私たちは、企業の商品を購入したり、サービスを利用したりすることで、そこで働く人たちの未来を変えることができます。
働く人に十分な賃金を払い、休暇を確保し、安全な職場をつくり、人の負担を減らす企業の商品やサービスが選ばれれば、そうした企業により多くの売上が集まります。その結果、働く人を大切にする経営を続けやすくなります。
反対に、低賃金や長時間労働、安全上の問題を改善しない企業の商品やサービスが売れ続ければ、そうした働かせ方のままでも事業を続けることができます。
だからこの企業審査では、「私たちがお金を使うなら、どの企業を選ぶことが、そこで働く人にとってより良い社会につながるのか」という視点から企業を評価します。
なぜ企業を審査するのか?――このサイトの目的と、利用するメリット
今回審査する株式会社トランス・グリップは、総合56点、シビックランクDです。
株式会社トランス・グリップの特に強い点は、全車両へのドライブレコーダー・バックアイカメラ・デジタルタコグラフの導入と、全事業所で年2回の安否確認訓練、全社員3日分の水・食料備蓄を行っていることです。そのため、この企業の商品を購入したりサービスを利用したりすれば、食品物流を担うドライバーの事故を減らし、地震などの有事でも物流を早く立て直せる社会につながる可能性が高まります。
一方で、改善点として2025年度の月平均所定外労働時間36時間と、役員・管理的地位にある28人のうち女性0人という状態が残ります。
この記事では、株式会社トランス・グリップの強みと課題をさらに詳しく企業審査していきます。
株式会社トランス・グリップの企業審査結果
| 評価軸 | 得点 |
|---|---|
| Safety | 25/50 |
| Innovation | 16/25 |
| Protection | 15/25 |
| 総合点 | 56/100 |
| シビックランク | D |
| 主な強み | 主な課題 |
|---|---|
| ドライブレコーダー・バックアイカメラ・デジタルタコグラフを全車へ導入 | 2025年度の月平均所定外労働時間36時間 |
| 毎月の安全ミーティングと毎日のヒヤリハット共有 | 転職会議投稿者集計では残業43.8時間・有給消化率10% |
| 重大事故0件の公開実績がある | 法人単体の労災度数率・強度率などが非公表 |
| 年2回の全社安否確認訓練 | 女性管理職0% |
| 全社員3日分の水・食料を備蓄 | 自動化・設備投資による労働時間削減量が非公表 |
| 27~28拠点、231台規模の物流網 | サイバー防御・復旧時間の詳細開示が弱い |
| オートフロアやデジタルピッキングなどの改善 | 災害時の市民向け緊急輸送実績・協定の開示が乏しい |
| 2024年度データでは男性・女性とも育休取得100% | 年間休日114日で、より高い休息水準には改善余地 |
事業内容と人間への貢献
株式会社トランス・グリップは、埼玉県狭山市に本社を置き、菓子・加工食品・酒・飲料・生鮮食品・日用品などを扱う物流会社です。法人番号は7030001026522、1990年3月設立、資本金5,000万円です。会社公式では従業員1,058名、車両231台としています。
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 会社名 | 株式会社トランス・グリップ |
| 法人番号 | 7030001026522 |
| 本社 | 埼玉県狭山市柏原276番地1 |
| 設立 | 1990年3月1日 |
| 代表者 | 代表取締役 竹上清文 |
| 資本金 | 5,000万円 |
| 従業員数 | 1,058名(パートタイマー含む・会社公式) |
| 車両台数 | 231台 |
| 主な事業 | 一般貨物自動車運送、物流センター運営、商品管理、流通加工、店舗配送 |
| 主な取扱品 | 菓子、加工食品、酒、飲料、生鮮食品、日用品 |
| 関連会社 | 株式会社髙山、株式会社アッシュ、株式会社髙山ジャパン |
採用サイトでは正社員339名、有期社員697名、合計1,036名とする時点別の数字もあり、Gビズインフォでは1,065人と掲載されています。集計時点と雇用区分が異なるため、単純な増減とは扱いません。
主な事業内容
トランス・グリップは、メーカーや卸から商品を受け取り、物流センターで在庫・仕分け・流通加工を行い、コンビニやスーパーなどへ配送します。
物流センターでは、入荷した商品を保管せず店舗別へ仕分けるTC機能と、商品を保管して必要時に出荷するDC機能の両方に対応しています。食品・菓子では賞味期限、破損、温度管理、誤出荷への対応が必要で、トラックによる輸送とセンター運営を組み合わせています。
会社公式では、関東・中部・関西・中国などに物流拠点を展開し、コンビニやスーパー向けの食品物流を担っています。2026年には千葉県の八千代センターを開設し、熊谷センターも移転しています。
主な利用企業・取引先
会社公式では、髙山、カルビーロジスティクス、新潟輸送、中村屋、ライフサポート・エガワ、日本通運、三井物産流通グループ、F-LINEなどを主な取引先として掲載しています。
事業による人間への貢献
食品物流は、商品を製造する会社と、実際に食べる人の間をつなぐ仕事です。
例えばコンビニやスーパーに菓子・飲料・加工食品が時間どおり届かなければ、店舗に商品がなくなり、消費者が必要な物を購入できなくなります。災害や物流混乱が起きた場合は、この役割がさらに重要になります。
トランス・グリップは、工場・センター間輸送、センターの商品管理、流通加工、店舗配送までを一つの物流網で扱える点に強みがあります。食品を必要な場所へ正確に届け、店舗側が自前で大規模な倉庫・配送機能を持つ負担を減らすことが、人間への直接的な貢献です。
Safety|25/50
Safetyでは、ドライバーや倉庫作業員が無理なく安全に働けるか、利用者へ食品を正確かつ安全に届けられるかを評価します。トランス・グリップは交通事故防止設備と教育は非常に具体的ですが、月平均残業36時間、女性管理職0%、法人単体の労災KPI不足が点数を下げています。
賃金・利益の還元|4/10
2026年4月実績の新卒大卒初任給は月22万6,800円で、固定残業制度はありません。残業代は別途支給され、昇給は年1回、賞与は年2回です。入社5年・主任のモデル月収は33万9,758円で、残業21.6時間分と通勤手当1万7,000円を含みます。
2026年2月期の純利益は2,701万2,000円で、利益剰余金は10億6,114万3,000円です。会社が継続的に利益を蓄積している点は雇用安定の材料になります。
一方、全社員の平均給与、職種別賃金、ベースアップ率、パート・有期社員を含む賃上げ実績は公表されていません。転職会議の2020年頃の正社員口コミには「残業ありきの給与になっている」という指摘もあります。古い口コミのため現在の給与実態と同一視しませんが、現行の全社賃金データが少ない点は課題です。
そのため4/10点です。全社員に届くベースアップ率、職種別平均給与、正規・有期社員の賃金差を毎年公開し、物価上昇を上回る継続的な改善が確認できれば6~8点を検討できます。
労働時間・休息|4/10
マイナビ2028では、2025年度の月平均所定外労働時間は36時間、平均有給休暇取得日数は10日、年間休日は114日です。
月36時間の残業は、1日8時間・月20日勤務と仮定すると、平均で1日約1時間48分の時間外労働に相当します。物流業では時間帯の異なる配送やローテーション勤務もあるため、睡眠や家族時間への影響を無視できません。
ハローワークの2025年12月受付求人では月平均残業27時間、別拠点では10時間という求人もあり、拠点・職種差が確認できます。
転職会議の投稿者集計では月43.8時間、有給消化率10%となっていますが、口コミ投稿者の集計であり会社全体の2025年度実績とは母集団が異なります。
年間休日114日、有給平均10日は一定の休息を確保していますが、全社平均残業36時間は高いため4/10点です。
全社残業を20時間以下、配送・センター職も25時間以下に抑え、有給平均12日以上を複数年継続できれば6/10点を検討できます。
雇用の安定・待遇の公平性|2/5
会社は1990年から事業を継続し、2026年も新拠点開設・移転を進めています。2025年度の平均勤続年数は8年です。
一方、採用サイトでは正社員339名に対し、有期社員・パートタイマー697名と、有期・パートの比率が高い構成です。また、2025年度は役員・管理的地位28人のうち女性0人で、女性管理職比率0%です。Gビズインフォでは正社員に占める女性比率10.7%とされています。
女性が少ない運送部門を含む会社である点は考慮しますが、管理職が0%の状態は公平な登用という観点で改善が必要です。
そのため2/5点です。正規登用実績、男女賃金差、離職率、女性管理職比率を毎年公開し、女性管理職を継続的に増やせれば3~4/5点を検討できます。
福利厚生・育児・介護|4/5
全社員を対象に定期健康診断を行い、夜勤者は年2回、日勤者は年1回実施しています。ストレスチェックは年1回で、高ストレス者は産業医面談の対象です。ワクチン接種補助、資格取得支援、退職金、財形貯蓄、団体保険、住宅・家族手当などもあります。
2024年度は育休対象の男性2人、女性3人が全員取得し、男女とも取得率100%でした。2025年度は女性3人が全員取得しており、男性は対象者0人です。
産前産後休暇、育児短時間勤務、介護休暇にも実績があります。
制度と取得実績が確認できるため4/5点です。育休の取得日数、復職率、介護休業の利用人数まで複数年公開できれば5/5点を検討できます。
人権・ハラスメント・労使関係|3/5
会社公式ではハラスメント専用ダイヤルを設置し、年齢・性別・国籍・キャリアに関係なく働ける職場を目標としています。新入社員研修ではコンプライアンス研修と情報セキュリティ研修も実施しています。社員満足度調査も全事業所・全社員を対象に行っています。
一方、ハラスメント相談件数、内部通報件数、是正件数、研修受講率などの運用結果は公表されていません。ハローワーク求人では労働組合なしと記載された求人もあります。
制度の存在は評価できますが、制度がどこまで使われ、問題を是正できているかは外部から検証しにくいため3/5点です。
労働安全・健康|4/10
物流では、交通事故に加えて、フォークリフト、荷役、重量物、夜間勤務、テールゲートリフターなどの危険があります。
トランス・グリップは全車にドライブレコーダー、バックアイカメラ、デジタルタコグラフを導入し、毎月1回の乗務員ミーティング、毎日のヒヤリハット共有、適性診断、安全面談、KYTなどを実施しています。テールゲートリフターの特別教育にも対応しています。
一方、法人単体の休業労災件数、死亡労災、労災度数率、強度率は公表されていません。
2024年3月に公表された第34期の運輸安全マネジメント結果では、自動車事故報告規則第2条に該当する重大事故は0件でしたが、有責人身事故は1件発生しています。発熱による体調不良と脇見が原因と会社は説明しています。
交通事故対策は具体的ですが、労働災害全体の結果指標が不足するため4/10点です。死亡0、休業労災、度数率・強度率を毎年公開し、交通事故と荷役事故の両方で改善を確認できれば6~8点を検討できます。
商品・サービスの安全|4/5
食品物流では、誤配送、破損、温度管理、衛生、納品時間などがサービス安全に直結します。
トランス・グリップでは、デジタルピッキング表示器、類似商品の配置分離、注意表示、ピッキング順序のルール化、積荷取り扱い研修などを行っています。複数営業所で安全性優良事業所のGマーク認定も確認できます。
運輸安全マネジメントでは重大事故0件の公開実績もあります。ただし、有責人身事故は発生しており、誤配送率・破損率・温度逸脱率などの全社KPIは十分に公表されていません。
そのため4/5点です。重大事故0を継続し、誤配送・破損・温度逸脱などの品質KPIを公開できれば5/5点を検討できます。
従業員・元従業員の口コミ
転職会議では33件の口コミがあり、投稿者集計は月平均残業43.8時間、有給消化率10%です。
2024年頃に勤務した20代前半男性の口コミでは、
「基本的にはチームで協力しながら仕事を進める環境」
という記述があります。上司や先輩へ相談しやすいという内容もあり、教育・チーム面では肯定的です。情報ランクBとして扱います。
一方、2020年頃の30代後半男性・正社員・倉庫関連の口コミには、
「残業ありきの給与になっている」
という記述があります。時期が古いため現在の給与制度を断定する材料には使いませんが、現行の全社残業36時間と合わせて、賃金と長時間労働の関係を継続確認する必要があります。
Indeedは2026年7月時点で5件、総合2.6/5、勤務時間と残業2.0、給与と福利厚生1.6です。2026年7月の運送業投稿では、新人をリーダーがフォローする文化を肯定する一方、夏の物量増加は大変だと述べています。
SNS・匿名掲示板の確認結果
X、5ちゃんねる、爆サイについて、社名と「残業」「事故」「給料」「退職」「パワハラ」「配送」などを組み合わせて調べました。
5ちゃんねるでは社名が古い運送会社スレッド内の企業名一覧に出る例がありましたが、対象会社の具体的な職場実態を確認できる投稿ではなく、採点根拠には使用していません。
X・爆サイでも、対象法人・投稿者の立場・時期を確認でき、今回の評価を変更できる原文投稿は使用していません。有用な投稿がなかったこと自体は減点していません。
Innovation|16/25
Innovationでは、物流設備やデジタル機器が、人の身体負担・事故・単純作業をどれだけ減らし、その成果が残業や自由時間へ返っているかを評価します。トランス・グリップは現場改善を継続していますが、導入前後の作業時間や必要人数の比較が少なく、人への還元が数字で見えにくい点が弱点です。
作業負担・危険の削減|6/10
トラックにはオートフロアを導入し、荷台床を電動で動かして積み下ろしを行えるようにしています。掛川営業所でも作業軽減を目的にオートフロア車・ゲート車を導入しています。
全車のデジタコ・ドラレコ・バックカメラは、事故の把握と教育をデータ化する仕組みです。倉庫ではデジタルピッキング表示器を利用し、商品の取り違いを減らしています。
ただし、オートフロア導入で荷役時間が何分減ったか、腰痛・労災が何件減ったか、デジタルピッキングで作業時間や誤出荷が何%減ったかという定量結果は公表されていません。
そのため6/10点です。導入前後の荷役時間、歩行距離、重量物作業、誤出荷、労災を数値化できれば8~10点を検討できます。
商品・サービスの改善|4/5
同社はTC・DC両方の物流センター機能と輸配送を組み合わせ、工場・センター間輸送から店舗配送までワンストップで扱っています。2026年には八千代センター開設、熊谷センター移転を進め、物流網を更新しています。
品質面では、デジタルピッキングの表示改善、類似商品の棚配置、注意看板、荷扱い研修など、現場で発生したミスを次の改善へ反映しています。
継続的なサービス改善が確認できるため4/5点です。誤出荷率や納品遅延率などの成果指標まで公表できれば5/5点を検討できます。
改善成果の人間への還元|2/5
オートフロアやデジタル機器、安全設備は、人の負担を減らす方向の投資です。
しかし2025年度の全社平均残業は36時間です。機器導入前後で残業が何時間減ったか、荷役人数が何人減ったか、削減した時間を休日・休憩・賃金へどう返したかは公表されていません。
事故防止や作業軽減への投資は評価しますが、成果が働く人の自由時間へ十分返ったことを検証できないため2/5点です。
研究開発・現場改善の継続|4/5
毎日のヒヤリハット共有、毎月の安全ミーティング、チームカイゼン活動、カイゼン発表表彰制度など、現場改善を継続する仕組みがあります。
2026年10月には東埼玉営業所の大型車へ移動体太陽光発電システムを導入し、車載電力を補助して燃料消費・CO2を減らす試行も始めています。会社ブログでは5~8%程度の燃料削減効果が期待される技術として紹介していますが、実車での効果測定はこれからです。
継続的な改善活動があるため4/5点です。導入後の燃料・作業時間・事故・残業の実測値を公開し、横展開できれば5/5点を検討できます。
自動化・AI導入後の雇用状況
トランス・グリップではデジタルピッキング、デジタコ、オートフロアなどの設備・デジタル化を導入していますが、大規模な倉庫ロボットやAIによる人員削減を行ったという公開情報は確認できません。
2025年6月の物流業界研究会提出資料では正社員336名、契約・パート・アルバイト687名、28拠点とされ、2026年も各拠点でドライバーや商品管理の求人を継続しています。
一方、設備導入前後の必要人員、配置転換人数、契約更新、採用抑制、退職者数を時系列で示す公開情報はありません。
現状では、自動化による大規模雇用削減は確認できませんが、「機械化で浮いた時間を何に使ったか」まで公開できればInnovation評価をさらに上げられます。
Protection|15/25
Protectionでは、地震、豪雨、停電、燃料不足、サイバー攻撃などが起きたときに、食品物流をどこまで継続できるかを評価します。トランス・グリップは東日本大震災で実際に車両被害と通信断を経験し、その教訓から年2回の安否確認訓練と3日分備蓄を全社へ広げています。この点は大きな強みです。
災害への備え・訓練|5/5
東日本大震災では宮城営業所の車両2台が津波被害を受け、13人の安否確認に約3万回の電話、最終確認まで30時間を要したと会社が公表しています。
その経験から、安否報告をメール方式へ変更し、現在は全事業所・全社員を対象に年2回、3月と9月に安否確認訓練を実施しています。全社員分の水・食料も3日分備蓄しています。
2015年9月の訓練では約800人を対象に実施率88.5%という結果まで公開しており、避難訓練も年2回行ってきました。
例えば大地震で電話が集中してつながらなくなった場合でも、社員がメールで安否を報告できれば、会社は誰を救援すべきか、どの拠点に人員を回せるかを早く判断できます。3日分の水・食料があれば、道路が止まった直後でも社員が最低限の生活を維持しながら復旧へ動けます。
計画、頻度、対象範囲、過去の訓練結果まで確認できるため5/5点です。
生産・物流・調達の代替|4/5
トランス・グリップは27~28拠点を持ち、東北、関東、信越、東海、関西、中国、九州へ物流網を広げています。車両は231台です。
一つの営業所だけで事業を行う会社より、災害や設備故障で一拠点が停止した際に、別拠点や別車両へ仕事を振り替えられる余地があります。
東日本大震災では労働力・燃料を確保できず、運行業務が長期にわたり他社へ移った経験も公表しており、その後は燃料・労働力確保をBCP課題として改善しています。
一方、各センターがどの地域・顧客を何%代替できるか、災害時に何台の車両を振り替えられるかは公表されていません。
そのため4/5点です。拠点別の代替輸送能力と切替時間を数値で示せれば5/5点を検討できます。
サイバー防衛・情報保護|2/5
新入社員研修では情報セキュリティ研修を実施し、コンプライアンスと合わせて基本教育を行っています。
物流会社では受発注、在庫、配送先、車両運行などのシステムが停止すると、物理的にトラックがあっても配送指示を出せなくなるため、サイバー対策は重要です。
一方、多要素認証、EDR、SOC・CSIRT、オフラインバックアップ、標的型メール訓練、第三者演習、重大インシデント件数、復旧テストなどの公開情報はありません。
そのため2/5点です。技術対策と訓練結果、復旧テストを公開できれば3~5/5点を検討できます。
供給継続・復旧能力|3/5
多拠点・多数車両を持つことに加え、東日本大震災後に安否確認、燃料確保、労働力確保をBCPとして見直している点は評価できます。
一方、主要物流センターが停止した場合のRTO、非常電源の稼働時間、データ復旧時間、代替配送開始までの時間、顧客別の復旧優先順位は公表されていません。
そのため3/5点です。例えば熊谷センター停止時に何時間で別拠点から出荷を再開できるのかを訓練で測定し、その実績を公開できれば4~5/5点を検討できます。
危機時の市民への対応|1/5
食品物流を日常的に担っているため、有事にも生活物資を運べる潜在力があります。
しかし、自治体との災害物資輸送協定、被災地への緊急配送、避難所への物資提供など、トランス・グリップ単体の具体的な危機支援実績について十分な公開情報がありません。
そのため1/5点です。自治体・荷主企業と緊急物流協定を結び、訓練・実災害での配送実績まで公開できれば3~5/5点を検討できます。
良いニュース・最近の前向きな動き
最近のトランス・グリップでは、拠点網の更新と環境対応の試行が続いています。これらは主にInnovationとProtectionに関係します。物流拠点と車両への投資が続けば、食品が届かない時間を減らしながら、燃料使用と現場負担を減らせる可能性があります。
2026年1月 八千代センターを開設(Protection)
2026年1月、千葉県八千代市に八千代センターを開設し、会社公式の拠点一覧へ追加されました。
物流拠点が増えることは、一地域へ機能を集中させない方向に働きます。例えば千葉県内の一拠点が災害や設備故障で使えなくなった場合、周辺拠点へ一部業務を切り替えられる余地が増えます。
ただし、実際の代替可能量は公開されていないため、拠点数だけで完全なBCPとは判断しません。
2026年4月 熊谷センターを移転(Innovation・Protection)
2026年4月12日、熊谷センターを熊谷市三ヶ尻から熊谷市手島へ移転しました。
物流拠点の更新は、現在の物量、車両動線、作業スペースに合わせてセンター機能を見直す機会になります。
一方、移転後に作業時間が何%短縮したか、保管能力・配送能力がどれだけ上がったかは公表されていないため、現時点では設備更新の事実を評価し、定量効果は今後の確認項目とします。
2026年10月 大型車へ移動体太陽光発電システムを導入(Innovation)
2026年10月3日、東埼玉営業所の大型車へソーラーパネルを取り付けたことを会社が公表しました。
会社ブログでは、車載バッテリーを太陽光で補充電し、オルタネーター負荷を減らすことで5~8%程度の燃料消費削減が期待される技術と説明しています。
現時点では導入直後であり、同社車両で5~8%削減を実測したわけではありません。今後、燃料消費量、アイドリング時間、CO2削減量を導入前後で測定し、効果が確認できればInnovationの追加評価につながります。
悪いニュース・問題となった動き
現在の大きな課題は、物流を支える人の時間負担と管理職構成です。また、交通安全対策は非常に具体的である一方、事故を完全には防げておらず、結果指標の継続公開が必要です。問題が改善されなければ、安全設備へ投資しても長時間労働や人材登用の偏りが残ることになります。
2025年度 月平均所定外労働時間36時間(Safety)
2025年度の月平均所定外労働時間は36時間です。平均有給休暇取得日数は10日でした。
物流業には早朝・夜間を含む勤務があるため、時間外労働が長くなると睡眠不足や疲労が交通安全へも影響します。
同社自身も2024年公表の有責人身事故について、発熱による体調不良を原因の一つとして挙げています。
安全設備を増やすだけでなく、働く時間そのものを減らすことが次のSafety改善になります。
2025年度 女性管理職0%(Safety)
マイナビ2028では、2025年度の役員・管理的地位にある者28人のうち女性は0人です。
一方、会社は女性社員の積極雇用とダイバーシティを掲げ、育児休業でも取得実績があります。制度と採用の次は、意思決定に参加する役職へ女性を登用できるかが課題です。
女性管理職比率を上げること自体を目的化するのではなく、昇進候補者の男女比、昇進率、離職率、職種構成を公開し、同じ能力・実績の社員に登用機会が届いているかを確認できる状態が必要です。
2024年公表 第34期に有責人身事故1件(Safety)
2024年3月の運輸安全マネジメント公表では、重大事故は0件でしたが、有責人身事故は1件ありました。渋滞中の追突で、会社は発熱による体調不良と脇見を原因として説明しています。
重大事故0は評価できますが、人身事故が発生した以上、安全対策の成果を事故ゼロと表現することはできません。
全車ドラレコ・デジタコ、月次教育、ヒヤリハット共有を持つ会社だからこそ、その後の有責人身事故件数がどう推移したかを毎年公開してほしいところです。
総合評価と、これから改善してほしいこと
現在56点・シビックランクDです。Cは60点からなので、次のランクまであと4点です。
トランス・グリップは、交通安全設備、ドライバー教育、災害訓練、3日分備蓄という「事故や災害に備える仕組み」が具体的です。一方、全社残業36時間、女性管理職0%、労災結果・サイバー復旧の開示不足が総合点を下げています。
全社残業を20時間以下へ下げてほしい(Safety)
現在の「労働時間・休息」は4/10点です。
2025年度の全社平均残業は36時間、平均有給取得日数は10日です。
配送計画の見直し、センター間の応援、人員配置、荷役設備の活用によって全社平均残業を20時間以下へ下げ、配送・倉庫部門でも25時間以下を維持し、有給平均12日以上を複数年継続できれば4→6点を検討できます。
加点は+2点で、総合56→58点、Dのままです。
参考企業は東京アート株式会社です。Google Drive上の現行審査では、2024年度の月平均残業6.9時間、有給取得率75.2%を公開し、「労働時間・休息」8/10点、総合57点・Dです。
労災・交通事故KPIを毎年公開し、事故率を下げてほしい(Safety)
現在の「労働安全・健康」は4/10点です。
第34期は重大事故0件でしたが、有責人身事故1件が発生しました。また、休業労災、死亡労災、労災度数率・強度率について会社単体の継続的な公開情報が不足しています。
交通事故について重大事故・有責人身事故・物損事故を毎年公開し、倉庫・荷役について死亡・休業労災、度数率、強度率を公表してください。重大事故0を継続し、労災度数率を業界平均以下へ下げることが確認できれば4→6点を検討できます。
加点は+2点で、総合56→58点です。残業改善と合わせれば60点・Cへ到達します。
参考企業はキリンビバレッジ株式会社です。Google Drive上の現行審査では、2024年の死亡0人、休業災害度数率0.58、安全方針適用100%を法人単位で公開し、「労働安全・健康」8/10点、総合74点・Bです。
設備投資の効果を「人が楽になった数字」で示してほしい(Innovation)
現在の「作業負担・危険の削減」は6/10点、「改善成果の人間への還元」は2/5点です。
オートフロア、デジタルピッキング、デジタコ、安全設備を導入していますが、荷役時間、歩行距離、残業、必要人数、腰痛・労災がどれだけ減ったかは公表されていません。
導入前後の作業時間、重量物作業、必要人数、事故・腰痛、残業を拠点単位で測定し、実際に身体負担と時間が減れば「作業負担・危険の削減」を6→8点、「改善成果の人間への還元」を2→3点まで検討できます。
合計+3点で、単独なら56→59点です。
参考企業はキリンビバレッジ株式会社です。Google Drive上の現行審査では、最大約25kgの茶葉原料を扱う工程をロボット化し、物流自動化の実証で生産性42%向上と人員の別業務への再配置を確認でき、「作業負担・危険の削減」8/10点、「改善成果の人間への還元」4/5点です。
サイバー復旧をBCPと同じ水準まで具体化してほしい(Protection)
現在の「サイバー防衛・情報保護」は2/5点です。
情報セキュリティ研修はありますが、多要素認証、EDR、SOC、オフラインバックアップ、標的型メール訓練、復旧演習、目標復旧時間の公開情報がありません。
全社員への年1回以上のサイバー訓練、重要システムの多要素認証、バックアップ・復旧試験、第三者演習を実施し、重大インシデント件数と復旧結果を公開できれば2→4点を検討できます。
加点は+2点で、単独なら56→58点です。
参考企業は伊藤忠商事株式会社です。Google Drive上の現行審査では、年2回の標的型メール訓練、年1回以上の第三者サイバー攻撃演習、ITCCERTによる監視などを確認し、「サイバー防衛・情報保護」5/5点、Protection 22/25点、総合83点・Aです。
次のランクへ上がるための具体例
| 改善項目 | 現在の問題 | 企業が実行すること | 達成条件 | 現在点→改善後 | 加点 | 参考企業 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 労働時間・休息 | 月平均残業36時間 | 配送計画、人員配置、荷役設備を見直し職種別残業を公開 | 全社20時間以下、配送・倉庫25時間以下、有給12日以上を継続 | 4→6 | +2 | 東京アート:残業6.9時間、有給75.2%、8/10 |
| 労働安全・健康 | 労災KPI不足、有責人身事故あり | 交通事故・休業労災・度数率・強度率を毎年公開し再発防止 | 重大事故0継続、労災度数率を業界平均以下へ改善 | 4→6 | +2 | キリンビバレッジ:死亡0、度数率0.58、8/10 |
56点+2点+2点=60点となり、シビックランクCへ上がります。
つまり、次のランクへ上がるために優先すべきなのは、新しい物流拠点をさらに増やすことより、現在の物流網と安全設備を使って働く人の残業と事故を実際に減らすことです。月36時間の残業を20時間以下へ下げ、事故・労災結果を毎年公開して改善を証明できればCへ到達できます。
出典一覧
1.株式会社トランス・グリップ「会社概要」
2.株式会社トランス・グリップ「会社を知る/新卒採用サイト」
3.Gビズインフォ「株式会社トランス・グリップ」
4.株式会社トランス・グリップ「物流センターサービス」
5.株式会社トランス・グリップ「熊谷センター移転のお知らせ」および2026年拠点情報
6.マイナビ2027「株式会社トランス・グリップ 採用データ」
7.官報決算データベース「株式会社トランス・グリップ」
8.転職会議「株式会社トランス・グリップの評判・社風・社員の口コミ」
9.マイナビ2028「株式会社トランス・グリップ 会社概要・働き方データ」
10.株式会社トランス・グリップ「採用情報」
11.ハローワーク「株式会社トランス・グリップ 求人票」
12.株式会社トランス・グリップ「永く安心して働ける取り組み」
13.株式会社トランス・グリップ「パーパス/働きやすい・働きがいのある職場作り」および採用FAQ
14.株式会社トランス・グリップ「安全・品質・環境の取り組み」
15.株式会社トランス・グリップ「テールゲートリフター講習」
16.株式会社トランス・グリップ「運輸安全マネジメントについて」2024年3月9日
17.株式会社トランス・グリップ各営業所のGマーク掲載ページ
18.Indeed「株式会社トランス・グリップ 社員口コミ」
19.株式会社トランス・グリップ「掛川安全教育・設備紹介」
20.株式会社トランス・グリップ「キャリアパス/チームカイゼン活動」
21.株式会社トランス・グリップ「地球にやさしい 移動体太陽光発電システム!」2026年10月3日
22.ロジスティクスプロバイダー経営研究会「2025年6月度例会 活動報告フォーム」
23.ハローワーク「株式会社トランス・グリップ 2026年求人情報」
24.株式会社トランス・グリップ「BCP 物流会社トランス・グリップ≪②過去の教訓から安否確認訓練≫」
25.株式会社トランス・グリップ「BCP 物流会社トランス・グリップ≪①過去の教訓から避難訓練≫」
シビックランクの基準
| シビックランク | 点数 |
|---|---|
| S | 90~100点 |
| A | 80~89点 |
| B | 70~79点 |
| C | 60~69点 |
| D | 50~59点 |
| E | 40~49点 |
| F | 20~39点 |
| G | 0~19点 |
株式会社トランス・グリップは56点のため、今回のシビックランクはDです。
情報ランクの基準
| 情報ランク | 基準 |
|---|---|
| S | 公的機関、裁判所、規制当局、独立した第三者機関の調査・監査・検証・認証など、内容そのものに独立した裏づけがある情報 |
| A | 企業公式資料、採用情報、公式声明・SNS、記名取材など、発信主体を確認できる公表情報 |
| B | 従業員・元従業員の口コミ、一般SNS、匿名掲示板など、発信者の身元や対象企業との関係を独立に確認しにくい情報 |
Sは第三者による裏づけがある情報として最も強く扱います。AとBは情報の性質が異なり、働き方の実態確認ではBが有用な場合もあります。口コミは時期・職種・拠点・件数を確認し、公式・公的情報と照合して使用します。
