私たちは、企業の商品を購入したり、サービスを利用したりすることで、そこで働く人たちの未来を変えることができます。
働く人に十分な賃金を払い、休暇を確保し、安全な職場をつくり、人の負担を減らす企業の商品やサービスが選ばれれば、そうした企業により多くの売上が集まります。その結果、働く人を大切にする経営を続けやすくなります。
反対に、低賃金や長時間労働、安全上の問題を改善しない企業の商品やサービスが売れ続ければ、そうした働かせ方のままでも事業を続けることができます。
だからこの企業審査では、「私たちがお金を使うなら、どの企業を選ぶことが、そこで働く人にとってより良い社会につながるのか」という視点から企業を評価します。
今回審査する株式会社あづみ野ビバレッジは、2018年に法人が消滅しているため、2018年までに確認できる公開情報だけを使った参考評価で総合18点、シビックランクGです。
株式会社あづみ野ビバレッジの特に強い点は、ミネラルウォーターの食品安全管理です。2009年に長野県北安曇郡松川村でミネラルウォーター工場を稼働し、2010年にはISO14001、2012年には厚生労働省の総合衛生管理製造過程、いわゆるHACCPの承認を受けています。
そのため、当時この企業が製造するミネラルウォーターを購入することは、衛生管理基準を設けて飲料を製造する企業を支えることにつながっていました。
一方で、改善点として働く人と危機対応に関する情報の不足が残ります。社員の給与、残業時間、休日、有給取得率、離職率、労働災害、福利厚生、災害対応、サイバー対策などについて、旧法人単体で評価できる公開情報をほとんど確認できません。
さらに重要なのは、株式会社あづみ野ビバレッジ自体が現在は存在しないことです。2018年2月に東京アート株式会社へ吸収合併され、松川工場として事業が継続しました。その後、2023年6月30日付で東京アートのミネラルウォーター事業は株式会社ハルナウォーターへ譲渡されています。
この記事では、株式会社あづみ野ビバレッジが存在していた当時の強みと課題をさらに詳しく企業審査していきます。
株式会社あづみ野ビバレッジの企業審査結果
今回の18点・Gは、現在の株式会社ハルナウォーターや東京アート株式会社を評価した点数ではありません。
あくまで、2018年まで存在した旧・株式会社あづみ野ビバレッジについて、現在確認できる過去の公開資料だけで採点した参考値です。
| 評価軸 | 得点 | 満点 |
|---|---|---|
| Safety | 8 | 50 |
| Innovation | 8 | 25 |
| Protection | 2 | 25 |
| 総合 | 18 | 100 |
| 参考シビックランク | G | — |
低得点の最大の理由は、不祥事や重大事故が大量に確認されたためではありません。
2018年に消滅した旧法人であるため、現在の企業審査で必要となる労働・安全・危機対応の結果指標をほとんど確認できないためです。
株式会社あづみ野ビバレッジとは
東京アート株式会社の沿革によると、株式会社あづみ野ビバレッジは2009年に設立され、同年4月に長野県北安曇郡松川村でミネラルウォーター新工場を稼働しました。
法人番号は6100001017647、本店所在地は長野県北安曇郡松川村7064番地200です。
gBizINFOでは現在「閉鎖」と表示され、合併による解散として2018年2月6日に登記記録が閉鎖されています。
ミネラルウォーターを製造
同社は北アルプス周辺の水を利用し、ナチュラルミネラルウォーターを製造していました。
2017年にはセブンプレミアムの天然水など、流通企業向けのミネラルウォーター製造も確認できます。
ミネラルウォーターは日常の飲料に加え、災害備蓄、外出時の水分補給など生活に直接必要な商品です。
Safety:8/50点
Safetyでは、飲料そのものが安全に製造されていたかに加えて、その製造を支える人の賃金、休息、雇用、安全、人権などを確認します。
あづみ野ビバレッジでは食品衛生管理について公的な確認資料があります。一方、働く人については旧法人単体の情報が極端に少なく、大部分を評価できませんでした。
賃金・利益の還元:0/10点
旧・株式会社あづみ野ビバレッジについて、
・平均給与
・基本給
・賞与
・賃上げ率
・利益
・社員への利益還元
を確認できる公開情報は見つかりませんでした。
給与が低かったと判断しているわけではありません。
十分な給与を支払っていたと確認する情報もないため0/10点です。
労働時間・休息:0/10点
旧法人時代の平均残業時間、年間休日、有給取得率、夜勤回数なども確認できませんでした。
ミネラルウォーター工場は製造ラインを運転するため、交替勤務が行われる可能性があります。
実際、法人消滅後の2020年に同じ松川村所在地で掲載された株式会社シリウスのミネラルウォーター製造求人では、7時~16時と19時~翌4時の交替勤務が確認できます。
ただし、これは株式会社あづみ野ビバレッジ消滅後の別法人の求人なので、旧法人の勤務実態として採点には利用しません。
旧法人単体の結果を確認できないため0/10点です。
雇用の安定・待遇の公平性:0/5点
旧法人の従業員数、正社員比率、離職率、平均勤続年数、男女賃金差などは確認できませんでした。
2018年には会社そのものが東京アートへ吸収合併されています。
合併後に松川工場として事業が継続しているため、工場そのものが直ちに閉鎖されたわけではありません。
しかし、旧あづみ野ビバレッジの従業員が何人引き継がれたのか、雇用条件がどう変化したのかは公開資料から判断できません。
そのため0/5点です。
福利厚生・育児・介護:0/5点
退職金、住宅支援、育児休業、介護休業、健康支援などについて旧法人単体の公開情報を確認できませんでした。
親会社や合併先の制度を自動的に旧法人へ当てはめることはできないため0/5点です。
人権・ハラスメント・労使関係:0/5点
旧法人単体のハラスメント相談窓口、内部通報制度、人権研修、労働組合、相談・是正件数などは確認できませんでした。
問題があったという意味ではありません。
制度の存在と実効性を確認できないため0/5点です。
労働安全・健康:3/10点
工場では食品安全管理が行われていたことは確認できます。
2010年にはISO14001を取得し、2012年にはミネラルウォーター類について総合衛生管理製造過程の承認を受けました。
ただし、ISO14001は環境管理、HACCPは食品衛生管理を中心とするもので、従業員の労災実績そのものを証明するものではありません。
旧法人の、
・労働災害件数
・休業災害
・重大事故
・安全教育
・機械事故
・ヒヤリハット
について具体的な公開情報を確認できませんでした。
食品工場として一定の管理体制が存在したことを限定的に評価して3/10点としました。
より高い評価には、労災件数や安全教育などの結果情報が必要でした。
商品・サービスの安全:5/5点
ここは旧あづみ野ビバレッジで最も評価できる項目です。
厚生労働省は2012年10月、同社の松川村の施設について、清涼飲料水・ミネラルウォーター類の「総合衛生管理製造過程」を承認しています。
これは申請内容について地方厚生局が審査し、当時の承認基準への適合を確認したものです。
また、東京アートの沿革では2010年にISO14001を取得しています。
今回の検索では、株式会社あづみ野ビバレッジ名義で大規模な食品事故や重大な回収案件は確認できませんでした。
公的なHACCP承認まで確認できるため、商品・サービス安全は5/5点としました。
従業員・元従業員の口コミ
株式会社あづみ野ビバレッジ単体の社員・元社員口コミについて検索しました。
現在確認できる主要な口コミサイトでは、旧法人で働いたことを明確に確認でき、給与、休日、人間関係、安全などを採点へ利用できる投稿は確認できませんでした。
東京アート株式会社の口コミは存在しますが、東京アートには複数事業所・事業があり、それを旧あづみ野ビバレッジへそのまま当てはめることはできません。
SNS・匿名掲示板の確認結果
X、5ちゃんねるなどについても、旧株式会社あづみ野ビバレッジとの雇用関係が確認でき、企業審査の根拠として使用できる投稿は確認できませんでした。
情報が見つからないことを「問題がなかった」という加点には使用しません。
Safety小計:8/50点
Innovation:8/25点
Innovationでは、生産設備や品質管理を改善し、人の負担を減らしたか、商品の品質を高めたか、その成果を働く人へ還元したかを確認します。
旧あづみ野ビバレッジでは、新工場の建設、ISO14001、HACCPなど一定の改善は確認できます。一方、その設備投資が作業時間・事故・残業・賃金にどの程度効果を与えたかは分かりません。
作業負担・危険の削減:0/10点
2009年に松川村でミネラルウォーター新工場が稼働しています。
しかし、
・自動化設備
・ロボット
・重量物運搬削減
・検査自動化
・作業時間削減
などについて具体的な公開情報を確認できませんでした。
新工場を建設しただけで人間の負担が減ったとは判断できないため0/10点です。
商品・サービスの改善:4/5点
松川村のミネラルウォーター工場は、複数の小売企業向け商品を製造していました。
2017年にはセブンプレミアム天然水の製造事例が確認できます。
食品衛生についても2012年にHACCP承認を取得しています。
幅広い流通企業へミネラルウォーターを供給し、安全管理基準を整えた点を評価して4/5点としました。
5点とするには、商品改善や品質事故削減について継続的な数値が必要です。
改善成果の人間への還元:0/5点
新工場、環境管理、食品衛生管理などの投資が、
・残業削減
・休日増加
・賃上げ
・危険作業削減
・教育時間増加
へつながったかは確認できませんでした。
技術・設備投資と働く人への還元を分けて評価するため0/5点です。
研究開発・現場改善の継続:4/5点
2009年に新工場を稼働し、2010年にISO14001、2012年にHACCP承認へ進んでいます。
工場を作って終わりではなく、その後に環境・食品安全管理の仕組みを整備した流れは評価できます。
一方、2012年以降、2018年の合併までの改善成果を継続的に追える情報は少ないため4/5点としました。
Innovation小計:8/25点
Protection:2/25点
Protectionでは、地震、停電、水源トラブル、設備故障、サイバー攻撃などが発生してもミネラルウォーターを製造・供給できるかを評価します。
飲料水は災害時にも重要な商品ですが、旧あづみ野ビバレッジについてBCPや代替生産、復旧時間などの公開情報はほとんどありません。
災害への備え・訓練:0/5点
旧法人単体の防災訓練、地震対応、停電対応などは確認できませんでした。
そのため0/5点です。
生産・物流・調達の代替:0/5点
旧あづみ野ビバレッジについて、松川工場が停止した場合に他工場で代替生産できたのかを確認できませんでした。
親会社・グループに別工場が存在することだけで、対象会社の代替能力として加点しません。
0/5点です。
サイバー防衛・情報保護:0/5点
旧法人単体の情報セキュリティ方針、バックアップ、サイバー対策等は確認できませんでした。
0/5点です。
供給継続・復旧能力:2/5点
2018年の吸収合併後も、工場自体は東京アートの「松川工場」として操業が続きました。
さらに2019年には松川工場がFSSC22000認証を取得し、2023年にはミネラルウォーター事業そのものがハルナウォーターへ譲渡されています。
つまり、法人としての株式会社あづみ野ビバレッジは消滅しましたが、製造拠点と事業自体は別会社へ引き継がれました。
事業承継によって供給が継続したことを限定的に評価し2/5点としました。
ただし、これは災害BCPではなく企業再編による事業継続なので高得点にはしません。
危機時の市民への対応:0/5点
旧法人時代に、災害被災地へ飲料水を提供した実績や自治体との災害協定などは確認できませんでした。
そのため0/5点です。
Protection小計:2/25点
良いニュース・最近の前向きな動き
株式会社あづみ野ビバレッジはすでに消滅しているため、現在進行形のニュースはありません。
ここでは旧法人時代に確認できる重要な前向きな出来事と、その後事業がどう継承されたかを整理します。
2012年|HACCPの承認を取得【Safety】
2012年10月、厚生労働省は株式会社あづみ野ビバレッジのミネラルウォーター製造施設について、総合衛生管理製造過程の承認を公表しました。
飲料水は日常的にそのまま口にする商品です。
衛生管理を工程全体で行う仕組みが公的に確認されていたことは、利用者の安全に直接つながる強みでした。
2010年|ISO14001を取得【Innovation】
東京アートの沿革によると、株式会社あづみ野ビバレッジは2010年にISO14001を取得しました。
大量の水と容器を扱う飲料工場では、環境管理も重要です。
環境管理を組織的に行う仕組みを導入したことは評価できます。
事業そのものは現在も承継されている
2018年に東京アートへ吸収された後、松川工場は東京アートの工場として継続しました。
2023年6月30日には、あづみ野工場・松川工場を含むミネラルウォーター事業が株式会社ハルナウォーターへ譲渡されました。
現在、旧松川工場のミネラルウォーターを購入する場合、実際に評価すべき製造会社は株式会社ハルナウォーターです。
悪いニュース・問題となった動き
旧法人について、今回の検索では重大な食品事故や大規模な行政処分は確認できませんでした。
一方、企業審査上の最大の問題は、現在の働き方や安全性を確認できる会社そのものがすでに存在せず、旧法人時代の情報公開も非常に限られていることです。
2018年|株式会社あづみ野ビバレッジが消滅
2018年2月、株式会社あづみ野ビバレッジは東京アート株式会社へ吸収合併されました。
gBizINFOでは「合併による解散等」として登記閉鎖が確認できます。
これは倒産や行政処分ではありません。
しかし現在の商品購入によって、株式会社あづみ野ビバレッジの経営方針を支えることはできません。
会社自体が存在しないからです。
2023年|旧ミネラルウォーター事業をハルナウォーターへ譲渡
東京アートは2023年6月30日、あづみ野工場・松川工場を含むミネラルウォーター事業を株式会社ハルナウォーターへ譲渡しました。
事業譲渡後は、同じ松川村で製造される商品でも製造会社が変わっています。
例えば「北アルプス 安曇野のやさし水」やCO・OP「あずみ野の水」では、現在の製造者がハルナウォーター松川プラントへ変更されていることが確認できます。
総合評価と、現在確認すべき企業
株式会社あづみ野ビバレッジの参考評価は18点、シビックランクGです。
通常の企業なら次のFランクは20点からなのであと2点ですが、この会社について点数を上げるための改善を求めることはできません。
法人がすでに存在しないためです。
最大の強みは、HACCP承認を受けたミネラルウォーター製造です。
最大の弱点は、賃金、労働時間、雇用、安全、BCPなどを判断できる公開情報が不足していることです。
ただし、現在の商品購入判断では旧株式会社あづみ野ビバレッジではなく、現在の製造会社を見る必要があります。
現在の製造会社は株式会社ハルナウォーター
2023年6月30日以降、東京アートのミネラルウォーター事業は株式会社ハルナウォーターが承継しています。
したがって、現在販売されている旧松川工場系の商品について、
「この水を購入すると、どの企業の働き方や安全対策を支えるのか」
を判断する場合は、株式会社ハルナウォーターの現在の企業審査を使うべきです。
旧法人の記事を残す意味
それでも旧株式会社あづみ野ビバレッジの記事を残す意味はあります。
商品の古いラベル、過去の商品情報、旧取引先資料などには「株式会社あづみ野ビバレッジ」という社名が残っているためです。
この記事を残すことで、
株式会社あづみ野ビバレッジ
↓
2018年 東京アート株式会社へ吸収合併
↓
東京アート松川工場
↓
2023年 株式会社ハルナウォーターへ事業譲渡
という流れを確認できます。
現在の商品審査で旧法人を現役企業として二重に採点しないためにも、この承継関係は重要です。
出典一覧
| 情報源 | 主な確認内容 | 情報ランク |
|---|---|---|
| gBizINFO | 法人閉鎖、合併による解散 | S |
| 厚生労働省 | 2012年HACCP承認 | S |
| 東京アート株式会社 | 設立、新工場、ISO14001、吸収合併、FSSC22000、事業譲渡 | A |
| ハルナビバレッジ・東京アート共同発表 | 2023年事業譲渡 | A |
| ミネラルウォーター大全 | 現在の製造者確認の補助情報 | B |
シビックランクの基準
| シビックランク | 総合得点 |
|---|---|
| S | 90~100点 |
| A | 80~89点 |
| B | 70~79点 |
| C | 60~69点 |
| D | 50~59点 |
| E | 40~49点 |
| F | 20~39点 |
| G | 0~19点 |
情報ランク
情報ランク:C
法人の消滅、HACCP承認、吸収合併、事業譲渡など重要な企業履歴については、公的資料や企業公式資料から確認できます。
一方、旧法人の賃金、残業、休日、福利厚生、労災、離職率、BCP、サイバー対策など企業審査の主要情報はほとんど確認できません。
そのため、会社の履歴についての信頼性は高いものの、Safety・Innovation・Protectionを完全に再現できる情報量ではなく、情報ランクはCとしました。
