマ、退職、パワハラ、自動化などを組み合わせて確認しました。
今回の採点を変更できるだけの、本文まで確認可能で時期・立場を特定できる投稿は使用していません。
Innovation 21/25
Innovationでは、AI・デジタル技術を導入したこと自体ではなく、人が行っていた定型作業や負担を減らし、その成果を人へ返しているかを評価します。
ゆうちょ銀行は生成AI、AI-OCR、RPA、BPMS、アプリなどを広い範囲へ展開しており、銀行業務の省力化はかなり進んでいます。
作業負担・危険の削減 8/10
2026~2028年度の新中期経営計画では、生成AIによる議事録作成、文書検索、マネーロンダリング対策、サイバーセキュリティ、市場運用、郵便局営業支援などへのAI活用を進めています。
事務センターではAI-OCR、RPA、BPMSを使い、書類読み取り、データ入力、業務フロー管理などの定型作業を自動化しています。[出典12]
人が繰り返し行う事務作業をシステムへ移している点は明確なため8点です。
一方、導入前後で「年間何時間減ったか」「何人分の作業がなくなったか」といった具体的削減量は十分公表されていません。
そこまで公開されれば10点を検討できます。
商品・サービスの改善 5/5
ゆうちょ通帳アプリは2026年3月末で約1,662万口座まで拡大しています。
口座残高や取引確認だけでなく、送金、各種手続き、資産運用などデジタルで利用できる範囲を広げています。[出典4・12]
一方で、全国23,306店舗というリアル拠点も残しており、スマートフォンを使える人だけに金融サービスを限定していません。
デジタルと店舗を併用することで、高齢者やデジタル利用が難しい人にも金融アクセスを残している点を含め5/5点です。
改善成果の人間への還元 3/5
ゆうちょ銀行は、AIなどによって創出された人材を、成長・重点分野へ配置すると明示しています。
つまり、省人化によって不要になった人を単純に削減するのではなく、別の仕事へ移す考え方を公表しています。[出典5]
また、2025年度の月平均残業6.3時間、有給取得率96.2%という結果から、働く時間の面では良好な状態が確認できます。[出典3]
ただし、AI・RPA導入前後で残業が何時間減ったのか、削減したコストの何%を賃金や休日へ還元したのかという因果関係は公開されていません。
そのため3/5点です。
研究開発・現場改善の継続 5/5
本社DX研修受講率は2024年度99.2%で、ITパスポート等の取得推進も行っています。
データサイエンティスト育成については、外部委託していた研修を内製化するまで進めています。[出典3・18]
さらに2026年にはAI企業neoAIとの資本業務提携を発表し、AI活用を中期経営計画の経営基盤そのものへ組み込んでいます。継続性が明確なため5/5点です。
自動化・AI導入後の雇用状況
正社員数は2021年度末の12,169人から2025年度末の10,659人へ減少しています。[出典3]
ただし、この減少をAIやRPAによる人員削減と直接結びつける根拠は確認できません。
会社はむしろ、今後の人口構成を踏まえながらAIで生産性を上げ、「創出された人材を注力分野へ重点的に配置する」と説明しています。[出典5]
2026年度の新卒採用は370人で、2025年度の181人から大幅に増えています。少なくとも直近では採用停止によって人員を減らす方針ではありません。[出典3]
今後は、AI導入部署ごとに削減された業務時間、配置転換人数、採用数、退職数を公開できれば、自動化が人を切るためではなく、人を別の仕事へ移すために使われていることをより明確に確認できます。
Protection 21/25
Protectionでは、地震、台風、システム障害、サイバー攻撃、犯罪などが発生した場合でも、利用者が預金を引き出し、送金し、生活を続けられるかを評価します。
金融は生活インフラなので、平時の便利さだけでなく、有事に口座へアクセスできることを特に重視します。
災害への備え・訓練 5/5
ゆうちょ銀行は事業継続計画を策定し、危機管理体制を整備しています。
さらに危機発生を想定した訓練を年1回以上実施すると公表しています。[出典7]
「BCPがある」だけでなく、定期的な訓練まで明示されているため5/5点です。
生産・物流・調達の代替 3/5
銀行なので製造拠点の代替ではなく、店舗・ATM・デジタルチャネルをどれだけ分散できているかを評価します。
ゆうちょ銀行には全国23,306店舗のネットワークがあり、ATMも全国に多数配置されています。
2026年の年末年始にも全国約14,000か所、約18,000台のATMを稼働させた実績があります。[出典4・19]
一つの店舗が停止しても別店舗やATM、アプリ等へ切り替えられるため3点です。
一方、大規模システム障害時に別系統へ何分で切り替えられるのかといった技術的な代替能力は十分公開されていません。
サイバー防衛・情報保護 5/5
サイバー攻撃を経営上のトップリスクの一つと位置づけ、CISO、専任部署、CSIRT、SOCを設置しています。
SOCではセキュリティ機器やネットワーク機器等のログを監視し、攻撃の兆候を検知・分析しています。
定期的な訓練・演習も行い、FFIEC-CATによる第三者評価を受け、2025年度からはCRI Profileを使った高度化も進めています。[出典8]
本人認証についてもFIDO、ワンタイムパスワード、eKYCを導入しています。
技術的なサイバー防衛については具体性・継続性・第三者評価がそろっているため5/5点です。
なお、非公開金融情報問題はサイバー攻撃ではなく、人による情報利用・内部統制の問題としてSafety側で大きく減点しています。
供給継続・復旧能力 3/5
全国の店舗、ATM、アプリ、インターネットバンキングなど複数のチャネルを持ち、メンテナンス情報も事前に公表しています。
2026年も各種サービスについて計画メンテナンスを実施し、利用停止時間を事前に案内しています。[出典20]
一方、大規模障害発生時の目標復旧時間、バックアップへの切替時間、復旧訓練で実際に達成した時間については十分な公開情報がありません。
そのため3/5点です。
危機時の市民への対応 5/5
災害時に通帳、証書、印章などを失った被災者に対し、本人確認などを行ったうえで1人20万円を限度に貯金を払い戻す非常取扱いを行っています。
また、日本赤十字社、共同募金会、自治体などへの災害義援金の無料送金も実施しています。[出典7]
2026年にも台風第24号、第25号、第18号などの災害に対する非常取扱い・義援金無料送金を実際に実施しています。[出典21]
計画だけではなく、現在の災害でも実際に運用されているため5/5点です。
人への還元
ゆうちょ銀行では、人への還元を比較的具体的に確認できます。
平均給与は2024年度約716万円から2025年度約730万円へ上昇し、残業は月6.3時間、有給取得率は96.2%、男女の育休取得率は100%です。[出典3]
AIやRPAによる効率化で生み出した人材を成長分野へ再配置する方針も明記しています。[出典5]
そのため、コンプモト株式会社の審査で見られたような「自動化は分かるが、人への還元が全く見えない」という企業とは大きく異なります。
ただし、「AI導入によって年間○万時間削減し、その結果として残業が○時間減り、給与が○%上がった」という直接的な因果までは公開されていません。
今後、技術投資の成果と賃金・休日・人員配置をつなげて公表できれば、人への還元をさらに高く評価できます。
良いニュース・最近の前向きな動き
直近では、社員をカスタマーハラスメントから守るAI研修、災害時の非常取扱い、AIによる業務効率化など、Safety・Protection・Innovationのそれぞれで具体的な動きがあります。
サービスを利用することによって、安全な職場、災害に強い金融インフラ、単純作業を減らす技術への投資を間接的に支えることにつながります。
2026年9月 カスハラ対応AIアバター研修を導入へ
2026年9月29日、ゆうちょ銀行は生成AIを活用したカスタマーハラスメント対応ロールプレイサービス「Talktice」を2026年12月から導入すると発表しました。[出典16]
AIアバターを相手に繰り返し実践練習することで、窓口社員が過度な要求や暴言に直面した際の初動対応、エスカレーション判断などを練習できます。
顧客対応を担当する社員の心理負担を減らす方向のAI利用として評価できます。
2026年9~10月 台風災害に対する非常取扱いを実施
2026年9月から10月にかけ、台風第24号、第25号、第18号などの被災地域で非常取扱いを実施しています。
災害時に通常の本人確認や書類をそろえられない被災者が、自分の預金へアクセスできる仕組みは、金融機関ならではの生活支援です。[出典21]
2026年 AIを全社的な業務効率化へ拡大
新中期経営計画では生成AI、AI-OCR、RPA、専門領域AI、AIコンシェルジュなどを活用し、単純事務と問い合わせ対応を効率化する方針を示しています。[出典12]
人口減少を「社員へさらに仕事を詰め込む」ことで乗り切るのではなく、人が行う必要のない業務を技術へ移す方向は評価できます。
悪いニュース・問題となった動き
最も重要な問題は、顧客の金融情報を扱う内部統制です。
また、労働環境全体は良好ですが、男女賃金差、労災指標、社員エンゲージメントなど、改善が必要な数字も明確に公開されています。
2026年9月時点でも非公開金融情報問題の再発防止を継続
2024年、郵便局で、顧客からクロスセル同意を得ないまま、ゆうちょ銀行の口座残高等の非公開金融情報を利用して保険営業の来局案内を行う事例が確認されました。[出典10]
その後、金融庁は2025年3月18日、さらに2026年4月23日にもゆうちょ銀行を含む4社へ報告徴求命令を出しています。
2026年9月24日にも再発防止策と実施状況を当局へ報告しています。[出典11]
サイバー防御が強くても、内部で顧客情報が不適切に使われれば利用者のプライバシーは守れません。
再発件数がゼロになったことや、内部監査・アクセス制御による具体的成果を継続公開する必要があります。
男女賃金差は依然として大きい
2025年度の女性賃金は男性を100とした場合、全従業員で68.8、正規雇用従業員で67.3です。
管理職では90.6、総合職では91.4まで差が縮まるため、会社の説明どおり職種・年齢・役職構成の影響は大きいと考えられます。
それでも会社全体の結果として30%以上の差が残っているため、今後も女性管理職登用とキャリア機会の改善が必要です。[出典3]
労災年千人率が5年連続で上昇
労災年千人率は2021年度0.38から2025年度1.10へ上昇しています。[出典3]
絶対値だけで直ちに深刻と判断することはできませんが、継続的に上がっている点は無視できません。
事故の内訳、原因、再発防止策をより具体的に公開し、指標を低下させることが必要です。
総合評価と、これから改善してほしいこと
現在80点・シビックランクAです。
Sは90点からなので、次のランクまであと10点です。
残業、有給、育児、健康、サイバー防御、災害対応は高い水準にあります。
一方、顧客情報管理の問題が現在も再発防止段階にあること、男女賃金差、労災指標、自動化成果と人への還元の因果が十分見えないことがSとの差になっています。
非公開金融情報問題の再発防止を「結果」で示してほしい
現在の「商品・サービスの安全」は2/5点です。
技術的なサイバー防御は極めて強い一方、顧客の非公開金融情報が不適切に営業利用された問題があり、2026年にも金融庁への報告が続いています。
不適切利用件数ゼロを継続し、アクセス権限管理、監査、検知件数、是正結果などを継続公開できれば2→5点を検討できます。
加点は+3点で、総合80→83点・Aです。
労災指標を改善してほしい
現在の「労働安全・健康」は8/10点です。
健康診断100%、ストレスチェック98.7%などは非常に高い水準ですが、年千人率は2021年度0.38から2025年度1.10へ上昇しています。
事故原因ごとの対策を進め、年千人率が明確に低下し、その状態を複数年維持できれば8→10点を検討できます。
+2点で総合82点になります。
参考企業として、当サイトで審査したキリンビバレッジ株式会社は、労災死亡者数や休業災害度数率まで継続開示し、「労働安全・健康」8/10点としています。
AIの成果を「社員が得た時間」で公開してほしい
現在の「作業負担・危険の削減」は8/10点、「改善成果の人間への還元」は3/5点です。
生成AI、RPA、AI-OCRなどの導入内容は具体的ですが、「何時間の仕事がなくなったのか」「残業が何時間減ったのか」「何人を別業務へ配置したのか」という成果は十分公開されていません。
削減時間、配置転換人数、残業削減、賃金・休日への還元を一つの流れとして開示できれば、作業負担8→10点、人への還元3→5点を検討できます。
合計+4点で総合84点・Aです。
参考企業のキリンビバレッジ株式会社は、工場自動化で年間約2,300時間の業務負荷削減や重量物作業の廃止まで具体化しており、当サイトでは「作業負担・危険の削減」8/10点、「改善成果の人間への還元」4/5点としています。
システム復旧時間を公開してほしい
現在の「供給継続・復旧能力」は3/5点です。
BCPと訓練、全国ネットワーク、サイバー組織はありますが、大規模障害時に「何分・何時間で送金やATMを復旧できるか」という結果は十分公開されていません。
主要サービスごとのRTOと実地訓練の復旧時間を継続公開できれば3→5点を検討できます。
+2点で総合82点となります。
参考企業として、当サイトで審査したキリングループロジスティクス株式会社は、輸送障害時のバックアップ輸送手段まで具体化しており、「生産・物流・調達の代替性」5/5点としています。
次のランクへ上がるための具体例
| 改善項目 | 現在 | 改善後 | 加点 |
|---|---|---|---|
| 商品・サービスの安全 | 2/5 | 5/5 | +3 |
| 労働安全・健康 | 8/10 | 10/10 | +2 |
| 作業負担・危険の削減 | 8/10 | 10/10 | +2 |
| 改善成果の人間への還元 | 3/5 | 5/5 | +2 |
| 供給継続・復旧能力 | 3/5 | 4/5 | +1 |
| 合計 | 80点 | 90点 | +10 |
この組み合わせなら総合90点となり、シビックランクSへ到達します。
すでに制度や設備を追加する余地より、「顧客情報の不適切利用を実際にゼロへする」「労災を減らす」「AIによって社員が得た時間を数字で示す」「障害からの復旧時間を実測する」といった、成果の部分を改善することが重要です。
出典一覧
1.株式会社ゆうちょ銀行「会社概要」
2.株式会社ゆうちょ銀行「人事戦略の基本的考え方」
3.株式会社ゆうちょ銀行「ESGデータ集―社会」
4.株式会社ゆうちょ銀行「個人投資家のみなさまへ―数字で見るゆうちょ銀行の強み」
5.株式会社ゆうちょ銀行「人事戦略の基本的考え方」
6.株式会社ゆうちょ銀行「コンプライアンス態勢」
7.株式会社ゆうちょ銀行「災害・事故などへの対応」
8.株式会社ゆうちょ銀行「サイバーセキュリティ態勢」
9.株式会社ゆうちょ銀行「障がいのあるお客さまへの対応」
10.日本郵政グループ「非公開金融情報の不適切な利用について」2024年9月27日
11.日本郵政グループ「非公開金融情報の適切な取り扱いの確保に向けた取組等について」2026年9月24日
12.株式会社ゆうちょ銀行「2026年度 投資家説明会/新・中期経営計画」
13.株式会社ゆうちょ銀行「人権レポート・各種レポート」
14.転職会議「株式会社ゆうちょ銀行の社員口コミ」
15.Indeed「株式会社ゆうちょ銀行の社員クチコミ」
16.株式会社ゆうちょ銀行「生成AIを活用したカスハラ対応AIアバターロープレ『Talktice』を導入」2026年9月29日
17.株式会社ゆうちょ銀行「不正利用に対する被害補償」
18.株式会社ゆうちょ銀行「企業価値向上に向けた人財KPI」
19.株式会社ゆうちょ銀行「年末年始における各種サービスの取り扱いについて」
20.株式会社ゆうちょ銀行「各種サービスのシステムメンテナンスのお知らせ」
21.株式会社ゆうちょ銀行「2026年度 災害に対する非常取扱い・義援金無料送金」
シビックランクの基準
| シビックランク | 点数 |
|---|---|
| S | 90~100点 |
| A | 80~89点 |
| B | 70~79点 |
| C | 60~69点 |
| D | 50~59点 |
| E | 40~49点 |
| F | 20~39点 |
| G | 0~19点 |
株式会社ゆうちょ銀行は80点のため、今回のシビックランクはAです。
情報ランクの基準
| 情報ランク | 基準 |
|---|---|
| S | 公的機関、裁判所、規制当局、独立した第三者機関の調査・監査・検証・認証など、内容そのものに独立した裏づけがある情報 |
| A | 企業公式資料、採用情報、公式声明・SNS、記名取材など、発信主体を確認できる公表情報 |
| B | 従業員・元従業員の口コミ、一般SNS、匿名掲示板など、発信者の身元や対象企業との関係を独立に確認しにくい情報 |
情報ランクは情報の出どころと検証状態を示すもので、企業の良し悪しを評価するシビックランクとは別です。
Sは独立した第三者の裏づけがあるため最も強い根拠として扱います。
AとBは単純な上下関係ではなく、企業側の公表情報と現場側の情報という性質の違いです。
