私たちは、企業の商品を購入したり、サービスを利用したりすることで、そこで働く人たちの未来を変えることができます。
働く人に十分な賃金を払い、休暇を確保し、安全な職場をつくり、人の負担を減らす企業の商品やサービスが選ばれれば、そうした企業により多くの売上が集まります。その結果、働く人を大切にする経営を続けやすくなります。
反対に、低賃金や長時間労働、安全上の問題を改善しない企業の商品やサービスが売れ続ければ、そうした働かせ方のままでも事業を続けることができます。
だからこの企業審査では、「私たちがお金を使うなら、どの企業を選ぶことが、そこで働く人にとってより良い社会につながるのか」という視点から企業を評価します。
なぜ企業を審査するのか?――このサイトの目的と、利用するメリット
今回審査する三菱商事株式会社は、総合79点、シビックランクBです。
三菱商事株式会社の特に強い点は、平均年間給与2,112万円という大きな利益還元に加え、本店が使えない場合に別拠点のEOCへ指揮を移すBCM、世界98海外拠点の供給網、自動運転鉱山やEVバッテリー再利用など、人の危険・手間と供給途絶を減らす事業を同時に持つことです。そのため、この企業の商品を購入したりサービスを利用したりすれば、働く人へ利益を返しながら、災害や国際情勢の変化が起きてもエネルギー・食料・資源・医療などを届け、人が危険作業へ直接入る場面を減らせる社会につながる可能性が高まります。
一方で、改善点として単体の月平均残業時間が31.0時間と長く、男女賃金比率が64.7%、女性管理職比率が13.1%にとどまることに加え、出資先鉱山で死亡事故が発生し、LNG Canadaでは先住民族の土地権・FPICをめぐる異議申立てが続いていることが残ります。
この記事では、三菱商事株式会社の強みと課題をさらに詳しく企業審査していきます。
三菱商事株式会社の企業審査結果
| 評価軸 | 得点 | 主な評価 |
|---|---|---|
| Safety | 37/50点 | 平均給与2,112万円、福利厚生、単体労災度数率0、人権DDを評価。残業31時間、男女賃金比64.7%、投資先事故・先住民族権利問題が課題 |
| Innovation | 21/25点 | 自動運転鉱山、スマート充電、EVバッテリー再利用、自動運転モビリティを高評価。人への還元KPIは不足 |
| Protection | 21/25点 | EOC、震災・安否確認訓練、世界規模の供給網、サイバー対策、災害支援を高評価。RTO・復旧実績の定量開示は不足 |
| 総合 | 79/100点 | シビックランクB |
評価時点:2026年10月13日
主な強み
・2026年3月期の単体平均年間給与は2,112万5,472円、前年比3.9%増
・2026年3月31日時点の単体就業人員は4,456人、連結従業員は63,037人
・国内11拠点、海外98拠点、連結対象会社1,182社のネットワーク
・2025年度の単体有給休暇取得率は73.1%で70%目標を達成
・単体の2024年度労働災害度数率は0
・2025年度の全連結LTIFRは1.31で、5年連続低減
・健康診断、長時間労働者への産業医面接、PCログによる残業時間確認などを実施
・社内人権相談窓口、外部ステークホルダー向けグリーバンスメカニズムを整備
・毎年サプライチェーンの人権・環境デューデリジェンスを実施
・Quellaveco銅鉱山で自動運転トラック・ドリルを導入
・HondaとのALTNAでスマート充電、EVバッテリーリース、使用済みバッテリーの蓄電池転用を推進
・自動運転モビリティの社会実装を推進
・本店と別場所のEmergency Operation Center(EOC)で本店機能停止時の指揮を代替
・震災シミュレーション、EOC訓練、連結安否確認訓練、机上演習を実施
・エネルギー、食料、金属資源、電力、物流、小売、ヘルスケアを複数地域で展開
・2026年熊本地震とベネズエラ地震で各1,000万円の緊急支援を決定
主な課題
・公式の最新月平均残業時間は31.0時間/月で、2023年度29.2時間から増加
・女性管理職比率13.1%
・女性部長職層比率3.4%
・男女賃金比率は全労働者64.7%、正規雇用65.2%、非正規61.5%
・高賃金だが給与中央値や職種・階層別の分布は公開不足
・連結事業では鉱山・資源・エネルギーなど重大事故時の被害が大きい事業を抱える
・10%出資するAntamina鉱山で2025年4月と11月に死亡事故が公表された
・LNG Canadaをめぐり2025年にWet’suwet’enの伝統的リーダーらからFPIC・土地権等に関する異議申立てが行われた
・会社は人権DDを行っていると回答しているが、異議申立てが解決したことを確認できない
・自動運転やAI導入によって人の作業時間・事故率が何%減ったかの横断的KPIは不足
・自動化後の配置転換、再教育、採用・退職への影響を事業横断で追える公開情報は不足
・重要事業の具体的RTO、オフラインバックアップ、復旧訓練の達成時間は公開不足
・2026年に米国シェールガス事業取得とLNG Canada拡張を決定し、安定供給と脱炭素の両立結果が今後の課題
事業内容と人間への貢献
三菱商事は、エネルギー、金属資源、食品、電力、社会インフラ、モビリティ、ヘルスケア、小売などを世界規模でつなぐ総合商社です。
自社で一つの商品を大量生産する企業とは異なり、資源権益への投資、原材料の調達、物流、発電、事業会社の経営、新規事業開発などを組み合わせ、社会に必要な物資やサービスが供給される仕組みそのものを作ります。
例えば日本へLNGを届ける場合、ガス田・液化設備への投資、輸送、販売先との契約をつなぎます。銅では鉱山へ出資し、EVや送電網など電化に必要な資源を供給します。食品では原材料から加工・流通まで、ヘルスケアでは医薬品・医療材料の調達や物流・病院支援などへ関わります。
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 会社名 | 三菱商事株式会社 |
| 設立 | 1950年4月1日 |
| 創立 | 1954年7月1日 |
| 本店 | 東京都千代田区丸の内二丁目3番1号 |
| 代表取締役社長 | 中西 勝也 |
| 資本金 | 2,138億2,467万9,326円 |
| 単体就業人員 | 4,456人、2026年3月31日 |
| 連結従業員数 | 63,037人、2026年3月31日 |
| 海外拠点 | 98拠点、2026年4月1日 |
| 連結対象会社 | 1,182社 |
| 主な事業 | エネルギー&パワー、マテリアル、金属資源、社会インフラ、モビリティ、食品、S.L.C. |
有価証券報告書上の「従業員数」は5,328人ですが、他社への出向者等を調整した就業人員は4,456人です。この記事では会社概要とそろえて就業人員4,456人を主な単体人数として扱います。[出典1・2]
主な事業内容
エネルギー&パワーソリューションではLNG、再生可能エネルギー、電力、次世代エネルギーに取り組みます。
金属資源では銅、原料炭、鉄鉱石、アルミ、電池資源などへ投資・取引を行います。
食品産業では農産物、水産物、食品原料、加工・流通などへ関わります。
モビリティでは自動車販売、EV、バッテリー、自動運転、モビリティサービスを展開します。
S.L.C.では小売、物流、金融、デジタル、生活者向けサービスなどを扱います。
2026年8月にはメディパルホールディングスとの提携を拡大し、医薬品供給、セルフケア、予防・未病、ヘルスケアデータ、食・日用品まで協業領域を広げました。[出典22]
主な利用企業・取引先
三菱商事の直接顧客は、電力・ガス会社、素材メーカー、自動車会社、食品メーカー、小売、医療・医薬品企業、自治体、海外事業者など多岐にわたります。
消費者は三菱商事から直接商品を買わなくても、電気、ガス、食品、自動車、コンビニ、医療・物流などを通じて同社が投資・調達・運営に関わる供給網を利用しています。
事業による人間への貢献
第一の貢献は、生活に不可欠な物資の供給源を複数持つことです。
エネルギー、食料、金属資源を一つの国・企業だけへ依存すると、戦争、災害、輸出規制、物流障害が起きた際に供給が止まりやすくなります。三菱商事は世界98海外拠点と多数の事業会社を通じて供給源を分散しています。[出典1]
第二の貢献は、人が危険な現場へ直接入る作業を技術へ移すことです。
40%出資するペルーのQuellaveco銅鉱山では、自動運転の鉱山トラック・ドリルを導入しています。巨大重機の運転や採掘現場で人が危険へさらされる時間を減らす可能性があります。[出典12]
第三の貢献は、EV・バッテリーを使い切る仕組みを作ることです。
Hondaと設立したALTNAでは、EVバッテリーのリース、使用済み車載バッテリーの系統用蓄電池への転用、スマート充電を進めています。車で使い終えたバッテリーを蓄電池として再利用できれば、資源投入量を減らし、再生可能エネルギーを受け入れやすくなります。[出典13]
Safety|37/50点
Safetyでは、三菱商事本体の社員に利益と休息が十分に還元されているか、男女や雇用形態による機会差が小さいか、さらに世界各地の投資・事業で人権と労働安全を守る仕組みが機能しているかを評価します。
本体社員への金銭的還元と福利厚生、安全管理は非常に強い一方、残業時間、男女賃金差、上位管理職の女性比率、投資先の死亡事故、人権をめぐる異議申立てが満点を妨げています。
賃金・利益の還元|8/10点
2026年3月期の三菱商事単体の平均年間給与は2,112万5,472円で、前年度比3.9%増です。平均年齢42.3歳、平均勤続17年7カ月です。[出典2]
平均給与には賞与と超過勤務手当が含まれます。
この水準は会社が得た利益を社員へ大きく還元していることを示すため8/10点です。
一方、平均値は高所得の管理職や職種構成の影響を受けます。給与中央値、年齢・職種・等級別の分布、非正規社員の平均給与、ベースアップ率を同じ形式で確認できないため10点とはしません。
中央値と雇用区分別の賃金推移まで開示し、幅広い層で高い実質賃金を確認できれば10/10点を検討できます。
労働時間・休息|6/10点
2025年度の単体有給休暇取得率は73.1%で、会社目標の70%を上回りました。[出典2]
フレックスタイム、在宅勤務、サテライトオフィスなども利用できます。
一方、会社公式ページで現在確認できる月平均残業時間は2024年度31.0時間です。2023年度29.2時間から増えており、会社自身も業務の複雑化・スピード化や大型プロジェクト、海外取引によって繁忙期が生じると説明しています。[出典3]
転職会議の投稿者集計では残業28.6時間/月、有給消化率63.6%です。公式値と方向性は大きく矛盾していません。[出典8]
有給取得は良好ですが、平均残業31時間は高水準とは言えないため6/10点です。
月平均残業20時間以下、有給取得率80%以上を複数年継続し、45時間超残業者比率も低水準で公開できれば8/10点を検討できます。
雇用の安定・待遇の公平性|3/5点
2026年4月1日時点の女性管理職比率は13.1%です。会社は2027年度末に15%以上を目標としています。[出典2]
女性部長職層比率は3.4%で、2030年度末10%を目標としています。
男女賃金比率は全労働者64.7%、正規雇用65.2%、非正規雇用61.5%です。会社は同一資格・職務レベルでは同じ報酬体系としており、差の背景には職位・人員構成等があると説明しています。
2026年度も新卒総合職130人を採用しており、雇用は継続しています。[出典15]
女性の管理職登用は進んでいますが、上位職と賃金の結果差が大きいため3/5点です。
女性管理職20%以上、女性部長職層10%以上、男女賃金比率80%以上へ改善し、同等職務での差も継続確認できれば4~5点を検討できます。
福利厚生・育児・介護|5/5点
三菱商事は育児・介護休業、短時間勤務、柔軟な勤務場所、健康診断、人間ドック補助、EAP、産業医・保健師・心理師による支援などを整備しています。[出典3]
2024年には予防・産業衛生を担うウェルネスパートナーデスクを新設し、長時間労働者支援や健康データ活用を強化しました。
国内在勤者の法定定期健康診断受診率は100%です。
制度だけでなく健康支援の専門部署まで持つため5/5点です。
人権・ハラスメント・労使関係|3/5点
三菱商事は人権方針を全役職員へ適用し、グループ会社やサプライヤーにも人権尊重を求めています。毎年サプライチェーンの人権・環境デューデリジェンスを行い、2025年度にはグループ会社向け人権方針・グリーバンスメカニズムのワークショップも実施しました。[出典5・6・7]
社内には匿名利用可能な人権相談窓口があり、社外ステークホルダー向けにも人権・環境グリーバンスメカニズムを設けています。
一方、2025年にはLNG Canadaと関連するパイプライン等をめぐり、Wet’suwet’enの伝統的リーダーらからFPICや土地権等に関する異議申立てが三菱商事等へ提出されました。三菱商事は、人権・環境デューデリジェンスを行っていると回答し、LNG Canadaのターミナル自体はWet’suwet’en伝統領域内にないと説明しています。[出典24・25]
この申し立てによって三菱商事の人権侵害が確定したわけではありません。しかし、資源・エネルギー投資では法的許認可だけでなく、影響を受ける地域・先住民族との合意形成と救済結果が重要です。
強い制度と実施を評価する一方、重大な外部異議申立ての解決結果を確認できないため3/5点です。
対話・救済プロセスの結果を第三者が検証できる形で公開し、地域側との合意や是正を確認できれば4/5点を検討できます。
労働安全・健康|8/10点
三菱商事単体の2024年度労働災害度数率は0です。対象は本社・国内支社の自社従業員と派遣社員です。[出典2]
連結ベースでは2025年度LTIFRが1.31で、前年度1.75から改善し、5年連続で低減しました。[出典3]
会社は重大労災を専用ルートとコンプライアンスルートで報告し、原因分析と再発防止を行う仕組みを持っています。危険作業ではJHA等によるリスク評価を行うグループ事例も公開しています。[出典4]
一方、三菱商事が10%出資するペルーのAntamina鉱山では、2025年4月22日に操業部門の社員1人が事故で死亡し、11月11日には請負会社Lidermanの作業員1人が雷雨時の事故で死亡しました。[出典26・27・28]
これは三菱商事本体社員の労災ではなく、10%出資先の事故であるため単体労災として減点しません。ただし世界各地の高リスク事業へ資本参加し、安全をモニタリングする企業として、投資先の死亡災害を無関係とは扱いません。
本体の度数率0と連結改善を高く評価しつつ、投資先を含む重大事故リスクが残るため8/10点です。
主要高リスク投資先で死亡災害0を複数年継続し、重大事故の原因・是正結果を横断的に開示できれば10/10点を検討できます。
商品・サービスの安全|4/5点
三菱商事は多数の事業へ投融資するため、製品安全だけでなく、新規投資審査や既存投資先のHSE、人権、環境、安全保障、サイバー等のリスク管理が利用者・地域住民の安全へ影響します。
投融資案件ではサステナビリティ・人権・環境リスクを確認し、グループ会社では労働安全衛生をモニタリングしています。[出典4・5]
医療、食料、エネルギー、輸送など生活に直接影響する事業へ関わるため、問題発生時の影響範囲は大きい一方、今回、三菱商事単体を原因とする近年の大規模製品リコールや消費者死亡事故は確認していません。
幅広いリスク管理を評価して4/5点です。
重大事故・品質事故の発生率と投資先改善結果を事業横断で開示できれば5/5点を検討できます。
従業員・元従業員の口コミ
転職会議では残業28.6時間/月、有給消化率63.6%という投稿者集計が掲載されています。[出典8]
2026年8月17日投稿、2026年頃在籍の50代男性・正社員・経営企画・課長クラスの投稿では、
「かつては深夜残業も散見されたが、現在は22時以降オフィスで残業している社員は稀。効率的に業務を進めようとする意識は強い。」
と記載されています。情報ランクBです。[出典9]
2025年頃在籍の20代前半男性・正社員・法人営業の投稿では、繁忙期以外は調整しやすく、有休やリモートワークを利用しやすい一方、海外取引や案件によって繁忙期の残業と部署間差があるとされています。[出典8]
口コミは公式値ではありませんが、公式の31時間という平均残業と合わせると、「深夜残業は以前より減ったが、部署・案件によって残業負担が残る」という構造が確認できます。
SNS・匿名掲示板の確認結果
X、5ちゃんねる、爆サイについて、「三菱商事」と「残業」「退職」「人員削減」「AI」「自動化」「配置転換」「パワハラ」などを組み合わせて確認しました。
今回、2026年の対象法人従業員であること、職種・時期まで確認でき、現在の採点を変更できる投稿本文は確認できませんでした。
検索結果に社名を含む一般投稿や投資関連投稿は多数ありますが、従業員の労働条件や自動化後の雇用を裏づけられる具体的な一次投稿としては使用していません。
Safety小計:37/50点
Innovation|21/25点
Innovationでは、三菱商事が投資・事業開発を通じて、人が担っていた危険作業、移動、充電判断、設備運用などを技術へ移し、その成果を利用者・働く人へ返しているかを評価します。
自動運転鉱山、EVバッテリーの長期利用、スマート充電、自動運転モビリティなど具体例は多く、研究で終わらず事業として実装している点が強みです。一方、投資先で削減した作業時間・事故と、その後の雇用・賃金を統一指標で追える情報は不足しています。
作業負担・危険の削減|8/10点
40%出資するQuellaveco銅鉱山では、ペルーで初めて自動運転の鉱山トラック・ドリルを導入しています。[出典12]
露天掘り鉱山では、巨大トラックの長時間運転、採掘設備付近への立入り、粉じん・斜面・重機接触などの危険があります。
自動運転によって人が重機へ乗り続ける時間や危険区域へ入る必要を減らせるため、人間への具体的な負担軽減として評価します。
モビリティ分野でも自動運転サービスの社会実装を進め、運転手不足による移動サービス停止を減らす取り組みがあります。
一方、Quellavecoで有人運転時間が何%減ったか、事故率が導入前後でどれだけ変化したか、必要運転手数と配置転換人数は公表されていません。
危険作業の明確な機械代替を評価して8/10点です。
事故率・運転人時・危険区域立入り回数を導入前後で公開し、雇用移行まで確認できれば10/10点を検討できます。
商品・サービスの改善|5/5点
HondaとのALTNAでは、EVのバッテリーリース、車載利用後のバッテリーを系統用蓄電池へ転用するリパーパス事業、電力網のオフピークに自動充電するスマート充電を進めています。[出典13]
EVユーザーは電力料金が高い時間帯を毎回自分で判断せずに充電を最適化でき、使用済みバッテリーを捨てずに蓄電池として再利用できます。
さらに2026年8月のメディパルとの提携では、医薬品供給、予防・未病、セルフケア、ヘルスケアデータ、食を通じた健康支援まで対象を広げています。[出典22]
利用者のコスト、資源消費、医療・物流課題を事業として改善するため5/5点です。
改善成果の人間への還元|3/5点
自動運転鉱山は危険作業を機械へ移し、スマート充電は利用者の判断・操作を減らし、EVバッテリーの再利用は資産価値を長く使う仕組みです。
人の安全・手間・利用コストへ返す方向性は明確です。
一方、三菱商事本体の業務DXによって社員の残業が何時間減ったか、投資先の自動化で現場人員が何人減り、その人をどの職種へ配置転換したか、教育・賃金・休日へどの程度還元したかを横断的に確認できる公開情報は不足しています。
成果の方向は確認できるため3/5点です。
代表的な自動化案件について、事故・作業時間・人員・再教育・賃金を導入前後で公開できれば4~5/5点を検討できます。
研究開発・現場改善の継続|5/5点
三菱商事は単独の研究所型企業ではありませんが、事業会社・技術企業と合弁し、技術を社会実装する力があります。
Quellavecoの自動運転鉱山、HondaとのALTNA、自動運転モビリティ、電力・デジタル領域などを複数年にわたり事業化しています。
一度のPoCで終了せず、出資・合弁・商用化まで進めているため5/5点です。
自動化・AI導入後の雇用状況
Quellavecoの自動運転重機、EV・電力のデジタル制御、自動運転モビリティなど、自動化・AIに関係する事業を確認しました。
2026年4月には三菱商事本体へ総合職130人が新規入社しており、今回の調査ではAI・自動化を直接理由とする三菱商事本体の大規模希望退職、整理解雇、全社採用停止を確認していません。[出典15]
一方、投資先・事業会社で自動運転や省人化を導入した後の運転手・現場作業員について、配置転換人数、再教育人数、契約終了、退職、採用抑制を横断的に追える情報は不足しています。
X、5ちゃんねる、爆サイも追加検索しましたが、三菱商事本体のAI・自動化によって雇用が削減されたと対象法人・職種・時期まで確認できる投稿本文は見つかりませんでした。
Innovation小計:21/25点
Protection|21/25点
Protectionでは、地震、感染症、戦争、暴動、サイバー攻撃、供給途絶が起きても、三菱商事が意思決定を続け、エネルギー・食料・資源など社会に必要な物資を供給できるかを評価します。
三菱商事は、本店とは別のEOC、震災・安否確認訓練、世界98海外拠点、複数地域の供給源を組み合わせています。計画だけでなく訓練まで実施しているため、この軸は高く評価できます。
災害への備え・訓練|5/5点
三菱商事は大規模自然災害、テロ・暴動、新興感染症、サプライチェーン遮断、サイバー事故などをオールハザードで扱っています。[出典14]
本店機能に重大な支障が生じた場合、本店所在地とは別に設けたEmergency Operation Centerが本店緊急危機対策本部に代わり、初動対応と事業継続を担います。
さらに、震災シミュレーション訓練、EOC訓練、連結ベースの安否確認訓練、机上演習を実施し、食料等の備蓄も整えています。
指揮拠点そのものの喪失を想定し、別拠点へ移す訓練まで確認できるため5/5点です。
生産・物流・調達の代替|5/5点
2026年4月時点で海外98拠点、連結対象会社1,182社を持ち、エネルギー、金属資源、食料、電力、物流などを複数国・地域で展開しています。[出典1]
一つの国・港・資源だけが止まった場合に、別の地域・事業会社・輸送経路へ切り替える選択肢を持ちやすい構造です。
LNG Canadaは日本を含むアジア向け供給源として、従来の中東等とは異なる北米西岸の供給ルートを加えます。2026年9月には生産能力を1,400万トンから2,800万トンへ倍増する拡張計画へ最終投資決定しました。[出典20]
世界規模の複数供給源と事業構成を評価して5/5点です。
サイバー防衛・情報保護|4/5点
三菱商事は主要子会社を含む情報セキュリティ体制、社内規程、社員教育、システム対策、事故対応体制を整え、外部専門機関とも連携しています。[出典14]
サイバー攻撃やメール詐欺を想定した社員訓練も行い、情報セキュリティを事業継続上の危機として扱っています。
一方、SOCの具体的監視時間、MFA・EDR導入率、オフラインバックアップの範囲、重要システムのRTO・RPO、ランサムウェア復旧訓練の時間は公開不足です。
具体的な体制と訓練を評価して4/5点です。
主要システムの復旧時間と第三者テスト結果まで公開できれば5/5点を検討できます。
供給継続・復旧能力|4/5点
三菱商事は本体だけでなく重要なグループ会社へBCM整備・モニタリングを広げ、人的資源、設備、サプライチェーン、情報、財務などの影響を確認します。[出典14]
本店停止時にEOCへ指揮を移せること、世界各地の事業会社を使えることは大きな強みです。
一方、主要事業ごとに「停止から何時間で指揮を移したか」「何日で供給を回復できるか」「代替供給率は何%か」といった定量的なRTO・実績は公開不足です。
高い構造的復旧力を評価して4/5点です。
実訓練・実災害でのRTO達成率、代替供給率を主要事業別に公開できれば5/5点を検討できます。
危機時の市民への対応|3/5点
三菱商事は災害発生時に緊急支援と復興支援を継続しています。
2026年7月の熊本地震ではジャパン・プラットフォームへ1,000万円、2026年8月にはベネズエラ地震被害に対して同じく1,000万円の寄附を決定しました。[出典16・17]
東日本大震災後には復興支援財団を設立し、奨学金、復興助成、産業復興・雇用創出、ワイナリープロジェクトなどを長期実施し、2026年6月に所期の役割を終えて解散しました。[出典18]
金銭支援と長期復興支援は具体的ですが、三菱商事自身のエネルギー・食料・物流ネットワークを使い、災害直後に「何人へ何日分の物資を届けたか」という直接供給実績は十分公開されていません。
継続的な支援を評価して3/5点です。
災害協定や事業ネットワークを使った物資・電力等の直接供給量を継続公開できれば4~5/5点を検討できます。
Protection小計:21/25点
良いニュース・最近の前向きな動き
2026年の三菱商事では、エネルギー安定供給、医療・生活物資の供給網強化、災害支援など、Protectionに直結する動きが続いています。
一方、LNGやシェールガス投資は供給安定へ貢献する反面、気候負荷や地域人権という別のリスクも生むため、長所だけでなく後段の課題と合わせて評価します。
2026年8月 メディパルとの提携を医療から食・日用品へ拡大(Innovation・Protection)
三菱商事とメディパルホールディングスは2026年8月、ヘルスケア・食・日用品まで協業領域を広げました。[出典22]
医療人材不足、物流費上昇、海外原薬依存による供給不安などを背景に、調達・物流、病院運営支援、セルフケア、予防・未病、データ活用を一体で改善する方針です。
医薬品や日用品の供給停止を減らし、医療従事者が本来業務へ時間を使える仕組みにつながる可能性を評価します。
2026年7~8月 熊本・ベネズエラ地震へ緊急支援(Protection)
7月28日の熊本地震に対し1,000万円、ベネズエラ地震に対しても1,000万円の支援を決定しました。[出典16・17]
東日本大震災では短期寄付で終わらず、復興支援財団を14年運営した実績があります。
災害直後の支援と長期復興の両方を持つ点はProtectionの強みです。
2026年9月 LNG Canada拡張を最終投資決定(Protection)
LNG Canadaの生産能力を年間1,400万トンから2,800万トンへ倍増する拡張計画を決定しました。[出典20]
三菱商事は2030年代初頭以降、既存持分年間210万トンに加えて新たに年間210万トンを引き取る予定です。
中東など特定地域への依存を下げ、北米西岸からアジアへ供給できることはエネルギー安全保障上の強みです。
悪いニュース・問題となった動き
三菱商事では本体社員の重大労災より、世界各地の投資先で起きる事故・人権・気候問題をどう監督するかが大きな課題です。
少数持分だから全てを直接統制できるわけではありませんが、投資先の選定、取締役派遣、対話、HSE、人権DDを通じて改善へ影響を与える立場にあります。
2025年4月・11月 Antamina鉱山で死亡事故(Safety)
三菱商事が10%を保有するペルーのAntamina鉱山では、2025年4月22日に操業部門のシニアマネジャー1人が作業中の事故で死亡しました。会社は全体の安全停止と調査開始を公表しています。[出典26・28]
11月11日には請負会社Lidermanの作業員1人が雷雨時の事故で死亡し、別の作業員1人が負傷しました。[出典27]
いずれも三菱商事本体社員の労災ではなく、三菱商事の出資比率も10%です。
それでも、鉱山は同社の金属資源事業を支える重要投資先であり、死亡事故を他の高得点で消したようには扱いません。今後は重大事故の原因、是正策、再発の有無を投資先横断で追う必要があります。
2025年 LNG Canadaをめぐる先住民族権利の異議申立て(Human Rights)
2025年7月、Wet’suwet’enの伝統的リーダーらが、LNG Canadaと関連するCoastal GasLinkをめぐり、FPIC、土地権等の問題を理由に三菱商事と国際協力銀行へ申し立てを行いました。[出典24・25]
三菱商事は、人権尊重を事業の重要課題とし、人権・環境デューデリジェンスを実施していること、LNG Canadaのターミナル自体はWet’suwet’en伝統領域内ではないことを回答しました。
申し立ては人権侵害の確定判定ではありません。
一方、2026年9月にはLNG Canada拡張を最終投資決定しているため、事業拡大と並行して、影響を訴える先住民族との対話・救済がどこまで進んだかを公開する必要があります。
2026年 天然ガス投資を拡大、脱炭素との両立が課題(Protection)
三菱商事は2026年5月にカーボンニュートラル社会へのロードマップ2.0を公表した後、7月に米国テキサス・ルイジアナ州のシェールガス事業取得を完了し、9月にはLNG Canada拡張を決定しました。[出典20・21]
天然ガスは石炭よりCO2排出が少なく、再生可能エネルギーの変動を補う移行燃料として利用できます。一方、長期の大型投資は化石燃料依存を固定化するリスクもあります。
企業審査ではLNG拡大自体を直ちに悪としません。
重要なのは、供給安定を維持しながら、メタン排出、ライフサイクル排出、再エネ・蓄電池への投資比率をどの速度で改善するかを実績で示すことです。
総合評価と、これから改善してほしいこと
三菱商事株式会社は現在79点、シビックランクBです。
次のAランクは80点からなので、あと1点必要です。
本体社員への利益還元、福利厚生、単体労災、安全管理、EOC、BCM、世界規模の供給網、Innovationはいずれも高い水準です。
一方、Aランクへ上がるためには、巨大な投資・供給網を持つ企業だからこそ、投資先の人権・労働安全を「制度がある」だけで終わらせず、問題が起きた案件をどう解決したかまで公開することが重要です。
LNG Canadaの人権課題で対話・救済結果を示す|Safety
現在の「人権・ハラスメント・労使関係」は3/5点です。
三菱商事には人権方針、投融資時の人権DD、サプライチェーン調査、内部相談窓口、外部グリーバンスメカニズムまであります。
制度面だけなら4点以上の水準です。
一方、LNG Canadaと関連パイプラインをめぐり、Wet’suwet’enの伝統的リーダーらからFPIC・土地権等の異議申立てがありました。
企業が実行すべき改善は、
・申立人との対話経過
・三菱商事が実施した人権影響評価
・独立した第三者を含む検証
・FPIC・土地権に関する論点ごとの会社見解
・必要な是正・救済措置
・当事者側の合意または継続協議状況
・拡張計画での再発防止・追加DD
を公開することです。
外部異議申立てに対して、対話・是正・救済が機能したことを第三者が確認できれば3→4/5点を検討できます。
改善後想定:3→4点
加点幅:+1点
総合点:79→80点
ランク:B→A
参考企業は、単純に同業他社の点数を追うより、三菱商事自身が既に整備しているグリーバンスメカニズムを実際の案件で機能させることです。今回のA到達には新しい制度を追加するより、既存制度で問題を解決した結果を示す方が重要です。
月平均残業20時間以下へ減らす|Safety
現在の「労働時間・休息」は6/10点です。
有給取得率73.1%は良好ですが、月平均残業31.0時間は改善余地があります。
企業が実行すべき改善は、
・単体月平均残業20時間以下
・月45時間超残業者比率の継続低下
・有給取得率80%以上
・海外との時差勤務・繁忙期の業務平準化
・部署別残業の格差縮小
です。
複数年確認できれば6→8/10点を検討できます。
改善後想定:6→8点
加点幅:+2点
総合点:81点
ランク:A
参考企業を一社の平均値だけで決めるのではなく、三菱商事自身が公開している31時間を20時間以下へ下げることを明確な基準とします。
高リスク投資先の重大事故ゼロを横断管理する|Safety
現在の「労働安全・健康」は8/10点です。
三菱商事単体の労災度数率0、全連結LTIFR1.31・5年連続低減は高く評価できます。
一方、Antaminaでは2025年に死亡事故が2件公表されました。
企業が実行すべき改善は、
・主要鉱山・エネルギー投資先の死亡事故件数
・重大労災
・LTIFR
・請負労働者を含む事故率
・事故原因
・是正完了率
・同種再発件数
を投資先横断で毎年公開し、死亡事故0を複数年継続することです。
確認できれば8→10/10点を検討できます。
改善後想定:8→10点
加点幅:+2点
総合点:81点
ランク:A
RTO・代替供給率を主要事業ごとに公開する|Protection
現在の「供給継続・復旧能力」は4/5点です。
EOC、BCM、世界98拠点は非常に強いですが、どの重要事業を何時間・何日で復旧できるのかが外部から見えません。
企業が実行すべき改善は、LNG、電力、食料、金属、物流など主要事業について、
・目標復旧時間RTO
・実地訓練での復旧時間
・代替調達率
・代替輸送への切替時間
・重要システムのRPO
・本店からEOCへの指揮移管時間
を公開することです。
主要事業でRTO達成を複数年確認できれば4→5/5点を検討できます。
改善後想定:4→5点
加点幅:+1点
総合点:80点
ランク:A
次のランクへ上がるための具体例
現在79点・Bで、Aランクは80点からなので、あと1点必要です。
最短の到達例は、LNG Canadaをめぐる人権異議申立てについて、三菱商事のグリーバンスメカニズムと人権デューデリジェンスを使い、当事者との対話、第三者検証、必要な是正・救済、拡張計画での追加対策を公表し、「人権・ハラスメント・労使関係」を3→4点へ引き上げることです。
79点+1点=80点となり、シビックランクAへ上がります。
ほかにも、月平均残業を31時間から20時間以下へ減らす、主要投資先の死亡事故0を複数年続ける、主要事業のRTOを実測公開することでもAへ到達できます。
つまり三菱商事は、社会インフラを支える能力や本体社員への利益還元が不足している企業ではありません。
次に必要なのは、巨大な資本力と危機対応力を、投資先で働く人、地域住民、先住民族の安全と権利にも同じ強さで反映し、その解決結果まで公開することです。
出典一覧
1.三菱商事株式会社「会社概要」【情報ランクA】
2.三菱商事株式会社「2025年度 有価証券報告書・訂正報告書」【情報ランクS】
3.三菱商事株式会社「ウェルビーイング(労働安全衛生、健康経営):取り組み」【情報ランクA】
4.三菱商事株式会社「ウェルビーイング:体制・システム」【情報ランクA】
5.三菱商事株式会社「人権方針・人権デューデリジェンス」【情報ランクA】
6.三菱商事株式会社「人権:グリーバンスメカニズム」【情報ランクA】
7.三菱商事株式会社「サプライチェーン・マネジメント」【情報ランクA】
8.転職会議「三菱商事株式会社 残業・有給の投稿者集計」【情報ランクB】
9.転職会議「2026年頃・50代男性・正社員・経営企画課長クラス ワークライフバランス投稿」【情報ランクB】
10.三菱商事株式会社「労働慣行(従業員との関わり):取り組み」【情報ランクA】
11.三菱商事株式会社「食品産業グループ」【情報ランクA】
12.三菱商事株式会社「アングロ・アメリカン・ケジャベコ」【情報ランクA】
13.三菱商事株式会社「EV・バッテリーバリューチェーン事業」【情報ランクA】
14.三菱商事株式会社「リスクマネジメント:取り組み」【情報ランクA】
15.三菱商事株式会社「2026年度新入社員への社長メッセージ」【情報ランクA】
16.三菱商事株式会社「令和8年7月 熊本地震被害に対する支援について」【情報ランクA】
17.三菱商事株式会社「ベネズエラ地震への災害支援について」【情報ランクA】
18.三菱商事株式会社「三菱商事復興支援財団解散のお知らせ・東日本大震災復興支援活動」【情報ランクA】
19.三菱商事株式会社「カーボンニュートラル社会へのロードマップ2.0」【情報ランクA】
20.三菱商事株式会社「LNGカナダプロジェクト拡張計画の最終投資決定について」2026年9月29日【情報ランクA】
21.三菱商事株式会社「米国テキサス州・ルイジアナ州におけるシェールガス事業」2026年7月15日【情報ランクA】
22.三菱商事・メディパルホールディングス「ヘルスケア・食・日用品の領域における新たな業務提携」2026年8月7日【情報ランクA】
23.LNG Canada「Joint Venture Participants」【情報ランクA】
24.Business & Human Rights Resource Centre「Mitsubishi Corporation response to allegation re- Canada LNG project」2025年8月5日【情報ランクA】
25.Friends of the Earth Japan「Indigenous Leaders in Canada Demand Accountability from JBIC and Mitsubishi」2025年7月17日【情報ランクA】
26.Compañía Minera Antamina「Comunicado Antamina」2025年4月22日【情報ランクA】
27.Compañía Minera Antamina「Comunicado de sensible fallecimiento」2025年11月11日【情報ランクA】
28.三菱商事株式会社「金属資源関連事業の世界展開/Antamina出資比率10%」【情報ランクA】
シビックランクの基準
| シビックランク | 総合点 |
|---|---|
| S | 90~100点 |
| A | 80~89点 |
| B | 70~79点 |
| C | 60~69点 |
| D | 50~59点 |
| E | 40~49点 |
| F | 20~39点 |
| G | 0~19点 |
三菱商事株式会社は79点のため、今回のシビックランクはBです。
情報ランクの基準
| 情報ランク | 基準 |
|---|---|
| S | 公的機関、裁判所、規制当局、独立した第三者機関の調査・監査・検証・認証など、内容そのものに独立した裏づけがある情報 |
| A | 企業公式資料、採用情報、公式声明・SNS、氏名・役職・立場が確認できる記名取材や公表発言など、発信主体を確認できる公表情報 |
| B | 従業員・元従業員の口コミ、一般SNS、匿名掲示板など、発信者の身元や対象企業との関係を独立に確認しにくい情報 |
