私たちは、企業の商品を購入したり、サービスを利用したりすることで、その企業の働き方や安全対策、事業のあり方を間接的に支えています。
富士急ハイランドでワンデイパスやアトラクション利用券を購入したり、園内の飲食店やショップを利用したりすれば、その売上は運営会社である株式会社富士急ハイランドに入ります。そこで得られた利益が、社員の賃金や休暇、アトラクションの安全対策、設備点検、サービス改善、人材育成などにどう使われるのかは、利用する側にとっても無関係ではありません。
働く人を大切にし、安全性やサービスを改善する企業に売上が集まれば、そうした経営を続ける力になります。反対に、長時間労働やハラスメント、安全上の問題を放置している企業の商品やサービスを利用すれば、その環境を間接的に支えることにもつながります。
株式会社富士急ハイランドは、山梨県富士吉田市で遊園地「富士急ハイランド」を運営する富士急グループの企業です。アトラクション運行だけでなく、ショップ、レストラン、屋台、キッチンカーなどの運営も担っています。2026年のハローワーク求人では企業全体305人、就業場所295人、うち女性147人、パート59人とされています。
今回の総合得点は48点/100点、シビックランクはEです。
評価したのは、2026年6月にFUJIYAMAの高所点検へ自動飛行型ドローンを本格導入し、人が高所へ上る危険作業を減らし始めていること、2025年10月にISO45001を取得したこと、ロックアウトシステムやKY活動、防災訓練、AED、公式アプリやモバイルオーダーなど、安全と利便性の改善を継続していることです。
一方、2025年2月には「ええじゃないか」の定期点検中に社員が車両とレールに挟まれて死亡する重大な労働災害が発生しました。2026年3月には当時の現場責任者が業務上過失致死の疑いで書類送検されています。書類送検は有罪判決ではありませんが、従業員の生命が失われた事故そのものは、後から安全対策を強化したことで相殺しません。
さらに、2026年の求人情報では前事業年度の月平均所定外労働時間は5時間と低い一方、年間休日は100日、有給休暇の平均取得日数は6日です。36協定の特別条項では業務繁忙時に月70時間、年720時間まで時間外労働を延長できる設計になっています。
これらを総合し、48点・Eとしました。
株式会社富士急ハイランドの企業審査結果
| 評価軸 | 得点 | 主な評価 |
|---|---|---|
| Safety | 20/50 | 残業月平均5時間、育児休業実績、保育所、ISO45001を評価。一方、2025年の死亡労災、年間休日100日、有休平均6日、過去のコースター事故が大きな課題 |
| Innovation | 18/25 | ドローンによる危険な高所点検削減、顔認証、アプリ、モバイルオーダーを評価。改善成果の賃金・休日への還元は不明 |
| Protection | 10/25 | 行政と連携した防災訓練、防火訓練、救護・AEDを評価。単一拠点依存、サイバー訓練、復旧KPIの開示が弱い |
| 総合 | 48/100 | シビックランクE |
次のDランクは50点からです。
現在48点なので、あと2点です。
株式会社富士急ハイランドとは
株式会社富士急ハイランドは、富士急行株式会社とは別法人です。
富士急行がグループ全体の親会社であるのに対し、株式会社富士急ハイランドは実際に「富士急ハイランド」と「富士急雲上閣」を運営する事業会社です。
そのため、今回の審査では富士急行株式会社ではなく、実際に遊園地で社員を雇用し、アトラクションを運営・点検する株式会社富士急ハイランドを対象とします。
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 会社名 | 株式会社富士急ハイランド |
| 法人番号 | 4090001010102 |
| 所在地 | 山梨県富士吉田市新西原5丁目6番1号 |
| 代表者 | 取締役社長 上原厚 |
| 設立 | 1969年6月1日 |
| 資本金 | 9,750万円 |
| 従業員数 | 305人、2026年求人情報 |
| 就業場所人数 | 295人 |
| 女性 | 147人 |
| パート | 59人 |
| 主な事業 | アトラクション運行、ショップ、飲食店、屋台、キッチンカー等の運営 |
現在の公式会社情報では取締役社長は上原厚氏です。富士急行側の2026年7月時点の役員一覧でも、上原氏は株式会社富士急ハイランド代表取締役社長とされています。
事業内容と人間への貢献
富士急ハイランドの役割は、単にジェットコースターを運転することではありません。
アトラクション、飲食、物販、イベント、キャラクターエリアなどを一体で運営し、観光客へ余暇、娯楽、交流の場を提供しています。
一方、遊園地は「楽しいサービス」であると同時に、高速で動く大型機械を一般利用者が使う事業です。
利用者の安全と、整備・点検する社員の安全の両方が確保されて初めて、人間への貢献として評価できます。
観光と地域雇用を支える
2026年のハローワーク情報では企業全体305人を雇用し、新卒採用も2023年度29人、2024年度25人、2025年度28人と続いています。
富士山周辺へ国内外から観光客を呼び込み、アトラクションだけでなく飲食、物販、宿泊、交通など周辺の需要にもつながる観光拠点です。
子どもから大人まで利用できる施設を運営
絶叫アトラクションだけでなく、トーマスランド、キャラクター施設、飲食店、ショップ、イベントスペースなどを持ちます。
入園自体は無料で、アトラクションに乗らず飲食や買い物だけで利用することもできます。
安全そのものがサービス品質になる
遊園地では「事故が起きないこと」が商品品質の一部です。
特に富士急ハイランドは大型コースターを多数持つため、設備の保守、安全確認、社員教育、事故発生時の報告・救護まで含めてサービス評価を行う必要があります。
Safety 20/50点
Safetyでは、従業員の賃金・休暇・福利厚生だけでなく、遊園地という事業の性質上、労働災害と利用者事故を特に重く見ます。
平均残業5時間や育児制度など良い材料がある一方、2025年の死亡労災は重大です。
賃金・利益の還元:2/10点
2026年の新卒求人では、
大学・大学院卒
基本給19万3,500円+精勤手当2万円=月額21万3,500円
短大・高専・専門学校卒
基本給17万3,000円+精勤手当1万7,000円=月額19万円
です。
一般労働者の賞与は前年度実績で年2回・計2カ月分です。
一方、求人情報では昇給制度はあるものの、前年度の昇給実績は「なし」と記載されています。
会社平均年収、既存社員のベースアップ額、給与中央値、利益増加に応じた賃金還元なども公開されていません。
従業員口コミでも給与・福利厚生への評価は低めです。Indeedでは給与・福利厚生が5点中2.0となっています。
公開されている賃金水準と還元情報を考え2点です。
労働時間・休息:5/10点
2026年のハローワーク求人では、前事業年度の月平均所定外労働時間は5時間です。
この数字だけを見ると、残業はかなり抑えられています。
しかし、
年間休日:100日
有給休暇平均取得日数:6日
休日:月7~9日
36協定特別条項:年6回まで月70時間、年720時間
となっています。
つまり、普段の平均残業は短い一方、休日数は現在の一般的な年間120日前後の企業と比べると少なく、繁忙期には長時間労働が可能な制度設計です。
転職会議の投稿者集計では残業34.2時間/月、有給消化率60%となっており、公式求人の5時間とは差があります。口コミは自己申告なので、公式データより優先しませんが、部署差がある可能性を確認する材料にはなります。
5点です。
雇用の安定・待遇の公平性:3/5点
平均勤続年数は9.9年です。
新卒採用者と離職者は、
2025年度:採用28人、離職4人
2024年度:採用25人、離職4人
2023年度:採用29人、離職11人
です。
2023年度採用者では離職が比較的多かったものの、直近2年度では新卒採用に対する離職者数は減っています。
女性管理職比率は11.5%、女性役員比率は0%です。
男女別賃金差や正規・非正規別待遇差は確認できませんでした。
3点です。
福利厚生・育児・介護:4/5点
育児休業取得実績があります。
前事業年度では育児休業取得者が女性11人、男性7人とされています。
出産者数は女性4人、男性の配偶者1人と記載されており、取得時期と出産年度が一致しない可能性があるため単純な取得率には換算しません。
さらに、
・企業内保育所「フジQキッズガーデン」
・退職金制度
・家族手当
・資格手当
・役割手当
・単身用住宅
・富士急ハイランドフリーパス無料
・富士急行線の電車・路線バス無料
・富士急グループ施設の従業員割引
などがあります。
一方、介護休業・看護休暇の前年度取得実績は「なし」です。
制度と育児利用実績は比較的充実しているため4点です。
人権・ハラスメント・労使関係:2/5点
富士急グループ人権方針はグループの全役員・従業員に適用されるため、富士急ハイランドも対象です。
内部通報窓口「ヘルプQライン」もグループ全体で用意されています。
2024年にはカスタマーハラスメント指針も策定され、従業員への暴力、脅迫、差別的発言、セクハラ、過剰要求などに対して対応を拒否し、悪質な場合は警察・弁護士と連携する方針です。
一方、株式会社富士急ハイランド単体の、
・ハラスメント相談件数
・内部通報件数
・認定件数
・是正件数
・再発率
は確認できませんでした。
ハローワークでは労働組合も「なし」とされています。
2点です。
労働安全・健康:2/10点
この項目では2025年2月28日の死亡事故を最も重く評価します。
「ええじゃないか」の定期点検中、29歳の男性社員が動き出した車両とレールの間に挟まれて死亡しました。
2026年3月2日には当時の現場責任者が業務上過失致死の疑いで書類送検されています。
書類送検は有罪判決ではありません。
しかし、社員が点検作業中に死亡したという事実自体が重大です。
事故後は、
・ロックアウトシステム
・作業手順の見直し
・全従業員への再教育
・整備士のホイッスル携行
・朝礼での労災防止標語
・KY活動
を導入・強化しています。
さらに2025年10月にはISO45001を取得しました。
事故後の改善は評価します。
ただし、死亡事故そのものをISO取得や安全対策で相殺することはしません。
また、対策導入後の休業労災件数、度数率、ヒヤリハット、重大事故件数を株式会社富士急ハイランド単体で年度比較できる公開データはまだ確認できません。
2点です。
商品・サービスの安全:2/5点
現在は顧客アンケートを用いた安全改善、搭乗前の注意喚起、救護体制、安全教育などを実施しています。
しかし、過去には「ド・ドドンパ」で重大な利用者事故が発生しました。
国土交通省の事故調査では、2020年12月から2021年8月までの12件で12人が負傷し、重傷6人、軽傷6人と整理されています。
遊具の所有者は富士急行株式会社ですが、管理者・保守点検業者は株式会社富士急ハイランドでした。
さらに山梨県は、最初の事故から7カ月以上県へ報告されなかったことを重大な問題として指摘しました。
「ド・ドドンパ」は2021年8月から休止し、安全運行を確保する具体的な方法を実現することが困難として、2024年に営業終了が決まりました。
2025年12月には園内の「ショップフジヤマ」で賞味期限を1日経過したバームクーヘン3個を販売していたことも公表されています。健康被害の報告はなく、返金対応と再発防止を行っています。
現在の改善は確認できますが、重大な過去の安全問題を考慮して2点です。
Safety小計:20/50点
従業員・元従業員の口コミ
口コミは個人の体験であり、会社全体の事実ではありません。
公式資料では分からない部署差や職場環境を確認する補助情報として扱います。
転職会議
転職会議では、
残業時間:月34.2時間
有給消化率:60%
総合評点:2.54
という投稿者集計になっています。
公式求人の前事業年度平均残業5時間とは大きな差があります。
対象者、雇用形態、勤務時期が異なるため、口コミの34.2時間を公式平均として採用することはしません。
情報ランク:B
Indeed
Indeedでは9件の口コミに基づく総合評価が2.8です。
勤務時間と残業は2.3、給与・福利厚生2.0、定着率と昇進1.5、上司との関係2.0、企業文化1.5となっています。
2026年6月の口コミでは、配置人数が少ない場所では人間関係や上司との関係による負担を感じるという投稿があります。
一方、2025年のサービス職の投稿では、規則が厳しい一方、親切に教えてくれる職場だったという内容もあります。
口コミ数が少ないため、全社の事実には一般化しません。
情報ランク:B
OpenWork
OpenWorkでは会社全体の投稿者集計として残業17.2時間、有給休暇消化率11.9%という表示がありますが、回答数や在籍時期による影響があります。
公式の最新ハローワークデータを優先し、口コミは補助情報として使用します。
情報ランク:B
SNS・匿名掲示板の確認結果
X、5ちゃんねる、爆サイについて、「富士急ハイランド」「残業」「給与」「退職」「人手不足」「事故」「整備」などを組み合わせて確認しました。
利用者によるアトラクションや混雑への投稿は多数ありますが、2026年時点の株式会社富士急ハイランド従業員だと確認でき、労働条件の採点へ直接使用できる投稿は確認できませんでした。
匿名情報を推測で会社全体へ適用していません。
Innovation 18/25点
Innovationで最も評価できるのは、2026年にFUJIYAMAの点検へドローンを導入し、これまで人が行っていた高所作業そのものを減らし始めたことです。
利用者の便利さだけではなく、働く人の危険を技術で置き換えるという、企業審査で重視するInnovationに直接該当します。
作業負担・危険の削減:8/10点
2026年6月11日から、FUJIYAMAの走路高所点検へ自動飛行型ドローンを本格導入しました。
FUJIYAMAは全長2,045m、最高部79mです。
従来は専門スタッフが目視したり、足場を設置したりして高所点検を行っていました。
会社自身も「危険作業の削減」を導入目的として明記しています。
ドローン映像やAI解析を使うことで、人が高さ79m級の構造物へ直接近づく作業を減らせる可能性があります。
これは単なるデジタル化ではなく、死亡や転落につながり得る危険作業を機械へ置き換える取り組みです。
一方、
・高所作業時間が何時間減ったか
・人が高所へ上る回数が何%減ったか
・点検人員が何人減ったか
・ヒヤリハットが何件減ったか
という結果はまだ公開されていません。
8点です。
商品・サービスの改善:5/5点
公式アプリでは、
・オンラインチケット購入
・事前顔写真登録
・アトラクション待ち時間表示
・園内ルート案内
・絶叫優先券購入
・モバイルオーダー
・クーポン・お知らせ
をまとめて利用できます。
飲食店では、モバイルオーダーによって列に並ばず事前注文し、指定時間に商品を受け取れる仕組みがあります。
顔認証も2018年から導入され、入園やアトラクション利用時の確認をデジタル化しています。
サービス改善が実運用されているため5点です。
改善成果の人間への還元:1/5点
ドローンによって危険作業を減らす方向は明確です。
しかし、
・点検時間を何時間削減したか
・残業が何時間減ったか
・削減した時間を休日へ戻したか
・生産性向上分を賃金へ還元したか
・省人化後の整備士をどう配置したか
は確認できませんでした。
技術導入後の人への還元がまだ定量化されていないため1点です。
研究開発・現場改善の継続:4/5点
顔認証、公式アプリ、デジタルマップ、モバイルオーダー、高所点検ドローンなど、改善は複数年にわたり続いています。
富士急グループの中期経営計画でも、遊戯施設の点検データを収集・分析し、生成AIを用いた予知保全の研究・段階的導入が掲げられています。
2027年夏には新大型スプラッシュコースターも計画されており、施設更新自体も継続しています。
一方、AI予知保全はまだ研究・段階導入を含むため、成果を先取りして満点にはしません。
4点です。
自動化・AI導入後の雇用状況
2026年のハローワーク情報では企業全体305人です。
ドローン、顔認証、アプリ等を導入している一方、新卒採用は2025年度28人、2024年度25人、2023年度29人と続いています。
現在確認できる範囲では、これらの技術導入を直接理由とした大規模な解雇や希望退職は確認できませんでした。
ただし、対象業務ごとの人員数や配置転換は公開されていません。
Innovation小計:18/25点
Protection 10/25点
富士急ハイランドは一つの巨大な遊園地を運営するため、工場や全国店舗を分散して持つ企業とは異なり、災害による現地停止を完全に代替することは難しい事業です。
そのため、防災訓練、避難、救護、システム復旧を重視して評価します。
災害への備え・訓練:4/5点
富士急ハイランドでは、行政と連携した防災訓練、社内防火訓練、消防設備の日常点検を実施しています。
2024年には地震被害を軽減するため緊急地震速報も導入しています。
富士山周辺という立地を考えると、地震・噴火・風水害への対応は重要です。
実際の訓練まで確認できるため4点です。
生産・物流・調達の代替:1/5点
遊園地そのものは富士吉田市の一拠点に集中しています。
災害や大規模設備事故で園全体が利用できなくなった場合、別の場所で富士急ハイランドのサービスをそのまま代替することはできません。
飲食・物販の代替仕入れや電力・通信のバックアップ能力についても、株式会社富士急ハイランド単体の具体的な公開情報は限定的です。
1点です。
サイバー防衛・情報保護:1/5点
富士急ハイランドは顔認証を使っているため、通常のEC企業以上に個人情報管理が重要です。
顔画像について、不正アクセス、漏えい、紛失、改ざん等を防止する安全対策を講じ、一定期間後に削除するとしています。
個人情報保護方針でも、不正アクセスや紛失・破壊・改ざん・漏えい対策を明示しています。
一方、
・MFA
・EDR
・SOC
・第三者侵入テスト
・標的型メール訓練
・サイバー攻撃訓練
・バックアップ復元訓練
・事故件数
・復旧時間
について会社単体の公開情報を確認できませんでした。
顔画像という重要情報を扱う企業としては結果開示が弱いため1点です。
供給継続・復旧能力:2/5点
台風など悪天候時には営業時間変更やアトラクション停止を事前に案内し、高速バス運休時の返金手順も用意しています。
アトラクションごとの運休情報も日単位で公開しています。
一方、
・園内システム停止時のRTO
・顔認証停止時の代替入園方法
・チケットシステムのバックアップ
・停電時に何時間営業を維持できるか
・災害後の営業再開目標
などは十分公開されていません。
2点です。
危機時の市民・利用者への対応:2/5点
園内には救護室があり、応急処置、救急車手配、近隣病院紹介を行います。
園内5カ所、近隣施設2カ所にAEDも配置し、医師の指導による初期対応講習、外部講師によるAED講習も行っています。
来園者の急病・事故へ直接対応できる点は評価します。
一方、自治体との広域災害時の避難所提供、物資供給など、地域住民向け支援の具体的実績は対象会社単体では確認できませんでした。
2点です。
Protection小計:10/25点
良いニュース・最近の前向きな動き
直近では、2025年の死亡労災を受けた安全対策の強化と、2026年のドローン点検導入が重要です。
重大事故を起こした会社だからこそ、改善策を導入した事実だけではなく、その後の事故件数が実際に減っているかを継続して確認する必要があります。
2026年6月:FUJIYAMAの高所点検へ自動飛行ドローンを本格導入
2026年6月11日からFUJIYAMAで自動飛行型ドローンを使った走路点検を開始しました。
これまでは専門スタッフによる目視や足場を設置しての高所作業が必要でした。
従業員が危険な場所へ直接上る回数を減らせる技術であり、今回のInnovationで最も高く評価した取り組みです。
2025年10月:ISO45001を取得
死亡事故後、株式会社富士急ハイランドは労働安全衛生マネジメントシステムISO45001を取得しました。
ロックアウト、KY活動、ホイッスル携行など現場対策も実施しています。
ISO取得だけで安全が証明されるわけではありませんが、事故後に安全管理を仕組みとして再構築する動きは評価できます。
公式アプリによる待ち時間・移動・飲食の改善
公式アプリでは待ち時間、ルート案内、モバイルオーダー、オンラインチケットなどを一体化しています。
利用者が園内で列に並ぶ時間や、目的地を探す時間を減らすサービス改善です。
悪いニュース・問題となった動き
株式会社富士急ハイランドを審査するうえで、2025年の死亡労災と、過去のド・ドドンパ事故は避けて通れません。
安全対策が現在改善されていることと、過去に重大な被害が起きたことは分けて評価します。
2025年2月:「ええじゃないか」点検中に社員が死亡
2025年2月28日、「ええじゃないか」の定期点検を行っていた29歳の社員が、動き出した車両とレールに挟まれて死亡しました。
2026年3月には当時の現場責任者が業務上過失致死の疑いで書類送検されました。
事故後はロックアウト方式が導入され、作業員一人ひとりが電源へ鍵を掛け、全員の作業が終了しない限り機械を動かしにくい仕組みへ変更されています。
営業は再発防止策と再教育を行い、所管官庁の確認を受けた後、2025年5月1日に再開されました。
改善策は評価しますが、死亡事故そのものは相殺しません。
ド・ドドンパで12人が重軽傷
国土交通省の事故調査では、2020年12月から2021年8月までに12件の事故があり、12人が負傷しました。
重傷6人、軽傷6人です。
さらに最初の事故から県への報告まで7カ月以上かかっており、山梨県は報告の遅れを重大な問題として批判しました。
ド・ドドンパは最終的に、安全運行を確保できる具体的な手段の実現が困難として2024年に営業終了となりました。
2025年12月:賞味期限切れ商品を販売
ショップフジヤマで、賞味期限を1日過ぎたバームクーヘン3個を販売していたことが判明しました。
健康被害は報告されておらず、会社は返金と品質管理強化を発表しています。
死亡事故などと重大度は全く異なりますが、園内商品管理の改善事項として記録します。
総合評価と、これから改善してほしいこと
現在は48点/100点、シビックランクEです。
次のDランクは50点からなので、あと2点です。
最大の課題は安全です。
株式会社富士急ハイランドの場合、「安全方針があるか」ではなく、死亡事故後に本当に労災が減ったのか、新しい安全対策によって同種事故を防げているのかを数字で確認する必要があります。
1.死亡事故後の労災結果を毎年公開する
関係項目:Safety「労働安全・健康」
現在点:2/10点
改善条件は、
・死亡災害0
・休業災害件数
・度数率
・ヒヤリハット件数
・ロックアウト違反件数
・是正完了率
を株式会社富士急ハイランド単体で継続公開し、事故件数が実際に減少することです。
良好な実績が複数年確認できれば、
2→5点
増加:+3点
総合:48→51点
シビックランク:E→D
を検討できます。
参考企業はアスクル株式会社です。
Drive上の最新審査は74点・Bで、Safety38/50、労働安全・健康8/10です。死亡0、重度0、軽度2など、事故結果を会社単体で具体的に追えることを評価しています。
富士急ハイランドも「ISO45001を取得した」で終わらず、「取得後に事故が何件まで減ったか」を公開する必要があります。
2.年間休日を増やし、有休取得日数を改善する
関係項目:Safety「労働時間・休息」
現在点:5/10点
現在は平均残業5時間と良好ですが、年間休日100日、有休平均取得6日です。
年間休日を115~120日程度まで増やし、有休取得も10日以上へ改善した実績が確認できれば、
5→7点
増加:+2点
総合:48→50点
シビックランク:E→D
を検討できます。
参考企業は株式会社JR東海リテイリング・プラスです。
Drive上の最新審査は56点・Dで、2025年度の平均残業7.8時間、有給休暇取得率76.1%を会社単体で公開しています。
富士急ハイランドは残業時間では同社より短い一方、休日・有休で改善余地があります。
3.ドローン導入による危険作業削減を数値で示す
関係項目:Innovation「改善成果の人間への還元」
現在点:1/5点
ドローン導入は非常に良い取り組みです。
しかし現在分かるのは「危険作業を減らす目的で導入した」というところまでです。
例えば、
・高所作業回数50%削減
・高所作業時間年間○時間削減
・点検時間○%削減
・整備士の残業○時間減少
・ヒヤリハット○件減少
まで確認できれば、
1→3点
増加:+2点
総合:48→50点
シビックランク:E→D
を検討できます。
参考企業はキリングループロジスティクス株式会社です。
Drive上の最新審査は65点・C、Innovation20/25点で、業務改善の成果を年間所定労働時間1,920時間から1,896時間への24時間短縮として人の時間へ戻しています。
富士急ハイランドも、ドローンによって「危険が減った」ことを実測値で示せればInnovationの評価はさらに高くなります。
4.顔認証を扱う企業としてサイバー対策を具体的に公開する
関係項目:Protection「サイバー防衛・情報保護」
現在点:1/5点
富士急ハイランドは顔画像を扱います。
一般的なメールアドレスや購入履歴とは異なり、顔そのものは漏えいしてもパスワードのように変更できません。
そのため、
・多要素認証
・EDR
・SOC
・外部侵入テスト
・標的型メール訓練
・顔画像データへのアクセス権管理
・バックアップ復元訓練
・インシデント件数
を具体的に公開してほしいところです。
実運用と訓練結果まで確認できれば、
1→3点
増加:+2点
総合:48→50点
シビックランク:E→D
を検討できます。
参考企業は伊藤忠商事株式会社です。
Drive上の最新企業審査は83点・A、Protection22/25点で、標的型メール訓練、第三者によるサイバー攻撃演習、BCP訓練などを具体的に公開している点を評価しています。
次のランクへ上がる具体例
現在48点・Eです。
Dは50点からなので、あと2点です。
次のいずれか一つを実現できればDランクへ届く可能性があります。
・労働時間・休息:5→7点
48→50点・D
・改善成果の人間への還元:1→3点
48→50点・D
・サイバー防衛・情報保護:1→3点
48→50点・D
・労働安全・健康:2→5点
48→51点・D
株式会社富士急ハイランドには、ドローン点検、ロックアウト、ISO45001、救護体制、公式アプリなど、改善の材料はかなりあります。
特に2026年のドローン点検は、人が危険な場所へ行かなければならない仕事そのものを技術へ置き換える取り組みであり、シビック評価と相性の良いInnovationです。
しかし、遊園地を運営する企業では、安全事故の重みが非常に大きくなります。
2025年には社員が死亡し、その数年前には利用者12人が重軽傷を負ったコースター事故もありました。
だからこそ今後は、「新しい安全対策を導入しました」という説明から一歩進み、
事故が何件減ったのか。
高所作業が何時間減ったのか。
社員が何日多く休めるようになったのか。
安全技術によって浮いた時間を人へどう返したのか。
まで公開することが重要です。
現時点の総合評価は48点/100点、シビックランクEです。
出典一覧
1.株式会社富士急ハイランド「会社情報」
2.厚生労働省 ハローワーク「株式会社富士急ハイランド求人情報」
3.富士急ハイランド「安全・安心への取り組みについて」
4.富士急行株式会社「安心・安全の更なる追求」
5.富士急行株式会社「ええじゃないか死亡事故に関するお詫び」
6.テレビ朝日「ええじゃないか死亡事故で現場責任者を書類送検」
7.富士急行株式会社「ええじゃないか営業再開について」
8.国土交通省「山梨県内コースター事故調査報告書」
9.山梨県「ド・ドドンパ事故に関する記者会見」
10.富士急行株式会社「ド・ドドンパ営業終了」
11.株式会社富士急ハイランド「公式アプリ」
12.株式会社富士急ハイランド「顔認証入園」
13.株式会社富士急ハイランド「個人情報保護方針」
14.富士急行・富士急ハイランド「FUJIYAMA自動飛行型ドローン点検導入」
15.株式会社富士急ハイランド「賞味期限切れ商品の販売に関するお詫び」
16.転職会議「株式会社富士急ハイランド」
17.Indeed「株式会社富士急ハイランドの社員クチコミ」
18.OpenWork「株式会社富士急ハイランド」
19.富士急グループ「人権の尊重」
20.富士急グループ「カスタマーハラスメントの指針」
シビックランクの基準
| ランク | 点数 |
|---|---|
| S | 90~100点 |
| A | 80~89点 |
| B | 70~79点 |
| C | 60~69点 |
| D | 50~59点 |
| E | 40~49点 |
| F | 20~39点 |
| G | 0~19点 |
情報ランクの基準
| 情報ランク | 基準 |
|---|---|
| S | 公的機関、裁判所、規制当局、独立した第三者機関の調査・監査・検証・認証など、内容そのものに独立した裏づけがある情報 |
| A | 企業公式資料、採用情報、公式声明・SNS、氏名・役職・立場を確認できる記名取材や公表発言など、発信主体を確認できる情報 |
| B | 従業員・元従業員の口コミ、一般SNS、匿名掲示板など、発信者の身元や対象企業との関係を独立に確認しにくい情報 |
情報ランクは企業そのものの良し悪しではなく、個々の情報の出どころと検証状態を示します。
今回の審査では、国土交通省・山梨県・厚生労働省の資料をS、株式会社富士急ハイランド・富士急行株式会社の公式情報をA、転職会議・Indeed・OpenWorkの口コミをBとして扱いました。
