私たちは、企業の商品を購入したり、サービスを利用したりすることで、そこで働く人たちの未来を変えることができます。
働く人に十分な賃金を払い、休暇を確保し、安全な職場をつくり、人の負担を減らす企業の商品やサービスが選ばれれば、そうした企業により多くの売上が集まります。その結果、働く人を大切にする経営を続けやすくなります。
反対に、低賃金や長時間労働、安全上の問題を改善しない企業の商品やサービスが売れ続ければ、そうした働かせ方のままでも事業を続けることができます。
だからこの企業審査では、「私たちがお金を使うなら、どの企業を選ぶことが、そこで働く人にとってより良い社会につながるのか」という視点から企業を評価します。
なぜ企業を審査するのか?――このサイトの目的と、利用するメリット
今回審査する株式会社伊藤園は、総合76点、シビックランクBです。
株式会社伊藤園の特に強い点は、茶農家との契約栽培・全量買い取り、物流の省力化、災害時の飲料提供まで、飲料サプライチェーン全体で人への貢献を具体化していることです。そのため、この企業の商品を購入したりサービスを利用したりすれば、茶産地の維持、物流現場の負担軽減、災害時にも飲料を届けられる供給網を支える社会につながる可能性が高まります。
一方で、改善点としてルートセールスを中心とする営業現場の負担、2025年4月期の労働災害95件・度数率2.00、2026年4月期の女性管理職比率4.5%、正規雇用従業員の男女賃金比79.7%が残ります。
この記事では、株式会社伊藤園の強みと課題をさらに詳しく企業審査していきます。
株式会社伊藤園の企業審査結果
| 評価軸 | 得点 |
|---|---|
| Safety | 34/50 |
| Innovation | 21/25 |
| Protection | 21/25 |
| 総合点 | 76/100 |
| シビックランク | B |
主な強み
・2026年4月期の平均年間給与687万4,812円、平均勤続年数19.0年
・2026年4月時点の正社員平均残業21時間/月
・正社員離職率は2025年4月期2.53%
・茶農家との契約栽培で技術支援と全量買い取りを実施
・正パレット取引で物流委託先作業時間2万時間以上削減、モーダルシフトで乗務員労働時間400時間以上削減をKPIとして設定
・2026年4月からネスレ日本との共同輸送・ラウンド輸送を実運用
・全国の飲料製造委託先を活用するファブレス方式とブロック生産・物流
・停電時にも飲料を無償提供できる災害対応自動販売機
・2026年の熊本地震でも義援金と飲料等の支援を実施
・人権デューデリジェンス、サプライヤーホットライン、食品安全監査を継続
主な課題
・2025年4月期の労働災害95件、度数率2.00
・公式の平均残業21時間に対し、口コミ集計では31~34時間台
・2025年4月期の有給休暇取得率60.9%
・2026年4月期の女性管理職比率4.5%
・正規雇用従業員の男女賃金比79.7%
・2025年4月期の新卒3年以内離職率31.2%
・物流・営業改革で減らした時間を、賃金・休息・再配置へどれだけ返したかの定量開示が不足
・2024年の北米子会社ランサムウェア被害後、最終的な情報流出有無や第三者評価の公開が不足
・供給網は分散しているが、工場停止後のRTOや製品別代替率は非公表
事業内容と人間への貢献
株式会社伊藤園は、茶葉、ティーバッグ、インスタント茶、茶系飲料、野菜飲料、コーヒー飲料、ミネラルウォーターなどを開発・調達・加工・販売する飲料・茶関連企業です。1966年8月22日設立、資本金199億1,230万円、本社は東京都渋谷区です。2026年4月30日時点で単体4,879人、連結7,945人を雇用しています。[出典1・2]
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 会社名 | 株式会社伊藤園 |
| 設立 | 1966年8月22日 |
| 本社 | 東京都渋谷区本町3-47-10 |
| 代表者 | 代表取締役社長 本庄 大介 |
| 資本金 | 199億1,230万円 |
| 従業員数 | 単体4,879人/連結7,945人(2026年4月30日) |
| 単体売上高 | 3,413億1,000万円(2026年4月期) |
| 主な事業 | 茶葉・飲料の開発、原料調達、加工、販売 |
| 主なブランド | お~いお茶、健康ミネラルむぎ茶、1日分の野菜、TULLY’S COFFEE等 |
| 研究拠点 | 中央研究所、TAKANAWA GATEWAY CITY Lab |
主な事業内容
伊藤園は、緑茶、ほうじ茶、ウーロン茶、紅茶、麦茶などのリーフ製品と、「お~いお茶」を中心とする飲料製品を扱っています。飲料のボトリングは沖縄県を除き、全国の飲料製造企業へ委託するファブレス方式を採用しています。[出典1・3]
営業では全国の拠点を通じ、店舗、自動販売機、法人等へ商品を届けます。ルートセールスは、車両への商品積み込み、運転、自動販売機や小売店への訪問、納品、売場管理、商談、新規開拓などを担います。飲料は重量があるため、消費者がいつでも商品を買える状態は、運転・荷扱い・営業を担う人の仕事によって支えられています。[出典5]
主な利用企業・取引先
伊藤園の商品はスーパー、コンビニ、自動販売機、飲食店、通販などを通じて一般消費者へ販売されます。飲料製造では全国の委託工場、物流では運送会社や鉄道・フェリー事業者、原料調達では茶農家や海外サプライヤーと広い取引関係を持ちます。
2026年にはネスレ日本との共同輸送・ラウンド輸送を開始し、物流でも企業間連携を広げています。[出典12]
事業による人間への貢献
伊藤園の人間への貢献は、飲み物を販売することに加えて、茶産地、品質、物流、有事の供給までつながっている点にあります。
茶産地育成事業では、農家と必要な品質や量を共有し、技術支援を行いながら契約栽培した茶葉を全量買い取る仕組みを持ちます。農家にとっては収穫後の販売先を確保しやすくなり、荒廃農地の再利用や大規模化・機械化と組み合わせることで、後継者不足や高齢化への対応にもつながります。[出典9・10]
物流では中継輸送、共同輸送、ラウンド輸送、モーダルシフト、正パレット取引を進めています。例えば長距離輸送を途中で引き継げれば、一人のドライバーが長時間運転し続けず、日帰り勤務へ切り替えやすくなります。[出典9・12]
災害時には、自動販売機を通常の販売設備から飲料備蓄設備へ切り替え、停電中でも被災者へ無料で飲料を提供できます。[出典16]
Safety|34/50
Safetyでは、伊藤園で働く人の賃金、休息、雇用、福利厚生、人権、安全と、消費者が口にする飲料・茶葉の安全性を評価します。
平均給与、長期雇用、人権デューデリジェンス、食品安全管理は強みです。一方、営業現場の時間・体力負担、労災95件、女性管理職4.5%、男女賃金差が残るため、Safetyは34/50点としました。
賃金・利益の還元|6/10
2026年4月期の有価証券報告書では、伊藤園単体の平均年間給与は687万4,812円、平均年齢43.1歳、平均勤続年数19.0年です。2025年4月期の平均年間給与682万8,580円から約0.7%上昇しています。[出典2]
2022年4月期の平均年間給与は580万円台であり、中長期では上昇しています。ただし、平均給与の上昇には年齢構成や人員構成の変化も含まれるため、全額をベースアップの成果とは扱いません。
新卒採用では職種により固定残業代を含む初任給が設定されています。2025年5月実績で全国採用の大学卒営業・事務・生産職は月25万円ですが、このうち14時間分2万1,000円が固定残業代です。超過分は追加支給されます。[出典5]
平均給与と継続的な昇給を確認できるため6/10点です。
一方、2026年4月期の利益や物流・営業改革による生産性向上のうち、何%をベースアップ・賞与・現場手当へ返したかという会社単体KPIは公表されていません。平均給与だけでなく、既存社員のベースアップ率、職種別賃金中央値、ルートセールスの手当を継続公開し、物価上昇を上回る賃金改善を確認できれば8/10点を検討できます。
労働時間・休息|6/10
厚生労働省の女性活躍推進企業データベース由来の2026年4月時点データでは、正社員の平均残業は月21時間です。会社のサステナビリティデータでも、2023年4月期25.4時間、2024年4月期24.0時間、2025年4月期23.1時間と減少しており、改善方向は確認できます。[出典4・6]
2025年4月期の有給休暇取得率は60.9%、採用条件上の2025年度年間休日は121日です。[出典5・6]
月21時間は20勤務日で単純換算すると1日約1時間です。極端な長時間労働という水準ではありませんが、勤務時間・休息で8点以上を付ける基準としては改善余地があります。
さらにOpenWorkの投稿者集計は残業31.4時間・有給47.6%、転職会議は残業34.5時間・有給44.6~44.7%で、公式平均より厳しい結果です。[出典21・22]
公式値が改善していることを評価して6/10点です。一方、支店・職種差が残るため、全社平均残業15時間以下、有給取得率80%以上に加え、ルートセールスを含む全主要職種で平均残業20時間以下を確認できれば8/10点を検討できます。
雇用の安定・待遇の公平性|3/5
2026年4月期の平均勤続年数は19.0年で、長期雇用の実績があります。2025年4月期の正社員離職率は2.53%です。[出典2・6]
一方、2025年4月期の新卒3年以内離職率は31.2%でした。会社全体の離職率は低くても、若手の約3割が3年以内に離れているため、若年層の定着には別の課題があります。[出典6]
2026年4月期の女性管理職比率は4.5%、正規雇用従業員の男女賃金比は79.7%です。女性管理職比率は前年3.9%から上昇しましたが、会社自身が2026年度目標として掲げる10%には届いていません。[出典2・8]
また単体従業員数は2024年4月期5,226人、2025年4月期4,965人、2026年4月期4,879人へ減少しています。一方、連結従業員数は7,929人、7,916人、7,945人とほぼ横ばいです。営業拠点再編や配送外部委託との因果関係は公表されていないため、人員減を自動化や外部委託による削減と断定しません。[出典2・13]
長期雇用を評価しつつ、若手定着と男女格差を踏まえ3/5点です。女性管理職10%以上、正規男女賃金比90%以上、新卒3年以内離職率20%未満を確認できれば4/5点を検討できます。
福利厚生・育児・介護|4/5
伊藤園には社会保険、企業型確定拠出年金、寮・住宅関連制度、育児・介護休業、各種特別休暇などがあります。[出典5]
2026年4月期の男性育児休業取得率は59.8%、女性は100%です。2025年4月期の育児休業後復職率は97.6%、介護休業制度利用者は3人でした。[出典2・6]
男性育休取得率は2024年4月期43.1%から大きく改善し、会社目標50%も上回っています。育児を女性だけへ偏らせにくくする点で、働く人と家庭の双方に利益があります。
制度と利用実績を評価して4/5点です。男性育休80%以上、男女とも十分な取得日数を確保し、介護休業・短時間勤務の利用実績まで継続公開できれば5/5点を検討できます。
人権・ハラスメント・労使関係|4/5
伊藤園グループは人権方針と人権デューデリジェンスを運用し、2025年12月から2026年2月には原材料調達国・加工国・事業拠点を対象に人権リスクを再評価しました。2026年には移住労働者の生活・労働環境、強制労働・不当な低賃金、責任ある調達、地域への影響、説明責任を優先テーマとして整理しています。[出典7]
2024年5月からサプライヤー従業員も利用できる第三者窓口を設置し、社内外の企業倫理ホットラインではハラスメントや職場環境の相談も受け付けています。2025年4月期には企業倫理ホットライン55件、コンプライアンス教育受講割合82.3%を公表しました。[出典6・7・23]
サプライチェーンまで対象を広げた仕組みを評価して4/5点です。
一方、伊藤園単体でのハラスメント認定件数、是正件数、相談後の救済完了率は公表されていません。相談件数だけでなく、解決までの結果を会社単体で公開できれば5/5点を検討できます。
労働安全・健康|6/10
2025年4月期の伊藤園単体の労働災害事故発生件数は95件、度数率2.00、死亡者0人です。事故件数は2023年4月期116件、2024年4月期105件から減少していますが、度数率は2024年4月期1.92から2.00へわずかに上昇しました。[出典6]
健康診断受診率は100%、ストレスチェック受検率は97.1%、健康教育の延べ受講人数は3万698人、車両研修受講者は3,278人です。[出典6]
ルートセールスでは車両運転と荷扱いがあり、事故防止は営業活動そのものに直結します。死亡0を維持し、事故件数が減少している点は明確な改善です。
一方、95件は無視できない件数で、度数率も前年より改善していません。そのため6/10点です。死亡0を維持しながら労災件数70件以下、度数率1.5以下を複数年継続し、事故類型別の削減結果まで公開できれば8/10点を検討できます。
商品・サービスの安全|5/5
伊藤園は国産緑茶原料で生産農家の栽培管理記録、とくに農薬関連を確認し、原料サプライヤーや製造委託先へ品質監査・トレース監査を実施しています。国内のドリンク・リーフ製造工場ではFSSC22000などの国際認証を活用し、委託先との品質会議も行っています。[出典9]
海外産の野菜原料でも、品質保証書だけでなく担当者が現地へ赴き、栽培方法、加工工程、農薬、品質管理を確認しています。[出典9]
食品・飲料は口に入る商品であり、原料段階から製造委託先まで追跡できる仕組みは、農薬、異物、衛生管理の問題が起きた際に原因を特定し、対象ロットを絞るために役立ちます。
2025~2026年について、今回の重大問題調査では伊藤園単体の評価を大きく下げる大規模商品回収や食品安全上の行政処分を確認していません。品質監査と国際認証の運用を評価し5/5点です。
従業員・元従業員の口コミ
公式の2026年4月時点平均残業は21時間ですが、口コミ集計ではOpenWork31.4時間、転職会議34.5時間と差があります。口コミは回答者属性が偏るため会社全体の確定値にはしませんが、職場差を確認する材料になります。[出典21・22]
転職会議では、2026年5月23日投稿の20代前半・男性・正社員・ルートセールス/代理店営業の投稿に「残業時間もつき30時間以内と定められているものの、支店によって温度感はある。」とあります。情報ランクBです。[出典22]
Indeedでは2025年10月2日の匿名投稿に「残業はつくし、たまにたまに休日出勤もあります。」とあります。同じ投稿ではトラック運転と夏季の体力負担も記載されています。情報ランクBです。[出典20]
会社全体の平均値だけでは支店・職種差が消えるため、営業所別または職種別の残業、休日出勤、荷扱い時間を継続公開することが望まれます。
SNS・匿名掲示板の確認結果
X、5ちゃんねる、爆サイについて、会社名と「残業」「営業」「退職」「パワハラ」「自販機」「人員削減」などを組み合わせて確認しました。
今回、投稿者が伊藤園の現社員・元社員であること、勤務時期、職種を確認でき、採点根拠として使用できる具体的な投稿本文は確認できませんでした。
Innovation|21/25
Innovationでは、営業・物流・農業で人が担う重量物運搬、長距離運転、反復作業をどこまで減らし、その成果を働く人へ返しているかを評価します。
伊藤園は物流の作業時間削減目標、中継輸送、共同輸送、茶農業の機械化を具体化し、研究成果も実商品へつなげています。一方、効率化で浮いた時間・利益が、社員と委託先の賃金や休息へどれだけ戻ったかは十分に定量化されていません。
作業負担・危険の削減|8/10
伊藤園は正パレット取引の推進により、物流委託先の作業時間を2023年度比で2万時間以上削減するKPIを設定しています。モーダルシフトでは乗務員労働時間400時間以上の削減を掲げ、中継輸送では長距離ドライバーの日帰り勤務を可能にすることを狙っています。[出典8・9]
2026年4月にはネスレ日本と静岡~千葉の共同輸送、静岡~関西のラウンド輸送を開始しました。従来空車だった復路へ茶原料を積むことで、同じトラックとドライバーの時間をより有効に使います。[出典12]
2026年4月期からは営業拠点再編や配送業務の外部委託を進め、営業担当者を売場づくり・販促提案へ重点配置する改革も進めています。[出典13]
物流現場の荷役・長距離運転と、営業担当者の配送負担を減らす具体策を評価して8/10点です。
一方、2万時間・400時間はKPIであり、全目標の達成実績が確定した数字ではありません。営業配送の外部委託も、仕事そのものをなくすのではなく外部の物流会社へ移す面があります。委託先を含む実労働時間、重量物作業、事故がどれだけ減ったかを実績で示せれば10/10点を検討できます。
商品・サービスの改善|5/5
伊藤園は茶産地育成、品質管理、容器・物流、資源循環まで商品に関わる仕組みを改善しています。
2026年には埼玉県茶業研究所と共同育成した茶新品種「彩の女神」「彩の糸」を出願し、東京農工大学とは製品開発、原料調達、環境対策を対象とする包括連携を開始しました。[出典24・25]
7月には茶殻をアップサイクルした「緑茶インク」を開発し、実際に「お~いお茶」限定ボトルのラベルへ使用しました。9月には静岡工場で年間約20トン発生する使用済みポリエチレン付クラフト袋から紙繊維を回収し、リーフ製品用段ボールの原料へ戻す取組みも開始しています。[出典26・27]
研究・廃棄物削減を発表だけで終わらせず、商品・包装へ実装しているため5/5点です。
改善成果の人間への還元|3/5
伊藤園の平均残業は2023年4月期25.4時間、2024年4月期24.0時間、2025年4月期23.1時間、2026年4月時点の厚労省由来データでは21時間まで減っています。[出典4・6]
営業拠点再編、配送外部委託、物流の共同化などと並行して労働時間が改善している点は、人への還元を示す材料です。
一方、どの改革によって何時間減ったのか、物流委託先の削減時間が休息・賃上げ・増員のどれへ戻ったのか、配送を外部委託した後の委託先労働者の負担がどう変わったのかは公表されていません。
そのため3/5点です。改革前後を同じ営業所・物流工程で比較し、残業、荷役時間、事故、休日、賃金の改善を定量公開できれば4~5点を検討できます。
研究開発・現場改善の継続|5/5
伊藤園は中央研究所とTAKANAWA GATEWAY CITY Labを持ち、「おいしさ」「健康」「環境」を研究テーマとして継続しています。[出典1・28]
2026年4月には東京農工大学との包括連携、茶新品種の共同育成、6月には土壌微生物を利用した農地の温室効果ガス削減研究、7月には緑茶インクの実用化など、農業・食品・環境をまたぐ研究成果を継続して公表しています。[出典24~26・28]
研究所の存在だけでなく、共同研究、品種登録、商品への実装まで続いているため5/5点です。
自動化・AI導入後の雇用状況
伊藤園では自動販売機のオンラインシステム、物流効率化、営業拠点再編、配送業務の外部委託など、営業・供給網の省力化を進めています。2026年4月期からはサプライチェーン戦略部を社長直轄で新設し、営業担当者を配送中心から売場・販促提案へ移す方針を明示しています。[出典13]
単体従業員数は2024年4月期5,226人から2025年4月期4,965人、2026年4月期4,879人へ減少しました。一方、連結従業員数は7,929人から7,916人、7,945人でほぼ横ばいです。[出典2・29]
2027年新卒採用など採用自体は継続しています。今回、大規模な希望退職や一斉解雇を示す公表情報は確認していません。
ただし、単体人員の減少と営業拠点再編・配送外部委託との因果関係、外部委託に伴う配置転換人数、再教育人数、委託先での雇用増減は公表されていません。自動化・省人化を人員削減と断定せず、今後も時系列で確認する必要があります。
Protection|21/25
Protectionでは、地震、豪雨、渇水、物流停止、サイバー攻撃などが起きても、飲料や茶葉を市民へ届けられるかを評価します。
伊藤園はファブレス方式、ブロック生産・物流、複数輸送手段、災害対応自動販売機、実災害への物資支援まで持っています。供給網の分散性は強い一方、工場・システム停止後の具体的なRTOと、サイバー事故後の最終検証には公開不足があります。
災害への備え・訓練|4/5
伊藤園グループはリスクマネジメント体制を持ち、自然災害、水リスク、物流停止、情報セキュリティなどを事業リスクとして管理しています。飲料事業では全国の委託工場へ生産を分散し、自然災害や渇水・断水で一地域の製造が難しい場合に別地域へ切り替えやすい構造を取っています。[出典11・18]
また、災害対応自動販売機を平時から配置しています。例えば地震で停電し、店舗営業や物流が止まった場合でも、設置先の担当者がキー操作を行えば内蔵バッテリーで商品を搬出し、被災者へ無料提供できます。バッテリー保持時間は2時間以上です。[出典16]
事前に供給設備を配置している点を評価して4/5点です。
一方、伊藤園単体でのBCP実地訓練回数、拠点別の復旧目標時間、訓練後の改善結果は十分に公表されていません。これらを毎年公開できれば5/5点を検討できます。
生産・物流・調達の代替|5/5
飲料ボトリングは沖縄県を除き、全国の飲料製造委託先へ分散するファブレス方式です。さらにブロック生産・物流で、生産地と消費地を近づけています。[出典3・9・18]
物流でもトラックだけに依存せず、中継輸送、共同輸送、鉄道、フェリーを組み合わせています。2026年にはネスレ日本との共同輸送・ラウンド輸送も稼働しました。[出典8・9・12]
例えば一地域の工場が止まった場合に別地域の委託工場へ振り替える余地があり、高速道路が寸断された場合にも鉄道・フェリー等の代替手段を持ちやすい構造です。
生産拠点と輸送手段の両方に複数の選択肢を実装しているため5/5点です。
サイバー防衛・情報保護|3/5
2024年12月、海外子会社ITO EN North Americaの一部ファイルサーバーがランサムウェア攻撃を受けました。会社は対象サーバーをネットワークから隔離し、攻撃前のバックアップから復旧しました。基幹システムとは分離され、システムは通常稼働へ戻ったと公表しています。[出典14]
2026年7月にはグループセキュリティ基本方針を制定し、機密性・完全性・可用性、サプライチェーン対策、インシデント対応・復旧、教育、必要な人員・予算・技術の確保を明文化しました。[出典15]
実際の攻撃時に隔離とバックアップ復旧が機能した点を評価して3/5点です。
一方、同社の公開情報ではランサムウェア事故の最終的な情報流出有無、第三者によるセキュリティ認証・評価、復旧時間、復旧訓練の結果は公表されていません。公開情報がない点は課題です。採点上も減点対象です。第三者評価と復旧KPIを継続公開できれば4~5点を検討できます。
供給継続・復旧能力|4/5
全国の委託工場、ブロック生産・物流、複数輸送手段、営業拠点網を持つため、一拠点停止で全供給が止まりにくい構造です。[出典9・18]
2026年4月期からはサプライチェーン戦略部を新設し、製品企画、原料調達、製造、物流、営業を横断して、拠点大型化、共同配送、グループシナジーを含む再構築を進めています。[出典13]
飲料は重量があり、災害や人手不足で輸送能力が落ちると店頭欠品へつながります。生産と物流を複数経路へ分散しておくことで、生活に必要な水分を届け続けやすくなります。
一方、主要商品ごとの代替生産率、工場停止後のRTO、物流拠点停止時の平均復旧時間は公表されていません。そのため4/5点です。主要商品で代替可能率と復旧実績を公開できれば5/5点を検討できます。
危機時の市民への対応|5/5
伊藤園の災害対応自動販売機は、停電時でも飲料を無料提供できる仕組みです。通常の販売設備を、災害時には地域の小規模な飲料備蓄拠点へ切り替えられます。[出典16]
2026年8月には「令和8年熊本地震」に対して1,000万円の義援金を決定し、飲料製品などの支援物資を継続提供すると発表しました。2024年の能登半島地震でも飲料等の支援を実施しています。[出典17]
例えば断水や停電で避難所・地域住民が飲み物を入手しにくくなった場合、伊藤園は既設自販機と全国の飲料物流を使って水分補給を支えられます。仕組みと実災害での支援実績の両方があるため5/5点です。
良いニュース・最近の前向きな動き
最近の前向きな動きでは、Innovationで物流の実運用と資源循環、Protectionで災害支援、農業では日本茶産地の維持を進めています。伊藤園の商品が選ばれることで、茶農家への需要、物流の省力化、廃棄物削減、災害時の飲料供給へ売上を回せる企業活動を支えることにつながります。
2026年4月 ネスレ日本と共同輸送・ラウンド輸送を開始(Innovation)
静岡~千葉間では、ネスレ日本の飲料の上部空きスペースへ伊藤園の軽量リーフ製品を積む共同輸送を開始しました。静岡~関西間では、往路でネスレ日本の飲料、復路で伊藤園の原料茶葉を運び、空車回送を減らしています。[出典12]
トラックの使用台数と空車区間を減らせれば、同じ量の商品を運ぶために必要な運転時間と燃料を減らせます。物流2024年問題で不足するドライバーを、不要な空車運転へ使わずに済むことが人への直接的な利益です。
2026年7月 茶殻由来の緑茶インクを商品へ実装(Innovation)
飲料製造で発生する茶殻・茶葉を利用した「緑茶インク」を共同開発し、「お~いお茶」の限定ボトルラベルへ実用化しました。[出典26]
廃棄物を別製品の原料へ変えることで、廃棄処理だけに資源と費用を使う流れを減らせます。研究成果が実際の商品へ使われた点を評価できます。
2026年9月 使用済みクラフト袋を段ボール原料へ循環(Innovation)
静岡工場では、茶葉輸送に使ったポリエチレン付クラフト袋が2025年度に年間約20トン発生していました。2026年9月から王子ホールディングスと連携し、紙繊維を回収して伊藤園のリーフ製品用段ボール原料へ戻す運用を開始しました。[出典27]
工場で出る廃棄物を自社商品の梱包材へ戻すため、廃棄量と新規原料使用の両方を減らす循環になります。
2026年8月 熊本地震へ義援金・飲料支援(Protection)
7月28日に発生した令和8年熊本地震に対し、伊藤園グループは1,000万円の義援金と飲料製品等の支援物資提供を決定しました。[出典17]
飲料会社の本業である在庫・物流を被災地へ使うことで、断水や物流混乱時の水分不足を直接補えます。
悪いニュース・問題となった動き
問題面では、Safetyの労災と営業現場の負担、雇用公平性、Protectionのサイバー検証が中心です。これらが改善されなければ、消費者が商品を買うことで支える売上が、現場の休息や安全へ十分に戻らない状態が残ります。
2025年4月期 労災95件・度数率2.00(Safety)
労災件数は2023年4月期116件、2024年4月期105件、2025年4月期95件と減少しました。死亡者は3年連続0人です。[出典6]
一方、度数率は2024年4月期1.92から2025年4月期2.00へ上昇しました。件数減少だけで「十分安全」とは判断できません。
車両事故、荷扱い、転倒などの事故類型別に対策と結果を公開し、事故頻度も下げることが必要です。
2026年 女性管理職4.5%、正規男女賃金比79.7%(Safety)
2026年4月期の女性管理職比率は4.5%で、前年3.9%から改善しましたが、会社目標10%の半分未満です。正規雇用従業員の男女賃金比は79.7%です。[出典2・8]
採用や育休制度を整えるだけでなく、管理職への昇格と職種配置の偏りを減らさなければ、意思決定層と賃金の差が残ります。
2025~2026年 営業現場の負担を示す口コミ(Safety)
公式の平均残業は改善していますが、口コミ集計ではOpenWork31.4時間、転職会議34.5時間と会社公表値より長い残業が示されています。[出典21・22]
ルートセールスの仕事には運転、重量物、納品、営業目標が重なるため、営業拠点再編と配送外部委託によって現場負担が実際にどこまで減ったかを、職種別の実績で示す必要があります。
2024年発生・2026年も検証課題 北米子会社ランサムウェア被害(Protection)
ITO EN North Americaでは2024年12月に一部ファイルサーバーが暗号化されました。隔離とバックアップ復旧が機能し、基幹システムへの影響は限定されました。[出典14]
2026年7月にはグループセキュリティ基本方針を制定して対策を強化しました。[出典15]
一方、最終的な情報流出有無、第三者認証、復旧時間の年次KPIは公表されていません。事故後の改善を外部から検証できる状態にすることが必要です。
総合評価と、これから改善してほしいこと
現在76点・シビックランクBです。次のAランクは80点からなので、あと4点必要です。
伊藤園は、茶産地育成、食品安全、物流省力化、研究開発、災害対応まで広い範囲で人間への具体的な貢献があります。特に、生産と物流の代替性、実災害での飲料支援、共同輸送の実運用は強みです。
Aランクへ上がる最短ルートは、新しい環境施策を増やすことではなく、営業現場の休息と労働災害を改善することです。この2項目をそれぞれ一段階上げれば、76点から80点へ到達します。
営業・ルートセールスの残業と有休を改善する|労働時間・休息 6→8/10
現在は正社員平均残業21時間、2025年4月期有給取得率60.9%です。口コミでは残業31~34時間台の集計もあり、営業所・職種差が残っています。[出典4・6・21・22]
会社は営業拠点再編と配送外部委託を進めています。この改革で単に配送業務を外部へ移すのではなく、ルートセールスを含む全主要職種で月平均残業15時間以下、有給取得率80%以上、45時間超残業者を低水準にし、その結果を職種別に公開してください。
現在6/10点
改善後8/10点
加点+2点
総合76→78点
ランクBのままです。
働く人にとっては、運転・荷扱い・商談を終えた後の事務処理まで含む拘束時間が短くなり、休暇を実際に使える日が増えます。
参考企業はイオン九州株式会社です。Google Drive上の現行審査では総合73点・Bで、月平均残業7.9時間、有給休暇取得率82.1%、年間休日125日を確認し、「労働時間・休息」8/10点と評価しています。伊藤園も同程度の残業・有休実績を会社単体・職種別で示せれば8点が妥当になります。
労災95件・度数率2.00をさらに下げる|労働安全・健康 6→8/10
現在は労災95件、度数率2.00、死亡0です。事故件数は減少していますが、度数率は前年1.92から改善していません。[出典6]
車両事故、荷扱い、転倒、機械作業などを事故類型別に分析し、車両研修だけでなく、積み込み方法、台車・補助器具、ルート設計、休憩、低事故拠点の標準化まで対策してください。そのうえで、死亡0を維持し、労災70件以下、度数率1.5以下を複数年継続して公開できれば8/10点を検討できます。
現在6/10点
改善後8/10点
加点+2点
総合76→78点
ランクBのままです。
働く人にとっては、事故で負傷・休業する可能性が下がり、運転や重量物を扱う仕事を長く続けやすくなります。
参考企業は東洋製罐株式会社です。Google Drive上の現行審査では総合79点・Bで、2024年度に死亡労災0、度数率0.16、強度率0を単体で公表し、「労働安全・健康」8/10点です。伊藤園も死亡0だけでなく事故頻度を大きく下げることが8点への具体的な基準になります。
次のランクへ上がるための具体例
現在76点・Bで、Aは80点からです。
まず、営業拠点再編・配送外部委託の成果を職種別に測定し、全主要職種で月平均残業15時間以下、有給取得率80%以上を実現して「労働時間・休息」を6/10点から8/10点へ上げます。これで+2点です。
次に、死亡0を維持しながら労災件数を95件から70件以下、度数率を2.00から1.5以下へ下げ、その結果を継続公開して「労働安全・健康」を6/10点から8/10点へ上げます。これで+2点です。
76点+2点+2点=80点となり、シビックランクAです。
つまり、伊藤園が次のランクへ上がるために最も重要なのは、物流・営業改革によって「現場の残業と事故が実際に減った」という結果を数字で示すことです。物流の効率化やサプライチェーン改革を会社の収益改善だけで終わらせず、働く人の時間と安全へ返すことがAランクへの最短ルートです。
出典一覧
1.株式会社伊藤園「会社概要・事業紹介」【情報ランクA】
2.金融庁EDINET「株式会社伊藤園 2026年4月期 有価証券報告書」【情報ランクS】
3.株式会社伊藤園「事業紹介」【情報ランクA】
4.厚生労働省「女性の活躍推進企業データベース」伊藤園公表データ(2026年)【情報ランクS】
5.株式会社伊藤園「新卒採用情報・募集要項」【情報ランクA】
6.株式会社伊藤園「サステナビリティデータ」【情報ランクA】
7.株式会社伊藤園「人権の尊重」【情報ランクA】
8.株式会社伊藤園「マテリアリティ」【情報ランクA】
9.株式会社伊藤園「持続可能な農業・サプライチェーンの構築」【情報ランクA】
10.株式会社伊藤園「茶産地育成事業・契約栽培」【情報ランクA】
11.株式会社伊藤園「事業等のリスク」【情報ランクA】
12.株式会社伊藤園「ネスレ日本との共同輸送・ラウンド輸送」2026年4月28日【情報ランクA】
13.株式会社伊藤園「サステナビリティ トップメッセージ/サプライチェーン構造改革」【情報ランクA】
14.株式会社伊藤園「ITO EN North Americaにおけるランサムウェア被害」2024年12月6日【情報ランクA】
15.株式会社伊藤園「伊藤園グループセキュリティ基本方針」2026年7月【情報ランクA】
16.株式会社伊藤園「災害時の自動販売機について」【情報ランクA】
17.株式会社伊藤園「令和8年熊本地震による被害への支援について」2026年8月3日【情報ランクA】
18.株式会社伊藤園「地球環境の健康/自然災害・水リスクへの対策」【情報ランクA】
19.株式会社伊藤園「コンプライアンス/企業倫理ホットライン」【情報ランクA】
20.Indeed「株式会社伊藤園の社員クチコミ」【情報ランクB】
21.OpenWork「株式会社伊藤園の社員クチコミ」【情報ランクB】
22.転職会議「株式会社伊藤園の評判・残業・有給に関する口コミ」【情報ランクB】
23.株式会社伊藤園「伊藤園グループサプライヤー基本方針・サプライヤーホットライン」【情報ランクA】
24.株式会社伊藤園「東京農工大学と包括連携協定を締結」2026年4月30日【情報ランクA】
25.株式会社伊藤園「茶新品種『彩の女神』『彩の糸』を出願」2026年4月28日【情報ランクA】
26.株式会社伊藤園「茶殻をアップサイクルした緑茶インクを開発」2026年7月3日【情報ランクA】
27.株式会社伊藤園「王子ホールディングスと使用済みクラフト袋を段ボールへ循環利用」2026年9月29日【情報ランクA】
28.株式会社伊藤園「研究・技術 3つの重点テーマ」【情報ランクA】
29.金融庁EDINET各年度有価証券報告書「伊藤園単体・連結従業員数の推移」【情報ランクS】
30.消費者庁「食品表示リコール情報及び違反情報サイト」【情報ランクS】
シビックランクの基準
| シビックランク | 点数 |
|---|---|
| S | 90~100点 |
| A | 80~89点 |
| B | 70~79点 |
| C | 60~69点 |
| D | 50~59点 |
| E | 40~49点 |
| F | 20~39点 |
| G | 0~19点 |
株式会社伊藤園は76点のため、今回のシビックランクはBです。
情報ランクの基準
| 情報ランク | 基準 |
|---|---|
| S | 公的機関、裁判所、規制当局、独立した第三者機関の調査・監査・検証・認証など、内容そのものに独立した裏づけがある情報 |
| A | 企業公式資料、採用情報、公式声明・SNS、氏名・役職・立場を確認できる記名取材や公表発言など、発信主体を確認できる公表情報 |
| B | 従業員・元従業員の口コミ、一般SNS、匿名掲示板など、発信者の身元や対象企業との関係を独立に確認しにくい情報 |
情報ランクは企業そのものの良し悪しではなく、個々の情報の出どころと検証状態を示します。Sは第三者による裏づけがある情報として最も強く扱います。AとBは情報の性質が異なり、働き方の実態確認ではBが有用な場合もあります。口コミは時期・職種・拠点・件数を確認し、公式・公的情報と照合して使用します。
