働く人に十分な賃金を払い、休暇を確保し、安全な職場をつくり、人の負担を減らす企業の商品やサービスが選ばれれば、そうした企業により多くの売上が集まります。その結果、働く人を大切にする経営を続けやすくなります。
反対に、低賃金や長時間労働、安全上の問題を改善しない企業の商品やサービスが売れ続ければ、そうした働かせ方のままでも事業を続けることができます。
だからこの企業審査では、「私たちがお金を使うなら、どの企業を選ぶことが、そこで働く人にとってより良い社会につながるのか」という視点から企業を評価します。
今回審査する富士急安達太良観光株式会社は、総合39点、シビックランクFです。
富士急安達太良観光株式会社の特に強い点は、ロープウェイやリフトの安全管理と、火山災害を想定した避難体制です。安全報告書では2023年度、2024年度ともに索道運転事故0件・インシデント0件を記録しています。設備のオーバーホール、救助訓練、安全会議も継続しており、安達太良山の噴火を想定した避難確保計画では、ロープウェイ山麓駅・山頂駅、レストハウス、奥岳の湯などが避難促進施設に指定されています。
そのため、この企業のロープウェイ、スキー場、温泉などを利用すれば、山岳観光で事故や災害が発生したときに利用者を安全に避難させる仕組みや、索道設備の点検・訓練を重視する観光施設に強い社会になる可能性が高まります。
一方で、改善点として働く人への利益還元を判断する情報が大きく不足しています。正社員の平均給与、賃上げ実績、平均残業時間、年間休日、有給休暇取得率、離職率、男女賃金比率、労働災害件数などは、対象会社単体で継続比較できる公開情報がありません。政府のGビズINFOでは社会保険適用事業所の被保険者数14人が確認できますが、その14人がどのような待遇や勤務時間で働いているのかまでは分かりません。こうした重要情報が公開されていない点は課題であり、採点上も大きな減点対象です。
この記事では、富士急安達太良観光株式会社の強みと課題をさらに詳しく企業審査していきます。
富士急安達太良観光株式会社の企業審査結果
富士急安達太良観光は、少人数で山岳観光施設を運営しながら、直近では索道事故ゼロを継続し、火山災害への避難計画も持っています。一方、企業審査で最も重いSafetyのうち、賃金や休息、雇用、労災の結果情報がほとんど公開されていないため、総合点は39点にとどまりました。
| 評価軸 | 得点 | 主な評価 |
|---|---|---|
| Safety | 12/50点 | 索道安全・グループ人権制度は評価。賃金、労働時間、休日、雇用、労災の単体実績が大幅に不足 |
| Innovation | 10/25点 | 設備更新や新しい観光体験を評価。従業員の作業負担削減や時間還元の定量成果は非公表 |
| Protection | 17/25点 | 火山避難計画、救助訓練、設備保全は強い。サイバー・代替運営・復旧時間の情報は弱い |
| 総合 | 39/100点 | シビックランクF |
Eランクは40点からなので、次のランクまであと1点です。
今回のF評価は、現在のあだたら高原リゾートが危険だと認定したものではありません。むしろ索道については直近2年度で事故・インシデント0件です。
点数を押し下げている最大の理由は、そこで働く人の待遇や労働安全について外部から評価できる情報が少ないことです。
事業内容と人間への貢献
富士急安達太良観光株式会社は1972年6月10日設立、福島県二本松市に本社を置く富士急グループ企業です。
資本金は3,000万円で、富士急行の連結子会社です。あだたら高原スキー場、あだたら山ロープウェイ、日帰り温泉「あだたら山 奥岳の湯」などを運営しています。
GビズINFOでは社会保険適用事業所の被保険者数は14人です。大規模な観光会社ではなく、比較的小さな組織で山岳観光施設を運営していることが分かります。
ロープウェイで山への負担を減らす
あだたら山ロープウェイは、山麓から標高約1,350メートルまで約6~10分で利用できます。
登山初心者、子ども、高齢者なども安達太良山の景観へアクセスしやすくなり、徒歩だけでは山を楽しみにくい人にも自然体験の機会を広げています。
山頂まで道路を造って大量の自動車を乗り入れさせるのではなく、索道で多人数をまとめて運べる点にも意味があります。
冬だけでなく一年を通じて地域へ人を呼ぶ
冬季にはスキー場を営業し、春から秋にはロープウェイ、温泉、飲食、イルミネーションなどを展開しています。
2026年4月にはロープウェイ山頂駅に「あ」の図書室を新設しました。高村光太郎・智恵子と安達太良山に関連する文学や自然に触れられる空間を整え、単に景色を見るだけではない滞在価値を増やしています。
観光客が滞在し、温泉や飲食も利用すれば、山岳観光の需要を岳温泉や二本松地域へつなげることができます。
Safety――12/50点
富士急安達太良観光のSafetyでは、利用者向けの安全管理はかなり具体的です。一方、働く人の賃金、休息、労災などの結果KPIがほとんど公開されていません。企業審査では利用者の安全だけでなく、サービスを支える従業員の生活も同じように評価するため、Safetyは12点となりました。
賃金・利益の還元――0/10点
富士急安達太良観光では、営業、観光PR、リーフレット制作、SNS発信、ロープウェイ・売店補助などを担当する求人が出ていたことは確認できます。
一方、対象会社単体の平均給与、給与中央値、ベースアップ、賞与実績、利益の従業員還元率などについて、現在比較できる公開情報がありません。
親会社・富士急行の給与や人的資本データを、そのまま富士急安達太良観光の社員へ当てはめることもできません。
賃金・利益の還元は0/10点です。
給与情報を公開しただけでは自動加点しません。実際の給与水準や継続的な賃上げが確認できれば次の採点段階へ上げます。
労働時間・休息――0/10点
対象会社単体の平均残業時間、年間休日、有給休暇取得率、年間総労働時間、繁忙期の勤務時間などについて、比較できる公開情報がありません。
スキー場、ロープウェイ、温泉は季節や天候によって営業時間や人員需要が大きく変わる事業です。
例えば紅葉期にはロープウェイを通常より早い午前7時30分から運行する日もあり、冬季とグリーンシーズンでも業務内容が変わります。
こうした事業だからこそ、繁忙期の長時間労働や休息確保を確認する数字が重要です。
労働時間・休息は0/10点です。
雇用の安定・待遇の公平性――1/5点
政府の社会保険適用事業所情報では被保険者14人が確認できます。
一方、正社員数、非正規雇用数、離職率、平均勤続年数、正社員登用実績、男女賃金比率などは対象会社単体では公表されていません。
小規模企業では数人の退職や採用だけでも職場への影響が大きくなります。
現在の雇用規模が公的情報で確認できる点のみを最低限評価し、1/5点としました。
福利厚生・育児・介護――1/5点
富士急グループ全体では人的資本経営、育児・介護支援、社員教育などを進めています。
ただし、富士急安達太良観光で具体的にどの制度が利用され、育児休業を何人が取得したのか、介護休業の実績があるのかといった対象会社単体の成果は公表されていません。
親会社に制度があるだけで高得点にはしていません。
福利厚生・育児・介護は1/5点です。
人権・ハラスメント・労使関係――2/5点
富士急グループではグループ共通の企業行動規範、コンプライアンス管理規程、人権方針を整備しています。
人権侵害などを相談できる内部通報窓口「ヘルプQライン」も設置されています。グループ会社共通の規程として運用されていることは確認できます。
一方、富士急安達太良観光でハラスメント相談が何件あり、何件を是正したのかという運用結果は公開されていません。
制度の対象である点を評価し2/5点としました。
労働安全・健康――4/10点
富士急安達太良観光の安全報告書では、2025年度の重点施策として労災事故0件、転落・衝突・巻き込まれといった三大労災への注意、5S活動、安全管理体制強化などを掲げています。
また、富士急グループではレジャー施設も対象とする安全マネジメントを導入し、労働安全衛生マネジメントシステムに沿った改善を進めています。食の安全に取り組むグループ会社としても富士急安達太良観光が明記されています。
一方、富士急安達太良観光単体の2024年度労災件数、休業災害、死亡労災、度数率などの結果は公開されていません。
目標として「労災0件」を掲げることと、実際に0件だったことは別です。
そのため4/10点としました。
商品・サービスの安全――4/5点
安全報告書2024では2023年度の索道運転事故0件、インシデント0件、安全報告書2025では2024年度も索道運転事故0件、インシデント0件でした。
毎月の自社安全会議に加え、富士急グループの索道安全会議へ参加し、他事業者の事故やインシデントも共有しています。
設備面でもロープウェイの受索装置、油圧シリンダー、電源切替盤、受変電設備、ガイドレールなどの整備・更新を実施しています。消防署と合同の救助訓練も行っています。
一方、2021年2月、2020年度の事故として、強風で無人のリフト搬器が支柱へ接触してワイヤーから外れ、落下する事故が発生しました。けが人はいませんでしたが、索道運転事故1件として公式安全報告書にも記録されています。
現在は事故ゼロを継続しているため4/5点としました。
Innovation――10/25点
富士急安達太良観光では、設備の安全改善や観光体験の更新は継続しています。一方、Innovationの中心である「人の重労働や単純作業を技術でどれだけ減らし、その成果を従業員へ返したか」という情報が非常に少ないことが弱点です。
作業負担・危険の削減――2/10点
ロープウェイでは受索装置、油圧シリンダー、電源設備、ガイドレールなどのオーバーホールや更新を行っています。
設備更新によって故障リスクを減らし、係員や救助担当者が危険なトラブル対応を行う機会を減らせる可能性があります。
一方、
設備更新前後で保守作業が何時間減ったのか
重量物作業がどれだけ減ったのか
必要な人員が何人変わったのか
危険作業や労災が何件減ったのか
という定量的な実績は公開されていません。
そのため2/10点です。
商品・サービスの改善――4/5点
2026年4月には、あだたら山ロープウェイ山頂駅に「あ」の図書室を開設しました。
安達太良山の景色と、高村光太郎・智恵子に関連する文学を組み合わせることで、ロープウェイを「山頂まで運ぶ設備」から滞在型の観光体験へ広げています。
夏にはイルミネーション、冬にはスキー、年間を通して温泉を提供するなど、季節による施設の使い分けも行っています。
サービス改善が継続しているため4/5点としました。
改善成果の人間への還元――0/5点
設備更新や観光サービスの拡充によって、社員の残業が減った、休日が増えた、給与が上がったという対象会社単体の公開情報はありません。
技術や設備への投資が利用者だけではなく働く人の生活改善へつながっていることを確認できないため、0/5点です。
研究開発・現場改善の継続――4/5点
索道設備の更新、安全訓練、季節ごとのサービス改善、新しい山頂施設など、複数年にわたる現場改善は確認できます。
2026年にも新しい図書室を開設しており、既存施設をそのまま維持するだけではなく、新しい利用価値を追加しています。
一方、大規模な技術開発や従業員負担削減の成果測定までは確認できないため4/5点です。
Protection――17/25点
安達太良山は活火山です。富士急安達太良観光では、通常の観光施設以上に噴火、強風、雷、積雪などを想定した危機対応が必要です。火山避難計画と索道救助訓練はProtectionの大きな強みですが、サイバー防御や停止後の復旧時間などには情報不足があります。
災害への備え・訓練――5/5点
あだたら高原リゾートは、活火山法に基づく避難促進施設に指定されています。
ロープウェイ山麓駅、山頂駅、富士急レストハウス、レストラン、奥岳の湯などを対象とした避難確保計画が策定されています。
安達太良山で噴火警戒レベル3となった場合には避難準備、レベル4では避難開始とするなど、火山現象に合わせた具体的な対応が定められています。
消防署と合同のロープウェイ救助訓練も実施しています。
計画だけでなく訓練まで確認できるため5/5点です。
生産・物流・調達の代替――2/5点
ロープウェイのほか、冬季には複数のリフト、温泉、飲食施設などを運営しています。
ただし、ロープウェイが長期間使用不能になった場合に、利用者を山頂方面へ運ぶ代替手段は限定的です。
強風時には安全を優先して運行を見合わせ、天候が改善すれば再開する運用が実際に行われています。2026年10月2日にも強風による見合わせ後に運行を再開しています。
安全上、止める判断は重要ですが、代替サービスの情報は弱いため2/5点です。
サイバー防衛・情報保護――2/5点
あだたら高原リゾートの個人情報保護方針では、不正アクセス、ウイルス、情報漏えいなどへの対策を行う方針を掲げています。
一方、富士急安達太良観光単体のサイバー訓練、第三者監査、侵入テスト、事故件数、復旧時間などは公表されていません。
方針は確認できますが、実際の防御力を判断する結果情報がないため2/5点です。
供給継続・復旧能力――4/5点
索道設備では継続的なオーバーホールと電源設備更新を行っています。
強風や雷など、安全基準を満たさない場合は運行を停止し、条件が改善した場合には再開する運用も確認できます。
設備を壊れるまで使うのではなく、予防的に更新することは長期停止を防ぐうえで重要です。
一方、大規模故障時に何時間・何日で復旧するのかというRTOは公表されていないため4/5点としました。
危機時の市民・利用者への対応――4/5点
火山避難計画は従業員だけではなく、施設利用者や施設周辺の登山者・観光客を避難させることを目的としています。
例えば安達太良山の噴火警戒レベルが上がった場合、山頂付近からロープウェイを利用して下山する人や、レストハウス・温泉にいる利用者を早い段階で避難させる仕組みがあります。
山岳観光施設で利用者自身がすべての火山情報を判断することは難しいため、運営会社が避難判断を行う体制には大きな意味があります。
実際の大規模噴火時の対応実績はないため4/5点としました。
良いニュース・最近の前向きな動き
富士急安達太良観光の最近の前向きな点は、索道安全を維持しながら、安達太良山へ行く理由そのものを増やしていることです。こうした施設が利用されれば、山岳観光の売上を設備保全や地域の観光価値向上へ戻す経営を続けやすくなります。
2026年4月 山頂駅に「あ」の図書室を開設(Innovation)
2026年4月11日、あだたら山ロープウェイ山頂駅に「あ」の図書室を開設しました。
高村光太郎の『智恵子抄』などに登場する安達太良山と文学を結びつけ、山頂で景色を見ながら本を読める空間をつくっています。
新しい大型施設を建設するのではなく、既存の山頂駅の価値を広げる取り組みです。
利用者の滞在時間や安達太良山への関心が高まれば、季節に依存しすぎない観光につながります。
2024年度 索道事故・インシデント0件を継続(Safety・Protection)
安全報告書2025では、2024年度の索道運転事故は0件、インシデントも0件でした。
前年度の2023年度も0件・0件だったため、少なくとも直近2年度は事故・インシデントゼロを継続しています。
2021年には搬器落下事故が起きているため、その後の設備整備、安全会議、救助訓練を続けながら事故ゼロを維持していることには意味があります。
悪いニュース・問題となった動き
現在の審査で最も大きな問題は、直近の重大事故ではなく、働く人について判断する情報が非常に少ないことです。また、過去には強風による搬器落下事故も起きており、山岳索道では気象条件への対応を継続して改善する必要があります。
2021年2月 強風でリフト搬器が落下(Safety・Protection)
2021年2月6日、あだたら高原スキー場で強風にあおられたリフト搬器が支柱へ接触し、ワイヤーロープから外れて落下しました。
搬器は無人で、けが人はいませんでした。
公式安全報告書では2020年度の索道運転事故1件として記録されています。
その後は設備整備や訓練を続け、直近2年度では事故0件となっています。
過去の事故を現在のゼロ件で消すのではなく、再発防止策が継続して機能しているかを見る必要があります。
賃金・休日・労災結果の公開情報が不足(Safety)
現在の富士急安達太良観光については、正社員の給与、残業、年間休日、有休、離職率、男女賃金差、労災件数などを継続比較できる公開情報がありません。
約14人規模の小さな事業所だから情報公開義務が大企業と同じではないという事情はあります。
しかし、企業審査では会社規模にかかわらず、そこで働く人がどのような生活を送っているのかが重要です。
情報が公開されていない点は課題であり、採点上も減点対象です。
従業員・元従業員の口コミ
富士急安達太良観光株式会社単体について、企業審査に利用できるだけの勤務経験者口コミは、今回の公開検索では十分な件数を確認できませんでした。
利用者によるスキー場・ロープウェイの口コミは多数ありますが、それを従業員の労働環境の証拠として使用することはできません。
勤務経験者口コミが少ないことを「良い職場だから不満がない」とも、「悪い職場だから情報がない」とも判断しません。
賃金や労働時間については、会社自身の公開情報が必要です。
SNS・匿名掲示板の確認結果
Xなどの一般SNS、5ちゃんねるなどの匿名掲示板についても対象会社名、施設名、労働関連語を分けて確認しました。
施設利用者による投稿はありますが、富士急安達太良観光の従業員であることを確認でき、現在の労働条件を具体的に示す投稿は十分確認できませんでした。
そのためSNS・匿名掲示板を根拠とした加点・減点は行っていません。
総合評価と、これから改善してほしいこと
富士急安達太良観光株式会社は現在39点、シビックランクFです。Eランクは40点からなので、次のランクまであと1点です。
現在の大きな長所は索道安全と災害対応です。一方、低得点の主因は「重大問題が多数発覚したこと」ではなく、働く人の待遇・労働時間・労災について結果を確認できないことです。
賃金と労働時間を公開し、実績を改善してほしい(Safety)
現在、賃金・利益の還元は0/10点、労働時間・休息も0/10点です。
平均給与や残業時間を公開しただけでは加点しません。
例えば、
平均給与・中央値・賃上げ率
平均残業時間
年間休日
有給休暇取得率
繁忙期と閑散期の勤務時間
を継続公開し、十分な賃金と休息が実際に確保されていることが確認できれば、それぞれ次の採点段階へ上げられます。
賃金・利益の還元が0/10点から2/10点へ上がるだけでも、総合41点となりEランクへ上がります。
参考企業として、Google Drive上の最新版企業審査ではプラス株式会社が月平均残業20時間、有給休暇取得率63.1%などを公開し、総合76点・Bと評価されています。
労災件数を結果として公開してほしい(Safety)
富士急安達太良観光は2025年度目標として労災事故0件を掲げています。
しかし、目標ではなく前年の実績を継続的に公開してほしいところです。
死亡災害、休業災害、軽微な労災、転落・衝突・巻き込まれ事故を年次で公開し、実際に低い水準を継続できれば労働安全・健康を4/10点から6/10点以上へ上げられます。
事故が減れば、従業員本人がけがをしないだけでなく、人手の少ない職場で他の社員へ仕事が集中することも防ぎやすくなります。
設備更新によって人の仕事がどれだけ減ったか示してほしい(Innovation)
富士急安達太良観光ではロープウェイ設備のオーバーホールや更新を継続しています。
一方、その結果として、
保守作業時間が何時間減ったのか
緊急対応が何件減ったのか
危険な高所作業や重量物作業がどれだけ減ったのか
残業や休日がどう変わったのか
は公表されていません。
作業負担・危険の削減は現在2/10点です。
具体的な削減成果が確認できれば4/10点以上へ上げられます。
参考企業として、Google Drive上の審査で扱っているキリンビバレッジでは、最大約25kgの原料を扱う重筋作業をロボットへ移し、年間約2,300時間の業務負荷削減を公表しています。
次のランクへ上がるための具体例
現在39点・Fで、Eランクは40点からです。
賃金・利益還元が0/10点から2/10点へ改善すれば、総合41点・Eになります。
労働時間・休息が0/10点から2/10点へ改善した場合も、総合41点・Eです。
労働安全・健康が4/10点から6/10点へ改善しても、総合41点・Eへ上がります。
ただし、目的はランクを1段階上げることではありません。
索道安全については既に直近2年度で事故ゼロという具体的成果を出しています。同じように、働く人についても賃金、休日、残業、労災という結果を数字で示せる会社になることが、評価を大きく高める条件です。
出典一覧
| 情報源 | 主な確認内容 |
|---|---|
| 富士急安達太良観光「安全報告書2024」 | 2023年度事故0件、設備更新、安全会議、消防署合同救助訓練 |
| 富士急安達太良観光「安全報告書2025」 | 2024年度索道事故0件・インシデント0件、2025年度安全重点施策 |
| 内閣府・福島県 安達太良山噴火時等の避難確保計画 | 火山災害時の避難対象施設、警戒レベル別対応 |
| GビズINFO | 法人番号、所在地、社会保険被保険者数14人 |
| 富士急行 有価証券報告書 | 資本金、連結子会社関係、事業区分 |
| 富士急グループ サステナビリティ | 安全、人権、コンプライアンス、食品衛生のグループ体制 |
| あだたら高原リゾート公式サイト | ロープウェイ運行、施設情報、個人情報保護方針 |
| 富士急行・富士急安達太良観光 2026年発表 | 「あ」の図書室開設、施設概要 |
シビックランクの基準
| シビックランク | 総合点 |
|---|---|
| S | 90~100点 |
| A | 80~89点 |
| B | 70~79点 |
| C | 60~69点 |
| D | 50~59点 |
| E | 40~49点 |
| F | 20~39点 |
| G | 0~19点 |
富士急安達太良観光株式会社は39点のため、シビックランクFです。
情報ランクの基準
| 情報ランク | 基準 |
|---|---|
| S | 公的機関、裁判所、規制当局、独立した第三者機関の調査・監査・検証・認証など、内容そのものに独立した裏付けがある情報 |
| A | 企業公式資料、採用情報、公式声明・公式SNS、氏名や立場を確認できる公表発言など、発信主体を確認できる情報 |
| B | 従業員・元従業員口コミ、一般SNS、匿名掲示板など、発信者と対象企業との関係を独立して確認しにくい情報 |
働く人に十分な賃金を払い、休暇を確保し、安全な職場をつくり、人の負担を減らす企業の商品やサービスが選ばれれば、そうした企業により多くの売上が集まります。その結果、働く人を大切にする経営を続けやすくなります。
反対に、低賃金や長時間労働、安全上の問題を改善しない企業の商品やサービスが売れ続ければ、そうした働かせ方のままでも事業を続けることができます。
だからこの企業審査では、「私たちがお金を使うなら、どの企業を選ぶことが、そこで働く人にとってより良い社会につながるのか」という視点から企業を評価します。
今回審査する富士急安達太良観光株式会社は、総合39点、シビックランクFです。
富士急安達太良観光株式会社の特に強い点は、ロープウェイやリフトの安全管理と、火山災害を想定した避難体制です。安全報告書では2023年度、2024年度ともに索道運転事故0件・インシデント0件を記録しています。設備のオーバーホール、救助訓練、安全会議も継続しており、安達太良山の噴火を想定した避難確保計画では、ロープウェイ山麓駅・山頂駅、レストハウス、奥岳の湯などが避難促進施設に指定されています。
そのため、この企業のロープウェイ、スキー場、温泉などを利用すれば、山岳観光で事故や災害が発生したときに利用者を安全に避難させる仕組みや、索道設備の点検・訓練を重視する観光施設に強い社会になる可能性が高まります。
一方で、改善点として働く人への利益還元を判断する情報が大きく不足しています。正社員の平均給与、賃上げ実績、平均残業時間、年間休日、有給休暇取得率、離職率、男女賃金比率、労働災害件数などは、対象会社単体で継続比較できる公開情報がありません。政府のGビズINFOでは社会保険適用事業所の被保険者数14人が確認できますが、その14人がどのような待遇や勤務時間で働いているのかまでは分かりません。こうした重要情報が公開されていない点は課題であり、採点上も大きな減点対象です。
この記事では、富士急安達太良観光株式会社の強みと課題をさらに詳しく企業審査していきます。
富士急安達太良観光株式会社の企業審査結果
富士急安達太良観光は、少人数で山岳観光施設を運営しながら、直近では索道事故ゼロを継続し、火山災害への避難計画も持っています。一方、企業審査で最も重いSafetyのうち、賃金や休息、雇用、労災の結果情報がほとんど公開されていないため、総合点は39点にとどまりました。
| 評価軸 | 得点 | 主な評価 |
|---|---|---|
| Safety | 12/50点 | 索道安全・グループ人権制度は評価。賃金、労働時間、休日、雇用、労災の単体実績が大幅に不足 |
| Innovation | 10/25点 | 設備更新や新しい観光体験を評価。従業員の作業負担削減や時間還元の定量成果は非公表 |
| Protection | 17/25点 | 火山避難計画、救助訓練、設備保全は強い。サイバー・代替運営・復旧時間の情報は弱い |
| 総合 | 39/100点 | シビックランクF |
Eランクは40点からなので、次のランクまであと1点です。
今回のF評価は、現在のあだたら高原リゾートが危険だと認定したものではありません。むしろ索道については直近2年度で事故・インシデント0件です。
点数を押し下げている最大の理由は、そこで働く人の待遇や労働安全について外部から評価できる情報が少ないことです。
事業内容と人間への貢献
富士急安達太良観光株式会社は1972年6月10日設立、福島県二本松市に本社を置く富士急グループ企業です。
資本金は3,000万円で、富士急行の連結子会社です。あだたら高原スキー場、あだたら山ロープウェイ、日帰り温泉「あだたら山 奥岳の湯」などを運営しています。
GビズINFOでは社会保険適用事業所の被保険者数は14人です。大規模な観光会社ではなく、比較的小さな組織で山岳観光施設を運営していることが分かります。
ロープウェイで山への負担を減らす
あだたら山ロープウェイは、山麓から標高約1,350メートルまで約6~10分で利用できます。
登山初心者、子ども、高齢者なども安達太良山の景観へアクセスしやすくなり、徒歩だけでは山を楽しみにくい人にも自然体験の機会を広げています。
山頂まで道路を造って大量の自動車を乗り入れさせるのではなく、索道で多人数をまとめて運べる点にも意味があります。
冬だけでなく一年を通じて地域へ人を呼ぶ
冬季にはスキー場を営業し、春から秋にはロープウェイ、温泉、飲食、イルミネーションなどを展開しています。
2026年4月にはロープウェイ山頂駅に「あ」の図書室を新設しました。高村光太郎・智恵子と安達太良山に関連する文学や自然に触れられる空間を整え、単に景色を見るだけではない滞在価値を増やしています。
観光客が滞在し、温泉や飲食も利用すれば、山岳観光の需要を岳温泉や二本松地域へつなげることができます。
Safety――12/50点
富士急安達太良観光のSafetyでは、利用者向けの安全管理はかなり具体的です。一方、働く人の賃金、休息、労災などの結果KPIがほとんど公開されていません。企業審査では利用者の安全だけでなく、サービスを支える従業員の生活も同じように評価するため、Safetyは12点となりました。
賃金・利益の還元――0/10点
富士急安達太良観光では、営業、観光PR、リーフレット制作、SNS発信、ロープウェイ・売店補助などを担当する求人が出ていたことは確認できます。
一方、対象会社単体の平均給与、給与中央値、ベースアップ、賞与実績、利益の従業員還元率などについて、現在比較できる公開情報がありません。
親会社・富士急行の給与や人的資本データを、そのまま富士急安達太良観光の社員へ当てはめることもできません。
賃金・利益の還元は0/10点です。
給与情報を公開しただけでは自動加点しません。実際の給与水準や継続的な賃上げが確認できれば次の採点段階へ上げます。
労働時間・休息――0/10点
対象会社単体の平均残業時間、年間休日、有給休暇取得率、年間総労働時間、繁忙期の勤務時間などについて、比較できる公開情報がありません。
スキー場、ロープウェイ、温泉は季節や天候によって営業時間や人員需要が大きく変わる事業です。
例えば紅葉期にはロープウェイを通常より早い午前7時30分から運行する日もあり、冬季とグリーンシーズンでも業務内容が変わります。
こうした事業だからこそ、繁忙期の長時間労働や休息確保を確認する数字が重要です。
労働時間・休息は0/10点です。
雇用の安定・待遇の公平性――1/5点
政府の社会保険適用事業所情報では被保険者14人が確認できます。
一方、正社員数、非正規雇用数、離職率、平均勤続年数、正社員登用実績、男女賃金比率などは対象会社単体では公表されていません。
小規模企業では数人の退職や採用だけでも職場への影響が大きくなります。
現在の雇用規模が公的情報で確認できる点のみを最低限評価し、1/5点としました。
福利厚生・育児・介護――1/5点
富士急グループ全体では人的資本経営、育児・介護支援、社員教育などを進めています。
ただし、富士急安達太良観光で具体的にどの制度が利用され、育児休業を何人が取得したのか、介護休業の実績があるのかといった対象会社単体の成果は公表されていません。
親会社に制度があるだけで高得点にはしていません。
福利厚生・育児・介護は1/5点です。
人権・ハラスメント・労使関係――2/5点
富士急グループではグループ共通の企業行動規範、コンプライアンス管理規程、人権方針を整備しています。
人権侵害などを相談できる内部通報窓口「ヘルプQライン」も設置されています。グループ会社共通の規程として運用されていることは確認できます。
一方、富士急安達太良観光でハラスメント相談が何件あり、何件を是正したのかという運用結果は公開されていません。
制度の対象である点を評価し2/5点としました。
労働安全・健康――4/10点
富士急安達太良観光の安全報告書では、2025年度の重点施策として労災事故0件、転落・衝突・巻き込まれといった三大労災への注意、5S活動、安全管理体制強化などを掲げています。
また、富士急グループではレジャー施設も対象とする安全マネジメントを導入し、労働安全衛生マネジメントシステムに沿った改善を進めています。食の安全に取り組むグループ会社としても富士急安達太良観光が明記されています。
一方、富士急安達太良観光単体の2024年度労災件数、休業災害、死亡労災、度数率などの結果は公開されていません。
目標として「労災0件」を掲げることと、実際に0件だったことは別です。
そのため4/10点としました。
商品・サービスの安全――4/5点
安全報告書2024では2023年度の索道運転事故0件、インシデント0件、安全報告書2025では2024年度も索道運転事故0件、インシデント0件でした。
毎月の自社安全会議に加え、富士急グループの索道安全会議へ参加し、他事業者の事故やインシデントも共有しています。
設備面でもロープウェイの受索装置、油圧シリンダー、電源切替盤、受変電設備、ガイドレールなどの整備・更新を実施しています。消防署と合同の救助訓練も行っています。
一方、2021年2月、2020年度の事故として、強風で無人のリフト搬器が支柱へ接触してワイヤーから外れ、落下する事故が発生しました。けが人はいませんでしたが、索道運転事故1件として公式安全報告書にも記録されています。
現在は事故ゼロを継続しているため4/5点としました。
Innovation――10/25点
富士急安達太良観光では、設備の安全改善や観光体験の更新は継続しています。一方、Innovationの中心である「人の重労働や単純作業を技術でどれだけ減らし、その成果を従業員へ返したか」という情報が非常に少ないことが弱点です。
作業負担・危険の削減――2/10点
ロープウェイでは受索装置、油圧シリンダー、電源設備、ガイドレールなどのオーバーホールや更新を行っています。
設備更新によって故障リスクを減らし、係員や救助担当者が危険なトラブル対応を行う機会を減らせる可能性があります。
一方、
設備更新前後で保守作業が何時間減ったのか
重量物作業がどれだけ減ったのか
必要な人員が何人変わったのか
危険作業や労災が何件減ったのか
という定量的な実績は公開されていません。
そのため2/10点です。
商品・サービスの改善――4/5点
2026年4月には、あだたら山ロープウェイ山頂駅に「あ」の図書室を開設しました。
安達太良山の景色と、高村光太郎・智恵子に関連する文学を組み合わせることで、ロープウェイを「山頂まで運ぶ設備」から滞在型の観光体験へ広げています。
夏にはイルミネーション、冬にはスキー、年間を通して温泉を提供するなど、季節による施設の使い分けも行っています。
サービス改善が継続しているため4/5点としました。
改善成果の人間への還元――0/5点
設備更新や観光サービスの拡充によって、社員の残業が減った、休日が増えた、給与が上がったという対象会社単体の公開情報はありません。
技術や設備への投資が利用者だけではなく働く人の生活改善へつながっていることを確認できないため、0/5点です。
研究開発・現場改善の継続――4/5点
索道設備の更新、安全訓練、季節ごとのサービス改善、新しい山頂施設など、複数年にわたる現場改善は確認できます。
2026年にも新しい図書室を開設しており、既存施設をそのまま維持するだけではなく、新しい利用価値を追加しています。
一方、大規模な技術開発や従業員負担削減の成果測定までは確認できないため4/5点です。
Protection――17/25点
安達太良山は活火山です。富士急安達太良観光では、通常の観光施設以上に噴火、強風、雷、積雪などを想定した危機対応が必要です。火山避難計画と索道救助訓練はProtectionの大きな強みですが、サイバー防御や停止後の復旧時間などには情報不足があります。
災害への備え・訓練――5/5点
あだたら高原リゾートは、活火山法に基づく避難促進施設に指定されています。
ロープウェイ山麓駅、山頂駅、富士急レストハウス、レストラン、奥岳の湯などを対象とした避難確保計画が策定されています。
安達太良山で噴火警戒レベル3となった場合には避難準備、レベル4では避難開始とするなど、火山現象に合わせた具体的な対応が定められています。
消防署と合同のロープウェイ救助訓練も実施しています。
計画だけでなく訓練まで確認できるため5/5点です。
生産・物流・調達の代替――2/5点
ロープウェイのほか、冬季には複数のリフト、温泉、飲食施設などを運営しています。
ただし、ロープウェイが長期間使用不能になった場合に、利用者を山頂方面へ運ぶ代替手段は限定的です。
強風時には安全を優先して運行を見合わせ、天候が改善すれば再開する運用が実際に行われています。2026年10月2日にも強風による見合わせ後に運行を再開しています。
安全上、止める判断は重要ですが、代替サービスの情報は弱いため2/5点です。
サイバー防衛・情報保護――2/5点
あだたら高原リゾートの個人情報保護方針では、不正アクセス、ウイルス、情報漏えいなどへの対策を行う方針を掲げています。
一方、富士急安達太良観光単体のサイバー訓練、第三者監査、侵入テスト、事故件数、復旧時間などは公表されていません。
方針は確認できますが、実際の防御力を判断する結果情報がないため2/5点です。
供給継続・復旧能力――4/5点
索道設備では継続的なオーバーホールと電源設備更新を行っています。
強風や雷など、安全基準を満たさない場合は運行を停止し、条件が改善した場合には再開する運用も確認できます。
設備を壊れるまで使うのではなく、予防的に更新することは長期停止を防ぐうえで重要です。
一方、大規模故障時に何時間・何日で復旧するのかというRTOは公表されていないため4/5点としました。
危機時の市民・利用者への対応――4/5点
火山避難計画は従業員だけではなく、施設利用者や施設周辺の登山者・観光客を避難させることを目的としています。
例えば安達太良山の噴火警戒レベルが上がった場合、山頂付近からロープウェイを利用して下山する人や、レストハウス・温泉にいる利用者を早い段階で避難させる仕組みがあります。
山岳観光施設で利用者自身がすべての火山情報を判断することは難しいため、運営会社が避難判断を行う体制には大きな意味があります。
実際の大規模噴火時の対応実績はないため4/5点としました。
良いニュース・最近の前向きな動き
富士急安達太良観光の最近の前向きな点は、索道安全を維持しながら、安達太良山へ行く理由そのものを増やしていることです。こうした施設が利用されれば、山岳観光の売上を設備保全や地域の観光価値向上へ戻す経営を続けやすくなります。
2026年4月 山頂駅に「あ」の図書室を開設(Innovation)
2026年4月11日、あだたら山ロープウェイ山頂駅に「あ」の図書室を開設しました。
高村光太郎の『智恵子抄』などに登場する安達太良山と文学を結びつけ、山頂で景色を見ながら本を読める空間をつくっています。
新しい大型施設を建設するのではなく、既存の山頂駅の価値を広げる取り組みです。
利用者の滞在時間や安達太良山への関心が高まれば、季節に依存しすぎない観光につながります。
2024年度 索道事故・インシデント0件を継続(Safety・Protection)
安全報告書2025では、2024年度の索道運転事故は0件、インシデントも0件でした。
前年度の2023年度も0件・0件だったため、少なくとも直近2年度は事故・インシデントゼロを継続しています。
2021年には搬器落下事故が起きているため、その後の設備整備、安全会議、救助訓練を続けながら事故ゼロを維持していることには意味があります。
悪いニュース・問題となった動き
現在の審査で最も大きな問題は、直近の重大事故ではなく、働く人について判断する情報が非常に少ないことです。また、過去には強風による搬器落下事故も起きており、山岳索道では気象条件への対応を継続して改善する必要があります。
2021年2月 強風でリフト搬器が落下(Safety・Protection)
2021年2月6日、あだたら高原スキー場で強風にあおられたリフト搬器が支柱へ接触し、ワイヤーロープから外れて落下しました。
搬器は無人で、けが人はいませんでした。
公式安全報告書では2020年度の索道運転事故1件として記録されています。
その後は設備整備や訓練を続け、直近2年度では事故0件となっています。
過去の事故を現在のゼロ件で消すのではなく、再発防止策が継続して機能しているかを見る必要があります。
賃金・休日・労災結果の公開情報が不足(Safety)
現在の富士急安達太良観光については、正社員の給与、残業、年間休日、有休、離職率、男女賃金差、労災件数などを継続比較できる公開情報がありません。
約14人規模の小さな事業所だから情報公開義務が大企業と同じではないという事情はあります。
しかし、企業審査では会社規模にかかわらず、そこで働く人がどのような生活を送っているのかが重要です。
情報が公開されていない点は課題であり、採点上も減点対象です。
従業員・元従業員の口コミ
富士急安達太良観光株式会社単体について、企業審査に利用できるだけの勤務経験者口コミは、今回の公開検索では十分な件数を確認できませんでした。
利用者によるスキー場・ロープウェイの口コミは多数ありますが、それを従業員の労働環境の証拠として使用することはできません。
勤務経験者口コミが少ないことを「良い職場だから不満がない」とも、「悪い職場だから情報がない」とも判断しません。
賃金や労働時間については、会社自身の公開情報が必要です。
SNS・匿名掲示板の確認結果
Xなどの一般SNS、5ちゃんねるなどの匿名掲示板についても対象会社名、施設名、労働関連語を分けて確認しました。
施設利用者による投稿はありますが、富士急安達太良観光の従業員であることを確認でき、現在の労働条件を具体的に示す投稿は十分確認できませんでした。
そのためSNS・匿名掲示板を根拠とした加点・減点は行っていません。
総合評価と、これから改善してほしいこと
富士急安達太良観光株式会社は現在39点、シビックランクFです。Eランクは40点からなので、次のランクまであと1点です。
現在の大きな長所は索道安全と災害対応です。一方、低得点の主因は「重大問題が多数発覚したこと」ではなく、働く人の待遇・労働時間・労災について結果を確認できないことです。
賃金と労働時間を公開し、実績を改善してほしい(Safety)
現在、賃金・利益の還元は0/10点、労働時間・休息も0/10点です。
平均給与や残業時間を公開しただけでは加点しません。
例えば、
平均給与・中央値・賃上げ率
平均残業時間
年間休日
有給休暇取得率
繁忙期と閑散期の勤務時間
を継続公開し、十分な賃金と休息が実際に確保されていることが確認できれば、それぞれ次の採点段階へ上げられます。
賃金・利益の還元が0/10点から2/10点へ上がるだけでも、総合41点となりEランクへ上がります。
参考企業として、Google Drive上の最新版企業審査ではプラス株式会社が月平均残業20時間、有給休暇取得率63.1%などを公開し、総合76点・Bと評価されています。
労災件数を結果として公開してほしい(Safety)
富士急安達太良観光は2025年度目標として労災事故0件を掲げています。
しかし、目標ではなく前年の実績を継続的に公開してほしいところです。
死亡災害、休業災害、軽微な労災、転落・衝突・巻き込まれ事故を年次で公開し、実際に低い水準を継続できれば労働安全・健康を4/10点から6/10点以上へ上げられます。
事故が減れば、従業員本人がけがをしないだけでなく、人手の少ない職場で他の社員へ仕事が集中することも防ぎやすくなります。
設備更新によって人の仕事がどれだけ減ったか示してほしい(Innovation)
富士急安達太良観光ではロープウェイ設備のオーバーホールや更新を継続しています。
一方、その結果として、
保守作業時間が何時間減ったのか
緊急対応が何件減ったのか
危険な高所作業や重量物作業がどれだけ減ったのか
残業や休日がどう変わったのか
は公表されていません。
作業負担・危険の削減は現在2/10点です。
具体的な削減成果が確認できれば4/10点以上へ上げられます。
参考企業として、Google Drive上の審査で扱っているキリンビバレッジでは、最大約25kgの原料を扱う重筋作業をロボットへ移し、年間約2,300時間の業務負荷削減を公表しています。
次のランクへ上がるための具体例
現在39点・Fで、Eランクは40点からです。
賃金・利益還元が0/10点から2/10点へ改善すれば、総合41点・Eになります。
労働時間・休息が0/10点から2/10点へ改善した場合も、総合41点・Eです。
労働安全・健康が4/10点から6/10点へ改善しても、総合41点・Eへ上がります。
ただし、目的はランクを1段階上げることではありません。
索道安全については既に直近2年度で事故ゼロという具体的成果を出しています。同じように、働く人についても賃金、休日、残業、労災という結果を数字で示せる会社になることが、評価を大きく高める条件です。
出典一覧
| 情報源 | 主な確認内容 |
|---|---|
| 富士急安達太良観光「安全報告書2024」 | 2023年度事故0件、設備更新、安全会議、消防署合同救助訓練 |
| 富士急安達太良観光「安全報告書2025」 | 2024年度索道事故0件・インシデント0件、2025年度安全重点施策 |
| 内閣府・福島県 安達太良山噴火時等の避難確保計画 | 火山災害時の避難対象施設、警戒レベル別対応 |
| GビズINFO | 法人番号、所在地、社会保険被保険者数14人 |
| 富士急行 有価証券報告書 | 資本金、連結子会社関係、事業区分 |
| 富士急グループ サステナビリティ | 安全、人権、コンプライアンス、食品衛生のグループ体制 |
| あだたら高原リゾート公式サイト | ロープウェイ運行、施設情報、個人情報保護方針 |
| 富士急行・富士急安達太良観光 2026年発表 | 「あ」の図書室開設、施設概要 |
シビックランクの基準
| シビックランク | 総合点 |
|---|---|
| S | 90~100点 |
| A | 80~89点 |
| B | 70~79点 |
| C | 60~69点 |
| D | 50~59点 |
| E | 40~49点 |
| F | 20~39点 |
| G | 0~19点 |
富士急安達太良観光株式会社は39点のため、シビックランクFです。
情報ランクの基準
| 情報ランク | 基準 |
|---|---|
| S | 公的機関、裁判所、規制当局、独立した第三者機関の調査・監査・検証・認証など、内容そのものに独立した裏付けがある情報 |
| A | 企業公式資料、採用情報、公式声明・公式SNS、氏名や立場を確認できる公表発言など、発信主体を確認できる情報 |
| B | 従業員・元従業員口コミ、一般SNS、匿名掲示板など、発信者と対象企業との関係を独立して確認しにくい情報 |
私たちは、企業の商品を購入したり、サービスを利用したりすることで、そこで働く人たちの未来を変えることができます。
働く人に十分な賃金を払い、休暇を確保し、安全な職場をつくり、人の負担を減らす企業の商品やサービスが選ばれれば、そうした企業により多くの売上が集まります。その結果、働く人を大切にする経営を続けやすくなります。
反対に、低賃金や長時間労働、安全上の問題を改善しない企業の商品やサービスが売れ続ければ、そうした働かせ方のままでも事業を続けることができます。
だからこの企業審査では、「私たちがお金を使うなら、どの企業を選ぶことが、そこで働く人にとってより良い社会につながるのか」という視点から企業を評価します。
今回審査する富士急安達太良観光株式会社は、総合39点、シビックランクFです。
富士急安達太良観光株式会社の特に強い点は、ロープウェイやリフトの安全管理と、火山災害を想定した避難体制です。安全報告書では2023年度、2024年度ともに索道運転事故0件・インシデント0件を記録しています。設備のオーバーホール、救助訓練、安全会議も継続しており、安達太良山の噴火を想定した避難確保計画では、ロープウェイ山麓駅・山頂駅、レストハウス、奥岳の湯などが避難促進施設に指定されています。
そのため、この企業のロープウェイ、スキー場、温泉などを利用すれば、山岳観光で事故や災害が発生したときに利用者を安全に避難させる仕組みや、索道設備の点検・訓練を重視する観光施設に強い社会になる可能性が高まります。
一方で、改善点として働く人への利益還元を判断する情報が大きく不足しています。正社員の平均給与、賃上げ実績、平均残業時間、年間休日、有給休暇取得率、離職率、男女賃金比率、労働災害件数などは、対象会社単体で継続比較できる公開情報がありません。政府のGビズINFOでは社会保険適用事業所の被保険者数14人が確認できますが、その14人がどのような待遇や勤務時間で働いているのかまでは分かりません。こうした重要情報が公開されていない点は課題であり、採点上も大きな減点対象です。
この記事では、富士急安達太良観光株式会社の強みと課題をさらに詳しく企業審査していきます。
富士急安達太良観光株式会社の企業審査結果
富士急安達太良観光は、少人数で山岳観光施設を運営しながら、直近では索道事故ゼロを継続し、火山災害への避難計画も持っています。一方、企業審査で最も重いSafetyのうち、賃金や休息、雇用、労災の結果情報がほとんど公開されていないため、総合点は39点にとどまりました。
| 評価軸 | 得点 | 主な評価 |
|---|---|---|
| Safety | 12/50点 | 索道安全・グループ人権制度は評価。賃金、労働時間、休日、雇用、労災の単体実績が大幅に不足 |
| Innovation | 10/25点 | 設備更新や新しい観光体験を評価。従業員の作業負担削減や時間還元の定量成果は非公表 |
| Protection | 17/25点 | 火山避難計画、救助訓練、設備保全は強い。サイバー・代替運営・復旧時間の情報は弱い |
| 総合 | 39/100点 | シビックランクF |
Eランクは40点からなので、次のランクまであと1点です。
今回のF評価は、現在のあだたら高原リゾートが危険だと認定したものではありません。むしろ索道については直近2年度で事故・インシデント0件です。
点数を押し下げている最大の理由は、そこで働く人の待遇や労働安全について外部から評価できる情報が少ないことです。
事業内容と人間への貢献
富士急安達太良観光株式会社は1972年6月10日設立、福島県二本松市に本社を置く富士急グループ企業です。
資本金は3,000万円で、富士急行の連結子会社です。あだたら高原スキー場、あだたら山ロープウェイ、日帰り温泉「あだたら山 奥岳の湯」などを運営しています。
GビズINFOでは社会保険適用事業所の被保険者数は14人です。大規模な観光会社ではなく、比較的小さな組織で山岳観光施設を運営していることが分かります。
ロープウェイで山への負担を減らす
あだたら山ロープウェイは、山麓から標高約1,350メートルまで約6~10分で利用できます。
登山初心者、子ども、高齢者なども安達太良山の景観へアクセスしやすくなり、徒歩だけでは山を楽しみにくい人にも自然体験の機会を広げています。
山頂まで道路を造って大量の自動車を乗り入れさせるのではなく、索道で多人数をまとめて運べる点にも意味があります。
冬だけでなく一年を通じて地域へ人を呼ぶ
冬季にはスキー場を営業し、春から秋にはロープウェイ、温泉、飲食、イルミネーションなどを展開しています。
2026年4月にはロープウェイ山頂駅に「あ」の図書室を新設しました。高村光太郎・智恵子と安達太良山に関連する文学や自然に触れられる空間を整え、単に景色を見るだけではない滞在価値を増やしています。
観光客が滞在し、温泉や飲食も利用すれば、山岳観光の需要を岳温泉や二本松地域へつなげることができます。
Safety――12/50点
富士急安達太良観光のSafetyでは、利用者向けの安全管理はかなり具体的です。一方、働く人の賃金、休息、労災などの結果KPIがほとんど公開されていません。企業審査では利用者の安全だけでなく、サービスを支える従業員の生活も同じように評価するため、Safetyは12点となりました。
賃金・利益の還元――0/10点
富士急安達太良観光では、営業、観光PR、リーフレット制作、SNS発信、ロープウェイ・売店補助などを担当する求人が出ていたことは確認できます。
一方、対象会社単体の平均給与、給与中央値、ベースアップ、賞与実績、利益の従業員還元率などについて、現在比較できる公開情報がありません。
親会社・富士急行の給与や人的資本データを、そのまま富士急安達太良観光の社員へ当てはめることもできません。
賃金・利益の還元は0/10点です。
給与情報を公開しただけでは自動加点しません。実際の給与水準や継続的な賃上げが確認できれば次の採点段階へ上げます。
労働時間・休息――0/10点
対象会社単体の平均残業時間、年間休日、有給休暇取得率、年間総労働時間、繁忙期の勤務時間などについて、比較できる公開情報がありません。
スキー場、ロープウェイ、温泉は季節や天候によって営業時間や人員需要が大きく変わる事業です。
例えば紅葉期にはロープウェイを通常より早い午前7時30分から運行する日もあり、冬季とグリーンシーズンでも業務内容が変わります。
こうした事業だからこそ、繁忙期の長時間労働や休息確保を確認する数字が重要です。
労働時間・休息は0/10点です。
雇用の安定・待遇の公平性――1/5点
政府の社会保険適用事業所情報では被保険者14人が確認できます。
一方、正社員数、非正規雇用数、離職率、平均勤続年数、正社員登用実績、男女賃金比率などは対象会社単体では公表されていません。
小規模企業では数人の退職や採用だけでも職場への影響が大きくなります。
現在の雇用規模が公的情報で確認できる点のみを最低限評価し、1/5点としました。
福利厚生・育児・介護――1/5点
富士急グループ全体では人的資本経営、育児・介護支援、社員教育などを進めています。
ただし、富士急安達太良観光で具体的にどの制度が利用され、育児休業を何人が取得したのか、介護休業の実績があるのかといった対象会社単体の成果は公表されていません。
親会社に制度があるだけで高得点にはしていません。
福利厚生・育児・介護は1/5点です。
人権・ハラスメント・労使関係――2/5点
富士急グループではグループ共通の企業行動規範、コンプライアンス管理規程、人権方針を整備しています。
人権侵害などを相談できる内部通報窓口「ヘルプQライン」も設置されています。グループ会社共通の規程として運用されていることは確認できます。
一方、富士急安達太良観光でハラスメント相談が何件あり、何件を是正したのかという運用結果は公開されていません。
制度の対象である点を評価し2/5点としました。
労働安全・健康――4/10点
富士急安達太良観光の安全報告書では、2025年度の重点施策として労災事故0件、転落・衝突・巻き込まれといった三大労災への注意、5S活動、安全管理体制強化などを掲げています。
また、富士急グループではレジャー施設も対象とする安全マネジメントを導入し、労働安全衛生マネジメントシステムに沿った改善を進めています。食の安全に取り組むグループ会社としても富士急安達太良観光が明記されています。
一方、富士急安達太良観光単体の2024年度労災件数、休業災害、死亡労災、度数率などの結果は公開されていません。
目標として「労災0件」を掲げることと、実際に0件だったことは別です。
そのため4/10点としました。
商品・サービスの安全――4/5点
安全報告書2024では2023年度の索道運転事故0件、インシデント0件、安全報告書2025では2024年度も索道運転事故0件、インシデント0件でした。
毎月の自社安全会議に加え、富士急グループの索道安全会議へ参加し、他事業者の事故やインシデントも共有しています。
設備面でもロープウェイの受索装置、油圧シリンダー、電源切替盤、受変電設備、ガイドレールなどの整備・更新を実施しています。消防署と合同の救助訓練も行っています。
一方、2021年2月、2020年度の事故として、強風で無人のリフト搬器が支柱へ接触してワイヤーから外れ、落下する事故が発生しました。けが人はいませんでしたが、索道運転事故1件として公式安全報告書にも記録されています。
現在は事故ゼロを継続しているため4/5点としました。
Innovation――10/25点
富士急安達太良観光では、設備の安全改善や観光体験の更新は継続しています。一方、Innovationの中心である「人の重労働や単純作業を技術でどれだけ減らし、その成果を従業員へ返したか」という情報が非常に少ないことが弱点です。
作業負担・危険の削減――2/10点
ロープウェイでは受索装置、油圧シリンダー、電源設備、ガイドレールなどのオーバーホールや更新を行っています。
設備更新によって故障リスクを減らし、係員や救助担当者が危険なトラブル対応を行う機会を減らせる可能性があります。
一方、
設備更新前後で保守作業が何時間減ったのか
重量物作業がどれだけ減ったのか
必要な人員が何人変わったのか
危険作業や労災が何件減ったのか
という定量的な実績は公開されていません。
そのため2/10点です。
商品・サービスの改善――4/5点
2026年4月には、あだたら山ロープウェイ山頂駅に「あ」の図書室を開設しました。
安達太良山の景色と、高村光太郎・智恵子に関連する文学を組み合わせることで、ロープウェイを「山頂まで運ぶ設備」から滞在型の観光体験へ広げています。
夏にはイルミネーション、冬にはスキー、年間を通して温泉を提供するなど、季節による施設の使い分けも行っています。
サービス改善が継続しているため4/5点としました。
改善成果の人間への還元――0/5点
設備更新や観光サービスの拡充によって、社員の残業が減った、休日が増えた、給与が上がったという対象会社単体の公開情報はありません。
技術や設備への投資が利用者だけではなく働く人の生活改善へつながっていることを確認できないため、0/5点です。
研究開発・現場改善の継続――4/5点
索道設備の更新、安全訓練、季節ごとのサービス改善、新しい山頂施設など、複数年にわたる現場改善は確認できます。
2026年にも新しい図書室を開設しており、既存施設をそのまま維持するだけではなく、新しい利用価値を追加しています。
一方、大規模な技術開発や従業員負担削減の成果測定までは確認できないため4/5点です。
Protection――17/25点
安達太良山は活火山です。富士急安達太良観光では、通常の観光施設以上に噴火、強風、雷、積雪などを想定した危機対応が必要です。火山避難計画と索道救助訓練はProtectionの大きな強みですが、サイバー防御や停止後の復旧時間などには情報不足があります。
災害への備え・訓練――5/5点
あだたら高原リゾートは、活火山法に基づく避難促進施設に指定されています。
ロープウェイ山麓駅、山頂駅、富士急レストハウス、レストラン、奥岳の湯などを対象とした避難確保計画が策定されています。
安達太良山で噴火警戒レベル3となった場合には避難準備、レベル4では避難開始とするなど、火山現象に合わせた具体的な対応が定められています。
消防署と合同のロープウェイ救助訓練も実施しています。
計画だけでなく訓練まで確認できるため5/5点です。
生産・物流・調達の代替――2/5点
ロープウェイのほか、冬季には複数のリフト、温泉、飲食施設などを運営しています。
ただし、ロープウェイが長期間使用不能になった場合に、利用者を山頂方面へ運ぶ代替手段は限定的です。
強風時には安全を優先して運行を見合わせ、天候が改善すれば再開する運用が実際に行われています。2026年10月2日にも強風による見合わせ後に運行を再開しています。
安全上、止める判断は重要ですが、代替サービスの情報は弱いため2/5点です。
サイバー防衛・情報保護――2/5点
あだたら高原リゾートの個人情報保護方針では、不正アクセス、ウイルス、情報漏えいなどへの対策を行う方針を掲げています。
一方、富士急安達太良観光単体のサイバー訓練、第三者監査、侵入テスト、事故件数、復旧時間などは公表されていません。
方針は確認できますが、実際の防御力を判断する結果情報がないため2/5点です。
供給継続・復旧能力――4/5点
索道設備では継続的なオーバーホールと電源設備更新を行っています。
強風や雷など、安全基準を満たさない場合は運行を停止し、条件が改善した場合には再開する運用も確認できます。
設備を壊れるまで使うのではなく、予防的に更新することは長期停止を防ぐうえで重要です。
一方、大規模故障時に何時間・何日で復旧するのかというRTOは公表されていないため4/5点としました。
危機時の市民・利用者への対応――4/5点
火山避難計画は従業員だけではなく、施設利用者や施設周辺の登山者・観光客を避難させることを目的としています。
例えば安達太良山の噴火警戒レベルが上がった場合、山頂付近からロープウェイを利用して下山する人や、レストハウス・温泉にいる利用者を早い段階で避難させる仕組みがあります。
山岳観光施設で利用者自身がすべての火山情報を判断することは難しいため、運営会社が避難判断を行う体制には大きな意味があります。
実際の大規模噴火時の対応実績はないため4/5点としました。
良いニュース・最近の前向きな動き
富士急安達太良観光の最近の前向きな点は、索道安全を維持しながら、安達太良山へ行く理由そのものを増やしていることです。こうした施設が利用されれば、山岳観光の売上を設備保全や地域の観光価値向上へ戻す経営を続けやすくなります。
2026年4月 山頂駅に「あ」の図書室を開設(Innovation)
2026年4月11日、あだたら山ロープウェイ山頂駅に「あ」の図書室を開設しました。
高村光太郎の『智恵子抄』などに登場する安達太良山と文学を結びつけ、山頂で景色を見ながら本を読める空間をつくっています。
新しい大型施設を建設するのではなく、既存の山頂駅の価値を広げる取り組みです。
利用者の滞在時間や安達太良山への関心が高まれば、季節に依存しすぎない観光につながります。
2024年度 索道事故・インシデント0件を継続(Safety・Protection)
安全報告書2025では、2024年度の索道運転事故は0件、インシデントも0件でした。
前年度の2023年度も0件・0件だったため、少なくとも直近2年度は事故・インシデントゼロを継続しています。
2021年には搬器落下事故が起きているため、その後の設備整備、安全会議、救助訓練を続けながら事故ゼロを維持していることには意味があります。
悪いニュース・問題となった動き
現在の審査で最も大きな問題は、直近の重大事故ではなく、働く人について判断する情報が非常に少ないことです。また、過去には強風による搬器落下事故も起きており、山岳索道では気象条件への対応を継続して改善する必要があります。
2021年2月 強風でリフト搬器が落下(Safety・Protection)
2021年2月6日、あだたら高原スキー場で強風にあおられたリフト搬器が支柱へ接触し、ワイヤーロープから外れて落下しました。
搬器は無人で、けが人はいませんでした。
公式安全報告書では2020年度の索道運転事故1件として記録されています。
その後は設備整備や訓練を続け、直近2年度では事故0件となっています。
過去の事故を現在のゼロ件で消すのではなく、再発防止策が継続して機能しているかを見る必要があります。
賃金・休日・労災結果の公開情報が不足(Safety)
現在の富士急安達太良観光については、正社員の給与、残業、年間休日、有休、離職率、男女賃金差、労災件数などを継続比較できる公開情報がありません。
約14人規模の小さな事業所だから情報公開義務が大企業と同じではないという事情はあります。
しかし、企業審査では会社規模にかかわらず、そこで働く人がどのような生活を送っているのかが重要です。
情報が公開されていない点は課題であり、採点上も減点対象です。
従業員・元従業員の口コミ
富士急安達太良観光株式会社単体について、企業審査に利用できるだけの勤務経験者口コミは、今回の公開検索では十分な件数を確認できませんでした。
利用者によるスキー場・ロープウェイの口コミは多数ありますが、それを従業員の労働環境の証拠として使用することはできません。
勤務経験者口コミが少ないことを「良い職場だから不満がない」とも、「悪い職場だから情報がない」とも判断しません。
賃金や労働時間については、会社自身の公開情報が必要です。
SNS・匿名掲示板の確認結果
Xなどの一般SNS、5ちゃんねるなどの匿名掲示板についても対象会社名、施設名、労働関連語を分けて確認しました。
施設利用者による投稿はありますが、富士急安達太良観光の従業員であることを確認でき、現在の労働条件を具体的に示す投稿は十分確認できませんでした。
そのためSNS・匿名掲示板を根拠とした加点・減点は行っていません。
総合評価と、これから改善してほしいこと
富士急安達太良観光株式会社は現在39点、シビックランクFです。Eランクは40点からなので、次のランクまであと1点です。
現在の大きな長所は索道安全と災害対応です。一方、低得点の主因は「重大問題が多数発覚したこと」ではなく、働く人の待遇・労働時間・労災について結果を確認できないことです。
賃金と労働時間を公開し、実績を改善してほしい(Safety)
現在、賃金・利益の還元は0/10点、労働時間・休息も0/10点です。
平均給与や残業時間を公開しただけでは加点しません。
例えば、
平均給与・中央値・賃上げ率
平均残業時間
年間休日
有給休暇取得率
繁忙期と閑散期の勤務時間
を継続公開し、十分な賃金と休息が実際に確保されていることが確認できれば、それぞれ次の採点段階へ上げられます。
賃金・利益の還元が0/10点から2/10点へ上がるだけでも、総合41点となりEランクへ上がります。
参考企業として、Google Drive上の最新版企業審査ではプラス株式会社が月平均残業20時間、有給休暇取得率63.1%などを公開し、総合76点・Bと評価されています。
労災件数を結果として公開してほしい(Safety)
富士急安達太良観光は2025年度目標として労災事故0件を掲げています。
しかし、目標ではなく前年の実績を継続的に公開してほしいところです。
死亡災害、休業災害、軽微な労災、転落・衝突・巻き込まれ事故を年次で公開し、実際に低い水準を継続できれば労働安全・健康を4/10点から6/10点以上へ上げられます。
事故が減れば、従業員本人がけがをしないだけでなく、人手の少ない職場で他の社員へ仕事が集中することも防ぎやすくなります。
設備更新によって人の仕事がどれだけ減ったか示してほしい(Innovation)
富士急安達太良観光ではロープウェイ設備のオーバーホールや更新を継続しています。
一方、その結果として、
保守作業時間が何時間減ったのか
緊急対応が何件減ったのか
危険な高所作業や重量物作業がどれだけ減ったのか
残業や休日がどう変わったのか
は公表されていません。
作業負担・危険の削減は現在2/10点です。
具体的な削減成果が確認できれば4/10点以上へ上げられます。
参考企業として、Google Drive上の審査で扱っているキリンビバレッジでは、最大約25kgの原料を扱う重筋作業をロボットへ移し、年間約2,300時間の業務負荷削減を公表しています。
次のランクへ上がるための具体例
現在39点・Fで、Eランクは40点からです。
賃金・利益還元が0/10点から2/10点へ改善すれば、総合41点・Eになります。
労働時間・休息が0/10点から2/10点へ改善した場合も、総合41点・Eです。
労働安全・健康が4/10点から6/10点へ改善しても、総合41点・Eへ上がります。
ただし、目的はランクを1段階上げることではありません。
索道安全については既に直近2年度で事故ゼロという具体的成果を出しています。同じように、働く人についても賃金、休日、残業、労災という結果を数字で示せる会社になることが、評価を大きく高める条件です。
出典一覧
| 情報源 | 主な確認内容 |
|---|---|
| 富士急安達太良観光「安全報告書2024」 | 2023年度事故0件、設備更新、安全会議、消防署合同救助訓練 |
| 富士急安達太良観光「安全報告書2025」 | 2024年度索道事故0件・インシデント0件、2025年度安全重点施策 |
| 内閣府・福島県 安達太良山噴火時等の避難確保計画 | 火山災害時の避難対象施設、警戒レベル別対応 |
| GビズINFO | 法人番号、所在地、社会保険被保険者数14人 |
| 富士急行 有価証券報告書 | 資本金、連結子会社関係、事業区分 |
| 富士急グループ サステナビリティ | 安全、人権、コンプライアンス、食品衛生のグループ体制 |
| あだたら高原リゾート公式サイト | ロープウェイ運行、施設情報、個人情報保護方針 |
| 富士急行・富士急安達太良観光 2026年発表 | 「あ」の図書室開設、施設概要 |
シビックランクの基準
| シビックランク | 総合点 |
|---|---|
| S | 90~100点 |
| A | 80~89点 |
| B | 70~79点 |
| C | 60~69点 |
| D | 50~59点 |
| E | 40~49点 |
| F | 20~39点 |
| G | 0~19点 |
富士急安達太良観光株式会社は39点のため、シビックランクFです。
情報ランクの基準
| 情報ランク | 基準 |
|---|---|
| S | 公的機関、裁判所、規制当局、独立した第三者機関の調査・監査・検証・認証など、内容そのものに独立した裏付けがある情報 |
| A | 企業公式資料、採用情報、公式声明・公式SNS、氏名や立場を確認できる公表発言など、発信主体を確認できる情報 |
| B | 従業員・元従業員口コミ、一般SNS、匿名掲示板など、発信者と対象企業との関係を独立して確認しにくい情報 |
