私たちは、企業の商品を購入したり、サービスを利用したりすることで、そこで働く人たちの未来を変えることができます。
働く人に十分な賃金を払い、休暇を確保し、安全な職場をつくり、人の負担を減らす企業の商品やサービスが選ばれれば、そうした企業により多くの売上が集まります。その結果、働く人を大切にする経営を続けやすくなります。
反対に、低賃金や長時間労働、安全上の問題を改善しない企業の商品やサービスが売れ続ければ、そうした働かせ方のままでも事業を続けることができます。
だからこの企業審査では、「私たちがお金を使うなら、どの企業を選ぶことが、そこで働く人にとってより良い社会につながるのか」という視点から企業を評価します。
今回審査する十国峠株式会社は、総合34点、シビックランクFです。
十国峠株式会社の特に強い点は、ケーブルカーの輸送安全です。2025年度は有責事故0件、インシデント0件を達成しました。さらに、約70年使用してきたケーブルカーを2027年夏に約8億円の新しいスロープカーへ更新する計画も進めています。
そのため、この企業の商品を買ったりサービスを利用したりすれば、古い設備を使い続けるのではなく、安全な設備への更新や事故防止に継続してお金を使う企業が残りやすい社会になる可能性が高まります。新しいスロープカーではバリアフリー化も予定されており、車椅子やベビーカーを利用する人も観光地へ移動しやすくなる方向です。
一方で、改善点として働く人に関する情報公開の不足が残ります。正社員を含む平均給与、賃上げ率、平均残業時間、年間休日、有給休暇取得率、離職率、労働災害件数などが公表されていません。安全なケーブルカーを運行するには設備だけでなく、そこで働く人が十分な賃金と休息を得て、安全に働けていることも重要です。
この記事では、十国峠株式会社の強みと課題をさらに詳しく企業審査していきます。
十国峠株式会社の企業審査結果
十国峠株式会社は、ケーブルカーの輸送安全については詳しい情報を公開しています。その一方で、社員の賃金・労働時間などSafetyの労務分野と、災害後の代替輸送・サイバー復旧などProtectionの結果情報が大きく不足しています。
| 評価軸 | 得点 | 満点 |
|---|---|---|
| Safety | 12 | 50 |
| Innovation | 14 | 25 |
| Protection | 8 | 25 |
| 総合 | 34 | 100 |
| シビックランク | F | — |
主な強みは、2025年度の有責事故・インシデント0件、毎月の安全会議、異常時脱出訓練、設備投資、そして2027年に予定する約8億円のスロープカーへの更新です。
主な課題は、賃金、残業、休日、離職率、福利厚生利用率、労災件数など、働く人に関する結果情報がほとんど公開されていないことです。さらに、災害や設備故障でケーブルカーが使えなくなった場合の代替輸送、具体的な復旧時間、サイバー復旧訓練についても情報が不足しています。
事業内容と人間への貢献
十国峠株式会社は2021年12月1日に設立されました。
1956年に開業した十国峠ケーブルカーとレストハウスを伊豆箱根鉄道株式会社から承継する新設分割会社として誕生し、2022年2月から富士急グループとなっています。現在の主な事業は鋼索鉄道、飲食・物販、アウトドアです。
山頂までの移動を支える
十国峠パノラマケーブルカーは、山麓と標高約770mの山頂を約3分で結びます。
通常は9時から17時まで15分間隔で運行しています。徒歩で山頂へ向かうことが難しい人でも、ケーブルカーによって十国峠の景観へアクセスできます。
十国峠は熱海と箱根の間に位置し、山頂から富士山、駿河湾、相模湾などを見渡せる観光地です。
飲食・宿泊まで地域観光を支える
十国峠株式会社はケーブルカーに加えて、森の駅箱根十国峠、TENGOKU CAFE、PANORAMA TERRACE 1059、THE GLAMPING箱根十国峠などを展開しています。
観光客が景色を見るだけで帰るのではなく、飲食や宿泊まで利用できれば地域滞在時間を伸ばすことにつながります。
Safety:12/50点
Safetyでは、ケーブルカーを安全に利用できるかに加えて、その安全を支える従業員自身が適切な賃金、休息、健康管理、人権保護を受けているかを確認します。
十国峠株式会社は輸送安全については非常に詳しく公開しています。一方、社員の賃金や残業、休日、労災などには大きな情報不足があります。そのため、利用者側の安全は高く評価できても、Safety全体では得点が伸びません。
賃金・利益の還元:0/10点
現在確認できる求人では、森の駅箱根十国峠のカフェ・売店業務で時給1,200円、グランピングの清掃等で時給1,400円の短期アルバイト募集があります。
しかし、これらは単発・短期求人であり、十国峠株式会社で継続的に働く社員全体の待遇を示す数字ではありません。
正社員の基本給、平均給与、賃金中央値、賞与、ベースアップ率、会社利益、利益のうちどの程度を社員へ還元したのかについては公開情報がありません。
この項目では、働く人への利益還元を確認するための重要情報を十分に評価できないため0/10点としました。
2点以上へ上げるには、正社員を含む雇用区分別の給与、賞与、賃上げ実績などを公開し、実際に従業員へ一定の還元が行われていることを確認できる必要があります。
労働時間・休息:0/10点
短期アルバイト求人には9時~17時、休憩1時間という勤務例があります。
しかし、これは単発求人の勤務時間です。
正社員・契約社員を含めた会社全体について、
・平均残業時間
・年間休日
・有給休暇取得率
・休日出勤
・連続休息時間
などの公開情報がありません。
観光施設は土日祝日や年末年始も営業するため、社員が実際にどの程度休めているかは重要です。
重要な労働時間情報が公開されていないため0/10点としました。
2~4点以上へ上げるには、対象会社単体の平均残業、年間休日、有給取得率などを公開し、過度な長時間労働になっていないことを確認できる必要があります。
雇用の安定・待遇の公平性:0/5点
十国峠株式会社はケーブルカー、飲食物販、グランピングなど複数の業務を運営しています。
一方、
・正社員数
・契約社員数
・パート・アルバイト数
・離職率
・平均勤続年数
・男女賃金差
・正社員登用実績
について公開情報がありません。
短期・単発スタッフを利用していることは確認できますが、それだけで会社全体の雇用が不安定だとは判断しません。
一方、安定しているとも評価できません。
雇用の実態を判断する重要情報が公開されていないため0/5点です。
次の段階へ上げるには、雇用形態別の人数、離職率、平均勤続年数、正社員登用実績などを公開し、安定した雇用が確認できる必要があります。
福利厚生・育児・介護:0/5点
短期求人では労災保険が確認できますが、これは短期勤務者の条件であり、十国峠株式会社の正社員向け福利厚生を示すものではありません。
正社員について、
・退職金
・住宅支援
・育児休業取得率
・介護休業
・健康支援
・資格取得支援
などの公開情報がありません。
重要情報が公開されていないため0/5点としました。
次の段階へ上げるには、正社員向け福利厚生の内容に加えて、育児休業や介護休業の取得率・復職率など、実際の利用状況まで確認できる必要があります。
人権・ハラスメント・労使関係:2/5点
十国峠株式会社は富士急グループ企業です。
富士急グループは2025年に人権方針を制定し、すべての役員・従業員を適用対象としています。
連結子会社の従業員も利用できる内部通報窓口「ヘルプQライン」を設け、匿名通報や外部弁護士窓口を用意しています。管理者・職場長向けのハラスメント研修も実施しています。
カスタマーハラスメントについても、富士急グループ各社を対象に、社内相談体制、警察・弁護士との連携などを定めています。
制度が十国峠株式会社の従業員にも適用されることを加点しました。
一方、十国峠株式会社単体のハラスメント相談件数、調査件数、是正件数、労使紛争などは公開されていません。
制度の存在は確認できますが、その制度が十国峠株式会社でどの程度利用され、問題解決につながったのかを確認できないため2/5点としました。
3点以上へ上げるには、対象会社単体の相談・通報・是正実績などを公開する必要があります。
労働安全・健康:6/10点
十国峠株式会社は、輸送の安全に関する取り組みの中で従業員の健康管理も具体化しています。
出退勤時にはアルコール検知装置等による酒気帯び確認を行い、健康診断で再検査が必要となった職員について追跡確認しています。毎月1回の安全会議も実施し、ヒヤリ・ハットや安全工事、教育状況について確認しています。
2025年6月24日と11月18日には、緊急停止した車両からハシゴを利用して脱出し、山麓建物へ避難する異常時処置訓練を実施しています。訓練後には参加者から意見を集め、対応方法の改善も行っています。
安全会議、健康確認、訓練を実際に実施していることを評価します。
一方、十国峠株式会社単体の労働災害件数、休業災害件数、度数率、転倒・腰痛などの負傷実績については公開情報がありません。
2026年度は労働災害の撲滅を掲げていますが、前年の労災件数を比較できないため、実際の成果を十分に判断できません。
以上から6/10点としました。
8点へ上げるには、労災件数や休業災害度数率を公開し、訓練や設備改善によって実際に事故が少ないことを確認できる必要があります。
商品・サービスの安全:4/5点
2025年度の実績は、
・有責事故:0件
・インシデント:0件
・有責輸送障害:1件
でした。
乗客が負傷するような事故や重大なインシデントを0件に抑えたことは高く評価できます。
安全体制としても、社長をトップとし、安全統括管理者、運転管理者、技術管理者、乗務員指導管理者などの責任を明確にしています。
2025年度には車両・架線保守、枕木交換、電気設備更新などに設備投資481万5,000円、修繕・保守管理費438万4,000円を使用しました。2026年度には設備投資5,000万円、修繕・保守管理費640万円を計画しています。
一方、有責輸送障害は目標0件に対して1件発生しました。
事故・インシデント0件を評価しつつ、すべての安全目標を達成したわけではないため4/5点としました。
5点へ上げるには、事故、インシデント、有責輸送障害のすべてで0件を継続して達成する必要があります。
従業員・元従業員の口コミ
十国峠株式会社について、転職系口コミサイトや求人口コミを確認しました。
今回の調査では、十国峠株式会社の現在の従業員・元従業員であることを確認でき、労働環境の採点に使用できる具体的な口コミ本文は確認できませんでした。
利用者側の口コミでは、グランピング施設についてスタッフの対応を評価する投稿が確認できます。
ただし、顧客から見た接客評価と、社員自身の労働環境は別です。
利用者口コミを「働きやすい会社」の根拠としては採点していません。
SNS・匿名掲示板の確認結果
X、5ちゃんねる、爆サイなどについて、十国峠株式会社と「残業」「給料」「休日」「退職」「パワハラ」「労災」などを組み合わせて確認しました。
今回の調査範囲では、十国峠株式会社との雇用関係が判断でき、労働環境の採点根拠として利用できる現在の投稿本文は確認できませんでした。
問題を示す投稿が見つからなかったことを、安全・良好な職場である証拠とは扱いません。
Safety小計:12/50点
Innovation:14/25点
Innovationでは、新しい設備や観光施設を作ったこと自体ではなく、人の危険や負担を減らしているか、利用者の不便を改善しているか、その成果を働く人へ還元しているかを確認します。
十国峠株式会社で最も重要なInnovationは、約70年使用してきたケーブルカーを2027年夏に新型スロープカーへ更新する計画です。老朽設備の維持が難しくなる前に約8億円を投じて更新し、同時にバリアフリー化を進める点は評価できます。ただし、現在は計画・建設段階であり、効果はまだ実績として確認できません。
作業負担・危険の削減:6/10点
現在のケーブルカーは開業から約70年が経過しています。
十国峠株式会社は、老朽化によって部品確保が年々難しくなり、将来的に安全性を維持することが困難になる可能性を設備更新の理由として公表しています。
2027年から導入予定のスロープカーは、自走式モーター駆動のラック&ピニオン方式を採用します。
旧設備の部品を確保しながら維持する負担を減らし、安全性を維持しやすい新設備へ移行する方向性を評価しました。
一方、新設備導入後に保守作業時間が何時間減るのか、危険作業が何件減るのか、必要人員がどう変化するのかはまだ確認できません。
そのため6/10点です。
8点以上へ上げるには、稼働後の保守時間、作業人数、事故・ヒヤリハット、身体負担などを旧設備と比較し、改善結果を公表する必要があります。
商品・サービスの改善:4/5点
新スロープカーは勾配が変化しても車内床面を水平に保つ構造で、駅舎から車両までの動線もバリアフリー関連法令に準拠して整備する計画です。
これまで自力での乗降が難しかった車椅子利用者や、ベビーカーを使う家族でも利用しやすくなります。
現在も障害者割引や車椅子貸し出しがありますが、新設備では移動設備そのものをバリアフリー化します。
利用者の不便を具体的に減らす計画として高く評価します。
ただし2027年夏の運行開始予定であり、現時点では利用実績や満足度、乗降時間短縮などの成果はありません。
そのため4/5点としました。
改善成果の人間への還元:0/5点
設備投資、施設改修、デジタル施策などは確認できます。
しかし、それによって、
・従業員の残業が何時間減ったか
・休日が増えたか
・危険な保守作業がどの程度減ったか
・必要人員が減った場合に雇用を維持したか
・賃金が上がったか
について公開情報がありません。
技術を導入した事実だけで、人へ還元したとは評価しません。
そのため0/5点です。
3点へ上げるには、新スロープカー導入前後の作業時間、必要人数、残業、配置転換、雇用、賃金、安全実績を比較し、複数の項目で働く人への改善を確認できる必要があります。
研究開発・現場改善の継続:4/5点
2025年度には設備投資481万5,000円、2026年度は5,000万円の設備投資を計画しています。
さらに2027年夏には、約8億円のスロープカーを導入する計画です。
毎年の保守・設備更新に加え、70年使用した主要交通設備そのものを更新する大規模プロジェクトへ進んでいることから、継続的な改善姿勢を評価できます。
一方、現在は大型更新の成果がまだ確認できないため4/5点としました。
Innovation小計:14/25点
Protection:8/25点
Protectionでは、雷、強風、地震、停電、設備故障、サイバー攻撃などが発生した際に、利用者を安全に避難させ、サービスを継続・復旧できるかを確認します。
十国峠株式会社は異常時の脱出訓練を実施し、自然災害や停電への対応力向上を安全目標にしています。一方、ケーブルカーは単一路線であり、設備停止時の代替輸送や具体的な復旧時間は十分に公開されていません。
災害への備え・訓練:4/5点
2025年には6月24日と11月18日の2回、異常時処置訓練を実施しています。
緊急停止した車両からハシゴで脱出し、山麓の建物まで避難する実地訓練です。
訓練後には参加者からレポートを集め、対応方法を改善しています。
2026年度の安全方針でも、テロ・自然災害への危機管理強化、停電等の自然災害発生時への対応力向上を掲げています。
計画だけでなく実際の訓練まで行っているため4/5点です。
5点へ上げるには、地震、停電、火災など複数シナリオで訓練を行い、避難完了時間などの結果まで継続的に公開する必要があります。
生産・物流・調達の代替:0/5点
十国峠の山麓と山頂を機械的に結ぶ交通設備は、現在のケーブルカー1系統です。
強風や雷の場合は安全のため運休します。
ケーブルカーが長期間利用不能になった場合に、
・代替車両を使う
・別ルートで山頂へ輸送する
・仮設輸送を行う
といった会社側の代替輸送計画について公開情報がありません。
徒歩ルートは存在しますが、ケーブルカーの代替として会社が提供する交通手段ではなく、車椅子利用者などが同じように利用できるものでもありません。
そのため0/5点としました。
次の段階へ上げるには、設備停止を想定した代替輸送方法を準備し、実際の訓練で切り替え可能なことを確認できる必要があります。
サイバー防衛・情報保護:2/5点
十国峠株式会社は独自の個人情報保護方針を公開しています。
不正アクセス、改ざん、漏えい、紛失等を防止するための安全対策、個人情報管理者の設置、定期監査、内部規程の継続的な見直しを明記しています。
基本的な管理体制が対象会社自身の方針として確認できるため加点します。
一方、
・MFA
・EDR
・SOC
・侵入テスト
・バックアップ分離
・サイバー訓練
・インシデント件数
・復旧目標時間
などの具体的な公開情報はありません。
そのため2/5点です。
3点以上へ上げるには、具体的なサイバー防御と復旧訓練、その結果を公開する必要があります。
供給継続・復旧能力:2/5点
安全方針には、発災時に迅速な初動で被害を軽減し、早期復旧に努めることが明記されています。
安全管理体制、内部監査、設備点検、修繕、異常時訓練も行っています。
一方、
・停電時のバックアップ電源
・主要設備故障時の代替設備
・目標復旧時間
・過去の障害からの実復旧時間
などは公開されていません。
2025年度には有責輸送障害が1件発生していますが、その障害からどの程度の時間で復旧したのかも安全報告書では明示されていません。
基本的な安全・復旧体制はあるため2点としますが、実際の復旧能力を判断する結果が不足しています。
3点へ上げるには、主要な障害シナリオごとの復旧目標時間を設定し、訓練や実障害での復旧結果を公開する必要があります。
危機時の市民への対応:0/5点
十国峠株式会社について、地域住民の避難輸送、災害物資提供、避難所提供など、一般市民を直接支援する災害協定や実績について公開情報は確認できませんでした。
ケーブルカー利用客の避難訓練は重要ですが、それは自社利用者を守る安全対策として「災害への備え・訓練」で評価しています。
同じ取り組みを二重加点しないため、この項目は0/5点です。
次の段階へ上げるには、地域自治体との災害協定や、自社施設・物資・人員を地域住民の保護に利用した実績が必要です。
Protection小計:8/25点
良いニュース・最近の前向きな動き
十国峠株式会社では、安全性を維持するために古い設備を使い続けるのではなく、大規模投資によって交通設備そのものを更新する動きが始まっています。また、現在のケーブルカーでも事故・インシデント0件を達成しており、日常の安全管理と将来の設備更新を並行して進めています。
2026年5月|約8億円を投じてスロープカーへの更新を発表【Safety・Innovation】
2027年夏、現在のケーブルカーに代わる「十国峠スロープカー」を運行する計画が発表されました。
総工費は約8億円です。
設備を更新する理由として、約70年使用してきたケーブルカーの老朽化と、交換部品の確保が年々難しくなっていることが明記されています。
故障してから対応するのではなく、将来の安全維持が難しくなることを予測して設備そのものを更新する点は評価できます。
さらに床面を水平に保つ構造やバリアフリー動線によって、車椅子利用者やベビーカー利用者も現在より利用しやすくなる計画です。
十国峠のサービスが利用され、こうした安全投資を続けられれば、古い設備を限界まで使うのではなく、利用者の安全と移動しやすさを優先して更新する企業行動を支えることにつながります。
2025年度|有責事故・インシデント0件【Safety】
2025年度は有責事故0件、インシデント0件でした。
ケーブルカーは急斜面を人を乗せて運ぶ交通設備です。
事故を起こさないことが最も重要なサービス品質であり、事故・インシデント0件という結果は利用者に直接利益があります。
一方、有責輸送障害は1件あったため、すべての安全指標が0件だったわけではありません。
安全管理を重視する十国峠株式会社のサービスが選ばれれば、点検・保守・訓練へ継続して資金を使う経営を続けやすくなります。
2025年|車両脱出訓練を2回実施【Protection】
2025年6月と11月には、停止車両から乗客を脱出させる異常時訓練を実施しました。
例えば停電や設備故障で車両が線路途中に止まった場合、乗客をその場に長時間残すのではなく、安全に車外へ出して避難させる必要があります。
実際の車両を想定した訓練を繰り返すことで、緊急時の対応速度と安全性を高めることにつながります。
悪いニュース・問題となった動き
十国峠株式会社で最も改善を求めたいのは、利用者向け安全情報に比べて、働く人の労働条件がほとんど見えないことです。また、輸送安全でも2025年度はすべての目標を達成したわけではありません。こうした課題が改善されないまま利用が続けば、安全設備には投資していても、働く人の待遇や休息を外部から確認できない経営が続く可能性があります。
2025年度|有責輸送障害1件で安全目標未達【Safety・Protection】
2025年度は、有責輸送障害0件という目標に対して1件発生しました。
事故やインシデントは0件でしたが、輸送サービスを安定して継続するという面では改善余地があります。
安全報告書では、この1件について原因、停止時間、利用者への影響、復旧時間まで詳しく説明していません。
今後は、障害の原因と再発防止策まで公開することで、利用者も安全対策の効果を確認しやすくなります。
2026年5月|約70年の設備で部品確保が困難に【Safety・Protection】
十国峠株式会社は、現在のケーブルカーについて、約70年の経過による老朽化と交換部品の確保難から、将来的な安全維持が困難となる可能性が高まっていることを公表しました。
これは2027年の新設備導入によって改善する予定です。
一方、更新が完了するまでは既存設備を安全に維持する必要があります。
2026年度には設備投資5,000万円を計画しており、更新までの期間についても点検・保守を継続することが重要です。
労働条件の主要KPIがほぼ非公表【Safety】
正社員の平均給与、残業時間、年間休日、有休取得率、離職率、労災件数について公開情報がありません。
企業が安全な交通サービスを維持するには、設備だけでなく、それを運転・保守・接客する人が無理なく働けることも重要です。
この部分が外部から確認できないことが、今回のSafety低得点の最大の理由です。
総合評価と、これから改善してほしいこと
十国峠株式会社は現在34点、シビックランクFです。次のEランクは40点からなので、あと6点必要です。
最大の強みはケーブルカーの安全管理です。2025年度は事故・インシデント0件で、異常時訓練、設備点検、健康管理も具体的に確認できます。
一方、働く人に関する情報公開が極端に少なく、賃金・労働時間・雇用・福利厚生の4項目が0点となっています。また、災害や設備故障後の代替手段と復旧時間も見えません。
労働時間と休息を公開し、実際の働き方を改善する【Safety・労働時間・休息:0→4/10点】
現在は0/10点です。
正社員を含む平均残業時間、年間休日、有休取得率に公開情報がありません。
改善条件は、対象会社単体の平均残業、年間休日、有給取得率、休日出勤などを公開し、過度な長時間労働ではないことを確認できることです。
例えば平均残業20時間台以下、年間休日110日前後以上、有給取得も継続して進んでいるなど、一定の良好な結果が確認できれば0→4点を検討できます。
プラス4点となり、総合点は34→38点です。
働く人にとっては、設備の安全だけでなく、仕事のあとに十分に休み、家族や自分のための時間を持てることが重要です。
参考企業は株式会社JR東海リテイリング・プラスです。Drive上の最新版企業審査では、2025年度の平均残業7.8時間、有給取得率76.1%を会社単体で公開しており、「労働時間・休息」は8/10点です。
賃金を社員全体の数字で公開する【Safety・賃金・利益の還元:0→4/10点】
現在は0/10点です。
短期アルバイトの時給は確認できますが、正社員を含む社員全体の基本給や賃上げ実績が分かりません。
改善条件は、平均基本給、賃金中央値、賞与、既存社員の賃上げ率などを公開し、働く人へ一定の還元が実際に確認できることです。
良好な結果が確認できれば0→4点を検討できます。
単独では総合34→38点ですが、労働時間の改善と組み合わせれば42点となり、Eランクへ上がります。
十国峠の利用が増えたとき、その売上が設備更新だけでなく、実際に働く人の基本給や生活の安定にも届いていることが確認できれば、利用者も企業を選ぶ意味を判断しやすくなります。
参考企業は富士急行株式会社です。Drive上の最新版企業審査では、2026年3月期の平均年間給与681万2,736円と前年比3.6%増を確認でき、「賃金・利益の還元」を6/10点としています。
災害・故障後の復旧時間を具体化する【Protection・供給継続・復旧能力:2→3/5点】
現在は2/5点です。
避難訓練や早期復旧方針はありますが、設備停止後に何時間で運転を再開するのかという目標や実績は公開されていません。
改善条件は、停電、車両故障、電気設備故障などのシナリオごとに復旧目標時間を設定し、訓練時・実障害時の復旧時間を公開することです。
実際に目標時間内で復旧できることが確認できれば2→3点、プラス1点を想定できます。
総合点は34→35点です。
例えば車両が途中で停止した場合、乗客を安全に避難させるだけでなく、いつ運行を再開できるかまで分かれば、観光客や周辺施設も予定を立てやすくなります。
参考企業はSNCF Réseauです。Drive上の最新版企業審査では、火災、暴風、土砂崩れなど実際の障害について停止から復旧までの実績を公開しており、「供給継続・復旧能力」は4/5点です。
次のEランクへ上がるための具体例
現在34点・Fです。
Eは40点からなので、あと6点必要です。
例えば、
・労働時間・休息:0→4点 +4点
・賃金・利益の還元:0→2点 +2点
となれば、
34+4+2=40点
となり、シビックランクEへ上がります。
さらに賃金・利益の還元が0→4点まで改善すれば総合42点となります。
情報を公開しただけで自動的に加点するわけではありません。公開された数字から、実際に残業が過度ではない、休日が確保されている、賃金が改善していると判断できた場合に点数を上げます。
出典一覧
| 情報源 | 主な確認内容 | 情報ランク |
|---|---|---|
| 十国峠株式会社「2026年度安全報告書」 | 事故・輸送障害、安全会議、健康管理、訓練、設備投資 | A |
| 十国峠公式サイト | 事業内容、運行、施設情報 | A |
| 十国峠株式会社・富士急行「十国峠スロープカー」発表 | 約8億円の設備更新、バリアフリー化 | A |
| 富士急グループ人権方針 | 人権、内部通報、ハラスメント研修 | A |
| 十国峠株式会社個人情報保護方針 | 情報管理、監査、個人情報保護 | A |
| Indeed・フルキャスト掲載求人 | 短期アルバイトの時給・勤務条件 | B |
| 楽天トラベル・じゃらん | 利用者から見た接客・サービス評価 | B |
シビックランクの基準
| シビックランク | 総合得点 |
|---|---|
| S | 90~100点 |
| A | 80~89点 |
| B | 70~79点 |
| C | 60~69点 |
| D | 50~59点 |
| E | 40~49点 |
| F | 20~39点 |
| G | 0~19点 |
情報ランクの基準
| 情報ランク | 基準 |
|---|---|
| S | 行政、裁判所、規制当局などの公的資料、または独立した第三者による調査・監査・検証・認証 |
| A | 企業公式資料、採用情報、公式声明など、発信主体を確認できる情報 |
| B | 従業員・元従業員口コミ、一般SNS、匿名掲示板など、発信者と対象企業との関係を独立して確認しにくい情報 |
