私たちは、企業の商品を購入したり、サービスを利用したりすることで、そこで働く人たちの未来を変えることができます。
働く人に十分な賃金を払い、休暇を確保し、安全な職場をつくり、人の負担を減らす企業の商品やサービスが選ばれれば、そうした企業により多くの売上が集まります。その結果、働く人を大切にする経営を続けやすくなります。
反対に、低賃金や長時間労働、安全上の問題を改善しない企業の商品やサービスが売れ続ければ、そうした働かせ方のままでも事業を続けることができます。
だからこの企業審査では、「私たちがお金を使うなら、どの企業を選ぶことが、そこで働く人にとってより良い社会につながるのか」という視点から企業を評価します。
なぜ企業を審査するのか?――このサイトの目的と、利用するメリット
今回審査する東急株式会社は、総合77点、シビックランクBです。
東急株式会社の特に強い点は、2026年に12,000円のベースアップなどを含む平均6.0%の賃上げを実施しながら、生成AIを使った観光案内で窓口の対応工数を22.4%削減するなど、利益と技術を働く人の処遇・負担軽減へ結びつけていることです。そのため、この企業の商品を購入したりサービスを利用したりすれば、街のサービスを便利にしながら、そこで働く人の賃金と時間も改善する社会につながる可能性が高まります。
一方で、改善点として、2025年度の正規雇用労働者の男女賃金比率が74.1%にとどまり、2024年度には対象法人で死亡労働災害1件が発生したことが残ります。
この記事では、東急株式会社の強みと課題をさらに詳しく企業審査していきます。
東急株式会社の企業審査結果
東急株式会社は、鉄道会社そのものではなく、2019年に鉄道事業を東急電鉄株式会社へ分離した後、不動産・まちづくりを中核に、生活サービス、デジタルサービスなどを担う事業会社・グループ中核会社です。さらに2026年4月1日に株式会社東急ホテルズを吸収合併し、現在はホテル経営機能も直接持つようになっています。したがって、2026年3月期までの労働データはホテル合併前の東急株式会社単体の実績として扱い、東急電鉄など子会社の事故や労働環境は東急株式会社自身の点数へ混同しません。[出典1・2・3]
| 評価軸 | 得点 | 評価の要点 |
|---|---|---|
| Safety | 38/50 | 6%賃上げ、残業15.5時間、男性育休97.6%を評価。男女賃金差、2024年度の死亡労災、有休67%が課題 |
| Innovation | 19/25 | 生成AI観光案内で対応工数22.4%削減、DX内製化を評価。削減時間を残業・休日へ返した定量結果は不足 |
| Protection | 20/25 | 防災都市開発、帰宅困難者受入れ、サイバー訓練を評価。主要事業の実復旧時間・代替率の開示が不足 |
| 総合 | 77/100 | シビックランクB |
主な強み
2026年4月から12,000円のベースアップなどを含め、東急・東急電鉄の全従業員平均で6.0%の賃金引き上げを実施しました。東急単体では2024~2026年度の3年間で平均18.2%、非管理職では24.4%の賃金引き上げになるとしています。2025年度には一般社員の年収を平均8.5%引き上げ、2025年3月には全社員へ20万円以上の特別一時金も支給しています。[出典4・5]
2025年度の東急単体では月平均残業15.5時間、有給休暇取得率67.0%、平均取得13.4日です。残業は比較的低い一方、有給取得率は改善余地があります。男性育休取得率は97.6%、平均取得日数94.2日です。[出典6・7]
生成AI観光案内では、定型質問をAIへ移すことで案内所の対応工数を22.4%削減し、回答正答率を76.0%から94.5%へ改善しました。人手不足の中で単純な案内をAIへ任せ、スタッフが個別の「おもてなし」に時間を使える設計です。[出典8]
渋谷ヒカリエでは災害時に約2,500人を受け入れられる約5,500㎡のスペース、最大72時間分の非常用電源、飲料水・食料、災害情報を提供する設備を整えています。街づくりそのものに市民の避難・滞在機能を組み込んでいます。[出典9]
主な課題
2025年度の男女賃金比率は全労働者68.0%、正規雇用74.1%、パート・有期65.1%です。会社は職種構成や歴史的な人員構成の影響を説明していますが、女性管理職比率も14.8%で、上位職・高賃金職の男女差が残っています。[出典6]
対象法人の労働安全データでは、2024年度に死亡労働災害1件が発生しました。2025年度は死亡0、休業災害度数率0.00まで改善しましたが、死亡災害が直近2年度内にあるため、1年の改善だけで高得点にはしません。[出典10]
2025年度の有給休暇取得率67.0%は、残業15.5時間という低めの水準と比べると休暇の使い切りに改善余地があります。口コミでも公式平均より長い残業時間が集計されており、部署差をさらに細かく公開する必要があります。[出典7・11]
事業内容と人間への貢献
東急株式会社は、渋谷や東急線沿線を中心に、建物を建てて売るだけではなく、オフィス、商業施設、住宅、ホテル、文化施設、デジタルサービスなどを組み合わせて街を運営する会社です。
2019年10月に鉄道事業は東急電鉄株式会社へ移管されました。現在の東急株式会社の会社概要では、主な事業を「不動産賃貸業、不動産販売業、その他事業」としています。2026年4月には東急ホテルズを吸収合併し、ホテル経営の資産マネジメントも直接担っています。[出典1・2・3]
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 会社名 | 東急株式会社 |
| 設立 | 1922年9月2日 |
| 本社 | 東京都渋谷区南平台町5番6号 |
| 代表者 | 代表取締役社長 堀江正博 |
| 資本金 | 1,217億24百万円 |
| 単体売上高 | 2,571億20百万円(2026年3月期) |
| 単体従業員数 | 1,551人(2026年3月31日) |
| 主な事業 | 不動産賃貸、不動産販売、都市開発、生活サービス、ホテル経営など |
[出典1・2]
主な事業内容
不動産では、渋谷を中心とした再開発、オフィス・商業施設・住宅の開発・運営を行います。建物単体ではなく、歩行者動線、広場、防災設備、デジタルサービスまで含めて街の機能を設計する点が特徴です。
生活サービスでは、顧客接点や共通ID、アプリ、観光案内などをデジタル化しています。2026年4月以降はホテル経営機能も東急株式会社へ統合され、東急ホテルズ&リゾーツ株式会社がホテル運営を担当する分業体制になっています。[出典3・12]
主な利用企業・取引先
利用者は、不動産を借りる企業、商業施設・文化施設を利用する個人、住宅購入者、渋谷や沿線を訪れる観光客、ホテル宿泊者などです。
鉄道利用者も東急グループの重要な顧客ですが、鉄道運行そのものは子会社の東急電鉄株式会社が担当しているため、鉄道の運行実績を東急株式会社の直接的な商品安全実績としては採点していません。
事業による人間への貢献
街づくりによる最大の貢献は、「住む・働く・買う・遊ぶ・泊まる・避難する」という生活行動を一つの地域の中でつなぐことです。
例えば大地震で電車が止まり、数千人が渋谷から帰宅できなくなった場合、通常の商業施設が閉まるだけでは街に人があふれます。東急が関わる渋谷ヒカリエでは約2,500人を受け入れる場所、72時間分の非常用電源、飲料水・食料、災害情報設備を備えています。建物の収益機能と、防災時に市民を守る機能を同じ施設へ持たせることで、都市生活の継続性を高めています。[出典9]
Safety
Safetyでは、東急株式会社で働く人の賃金・休暇・公平性・健康・安全と、東急株式会社が直接提供する不動産・ホテル・生活サービスなどの安全性を評価します。賃金改善と育児支援は強く、残業も15時間台まで抑えられています。一方、男女賃金差、2024年度の死亡労災、有給取得率には改善余地があります。
賃金・利益の還元|8/10
2026年4月の賃上げでは、12,000円のベースアップなどを含めて平均6.0%引き上げます。中期3か年計画の2024~2026年度では、東急単体の賃金引き上げ率は平均18.2%、非管理職24.4%に達するとしています。2025年度にも一般社員年収を平均8.5%引き上げています。[出典4・5]
2026年3月期の単体平均年間給与は903万4,606円です。前年との単純比較では2.3%増ですが、賞与支給時期の特殊要因を除く実質比較では5.1%増と会社は説明しています。[出典6]
既存社員へのベースアップ、賞与、特別賞与、住宅費軽減を同時に行っているため8点です。
一方、パート・有期を含む雇用区分別の基本給上昇率、賃金中央値、物価上昇を差し引いた実質賃金の長期推移は十分公開されていません。これらを公開し、全雇用区分で高い実質賃金上昇を複数年確認できれば10点を検討できます。
労働時間・休息|8/10
2025年度の月平均残業は15.5時間、有給休暇取得率は67.0%、平均取得13.4日です。[出典7]
残業15.5時間は月20時間を下回り、長時間労働を抑えるという点では良好です。一方、有給は約3分の1が未取得で、三井住友銀行の現行審査で確認した95.5%などと比べると改善余地があります。
転職会議の投稿者集計は残業29.1時間、有給消化率70.1%です。2026年の法人営業社員は「有給もきちんと取ることができ」と投稿していますが、別の2025年投稿では残業時間が評価に影響する風土が一部残るとの指摘があります。【情報ランクB】[出典11]
公式値を優先して8点とします。全主要職種で月平均残業15時間以下、有給取得率90%以上を複数年継続し、月45時間・60時間超の人数も低水準で公開できれば10点を検討できます。
雇用の安定・待遇の公平性|3/5
2026年3月末の単体従業員数は1,551人で、2024年3月末1,525人、2025年3月末1,537人から増加しています。2026年3月の賃上げ発表では離職率が1%台まで低下したとしています。[出典2・4]
一方、女性管理職比率は14.8%で、2026年度目標18%に未達です。男女賃金比率は全労働者68.0%、正規雇用74.1%、パート・有期65.1%です。会社は職種構成や歴史的な人員構成を主因と説明していますが、結果として男女で賃金差が大きく残っています。[出典6]
雇用が増え、女性管理職も増加傾向であるため3点です。正規雇用の男女賃金比率を90%以上、女性管理職比率を20%以上へ引き上げ、同一等級・職種・勤続年数での差も小さいことを公開できれば4~5点を検討できます。
福利厚生・育児・介護|5/5
2025年度の男性育休取得率は97.6%、平均取得日数は94.2日です。女性の育休取得率は100%です。[出典6・13]
2025年には若手社員の独身寮を無償化し、独身寮賃料を従来比約40%、社宅を約33%引き下げました。さらにセルフケア休暇、不妊治療に専念する出生支援休職、資格取得費用支援と最大50万円の報奨金を導入しています。[出典5]
育休が「取れる制度」にとどまらず、男性平均94.2日まで利用され、住宅費・健康・学習支援も実際に拡充しているため5点です。
人権・ハラスメント・労使関係|4/5
東急は人権方針と人権デュー・ディリジェンスを進め、コンプライアンス相談窓口を社内と外部法律事務所に設置しています。匿名通報が可能で、通報者への不利益取扱いを禁止しています。[出典14]
2026年3月末の東急労働組合員は4,480人で、この中には東急電鉄社員や東急電鉄へ出向する東急社員も含まれます。対象範囲を分ける必要はありますが、労使協議を通じて賃金を決定する仕組みは確認できます。[出典6]
制度と外部窓口を評価して4点です。一方、東急単体のハラスメント認定件数、救済件数、再発防止後の結果は十分公開されていません。実績まで継続公開できれば5点を検討できます。
労働安全・健康|6/10
2025年度の東急単体では労働災害8件、通勤災害3件、休業災害度数率0.00、強度率0.00、死亡災害0でした。定期健康診断受診率も100%です。[出典10]
一方、2024年度は労働災害14件、休業災害度数率2.31、強度率0.03で、契約社員1人の死亡災害がありました。会社は転落事故としてリスク評価と再発防止策を実施しています。[出典10]
2025年度に休業災害0まで改善したことは明確な前進ですが、死亡事故から1年度しか経っていません。また2025年度のストレスチェック受検率は71.6%で、メンタル疾患による休業日数は6,313日と2024年度4,840日から増加しています。[出典10]
このため6点です。死亡・重大災害0、休業災害度数率0.5以下を少なくとも3~5年継続し、ストレスチェック90%以上、メンタル疾患休業日数も継続減少できれば8点を検討できます。
商品・サービスの安全|4/5
東急株式会社が直接担う不動産・商業・ホテル等では、建物・食品・施設運営の安全管理が重要です。グループでは安全管理をサステナビリティ会議等で統括し、食品安全・品質事故の情報も集約しています。[出典15]
渋谷の主要施設では耐震性能、非常用電源、帰宅困難者スペースなどを具体化しており、施設利用者の安全を設計段階から組み込んでいます。[出典9]
対象法人単体の直近の重大施設事故・重大食品事故を示す公開情報は今回の調査で確認されていません。一方、2026年4月にホテル経営機能を吸収したため、ホテル事業を含む新しい単体範囲での事故件数・食品安全結果は次の年度開示を待つ必要があります。
現時点は4点とします。現在の事業範囲で重大事故0を複数年継続し、施設・食品の事故件数を法人単位で公開できれば5点を検討できます。
従業員・元従業員の口コミ
転職会議では561件の口コミが掲載され、投稿者集計は月平均残業29.1時間、有給消化率70.1%です。【情報ランクB】[出典11]
2026年5月の30代前半・女性・正社員・法人営業の投稿には「有給もきちんと取ることができ」とあります。2025年の法人営業主任クラスからは、休みは自由に計画しやすい一方、残業時間が評価へ影響する風土が一部残っているという指摘もあります。【情報ランクB】[出典11]
公式の月平均残業15.5時間とは差があります。投稿者の時期・職種・旧鉄道部門経験などが混在する可能性があるため口コミ集計を公式値へ置き換えませんが、部署別の負担差をより細かく公開する必要性はあります。
SNS・匿名掲示板の確認結果
Xでは、東急株式会社の現役・元従業員であることを本文から確認でき、2025~2026年の労働条件を具体的に記した公開投稿は十分確認できませんでした。
5ちゃんねる等も会社名・旧社名・残業・給与・退職・AI・省人化などを組み合わせて検索しましたが、対象法人、職種、時期を確認でき、現在の採点根拠に使える本文付き投稿は十分確認できませんでした。
Safety合計|38/50
Innovation
Innovationでは、街やサービスをデジタル化したこと自体ではなく、従来、人が行っていた定型作業や案内を何が代替し、その時間が人へどう返ったかを評価します。東急は生成AI観光案内で22.4%の工数削減まで測定している点が強い一方、全社の残業・休日への還元との因果はまだ十分公開されていません。
作業負担・危険の削減|6/10
渋谷の観光案内所2か所で生成AIを使い、定型質問をAIへ移した結果、対応工数を22.4%削減しました。回答正答率も76.0%から94.5%へ改善しています。[出典8]
観光案内所では道順や定番スポットなど同じ質問が繰り返されます。AIが定型質問を処理すれば、スタッフは複雑な相談や個別ニーズへの対応へ時間を移せます。「AIを導入した」だけでなく工数削減率まで確認できるため6点です。
一方、年間で何時間の労働を減らしたか、必要人数、残業、休憩、配置転換がどう変わったかは公表されていません。複数業務で削減時間と人員・残業の変化を公開できれば8~10点を検討できます。
商品・サービスの改善|5/5
生成AI観光案内は工数削減だけでなく、回答正答率を76.0%から94.5%へ高めました。GENIAC-PRIZEでは114件の応募から最終候補へ選ばれ、「持続実装賞」とHDI-Japan賞を受賞しています。[出典8]
また、TOKYU ID、各種アプリ、デジタルチケット、共通顧客基盤など、街のリアルサービスとデジタル接点を接続しています。2025年DXレポートではデジタル接点300万ユーザーを前倒しで達成し、ゼロトラスト適用も開始しています。[出典16]
実証で終わらず、利用者が実際に使うサービスへ継続実装しているため5点です。
改善成果の人間への還元|3/5
東急では2025年度の残業15.5時間、2026年の平均6%賃上げ、離職率1%台など、人側の結果も良好です。[出典4・7]
しかし、生成AIで22.4%削減した工数や、業務自動化で減らした時間が「残業を何時間下げたか」「休暇を何日増やしたか」「何円の賃上げ原資になったか」という形ではつながっていません。
技術の成果と人への還元が両方存在することを評価して3点です。DX導入部署ごとに導入前後の残業、休暇、必要人数、配置転換、賃金を公開し、削減時間が自由時間や賃金へ返っていることを確認できれば4~5点を検討できます。
研究開発・現場改善の継続|5/5
東急は2021年にDX推進部門と内製開発組織URBAN HACKSを立ち上げ、2024年にはデジタル専門人材約100人体制、2025年にはゼロトラスト適用を開始しました。中期計画でもノーコード・ローコード、生成AI、業務フロー自動化を継続テーマにしています。[出典16・17]
2026年にも生成AI観光案内の実証・受賞が続いており、単発施策ではないため5点です。
自動化・AI導入後の雇用状況
DX・AIを進める一方、東急単体の従業員数は2024年3月末1,525人、2025年3月末1,537人、2026年3月末1,551人と増えています。[出典2・18]
2026年の処遇改善発表でも離職率が1%台まで低下したとされ、自動化を理由とする大規模な希望退職・人員整理は今回の公開情報調査では確認されていません。[出典4]
一方、全社人数が増えていても、AI導入部署で採用数・配置転換・契約更新がどう変化したかは別問題です。AI観光案内など個別案件ごとに、導入前後の必要人数、配置転換、再教育、求人、退職を公開すれば、「人を減らすAI」ではなく「人を定型作業から移すAI」であることをより明確に確認できます。
Innovation合計|19/25
Protection
Protectionでは、地震・豪雨・サイバー攻撃などが起きても、街・施設・ホテル・デジタルサービスを動かし、市民が安全に過ごせるかを評価します。東急は都市開発そのものに防災機能を組み込む点が強く、帰宅困難者支援では人数・時間まで具体化しています。一方、主要事業の復旧時間や代替稼働率の実績開示は不足しています。
災害への備え・訓練|5/5
東急は全社的な危機管理体制を持ち、大規模地震などを想定した対策本部訓練を継続しています。リスク管理では自然災害・感染症に対する連結各社の協力体制を構築し、被害最小化策を進めています。[出典19]
また渋谷の建物では耐震化、帰宅困難者スペース、非常用電源、備蓄を平時から設備として組み込んでいます。[出典9]
例えば首都直下地震で交通が止まった場合でも、単に社員が避難するだけでなく、施設利用者や来街者を建物内へ受け入れる準備まであるため5点です。
生産・物流・調達の代替|4/5
東急株式会社は製造会社ではないため、評価対象は「別拠点・別施設・グループ連携でサービスを続けられるか」です。
渋谷を中心に複数のオフィス、商業、住宅、ホテル資産を運営し、グループ各社との連携体制を持っています。災害時の帰宅困難者受入れや施設運営を複数地点で展開できることは、単一施設停止時の代替性を高めます。[出典9・19]
一方、「A施設停止時にB施設へ何人・何時間で切り替える」「ホテル予約・顧客対応を別拠点へ何時間で移す」といった機能別の代替能力は公開情報が不足しています。公開情報がない点は課題で、4点とします。実地訓練で代替可能人数・切替時間まで示せれば5点を検討できます。
サイバー防衛・情報保護|4/5
中期計画ではグループ共通インフラとしてゼロトラストネットワークを導入し、2025年DXレポートでは適用開始を公表しています。[出典16・17]
重要インフラを担うグループ会社では外部セキュリティアセスメント、改善計画、サイバー攻撃対応訓練、サイバー保険加入促進を実施しています。[出典19]
具体的な技術基盤と訓練があるため4点です。一方、東急株式会社単体の重大インシデント件数、バックアップ復元成功率、復旧時間、訓練達成率は十分公開されていません。結果まで公開できれば5点を検討できます。
供給継続・復旧能力|3/5
施設の非常用電源や備蓄、グループ危機管理、複数事業・施設による分散は確認できます。渋谷ヒカリエでは最大72時間分の非常用電源を備えています。[出典9]
一方、東急株式会社の主要な不動産・ホテル・顧客基盤について、「停止から何時間で復旧したか」「平時の何%を維持できるか」というRTOや実復旧率は公表されていません。公開情報がない点は課題で、採点上も減点対象です。
主要施設・ホテル・顧客システムについて、年1回以上の停止・復旧訓練を行い、24時間以内など明確なRTO達成実績を複数年公開できれば4~5点を検討できます。
危機時の市民への対応|4/5
渋谷ヒカリエでは約2,500人分の帰宅困難者受入れ、最大72時間の非常用電源、食料・飲料水、災害情報提供設備を備えています。[出典9]
例えば夜間の地震で鉄道が長時間止まり、自宅へ帰れない人が大量に出た場合、一時滞在場所、トイレ、電源、水・食料、運行情報を確保できることは市民の安全へ直接つながります。
実際の設備規模が具体的なため4点です。大規模災害時に実際に何人を受け入れ、何時間支援し、どの程度機能したかという近年の実績を継続公開できれば5点を検討できます。
Protection合計|20/25
良いニュース・最近の前向きな動き
最近の前向きな動きでは、利益を賃金へ返すSafetyと、AIで定型業務を減らすInnovationが同時に進んでいます。東急の商品・施設・サービスを利用することが、賃上げと人の時間を生むDXの両方へ投資する企業を支える方向につながります。
2026年3月 平均6.0%の賃上げを発表(Safety)
2026年4月から12,000円のベースアップなどを含め、東急・東急電鉄の全従業員平均で6.0%の賃金引き上げを実施します。東急単体では中期計画3年間の賃上げ率が平均18.2%、非管理職24.4%となります。[出典4]
2025年度にも一般社員年収を平均8.5%引き上げており、2年連続で高い処遇改善を行っています。賃上げが新卒初任給だけではなく既存社員へ及んでいるため、働く人の生活費上昇へ対応しやすくなります。
2026年3月 生成AI観光案内がGENIAC-PRIZEで受賞(Innovation)
渋谷の観光案内所で定型質問を生成AIへ移し、対応工数を22.4%削減、回答正答率を76.0%から94.5%へ高めました。[出典8]
人手不足時に案内係へ仕事を詰め込むのではなく、繰り返し質問をAIへ移すことで、人は個別相談や複雑な案内へ集中できます。削減時間を休憩・残業減・高付加価値業務へどう返したかまで今後公開できれば、さらに強いInnovationになります。
2026年4月 人材マネジメントポリシーを策定(Safety)
東急は2026年4月、従業員の「個の最大化」と企業価値を結び付ける人材マネジメントポリシーを策定しました。[出典20]
制度の追加だけで評価を上げるものではありませんが、すでに6%賃上げ、住宅費軽減、男性育休97.6%という結果があるため、今後この方針が有給取得率、男女賃金差、安全へどうつながるかを継続して確認できます。
悪いニュース・問題となった動き
問題となった動きでは、2024年度の死亡労災と、現在も残る男女賃金差が重要です。また、東急グループでは2025年10月に東急電鉄で列車接触・脱線事故が発生しましたが、これは子会社の事故であり、東急株式会社単体のSafety点数には直接算入しません。親会社としてグループ安全管理をどう改善するかというガバナンス上の論点として扱います。
2024年度 対象法人で死亡労働災害1件(Safety)
2024年度の東急単体では労働災害14件、休業災害度数率2.31、強度率0.03で、契約社員1人の死亡災害がありました。[出典10]
2025年度には死亡0、休業災害度数率0.00まで改善しています。死亡事故後にリスク評価と対策を行い、翌年度に休業災害0へ改善したことは評価できます。
一方、死亡事故は他の高得点で相殺しません。死亡・重大災害0を数年間継続し、再発防止が定着したことを結果で示す必要があります。
2026年6月開示 正規雇用の男女賃金比率74.1%(Safety)
2025年度の正規雇用の女性賃金は男性の74.1%、全労働者では68.0%でした。女性管理職比率は14.8%です。[出典6]
会社は職種構成や歴史的背景を要因として説明しています。要因を説明するだけでなく、女性の上位職登用、職種選択、昇格速度を改善し、同一等級・職種でも差が小さいことを示す必要があります。
2025年10月 子会社・東急電鉄で列車接触・脱線事故(グループ安全)
2025年10月5日、完全子会社の東急電鉄で梶が谷駅構内の列車接触・脱線事故が発生しました。調査では信号システムの条件設定に問題があり、類似設定が別駅でも確認され修正されました。[出典21]
鉄道事業は2019年に東急電鉄へ移管されているため、この事故を東急株式会社単体の「商品・サービスの安全」の減点には使っていません。ただし東急株式会社はグループ中核会社であり、グループ全体の安全情報を経営へ反映し、類似事故を横断的に防ぐ責任があります。
総合評価と、これから改善してほしいこと
現在の総合点は77点、シビックランクBです。次のAランクは80点からなので、あと3点必要です。
東急株式会社は、6%賃上げ、残業15.5時間、男性育休97.6%、AIによる対応工数22.4%削減、帰宅困難者2,500人・72時間電源など、働く人と都市利用者の双方に具体的な利益を出しています。一方、男女賃金差と死亡労災の再発防止を結果で積み重ねれば、Aランクへ届く位置です。
男女賃金差を縮め、女性の上位職登用を増やしてほしい(Safety)
現在の「雇用の安定・待遇の公平性」は3/5点です。
正規雇用男女賃金比率74.1%、女性管理職比率14.8%が現在の弱点です。[出典6]
女性の部門長・部長・高資格層への登用、職種間異動、育成を進め、正規雇用男女賃金比率90%以上、女性管理職比率20%以上を継続し、同一職種・等級での賃金差も小さいことを公開できれば3→4/5点、+1点を検討できます。総合は77→78点です。
参考企業は株式会社ミツウロコグループホールディングスです。当サイトのGoogle Drive上の最新版審査は総合84点・Aで、女性管理職比率47.4%、正規雇用男女賃金比率91.5%を確認し、「雇用の安定・待遇の公平性」4/5点です。持株会社と事業会社という違いはありますが、上位職登用と正規雇用の賃金差を同時に改善する目安になります。
死亡・重大労災0を複数年継続してほしい(Safety)
現在の「労働安全・健康」は6/10点です。
2025年度は死亡0、休業災害度数率0.00まで改善しましたが、2024年度には死亡災害1件があります。[出典10]
死亡・重大災害0を5年間継続し、休業災害度数率0.5以下、強度率0.01以下を安定して維持し、ストレスチェック受検率90%以上、メンタル疾患休業日数も減少傾向にできれば6→8/10点、+2点を検討できます。
この改善で総合78→80点となり、Aランクへ到達します。
参考企業はKDDI株式会社です。当サイトのGoogle Drive上の現行審査は総合82点・Aで、2025年度の単体労災1件、死亡0、度数率0.05、強度率0.00382を公開し、「労働安全・健康」8/10点です。事故の有無だけでなく頻度と重大度を継続公開する点が参考になります。
有給取得率を90%以上へ引き上げてほしい(Safety)
現在の「労働時間・休息」は8/10点です。
月平均残業15.5時間は良好ですが、有給取得率67.0%、平均13.4日です。[出典7]
残業15時間以下を維持しながら、部署別の業務平準化、取得計画、繁忙期の代替要員を整備し、有給取得率90%以上、平均18日以上、月60時間超の長時間労働者0%を複数年継続できれば8→10/10点、+2点を検討できます。
参考企業は株式会社三井住友銀行です。当サイトのGoogle Drive上の現行審査は総合81点・Aで、2025年度の有給取得率95.5%、平均19.1日、月平均法定外労働13.3時間、月60時間超0%を確認し、「労働時間・休息」10/10点です。
DXで減らした時間を残業・休暇へ直接返してほしい(Innovation)
現在の「改善成果の人間への還元」は3/5点です。
観光案内の対応工数22.4%削減という定量成果はありますが、削減した時間が勤務時間へどう返ったかは公表されていません。[出典8]
AI・業務自動化案件について、導入前後の年間作業時間、残業、休暇、必要人数、配置転換、再教育、賃金を同じ条件で公開し、複数部署で「作業時間削減+残業低下+雇用維持+賃金上昇」が確認できれば3→4/5点、+1点を検討できます。
参考企業はレンゴー株式会社です。当サイトのGoogle Drive上の現行審査は総合84点・Aで、自動化を進めながら2025年度の月平均残業15.4時間、有給取得率81.4%、組合員平均賃上げ6.7%を確認し、「改善成果の人間への還元」4/5点です。
次のランクへ上がるための具体例
| 改善行動 | 現在点 | 改善後 | 加点 |
|---|---|---|---|
| 正規雇用男女賃金比率90%以上、女性管理職20%以上を継続 | 公平性3/5 | 4/5 | +1 |
| 死亡・重大労災0を5年継続し、度数率0.5以下・強度率0.01以下、メンタル休業も改善 | 労働安全6/10 | 8/10 | +2 |
現在77点+1点+2点=80点で、シビックランクAです。
つまり、東急株式会社が次のAランクへ上がるためには、新しいサービスを増やすことより、現在の高い賃金・DX・防災力に加えて、男女賃金差を縮め、2024年度の死亡災害後の安全改善を複数年の結果として定着させることが最も効果的です。
出典一覧
1.東急株式会社「会社概要」【情報ランクA】
2.東急株式会社「第157期有価証券報告書」2026年6月23日【情報ランクA】
3.東急株式会社「株式会社東急ホテルズとの吸収合併に関する事後開示書類」2026年4月1日【情報ランクA】
4.東急株式会社「人的資本経営の一層の推進に向け、初任給・賃金の引き上げを実施」2026年3月19日【情報ランクA】
5.東急株式会社「人的資本経営の一層の推進に向け、総合的処遇改善を実施」2025年6月17日【情報ランクA】
6.東急株式会社「第157期有価証券報告書・人的資本データ」【情報ランクA】
7.東急株式会社「人材データ」2025年度【情報ランクA】
8.東急株式会社・Nextremer「GENIAC-PRIZE特別賞 持続実装賞・HDI-Japan賞」2026年3月25日【情報ランクA】
9.東急株式会社「渋谷再開発FACT BOOK/渋谷ヒカリエの防災機能」【情報ランクA】
10.東急株式会社「人材データ・労働安全衛生データ」【情報ランクA】
11.転職会議「東急株式会社の評判・社員口コミ」【情報ランクB】
12.東急株式会社「TOKYU CORPORATION 2026-2027 ホテル・リゾート事業」【情報ランクA】
13.株式会社ワーク・ライフバランス「男性育休100%宣言 東急株式会社」【情報ランクA】
14.東急株式会社「コンプライアンス・内部通報制度」【情報ランクA】
15.東急株式会社「サステナブル経営・安全管理」【情報ランクA】
16.東急株式会社「DX Report 2025」【情報ランクA】
17.東急株式会社「中期3か年経営計画 2024年度-2026年度」【情報ランクA】
18.東急株式会社「統合報告書2025 非財務データ」【情報ランクA】
19.東急株式会社「事業等のリスク」【情報ランクA】
20.東急株式会社「人材マネジメントポリシーを策定」2026年4月21日【情報ランクA】
21.東急電鉄株式会社「2025年10月20日付最終報告」【情報ランクA】
シビックランクの基準
| ランク | 総合点 |
|---|---|
| S | 90~100点 |
| A | 80~89点 |
| B | 70~79点 |
| C | 60~69点 |
| D | 50~59点 |
| E | 40~49点 |
| F | 20~39点 |
| G | 0~19点 |
情報ランクの基準
| 情報ランク | 基準 |
|---|---|
| S | 公的機関、裁判所、規制当局、独立した第三者機関の調査・監査・検証・認証など、内容そのものに独立した裏づけがある情報 |
| A | 企業公式資料、採用情報、公式声明・SNS、または氏名・役職・立場が確認できる記名取材や公表発言など、発信主体を確認できる公表情報 |
| B | 従業員・元従業員の口コミ、一般SNS、匿名掲示板など、発信者の身元や対象企業との関係を独立に確認しにくい情報 |
