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富士通株式会社を企業審査|シビックランクA・82点/100点|平均年収1,012万円・AI約92万時間効率化を評価、男女賃金差・システム品質問題が課題

私たちは、企業の商品を購入したり、サービスを利用したりすることで、そこで働く人たちの未来を変えることができます。

働く人に十分な賃金を払い、休暇を確保し、安全な職場をつくり、人の負担を減らす企業の商品やサービスが選ばれれば、そうした企業により多くの売上が集まります。その結果、働く人を大切にする経営を続けやすくなります。

反対に、低賃金や長時間労働、安全上の問題を改善しない企業の商品やサービスが売れ続ければ、そうした働かせ方のままでも事業を続けることができます。

だからこの企業審査では、「私たちがお金を使うなら、どの企業を選ぶことが、そこで働く人にとってより良い社会につながるのか」という視点から企業を評価します。

なぜ企業を審査するのか?――このサイトの目的と、利用するメリット

今回審査する富士通株式会社は、総合82点、シビックランクAです。

富士通株式会社の特に強い点は、社内生成AIの活用で最初の1年間に約92万時間相当の業務効率化効果を測定したことです。そのため、この企業の商品を購入したりサービスを利用したりすれば、単純・反復的なデジタル作業をAIへ移し、人が判断・顧客対応・創造的な仕事へ時間を使いやすい社会につながる可能性が高まります。[出典9]

一方で、改善点として正規雇用労働者の男女賃金比率が78.2%、女性管理職比率が13.1%にとどまることが残ります。[出典3]

この記事では、富士通株式会社の強みと課題をさらに詳しく企業審査していきます。

目次

富士通株式会社の企業審査結果

富士通は、企業や行政の基幹システム、クラウド、AI、ネットワーク、コンピューティングなどを扱う大手IT企業です。

働く人については、2026年3月期の単体平均年間給与が10,122,665円で前年比9.0%増、平均勤続年数17.6年です。労働安全では富士通単体の労災度数率が低い水準で、男性育児休業取得率94.1%などの実績もあります。[出典2・3・6]

Innovationでは、生成AIによる約92万時間相当の効率化効果を自社で測定しており、システム開発そのもののAI自動化も進めています。[出典9・10]

一方、システム品質では2024年に子会社が提供するコンビニ交付サービスで別人の住民票が発行され、富士通株式会社自身が総務省から書面指導を受けました。また同年には社内PC49台がマルウェアの影響を受け、一部の個人情報・顧客業務情報を含むファイルが持ち出されたおそれも公表しています。[出典17・18]

評価軸得点満点
Safety3950
Innovation2425
Protection1925
総合82100
シビックランクA—

主な強みは、高い給与水準、育児支援、低い労災率、生成AIによる大規模な作業時間削減、継続的な研究開発、防災・BCP訓練です。

主な課題は、男女賃金差と女性管理職比率、プロジェクトによる長時間労働のばらつき、AI・事業再編後の雇用変化、行政指導を受けたシステム品質問題、2024年のマルウェア侵入です。

事業内容と人間への貢献

富士通株式会社は1935年設立で、本社機能を神奈川県川崎市に置くIT企業です。2026年3月末の単体従業員数は32,224人、連結では約9.9万人です。主な事業領域はService Solutions、Hardware Solutions、Ubiquitous Solutionsです。[出典1・2]

主な事業内容

富士通は企業や行政機関に対し、

・業務システムの開発・運用
・クラウド
・AI
・データ分析
・サイバーセキュリティ
・スーパーコンピュータなどのコンピューティング技術
・ネットワーク
・ハードウェア
・既存基幹システムのモダナイゼーション

などを提供しています。

ITサービスは企業内部の事務効率だけでなく、行政、金融、医療、物流、製造など社会生活の広い範囲に関わります。

事業による人間への貢献

行政手続き、銀行取引、企業の受発注、病院の情報管理などを人だけで処理すれば、多くの転記、確認、集計、検索作業が必要になります。

富士通はこうした作業をシステムやAIへ移し、人が繰り返し行っていた情報処理を減らしています。

社内生成AIでは、コード生成、提案書作成、レポート自動化、アンケート分析などに利用し、約3万5,000人の月間利用者が使う規模まで拡大しました。最初の1年間で約92万時間相当の作業効率化効果を測定しています。[出典9]

92万時間は、1人が年間2,000時間働くと仮定すると約460人分の年間労働時間に相当します。

こうした時間削減が残業減少、休暇、教育、創造的な仕事へ返れば、人がパソコン上の定型作業に使う時間を大きく減らせます。

一方、AIで仕事を減らす企業では、「効率化した後に人がどうなったか」まで確認する必要があります。そのためInnovationでは、人員減少、配置転換、再教育、社外転身支援まで追って評価します。

Safety:39/50点

Safetyでは、富士通で働く人の賃金、休息、雇用、人権、安全と、行政・企業・市民が利用するITサービスの安全性を確認します。

富士通は平均年収1,000万円超、低い労災度数率、充実した育児・介護制度など高い実績があります。一方、男女賃金差、女性管理職比率、プロジェクトによる長時間労働のばらつき、システム品質問題が減点要因です。

賃金・利益の還元:8/10点

2026年3月期の富士通単体の平均年間給与は10,122,665円です。前年9,291,084円から9.0%増加しました。平均年齢42.7歳、平均勤続17.6年です。[出典2]

有価証券報告書上の平均給与には時間外勤務手当や賞与なども含まれるため、基本給だけの数字ではありません。それでも1年間で平均額が約83万円増えたことは、利益や人材獲得競争を給与へ反映した結果として評価できます。

一方、平均値なので、若手、エンジニア、営業、管理職など職種・等級別の中央値は分かりません。

また、正規雇用労働者の男女賃金比率は78.2%です。会社は同一労働で賃金差を設けておらず、職責レベルごとの男女構成差が理由と説明していますが、女性が高い職責へ進めていないこと自体は待遇公平性の課題になります。[出典3]

高い平均給与と前年比増加を評価し8/10点としました。

10点へ上げるには、平均値だけでなく給与中央値、職責・職種別の賃金、既存社員の基本給上昇率を公開し、男女の職責構成差も縮小した状態を継続する必要があります。

労働時間・休息:8/10点

富士通の採用情報では2025年度の年間休日は126日で、標準勤務は1日7時間45分です。フレックスタイム制も導入されています。年次有給休暇は初年度から20日付与されます。[出典5]

厚生労働省「女性の活躍推進企業データベース」の公表値を整理した二次データでは、2026年3月時点の月平均法定時間外労働は全労働者7.6時間、正規雇用7.9時間、有給休暇取得率は正社員64.0%です。法定時間外のみの数字であり、すべての時間外勤務を示すものではありません。[出典4]

全社平均ではかなり低い水準です。

一方、従業員口コミを見ると案件差があります。

2026年8月のプログラマ職の投稿には、

「プロジェクトによって残業時間に大きく差があり、人によってはほぼ残業なしで働いている方もいるが、36協定ギリギリの方もおり、不公平感を感じていた。」

とあります。[出典21、情報ランクB]

2026年7月のネットワーク・サーバ系職種の投稿には、

「ハズレ案件になると残業時間は80時間超えますし、休日対応や顧客の要望で深夜から夜明けの対応になります。 体内時計は狂います。」

とあります。[出典21、情報ランクB]

個人投稿を会社全体へ一般化はしませんが、ITサービスでは納期や顧客障害対応によって一部案件へ負担が集中するリスクを、富士通自身も人権上の課題として認識しています。[出典7]

全体の低い残業と休日日数を評価しつつ、案件差が残るため8/10点としました。

10点へ上げるには、有給取得率を90%以上へ引き上げ、職種・プロジェクト別の平均残業、月45時間超・60時間超・80時間超の人数を公開し、特定案件でも長時間労働が常態化していないことを確認する必要があります。

雇用の安定・待遇の公平性:3/5点

平均勤続年数は17.6年です。労働組合もあり、富士通グループでは約4万3,000人が組織され、会社は主要な春季交渉事項は解決し、労使関係は安定しているとしています。[出典2]

一方、女性管理職比率は13.1%です。

正規雇用の男女賃金比率は78.2%、全労働者では79.2%です。[出典3]

さらに、富士通単体の従業員数は2025年3月末の34,850人から2026年3月末の32,224人へ2,626人減少しました。

会社は主な理由として、新設分割による1FINITY株式会社の設立に伴う人員移動と、事業ポートフォリオに合わせた人材流動化を挙げています。[出典2]

したがって2,626人全員を解雇と扱うことはできません。

一方、2024年度には間接支援部門の管理職層などを対象に社外へのキャリア転身を支援する制度を拡大し、約385億円の人材ポートフォリオ変革関連費用を計上しています。会社は早期退職を「単純な人員削減」ではなくキャリア転身支援と説明していますが、雇用構造が大きく変化していることは事実です。[出典14]

長期勤続と安定した労使関係を評価する一方、男女登用差と大規模な人材流動化があるため3/5点としました。

4点へ上げるには、女性管理職比率を20%以上、正規雇用の男女賃金比率を90%以上へ改善し、人材流動化の際も希望退職、配置転換、再教育、社外転身、非自発的離職を区別して継続公開する必要があります。

福利厚生・育児・介護:5/5点

富士通は年20日の有給休暇に加え、育児・介護のための制度を幅広く設けています。

配偶者・パートナーの出産前後には最大20日の出産サポート休暇があり、条件に応じて子が2歳を過ぎた最初の4月20日まで育児休職を延長できます。育児短時間勤務は小学校6年生まで利用できます。介護休職は最長1年間です。[出典5]

2026年3月期の男性育児休業等取得率は94.1%です。[出典3]

制度だけでなく9割を超える利用結果が確認できるため5/5点としました。

満点項目ですが、今後は男女とも高い取得率と復職・定着率を維持することが重要です。

人権・ハラスメント・労使関係:4/5点

富士通グループは国連「ビジネスと人権に関する指導原則」やILOの基本的原則を踏まえ、人権デューデリジェンスを実施しています。[出典7]

日本国内のグループ社員向けには「人権相談窓口」を設置し、ハラスメントを含む相談を受け付けています。

さらに2023年から、従業員以外も利用できる第三者機関JaCERの「対話救済プラットフォーム」に参加しています。社内だけで処理せず外部窓口も持つことで、取引先やその他の関係者が企業へ直接言いにくい問題を申し出る経路が増えます。[出典7]

長時間労働とハラスメントを従業員に関する重要な人権リスクとして明示している点も評価できます。

一方、富士通株式会社単体について、年間のハラスメント相談件数、認定件数、是正件数、再発率を継続比較できる詳細な公開表はありません。

制度と第三者窓口を評価して4/5点としました。

5点へ上げるには、プライバシーを守ったうえで対象法人単体の相談・調査・認定・是正件数を毎年公開し、相談後の再発防止が機能していることまで確認できる必要があります。

労働安全・健康:8/10点

富士通株式会社単体の労働災害度数率は、2022年0.03、2023年0.09、2024年0.13、2025年0.08と低い水準で推移しています。強度率は継続して0.00です。[出典6]

度数率は100万労働時間当たりに休業災害がどれだけ起きたかを見る指標で、0.08なら休業を伴う事故の発生頻度は低いと評価できます。

また、グループでは重大労災ゼロを目標に健康・安全教育や事故発生時の調査・再発防止を行っています。[出典6]

強度率0.00は、事故によって失われた労働日数が極めて少ない状態を示します。

一方、度数率自体は0ではなく、2024年には0.13まで上昇していました。事故原因別件数や職種別の負傷状況も十分には公開されていません。

そのため8/10点としました。

10点へ上げるには、度数率・強度率0.00に近い水準を複数年継続し、事故原因、職種別件数、再発防止後の推移まで公開する必要があります。

商品・サービスの安全:3/5点

富士通はCQOを置き、システム品質と情報セキュリティを経営上の重要リスクとして管理しています。開発工程の進捗、テスト密度、不具合検出などを集約し、AIで品質リスクを予測する仕組みも進めています。[出典16]

社会インフラに使われるITでは、システムの誤作動が単なる使いにくさではなく、個人情報や行政手続きに直接影響するため、品質管理には大きな意味があります。

一方、2024年4月、高松市で富士通Japanが提供する「Fujitsu MICJET コンビニ交付」において、申請者とは異なる住民の住民票が発行されました。

この事案を受け、総務省は子会社だけでなく富士通株式会社に対しても、原因究明と再発防止対策の徹底について書面指導を行いました。[出典17]

さらに英国Post OfficeのHorizon問題では、システムを担当した直接の法人は英国子会社Fujitsu Services Limitedです。富士通株式会社単体のサービス事故として扱いません。

ただし英国政府の2025年10月の文書では、法定調査報告書の「Fujitsu」がFujitsu Services LimitedとFujitsu Limitedの両方を含むと明記されました。富士通側も被害を受けた郵便局長らへの謝罪と、修復的司法プログラムへの参加を進めています。[出典19]

品質管理を強化していることを加点する一方、重要な社会システムで実際に品質問題が発生し行政指導を受けているため3/5点としました。

4点へ上げるには、行政指導後の再発防止策について、重大誤処理件数や品質事故率を年度別に公開し、同種事故が複数年発生していないことを確認する必要があります。

従業員・元従業員の口コミ

口コミでは、富士通全体について「柔軟に休める」という評価と「案件によって長時間労働になる」という評価の両方があります。

2026年6月の品質管理職の投稿には、

「急な年休(私用、病欠等)でも、上司・同僚がカバーしてくれるので安心です。もちろん、計画的な年休もOK。」

とあります。[出典21、情報ランクB]

一方、2026年8月のプログラマ職は、

「プロジェクトによって残業時間に大きく差があり、人によってはほぼ残業なしで働いている方もいるが、36協定ギリギリの方もおり、不公平感を感じていた。」

と投稿しています。[出典21、情報ランクB]

2026年7月のネットワーク・サーバ系職種では、

「ハズレ案件になると残業時間は80時間超えますし、休日対応や顧客の要望で深夜から夜明けの対応になります。 体内時計は狂います。」

との投稿があります。[出典21、情報ランクB]

公式平均だけを見ると低残業ですが、プロジェクト型のIT企業では案件による偏りを同時に見る必要があります。

SNS・匿名掲示板の確認結果

X、5ちゃんねる、爆サイについて、「富士通」「残業」「退職」「AI」「人員削減」「配置転換」「パワハラ」などを組み合わせて別工程で確認しました。

今回の検索範囲では、投稿者と対象法人との関係を確認でき、採点根拠として使える本文付き投稿は確保できませんでした。

有用な投稿を確保できなかったこと自体は加点・減点には使いません。

Innovation:24/25点

Innovationは富士通の最大の強みです。

同社はAIを顧客へ販売するだけでなく自社業務へ大規模導入し、約92万時間相当の効率化を測定しています。さらにシステム開発、モダナイゼーション、顧客の人事業務などでも具体的な作業時間削減を進めています。

一方、効率化した92万時間すべてが残業削減や休暇増加へ移ったかまでは公表されていないため、人への還元のみ満点としていません。

作業負担・危険の削減:10/10点

富士通は2023年5月から全社員が生成AIを利用できる環境を整備しました。

2024年の技術戦略資料では、

・生成AI利用は1日約17万回
・月間利用者約3万5,000人
・356組織から1,100人がAIタスクフォースへ参加
・最初の1年間で約92万時間相当の業務効率化効果

を公表しています。[出典9]

コード生成、提案書、レポート、アンケート分析など、従来は社員が画面上で繰り返していた作業をAIが補助します。

92万時間相当の削減規模を実測・分析しているため10/10点としました。

今後も満点を維持するには、AIによる効率化が品質低下や過度な監視につながらず、人の負担削減として継続することが必要です。

商品・サービスの改善:5/5点

富士通はAIをシステム開発そのものにも組み込んでいます。

生成AIを使ったアプリケーションモダナイゼーションでは、コード解析、変換、テスト、文書化などを自動化し、開発者が設計や判断へ時間を移せる仕組みを拡大しています。[出典10]

AIを使ったシステム更新では、古いシステムを人が一行ずつ解析・書き換える時間を減らせます。

富士通の顧客事例でも、システムや人事などの大量処理を自動化し、担当者が例外対応や判断に集中する方向が確認できます。

自社の生産性だけでなく顧客側の作業時間も削減するサービスを継続的に実用化しているため5/5点としました。

改善成果の人間への還元:4/5点

約92万時間の効率化は、単なるAI導入件数ではなく、人が使っていた時間が減ったことを測った成果です。[出典9]

富士通は社内ポスティング制度も大規模に運用しており、中期経営計画では年間約3,000人が社内で職務移動する仕組みを示しています。[出典13]

Career Ownership Programでは、社内公募、社内インターン、キャリア相談、学習プラットフォームなどを用意しています。[出典13]

AIによって作業内容が変わる人に、別の仕事や学習機会を用意する仕組みがあることは評価できます。

一方、92万時間の削減後に、

・総実労働時間が何時間減ったか
・残業が何時間減ったか
・休日や有給がどれだけ増えたか
・給与がAI生産性向上によって何%増えたか
・何人がAIによる業務変更後に配置転換されたか

という直接的な因果は公表されていません。

また2024年度には社外へのキャリア転身支援も大規模に実施されています。[出典14]

そのため4/5点としました。

5点へ上げるには、AI導入部署ごとに削減時間と残業・休日・賃金・配置転換を同じ時系列で示し、効率化の成果が広い社員層の自由時間や所得へ継続して返ったことを確認できる必要があります。

研究開発・現場改善の継続:5/5点

富士通はAI、量子・スーパーコンピューティング、ネットワーク、データ・セキュリティなどへ継続的に研究開発投資を行っています。

生成AIについても、一時的な実証で終わらず、全社利用、AIエージェント、システム開発、モダナイゼーションへ範囲を広げています。[出典9・10]

100年近い企業活動の中で研究開発を継続し、現在も新しいAI・コンピューティング技術を実用化しているため5/5点としました。

自動化・AI導入後の雇用状況

AI導入後の雇用は、富士通を評価するうえで重要です。

富士通単体の従業員数は2025年3月末34,850人から2026年3月末32,224人へ2,626人減少しました。[出典2]

有価証券報告書では、主な理由を1FINITY株式会社の新設分割に伴う人員移動と、人材ポートフォリオ変革に伴う人材流動化と説明しています。[出典2]

したがって、この2,626人減少を「AIによる解雇」と結びつける根拠はありません。

一方、2024年度には間接支援部門の管理職などを対象とする社外キャリア転身支援を拡大しました。富士通は生産性向上を目的とする早期退職を含む施策であると説明し、同時に直接部門では再配置・リスキリングを行っています。[出典14]

さらに社内では年間約3,000人規模のポスティングによる職務移動があります。[出典13]

現時点では、

AI導入 → 直接的な大量解雇

という因果は確認できません。

一方で、AI・DX・事業ポートフォリオ改革と並行して人材流動化が大規模に進んでいるため、今後はAIで自動化された職種の人数、配置転換、採用抑制、社外転身を継続的に確認する必要があります。

Protection:19/25点

Protectionでは、地震、停電、データセンター障害、サイバー攻撃などが起きたときにも、企業・行政・市民が使うITを維持・復旧できるかを評価します。

富士通は全社防災訓練、BCP、重大インシデント訓練、サイバー対策を継続しており、この軸は強い企業です。一方、2024年には実際にマルウェアが社内PC49台へ影響しており、個別サービスの復旧時間や代替能力の公開にも改善余地があります。

災害への備え・訓練:5/5点

富士通はBCPを策定し、全社、対策本部、事業所、従業員など複数階層で災害訓練を行っています。首都直下地震、南海トラフ地震などを想定した合同訓練も実施しています。[出典15]

情報セキュリティの重大インシデント訓練では、日本と海外を接続し、初動、情報共有、顧客対応、個人情報漏えい、メディア対応まで確認しています。[出典15]

例えば首都圏で大地震が起き、本社やデータセンターの一部が使いにくくなった場合でも、初めて連絡方法を考えるのではなく、訓練済みの対策本部・地域連携体制で判断を始められます。

BCPの存在に加えて実際の訓練が繰り返されているため5/5点としました。

満点維持には、想定する災害を更新しながら実地訓練と改善を継続する必要があります。

生産・物流・調達の代替:3/5点

富士通は国内外にデータセンター、開発拠点、サービス拠点を持ち、サプライチェーンについてもBCMを実施しています。[出典15]

IT企業では、特定の拠点が使えなくなった場合に別拠点やクラウドへ切り替えられれば、顧客企業の業務停止を短くできます。

一方、現在の主要サービスごとに、

・どの拠点が代替するのか
・何%の能力を代替できるのか
・部材・機器の複数調達比率
・切替に何時間かかるのか

という統一的な公開情報は限られています。

拠点分散とBCMを評価して3/5点としました。

4点へ上げるには、主要サービス・ハードウェアごとに代替拠点、切替時間、代替可能率を公開し、訓練結果まで示す必要があります。

サイバー防衛・情報保護:4/5点

富士通はCISOを中心とした情報セキュリティ体制、NISTを参考にしたリスクマネジメント、脆弱性管理、セキュリティ教育、インシデント訓練などを行っています。[出典16]

インシデントを完全に防げる前提ではなく、発生時の対応力も高める方針を採っています。

一方、2024年には富士通自身の業務PC1台を起点とするマルウェアが拡散し、感染端末と情報転送の対象を合わせて49台へ影響しました。[出典18]

一部ファイルでは複製指示が実行され、個人情報や顧客業務情報を含むファイルが持ち出されたおそれがあるとして対象顧客へ報告しました。

顧客向けクラウドサービス管理端末ではなく、顧客環境への拡大も確認されず、公表時点で悪用報告もありませんでした。富士通は端末隔離・初期化、攻撃元サーバとの接続遮断、全業務PCへの新しい監視ルール適用などを実施しました。[出典18]

高度な防御・対応体制を評価する一方、実際の侵入と情報持ち出しのおそれが発生しているため4/5点としました。

5点へ上げるには、同様の重大インシデントを複数年再発させず、インシデント件数、検知時間、封じ込め時間、復旧時間を定量公開する必要があります。

供給継続・復旧能力:4/5点

富士通はBCMを使って、災害や重大障害時にも製品・サービスを継続供給する仕組みを整えています。データセンター障害や重大インシデントを想定した訓練も行っています。[出典15]

例えば自治体や企業のシステムが災害で使えなくなった場合、富士通側の保守・クラウド・代替運用が早く立ち上がれば、市民サービスや企業活動を早く再開できます。

2026年の熊本地震では、災害救助法適用地域の法人顧客に対し、被災した対象製品の特別修理サービスを実施しました。[出典20]

一方、主要サービス別のRTO・RPOや、直近の重大障害で目標時間内に復旧できた割合について統一的な公開は不足しています。

そのため4/5点としました。

5点へ上げるには、重要サービス別の目標復旧時間と実測値を公開し、大規模障害・訓練でも目標内復旧を継続する必要があります。

危機時の市民への対応:3/5点

富士通は災害時に顧客システムの復旧支援や特別修理サービスを行っています。

2026年の熊本地震では、災害救助法適用地域の法人顧客を対象に、被災したSupportDesk対象製品の特別修理を実施しました。[出典20]

例えば地震で病院、自治体、企業のサーバや端末が壊れた場合、修理費・受付条件を平時と同じにして復旧を遅らせるのではなく、災害対応の特別窓口を設けることで業務再開を支援できます。

過去の能登半島地震でもグループとして自治体への寄付や従業員募金を行っています。[出典20]

一方、自治体とあらかじめ「災害時に何人・何台・どのシステムを何時間以内で提供する」と定めた広範な市民向け協定や、支援人数・復旧件数の統一KPIは十分に公開されていません。

実際の災害支援を評価して3/5点としました。

4点へ上げるには、自治体・医療・生活インフラ向けの災害支援協定を拡大し、緊急派遣人数、復旧件数、復旧時間を公開する必要があります。

良いニュース・最近の前向きな動き

富士通の最近の前向きな動きでは、生成AIを実際の作業時間削減へ結びつけたInnovationと、育児支援・安全・BCPの継続が目立ちます。

富士通のITサービスを選ぶ企業や行政が、人の単純作業削減、AIの安全利用、災害時の継続性を求めれば、IT投資が「システムを新しくすること」から「人の時間を増やし、有事にも生活を止めにくくすること」へ向かいやすくなります。

生成AIで約92万時間相当の作業効率化【Innovation】

富士通は全社生成AI基盤を整備し、最初の1年間で約92万時間相当の業務効率化効果を測定しました。[出典9]

1人年間2,000時間換算なら約460人分に相当する規模です。

コード生成、提案、レポート、アンケート分析などの時間を減らすことで、社員が顧客との対話、設計、判断、学習に時間を移せる余地が生まれます。

この削減時間を実際の残業減少や休暇へさらに結びつければ、AIによる生産性向上が働く人の生活改善へ直接つながります。

2026年3月期|平均年間給与が前年比9.0%増【Safety】

単体平均年間給与は9,291,084円から10,122,665円へ9.0%増えました。[出典2]

平均値なので全社員が9%昇給したことを意味しません。

それでも平均給与が約83万円増加したことは、人材獲得・維持のために高い報酬水準を用意している材料になります。

今後、基本給の上昇率や中央値まで公開すれば、利益がどの層へ返ったのかをさらに確認できます。

2026年|男性育児休業等取得率94.1%【Safety】

2026年3月期の男性育児休業等取得率は94.1%でした。[出典3]

ほぼ全員に近い男性が育児関連の休みを取得できる状態は、育児を女性だけに集中させにくくします。

父親が出生直後の育児へ参加できれば、パートナーの負担を減らし、男性本人も仕事か家庭かの二択を迫られにくくなります。

悪いニュース・問題となった動き

富士通では、システム品質とサイバーセキュリティについて実際の重大問題が発生しています。

ITは行政手続きや個人情報を直接扱うため、一つのシステム不具合や侵入が利用者の権利・生活へ影響します。改善されなければ「人の仕事を楽にする技術」が、逆に誤処理、情報漏えい、被害者対応を増やすことになります。

2024年|コンビニ交付の誤交付で総務省から書面指導【Safety】

高松市で、富士通Japanの「Fujitsu MICJET コンビニ交付」により申請者とは異なる住民の住民票が発行されました。

これを受けて総務省は2024年4月、富士通株式会社に対し原因究明と再発防止対策の徹底を文書で指導しました。[出典17]

住民票には個人情報が含まれます。

別人の証明書が発行されれば、利用者は行政サービスを安心して使えず、個人情報保護にも直接影響します。

システム品質を改善し、同種事故の件数を長期的にゼロへ抑えられるかを確認する必要があります。

2024年|業務PC49台へマルウェアの影響【Protection】

富士通は2024年7月、社内PC1台を起点としたマルウェアについて調査結果を公表しました。

影響を受けたPCは49台で、一部の個人情報・顧客業務情報を含むファイルについて持ち出されたおそれがあるとして顧客へ連絡しました。[出典18]

顧客環境への侵入は確認されず、公表時点で情報悪用の報告もありませんでした。

それでも世界的なIT企業自身の社内ネットワークへ侵入が起きたことは、サイバー防衛上の明確な課題です。

富士通は全業務PCへ監視ルールを追加するなど再発防止策を実施しており、今後はその後の重大侵入件数や検知・封じ込め時間まで公開してほしいところです。

英国Post Office Horizon問題への対応継続【Safety・ガバナンス】

英国Post OfficeのHorizonシステム問題は、直接のシステム提供主体が英国子会社Fujitsu Services Limitedであり、富士通株式会社単体の事業事故として扱いません。

一方、英国政府の法定調査ではFujitsu Limitedも修復的司法の対象となる「Fujitsu」に含むと明記され、富士通側も被害者への謝罪、修復的司法プログラム、補償に向けた英国政府との協議へ参加しています。[出典19]

2026年3月には英国政府、Post Office、Fujitsuが修復的司法プログラムを最大5年間支援することを公表しました。

長期にわたり人へ重大な影響を与えたシステム問題であるため、補償だけでなく「同様の品質・説明・ガバナンス問題をどう防ぐのか」を示し続ける必要があります。

総合評価と、これから改善してほしいこと

富士通株式会社は現在82点、シビックランクAです。

次のSランクは90点からなので、あと8点必要です。

平均給与、育児支援、労働安全、AIによる時間削減、研究開発、BCPは非常に強い企業です。一方、Sランクへ進むには、AIの生産性を人の自由時間へさらに還元し、男女の職責差を縮め、社会インフラシステムの品質とサイバー復旧について「事故後に対策した」状態から「高い安全成果を継続している」状態へ進む必要があります。

プロジェクトごとの長時間労働を減らしてほしい【Safety・労働時間・休息:8→10/10点】

現在の「労働時間・休息」は8/10点です。

年間休日126日、全体では低い法定時間外労働を確認できる一方、2026年の社員口コミでは案件によって36協定上限付近や月80時間超との投稿があります。[出典4・21]

企業が実行してほしいことは、全社平均だけでなくプロジェクト・職種別の残業を管理し、

・有給取得率90~95%以上
・月60時間超の法定外労働者を0%に近づける
・月45時間超の人数を継続的に減少
・障害対応後に必ず代休・休息を取得

という状態を作り、結果を公開することです。

達成できれば8→10点、プラス2点です。

総合点は82→84点となります。

参考企業は株式会社三井住友銀行です。Google Drive上の現行審査では、有給取得率95.5%、平均取得19.1日、月平均法定外労働13.3時間、月60時間超比率0%を公開し、「労働時間・休息」10/10点、総合81点・Aです。

女性管理職と男女賃金差を改善してほしい【Safety・雇用の安定・待遇の公平性:3→4/5点】

現在は3/5点です。

女性管理職比率13.1%、正規雇用の男女賃金比率78.2%です。[出典3]

会社は同一職責で賃金差はないと説明しているため、中心課題は女性が高い職責へ進む人数構成です。

女性管理職を20%以上へ引き上げ、正規雇用の男女賃金比率を90%以上へ近づけ、職責別の昇進率まで公開して差の縮小を確認できれば3→4点、プラス1点を想定します。

総合点は82→83点です。

参考企業は株式会社大丸松坂屋百貨店です。Google Drive上の現行審査では女性管理職比率31.0%を確認でき、「雇用の安定・待遇の公平性」4/5点、総合72点・Bです。業種は異なりますが、女性が実際に管理職へ到達している割合を確認できる点が参考になります。

AIで削減した92万時間を残業・休暇・賃金へ直接返してほしい【Innovation・改善成果の人間への還元:4→5/5点】

現在は4/5点です。

約92万時間相当の業務効率化は非常に大きな成果ですが、「92万時間減ったため社員の年間総労働時間が何時間減った」という直接比較はまだありません。[出典9]

AI導入部署について、

・導入前後の残業
・年間総実労働時間
・有給取得
・賃金
・必要人数
・配置転換人数
・社外転身人数
・新規採用人数

を同一時系列で公開し、残業減少、休日増加、賃上げ、より高度な仕事への配置転換が複数年継続して確認できれば4→5点、プラス1点を想定します。

総合点は82→83点です。

参考企業はキリンビバレッジ株式会社です。Google Drive上の現行審査では、最大約25kgの茶葉原料をロボットへ移し、物流自動化では生産性42%向上と人員の別業務への再配置を確認でき、「改善成果の人間への還元」4/5点、総合74点・Bです。富士通は効率化規模ではさらに大きいため、次は人の働き方へ返った結果まで示せれば満点を狙えます。

システム品質・サイバー・復旧力を事故後の成果まで示してほしい【Safety・Protection:合計+4点】

現在は、

・商品・サービスの安全:3/5点
・サイバー防衛・情報保護:4/5点
・供給継続・復旧能力:4/5点

です。

コンビニ交付の誤交付で行政指導を受け、2024年にはPC49台にマルウェアの影響がありました。[出典17・18]

企業が実行してほしいことは、

・重大な誤交付・誤処理を複数年ゼロにする
・重要システムの品質事故件数を毎年公開する
・重大サイバー事故を複数年ゼロにする
・検知から隔離までの時間を公開する
・重要サービスごとにRTO・RPOを設定する
・障害・訓練で目標時間内に復旧した割合を公開する

ことです。

品質事故の再発がなく成果を継続できれば「商品・サービスの安全」3→5点でプラス2点、サイバーインシデントが低水準で復旧実績まで確認できれば「サイバー防衛・情報保護」4→5点でプラス1点、「供給継続・復旧能力」4→5点でプラス1点、合計プラス4点を想定します。

この3項目だけなら82→86点です。

参考企業は株式会社セブン&アイ・ホールディングスです。Google Drive上の現行審査では7&i CSIRT、年2回以上のサイバー訓練、脆弱性対策、不正アクセス検知などを確認し、「サイバー防衛・情報保護」5/5点です。またBCP訓練・演習を2024年度9回実施し、「災害への備え・訓練」5/5点としています。

次のSランクへ上がるための具体例

現在82点・Aで、Sは90点からです。あと8点必要です。

具体的には次の改善を同時に進めます。

・プロジェクト・職種別の長時間労働を減らし、有給取得率90~95%以上、月60時間超の法定外労働者を0%に近づける。労働時間・休息8→10点、プラス2点。参考企業は三井住友銀行。

・女性管理職比率を20%以上、正規雇用の男女賃金比率を90%以上へ近づける。雇用の安定・待遇の公平性3→4点、プラス1点。参考企業は大丸松坂屋百貨店。

・AI導入部署で、92万時間相当の効率化が残業削減、休暇増加、賃上げ、配置転換へ実際につながった結果を継続公開する。改善成果の人間への還元4→5点、プラス1点。参考企業はキリンビバレッジ。

・コンビニ交付などの重大品質事故を複数年ゼロとし、品質事故件数を公開する。商品・サービスの安全3→5点、プラス2点。

・2024年のマルウェア事案後、重大インシデントを複数年抑え、検知・隔離・復旧時間とRTO達成率を公開する。サイバー防衛4→5点、供給継続・復旧能力4→5点で合計プラス2点。参考企業はセブン&アイ・ホールディングス。

以上を二重加点せず合計すると、

82+2+1+1+2+2=90点

となり、シビックランクSへ到達します。

つまり富士通が次のランクへ上がるために必要なのは、AIの効率化規模をさらに大きくすることよりも、すでに生み出している時間を社員の自由時間・待遇へ明確に返し、男女の職責差を縮め、社会インフラシステムとサイバー防御で重大事故を再発させないことです。

出典一覧

出典情報源主な確認内容情報ランク
出典1富士通 会社概要・企業情報事業領域、拠点、連結人員A
出典22026年3月期 有価証券報告書単体32,224人、平均給与10,122,665円、勤続17.6年、人員減少理由、労働組合S
出典32026年3月期 有価証券報告書・人的資本開示女性管理職13.1%、男性育休94.1%、男女賃金差S
出典4厚労省公表値を整理した労働データ法定時間外労働、有給取得率B
出典5富士通採用・Work Life Shift年休、勤務時間、有給、育児・介護制度A
出典6富士通「安全衛生」労災度数率・強度率、安全活動A
出典7富士通「人権」人権DD、ハラスメント、相談窓口、JaCERA
出典8富士通「コンプライアンス」内部通報・グローバルコンプライアンスA
出典9富士通 テクノロジー戦略説明会生成AI約17万回/日、約3.5万人利用、約92万時間効率化A
出典10富士通 AI・モダナイゼーション資料AIによる開発・移行工程自動化A
出典11富士通 顧客向けAI・DX事例顧客業務の時間・工程削減A
出典12富士通 研究・技術戦略AI・コンピューティング等の継続開発A
出典13富士通 人材戦略・Career & Growth年約3,000人の社内職務移動、リスキリング、キャリア支援A
出典14富士通 決算説明・統合報告2024年度のキャリア転身支援・人材ポートフォリオ改革A
出典15富士通「リスクマネジメント」BCP、防災・重大インシデント訓練A
出典16富士通「情報セキュリティ」「品質」セキュリティ管理、訓練、品質ガバナンスA
出典17富士通・総務省関係資料コンビニ交付誤交付と2024年の書面指導S・A
出典18富士通 2024年マルウェア調査結果PC49台、情報持ち出しのおそれ、再発防止A
出典19英国政府・富士通関連資料Horizon問題、謝罪、修復的司法プログラムS
出典20富士通 災害支援・特別修理熊本地震等の災害時支援A
出典21転職会議・Indeed等案件別残業、休暇等の従業員口コミB

シビックランクの基準

シビックランク総合得点
S90~100点
A80~89点
B70~79点
C60~69点
D50~59点
E40~49点
F20~39点
G0~19点

情報ランクの基準

情報ランク基準
S公的機関、裁判所、規制当局、独立した第三者機関の調査・監査・検証・認証など、内容そのものに独立した裏づけがある情報
A企業公式資料、採用情報、公式声明・SNS、氏名・役職・立場を確認できる記名取材や公表発言など、発信主体を確認できる公表情報
B従業員・元従業員の口コミ、一般SNS、匿名掲示板など、発信者の身元や対象企業との関係を独立して確認しにくい情報

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