総合得点:78点/100点
シビックランク:B
私たちは、企業の商品を購入したり、サービスを利用したりすることで、その企業の働き方や安全対策、事業のあり方を間接的に支えています。
三菱UFJ銀行に預金したり、振込、住宅ローン、法人融資、外国送金などのサービスを利用したりすれば、手数料や融資などを通じて銀行の収益につながります。そこで得られた利益が、社員の賃金や休暇、情報セキュリティ対策、システム改善、店舗運営、人材育成、企業や個人への融資などにどう使われるのかは、利用する側にとっても無関係ではありません。
働く人を大切にし、預かったお金や情報を守り、安全性やサービスを改善する銀行に利用者や資金が集まれば、そうした経営を続ける力になります。反対に、顧客情報の不適切な利用や、預かった資産を守れない問題、不正を防げない管理体制を放置している銀行を利用すれば、その事業のあり方を間接的に支えることにもつながります。
そこで今回は、日本最大級の金融機関である株式会社三菱UFJ銀行について、Safety、働く人への配慮、事業による人間への貢献、情報公開などの観点から審査します。
三菱UFJ銀行は、個人の預金や振込から、住宅ローン、企業融資、外国為替、国際金融まで幅広く担っています。銀行が正常に機能しなければ、人々は給与を受け取ったり、家を購入したり、企業が設備投資をしたりすることも難しくなります。
この社会的役割は非常に大きく評価できます。
一方、三菱UFJ銀行では2024年、法人顧客が情報共有を禁止していたにもかかわらず、系列証券会社との間で非公開情報を共有していた問題が発覚し、金融庁から行政処分を受けました。さらに、元行員が貸金庫から顧客資産を盗み、約60人、時価十数億円程度の被害が生じた事件も発生しています。
2025年には、新潟支店の元行員が在職中に架空の金融商品を提案し、顧客1人から約3,985万円を詐取していた別の事案も公表されました。
銀行にとって、「お金と情報を安全に預けられる」という信用は事業の根幹です。
そのため今回は、金融インフラとしての社会貢献や充実した労働制度、情報公開を高く評価する一方、相次いだ顧客資産・顧客情報に関する重大問題をSafetyで大きく減点し、78点・シビックランクBとしました。
株式会社三菱UFJ銀行とは
株式会社三菱UFJ銀行は、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)の中核銀行です。
現在の代表者は取締役頭取執行役員の大澤正和氏で、資本金は1兆7,119億円です。株式は株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループが100%保有しています。
2026年3月末時点の従業員数は31,691人、平均年齢40.1歳、平均勤続年数15.8年、平均年間給与は914万3,000円です。
主な事業は、
- 預金
- 振込・決済
- 個人・法人融資
- 住宅ローン
- 外国為替
- 資産運用関連サービス
- 国際金融
- 企業の資金調達支援
などです。
個人のお金を預かるだけでなく、日本企業の資金調達や国際取引にも深く関わっています。
Safety:31/50点
銀行におけるSafetyでは、利用者の生命だけではなく、預金・資産・個人情報・取引情報を安全に守れるかを重く評価します。
三菱UFJ銀行では、キャッシュカードや通帳を紛失した場合、スマートフォンアプリなどから利用停止や再発行を行える仕組みを整備しています。紛失・盗難時の電話受付も原則24時間365日対応しています。
2026年にも、三菱UFJ銀行を名乗る偽電話や、経営者を装って送金を指示する詐欺について利用者へ警告しており、金融犯罪対策について継続的な情報発信を行っています。
MUFGでは個人情報の取扱規程、アクセス制御、職員への研修、漏えい発生時の監督当局への報告や対象者への通知など、安全管理措置も公開しています。
しかし、制度の存在だけでSafetyを評価することはできません。
貸金庫から顧客資産を窃取
2024年に発覚した貸金庫事件は、今回の審査で最も大きな減点対象です。
三菱UFJ銀行の元行員は、練馬支店・旧江古田支店と玉川支店で、貸金庫の管理責任を担う立場を利用して予備鍵を不正使用し、顧客の貸金庫を無断で開け、現金などを窃取していました。
銀行が公表した段階で、対象は約60人、被害総額は時価十数億円程度とされていました。
しかも、不正は2020年4月から2024年10月まで約4年半にわたり行われていました。予備鍵について第三者による定期的な点検制度もありましたが、不正を発見できませんでした。
これは、一般的な事務ミスとは性質が異なります。
顧客が「銀行なら安全だ」と考えて預けた資産を、銀行内部の職員が管理権限を悪用して盗んだ事件です。
銀行自身も「信頼・信用という弊行のビジネスの根幹を揺るがす事案」と認めています。
再発防止策として、貸金庫の予備鍵管理の集中化、防犯カメラの追加、店舗・本部双方の監視強化、人事管理の見直しなどが実施されています。
対策を行ったことは評価しますが、発生した重大事故そのものを相殺することはしません。
顧客の非公開情報を系列証券会社と共有
2024年には、さらに別の重大問題が確認されています。
証券取引等監視委員会の検査では、三菱UFJ銀行の役職員が、法人顧客から情報共有を禁止されている、または情報共有への同意を得ていないと認識しながら、三菱UFJモルガン・スタンレー証券との間で法人顧客の非公開情報を少なくとも10回授受していました。
一部では当時の専務執行役員自身が情報提供を行っていました。
金融庁は2024年6月24日、三菱UFJ銀行に業務改善命令を出し、顧客情報管理や内部管理態勢の強化を求めています。
銀行が顧客から預かった情報を、顧客の意思に反して営業目的などで利用することは、顧客保護という観点から重大です。
架空商品による約3,985万円の詐取
2025年6月には、別の元行員による不祥事も公表されました。
新潟支店に勤務していた元行員が、2007年から2016年にかけて顧客1人に架空の金融商品を提案し、複数回にわたって現金を詐取していました。
被害総額は39,846,769円です。
さらに2020年には、新潟支店名の印を使った偽造預り証書を交付していました。
銀行は被害者に補償を実施していますが、内部調査では管理手続の運用や相互牽制、職員の行動に対するモニタリングが不十分だったことを原因として挙げています。
複数の重大事案が続いていることを踏まえ、Safetyは大幅に減点しました。
Safety:31/50点
人間尊重・労働環境:18/20点
顧客保護では重大な問題が確認された一方、従業員の働く環境については比較的充実した制度と具体的な数値が確認できます。
MUFGは長時間労働の削減、有給休暇取得の促進、ハラスメント相談窓口などを整備しています。
三菱UFJ銀行ではハラスメント防止マニュアルを整備し、パワーハラスメント研修には2025年度に約31,000人が参加しています。
2024年度の三菱UFJ銀行では育児休業取得者が1,382人、そのうち男性が508人でした。法定基準による男性育休取得率は99%となっています。
育児短時間勤務制度の利用者は2,501人、介護休暇利用者は959人でした。
さらに2026年4月からは、育児に関する有給期間を拡大しました。
三菱UFJ銀行では育児目的の特別有給休暇を10日追加し、育休取得者の仕事を支援した同僚に対して、取得者1人につき最大10万円を会社から支給する「御礼金制度」も導入しています。
2027年4月からは定年年齢を60歳から65歳へ延長する方針です。
一方、制度が充実しているからといって、すべての部署で同じ働きやすさが実現しているとは判断しません。
大規模な銀行であり、営業、支店、本部、市場、システム、海外拠点では仕事内容も働き方も大きく異なります。
ただし、公開されている制度と実績は高く評価できます。
人間尊重・労働環境:18/20点
事業による人間への貢献:19/20点
三菱UFJ銀行の事業は、人々の生活や企業活動を動かすための基盤そのものです。
給与を受け取る。
家賃や公共料金を支払う。
家を購入するため住宅ローンを利用する。
企業が設備投資のため資金を借りる。
海外企業と貿易する。
こうした活動の多くに銀行が関わっています。
三菱UFJ銀行のような大規模銀行が機能しなくなれば、個人だけでなく、多数の企業や地域経済にも影響が及びます。
特に、企業への融資を通じて事業活動や雇用を支えている点は大きな社会的役割です。
MUFGでは環境・社会課題に関係する事業への融資や投資を「サステナブルファイナンス」として進めており、2019年度から2025年度までの累計実行額は56.5兆円、そのうち環境分野は24.8兆円となっています。2030年度までの累計目標は100兆円です。
再生可能エネルギー向けプロジェクトファイナンスでも、MUFGは過去10年間のリード・アレンジャー実績で世界1位としています。
2026年には台風被害などに対する災害復旧支援資金の取り扱いも行っています。
銀行は、融資先を選ぶことによって社会の資金配分を左右します。
その影響力は非常に大きく、社会に必要な産業を育てる力を持つ一方、環境・人権上問題のある事業へ資金を供給するリスクもあります。
そのため満点にはしませんが、事業による社会への貢献度そのものは極めて高いと評価します。
事業による人間への貢献:19/20点
情報公開・説明責任:10/10点
三菱UFJ銀行とMUFGは、企業審査に必要な情報を非常に多く公開しています。
MUFGでは、
- 有価証券報告書
- 統合報告書
- サステナビリティレポート
- Human Capital Report
- 人権レポート
- ESG Data Book
- 気候変動関連情報
- TNFD関連情報
- コーポレートガバナンス報告書
などを継続して公開しています。
2026年にはHuman Capital Report 2026、サステナビリティハイライト2026、ESG Data Book 2026も公開されています。
さらに、今回大きく減点した貸金庫事件や元行員による詐取についても、自社サイト上で事実関係、原因、補償、再発防止策などを公表しています。
行政処分についても金融庁・証券取引等監視委員会の公的資料から詳細を照合できます。
企業に重大な不祥事があることと、情報を公開していることは別に評価します。
不祥事はSafetyで減点しますが、それを外部から検証できる状態にしていることは情報公開として評価できます。
情報公開・説明責任:10/10点
良いニュース
三菱UFJ銀行では、不祥事への対応だけでなく、働く人や社会課題に関係する新しい取り組みも進んでいます。
ここでは、単なる新商品発売ではなく、人への貢献を確認できる動きを見ます。
2026年4月から、三菱UFJ銀行は育児目的の特別有給休暇を新たに10日設けました。
さらに、育児休業を取った社員の業務を支えた同僚へ会社が最大10万円を支給する制度を導入しています。
育休制度では、休む本人への支援だけでなく、周囲の負担にも目を向けている点を評価できます。
また、MUFGのサステナブルファイナンス累計実行額は2025年度までに56.5兆円へ拡大しました。
2026年9月には、貿易決済を迅速化する「TradeWaltz」を活用した実証実験が金融庁の支援案件に採択されるなど、金融インフラの効率化も進めています。
悪いニュース
今回の三菱UFJ銀行審査では、悪いニュースの比重が非常に大きくなります。
理由は、確認された問題が銀行に求められる「顧客の資産と情報を守る」という役割そのものに関係しているためです。
2024年には元行員による貸金庫からの顧客資産窃取が発覚しました。
約60人、時価十数億円程度の被害が確認され、しかも約4年半にわたり不正を防止できませんでした。
同じ2024年には、顧客の意向に反した非公開情報の共有などについて金融庁から行政処分を受けています。経営陣を含む管理態勢や法令順守態勢の不備も指摘されました。
さらに2025年には、新潟支店の元行員が顧客へ架空金融商品を販売したように装い、約3,985万円を詐取していた別事案が公表されています。
一件の職員不正であれば個人犯罪としての側面もあります。
しかし、複数の事件で管理・監視・相互牽制の不足が確認されている以上、企業の内部管理体制についても審査対象にする必要があります。
再発防止策を実施している点は確認できますが、重大な問題が起きた事実そのものは消えません。
口コミではどのように評価されているのか
公式の労働制度が、実際に働く人からどう見えているのかを確認するため、第三者口コミも調査しました。
Indeedでは2026年9月時点で89件の口コミがあり、総合評価は5点満点中3.6でした。
勤務時間・残業は4.0、給与・福利厚生は4.0、上司との関係は3.7、企業文化は3.4となっています。
「個人の尊重」「学びの機会」などを評価する一方、勤務時間や勤務地の柔軟性を改善点として挙げる傾向が示されています。
Yahoo!しごとカタログでは1,700件を超える口コミが掲載され、総合評価は4.0となっています。リモートワークや時差勤務を評価する投稿がある一方、年功序列的な人事評価を指摘する投稿も確認できます。
5chにも三菱UFJ銀行に関するスレッドがありますが、匿名掲示板であり投稿内容の事実確認が困難なため、点数には直接反映していません。
YouTubeには社員口コミをまとめた動画やMUFG公式の社員座談会などがありますが、企業評価を変更できるほどの独立した裏付け資料とは扱っていません。
X、Facebook、TikTokについても検索しましたが、今回確認した範囲では、公式資料や公的資料を上回る具体的な評価材料は確認できませんでした。
三菱UFJ銀行を利用することで何を支えるのか
三菱UFJ銀行に預金したり、振込や住宅ローン、法人サービスなどを利用したりすることで、銀行の事業を支えることになります。
そこで得られた収益は、行員の給与や福利厚生、店舗、ATM、システム、サイバーセキュリティ、人材育成、金融サービスの開発などを支えます。
さらに銀行は、その資金を企業や個人へ融資します。
つまり三菱UFJ銀行を利用することは、銀行そのものを支えると同時に、銀行がどの企業や事業へ資金を供給するかという社会の資金循環にも間接的につながっています。
人や企業に必要な資金を提供し、安全に預金と情報を管理する銀行に利用者が集まれば、その経営を続ける力になります。
反対に、顧客情報を軽視したり、預かった資産を守る仕組みに重大な欠陥があったりする銀行については、「問題を改善しているか」まで確認する必要があります。
三菱UFJ銀行については、社会に不可欠な金融インフラとしての役割は極めて大きい一方、近年の不祥事によって、その前提となる信用を大きく損ねた点を無視できません。
今後改善してほしい点
最優先は、顧客資産を扱う職員に対する内部統制の強化です。
貸金庫事件では、予備鍵の管理責任を持つ人物自身が権限を悪用し、定期点検でも長期間発見できませんでした。
「担当者を信頼する」ことに依存せず、権限を分散し、システムや複数人による監視で不正を物理的に起こしにくくする必要があります。
次に、顧客情報管理です。
法人顧客が情報共有を禁止しているにもかかわらず、グループ証券会社へ情報を渡していた事案では、営業上の利益が顧客の意思より優先されたと金融当局から指摘されています。
再発件数、内部通報件数、顧客情報管理上の違反件数なども継続的に公開すれば、改善の実効性を外部から確認しやすくなります。
さらに、不祥事防止を現場任せにせず、経営陣の評価や報酬にも顧客保護・内部管理の結果をより強く反映してほしいところです。
総合評価
三菱UFJ銀行は、預金、決済、融資、住宅ローン、国際金融などを通じて、人々の生活と企業活動を支える重要な金融インフラです。
事業による社会への貢献は非常に大きく、従業員の育児支援、人権、サステナブルファイナンス、情報公開などにも積極的に取り組んでいます。
一方、銀行で最も重要なのは信用です。
貸金庫に預けた資産が内部の職員によって盗まれた事件、顧客が共有を禁止していた情報が系列証券会社へ渡された問題、別の元行員による架空金融商品を使った詐取事件は、いずれもその信用に直接関係します。
特に、一つの事故ではなく、複数の管理上の問題が短期間に明らかになっていることを重く評価しました。
再発防止策を進めている点は評価できます。
しかし、重大不祥事を、社会貢献や福利厚生が充実していることによって相殺することはしません。
そのため、社会インフラとしての価値や労働制度では高得点となった一方、Safetyを大きく減点しました。
評価点
| 評価項目 | 点数 |
|---|---|
| Safety | 31/50点 |
| 人間尊重・労働環境 | 18/20点 |
| 事業による人間への貢献 | 19/20点 |
| 情報公開・説明責任 | 10/10点 |
| 総合得点 | 78/100点 |
シビックランク:B
金融インフラとしての社会的価値は非常に高い一方、顧客資産と顧客情報を守る内部管理体制について重大な改善実績を今後も確認する必要がある企業と評価します。
情報ランク
情報ランク:S
今回の審査では、三菱UFJ銀行・MUFGの会社情報、有価証券報告書、Human Capital Report、ESGデータ、人権・サステナビリティ資料、不祥事に関する公式発表を確認しました。
さらに金融庁と証券取引等監視委員会が、顧客情報共有問題について具体的な事実関係と行政処分の内容を公開しています。
労働環境についても公式データだけでなく、IndeedやYahoo!しごとカタログなどの第三者口コミと比較できます。
不祥事について企業側だけの説明に依存せず、公的機関の資料から検証できる項目も多く、企業審査に必要な情報量は非常に充実しています。
以上から、情報ランクSとしました。
