私たちは、企業の商品を購入したり、サービスを利用したりすることで、そこで働く人たちの未来を変えることができます。
働く人に十分な賃金を払い、休暇を確保し、安全な職場をつくり、人の負担を減らす企業の商品やサービスが選ばれれば、そうした企業により多くの売上が集まります。その結果、働く人を大切にする経営を続けやすくなります。
反対に、低賃金や長時間労働、安全上の問題を改善しない企業の商品やサービスが売れ続ければ、そうした働かせ方のままでも事業を続けることができます。
だからこの企業審査では、「私たちがお金を使うなら、どの企業を選ぶことが、そこで働く人にとってより良い社会につながるのか」という視点から企業を評価します。
なぜ企業を審査するのか?――このサイトの目的と、利用するメリット
今回審査する大日本印刷株式会社は、総合81点、シビックランクAです。
大日本印刷株式会社の特に強い点は、2025年度の月平均残業11.2時間、労働災害による死亡0件という働き方・安全実績を公開しながら、社内のRFID導入で棚卸し作業時間を約5分の1へ減らすなど、人の反復作業を技術で具体的に減らしていることです。そのため、この企業の商品を購入したりサービスを利用したりすれば、働く人の時間と安全を守りながら、印刷・包装・半導体・情報セキュリティなど幅広い社会インフラを技術で効率化する社会につながる可能性が高まります。
一方で、改善点として、2025年度の男女賃金比率が80.4%、女性管理職比率が12.3%にとどまることに加え、2025年にはグループ会社でランサムウェアを含むサイバーセキュリティ事故が2件公表されており、グループ全体での再発防止と復旧力の実証が残ります。
この記事では、大日本印刷株式会社の強みと課題をさらに詳しく企業審査していきます。
大日本印刷株式会社の企業審査結果
大日本印刷株式会社は、印刷を起点に、情報セキュア、出版、教育、包装、モビリティ、高機能材料、メディカル・ヘルスケア、ディスプレイ、半導体関連などへ事業を広げる総合企業です。2026年3月末時点の従業員数は単体8,911人、連結3万6,360人、売上高は単体9,256億93百万円、連結1兆5,125億71百万円です。[出典1]
2025年度のDNP単体では月平均残業11.2時間、有給休暇取得率61.0%、平均取得11.6日、自己都合離職率1.43%、2023年入社社員の3年定着率92.1%でした。男性育児休業取得率106.8%、平均年間給与861万246円、女性管理職比率12.3%も確認できます。[出典2・3]
国内DNPグループでは労働災害死亡0件、休業災害度数率0.25です。Innovationでは、ファインデバイス事業部のRFID導入によって棚卸し作業時間を従来の約5分の1に短縮し、間接材購買では発注1件あたりの作業工数を最少で約10分の1にしています。2026年には経済産業省・東京証券取引所・IPAの「DX銘柄2026」にも選定されました。[出典4・8・9・10]
| 評価軸 | 点数 |
|---|---|
| Safety | 41/50 |
| Innovation | 21/25 |
| Protection | 19/25 |
| 総合点 | 81/100 |
| シビックランク | A |
評価時点:2026年10月8日
主な強み
・2025年度の月平均残業11.2時間
・年間休日128日
・有給休暇取得率61.0%、平均取得11.6日
・平均年間給与861万246円、前年比3.76%上昇
・2026年度大卒初任給28万2,000円、修士30万2,000円
・自己都合離職率1.43%
・2023年入社社員の3年定着率92.1%
・男性育児休業取得率106.8%
・女性管理職比率12.3%で会社目標12%を達成
・国内DNPグループの労働災害死亡0件
・休業災害度数率0.25を公開
・人権デュー・デリジェンスを国内外グループ会社へ実施
・社内RFID導入で棚卸し作業時間を約5分の1へ短縮
・間接材発注の作業工数を最少約10分の1へ削減
・生成AI「Ctrl+Cat」を社内導入し、対象社員の約50%が利用
・約3万人へ生成AI利用環境を提供
・DXリテラシー標準基礎教育の受講完了者2万9,259人
・「DX銘柄2026」に選定
・2025年度の研究開発費422億円
・45,000台以上の端末を24時間365日監視するサイバーセキュリティ運用
・日本IT団体連盟「サイバーインデックス企業調査2025」で二つ星
・毎年3月11日の安否確認訓練、非常用発電機、3日分の水・食料備蓄
・能登半島地震で主要な人的・生産・営業拠点被害がなく、事業継続を確認
・2026年熊本地震で1,000万円の復旧・復興支援
主な課題
・2025年度の男女賃金比率80.4%で約2割の差が残る
・女性管理職比率12.3%で、社員全体の男女構成と比べ上位職の女性比率が低い
・有給休暇取得率61.0%は改善余地がある
・会社公式残業11.2時間に対し、転職会議投稿者集計では月30時間で部署差が示唆される
・国内グループの休業災害度数率0.25は会社目標0.20以下を上回った
・労災の事故類型、重篤度、再発原因を会社単体で詳細比較できる情報が不足
・最新の製品安全KPIとして確認できた2024年度値は重大事故0件だが、2025年度の同一形式の結果開示が不足
・RFIDや購買DXで削減した時間が、残業・休日・賃金へどれだけ直接還元されたかの因果開示が不足
・単体従業員数は9,785人から8,911人へ減少したが、主因は出版印刷事業の子会社への会社分割であり、AIによる雇用削減とは判断できない
・2025年5月、DNP高機能マテリアル彦根が外部企業で発生したランサムウェアの影響を受けた
・2025年5月、米国グループ会社CMIC CMO USAでランサムウェアにより一部サーバーが暗号化され、顧客・従業員情報の一部漏洩可能性が公表された
・主要業務のRTO・RPOや、工場・ITの実測復旧時間の横断開示が不足
事業内容と人間への貢献
大日本印刷株式会社は1876年創業の企業で、印刷技術と情報技術を組み合わせながら事業領域を拡大してきました。現在は「スマートコミュニケーション」「ライフ&ヘルスケア」「エレクトロニクス」の3部門を中心に事業を展開しています。[出典1・5]
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 会社名 | 大日本印刷株式会社 |
| 英文名 | Dai Nippon Printing Co., Ltd. |
| 創業 | 1876年10月9日 |
| 代表者 | 代表取締役社長 北島義斉 |
| 本社 | 東京都新宿区市谷加賀町一丁目1番1号 |
| 資本金 | 1,144億64百万円 |
| 売上高 | 連結1兆5,125億71百万円、単体9,256億93百万円 |
| 従業員数 | 連結36,360人、単体8,911人 |
| 主な事業 | 情報・出版・包装・高機能材料・モビリティ・メディカル・ディスプレイ・半導体・セキュリティ等 |
主な事業内容
スマートコミュニケーション部門では、出版、教育、情報セキュア、ICカード、認証、マーケティング、写真・イメージング、XRなどを扱います。
ライフ&ヘルスケア部門では、食品・医薬品包装、住宅・自動車向け材料、バッテリーパウチ、医療・ヘルスケア、飲料などを扱います。
エレクトロニクス部門では、ディスプレイ関連部材、半導体用フォトマスク、電子デバイス向け部材などを展開しています。[出典5]
主な利用企業・取引先
DNPの取引先は出版社、金融機関、流通・小売、食品・飲料、医薬品、自動車、電機、半導体、行政、教育機関など幅広い業界にまたがります。
生活者が直接DNPの商品名を意識しない場合でも、食品包装、ICカード、本人認証、書籍、電子書籍、写真プリント、住宅内装材、ディスプレイ、半導体製造用部材などを通じて、日常生活を支えています。
事業による人間への貢献
DNPの特徴は、人が毎日行う「読む」「支払う」「本人確認する」「食品を保存する」「情報を伝える」「製品を作る」といった行為を、印刷・材料・デジタル技術で支えることです。
例えば金融機関向けのRFIDでは、書類や重要資産を一つずつ目視確認する作業を一括読み取りへ変えられます。DNP自身のファインデバイス事業部でも、製造ラインで使うパターンマスクの棚卸しをRFID化し、作業時間を約5分の1に短縮しました。[出典8]
また、デジタル証明書や認証サービスは、紙の証明書確認や本人確認作業を減らしながら、情報の偽造や不正利用を防ぐ方向へ働きます。
Safety|41/50
Safetyでは、DNP単体の賃金、労働時間、雇用、育児・介護、人権と、国内グループの労働安全、製品・サービス安全を評価しました。
残業11.2時間、平均年収861万円、男性育休106.8%、労災死亡0件など、結果を具体的に公開している点は強みです。一方、男女賃金差、有給取得率、休業災害度数率が目標を上回った点は改善課題です。
賃金・利益の還元|8/10
2026年3月期の有価証券報告書では、DNP単体の平均年間給与は861万246円で、前年の約829万8,000円から3.76%上昇しました。[出典2]
2026年度の新卒初任給は大都市圏で大卒28万2,000円、修士30万2,000円、高専本科25万6,000円です。昇給年1回、賞与年2回です。[出典6]
平均給与が上昇し、新卒賃金も具体的に公開しているため8/10点です。
一方、社員全体の賃金中央値、2026年のベースアップ率、利益増加のうち人件費へ何%還元したかは公開情報が不足しています。また男女賃金比率は80.4%で差が残ります。
賃金中央値とベースアップ率を毎年公開し、男女賃金差を縮めながら実質賃金を継続的に引き上げられれば10/10点を検討できます。
労働時間・休息|8/10
2025年度のDNP単体の月平均残業は11.2時間で、2021年度19.5時間から継続して低下しています。有給休暇取得率は61.0%、平均取得11.6日です。[出典3]
採用情報では2025年度年間休日128日、完全週休2日制、祝日、夏期・年末年始休暇などがあります。初年度の有給休暇は12日、勤続4年以上で最高20日です。[出典6]
長時間労働を減らし、年間休日も十分確保しているため8/10点です。
一方、転職会議の投稿者集計では残業月30時間、有給消化率56.1%となっており、会社全体の公式平均より長い残業がある部署・職種の存在を示唆します。口コミと公式値は母集団・集計方法が異なるため、どちらか一方を全社員の実態とは扱いません。[出典19]
部署別残業、月45時間超の社員比率を公開し、有給取得率75%以上を維持できれば10/10点を検討できます。
雇用の安定・待遇の公平性|4/5
2025年度の自己都合離職率は1.43%、2023年入社社員の3年定着率は92.1%です。平均勤続年数は有価証券報告書で20.7年でした。[出典2・3]
2026年3月末の単体従業員数は8,911人で、前年9,785人から減っています。ただし、有価証券報告書は2025年4月に出版印刷事業をDNP書籍ファクトリーへ会社分割し、同社をDNP出版プロダクツへ改称したことを主因として説明しています。AIやDXによる一斉解雇と判断できる根拠はありません。[出典2]
一方、女性管理職比率は12.3%、男女賃金比率は80.4%です。賃金制度そのものに男女差はないと会社は説明していますが、管理職・等級構成や勤続年数の差が最終的な賃金差へつながっています。
低い離職率と長期雇用を評価し4/5点です。女性管理職20%以上、男女賃金比率90%以上を実現し、職位別の昇進率も公開できれば5/5点を検討できます。
福利厚生・育児・介護|5/5
2025年度の男性育児休業取得率は106.8%で、男性157人、女性59人が育児休業を取得しました。取得率が100%を超えるのは、当年度に出生した子どもの父親だけでなく前年度出生分の取得者等が算定に含まれる場合があるためで、全員が同じ年度に一度ずつ取得したという意味ではありません。[出典2・3]
制度面では、育児休業、子どもが小学校6年生まで利用できる短時間勤務、介護休業、介護短時間勤務、次世代育成・介護支援手当、企業年金、社員持株、テレワーク、相談・診療体制などを整備しています。[出典6]
男性の取得実績と制度の幅が両方確認できるため5/5点です。
人権・ハラスメント・労使関係|4/5
DNPは2025年に社外有識者と連携し、自社および国内外グループ会社を対象に人権への負の影響を評価しました。顕著な人権課題として、ハラスメント、安全衛生、長時間労働、サプライチェーンの強制労働・児童労働、製品安全・プライバシーなどを整理しています。[出典7]
社内にはオープンドアルーム、グローバル内部通報窓口などを設け、取引先など社外からも利用できるコンプライアンス・ホットラインを設置しています。採用活動でも求職者ハラスメント防止方針と相談窓口を明示しています。[出典7・16]
有価証券報告書ではDNPグループ労働組合連合会に26組合、約2万1,100人が加入し、特記すべき労使問題はないとしています。[出典2]
人権デュー・デリジェンスと複数の救済窓口を評価して4/5点です。会社単体のハラスメント相談件数、認定件数、是正率、再発率を毎年公開できれば5/5点を検討できます。
労働安全・健康|8/10
国内DNPグループの2025年度実績は、労働災害による死亡0件、休業災害度数率0.25です。会社の目標は死亡0件、度数率0.20以下でした。[出典4]
死亡0を維持し、事故率を数値で公開している点は高く評価できます。
ストレスチェック受検率も高く、DNP単体95%台、連結では97%台の実績があります。安全衛生リスクアセスメント、教育、改善活動も継続しています。[出典3・4]
一方、休業災害度数率0.25は会社目標0.20以下を上回りました。また事故類型別の件数や、どの工程で事故が増減したかを一般読者が比較できる情報は限定的です。
そのため8/10点です。度数率0.20以下を複数年維持し、転倒、挟まれ、切創、設備事故などを類型別に公開できれば10/10点を検討できます。
商品・サービスの安全|4/5
DNPは品質マネジメントISO9001、食品包装分野のFSSC22000、自動車分野のIATF16949など、事業に応じた品質・安全認証を取得しています。[出典11]
最新の同一形式で確認できた2024年度の製品・サービス安全KPIでは、重大事故0件、新規開発品の製品安全リスクアセスメント実施率100%・542件、品質システム検査実施率100%・51部門・会社でした。[出典11]
製品安全を事故件数と予防工程の双方で管理しているため4/5点です。
一方、2025年度の同じ3指標を同一形式で確認できる最新公開情報が不足しているため満点とはしません。2025年度以降も重大事故0、リスクアセスメント100%、品質システム検査100%を継続公開できれば5/5点を検討できます。
従業員・元従業員の口コミ
Indeedでは大日本印刷株式会社について53件の口コミがあり、総合3.3、勤務時間と残業2.9、給与と福利厚生3.3です。[出典18、情報ランクB]
2026年9月に仙台市のオペレーター経験者が「立ちっぱなしの作業でしたが、そこまで重労働ではなく、休息も適宜ありました。」と投稿しています。一方で給与は低かったという評価も併記されています。個人の経験であり、全社へ一般化はしません。[出典18、情報ランクB]
転職会議では投稿者集計の残業時間が月30時間、有給消化率56.1%です。会社公式の2025年度平均残業11.2時間、有給取得率61.0%とは差があります。対象年代・職種・回答者の偏りが異なるため、口コミは部署差を確認する補助情報として扱います。[出典19、情報ランクB]
SNS・匿名掲示板の確認結果
X、5ちゃんねる、爆サイについて、大日本印刷、DNP、残業、給料、退職、パワハラ、工場、人員削減、AIなどを組み合わせて確認しました。
2026年現在のDNP社員・元社員であること、勤務時期、職種を具体的に確認でき、今回の採点を変更できる投稿本文は確認できませんでした。
匿名掲示板に有用な情報が見つからないことは、問題がない証明ではありません。公式KPI、法定開示、本文まで確認できる従業員口コミを優先しています。
Innovation|21/25
Innovationでは、DNPが人の反復作業・確認作業・情報処理をデジタル技術で減らしているか、その成果を働く人へ返しているかを評価しました。
RFIDで棚卸し時間を約5分の1、間接材発注工数を最少約10分の1へ削減した社内実績があり、生成AIの利用も広がっています。DX銘柄2026にも選定されており、技術開発と業務改善の継続性は非常に強いです。[出典8・9・10]
作業負担・危険の削減|8/10
DNPファインデバイス事業部は、製造ラインで使用するパターンマスクの在庫・装置備品管理へRFIDを導入し、従来の目視棚卸しと比べ作業時間を約5分の1へ短縮しました。[出典8]
間接材購買では、受入検収を自動化し、発注1件あたりの作業工数を最少で約10分の1、納品リードタイムを最短で約5分の1へ短縮しています。[出典9]
生成AIでは約3万人に利用環境を提供し、独自アプリ「Ctrl+Cat」は2025年1月から社内運用を始め、5月時点で対象社員の約50%が利用しました。要約、翻訳、調査、報告資料作成などの反復的なPC作業を生成AIへ移しています。[出典12・13]
人の作業を実際に何分の1へ減らしたかを社内事例で示しているため8/10点です。
一方、これらを全社合算した年間削減時間、身体負担の減少、残業への影響は公開されていません。全社の年間削減時間まで公開できれば10/10点を検討できます。
商品・サービスの改善|5/5
DNPはRFID、本人認証、デジタル証明書、サイバーセキュリティ、AI、包装、半導体材料、医療・ヘルスケアなど、企業と生活者の作業・安全を改善する製品を継続的に開発しています。
例えばRFIDは棚卸しや重要資産の持ち出し確認を一括読取へ変え、目視作業を削減します。分散型IDのデジタル証明書は、利用者が自分の個人情報を管理しながら、企業側の本人確認・偽造確認負担を減らします。[出典8・14]
印刷企業の既存事業をデジタル・材料・認証へ拡張し、具体的な人の負担と安全課題を改善しているため5/5点です。
改善成果の人間への還元|3/5
DNP単体の残業は2021年度19.5時間から2025年度11.2時間へ下がり、平均年間給与は2025年度861万円まで上昇しています。[出典2・3]
同じ期間にRFID、購買システム、生成AI、スマート工場などのDXも進んでいます。
しかし、残業が8時間以上減ったうち何時間がDXによる効果なのか、削減した工数を賃上げ・休日・教育へ何時間・何円返したかという因果は公表されていません。
そのため3/5点です。DX導入部門の削減時間、残業、休暇、配置転換、賃金を同じ時系列で比較できれば5/5点を検討できます。
研究開発・現場改善の継続|5/5
2025年度の研究開発費は422億円です。DXリテラシー標準基礎教育の受講完了者は2万9,259人で、目標2万7,500人を上回りました。[出典2]
2026年には経済産業省、東京証券取引所、IPAが選ぶ「DX銘柄2026」30社の1社に選定されました。DXを経営指標と連動させ、新製品・サービス創出と工場スマート化、人材育成を同時に進めている点が第三者から評価されています。[出典10]
研究開発費、人材育成、社内実装、外販サービスまで複数年継続しているため5/5点です。
自動化・AI導入後の雇用状況
DNP単体の従業員数は2025年3月末9,785人から2026年3月末8,911人へ874人減少しました。[出典1・2]
ただし、有価証券報告書では2025年4月1日に出版印刷事業をDNP書籍ファクトリーへ会社分割し、同社をDNP出版プロダクツへ改称したことが主因と説明されています。従業員減少を生成AI・RFID・DXによる解雇と結びつける根拠はありません。[出典2]
2025年入社の新卒採用は事務系83人、技術系114人で、2027年卒向け採用も継続しています。[出典6]
今回の公式資料、求人、口コミ、SNS・匿名掲示板の調査では、生成AIやRFIDを理由とする大規模な希望退職、一斉解雇、採用停止を裏づける情報は確認できませんでした。
今後は、AI・自動化導入部門の人数、配置転換、再教育、採用、離職を時系列で公開できれば、「人を減らすDX」なのか「人の作業を減らすDX」なのかをさらに明確に評価できます。
Protection|19/25
Protectionでは、大地震、工場停止、物流障害、サイバー攻撃が発生しても事業を続け、社会に必要な情報・製品を提供できるかを評価しました。
毎年の安否確認訓練、非常用発電機、3日分備蓄、国内外の多数拠点、45,000台超の端末監視、第三者のサイバー評価は強みです。一方、2025年にグループ会社でサイバー事故が2件発生しているため、体制の存在だけで満点にはしていません。
災害への備え・訓練|4/5
DNPは毎年3月11日にグループ全社で安否確認訓練を行い、組織ごとの防災訓練も実施しています。主要地区では非常用発電機、備蓄燃料、災害時に利用できるトイレを整備し、対象従業員3日分の水・食料を備蓄しています。[出典15]
防災ハンドブックも職場・家庭向けに配布しています。
計画、設備、訓練、備蓄が具体的なため4/5点です。
一方、公開ページの制度説明は以前から継続している施策を示したもので、2025~2026年の訓練ごとの安否確認時間、非常用電源の実働時間、改善結果まで横断的に確認できません。
最新の訓練結果を毎年定量公開できれば5/5点を検討できます。
生産・物流・調達の代替|4/5
DNPは国内外に多数の製造・営業拠点を持ち、事業領域も出版、包装、電子部材、情報セキュアなど複数に分散しています。2024年能登半島地震では、DNPグループで人的被害、生産拠点・営業拠点の大きな被害、業績への重大影響がないことを発災後に公表しました。[出典17]
国内物流はDNPロジスティクスなどグループ会社が支え、複数の物流拠点を持ちます。
拠点分散と実災害時の事業継続実績を評価して4/5点です。
一方、特定の主要工場が停止した際、別工場が生産量の何%を何時間で代替できるかという能力は公開されていません。
重要製品ごとの代替工場・切替時間を公開できれば5/5点を検討できます。
サイバー防衛・情報保護|4/5
DNPはDNP-CSIRT、情報セキュリティ委員会、ゼロトラスト、EDRなどを使い、日本と19の国・地域にある45,000台以上の端末を24時間365日監視しています。全社員約4万5,000人を対象とするセキュリティ教育は受講率100%としています。標的型メール訓練も年4回実施しています。[出典20・21]
2026年1月には、日本IT団体連盟の「サイバーインデックス企業調査2025」で、特に優れた取り組み姿勢・情報開示を継続している18社の一つとして二つ星を取得しました。[出典22]
一方、2025年5月にはDNP高機能マテリアル彦根が、接続していたレゾナック側サーバーへのランサムウェア攻撃の影響を受けました。さらに米国グループ会社CMIC CMO USAでは一部サーバーが暗号化され、顧客・従業員情報の一部が漏洩した可能性が公表されました。[出典23・24]
他のDNPグループシステムへの影響は確認されていませんが、実事故が発生しているため4/5点です。重大インシデントゼロを複数年維持し、復元試験・復旧時間の結果を第三者確認付きで公開できれば5/5点を検討できます。
供給継続・復旧能力|4/5
2024年能登半島地震では、DNPグループの従業員、主要生産拠点、営業拠点に大きな被害がなく、業績への大きな影響も発生しませんでした。[出典17]
地理的に分散した製造拠点、物流会社、IT基盤を持ち、防災訓練・非常電源・備蓄を組み合わせている点は強みです。
一方、主要製品別のRTO、RPO、代替工場への切替時間、実際のサイバー障害での復元時間は横断的に公開されていません。
そのため4/5点です。重要事業ごとの目標復旧時間と訓練達成時間を公開できれば5/5点を検討できます。
危機時の市民への対応|3/5
2024年能登半島地震ではDNPから1,000万円を寄付し、社員食堂の復興応援メニューや社内募金を通じて追加で914万円を寄付しました。[出典25]
2026年熊本地震でも1,000万円を寄付し、社員食堂の復興応援メニューと社員募金を実施しています。[出典26]
被災地への継続的な資金支援は評価できます。
一方、DNPは食品・水・物流の直接供給企業ではなく、自治体との大規模な緊急物資供給協定や、避難所へ何人分の生活物資を届けたかという実績は限定的です。
そのため3/5点です。DNPの認証・情報・包装・デジタル技術を災害時の行政支援へ実装し、利用人数・処理時間などの結果まで公開できれば4~5/5点を検討できます。
良いニュース・最近の前向きな動き
最近のDNPでは、DX、人材、安全、サイバーセキュリティの外部評価が進んでいます。特に「技術を導入した」だけでなく、RFIDで棚卸し時間を約5分の1にするなど、人の作業負担を具体的に減らしていることが強みです。
2026年4月 「DX銘柄2026」に選定
経済産業省、東京証券取引所、IPAが選定する「DX銘柄2026」にDNPが選ばれました。2026年度は30社が選定されています。[出典10]
社内システム改革、工場スマート化、AI活用、DX人材育成などを経営指標と結び付けている点が第三者評価につながりました。
2026年1月 サイバーインデックス二つ星
日本IT団体連盟の「サイバーインデックス企業調査2025」で、DNPは二つ星企業18社の一つに選ばれました。[出典22]
2025年にはグループ会社でサイバー事故が発生したため、この外部評価で問題を相殺することはしません。一方、45,000台超の端末監視、24時間365日のSOC運用など、事故後もグループ全体の防御と開示を続けている点は前向きな材料です。
残業が11.2時間まで低下
DNP単体の月平均残業は2021年度19.5時間、2022年度19.3時間、2023年度13.9時間、2024年度12.9時間、2025年度11.2時間と低下しました。[出典3]
4年間で約8.3時間減っています。DXとの直接因果は公開されていませんが、会社全体の働く時間が改善している事実はSafetyで評価できます。
悪いニュース・問題となった動き
DNPの主な課題は、女性が管理職・高い等級へ進む割合の不足と、グループ会社で発生したサイバー事故です。
男女賃金比率80.4%、女性管理職12.3%
2025年度の男女賃金比率は80.4%、女性管理職比率は12.3%です。[出典2]
会社は男女で賃金制度自体に差はなく、職位構成、勤続年数、休職・短時間勤務、諸手当などが差の要因だと説明しています。
制度上同じであっても、女性が高い職位へ進む割合が低ければ、実際に受け取る年間給与には差が残ります。採用・昇進・管理職登用を同時に改善する必要があります。
2025年5月 グループ会社で2件のサイバー事故
2025年5月、DNP高機能マテリアル彦根は、接続していたレゾナック側サーバーへのランサムウェア攻撃の影響を受けました。DNP本体や他グループ会社には接続されていなかったと公表されています。[出典23]
同月、米国グループ会社CMIC CMO USAではランサムウェアにより一部サーバーが暗号化され、顧客情報・従業員情報の一部が漏洩した可能性があると公表しました。こちらも他のDNPグループシステムへの影響は確認されていません。[出典24]
グループのネットワーク分離が被害拡大を防いだ点は評価できますが、重大なサイバー事故をゼロにできたわけではありません。
休業災害度数率が目標を上回る
2025年度の休業災害度数率は0.25で、会社目標0.20以下を上回りました。死亡災害は0件です。[出典4]
死亡事故がないことは重要ですが、休業を伴う事故をさらに減らす必要があります。
総合評価と、これから改善してほしいこと
大日本印刷株式会社は81点・シビックランクAです。次のSランクは90点からなので、あと9点必要です。
DNPは、残業、離職、育休、労災、賃金などの人的KPIを多数公開し、RFIDや購買システムで作業削減量まで示す点が強い企業です。また、DXとサイバー防衛は第三者評価も受けています。
一方、Sランクへ上がるには、男女格差をさらに縮め、DXで減らした時間を人へ返した結果を明示し、サイバー・BCPを「仕組み」だけでなく「重大事故ゼロと復旧時間」で証明する必要があります。
男女賃金差と女性管理職比率を大きく改善してほしい|賃金・利益の還元 8→10/10、雇用の安定・待遇の公平性 4→5/5
現在は「賃金・利益の還元」8/10点、「雇用の安定・待遇の公平性」4/5点です。
平均年収は861万円まで上昇していますが、男女賃金比率80.4%、女性管理職比率12.3%です。[出典2]
毎年のベースアップ率と賃金中央値を公開し、正規雇用の男女賃金比率90%以上、女性管理職比率20%以上を実現してほしいです。管理職候補層の男女比と昇進率も同時に公開すれば、格差がどの段階で生じているかを確認できます。
これが確認できれば賃金8→10/10、雇用公平性4→5/5で合計+3点、総合81→84点、Aランクを維持します。
参考企業はイオン九州株式会社です。当サイト現行審査では73点・Bで、「賃金・利益の還元」は8/10点です。2026年に正社員の月例賃金を平均1万8,544円・6.42%、短時間組合員の時給を94.9円・8.14%引き上げ、賃上げ率を労使妥結結果として具体的に公開しています。DNPも平均年収だけでなく、毎年のベースアップ率を明示する点が参考になります。
残業10時間以下・有給取得率75%以上を実現してほしい|労働時間・休息 8→10/10
現在は8/10点です。
残業11.2時間まで改善した一方、有給取得率は61.0%です。転職会議の投稿者集計では残業30時間という差もあり、部署別負担を確認できません。[出典3・19]
全社残業を10時間以下、有給取得率を75%以上、平均取得15日以上にし、部署別残業と月45時間超の社員比率を公開してほしいです。
これが確認できれば8→10/10点、+2点です。前項から累計して総合84→86点となります。
参考企業はイオン東北株式会社です。当サイト現行審査では62点・Cですが、「労働時間・休息」は8/10点です。月平均残業6.1時間、年間休日125日、平均有給取得11.7日を公開しています。DNPは年間休日128日という強みがあるため、有給取得率をさらに高めればより高い水準へ進めます。
DXで削減した時間を残業・休日・再配置へ返した結果を公開してほしい|改善成果の人間への還元 3→5/5
現在は3/5点です。
RFIDでは棚卸しを約5分の1、間接材発注を最少約10分の1へ減らしていますが、全社合計の削減時間と、その時間が残業・休日・教育・配置転換へどう返ったかは公表されていません。[出典8・9]
主要DX施策について全社の年間削減時間を集計し、対象部門で残業が10%以上低下した、教育へ何時間振り替えた、何人を新業務へ再配置した、といった結果まで公開してほしいです。
これが確認できれば3→5/5点、+2点です。累計で総合86→88点となります。
参考企業はウイングアーク1st株式会社です。当サイト現行審査では81点・A、Innovation 24/25点です。導入先で月815時間の業務削減や管理者残業11.4%削減など、DXの成果を時間で測っています。DNPも個別工程の削減率だけでなく、全社の人の時間へどう返ったかまで示すことが参考になります。
サイバー事故ゼロとBCP復旧時間を実証してほしい|サイバー防衛・情報保護 4→5/5、災害への備え・訓練 4→5/5
現在は「サイバー防衛・情報保護」4/5点、「災害への備え・訓練」4/5点です。
45,000台超の24時間365日監視、サイバーインデックス二つ星、年4回の標的型メール訓練は非常に強い一方、2025年にはグループ会社でサイバー事故が2件発生しました。[出典21~24]
重大な情報漏洩・ランサムウェア事故ゼロを複数年維持し、年1回以上のバックアップ復元試験、主要システムのRTO・RPO、工場・本社のBCP訓練での実測復旧時間を公開してほしいです。
これが確認できればサイバー4→5/5、災害への備え4→5/5で+2点です。累計で88→90点となり、シビックランクSへ到達します。
参考企業は株式会社トランス・グリップです。当サイト現行審査では56点・Dですが、「災害への備え・訓練」は5/5点です。全事業所で年2回の安否確認訓練を実施し、全社員3日分の水・食料を備蓄しています。DNPも備蓄や年次訓練は既に行っているため、次は訓練で「何分で安否確認が終わったか」「何時間でシステムを復旧できたか」まで示す段階です。
次のSランクへ上がるための具体例
現在81点・Aで、Sは90点からです。あと9点必要です。
・ベースアップ率・賃金中央値を公開し、男女賃金比率90%以上、女性管理職20%以上を実現する。「賃金・利益の還元」8→10/10、「雇用の安定・待遇の公平性」4→5/5、+3点。
・全社残業10時間以下、有給取得率75%以上、平均15日以上を維持する。「労働時間・休息」8→10/10、+2点。
・DXの全社年間削減時間と、残業・教育・配置転換への還元を公開する。「改善成果の人間への還元」3→5/5、+2点。
・重大サイバー事故ゼロを複数年維持し、バックアップ復元・BCPの実測時間を公開する。「サイバー防衛・情報保護」4→5/5、「災害への備え・訓練」4→5/5、+2点。
81点+3点+2点+2点+2点=90点となり、シビックランクSに到達します。
DNPはすでに「制度があります」ではなく、「残業11.2時間」「労災死亡0」「RFIDで5分の1」まで結果を示せる企業です。Sランクへ進むために必要なのは、その測定力を男女格差、人への還元、サイバー復旧にも広げ、企業の強さがそこで働く人の生活と安全へ返ったことを数字で証明することです。
出典一覧
| No. | 出典 | 情報ランク |
|---|---|---|
| 1 | 大日本印刷株式会社「会社概要」2026年3月31日現在 | A |
| 2 | 大日本印刷株式会社 有価証券報告書 2026年3月期・金融庁EDINET提出書類 | S |
| 3 | 大日本印刷株式会社「DNPの社会に関する主要データ」2025年度 | A |
| 4 | 大日本印刷株式会社「労働安全衛生」2025年度実績 | A |
| 5 | 大日本印刷株式会社「事業紹介」「5分でわかるDNP」 | A |
| 6 | 大日本印刷株式会社 新卒採用「募集要項・条件」 | A |
| 7 | 大日本印刷株式会社「人権・労働」 | A |
| 8 | 大日本印刷株式会社「DNPのRFIDソリューション」ファインデバイス事業部導入事例 | A |
| 9 | 大日本印刷株式会社「間接材購買システムの導入で業務効率化とコスト削減を実現」 | A |
| 10 | 経済産業省・東京証券取引所・IPA「DX銘柄2026」選定 | S |
| 11 | 大日本印刷株式会社 サステナビリティウェブアーカイブ「製品・サービスの安全性と品質」 | A |
| 12 | 大日本印刷株式会社「生成AIパートナーアプリ Ctrl+Cat」 | A |
| 13 | 大日本印刷株式会社「AWS Japan 生成AIハッカソン」関連情報 | A |
| 14 | 大日本印刷株式会社「分散型ID管理プラットフォーム」等 | A |
| 15 | 大日本印刷株式会社「東京都一斉帰宅抑制推進企業」防災施策 | A |
| 16 | 大日本印刷株式会社「求職活動等を行う皆さまへ」ハラスメント防止方針 | A |
| 17 | 大日本印刷株式会社「令和6年能登半島地震の影響に関するお知らせ」 | A |
| 18 | Indeed「大日本印刷株式会社の社員クチコミ」 | B |
| 19 | 転職会議「大日本印刷株式会社の残業・社員口コミ」 | B |
| 20 | 大日本印刷株式会社「情報セキュリティ」および情報セキュリティガバナンス資料 | A |
| 21 | 大日本印刷株式会社「統合セキュリティ監視運用サービス」自社運用実績 | A |
| 22 | 日本IT団体連盟「サイバーインデックス企業調査2025」 | S |
| 23 | 大日本印刷株式会社「グループ会社におけるセキュリティインシデントについて」2025年5月21日 | A |
| 24 | 大日本印刷株式会社「海外グループ会社への不正アクセスについて」2025年5月30日 | A |
| 25 | 大日本印刷株式会社「令和6年能登半島地震の復旧・復興支援」 | A |
| 26 | 大日本印刷株式会社「令和8年熊本地震の被災地に対する復旧・復興支援」 | A |
| 27 | X・5ちゃんねる・爆サイでの対象法人検索 | B |
| 28 | Google Drive上の当サイト既存企業審査「イオン九州株式会社」「イオン東北株式会社」「ウイングアーク1st株式会社」「株式会社トランス・グリップ」 | 比較用内部資料 |
シビックランクの基準
| シビックランク | 点数 |
|---|---|
| S | 90~100点 |
| A | 80~89点 |
| B | 70~79点 |
| C | 60~69点 |
| D | 50~59点 |
| E | 40~49点 |
| F | 20~39点 |
| G | 0~19点 |
大日本印刷株式会社は81点のため、今回の評価はシビックランクAです。
情報ランクの基準
| 情報ランク | 基準 |
|---|---|
| S | 公的機関、裁判所、規制当局、独立した第三者機関の調査・監査・検証・認証など、内容そのものに独立した裏づけがある情報 |
| A | 企業公式資料、採用情報、公式声明・SNS、または氏名・役職・立場が確認できる記名取材や公表発言など、発信主体を確認できる公表情報 |
| B | 従業員・元従業員の口コミ、一般SNS、匿名掲示板など、発信者の身元や対象企業との関係を独立に確認しにくい情報 |
情報ランクは企業そのものの良し悪しではなく、個々の情報の出どころと検証状態を示します。Sは独立した裏づけがある情報として最上位です。AとBは単純な上下関係ではなく、残業、休憩、ハラスメント、配置転換などの実態ではBの従業員情報が公式資料を補う場合があります。
