私たちは、企業の商品を購入したり、サービスを利用したりすることで、そこで働く人たちの未来を変えることができます。
働く人に十分な賃金を払い、休暇を確保し、安全な職場をつくり、人の負担を減らす企業の商品やサービスが選ばれれば、そうした企業により多くの売上が集まります。その結果、働く人を大切にする経営を続けやすくなります。
反対に、低賃金や長時間労働、安全上の問題を改善しない企業の商品やサービスが売れ続ければ、そうした働かせ方のままでも事業を続けることができます。
だからこの企業審査では、「私たちがお金を使うなら、どの企業を選ぶことが、そこで働く人にとってより良い社会につながるのか」という視点から企業を評価します。
なぜ企業を審査するのか?――このサイトの目的と、利用するメリット
今回審査する丸紅株式会社は、総合78点、シビックランクBです。
丸紅株式会社の特に強い点は、生成AI「Marubeni Chatbot」で丸紅単体の業務を年換算10万時間削減する実績を公表していることです。そのため、この企業の商品を購入したりサービスを利用したりすれば、翻訳・議事録・文章作成・情報検索などの反復業務をAIへ移し、人が判断・改善・顧客対応や自由時間へ使える時間を増やす社会につながる可能性が高まります。
一方で、改善点として男女賃金比率61.5%、女性管理職比率10.4%という格差が残り、AIで削減した時間が残業・休日・賃金へどれだけ直接還元されたかの開示も十分ではありません。
この記事では、丸紅株式会社の強みと課題をさらに詳しく企業審査していきます。
丸紅株式会社の企業審査結果
丸紅は、食料・アグリ、金属、エネルギー・化学品、電力・インフラ、金融・不動産、航空・モビリティ、情報ソリューションなどを世界規模で扱う総合商社です。2026年3月末の丸紅単体従業員数は4,225人、平均年間給与は1,784万3,699円で前年比4.4%上昇しました。月平均残業16.7時間、有給取得率71.4%、育児休業等取得率93.2%、育休復職率98.7%など、人への還元を数字で開示している点を評価します。[出典1~4]
Innovationでは、丸紅単体で生成AIにより年換算10万時間の業務削減を実現した実績を高く評価します。2026年には丸紅グループの生成AI基盤「まるちゃ」が月間1万人以上に使われる規模へ広がり、社外提供も始まりました。[出典9・10]
Protectionでは、オールハザード型BCP、常設のBCM対策室、社長をトップとする緊急対策本部、CIOを中心とした情報セキュリティ体制を評価します。一方、主要業務のRTO・RPO、実際の復旧訓練時間、代替拠点への切替実績の定量開示は不足しています。[出典11]
| 評価軸 | 点数 |
|---|---|
| Safety | 39/50 |
| Innovation | 22/25 |
| Protection | 17/25 |
| 総合点 | 78/100 |
| シビックランク | B |
評価時点:2026年10月8日
主な強み
・丸紅単体の平均年間給与1,784万3,699円、前年比4.4%増
・月平均残業16.7時間、有給休暇取得率71.4%
・育児休業等取得率93.2%、男性91.9%、育休復職率98.7%
・2026年3月期の業務上死亡災害0名
・健康経営銘柄2026に4年連続5度目、ホワイト500に9年連続認定
・内部通報54件を件数まで公開し、外部弁護士を含む相談窓口を整備
・人権デューデリジェンスと社外からも使える救済メカニズムを運用
・Marubeni Chatbotで丸紅単体の業務を年換算10万時間削減
・丸紅グループの生成AI基盤「まるちゃ」は月間アクティブユーザー1万人以上
・2027年度新卒採用、通年のキャリア採用を継続
・2022年からオールハザード型BCPを導入
・常設BCM対策室と社長をトップとする緊急対策本部を整備
・CIOを中心とする情報セキュリティ委員会とインシデント対応チームを整備
・2026年熊本地震に1,000万円を拠出し、役員・社員からも義援金を募集
・食品分野では仕入先チェック、工場監査、残留農薬検査、表示研修を実施
主な課題
・男女賃金比率は全労働者61.5%、正規雇用61.9%、パート・有期48.9%
・女性管理職比率10.4%、部長級以上では2.6%
・2026年3月期の離職率が3.0%から4.9%へ上昇
・休業災害度数率が2025年3月期0から2026年3月期0.19へ悪化
・怪我や死亡に至る業務上の事故・事件が0件から2件へ増加
・AIによる削減時間と、実際の残業・休日・賃金・配置転換との因果を十分に開示していない
・単体従業員数は4,337人から4,304人、4,225人へ減少しているが、AI導入との因果を判断できる工程別雇用データがない
・RTO、RPO、主要業務の実測復旧時間、BCP訓練達成時間の公開が不足
・MFA、EDR、オフラインバックアップ等の全社実装状況を外部から比較できる情報が限定的
・事業分野が極めて広く、全商品・サービスを横断した重大品質事故KPIを一つの指標で確認できない
事業内容と人間への貢献
丸紅株式会社は1858年創業、1949年12月1日設立の総合商社です。2026年3月末の資本金は2,637億1,100万円、単体従業員数は4,225人です。2026年4月1日時点で国内外121拠点を持ち、連結では子会社324社、関連会社153社、従業員5万2,658人の事業網を形成しています。[出典1・2]
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 会社名 | 丸紅株式会社 |
| 英文名 | Marubeni Corporation |
| 創業 | 1858年5月 |
| 設立 | 1949年12月1日 |
| 代表者 | 取締役 代表執行役社長 大本晶之 |
| 本社 | 東京都千代田区大手町一丁目4番2号 |
| 資本金 | 2,637億1,100万円、2026年3月31日 |
| 単体従業員数 | 4,225人、2026年3月31日 |
| グループ従業員数 | 52,658人、2026年3月31日 |
| 拠点数 | 121拠点、2026年4月1日 |
| 主な分野 | ライフスタイル、食料・アグリ、金属、エネルギー・化学品、電力・インフラ、金融・リース・不動産、エアロスペース・モビリティ、情報ソリューション等 |
主な事業内容
丸紅の仕事は「物を仕入れて売る」だけではなく、原料や製品の調達、物流、金融、事業投資、発電・インフラ開発、資源開発、企業経営、デジタル化などを組み合わせることです。
例えば食料・アグリ分野では、生産者や加工業者から食品・原料を調達し、品質を確認して販売先へつなぎます。電力・インフラ分野では、発電設備や社会インフラへ資金・技術・運営能力を投入します。航空・モビリティでは航空機、船舶、自動車・建機等の流通や事業運営へ関わります。情報ソリューションでは、企業のIT、AI、ネットワーク、データ活用を支援します。[出典1・14]
主な利用企業・取引先
丸紅の顧客は、食品メーカー、小売、資源・素材企業、電力・インフラ事業者、金融機関、交通・航空関連企業、IT利用企業、政府・自治体など多岐にわたります。
個々の取引先名を羅列するよりも重要なのは、原料調達、資金、設備、物流、デジタル技術を組み合わせ、顧客企業が単独では構築しにくい供給網や事業を組成する点です。
事業による人間への貢献
総合商社の人間への貢献は、生活に必要な物やサービスを「つなぐ」ことにあります。
例えば海外から食品原料を調達する場合、利用企業が一社ずつ海外農場、加工工場、船会社、保険、為替、品質検査を手配するのは大きな負担です。丸紅が調達先を探し、品質を確認し、物流・契約・金融まで組み合わせれば、食品メーカーや小売は必要な原料を継続的に確保しやすくなります。
電力・インフラ事業では、発電所や交通・社会設備の建設・運営へ資金と事業管理を提供します。市民にとっては、電気や移動手段など生活基盤を利用できることにつながります。
2026年のCEOメッセージでも、顧客のコスト・時間削減、売上・利便性向上を「顧客視点の付加価値」と位置付けています。さらに本社業務をAIでリーン化し、顧客価値を考える時間へ移す方針を示しています。[出典15]
Safety|39/50
Safetyでは、丸紅単体で働く4,225人の賃金、労働時間、公平性、育児・介護、人権、労災と、丸紅が扱う商品・サービスの安全管理を評価します。平均年間給与1,784万円、残業16.7時間、育休取得率93.2%、死亡災害0など高い実績があります。一方、男女賃金差、管理職の男女差、2026年3月期の休業災害悪化が満点を妨げています。[出典2~7]
賃金・利益の還元|8/10
2026年3月期の丸紅単体の平均年間給与は1,784万3,699円です。2025年3月期の1,708万7,936円から75万5,763円増え、4.4%上昇しました。平均年間給与には賞与と基準外賃金が含まれます。[出典2・3]
前年と比べて平均給与が上昇しているため、利益・事業成長が働く人の収入にも一定程度返っていると評価できます。高い固定・変動報酬を得られれば、住宅、教育、介護、貯蓄など生活上の選択肢を広げられます。
一方、平均値は高所得層の影響を受けます。等級別の賃金中央値、固定給の全社員ベースアップ率、非管理職・管理職別の給与分布までは同じ水準で公開されていません。男女賃金差も大きく残ります。
そのため8/10点です。男女・職種・等級・雇用形態をそろえた中央値を開示し、広い層で固定給上昇が継続し、同一職務での賃金差が小さいことまで確認できれば10/10点を検討できます。
労働時間・休息|8/10
2026年3月期の年間平均総実労働時間は2,008.6時間、月平均残業は16.7時間、有給休暇取得率は71.4%です。2024年3月期の残業17.3時間からは0.6時間減っていますが、2025年3月期の15.8時間からは0.9時間増えています。有給取得率は60.3%から71.1%、71.4%へ改善しました。[出典4]
月16.7時間は、単純に月20営業日で割れば1日平均約50分の時間外勤務です。長時間労働が恒常化している水準ではありませんが、年間総実労働時間は2025年の2,006.3時間から2.3時間増えており、直近一年でさらに改善したとは言えません。
口コミ集計では公式値より長い残業時間が示される媒体もあります。時期・母集団が異なるため、口コミ集計を会社公式の2026年数値へ置き換えませんが、部署による負荷差を確認する材料になります。
そのため8/10点です。部署別でも月平均残業15時間以下、有給取得率90%以上、月60時間超の長時間労働者0%などを複数年継続できれば10/10点を検討できます。
雇用の安定・待遇の公平性|3/5
2026年3月期の採用者は136人で、新卒104人、キャリア32人です。2027年度の新卒採用と通年のキャリア採用も継続しています。50歳未満一般社員の自己都合離職率は1.3%で前年と同じです。[出典4・16]
一方、全体離職率は2025年3月期3.0%から2026年3月期4.9%へ上昇しました。正社員数も4,061人、4,010人、3,918人と減少しています。
公平性では、2026年3月期の女性管理職比率は10.4%で、部長級以上は女性6人、比率2.6%です。男女賃金比率は全労働者61.5%、正規雇用61.9%、パート・有期48.9%です。会社は男女で処遇制度に差を設けていない一方、管理職に占める女性の少なさなどが賃金差の要因と説明しています。[出典3・4]
そのため3/5点です。女性管理職比率を少なくとも会社目標の15%以上へ引き上げ、正規雇用の男女賃金比率を80~90%台へ改善し、同一職種・等級での差も小さいことを継続開示できれば4~5/5点を検討できます。
福利厚生・育児・介護|5/5
2026年3月期の育児休業等取得率は93.2%、男性91.9%、女性95.3%です。育休後の復職率は98.7%で、男性は100%、女性96.1%でした。育児短時間勤務利用者は146人、子の看護休暇は130人、学校行事向け休暇は140人が利用しています。介護休暇も54人が利用しました。[出典4]
制度があるだけではなく、男女とも9割を超える育休取得と98.7%の復職という利用結果まで確認できます。育児で仕事を辞めざるを得ない状態を減らし、男性も家庭責任を担えるため5/5点です。
満点評価を維持するには、男女とも高い取得率・復職率を継続し、取得日数や介護制度の利用実績も引き続き公開することが条件です。
人権・ハラスメント・労使関係|4/5
丸紅は社内コンプライアンス委員会に加え、社内窓口と外部弁護士を含む相談窓口を設けています。2026年3月期の丸紅単体の内部通報件数は54件です。件数を公開することで、制度が実際に使われているかを外部から確認できます。[出典5]
人権面では、全連結子会社を対象とした人権デューデリジェンス、サプライヤー調査、匿名性・機密性を備えた救済メカニズムを整備しています。2026年3月期には人権に関する救済要請が3件あり、会社は問題の確認・対話・是正を行う仕組みを公表しています。2021年3月期から2025年3月期まで、同社は「当社ビジネスにおける人権侵害インシデント0件」と開示しています。[出典6]
そのため4/5点です。内部通報54件のうち、ハラスメント、人権、労務などの分類、認定件数、是正措置、再発防止まで匿名化して公開し、救済の実効性をより詳しく確認できれば5/5点を検討できます。
労働安全・健康|8/10
2026年3月期の丸紅単体では、業務上の死亡災害は0名です。一方、休業災害度数率は前年0から0.19へ上昇し、強度率は0.012、怪我や死亡に至る業務上の事故・事件は前年0件から2件になりました。死傷者一人平均の労働損失日数は62日です。[出典4・7]
死亡災害0を維持し、安全指標を会社単体で継続公開している点は高く評価できます。丸紅は「労働災害ゼロ・職業性疾病ゼロ」を目標とし、コントラクターやビジネスパートナーまで安全方針の対象にしています。さらに「健康経営銘柄2026」に4年連続5度目、「ホワイト500」に9年連続で認定されています。[出典7・8]
一方、目標値0に対して2026年の度数率0.19と事故2件は未達です。そのため8/10点です。事故原因と再発防止策を公開し、休業災害度数率0、死亡0、重大事故0を複数年継続できれば10/10点を検討できます。
商品・サービスの安全|3/5
丸紅は非常に多くの商品・サービスを扱うため、全事業を同じ安全指標で評価することはできません。具体的な結果を確認できる分野として、食料事業では新規取引チェック、仕入先チェック、仕入先工場監査、残留農薬リスクチェック、食品表示チェックを実施しています。2025年3月期には国内1工場、海外22工場の計23工場を専門調査員が調査しました。基準に満たない場合は改善・再調査で合格するまで取引を開始しない仕組みです。[出典17]
輸入農産物では農家、使用農薬、周辺圃場まで調べ、サンプルの残留農薬検査を外部専門家が検証します。食品事故が起きた場合には官庁や取引先と連携する体制もあります。
一方、金属、エネルギー、航空、インフラ、ITなど全事業を横断した重大品質事故・顧客事故KPIを同じ粒度で外部比較できる公開情報はありません。
そのため3/5点です。事業分野別に重大製品事故・品質事故・顧客被害件数を継続公開し、重大事故0を複数年確認できれば4~5/5点を検討できます。
従業員・元従業員の口コミ
Indeedでは17件の口コミを基に総合4.4/5、勤務時間と残業3.9、給与と福利厚生4.4、定着率と昇進4.0と表示されています。2025年9月の東京都・営業の投稿には「そこまで労働時間が長いわけでもなく」とあり、給与水準も肯定的に評価されています。情報ランクBです。[出典18]
一方、転職会議では900件を超える口コミがあり、投稿者集計の残業は月30時間前後、有給消化率は約6割です。2026年の投稿には「部署によって残業時間や忙しさにはかなり差があり」とする経験談があります。情報ランクBです。[出典19]
会社公式の2026年平均残業16.7時間、有給71.4%は対象年度と母集団が明確であり、口コミ集計より最新の全社数値として優先します。ただし、口コミが示す部署差を確認するには、部門別残業分布や長時間労働者比率の開示が有効です。
SNS・匿名掲示板の確認結果
Xなどの一般SNS、5ちゃんねる、爆サイについて、「丸紅」「残業」「給与」「退職」「パワハラ」「AI」「人員削減」などを分けて検索しました。
採点に使えるほど、現在の丸紅社員・元社員との関係、時期、職種・部署、具体的な勤務条件まで本文から確認できる投稿は得られませんでした。5ちゃんねるでは就職・転職や待遇に関する議論は見つかるものの、現在の社員実態を裏付けられる投稿としては扱いません。
Innovation|22/25
Innovationでは、新技術を導入した数ではなく、人が行っていた仕事をどれだけ具体的に減らしたかを評価します。丸紅は生成AIによる年間10万時間の業務削減を丸紅単体で公表しており、現在はグループで月間1万人以上が生成AI基盤を利用しています。削減規模は非常に大きい一方、浮いた時間が残業・休日・賃金へ何時間・何円返ったかの因果は十分公開されていません。[出典9・10]
作業負担・危険の削減|10/10
丸紅は2023年4月に社内向け生成AI「Marubeni Chatbot」を開発し、2024年4月時点で丸紅単体の年換算10万時間の業務削減を公表しました。対象は翻訳、対話、FAQ、文章作成などです。[出典9]
10万時間は、1日8時間勤務で換算すると年間1万2,500人日分です。4,000人規模の会社でこれだけの反復・検索・文章作成時間を削減できれば、人が情報を探す、転記する、同じ文書を繰り返し作る負担を大きく減らせます。
2026年には生成AI基盤「まるちゃ」が丸紅グループで月間アクティブユーザー1万人以上まで拡大し、人事FAQ、文書検索、議事録作成、契約書チェックなどへ用途が広がっています。[出典10]
丸紅単体で削減時間を実測しているため10/10点です。今後も満点評価を維持するには、AI導入後の誤回答、再作業、情報事故も含めた品質指標を確認しながら、実削減時間を継続更新することが必要です。
商品・サービスの改善|4/5
丸紅は社内で開発・運用した生成AIのノウハウを丸紅I-DIGIOへ展開し、2024年から外部企業向けサービスとして提供を始めました。2026年にはグループで使う「まるちゃ」を外部企業向けSaaSとして提供しています。[出典9・10]
自社で実際に使って、翻訳、文書作成、検索、FAQなどの課題を検証したうえで顧客へ展開するため、顧客企業はゼロから認証、ログ管理、権限制御、文書検索などを構築する負担を減らせます。
さらに2026年の経営方針では、調達コスト最適化、発注・在庫システム最適化、社則・業法業務への生成AI活用などをVCOが進めています。[出典15]
そのため4/5点です。顧客企業でのコスト、残業、処理時間、エラー率の改善を複数案件で継続公開できれば5/5点を検討できます。
改善成果の人間への還元|3/5
生成AIで年換算10万時間を削減した一方、2026年3月期の月平均残業は16.7時間で、前年15.8時間から0.9時間増えました。有給取得率は71.1%から71.4%へ微増し、平均年間給与は4.4%上昇しています。[出典2・4・9]
つまり、「AIで時間を減らした」「給与が上がった」「有給取得が改善した」という三つの事実は確認できます。ただし、AIを導入した部署で残業が何時間減ったのか、10万時間のうち何時間が休息へ、何時間が別の仕事へ移ったのか、削減利益の何%が賃金へ返ったのかという直接の因果は公表されていません。
そのため3/5点です。AI導入部署ごとに残業、年間労働時間、有給、賃金、必要人数、配置転換を導入前後で公開し、複数部署で自由時間・賃金・安全への還元が確認できれば4/5点、長期的かつ広範囲に継続すれば5/5点を検討できます。
研究開発・現場改善の継続|5/5
丸紅はMarubeni Chatbotの開発を単発で終わらせず、2026年には「まるちゃ」へ発展させ、月間1万人以上が使うグループ共通基盤として運用しています。さらにCEO直下にVCOを新設し、調達、在庫、社内規程、生成AIなど複数領域の改善を継続しています。[出典10・15]
2026年のCEOメッセージでは、AIを本社業務のリーン化と投資判断高度化の両方に使う方針を示し、過去の失敗事例から学ぶ生成AIツールを全社員へ公開しています。
技術、人材、組織を組み合わせた継続的な改善体制が確認できるため5/5点です。
自動化・AI導入後の雇用状況
丸紅は2023年以降、生成AIによる業務自動化を急速に広げています。このため、AI導入後の雇用も確認しました。
丸紅単体の従業員数は2024年3月期4,337人、2025年3月期4,304人、2026年3月期4,225人と減少しています。正社員数も4,061人、4,010人、3,918人へ減少しました。一方、2026年3月期には136人を採用し、2027年度新卒採用と通年キャリア採用も継続しています。[出典4・16]
2026年3月期の全体離職率は4.9%へ上昇しましたが、50歳未満一般社員の自己都合離職率は1.3%で前年と同じです。[出典4]
AI導入を理由とする大規模希望退職、人員整理、契約終了を示す公表情報は今回の調査で特定していません。したがって、従業員数減少を「AIによる人員削減」と結び付ける根拠はありません。
一方、AI導入前後の部署別必要人数、配置転換、再訓練、採用抑制、退職を同じ基準で追う時系列情報は公開されていません。10万時間という大きな削減成果があるからこそ、その時間を削減した後に人がどう扱われたかを継続開示することが重要です。
Protection|17/25
Protectionでは、自然災害、感染症、テロ、サイバー攻撃、本社機能停止などが起きても、丸紅が重要な調達・決済・事業管理を続けられるかを評価します。オールハザード型BCP、常設BCM組織、世界121拠点、グループ共通ITセキュリティは強みです。一方、RTO・RPOや実際の復旧・切替時間の公開が不足しています。[出典1・11]
災害への備え・訓練|4/5
丸紅は2022年4月1日にBCPを改定し、地震や感染症など個別事象ごとの計画から、幅広い危機へ共通して対応するオールハザード型へ変更しました。重要リソースとして、人員、システム、オフィス、決済機能、グループ経営に関わる重要資源を選定しています。[出典11]
平時からBCMを進める専任組織と常設BCM対策室を置き、危機時には社長をトップとする緊急対策本部と連携します。
例えば首都直下地震で東京本社へ入れなくなった場合、社員の安否だけでなく、決済、IT、重要グループ会社管理の優先順位をあらかじめ決めておけば、海外取引や送金まで同時に止まるリスクを抑えられます。
そのため4/5点です。主要危機ごとの実地訓練回数、参加率、目標時間、訓練で達成できなかった課題まで公開できれば5/5点を検討できます。
生産・物流・調達の代替|4/5
丸紅は2026年4月時点で世界121拠点を持ち、食料、エネルギー、金属、電力、航空、ITなど複数事業を世界各地で運営しています。グループには324子会社、153関連会社があります。[出典1]
複数の地域・会社・事業に供給網が分散していることは、一地域の災害や政情不安が起きた際に代替先を探しやすくする強みです。BCPでもグループ会社の重要リソースが被災した場合に丸紅が事業継続を支援する方針を明示しています。[出典11]
一方、同じ商品を別国・別拠点から何日で調達し直せるか、主要品目の代替調達率や切替時間を横断して公表しているわけではありません。
そのため4/5点です。食料、エネルギー、重要鉱物など主要供給品ごとに代替調達先、切替時間、供給維持率を公開し、実障害で切替できた実績を確認できれば5/5点を検討できます。
サイバー防衛・情報保護|4/5
丸紅はCIOを委員長とする情報セキュリティ委員会を設置し、インシデント発生時はセキュリティマネジメントチームが統括します。グループ共通ITガバナンスルール、セキュアな共通ITサービス、ルール遵守状況の定期アセスメントを3本柱としています。[出典11]
2026年3月期の有価証券報告書では、グループ全体のビジネスIT資産の可視化を完了し、IoTや制御システムを含む重要グループ会社の診断強化を進める方針も示しています。取締役会でもサイバー攻撃によるサプライチェーンリスクと対策を審議しています。[出典20]
そのため4/5点です。一方、丸紅単体のMFA、EDR、SOC監視、オフラインバックアップ率、侵入テスト結果、検知・封じ込め時間などを継続比較できる公開情報は限定的です。これらの実装と演習結果、重大漏えい0を複数年確認できれば5/5点を検討できます。
供給継続・復旧能力|3/5
BCPで人員、システム、オフィス、決済機能を重要リソースとして定義し、常設BCM組織が平時から見直し・訓練を行う体制は具体的です。[出典11]
しかし、主要システムのRTO、RPO、東京本社停止時の代替拠点への切替時間、決済機能の復旧時間、サイバー攻撃からの復旧訓練の実測結果について、外部から比較できる十分な公開情報がありません。公開情報がない点は課題です。採点上も減点対象です。
そのため3/5点です。重要業務ごとにRTO・RPOを設定し、年1回以上の訓練で目標内復旧を達成し、実測時間まで公開できれば4/5点、実災害・障害でも継続的に目標を達成できれば5/5点を検討できます。
危機時の市民への対応|2/5
丸紅は2026年7月の熊本地震に対し、1,000万円の義援金を拠出し、役員・社員にも義援金募集を行いました。能登半島地震でも1,000万円を拠出し、2025年11月までにグループ延べ346人が28クール55日間の復興ボランティアに参加しています。[出典12・21]
被災者の生活再建や現地の人手不足を支える具体的な活動です。一方、丸紅本体が食料、電力、燃料、通信等を自治体協定に基づいて何人分・何日分供給するという直接的な市民向け緊急供給KPIは十分公開されていません。
そのため2/5点です。自治体等と緊急物資・エネルギー・輸送の協定を結び、実災害で供給量と到着時間を公開できれば3~4/5点、複数地域で高い実績を継続できれば5/5点を検討できます。
良いニュース・最近の前向きな動き
最近の丸紅では、生成AIによる大規模な業務削減がグループ共通基盤へ成長し、働く人の育児・有給取得も高い水準を維持しています。災害時には義援金と社員ボランティアも継続しています。丸紅のサービスや事業が選ばれ、こうした方向へ利益が回れば、人の時間を減らしながら有事にも地域を支援する企業活動を後押しできます。
2026年6月 生成AI基盤「まるちゃ」を社外提供、月間利用者1万人超(Innovation)
丸紅グループで使う生成AI基盤「まるちゃ」は、2026年6月に外部企業向け提供を開始しました。月間アクティブユーザーは1万人以上です。文書検索、要約、翻訳、議事録、FAQ、ファイル解析などを一つの基盤で扱います。[出典10]
丸紅単体では、その前身となるMarubeni Chatbotで年換算10万時間の業務削減が確認されています。社内実証で得た仕組みを外へ提供することで、他社でも「調べる・まとめる・待つ」といった時間を減らす可能性があります。[出典9]
今後は、導入企業で残業や年間労働時間がどれだけ減ったかまで追跡できれば、AIの社会的な利益をさらに具体化できます。
2026年3月期 平均給与4.4%増、有給71.4%、育休等取得93.2%(Safety)
丸紅単体の平均年間給与は前年比4.4%上昇して1,784万3,699円となりました。有給取得率は71.1%から71.4%へ上がり、育児休業等取得率は93.2%、復職率98.7%です。[出典2・4]
収入、休息、育児の三つを同時に改善できれば、仕事のために家庭生活を犠牲にする圧力を減らせます。平均残業は前年15.8時間から16.7時間へ増えているため、次はAIで削減した時間を残業減少へ明確につなげることが課題です。
2026年8月 熊本地震へ1,000万円、役員・社員の義援金募集も開始(Protection)
2026年7月の熊本地震に対し、丸紅は8月3日に1,000万円の義援金拠出を決定し、役員・社員を対象とする義援金募集も始めました。[出典12]
災害直後は自治体や支援団体に資金需要が集中します。企業資金と社員からの追加支援を早期に出すことで、避難生活や復旧に必要な活動へ資金を回しやすくなります。
悪いニュース・問題となった動き
直近の課題では、丸紅単体の労災指標が前年のゼロ状態から悪化したことと、男女の賃金・昇進格差が依然大きいことを重視します。高い賃金やAIの効率化があっても、事故と機会格差が残れば、Safetyの利益を全員が同じように受けられません。
2026年3月期 休業災害度数率0→0.19、業務上事故0→2件(Safety)
2025年3月期は休業災害度数率0、怪我や死亡に至る業務上事故・事件0件でした。2026年3月期は度数率0.19、事故・事件2件となりました。死亡災害は0名を維持しています。[出典7]
会社目標はいずれも0です。0.19という数字は100万延べ実労働時間当たりの休業災害頻度を示し、前年までのゼロ継続が途切れたことになります。死傷者一人平均の労働損失日数も62日で、発生した事故が軽微な休業だけではなかったことが分かります。
丸紅が事故原因と再発防止を現場へ反映し、再び度数率0を継続できるかが次年度の重要な確認点です。
2026年3月期 男女賃金比61.5%、女性管理職10.4%(Safety)
2026年3月期の男女賃金比率は全労働者61.5%、正規雇用61.9%、パート・有期48.9%です。女性管理職比率は10.4%、部長級以上では2.6%です。[出典3・4]
会社は性別による処遇差を設けていないと説明していますが、上位職の男女構成差が大きければ、結果として平均賃金にも大きな差が生じます。
2026年4月からの行動計画では女性管理職比率15%以上を目標にしています。目標を達成するだけでなく、同じ職務・等級・勤続年数で賃金差が小さいことまで示せれば、公平性をより強く評価できます。
2026年3月期 全体離職率3.0%→4.9%、単体従業員数も減少(Safety・Innovation)
丸紅単体の離職率は3.0%から4.9%へ上昇しました。従業員数は2024年3月期4,337人、2025年4,304人、2026年4,225人と減少しています。[出典4]
一方、50歳未満一般社員の自己都合離職率は1.3%で前年と同じで、136人の採用も行っています。そのため、AIによる人員整理や職場悪化が原因と断定する根拠はありません。
AIで10万時間規模の仕事を削減している企業だからこそ、配置転換、再訓練、採用抑制、退職理由を時系列で公開し、効率化が雇用の質にどう影響したかを明らかにすることが重要です。
総合評価と、これから改善してほしいこと
丸紅株式会社は現在78点・シビックランクBです。次のAランクは80点からなので、あと2点必要です。平均給与、育児支援、AIによる業務削減、BCP・サイバー管理はかなり強い一方、男女格差、AI削減時間の人への還元、復旧時間の定量開示に改善余地があります。
男女賃金差と女性管理職比率を改善する(Safety)
現在の「雇用の安定・待遇の公平性」は3/5点です。女性管理職比率10.4%、部長級以上2.6%、正規雇用の男女賃金比率61.9%という差があります。[出典3・4]
改善してほしいのは、まず会社自身が掲げる女性管理職比率15%以上を達成し、その後20%以上へ引き上げることです。同時に、職種・等級・勤続年数をそろえた男女賃金差を公開し、正規雇用の男女賃金比率を少なくとも80%以上へ縮めることを目標にします。
女性管理職15~20%以上、正規雇用男女賃金比率80%以上、同一職務での差が小さいことが確認できれば3/5点から4/5点へ、+1点を検討できます。総合点は79点です。
参考企業はウイングアーク1st株式会社です。Google Drive上の最新版審査では、女性管理職比率16.4%、正規雇用の男女賃金比率79.7%を確認し、「雇用の安定・待遇の公平性」4/5点、総合81点・Aと評価しています。丸紅は給与水準そのものは高い一方、男女間の機会・賃金差では改善余地が大きいと判断できます。
AIで削減した10万時間を残業・休日・雇用へ返した結果まで公開する(Innovation)
現在の「改善成果の人間への還元」は3/5点です。丸紅単体で年換算10万時間を削減していますが、2026年3月期の平均残業は15.8時間から16.7時間へ増えています。平均給与は4.4%上昇、有給取得率は71.4%まで改善していますが、これらとAI削減時間の直接的な関係は公表されていません。[出典2・4・9]
改善してほしいのは、AI導入部署について導入前後の残業、年間労働時間、有給取得、賃金、必要人数、配置転換、再訓練を毎年公開することです。
複数部署で残業20%以上削減、有給取得率80%以上への上昇、雇用維持を伴う配置転換などが確認できれば3/5点から4/5点へ、+1点を検討できます。総合点は79点です。
参考企業はウイングアーク1st株式会社です。Google Drive上の最新版審査では、顧客企業で月815時間の業務削減、物流管理者の残業11.4%削減、生産計画時間50%削減などを確認し、「改善成果の人間への還元」4/5点、Innovation 24/25点、総合81点・Aと評価しています。削減時間だけでなく、実残業の低下まで示している点が参考になります。
BCPのRTO・RPOと実測復旧時間を公開する(Protection)
現在の「供給継続・復旧能力」は3/5点です。オールハザード型BCP、常設BCM対策室、社長をトップとする緊急対策本部は具体的ですが、重要システムや決済、本社機能が止まった際に何時間で戻すのかという定量情報が不足しています。[出典11]
改善してほしいのは、人員、システム、オフィス、決済機能の重要業務ごとにRTO・RPOを設定し、東京本社停止、クラウド停止、サイバー攻撃を想定した年1回以上の訓練で実測することです。
主要業務の90%以上で目標時間内復旧を達成し、その結果を公開できれば3/5点から4/5点へ、+1点を検討できます。総合点は79点です。
参考企業はキリングループロジスティクス株式会社です。Google Drive上の最新版審査では、鉄道障害時のバックアップ輸送、トラック・鉄道・内航海運の併用、手作業へ切り替え可能な自動化設備を評価し、「事業継続・復旧」4/5点、Protection 18/25点、総合65点・Cとしています。危機時に実際に別手段へ切り替えられる設計が参考になります。
次のランクへ上がるための具体例
現在は78点・Bで、Aは80点からです。
・女性管理職比率を15~20%以上へ引き上げ、正規雇用の男女賃金比率を80%以上へ縮め、同一職務・等級の差も公開する。「雇用の安定・待遇の公平性」3→4点、+1点。参考:ウイングアーク1st株式会社は女性管理職16.4%、正規雇用男女賃金比79.7%で同項目4/5点。
・AI導入部署で残業20%以上削減、有給取得率80%以上、雇用維持を伴う配置転換等を確認し、10万時間の削減後に人がどうなったかを公開する。「改善成果の人間への還元」3→4点、+1点。参考:ウイングアーク1st株式会社は月815時間削減に加え、物流管理者残業11.4%削減を確認し同項目4/5点。
この二つを達成すれば、78点+1点+1点=80点となり、シビックランクAへ上がります。
別の経路として、AI還元+1点に加え、重要業務のRTO・RPOを設定して年1回以上の停止訓練で90%以上を目標時間内に復旧し、「供給継続・復旧能力」を3→4点へ上げても80点へ到達できます。
つまり、丸紅がAランクへ上がるために必要なのは、すでに高い給与やAI導入量をさらに増やすことより、AIで生まれた時間を社員の自由時間へ返し、男女の機会格差を縮め、危機時の復旧力を実測値で示すことです。
出典一覧
1.丸紅株式会社「会社概要」
2.丸紅株式会社 2026年3月期有価証券報告書「従業員の状況」
3.丸紅株式会社 2026年3月期有価証券報告書「多様性に関する指標」
4.丸紅株式会社「社会データ」
5.丸紅株式会社「コンプライアンス」
6.丸紅株式会社「人権の尊重」
7.丸紅株式会社「労働安全衛生」「社会データ」
8.丸紅株式会社「健康経営銘柄2026に4年連続5度目の選定」2026年3月9日
9.丸紅株式会社「生成AIサービス I-DIGIO next-AI series Chatbotサービスの提供開始について」2024年4月9日
10.丸紅株式会社/丸紅I-DIGIOホールディングス「生成AI基盤『まるちゃ』の外部提供を開始」2026年6月11日
11.丸紅株式会社「リスクマネジメント」
12.丸紅株式会社「令和8年熊本地震による被害に対する義援金拠出について」2026年8月3日
13.丸紅株式会社「災害復興・人道支援」
14.丸紅株式会社「会社概要」「数字で見る丸紅グループ」
15.丸紅株式会社「統合報告書2026 CEOメッセージ」
16.丸紅株式会社 新卒・キャリア採用「2027年度入社採用」「キャリア採用」
17.丸紅株式会社「顧客に対する責任」
18.Indeed「丸紅株式会社の社員クチコミ・評判」
19.転職会議「丸紅株式会社の評判・社員口コミ」
20.丸紅株式会社 2026年3月期有価証券報告書「情報システム及び情報セキュリティに関するリスク」
21.丸紅株式会社「社会貢献活動・災害復興・人道支援」
22.Google Drive最新版「ウイングアーク1st株式会社を企業審査|シビックランクA・81点/100点」
23.Google Drive最新版「キリングループロジスティクス株式会社の企業審査|総合65点・シビックランクC」
シビックランクの基準
| ランク | 点数 |
|---|---|
| S | 90~100点 |
| A | 80~89点 |
| B | 70~79点 |
| C | 60~69点 |
| D | 50~59点 |
| E | 40~49点 |
| F | 20~39点 |
| G | 0~19点 |
情報ランクの基準
| 情報ランク | 基準 |
|---|---|
| S | 公的機関、裁判所、規制当局、独立した第三者機関の調査・監査・検証・認証など、内容そのものに独立した裏づけがある情報 |
| A | 企業公式資料、採用情報、公式声明・SNS、または氏名・役職・立場が確認できる記名取材や公表発言 |
| B | 従業員・元従業員の口コミ、一般SNS、匿名掲示板など、発信者の身元や対象企業との関係を独立に確認しにくい情報 |
