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artience株式会社を企業審査|シビックランクB・総合点(75点/100点)|グループDXで年10万時間削減・平均年収812万円を評価、女性管理職6.2%と単体労災KPI非公表が課題

私たちは、企業の商品を購入したり、サービスを利用したりすることで、そこで働く人たちの未来を変えることができます。

働く人に十分な賃金を払い、休暇を確保し、安全な職場をつくり、人の負担を減らす企業の商品やサービスが選ばれれば、そうした企業により多くの売上が集まります。その結果、働く人を大切にする経営を続けやすくなります。

反対に、低賃金や長時間労働、安全上の問題を改善しない企業の商品やサービスが売れ続ければ、そうした働かせ方のままでも事業を続けることができます。

だからこの企業審査では、「私たちがお金を使うなら、どの企業を選ぶことが、そこで働く人にとってより良い社会につながるのか」という視点から企業を評価します。

なぜ企業を審査するのか?――このサイトの目的と、利用するメリット

今回審査するartience株式会社は、総合75点、シビックランクBです。

artience株式会社の特に強い点は、単体平均年収812万3,591円、男性育児休業等取得率98.4%という働く人への還元に加え、グループDXで2025年度に約10万時間の工数と約5,000万円のコストを削減していることです。そのため、この企業の商品を購入したりサービスを利用したりすれば、技術で反復作業を減らしながら、働く人の所得と育児参加も支える企業経営が広がる社会につながる可能性が高まります。

一方で、改善点として、女性管理職比率6.2%、男女平均賃金比率78.8%という格差が残り、artience株式会社単体の死亡・休業労災、度数率、強度率も継続比較できる形では公表されていません。

この記事では、artience株式会社の強みと課題をさらに詳しく企業審査していきます。

artience株式会社の企業審査結果

artience株式会社は、旧東洋インキSCホールディングス株式会社が2024年1月に商号変更した持株会社です。事業会社を直接の製造主体とする一方、グループ戦略、研究開発、人事、DX、安全、品質、BCP、情報セキュリティなどを統括しています。今回は子会社の工場実績をartience単体へ置き換えず、artience自身の雇用データと、持株会社として対象範囲が確認できるグループ統括機能を分けて評価しました。

評価軸点数主な評価
Safety36/50平均年収812万円、残業8.5時間、男性育休98.4%、健康管理を評価。女性管理職6.2%、男女賃金比78.8%、単体労災KPI不足が課題
Innovation21/252025年度にDXで約10万時間削減、生成AI・スマートファクトリー・R&Dを評価。削減時間の賃金・休日への還元は十分に数値化されていない
Protection18/25BCP、39生産拠点、CSIRT、年次訓練、能登支援を評価。RTO・RPOや代替切替時間の開示が不足
総合75/100シビックランクB

主な強み

・2025年12月期のartience単体平均年間給与は812万3,591円で、前年約785万円から約3.4%増えています。平均勤続年数は18.6年です。

・男性育児休業等取得率は98.4%で、育児参加が制度だけでなく実績として確認できます。

・国内のartience株式会社原籍社員では、2024年度の平均残業8.5時間、有給休暇取得率68.0%、有給取得平均13.0日です。

・2025年度のグループDXでは、製造・技術・営業・バックオフィスで約10万時間の工数と約5,000万円のコストを削減しました。

・artience自身の研究開発として、2026年には生物由来タンパク質の使用量を9割以上削減できるELISAキットを共同開発しました。

主な課題

・artience単体の女性管理職比率は6.2%、男女平均賃金比率は全労働者・正規雇用とも78.8%です。

・国内グループの安全実績は公表されていますが、artience株式会社単体の死亡・休業労災、度数率、強度率は切り分けて公表されていません。

・DXで約10万時間を削減した一方、その時間が残業、休暇、賃金、配置転換へ何時間・何日・何円返ったかは公表されていません。

・BCPとCSIRTは整備されていますが、主要業務のRTO・RPO、災害時の代替拠点切替時間、実復旧時間の統一KPIは公表されていません。

事業内容と人間への貢献

基本情報

項目内容
会社名artience株式会社
旧社名東洋インキSCホールディングス株式会社
創業1896年1月
設立1907年1月15日
本社東京都中央区京橋2丁目2-1 京橋エドグラン
代表者代表取締役社長 髙島悟
資本金317億3,349万6,860円
上場東京証券取引所プライム市場 4634
従業員数単体392人、連結7,880人。2025年12月末
平均年齢44.7歳
平均勤続年数18.6年
平均年間給与812万3,591円
主な役割持株会社としてのグループ戦略立案・事業会社の統括管理、研究開発等

公式会社概要では、国内13社・海外48社の関係会社を持ち、有機顔料、LiB材料、接着剤、インキ、メディカル製品など幅広い材料事業を統括しています。

主な事業

artience自身は持株会社であり、東洋インキ、トーヨーケム、トーヨーカラーなどの事業会社を統括します。同時に、埼玉研究開発センターなどでグループ横断の研究開発を担い、電池、半導体、センサー、ライフサイエンス、AI活用など次の事業基盤を作っています。

研究開発では、過去20年以上蓄積した技術データを閉域の生成AIへ取り込み、熟練技術者に近い回答を返せる環境を2025年度から運用しています。スマートファクトリー化や研究所のラボ自動化も進めています。

主な利用企業・取引先

artienceグループの材料は、印刷、包装、自動車、電池、ディスプレイ、半導体、医療・研究など幅広い産業へ供給されています。artience自身の2026年の例では、免疫生物研究所と共同開発した「sCLEC-2 ELISA Kit-IBL」が2026年7月中旬から販売されています。

事業による人間への貢献

artienceの人間への貢献は、材料技術を通じて製品の性能、安全、資源効率を高めることにあります。包装インキや接着剤は生活物資の表示・保存を支え、LiB材料は電動化、半導体材料は情報機器、診断薬材料は検査技術を支えます。

2026年のELISAキットでは、従来の検査キットで使われる生物由来タンパク質を化学合成添加剤へ置き換え、使用量を9割以上減らしました。生物由来原料は品質のばらつきや調達不安定が課題となるため、使用量を減らせれば検査材料の安定供給と品質安定につながります。

Safety

Safetyでは、artience自身で働く392人の賃金・雇用・健康を優先しつつ、持株会社として直接統括する人権・安全・品質制度も評価します。平均給与、残業、育児支援は強い一方、ジェンダー格差と単体労災KPIの不足が主な課題です。

賃金・利益の還元|8/10

2025年12月期のartience単体平均年間給与は812万3,591円です。前年約785万円から約27万円、率にして約3.4%増加しました。平均勤続年数も18.6年と長く、短期雇用中心の会社ではありません。

平均給与の増加と高い給与水準を評価して8/10点です。ただし平均値だけでは、中央値、職種・等級別の分布、ベースアップ率、若手・非管理職へどこまで還元されたかは分かりません。

10/10点には、平均給与だけでなく中央値と職種・等級別賃金を公開し、物価上昇を上回るベースアップを複数年継続し、賞与・利益還元が幅広い従業員へ届いていることを示す必要があります。

労働時間・休息|8/10

サステナビリティデータブック2025によると、国内のartience株式会社原籍社員は2024年度の平均残業8.5時間、有給休暇取得率68.0%、年次有給休暇取得平均13.0日です。健康・労働時間の集計範囲は「国内のartience株式会社原籍社員」であり、現在の単体在籍392人と完全に同一の母集団とは限りません。

月8.5時間なら月20日勤務と単純化すると、1日平均約26分です。仕事後の睡眠、家事、育児、学習へ時間を残しやすい水準です。一方、有給取得率68.0%は休暇を十分使い切れている水準とは言いにくく、改善余地があります。

8/10点です。10/10点には、最新年度で平均残業10時間以下を維持しながら、有給休暇取得率90%以上、月60時間超の労働者0人を確認できる状態が必要です。

雇用の安定・待遇の公平性|3/5

artience単体の従業員数は2024年末377人から2025年末392人へ15人増え、平均勤続年数は18.6年です。DXを進める一方で、少なくとも単体人員がこの1年で減少した事実はありません。

一方、女性管理職比率は6.2%です。男女平均賃金比率は全労働者78.8%、正規雇用78.8%、非正規58.8%です。会社の追加分析では年齢・学歴・勤続年数などを調整すると非管理職の差は縮小するとしていますが、管理職に占める女性の少なさは結果として残っています。

長期雇用と人員増を評価しつつ、管理職・賃金差を考慮して3/5点です。4/5点には、女性管理職比率15%以上をまず達成し、正規雇用の男女賃金比率90%以上へ近づけ、職位・職種別の差も公開する必要があります。

福利厚生・育児・介護|5/5

artience単体の2025年度男性育児休業等取得率は98.4%です。制度があるだけでなく、ほぼ全員が育児休業等を利用していることが確認できます。

さらにartienceは「プラチナくるみん」「えるぼし」の認定を受け、育児・介護との両立、多様な働き方、健康支援を進めています。国内のartience原籍社員では健康診断受診率100%、2024年度ストレスチェック実施率92.6%です。

制度と利用結果の両方が確認できるため5/5点です。

人権・ハラスメント・労使関係|4/5

artienceグループは「人間尊重の経営」を掲げ、人権方針、倫理行動規範、内部通報制度を整備しています。主要労働組合であるartience労働組合は1,831人で、会社は労使協調関係に特記すべき事項がないと有価証券報告書で報告しています。

安全衛生委員会には労働組合員も参加し、各拠点で毎月報告・討議を行います。人権・コンプライアンスをグループ統括機能として運用している点を評価します。

4/5点です。5/5点には、artience単体のハラスメント相談件数、認定件数、是正完了率、平均解決期間などを匿名性に配慮して継続公開する必要があります。

労働安全・健康|4/10

artience自身の健康管理では、国内原籍社員の健康診断受診率100%、ストレスチェック実施率92.6%を確認できます。グループ全体の安全についても、artience株式会社生産企画室が監査、リスク評価、事故調査、安全教育を統括し、毎月の安全衛生委員会や事故振り返り教育を運用しています。

一方、国内グループでは2024年度の休業災害度数率1.050が公表されていますが、これはartience株式会社単体の数字ではありません。artience単体の死亡・休業災害件数、度数率、強度率を継続比較できる公開情報はありません。

健康管理の実績と安全統括を評価して4/10点です。6/10点には、artience単体の死亡・休業災害、度数率、強度率を年次公開し、死亡・重大事故0と低い事故率を複数年確認できる必要があります。

商品・サービスの安全|4/5

artienceグループは製品安全・品質保証方針を定め、新製品を企画・研究開発から営業・アフターサービスまで評価し、ISO9001も活用しています。品質管理委員会やartience生産企画室による品質リスク診断を通じ、持株会社が直接品質ガバナンスを担います。

artience自身が開発したライフサイエンス材料についても、2026年には共同開発のELISAキットが販売へ進みました。新規材料を実用品へつなげる品質管理能力は評価できます。

4/5点です。5/5点には、artienceが直接開発する製品とグループ全体について、重大製品事故0、回収、品質不適合、顧客苦情、是正完了率を最新年度まで一貫して公開する必要があります。

従業員・元従業員の口コミ

OpenWorkではartience株式会社について612件の社員クチコミが掲載され、集計上の月間残業は15.0時間、有給休暇消化率は58.7%です。転職会議では175件の口コミがあり、集計残業13時間、有給消化率62.9%です。いずれも投稿時期・職種が混在する自己申告集計で、会社公式の2024年度8.5時間と対象範囲が異なります。

転職会議の2026年・20代前半男性正社員・社内SEの投稿では、「配属される部署によるとは思いますが、前日でも有給は取得可能です。」と記載されています。管理部門の休暇取得のしやすさを示す一例ですが、製造子会社や研究部門まで一般化しません。

SNS・匿名掲示板の確認結果

Xなどの一般SNS、5ちゃんねる、爆サイについて、artience、旧社名の東洋インキSCホールディングスと、「残業」「給料」「退職」「解雇」「ハラスメント」「事故」「AI」「人員削減」などを分けて確認しました。

今回、2025~2026年のartience株式会社単体について、採点を変更できるほど具体的で本文まで確認できる従業員投稿は見つかりませんでした。このため、SNS・匿名掲示板だけを根拠に加点・減点はしていません。

Innovation

artienceのInnovationで最も強いのは、DXを「導入した」で終わらせず、2025年度に約10万時間という削減量まで示していることです。さらに生成AIを研究開発へ組み込み、スマートファクトリーやラボ自動化へ広げています。

作業負担・危険の削減|8/10

artienceグループは2021年からDXタスクフォースを進め、製造、技術、営業、バックオフィスを対象に改善しました。2025年度には約10万時間の工数と約5,000万円のコストを削減しています。

10万時間は1人が年間2,000時間働くと単純化すれば約50人年分に相当します。反復入力、情報検索、定型処理などへ費やす時間を減らせれば、人が分析、顧客対応、研究など判断を必要とする仕事へ移れる余地が生まれます。

ただし、削減10万時間の内訳として、重量物作業・危険作業・残業が何時間減ったかは公表されていません。そのため8/10点です。10/10点には、工程別に削減時間、必要人数、身体負荷、ヒヤリハット・事故の前後比較まで示す必要があります。

商品・サービスの改善|5/5

artienceは2026年、免疫生物研究所とELISAキットを共同開発し、artienceの化学合成添加剤によって生物由来タンパク質の使用量を9割以上削減しました。2026年7月中旬から実製品として販売されています。

生物由来原料は品質ばらつきと調達不安定が課題です。9割以上の削減は、検査試薬の原料依存を減らし、安定した品質と供給へつながる具体的な改善です。

研究開発を実製品へつなげ、改善量も明示しているため5/5点です。

改善成果の人間への還元|3/5

DXでは、生成AIに技術知識や定型業務を担わせ、人が創造的な仕事へ集中する方針を示しています。2027年度までに生成AI活用の中核人材と現場DX人材を合わせて500人育成する計画もあります。

自動化が進む中でもartience単体の従業員数は377人から392人へ増えており、現時点でDXと結びついた大規模な希望退職・人員整理を示す公開情報は確認できません。

一方、約10万時間の削減が、平均残業を何時間下げたのか、休暇を何日増やしたのか、賃金や再訓練へ何円・何時間戻ったのかは公表されていません。成果の人への還元を一部確認できるものの、因果を数値で結び切れないため3/5点です。

5/5点には、DX対象部門の残業削減率、配置転換人数、再訓練時間、雇用維持率、賃金・休暇への還元を導入前後で公開する必要があります。

研究開発・現場改善の継続|5/5

artienceは、過去20年以上の技術データを閉域生成AIへ取り込み、2025年度から研究開発で運用しています。生成AI、MI、計算化学、ラボ自動化を組み合わせ、川越製造所などでスマートファクトリーのモデル設備も稼働させています。

さらに電池、半導体、センサー、ライフサイエンスへ研究領域を広げ、外部企業・大学・スタートアップとのオープンイノベーションも続けています。単発の設備導入ではなく研究方法そのものを更新しているため5/5点です。

自動化・AI導入後の雇用状況

DXタスクフォースは2021年から続き、2025年度には約10万時間削減まで進みました。その間、artience単体従業員数は2023年388人、2024年377人、2025年392人と推移し、直近1年では15人増えています。

現在もグループでは製品開発などのキャリア採用を継続し、生成AI活用人材500人の育成を計画しています。

希望退職、大規模人員整理、採用全面停止が自動化を理由に実施されたという公開根拠は確認できません。ただし従業員数の増減とDXの因果関係を逆向きに推測することもできません。今後は、DX対象部門の配置転換、募集職種、再訓練、退職率を同じ基準で追う必要があります。

Protection

artienceは持株会社として、グループ全体のBCP、調達、情報セキュリティを直接統括します。そのためProtectionでは、単なる子会社実績ではなく「artienceが作ったグループ共通の仕組み」と、その仕組みが実際の危機でどう動いたかを中心に評価します。

災害への備え・訓練|4/5

artienceグループは2025年7月にBCP方針を制定し、地震、台風・水害、感染症、工場の爆発・火災・漏洩、サイバー攻撃、地政学リスクを対象にしています。大規模災害時には災害情報と連動する安否確認システムで被災地域の社員を自動判定し、主要拠点では毎年防災訓練を実施、衛星電話と災害用無線機も配置しています。

例えば大地震で通常の携帯網が混雑し、社員と連絡できない場合でも、安否確認システムと衛星電話があれば、誰が被災し、どの拠点へ支援が必要かを早く判断できます。

仕組みと年次訓練を確認できるため4/5点です。5/5点には、安否確認完了時間、訓練参加率、拠点別の復旧目標と達成結果を毎年公開する必要があります。

生産・物流・調達の代替|4/5

artienceグループは2024年末時点で国内12、海外27の生産拠点を持ち、海外生産比率は60.3%です。持株会社artienceはこのグループの生産・調達戦略を統括します。

複数の国と拠点で生産できれば、一地域の災害や物流停止ですべての製品供給が止まるリスクを下げられます。BCMでも安定的な原材料供給と生産補完体制を課題として扱っています。

4/5点です。5/5点には、主要製品ごとの代替生産拠点、二重調達率、在庫日数、切替所要時間を公開し、実際の供給途絶時にも目標時間内で切り替えた実績が必要です。

サイバー防衛・情報保護|4/5

artienceはシステムBCPとしてartience-CSIRTを設置し、初動、外部公表、原因除去、復旧、再発防止までを担当させています。標的型メール訓練を毎年行い、CSIRTのインシデント対応訓練、海外拠点のアセスメント、脆弱性診断も実施しています。2024年度は事業活動に影響する重大な情報セキュリティ事故0件でした。

実組織、訓練、事故結果まで確認できるため4/5点です。一方、2025年度の重大事故結果、主要システムのRTO・RPO、検知・封じ込め・復旧時間、第三者認証・保証の範囲は十分に公開されていません。

5/5点には、重大情報漏えい0を最新年度まで継続し、RTO・RPOと実復旧時間、年次の外部監査・攻撃演習結果まで示す必要があります。

供給継続・復旧能力|4/5

BCPでは、重大な事態が起きた場合にartience社長または指名者を本部長とする緊急対策本部を設置し、業務プロセスの早期再構築と運用回復を行う方針です。

2025年6月17日には100%子会社の東洋モートン埼玉工場で火災が発生し、作業担当者1人が軽度のやけどを負いました。設備使用停止命令は6月27日に解除され、生産設備は10日後に再稼働しました。ただし一部製品の在庫不足があり、供給体制の完全復帰にはさらに時間を要すると公表しています。

この事故はartience株式会社単体の労災ではないためSafetyの単体事故として減点しません。一方、持株会社が統括するグループBCPの実例として見ると、設備再開までの日数は確認できるものの、完全供給復旧までの時間は開示されていません。

4/5点です。5/5点には、主要業務のRTO・RPO、代替生産への切替時間、供給完全復旧までの日数を実事故・訓練で継続公開する必要があります。

危機時の市民への対応|2/5

artience株式会社は2024年能登半島地震の被災者支援と復興支援のため、日本赤十字社を通じて500万円を寄付しました。これは子会社ではなくartience株式会社自身の支援です。

例えば大災害で住居や生活基盤を失った人が増えた場合、義援金は被災者支援や復旧活動の資金になります。直接支援の実績として評価します。

一方、自治体との災害協定、緊急物資の供給、要請から支援までの時間、常設の市民向け危機支援制度までは確認できません。そのため2/5点です。3~4点には、事業の材料・物流網を活かした災害協定や実物支援、その到達時間を示す必要があります。

良いニュース・最近の前向きな動き

最近のartienceでは、DXによる業務時間削減と、研究開発によるライフサイエンス製品の実用化が同時に進んでいます。どちらも「技術を導入した」という話ではなく、10万時間、9割以上という効果量まで示している点が評価できます。

2026年6月|2025年度DXで約10万時間・約5,000万円削減を公表

artienceは統合レポート2026で、2021年から進めるDXにより、2025年度に製造、技術、営業、バックオフィスで約10万時間の工数と約5,000万円のコストを削減したと公表しました。

10万時間は約50人年分の労働時間に相当します。これが反復入力や検索、定型処理から削減されたなら、人を単純作業へ固定せず、研究、分析、顧客対応へ移せる余地が大きくなります。

2026年6月|生物由来タンパク質を9割以上減らすELISAキットを開発

artienceと免疫生物研究所は、artienceの化学合成添加剤を使い、ELISAキットで生物由来タンパク質を9割以上削減しました。製品は2026年7月中旬から販売されています。

原料の品質ばらつきと供給不安を減らしながら検査性能を支える技術であり、研究開発が実社会の医療・研究材料へ到達した具体例です。

悪いニュース・問題となった動き

課題は、技術や給与の強さに比べ、ジェンダー格差と安全結果の透明性が追いついていないことです。またグループ会社では2025年に実際の工場火災も発生しており、artienceが統括する安全・BCPを結果で検証する必要があります。

2025年12月期|女性管理職6.2%・男女賃金比78.8%

artience単体の女性管理職比率は6.2%、正規雇用を含む男女平均賃金比率は78.8%です。男性育休98.4%という強い実績がある一方、育児参加の進展が管理職登用や賃金差の縮小へ十分つながっているとはまだ言えません。

女性管理職を増やし、職位・職種・勤続年数別に賃金差の要因と改善を公開することが次の課題です。

2024年度|国内グループ休業災害度数率1.050

統合レポート2025では、国内グループの休業災害度数率は1.050と公表されています。前年の2023年は0.438であり、安全結果は悪化しました。

これはartience単体の事故率ではありません。しかしartience株式会社生産企画室がグループの安全監査・事故調査を統括する立場にあるため、持株会社の安全ガバナンスとして原因別の改善と翌年度結果を追う必要があります。

2025年6月|100%子会社の東洋モートン埼玉工場で火災

6月17日の火災では作業員1人が軽度のやけどを負い、充填設備とポンプが被害を受けました。6月27日に設備停止命令が解除され再稼働しましたが、一部製品は在庫不足となり、完全な供給復帰には時間を要すると公表されました。

この事故はartience単体の労災ではありません。グループ統括会社として、再発防止を他拠点へ水平展開し、その後の火災・休業災害の減少を公開することが必要です。

総合評価と、これから改善してほしいこと

artience株式会社は75点、シビックランクBです。次のAランクは80点からなので、あと5点必要です。

平均年収812万円、男性育休98.4%、低い残業、DX10万時間削減、研究開発、BCP・CSIRTは高く評価できます。一方、Aへ上がるには、女性の登用、安全結果、サイバー・復旧力を「制度」から「測定可能な結果」へ一段引き上げる必要があります。

単体の労災KPIを公開し、安全結果を示す|労働安全・健康 4→6/10

現在の「労働安全・健康」は4/10点です。健康診断100%、ストレスチェック92.6%、グループ安全統括は確認できますが、artience単体の死亡・休業労災、度数率、強度率がありません。

artienceには、単体の死亡・重大労災0を目標に、休業災害件数、度数率、強度率、事故類型を毎年公開し、発生時は原因と是正完了まで示してほしいです。

死亡・重大事故0と低い事故率を複数年確認できれば4→6点、+2点を想定します。総合点は75→77点です。

参考企業はTOPPAN株式会社です。当サイトDriveの現行審査は73点・Bで、2025年の単体労災死亡0、度数率0.043、強度率0.000を公開し、「労働安全・健康」は8/10点です。

女性管理職と男女賃金差を改善する|雇用の安定・待遇の公平性 3→4/5

現在の「雇用の安定・待遇の公平性」は3/5点です。長い勤続年数と直近の単体人員増は強みですが、女性管理職6.2%、正規男女賃金比78.8%には差が残ります。

まず女性管理職比率15%以上、正規雇用の男女賃金比率90%以上を達成し、職位・職種・勤続年数別の差と昇進率を公開してほしいです。

これを確認できれば3→4点、+1点を想定し、総合点は78点になります。

参考企業は株式会社ミツウロコグループホールディングスです。当サイトDriveの現行審査は84点・Aで、女性管理職47.4%、正規雇用男女賃金比91.5%を公表し、「雇用の安定・待遇の公平性」は4/5点です。

サイバー復旧時間まで公開する|サイバー防衛・情報保護 4→5/5

現在の「サイバー防衛・情報保護」は4/5点です。artience-CSIRT、毎年の標的型メール訓練、インシデント対応訓練、海外脆弱性診断、2024年度重大事故0まで確認できます。

次は主要システムのRTO・RPO、検知・封じ込め・復旧時間、重大漏えい0を最新年度まで公開し、第三者認証・外部保証や攻撃演習も組み合わせてほしいです。

これを確認できれば4→5点、+1点で79点になります。

参考企業はウイングアーク1st株式会社です。当サイトDriveの現行審査は81点・Aで、ISO27001、ISO27017、ISO27018、ISO27701、ISMAP、SOC報告書等を組み合わせ、「サイバー防衛・情報保護」は5/5点です。

実障害からの完全復旧時間を示す|供給継続・復旧能力 4→5/5

現在の「供給継続・復旧能力」は4/5点です。BCP、複数生産拠点、東洋モートン火災で10日後に設備再稼働した実績は確認できますが、完全な供給復帰時間、主要業務のRTO・RPOは不足しています。

主要製品ごとにRTO・RPOを設定し、代替生産への切替時間、在庫で支えられる日数、完全供給復旧までの時間を訓練と実事故で公開してほしいです。RTO・RPO以内の復旧を複数年確認できれば4→5点、+1点です。

75+2+1+1+1=80点となり、シビックランクBからAへ上がります。

参考企業は株式会社キングジムです。当サイトDriveの現行審査は68点・Cですが、2026年の物流センター火災で翌日から大部分の出荷を再開し、8日後に全面再開した実績を評価して「供給継続・復旧能力」は5/5点です。

次のランクへ上がるための具体例

現在:75点・B

Aランク下限:80点

不足:5点

・労働安全・健康 4→6:artience単体の死亡・休業労災、度数率、強度率を公開し、重大事故0と低い事故率を継続する。+2点

・雇用の安定・待遇の公平性 3→4:女性管理職15%以上、正規男女賃金比90%以上を達成し、職位・職種別の差を公開する。+1点

・サイバー防衛・情報保護 4→5:重大漏えい0を最新年度まで継続し、RTO・RPO、検知・封じ込め・復旧時間、第三者保証を公開する。+1点

・供給継続・復旧能力 4→5:主要業務のRTO・RPOと代替切替時間を設定し、実障害・訓練で目標時間内の完全復旧を示す。+1点

75+2+1+1+1=80点となり、シビックランクAへ上がります。

artienceは、すでに給与、育児支援、DX、研究開発、BCPの基盤が強い企業です。次に必要なのは、その強い仕組みを女性登用、安全、サイバー、復旧の結果指標までつなげ、外部から継続比較できる形で示すことです。

出典一覧

1.artience株式会社「会社概要」

2.artience株式会社 2025年12月期 有価証券報告書

3.artienceグループ「サステナビリティデータブック2025 社会・ESGデータ」

4.artience「ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン推進」

5.artience「人権の尊重」

6.artience「健康経営」

7.artience「労働安全衛生・保安防災」

8.artience「品質・安全性の確保」

9.artience Integrated Report 2026「DX Strategy」

10.artience Integrated Report 2026「Technology and Intellectual Property Strategy」

11.artience「生物由来タンパク質の使用量を9割以上削減可能にしたELISAキットを開発」2026年6月24日

12.artience「リスクマネジメント・BCM」

13.artience「情報セキュリティ」

14.artience「令和6年能登半島地震に対する支援」2024年1月

15.artienceグループ「統合レポート2025」

16.東洋モートン「埼玉工場における火災発生のお知らせとお詫び(第2報)」2025年6月27日

17.OpenWork「artience株式会社 社員クチコミ」

18.転職会議「artience株式会社の評判・口コミ」

19.artience「グループマテリアリティ2025-2030」

20.artience「グループキャリア採用情報」

21.当サイトGoogle Drive「TOPPAN株式会社を企業審査|73点/100点・シビックランクB」現行版

22.当サイトGoogle Drive「株式会社ミツウロコグループホールディングスを企業審査」現行版

23.当サイトGoogle Drive「ウイングアーク1st株式会社を企業審査|81点/100点・シビックランクA」現行版

24.当サイトGoogle Drive「株式会社キングジムを企業審査|68点/100点・シビックランクC」現行版

シビックランクの基準

ランク点数
S90~100点
A80~89点
B70~79点
C60~69点
D50~59点
E40~49点
F20~39点
G0~19点

情報ランクの基準

情報ランク基準
S公的機関、裁判所、規制当局、独立した第三者機関の調査・監査・検証・認証など、内容そのものに独立した裏づけがある情報
A企業公式資料、採用情報、公式声明・SNS、氏名・役職・立場が確認できる記名取材や公表発言など、発信主体を確認できる公表情報
B従業員・元従業員の口コミ、一般SNS、匿名掲示板など、発信者の身元や対象企業との関係を独立に確認しにくい情報

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