私たちは、企業の商品を購入したり、サービスを利用したりすることで、そこで働く人たちの未来を変えることができます。
働く人に十分な賃金を払い、休暇を確保し、安全な職場をつくり、人の負担を減らす企業の商品やサービスが選ばれれば、そうした企業により多くの売上が集まります。その結果、働く人を大切にする経営を続けやすくなります。
反対に、低賃金や長時間労働、安全上の問題を改善しない企業の商品やサービスが売れ続ければ、そうした働かせ方のままでも事業を続けることができます。
だからこの企業審査では、「私たちがお金を使うなら、どの企業を選ぶことが、そこで働く人にとってより良い社会につながるのか」という視点から企業を評価します。
なぜ企業を審査するのか?――このサイトの目的と、利用するメリット
今回審査する三菱地所株式会社は、総合84点、シビックランクAです。
三菱地所株式会社の特に強い点は、2026年3月期の平均年間給与1,759万3,300円、2025年度の月平均残業11.3時間という働き方に加え、DXで三菱地所グループ全体の定常・定型業務を年間16.9万時間削減し、丸の内では99回目の大規模防災訓練や災害ダッシュボードを運用していることです。そのため、この企業の商品を購入したりサービスを利用したりすれば、働く人の単純作業を減らしながら、災害時にも人を救護し、都市機能を継続できるまちづくりにつながる可能性が高まります。[出典2・4・6・10・11]
一方で、改善点として、2025年度の男女賃金比率が全労働者54.3%、正規雇用57.3%にとどまり、2025年度には三菱地所単体で労働災害5件、うち休業災害1件が発生していることが残ります。[出典2・3]
この記事では、三菱地所株式会社の強みと課題をさらに詳しく企業審査していきます。
三菱地所株式会社の企業審査結果
三菱地所は、オフィス、商業施設、ホテル、物流施設、住宅、空港などの開発・運営を行う総合不動産会社です。建物を造って販売するだけでなく、長期に保有・運営する街区では、設備、警備、防災、移動、情報、テナント支援まで含めて利用者の生活と仕事を支えます。[出典1・2]
| 評価軸 | 点数 | 評価の要点 |
|---|---|---|
| Safety | 40/50 | 平均年収1,759万円、残業11.3時間、男性育休129.1%、死亡労災0を評価。正規男女賃金比57.3%、有休69.5%、労災5件が課題 |
| Innovation | 22/25 | グループ全体で年間16.9万時間の定型業務削減、顔認証・AI警備・DXを評価。単体への削減量と賃金・休日への直接還元の定量化が不足 |
| Protection | 22/25 | 99回目の大規模防災訓練、災害ダッシュボード、帰宅困難者受入・医療搬送連携を評価。単体RTO・RPOとサイバー復旧実測値が不足 |
| 総合点 | 84/100 | シビックランクA |
評価時点:2026年10月14日
主な強み
・2026年3月期の平均年間給与は1,759万3,300円、比較可能な前年値から4.7%増
・2025年度の月平均残業11.3時間
・年次有給休暇取得率69.5%、平均取得13.3日
・男性育児休業取得率129.1%、女性102.8%
・女性管理職比率は2026年4月時点13.5%まで上昇
・2025年度の三菱地所単体の労働災害死亡0件
・BI、生成AI、RPA等により三菱地所グループ全体で年間16.9万時間の定常・定型業務を削減
・下地島空港のAI警備実証では最大約4割の警備リソース効率化を想定
・第99回「ひと×まち防災訓練」にグループ社員・関係者約2,000人が参加
・丸の内14棟で千代田区との帰宅困難者等一時受入施設協定を締結
・診療所、調剤薬局、緊急輸送バスと連携し、負傷者発生から災害拠点病院への移送まで訓練
・丸の内エリアで災害ダッシュボードを実装し、帰宅困難者・負傷者向け情報を集約
主な課題
・男女賃金比率は全労働者54.3%、正規雇用57.3%、パート・有期44.6%
・女性管理職13.5%まで上昇したが、賃金・上位職の男女差はなお大きい
・有給休暇取得率69.5%で、90%前後の企業と比べると改善余地がある
・2025年度の単体労災5件、うち休業災害1件、休業日数24日
・グループのDXによる年間16.9万時間削減のうち、三菱地所単体で何時間削減したかは公表されていない
・自動化で削減した時間を賃金・休日・教育・配置転換へ何時間・何円還元したかの施策別開示が不足
・主要ビル・事業のRTO、RPO、実測復旧時間を横断比較できる単体KPIが不足
・サイバー対策の体制は確認できるが、MFA適用率や復旧演習の実測時間などの単体開示が不足
事業内容と人間への貢献
三菱地所の事業は、働く場所、買い物をする場所、泊まる場所、住む場所、物流拠点、空港などをつくり、長期間運営することです。不動産は完成時だけでなく、その後数十年の安全、移動、電力、情報、防災、快適性を左右します。
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 会社名 | 三菱地所株式会社 |
| 英文名 | MITSUBISHI ESTATE CO., LTD. |
| 設立 | 1937年5月7日 |
| 本社 | 東京都千代田区大手町一丁目1番1号 大手町パークビル |
| 代表者 | 代表執行役 執行役社長 中島 篤 |
| 資本金 | 1,424億1,426万6,891円 |
| 連結従業員数 | 11,659人(2026年3月末) |
| 提出会社正社員数 | 1,729人(社外出向者を含む開示区分) |
| 平均年齢 | 42.5歳 |
| 平均勤続年数 | 16.3年 |
| 平均年間給与 | 1,759万3,300円 |
| 主な事業 | オフィス・商業施設・ホテル・物流施設等の開発・賃貸、住宅、空港・余暇施設、不動産仲介・コンサルティング、投資マネジメント等 |
従業員数は開示目的によって集計範囲が異なります。平均給与表では社外出向者を含む正社員1,729人が対象で、別の雇用人員集計とは一致しません。[出典2]
主な事業内容
丸の内をはじめとするオフィス・街区事業では、建物を開発し、企業へ貸し、設備・警備・防災・イベント・デジタルサービスを継続運営します。
商業施設・ホテル・空港では来街者や旅行者が安全に滞在・移動できる環境を整えます。物流施設では商品を保管・仕分けしやすい建物を供給し、住宅事業では住まいの開発・管理に関わります。[出典1]
主な利用企業・取引先
利用者はオフィステナント、小売・飲食事業者、ホテル宿泊者、住宅購入者・入居者、物流事業者、空港利用者、自治体などです。
丸の内では複数の企業・行政・医療機関を街区単位でつなぎ、個別のビルだけでは実現しにくい防災・DXを共同化しています。
事業による人間への貢献
例えば大地震で鉄道が止まり、多数の帰宅困難者や負傷者が発生した場合、建物の耐震・非常電源だけでは十分ではありません。
三菱地所は千代田区との協定、災害ダッシュボード、診療所・調剤薬局、緊急輸送バスを組み合わせ、避難先の情報確認から応急救護、重症者の病院搬送までつなぐ訓練を行っています。街を保有・運営する企業が複数の建物と機関を結ぶことで、利用者が情報を探し回る時間と、個別施設に集中する負担を減らせます。[出典10・11]
また、社内・グループ業務ではBI、生成AI、RPAなどでExcelやメールを使った定型作業を自動化し、グループ全体で年間16.9万時間の業務を削減しています。
単純作業から人を外し、人にしかできない企画、調整、判断へ時間を移す方向は、働く人への直接的な貢献です。[出典6]
Safety|40/50
Safetyでは、三菱地所単体の賃金、労働時間、公平性、育児・介護、人権、労働災害と、建物・街を利用する人の安全を評価します。
高い給与、低い残業、育児制度、死亡労災0は強みです。一方、男女の賃金・昇進結果の差、有休取得率、労災5件が満点を妨げています。
賃金・利益の還元|8/10
2026年3月期の平均年間給与は1,759万3,300円です。会社の比較可能な2024年度平均1,680万円に対して4.7%増えました。賞与・時間外手当を含む平均値ですが、高い所得水準で働く人へ大きな金銭的還元が行われています。[出典2・3]
一方、平均値は役職・年齢・職種の違いを隠します。給与中央値、総合職・専門職など職種別の賃金分布、既存社員のベースアップ率を同じ形式で追える公開情報は不足しています。
そのため8/10点です。賃金中央値と職位別分布を公開し、幅広い社員で物価上昇を上回る実質賃金改善を複数年確認できれば10/10点を検討できます。
労働時間・休息|8/10
2025年度の月平均残業は11.3時間です。年次有給休暇取得率は69.5%、平均取得日数は13.3日でした。
残業時間は良好ですが、有休は付与された休暇の一部が未取得で、休暇面には改善余地があります。[出典3・4]
採用情報では土日祝日、年末年始休暇に加え、フレックスタイム、テレワーク、リフレッシュ休暇、時間単位休暇などを利用できます。制度と実残業の両方が良好なため8/10点です。[出典5]
有休取得率90%以上を実現し、月平均残業15時間以下を維持しながら、部署別残業と月45時間超の人数も公開できれば10/10点を検討できます。
雇用の安定・待遇の公平性|3/5
女性管理職比率は2026年4月時点で13.5%です。2025年度の新卒採用に占める女性比率は51.2%、中途採用は42.2%で、採用入口では男女の差が小さくなっています。[出典2・3]
一方、2025年度の男女賃金比率は全労働者54.3%、正規雇用57.3%、パート・有期44.6%です。
会社は同じ職掌・資格内では同一の給与体系であり、職掌、資格、勤続年数、勤務時間などの構成差が主因と説明しています。総合職の管理職では女性の平均賃金は男性の80.9%、非管理職では79.1%まで差が縮まりますが、全体では女性が高い職位・長い勤続・高賃金の区分に十分到達していない結果が残ります。[出典2]
採用と女性管理職比率の改善を評価して3/5点です。
女性管理職30%以上、正規雇用の男女賃金比率90%以上を実現し、職位・職掌・勤続年数を調整した賃金差も小さいことを公表できれば5/5点を検討できます。
福利厚生・育児・介護|5/5
2025年度の男性育児休業取得率は129.1%、女性は102.8%です。100%を超えるのは、前年度以前に子が生まれ、当年度に新たに取得した社員が算定されるためです。[出典2・3]
制度面では、育児休業を子が3歳になる年度末まで利用でき、育児休業開始から14日間と産後パパ育休最大28日間を有給としています。
子が小学校3年生を終えるまで短時間勤務を利用でき、ベビーシッター費用助成もあります。介護休業は対象家族1人につき通算3年、介護サービス利用料の補助もあります。[出典5]
制度が法定水準を上回り、男性も実際に利用しているため5/5点です。
人権・ハラスメント・労使関係|4/5
三菱地所グループは人権方針を定め、人権デュー・ディリジェンス、相談・通報、是正・救済を行っています。2024年にはグループ全社を対象とする人権リスク評価を実施し、2025年4月に人権方針を改定しました。[出典13]
2025年度は三菱地所で人権研修を延べ1,698人、7万3,800分実施し、セクシュアルハラスメント防止研修の参加率は95.9%でした。[出典3]
労働組合には2026年3月末時点で910人が加入し、有価証券報告書は労使関係を円滑としています。[出典2]
一方、グループのコンプライアンス相談と、人権・ハラスメント申立てKPIでは集計する窓口・定義が異なります。三菱地所単体の相談、認定、是正、再発防止結果を同じ定義で追える開示は不足するため4/5点です。
単体の相談・認定・救済結果を匿名化して毎年公開し、再発率まで確認できれば5/5点を検討できます。
労働安全・健康|8/10
2025年度の三菱地所単体では労働災害5件、死亡0件、休業災害1件、休業日数24日でした。死亡0を維持しながら、事故件数と休業結果を具体的に公開している点を評価します。[出典3]
建設・施設運営では転倒、移動、現場確認などの事故リスクがあり、1件の休業災害でも働く人の生活に直接影響します。
そのため8/10点です。
死亡・休業災害0を複数年継続し、自社社員だけでなく主要な工事・施設運営パートナーも含めた度数率・強度率を公開し、低水準を確認できれば10/10点を検討できます。
商品・サービスの安全|4/5
三菱地所の建物では、耐震・制震、非常電源、一時滞在、備蓄などを組み合わせた安全設計が進んでいます。
例えば「ザ・ランドマーク名古屋栄」は、帰宅困難者の受け入れや物資供給に対応し、非常時には72時間の電力供給が可能です。制振システムも備えています。[出典19]
丸の内でも帰宅困難者受入協定や医療連携を組み合わせ、建物単体の安全設備を街区全体の安全へ広げています。[出典11]
利用者の避難・電力・救護を具体的に設計しているため4/5点です。
一方、三菱地所単体の重大建物事故、重大品質不具合、利用者負傷事故を共通定義で年次比較できる統合KPIは公開が不足しています。重大事故0と安全設備の実効性を継続公開できれば5/5点を検討できます。
従業員・元従業員の口コミ
Indeedでは6件の口コミに基づく総合評価4.7、勤務時間と残業4.6、給与と福利厚生4.8です。
2026年4月、大手町の総合職スタッフは「基本的にはフリーアドレスのデスク、気分によって好きな場所で働ける。」と投稿しています。[出典15、情報ランクB]
転職会議の投稿者集計では、月平均残業27時間、有給消化率69.8%です。会社の公式残業11.3時間より長い数字ですが、投稿者の時期・職種・母集団が異なるため、公式値を置き換えません。部署や時期による負担差を見る補助情報として扱います。[出典16、情報ランクB]
SNS・匿名掲示板の確認結果
X、5ちゃんねる、爆サイを会社名と「残業」「給料」「退職」「パワハラ」「事故」「DX」「人員削減」などで確認しましたが、対象法人との関係、投稿時期、職種を確認でき、公式資料や口コミサイトを上回って採点を変更できる本文付き投稿は見つかりませんでした。
投稿が見つからないこと自体は加点材料にしていません。
Innovation|22/25
Innovationでは、社員や施設運営者が行う定型作業、警備、入退館管理などを技術で減らし、その成果を人へ返しているかを評価します。
三菱地所はDXを継続して実装し、具体的な削減量も公表しています。ただし年間16.9万時間はグループ全体の成果であり、三菱地所単体の削減量としては扱いません。
作業負担・危険の削減|8/10
三菱地所のDXチームは、BI、生成AI、RPAなどを使い、従来Excelやメールで進めていた定常・定型業務を自動化しました。
公表されている削減量は三菱地所グループ全体で年間16.9万時間です。単純作業を減らし、人が企画・判断・調整に時間を使えるようにしています。[出典6]
下地島空港ではAI監視カメラを使い、警備員の見回り・監視負担とヒューマンエラーのリスクを減らし、最大約4割の警備リソース効率化を見込む実証を行いました。これは共同実証であり、三菱地所単体社員の作業削減量ではありません。[出典8]
削減量と対象作業が具体的なため8/10点です。
三菱地所単体での年間削減時間、削減された夜間・反復・危険作業、人員配置、事故減少を同じ施策ごとに公開できれば10/10点を検討できます。
商品・サービスの改善|5/5
三菱地所は街や建物の利用体験をデジタル化しています。共通認証ID「Machi Pass」、建物の入退館権限を統合する仕組み、災害ダッシュボードなどにより、利用者が個別サービスごとに手続き・確認する負担を減らしています。[出典7・11]
2026年10月には不動産データ企業estieと戦略的パートナーシップを結び、街での体験や投資効果をデータで分析し、次の施設・サービス改善へ使う方針を公表しました。[出典17]
建物のハードだけでなく、認証、情報、防災、データを使って利用者の手間と不安を減らす改善を継続しているため5/5点です。
改善成果の人間への還元|4/5
三菱地所グループ全体では年間16.9万時間の定型業務を削減し、三菱地所単体では月平均残業11.3時間、平均給与は比較可能な前年から4.7%上昇しています。時間・所得の両面で良い結果が同時に確認できます。[出典3・6]
一方、「このDXで三菱地所社員の残業が何時間減った」「削減利益のうち何円を賃金・休日・教育へ移した」という施策別の因果は公表されていません。
そのため4/5点です。
削減時間、残業、配置転換、教育、賃金を施策別につないで公開できれば5/5点を検討できます。
研究開発・現場改善の継続|5/5
三菱地所はDX組織と人材育成を継続し、生成AI、BI、RPA、顔認証、スマートホーム、AI警備、都市データ分析など、複数年・複数事業にわたり改善を続けています。[出典6・7]
2026年10月15~16日には大手町で、フィジカルAIロボットが飲料を手渡し、空容器を回収する実証を予定しています。
評価時点の10月14日にはまだ実施前なので、成果としては加点せず、継続的な実証姿勢の材料として扱います。[出典18]
継続的な組織・実装・実証を確認できるため5/5点です。
自動化・AI導入後の雇用状況
DX・RPA・AIの導入は複数年続いていますが、今回の調査では、これらの自動化を理由とする三菱地所単体の大規模希望退職、解雇、採用停止を示す公表情報は確認できませんでした。
連結従業員数は2022年3月期の1万202人から2026年3月期の1万1,659人へ増えています。ただし連結範囲の変化を含むため、自動化で雇用が増えたとまでは判断しません。[出典2]
三菱地所単体の従業員数も開示定義が変更されているため、人数だけで自動化の影響を断定しません。
今後は年間16.9万時間の削減対象となった部署について、配置転換、採用数、外注削減、契約更新、離職、再教育時間を追跡して公開すれば、「省人化」が人の仕事を奪うのではなく、単純作業から人を移した成果まで検証できます。
Protection|22/25
Protectionでは、地震、火災、停電、交通停止、サイバー攻撃などが起きたとき、建物と街の利用者を守り、都市機能を維持できるかを評価します。
三菱地所は100年近く防災訓練を続け、行政・消防・警察・医療・交通を街区単位で結ぶ仕組みを持つ点が強みです。一方、企業単体のRTO・RPOやサイバー復旧時間の定量開示には改善余地があります。
災害への備え・訓練|5/5
三菱地所は1923年の関東大震災以降、防災対応を継続してきました。
2025年9月1日の第99回「ひと×まち防災訓練」には三菱地所グループ社員と関係先約2,000人が参加し、警視庁・東京消防庁と連携して交通規制、大規模消防、閉館ビルでの救出救助、消火栓・煙体験などを実施しました。[出典10]
例えば地震後にビル内へ要救助者が残り、道路も混乱した場合、警察・消防・ビル管理者が初めて顔を合わせるのではなく、平時に同じ場所で訓練しておくことで救助・誘導の役割分担を早くできます。
99回にわたる継続性と実地訓練を評価して5/5点です。
生産・物流・調達の代替|4/5
不動産会社では製造工場の代替生産より、建物・街区の電力、通信、避難スペース、医療・交通の代替機能が重要です。
三菱地所は丸の内の複数ビルを一時受入施設として協定化し、災害時の医療連携、緊急輸送バス、地区全体の防災情報を組み合わせています。[出典11]
物流施設でも、2026年8月に竣工したロジクロス三郷が三郷市との協定に基づき、災害時に共用部の一部を避難者へ開放する地域防災拠点となっています。[出典20]
一つの建物だけに機能を集中させず、複数施設と外部機関を組み合わせて代替余地を持つため4/5点です。
一方、主要ビルが停止した場合に別ビルが何人・何%を代替できるか、業務別の切替時間を共通KPIとして公表していません。代替収容人数・代替機能・切替時間を主要エリアごとに公開できれば5/5点を検討できます。
サイバー防衛・情報保護|4/5
三菱地所グループは情報セキュリティ統括体制を持ち、DX拡大に合わせてIT基盤とサイバー対策を強化しています。
データやデジタル認証を街のインフラとして使うほど、情報システムが停止した際の影響も大きくなるため、サイバー防御と復旧力は建物の耐震性と同様に重要です。
体制と重大な情報漏えいを抑える取り組みを評価して4/5点です。
一方、三菱地所単体についてMFA・EDR等の適用率、ランサムウェア復元訓練、重要システムのRTO・RPO、復元時間を毎年比較できる公開情報は不足しています。
これらを定量公開し、復旧訓練で目標時間内の復元を継続確認できれば5/5点を検討できます。
供給継続・復旧能力|4/5
三菱地所はグループBCPを整備し、丸の内では建物の非常電源、一時滞在、備蓄、災害情報、医療搬送を街区単位で組み合わせています。
大手町ゲートビルディングでは、平時の全負荷利用を想定した状態でも72時間の非常用電源供給が可能で、約720人を収容できる帰宅困難者向け一時滞在施設も計画されています。[出典12]
例えば停電や鉄道停止が長引いた場合でも、非常電源で建物の一部機能を維持し、帰宅困難者を受け入れ、災害ダッシュボードで利用可能な施設を案内できれば、来街者が危険な徒歩帰宅を急ぐ必要を減らせます。
仕組みは具体的ですが、主要ビル・デジタルサービスごとの目標復旧時間、実際の復旧訓練時間、平時機能の何%まで維持できるかの共通開示は不足するため4/5点です。
RTO・RPOと実測結果を公開できれば5/5点を検討できます。
危機時の市民への対応|5/5
丸の内では14棟を対象に千代田区と帰宅困難者等一時受入施設協定を結び、診療所・調剤薬局の開設情報、負傷者のトリアージ、緊急輸送バスによる災害拠点病院への移送まで訓練しています。[出典11]
大手町ゲートビルディングでは災害時の水上輸送にも使える「鎌倉河岸船着場」を整備し、千代田区へ引き渡しました。[出典12]
例えば大地震で鉄道が止まり、路上に負傷者と帰宅困難者があふれた場合、受入施設、診療所、バス、水上輸送の選択肢があることで、安全な場所への移動と救護を早められます。
企業の不動産資産を平時の収益だけでなく災害時の市民保護へ使う具体策があり、5/5点です。
良いニュース・最近の前向きな動き
最近の三菱地所では、都市DXと防災を別々に進めるのではなく、データ・建物・医療・交通を組み合わせて街全体の利便性と安全性を高める動きが続いています。
三菱地所のオフィス・商業施設・街サービスを利用することは、こうした長期的な都市インフラへの投資を支えることにつながります。
2026年10月|estieと戦略的パートナーシップを締結(Innovation)
2026年10月1日、三菱地所は不動産データ基盤とAIを提供するestieと戦略的パートナーシップの基本合意を締結しました。
街での体験がテナント企業の価値へどうつながるか、継続投資がエリア価値へどう効くかを定量分析し、次の施設・サービスへ反映する計画です。[出典17]
利用者の声や街の変化を感覚だけでなくデータで捉えられれば、必要性の低い投資を減らし、混雑、働きやすさ、施設配置など実際の課題へ資金を振り向けやすくなります。
2026年2月|災害ダッシュボードで負傷者搬送まで一気通貫訓練(Protection)
診療所・調剤薬局と災害ダッシュボードを連携させ、負傷者発生地点から診療所での救護、重症者の災害拠点病院へのバス搬送までを訓練しました。[出典11]
災害時に「どこで診てもらえるか分からない」という時間を減らし、一時滞在施設への負担集中も避ける仕組みです。
単なるアプリ開発ではなく、医療機関と交通事業者を巻き込んだ実動訓練まで行った点を評価します。
2025年9月|第99回「ひと×まち防災訓練」を実施(Protection)
約2,000人と警視庁・東京消防庁が参加し、閉館ビルを使った救出救助、大規模消防、交通規制などを実施しました。[出典10]
災害時は設備だけでなく、人が誰へ連絡し、どこへ移動し、誰が救助するかが重要です。
99回継続して実地訓練を重ねていることは、制度を紙の計画で終わらせない強みです。
悪いニュース・問題となった動き
直近の三菱地所では、今回の調査で総合評価を大きく下げる新たな大規模行政処分や重大な単体情報漏えいは特定していません。
一方、働く人の公平性と労働安全には、数字として明確な改善余地があります。高い給与やDXの成果があっても、この差や事故が残ればSafetyの満点には届きません。
2025年度|正規雇用の男女賃金比率57.3%(Safety)
2025年度の男女賃金比率は全労働者54.3%、正規雇用57.3%でした。女性管理職比率は13.5%まで上昇しましたが、全社平均の賃金結果には大きな差が残っています。[出典2・3]
会社は同一の職掌・資格では同じ給与体系と説明しており、単純な「同一労働の女性だけが低賃金」という数字ではありません。
それでも、高位職・長期勤続・働き方の分布に男女差があることは、女性が同じように高所得へ到達できていない結果です。
2025年度|労働災害5件、休業災害1件(Safety)
三菱地所単体で労働災害5件、死亡0件、休業災害1件、休業24日が公表されています。[出典3]
死亡0は維持されていますが、休業を必要とする事故が発生しています。
事故類型と再発防止後の件数を継続公開し、休業災害0へ減らす必要があります。
2025年度|有給休暇取得率69.5%(Safety)
月平均残業11.3時間は低い一方、有給休暇取得率は69.5%です。平均取得13.3日で、休めていない会社ではありませんが、より高い利用実績の企業もあります。
低残業を維持したまま有休取得を90%以上へ引き上げれば、忙しくないだけでなく、社員が自分の意思でまとまった休息を取りやすい状態へ進めます。
総合評価と、これから改善してほしいこと
三菱地所株式会社は現在84点・シビックランクAです。
次のSランクは90点からなので、あと6点必要です。
高給与、低残業、DX、防災はすでに強いため、次の段階では男女のキャリア・賃金差、有休取得、労働災害という社員側の結果を改善することが最も直接的です。
男女の賃金・管理職格差を縮めてほしい|雇用の安定・待遇の公平性:3→5/5
現在は女性管理職13.5%、正規雇用の男女賃金比率57.3%です。
採用段階では女性が約半数を占めるため、採用後の配置、昇進、職掌転換、育児後のキャリア継続を追い、どの段階で差が広がるかを公開する必要があります。
女性管理職比率30%以上、正規雇用の男女賃金比率90%以上を実現し、職位・職掌・勤続年数をそろえた賃金差も小さいことを確認できれば5/5点を検討します。
現在:3/5点
改善後:5/5点
加点:+2点
総合:84→86点
ランク:Aのまま
参考企業は株式会社ミツウロコグループホールディングスです。Google Drive上の現行審査では、女性管理職比率47.4%、正規雇用の男女賃金比率91.5%を確認し、「雇用の安定・待遇の公平性」4/5点、総合84点・Aです。三菱地所でも採用比率だけでなく、管理職と賃金の結果差を縮める水準の参考になります。[比較資料21]
有給休暇取得率を90%以上へ高めてほしい|労働時間・休息:8→10/10
現在の月平均残業11.3時間はすでに低い一方、有給休暇取得率は69.5%です。
月平均残業15時間以下を維持しながら、有休取得率90%以上、平均取得17日以上、月45時間超の長時間労働者を極めて低い水準に抑え、その結果を複数年公開できれば10/10点を検討します。
現在:8/10点
改善後:10/10点
加点:+2点
総合:84→86点
ランク:Aのまま
参考企業は三菱ガス化学株式会社です。Google Drive上の現行審査では、2025年度の月平均時間外・休日労働14.5時間、有給休暇取得率92.5%、平均取得17.9日を確認し、「労働時間・休息」10/10点、総合84点・Aです。残業を抑えながら有休90%超を同時に実現している点が参考になります。[比較資料22]
休業災害0を複数年継続してほしい|労働安全・健康:8→10/10
現在の三菱地所単体は死亡0件ですが、労災5件、休業災害1件、休業日数24日です。
事故類型ごとに原因を分析し、建物巡回、工事確認、移動、転倒などの高頻度リスクへ設備・動線・作業手順の対策を行い、死亡・重篤災害0、休業災害0を複数年継続する必要があります。
さらに主要な工事・施設運営パートナーも含めた度数率・強度率を公開し、同じ方向で改善できれば10/10点を検討します。
現在:8/10点
改善後:10/10点
加点:+2点
総合:84→86点
ランク:Aのまま
参考企業は三菱ガス化学株式会社です。現行審査では2025年度の単体社員について休業災害0、死亡0、休業災害度数率0、強度率0を公開しています。
一方、協力会社に休業災害が残るため同社自身の「労働安全・健康」は8/10点です。三菱地所では自社の休業災害0だけでなく、建設・施設運営パートナーまで含めて低事故を確認できれば、より高い水準を示せます。[比較資料22]
次のランクへ上がるための具体例
現在84点・Aで、Sランクは90点からです。あと6点必要です。
・女性管理職30%以上、正規雇用男女賃金比率90%以上を実現し、「雇用の安定・待遇の公平性」を3→5点にする。+2点
・月平均残業15時間以下を維持し、有休取得率90%以上、平均取得17日以上を実現し、「労働時間・休息」を8→10点にする。+2点
・死亡・重篤災害0、休業災害0を複数年継続し、主要パートナーを含む度数率・強度率も公開して「労働安全・健康」を8→10点にする。+2点
84点+2点+2点+2点=90点となり、シビックランクSへ上がります。
つまり、三菱地所がSランクへ上がるためには、すでに強い給与・DX・防災をさらに増やすだけでなく、女性が高い職位と所得へ到達できる状態、社員が有休の大半を使える状態、働く人が休業災害に遭わない状態を実績として作ることが重要です。
出典一覧
1.三菱地所株式会社「会社概要」【情報ランクA】
2.三菱地所株式会社「2026年3月期 有価証券報告書」【情報ランクS】
3.三菱地所株式会社「ESG報告/ESGデータ S:社会データ」【情報ランクA】
4.厚生労働省「女性の活躍推進企業データベース」公表値【情報ランクS】
5.三菱地所株式会社「働く環境・福利厚生」「採用情報」【情報ランクA】
6.三菱地所「専任職(デジタル・IT)採用サイト/BPR・自動化」【情報ランクA】
7.三菱地所株式会社「DX推進」等【情報ランクA】
8.三菱地所株式会社「下地島空港 AI監視カメラによる空港警備DX実証」【情報ランクA】
9.三菱地所グループ「BCP・リスクマネジメント関連資料」【情報ランクA】
10.三菱地所株式会社「第99回 ひと×まち防災訓練」【情報ランクA】
11.三菱地所株式会社「災害ダッシュボード新機能実証実験」【情報ランクA】
12.三菱地所株式会社「大手町ゲートビルディング・鎌倉河岸船着場」【情報ランクA】
13.三菱地所グループ「人権方針・人権デュー・ディリジェンス」【情報ランクA】
14.三菱地所株式会社「ESGデータ/コンプライアンス・情報セキュリティ関連データ」【情報ランクA】
15.Indeed「三菱地所株式会社 社員クチコミ」【情報ランクB】
16.転職会議「三菱地所株式会社 社員口コミ」【情報ランクB】
17.三菱地所株式会社「estieとの戦略的パートナーシップ」2026年10月1日【情報ランクA】
18.三菱地所株式会社「フィジカルAIロボット実証実験」2026年10月8日発表【情報ランクA】
19.三菱地所株式会社「ザ・ランドマーク名古屋栄」防災機能関連資料【情報ランクA】
20.三菱地所株式会社「ロジクロス三郷」【情報ランクA】
21.シビックギルド「株式会社ミツウロコグループホールディングスを企業審査」【比較資料】
22.シビックギルド「三菱ガス化学株式会社を企業審査」【比較資料】
シビックランクの基準
| ランク | 総合点 |
|---|---|
| S | 90~100点 |
| A | 80~89点 |
| B | 70~79点 |
| C | 60~69点 |
| D | 50~59点 |
| E | 40~49点 |
| F | 20~39点 |
| G | 0~19点 |
三菱地所株式会社は84点のため、シビックランクAです。
情報ランクの基準
| 情報ランク | 基準 |
|---|---|
| S | 行政、公的機関、裁判所、規制当局、独立第三者機関の調査・監査・検証・認証など、内容そのものに独立した裏づけがある情報 |
| A | 企業公式資料、採用情報、公式声明・SNS、氏名・役職・立場が確認できる記名取材や公表発言など、発信主体を確認できる公表情報 |
| B | 従業員・元従業員口コミ、一般SNS、匿名掲示板など、発信者の身元や対象企業との関係を独立に確認しにくい情報 |
