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富士急モビリティ株式会社を企業審査|59点/100点・シビックランクD|賃上げ・年間休日100日化を評価、乗客約2時間置き去りと文書警告・運転士不足が課題

私たちは、企業の商品を購入したり、サービスを利用したりすることで、そこで働く人たちの未来を変えることができます。

働く人に十分な賃金を払い、休暇を確保し、安全な職場をつくり、人の負担を減らす企業の商品やサービスが選ばれれば、そうした企業により多くの売上が集まります。その結果、働く人を大切にする経営を続けやすくなります。

反対に、低賃金や長時間労働、安全上の問題を改善しない企業の商品やサービスが売れ続ければ、そうした働かせ方のままでも事業を続けることができます。

だからこの企業審査では、「私たちがお金を使うなら、どの企業を選ぶことが、そこで働く人にとってより良い社会につながるのか」という視点から企業を評価します。

今回審査する富士急モビリティ株式会社は、総合59点、シビックランクDです。

富士急モビリティ株式会社の特に強い点は、運転士不足に対して賃金と休日の改善を実際に進めていることです。2023~2025年の3年間で運転士の基本給を累計月22,500円引き上げ、2025年4月には年間休日を91日から100日へ増やしました。2026年のハローワーク求人でも基本給をさらに3,000~7,000円引き上げたことが記載されており、賃金改善が続いています。

そのため、この企業のバスを利用すれば、地域の移動手段を維持するだけでなく、人手不足を低賃金や少ない休日のまま乗り切るのではなく、運転士の待遇を改善して人を確保する経営に売上が集まりやすくなります。公共交通を支える人にも賃金と休息を返す社会に強くなる可能性が高まります。

一方で、改善点として安全管理が残ります。2026年10月1日には、御殿場駅で乗客1人が車内に残っていたにもかかわらず車庫へ帰り、車庫でも車内確認をしないまま乗務員が休憩に入り、乗客が約2時間後に自力で降車する事案が発生しました。2024年には運転士の勤務時間・乗務時間について国の基準を守っていなかったとして、中部運輸局から文書警告も受けています。人の命を預かるバス会社では、待遇改善と同時に基本的な確認作業や法令順守を徹底する必要があります。

この記事では、富士急モビリティ株式会社の強みと課題をさらに詳しく企業審査していきます。

目次

富士急モビリティ株式会社の企業審査結果

富士急モビリティは、運転士の賃上げ、休日増加、EVバス、キャッシュレス化など、働き手不足と地域交通の両方へ対応する改善を進めています。一方、勤務時間に関する行政上の指摘、安全目標未達、2026年10月の乗客置き去りなど、安全運行の根幹で改善すべき問題も確認されています。

評価軸得点主な評価
Safety28/50継続的な賃上げ、年間休日100日化、人権制度を評価。月26時間残業、運転士不足、文書警告、安全目標未達、乗客置き去りが課題
Innovation14/25キャッシュレス、EV、営業所統合による車両・人員活用を評価。改善による残業削減等の定量成果は不足
Protection17/252営業所、グループ防災体制、個人情報保護を評価。運転士不足による供給継続力と個社BCP・サイバー成果の開示が課題
合計59/100シビックランクD

主な強み

  • 2023~2025年の3年間で運転士の基本給を月22,500円引上げ
  • 2026年も基本給を3,000~7,000円引上げ
  • 年間休日を91日から100日へ増加
  • 大型二種免許の養成制度を実施
  • 2024年度の重大事故は0件
  • 完全キャッシュレスバスを実証
  • 2026年から「おおいゆめバス」にEV車両を導入
  • 富士急湘南バスとの合併で運転士・車両を柔軟に運用
  • 富士急グループの人権・災害・情報保護制度の対象

主な課題

  • 運転士求人の月平均時間外労働は26時間
  • 年間休日100日は改善したものの、依然として120日前後の企業より少ない
  • 2024年度の御殿場営業所は予算定員39人に対して34人
  • 退職理由として長い拘束時間・休みの少なさが会社資料に記載
  • 2024年度の有責事故は目標6件に対して12件
  • 車内人身事故は目標0件に対して2件
  • 2024年に勤務時間・乗務時間の基準違反で文書警告
  • 2026年10月に乗客を約2時間車庫へ置き去り
  • 育児・介護・看護休暇の取得実績が求人情報上は「なし」
  • 労働災害件数など従業員自身の安全KPIが個社では十分に公開されていない

事業内容と人間への貢献

富士急モビリティは、御殿場市、小山町、神奈川県西部などで路線バス、高速バス、貸切バスを運行しています。

都市部の鉄道のように利用者数が多い交通だけでなく、自動車を運転できない高齢者、学生、観光客などに移動手段を提供することが重要な役割です。

基本情報

項目内容
会社名富士急モビリティ株式会社
法人番号4080101021826
設立2020年5月29日
本店所在地静岡県御殿場市新橋999番地
代表者志村 公聖
資本金1億円
主な事業乗合バス・高速バス・貸切バス
本社営業所静岡県御殿場市
湘南営業所神奈川県足柄上郡松田町
2026年求人記載の企業全体従業員数98人
社会保険被保険者数86人

会社公式ページの従業員数95人は2023年10月1日時点の数字です。2026年のハローワーク求人では企業全体98人、Gビズインフォでは社会保険被保険者86人となっています。それぞれ時点と集計対象が異なるため、現在の人数を一つの数字に固定せず区別して扱います。

主な事業内容

本社営業所は御殿場市・小山町を中心とした路線バス、高速バス、貸切バスを運行しています。

2024年2月には富士急湘南バスを吸収合併し、現在は神奈川県松田町の湘南営業所から松田町、山北町、小田原市、大井町などの路線も運行しています。

自治体から委託された小山町コミュニティバス、山北循環バス、大井町の「おおいゆめバス」なども担っています。

事業による人間への貢献

地域バスがなくなると、自家用車を運転できない人ほど大きな影響を受けます。

例えば、

  • 高齢者が病院や買い物へ行く
  • 学生が学校へ通う
  • 観光客が御殿場・富士山周辺を移動する
  • 鉄道駅から離れた地域住民が駅へ向かう
  • 企業や学校へ通勤・通学する

といった生活をバスが支えています。

2025年からは御殿場駅と新松田駅を結ぶ「富士山ライナー」の実証運行も行われています。JR御殿場線と小田急線の乗継ぎが悪い時間帯をバスで埋めることで、通勤・通学や買い物の移動を改善する取り組みです。

バス会社の人間への貢献は「バスを走らせること」だけではありません。

そのバスを運転する人が十分に休み、安全に働ける人数を確保しながら路線を維持できることまで含めて評価する必要があります。

Safety

富士急モビリティのSafetyでは、運転士不足に対し賃上げと休日増加を行った点を高く評価できます。

一方、運転士自身が退職理由として長い拘束時間や休みの少なさを挙げていたこと、安全目標の未達、行政上の文書警告、2026年の乗客置き去りなど、働く人と利用者の両方に関わる問題も確認されています。

賃金・利益の還元 8/10点

2025年7月に会社が御殿場市へ提出した資料では、コロナ禍以降3年連続で賃上げし、3年間で月額基本給を累計22,500円引き上げたとしています。

さらに2026年のハローワーク求人では、

  • 基本給233,000円
  • 2026年4月に基本給3,000~7,000円引上げ
  • キロ手当も引上げ
  • 時間外手当の算出基礎も引上げ
  • 支給総額は月33万~40万円

と記載されています。賞与も年2回で、前年実績は30万~35万円です。

公式採用ページでも「昨年に引き続き本年も賃上げ実施」としています。

運転士不足を単に採用広告で補うのではなく、基本給自体を複数年連続で改善していることは高く評価できます。

8/10点とした理由は、具体的なベース給与引上げを確認できる一方、会社全体の平均年収、賃金中央値、非正規を含めた賃上げ率、利益のうち何%を人件費へ返したかまでは公表されていないためです。

雇用形態を問わず高い賃上げが継続し、会社全体の給与実績まで公開されれば10点を検討できます。

労働時間・休息 4/10点

富士急モビリティは2025年4月から年間休日を91日から100日へ9日増やしました。

これは運転士不足への対応策として会社自身が公表した改善です。

一方、2026年のバス運転士求人では月平均時間外労働が26時間となっています。勤務時間帯は5時30分から22時30分の間で、実働7時間39分とされています。

2024年度の御殿場営業所では退職者5人の主な理由として、

  • 拘束時間が長い
  • 休みが少ない
  • 家庭の事情

が会社自身の資料に記載されています。

年間休日を9日増やしたことは明確な改善です。

ただし年間100日は、年間120日前後を確保している企業と比べるとまだ少なく、運転士の平均残業26時間も負担が小さいとは言えません。

改善前の問題を認識し休日を増やした点を評価して4/10点としました。

年間休日110~120日以上、平均残業20時間未満などへ改善し、実際の拘束時間や勤務間休息も公開できれば6~8点へ上げられます。

雇用の安定・待遇の公平性 3/5点

2024年度の御殿場営業所では、予算上必要な運転士39人に対し実際は34人で、5人不足していました。

同年度には8人が入社する一方、5人が退社しています。

現在も運転士求人を継続し、大型二種免許を持たない人には養成制度を設けています。定年後も71歳までの再雇用制度を公式採用ページで案内しています。

2026年の求人では企業全体98人で、女性運転士も在籍しています。

採用を続け、免許取得支援や高齢者再雇用で人材確保を行っているため3/5点としました。

一方、会社全体の離職率、平均勤続年数、男女賃金差、正規・非正規比率などは公表されていません。

不足人数を解消し、低い離職率が継続していることまで確認できれば4~5点を検討できます。

福利厚生・育児・介護 3/5点

バス運転士の採用では、

  • 社会保険
  • 賞与年2回
  • 家族手当
  • 富士急行のバス・電車家族パス
  • グループ施設割引
  • 単身寮
  • 退職金制度

などが確認できます。

一方、2026年のハローワーク求人では、育児休業、介護休業、看護休暇について取得実績「なし」と掲載されています。事務職求人では利用可能な託児所も「なし」です。

基本的な福利厚生は整っていますが、仕事と育児・介護を両立した実績まで確認できないため3/5点としました。

育児休業等の利用者が実際に増え、運転士でも家庭と両立できる勤務制度が確認できれば4~5点へ上げられます。

人権・ハラスメント・労使関係 4/5点

富士急グループは人権方針を制定し、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」などに基づいて人権尊重を進めています。

グループには人権侵害を含む問題を相談できる内部通報窓口「ヘルプQライン」があります。事業会社を含むグループ全体の人権リスクをコンプライアンス委員会が扱う体制です。

富士急モビリティも富士急グループの事業会社なので、このグループ制度の対象として評価できます。

一方、富士急モビリティ単体で、

  • ハラスメント相談件数
  • 是正件数
  • 従業員満足度
  • 人権研修受講率

などは公表されていません。

制度が対象会社にも適用されていることを評価して4/5点としました。

個社での運用成果まで公開されれば5点を検討できます。

労働安全・健康 4/10点

バス会社では利用者だけでなく、長時間運転する運転士自身の健康が安全運行に直結します。

富士急グループは「安全は全てに優先」を掲げ、運転士の健康管理や安全教育をグループの安全施策に含めています。

富士急モビリティの2025年度安全報告書でも重大事故0件を確認でき、公式サイトでは貸切バス事業者安全性評価認定制度の認定事業者であることを公表しています。

一方、富士急モビリティ単体の、

  • 運転士の労働災害件数
  • 休業災害
  • 健康診断結果
  • 睡眠時無呼吸症候群等の検査実績
  • メンタル不調による休職率

などは十分に公表されていません。

さらに2024年には、運転者の勤務時間・乗務時間について国土交通省告示の基準を守っていなかったとして文書警告を受けています。

安全制度は確認できますが、労働安全の成果開示と勤務管理に課題があるため4/10点としました。

労災・健康KPIを個社で公開し、勤務時間違反の再発がないことを継続的に示せれば6~8点へ上げられます。

商品・サービスの安全 2/5点

2024年度の安全報告書では、

安全項目2024年度目標実績
重大事故0件0件
有責事故6件12件
車内人身事故0件2件

となっています。重大事故0件は評価できますが、有責事故は会社目標の2倍、車内人身事故も目標未達です。

さらに2024年8月には、2023年12月にバス停で旅客を乗せず通過した事案を端緒とする監査で、勤務時間・乗務時間の基準違反が認定され、中部運輸局から文書警告を受けました。

そして2026年10月1日、御殿場駅で乗客が1人残っていたにもかかわらずバスを車庫へ戻し、車庫到着後も車内確認をせず、約2時間にわたって乗客を車内に残す事案が発生しました。

会社は確認手順の見直しと乗務員教育の強化を表明しています。

これは運転技術そのものの事故ではありませんが、終点・入庫時の基本的な安全確認が実施されなかった問題です。

重大事故0件と安全制度は評価する一方、安全目標未達と複数の確認・管理上の問題があるため2/5点としました。

有責事故・車内事故を目標以下へ継続的に減らし、確認手順の改善後に同種事案を再発させない実績が積み上がれば3~4点へ上げられます。

従業員・元従業員の口コミ

Indeedでは富士急モビリティの口コミは1件のみで、総合評価3.0です。

2024年9月の御殿場市・バス運転士の投稿には、

「ですが精神的には大変です。」

という記述があります。情報ランクBの個人体験であり、会社全体の職場環境を示す統計としては扱いません。

Indeedの質問回答では2024年8月、休暇について、

「普通にあるが取りずらい」

という投稿もあります。これも匿名性のある個人回答であり事実認定には使いません。

一方、会社自身が2025年の資料で退職理由として「拘束時間が長い」「休みが少ない」と説明しているため、休息の改善は口コミだけの問題ではありません。

2025年4月から年間休日を91日から100日へ増やしたことは、こうした問題への具体的な改善として評価しています。

SNS・匿名掲示板の確認結果

X、5ちゃんねる、爆サイ等について、富士急モビリティと「残業」「給料」「退職」「パワハラ」「事故」「運転士」などを組み合わせて確認しました。

今回の検索範囲では、投稿者が富士急モビリティの現社員・元社員だと判断でき、本文まで確認できる現在の投稿で、企業審査の採点根拠として使用できるものは確認できませんでした。

匿名投稿が見つからないことを加点材料にはしていません。

Innovation

富士急モビリティは、運転そのものの完全自動化ではなく、キャッシュレス、デジタル乗車券、EV、営業所統合などを通じて少ない人員でも地域交通を維持しやすい仕組みを整えています。

一方、それらによって運転士の残業や拘束時間が実際に何時間減ったのかという「人への効果」の数字はまだ不足しています。

作業負担・危険の削減 4/10点

2024年2月、富士急モビリティは富士急湘南バスを吸収合併しました。

目的として、運転士・車両の柔軟な運用と事務業務の効率化が明記されています。

営業所間で人員や車両を柔軟に扱えるようになれば、一方の営業所で欠員や車両故障が発生した際の対応力を高められます。

完全キャッシュレスバスも実証しており、現金収受・両替・釣銭管理などの作業を減らせる可能性があります。

一方、

  • 現金扱い時間が何分減ったか
  • 事務作業を何時間削減したか
  • 残業が何時間減ったか
  • 必要人員がどう変わったか

は公表されていません。

具体的な効率化は確認できますが、人の負担削減成果を定量確認できないため4/10点としました。

商品・サービスの改善 5/5点

特急御殿場ライナーでは2024年12月から完全キャッシュレスバスの実証を実施しました。

国土交通省資料では対象2台・1日7便で、クレジットカード、QR等へ対応し、実証期間中は2025年2月末までに約8,500人が利用しています。

2025年度にも同路線が完全キャッシュレスバス実証の対象に選定されています。

2026年4月には大井町巡回バス「おおいゆめバス」を小型EVバスへ変更しました。

2026年10月には三島駅と御殿場プレミアム・アウトレットを直接結ぶ新しい特急路線も開始しています。

支払い、環境性能、乗継ぎ、路線設定を継続的に改善しているため5/5点としました。

改善成果の人間への還元 2/5点

賃金引上げと年間休日の増加という「人への還元」は実際に確認できます。

一方、それがキャッシュレス化、営業所統合、事務効率化などによって生まれた利益・時間を還元した結果なのかは公表されていません。

因果関係を確認できないため、Innovationの成果として満額加点することはできません。

「業務効率化によって年間○時間を削減し、その結果年間休日を9日増やした」

といった関係まで会社が示せれば、技術改善が人の自由時間へ戻ったことを直接評価できます。

現時点では2/5点としました。

研究開発・現場改善の継続 3/5点

キャッシュレス実証は2024年度だけで終わらず2025年度も継続し、2026年にはEVバス、予約サイトのFujiyama Connectへの移行、新路線など複数の改善が行われています。

単発的なサービス改善ではなく、デジタル化・車両更新・路線改善を継続しているため3/5点としました。

ただし、改善前後の利用者数、労働時間、運行コストなどを同じ指標で継続測定した成果公開はまだ限定的です。

自動化・省人化後の雇用状況

富士急モビリティでは完全キャッシュレス化や事務効率化など、省人化につながり得る取り組みがあります。

一方、現在の問題は「人が余っている」ことではなく運転士不足です。

2024年度の御殿場営業所は必要39人に対して34人で5人不足していました。2026年も運転士を複数名募集しています。

今回の調査では、デジタル化を原因とする大規模な人員削減、希望退職、解雇は確認されませんでした。

富士急湘南バスとの合併でも、目的は運転士や車両を柔軟に使い、事業を維持することとされています。

現状では、省人化技術は人を解雇するためというより、人手不足の中でサービスを維持するために使われていると見る方が公開情報と整合します。

ただし、合併やキャッシュレス化の前後で事務職人数や残業がどう変化したかは公開されていません。

Protection

地域交通では、災害や車両故障だけでなく、運転士不足自体もサービス継続を脅かします。

富士急モビリティには2つの営業所と富士急グループの防災基盤がありますが、平時から運転士が不足していることは有事の余力を小さくする可能性があります。

災害への備え・訓練 4/5点

富士急グループは自然災害をグループ全体の安全管理対象とし、グループを包括する災害マニュアルを作成しています。

バス・鉄道・船舶では警察や消防と自然災害・緊急時を想定した合同訓練も行っています。

例えば大規模地震や土砂災害が起きた場合、運転士だけの判断に任せるのではなく、グループの安全管理と関係機関との連携で運行停止、避難、代替輸送等を判断できる基盤になります。

グループ制度と訓練実績を評価して4/5点としました。

一方、富士急モビリティ単体の年間防災訓練回数、参加人数、訓練結果までは公開されていません。

生産・物流・調達の代替 4/5点

富士急モビリティは御殿場の本社営業所と神奈川県松田町の湘南営業所を持ちます。

2024年の合併では、運転士と車両を柔軟に運用できる体制づくりが目的に含まれていました。

2026年の求人情報では自社整備工場を持ち、急な車両故障にも随時対応すると説明しています。

車両1台の故障でサービス全体が止まるのではなく、複数車両・営業所・整備機能を持つことは交通継続に役立ちます。

ただし、営業所自体が被災した場合の代替指令所や必要予備車両数などは公表されていないため4/5点としました。

サイバー防衛・情報保護 3/5点

富士急グループでは個人情報保護基準とセキュリティポリシーを設け、不正アクセスやコンピューターウイルス対策を実施するとしています。

富士急モビリティでも予約サイト、問い合わせフォーム、キャッシュレス決済などデジタルサービスが増えているため、サイバー防御の重要性は高まっています。

一方、対象会社単体で、

  • サイバー訓練回数
  • インシデント件数
  • 外部監査
  • 復旧目標時間
  • バックアップ試験

などの情報は公表されていません。

グループ方針は対象になるものの個社運用・成果が不足するため3/5点としました。

供給継続・復旧能力 3/5点

2営業所、自社整備、車両の柔軟運用は供給継続の強みです。

一方、運転士不足は大きなリスクです。

2024年度の御殿場営業所では定員39人に対して34人であり、会社自身が「慢性的な運転士不足」を喫緊の課題としています。

2026年にも一部路線で減便・運行内容の見直しが行われています。路線ごとに理由は異なるため、すべてを運転士不足によるものとは扱いませんが、運転要員の確保が交通維持に直結することは会社資料から明確です。

平時から十分な予備人員を確保できている状態ではないため3/5点としました。

必要運転士数を満たし、災害時の予備人員・予備車両数まで公開できれば4~5点へ上げられます。

危機時の市民への対応 3/5点

富士急モビリティは自治体のコミュニティバスを複数運行し、日常的に地域住民の移動を支えています。

富士急グループでは、災害時に電気バスを避難所等へ派遣して電源として利用する協定なども締結しています。

ただし、この協定は富士急グループの山梨県側での取り組みであり、富士急モビリティ自身の御殿場・湘南エリアでの災害時輸送・電力供給実績としては扱いません。

富士急モビリティ単体で、御殿場市・小山町・松田町等との災害時輸送協定や実際の緊急輸送実績まで確認できれば4~5点を検討できます。

良いニュース・最近の前向きな動き

富士急モビリティの良い動きとして最も評価したいのは、運転士不足を「人が来ない」で終わらせず、基本給と休日の改善へ動いたことです。

同社のバスを利用することで、賃金や休息を改善して地域交通を残そうとする経営へ需要を集めることにつながります。

基本給を継続的に引き上げ、年間休日を9日増加

2025年時点で3年間累計22,500円の基本給引上げを実施し、年間休日を91日から100日へ変更しました。

さらに2026年にも基本給3,000~7,000円の追加引上げが求人情報で確認できます。

単に初任給だけを引き上げるのではなく、既存の基本給を複数年連続で上げている点は、運転士の生活へ直接届く改善です。

EVバスで地域交通を更新

2026年4月から大井町の「おおいゆめバス」は小型EVバスでの運行に切り替わりました。

住宅地を走る地域バスをEV化すれば、走行時の排気ガスや騒音を減らせます。

地域住民が日常的に使う交通で環境負荷を減らす取り組みとして評価できます。

キャッシュレス化を継続

御殿場ライナーでは2024年度に完全キャッシュレス実証を行い、2025年度にも国土交通省の実証路線として選定されました。

現金の用意や両替を減らせるため、観光客の利便性向上だけでなく、運転士が現金対応へ割く時間を減らす可能性があります。

悪いニュース・問題となった動き

富士急モビリティでは、待遇改善が進む一方、安全面では基本動作や法令順守に関わる問題が複数確認されています。

これらを改善しなければ、運転士の働きやすさだけでなく、利用者が安心して公共交通を利用できる条件そのものが損なわれます。

2026年10月、乗客を約2時間車庫へ置き去り

2026年10月1日正午ごろ、御殿場駅で乗客が1人車内に残っていたにもかかわらず、バスはそのまま車庫へ戻りました。

さらに車庫到着後も車内確認をせず、乗務員は営業所へ休憩に入りました。

乗客は約2時間後に気付き、前扉が開いていたため自力で降車しました。

会社は翌10月2日に公式謝罪し、車内確認の徹底、確認手順の見直し、乗務員教育の強化を表明しています。

事故で負傷者が出た事案ではありません。

しかし、終点と入庫時に乗客が残っていないか確認する基本動作が二段階で行われなかったことは、安全管理上重く見る必要があります。

2024年、運転士の勤務時間基準違反で文書警告

2023年12月、三島線の「萩ヶ丘蓮上」停留所で旅客を乗せず通過した事案を受け、中部運輸局が一般監査を実施しました。

その結果、運転者の勤務時間・乗務時間について国土交通省告示の基準を遵守していなかったことが認定され、2024年8月2日に文書警告を受けています。

運転士の労働時間は単なる労務問題ではありません。

疲労が強まれば安全運転にも影響する可能性があるため、Safetyの労働時間と商品・サービス安全の両方に関係する問題です。

2024年度、有責事故が目標の2倍

安全報告書では有責事故6件を目標としていましたが、実績は12件でした。

車内人身事故も目標0件に対して2件発生しています。

重大事故0件は維持していますが、会社自身が設定した安全目標に届かなかった点は改善が必要です。

運転士不足が続く

2024年度の御殿場営業所では必要人数39人に対して34人で5人不足していました。

8人を採用しても5人が退職しており、主な退職理由に長い拘束時間や休みの少なさが含まれています。

賃上げと休日増加は、この問題に対する正しい方向の改善です。

今後は採用人数だけでなく、退職者を減らして必要人員を安定的に満たせるかが重要になります。

総合評価と、これから改善してほしいこと

富士急モビリティ株式会社は59点/100点、シビックランクDです。

次のCランクは60点からなので、あと1点です。

待遇改善はかなり具体的です。

一方、人命を預かるバス会社として、安全確認、勤務時間管理、有責事故、運転士不足が評価を押し下げています。

特にCランクへ進むためには、情報を増やすだけでなく、現在確認されている安全・働き方の問題を実際に改善することが重要です。

商品・サービスの安全を2/5点から4/5点へ改善してほしい

現在の「商品・サービスの安全」は2/5点です。

改善してほしい条件は、

  • 終点・入庫時の車内確認手順を二重化する
  • 置き去り防止装置やチェック記録など、確認を人の記憶だけに依存しない仕組みを導入する
  • 有責事故12件を会社目標6件以下へ削減する
  • 車内人身事故を0件へ近づける
  • 文書警告後に勤務時間違反を再発させない
  • 安全KPIを毎年公開する

ことです。

これらが継続的に確認できれば2→4点、+2点を想定できます。

総合点は59→61点となり、シビックランクCへ上がります。

参考企業として、当サイトの現行審査における株式会社フジエクスプレスは「商品・サービスの安全」4/5点です。有責事故は2023年度28件から2024年度18件へ減少しており、事故件数と改善経過を公表しています。

富士急モビリティでも、安全目標だけでなく事故件数を継続的に下げる成果が必要です。

労働時間・休息を4/10点から6/10点へ改善してほしい

現在の「労働時間・休息」は4/10点です。

年間休日を91日から100日へ増やしたことは大きな改善ですが、運転士の平均残業26時間、過去の「拘束時間が長い」「休みが少ない」という退職理由を考えると、さらに改善余地があります。

例えば、

  • 年間休日110日以上
  • 月平均残業20時間未満
  • 勤務間休息11時間を原則確保
  • 長時間拘束勤務の削減
  • 有給取得率の公開と向上

まで確認できれば4→6点、+2点を想定できます。

総合点は61点となりCランクです。

参考企業として、当サイトの株式会社JR東海リテイリング・プラス現行審査では「労働時間・休息」8/10点です。会社単体の平均残業7.8時間、有給休暇取得率76.1%を公表しており、実際の時間負担を外部から検証できます。

バスと小売では勤務形態が異なりますが、対象会社自身が残業・有休を数字で公開し改善する点は参考になります。

改善成果の人間への還元を2/5点から3/5点へ改善してほしい

キャッシュレス化、営業所統合、デジタル予約などによって効率化を進めています。

現在の「改善成果の人間への還元」は2/5点です。

今後、

「キャッシュレス化で現金精算作業を年間○時間削減した」

「合併後の事務効率化で残業を月○時間削減した」

「その成果を年間休日増加や賃上げへ返した」

というところまで公開されれば3/5点へ上げられます。

2→3点だけでも+1点となるため、総合60点でCランクに到達します。

参考企業として、当サイトのキリングループロジスティクス株式会社の現行審査では「改善成果の人間への還元」3/5点です。同社は業務改善・多能工化を背景に年間所定労働時間を1,920時間から1,896時間へ24時間削減し、生産性改善を社員の自由時間へ実際に返した実績があります。

富士急モビリティでも、効率化と休日増加の因果を数字で示せれば同じ評価段階へ進めます。

次のランクへ上がるための具体例

現在は59点・Dランクです。

Cランクの下限60点まであと1点です。

最も小さい改善例では、

  • 改善成果の人間への還元 2→3点 +1点

で、

59点 + 1点 = 60点

となりCランクへ上がります。

より重要なのは安全面です。

  • 商品・サービスの安全 2→4点 +2点

まで改善できれば61点となります。

また、

  • 労働時間・休息 4→6点 +2点

でも61点となります。

富士急モビリティの場合、ランクを上げるためだけに簡単な項目を改善するより、乗客確認、事故削減、運転士の休息という本業の安全に直結する部分から改善してほしいところです。

出典一覧

  1. 富士急モビリティ株式会社「企業情報」
    会社概要、事業内容、営業所、保有車両、安全性評価認定を確認。
  2. Gビズインフォ「富士急モビリティ株式会社」
    法人番号、本店所在地、社会保険被保険者数を確認。
  3. 富士急モビリティ株式会社「採用情報」
    給与、賃上げ、家族手当、福利厚生、大型二種免許養成制度等を確認。
  4. 富士急モビリティ「乗合バス事業及び運転士等の確保状況について」
    3年間累計22,500円の基本給引上げ、年間休日91→100日、運転士不足、退職理由を確認。
  5. 2026年ハローワーク求人
    基本給、追加賃上げ、月平均時間外労働26時間、従業員数等を確認。
  6. 富士急モビリティ「2025年度安全報告書」
    重大事故、有責事故、車内人身事故の目標と結果を確認。
  7. 中部運輸局「乗合バス事業者に文書警告」
    勤務時間・乗務時間の基準違反と2024年8月2日の文書警告を確認。
  8. 富士急モビリティ「弊社乗合バスにおけるお客様の置き去りについて」
    2026年10月1日の置き去り事案と再発防止方針を確認。
  9. 国土交通省「完全キャッシュレスバス実証運行」
    御殿場ライナーのキャッシュレス化、利用者数等を確認。
  10. 大井町「おおいゆめバス」
    2026年4月からのEVバス導入を確認。
  11. 富士急行株式会社「人権の尊重」
    グループ人権方針、コンプライアンス委員会、ヘルプQラインを確認。
  12. 富士急行株式会社「災害リスク対策」
    グループ災害管理、共通マニュアル、電気バスを利用した災害協定等を確認。
  13. 富士急行株式会社「個人情報保護方針」
    グループ共通の個人情報保護・セキュリティ方針を確認。
  14. Indeed「富士急モビリティ株式会社の社員クチコミ」
    運転士による職場体験を情報ランクBの補助資料として確認。

シビックランクの基準

シビックランク総合点
S90~100点
A80~89点
B70~79点
C60~69点
D50~59点
E40~49点
F20~39点
G0~19点

富士急モビリティ株式会社は59点のため、シビックランクDです。

情報ランクの基準

情報ランク基準
S国・自治体・規制当局・裁判所・独立第三者機関による調査、監査、認証、検証など
A企業公式サイト、公式報告書、公式求人、公式声明など、発信主体を確認できる情報
B従業員・元従業員口コミ、一般SNS、匿名掲示板など、発信者と対象企業との関係を独立に確認しにくい情報

今回の審査では、国土交通省・中部運輸局・御殿場市・Gビズインフォなどの公的資料を最も重視しました。

会社公式の安全報告書、採用情報、富士急グループ資料をA情報として使用し、Indeedの従業員口コミはB情報として補助的に使用しています。

確認された問題と、情報が公開されていない項目は分けて評価しています。

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