私たちは、企業の商品を購入したり、サービスを利用したりすることで、そこで働く人たちの未来を変えることができます。
働く人に十分な賃金を払い、休暇を確保し、安全な職場をつくり、人の負担を減らす企業の商品やサービスが選ばれれば、そうした企業により多くの売上が集まります。その結果、働く人を大切にする経営を続けやすくなります。
反対に、低賃金や長時間労働、安全上の問題を改善しない企業の商品やサービスが売れ続ければ、そうした働かせ方のままでも事業を続けることができます。
だからこの企業審査では、「私たちがお金を使うなら、どの企業を選ぶことが、そこで働く人にとってより良い社会につながるのか」という視点から企業を評価します。
なぜ企業を審査するのか?――このサイトの目的と、利用するメリット
今回審査するPepsiCo, Inc.は、総合67点、シビックランクCです。
PepsiCo, Inc.の特に強い点は、AI・デジタルツインや安全技術を現場へ実装し、LTIRを0.45まで下げながら災害時の飲料・食料支援まで動かしていることです。そのため、この企業の商品を購入したりサービスを利用したりすれば、危険作業や設計ミスを減らし、災害時にも食料と飲料を届けやすい社会につながる可能性が高まります。
一方で、改善点として自動化・物流再編の成果を人へ還元する仕組みが弱く、一部の前線職で長時間労働の投稿が続くなか、工場閉鎖・外部委託・人員削減を伴う生産性向上策が進んでいることが残ります。
この記事では、PepsiCo, Inc.の強みと課題をさらに詳しく企業審査していきます。
PepsiCo, Inc.の企業審査結果
PepsiCo, Inc.は、「Pepsi」「Gatorade」「Lay’s」「Doritos」「Cheetos」「Quaker」などを世界で展開する飲料・食品企業です。2025年末の従業員数は世界約30万6,000人、うち米国約12万5,000人。2025年の連結売上高は939億2,500万ドルでした。[出典1]
今回の評価では、親会社PepsiCo, Inc.と連結グループの数値を区別しています。LTIRやグローバル賃金公平性など、PepsiCoが対象範囲を明示している連結・グローバル指標はその範囲で評価し、特定子会社の出来事をPepsiCo, Inc.単体の実績として機械的に移していません。
| 評価軸 | 点数 |
|---|---|
| Safety | 29/50 |
| Innovation | 19/25 |
| Protection | 19/25 |
| 総合点 | 67/100 |
| シビックランク | C |
主な強み
2025年のLTIRは0.45で、2024年の0.49から改善しています。この指標は第三者による限定的保証の対象です。113施設、全施設の47%ではISO 14001とISO 45001の両方を維持しています。[出典2]
AI・デジタルツインの初期導入では、物理的に設備を変更する前に潜在問題の最大90%を特定し、初期導入でスループット20%向上、ほぼ100%の設計検証、設備投資10~15%削減という成果を公表しています。[出典7]
2025年には前線職を含む従業員が280万時間を超える研修を受講しました。また、給与公平性分析は世界の給与所得者約99%を対象とし、職位や地域などを調整した後の男女の給与差を1%以内としています。[出典1・3]
主な課題
会社全体の平均労働時間、前線職の平均残業、有給取得率は十分に公開されていません。2026年10月のIndeedでは、米国のOrder Pickerから1日14~16時間勤務が続くという投稿も確認できます。[出典15]
2030年までの生産性向上計画では、新技術・自動化、営業方法や情報システムの再設計、組織簡素化、製造・供給網の最適化を進めます。その想定税引前費用約61.5億ドルの約50%が退職金などの従業員関連費用、15%が工場閉鎖などによる資産減損です。[出典10]
2024年にはQuakerのDanville工場をめぐり、FDAがサルモネラ環境汚染と是正措置の不十分さを指摘しました。[出典11・12]
NLRBにはPepsiCo, Inc.を被申立人とする未解決案件もあり、解雇、報復、尋問、監視などが申立項目として掲載されています。これは申立内容であり、違法行為が最終認定されたという意味ではありません。[出典13]
事業内容と人間への貢献
PepsiCoは、農産物や飲料原料を調達し、食品・飲料へ加工し、工場・倉庫・配送網を通じて小売店、外食店、消費者へ届ける巨大な生活インフラ型企業です。
規模そのものは加点理由にしませんが、改善が実行された場合に影響する人と工程が非常に多い企業です。
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 会社名 | PepsiCo, Inc. |
| 本社 | Purchase, New York, U.S. |
| CEO | Ramon Laguarta |
| 上場 | NASDAQ: PEP |
| 従業員数 | 約306,000人(2025年末・連結) |
| 米国従業員数 | 約125,000人 |
| 2025年売上高 | 939億2,500万ドル |
| 2025年営業利益 | 114億9,800万ドル |
| 主なブランド | Pepsi、Gatorade、Lay’s、Doritos、Cheetos、Quaker、Mountain Dew、SodaStreamなど |
| 評価時点 | 2026年10月17日 |
2025年の営業利益は114億9,800万ドルで、2024年の128億8,700万ドルから11%減少しました。営業利益率も14.0%から12.2%へ低下しています。[出典1]
主な事業内容
事業は大きく飲料とコンビニエンスフードに分かれます。
農家や原料企業からジャガイモ、トウモロコシ、オーツ麦、砂糖、水、包装資材などを調達し、自社工場や契約製造網で加工・充填し、倉庫・配送センターから店舗や外食チャネルへ供給します。
PepsiCoは自社所有・賃借施設だけでなく、契約製造会社、co-packer、戦略提携、ジョイントベンチャーが持つ分散した工場・倉庫・配送網も利用しています。[出典1]
主な利用企業・取引先
PepsiCoの商品はスーパー、コンビニ、量販店、飲食店、自動販売・フードサービスなどを通じて消費者へ届きます。
会社は世界200超の国・地域で商品が1日10億回以上消費されていると説明しています。
一方、取引関係は固定ではありません。2026年10月15日には、KFC米国が約40年続いたPepsiCoとの関係を終え、2027年春からCoca-Cola製品へ切り替えると発表しました。対象は米国3,718店舗です。[出典25]
事業による人間への貢献
日常の食料、水分、電解質飲料を大量供給できることは、市民生活への直接的な貢献です。
農業では、2025年までに再生型・修復型・保全型農業の実践面積を世界470万エーカーまで広げ、2021年以降に農業サプライチェーンや地域で約22万4,000人の生計改善を支援したと報告しています。[出典22]
一方、食品・飲料の大量供給は、製造、倉庫、配送の重量物作業や長時間労働を伴いやすい事業でもあります。
市民への供給量だけでなく、その供給を支える人の働き方まで改善されているかをSafetyとInnovationで分けて評価します。
Safety
Safetyでは、PepsiCoで働く人が賃金、休息、雇用、安全を確保できているかと、消費者が安全な商品を受け取れるかを評価します。
PepsiCoは給与公平性、育児支援、労災指標の公開で加点できます。一方、前線職の長時間労働、人員再編、労使問題の申立、2024年の食品安全問題が総合点を押し下げています。
賃金・利益の還元|6/10
2025年の給与公平性分析は、世界の給与所得者約99%を対象とし、職位、地域、評価などを調整した後の男女の給与差を1%以内としています。これは同じ条件の給与所得者間で大きな男女差を残さない仕組みとして評価できます。[出典3]
一方、この指標は世界の給与所得者が対象で、工場、倉庫、配送などの時間給前線職を同じ範囲で評価した数字ではありません。
PepsiCo全体の賃金中央値、時間給従業員の実質賃金上昇率、利益増加が前線職の基本給へどれだけ返ったかを示す公開情報も不足しています。
Indeedでは給与・福利厚生評価が3.8/5と比較的高いものの、法人全体の賃金還元を確認できる水準には届かないため6点です。[出典15]
次の8点には、主要国・主要雇用区分でベースアップや実質賃金の複数年改善を公開する必要があります。
労働時間・休息|4/10
PepsiCoは世界約30万6,000人を雇用していますが、会社全体の平均残業時間、有給取得率、長時間勤務者比率を一つの指標として公開していません。
公開情報がない点は課題であり、採点上も減点対象です。
Indeedの2026年10月7日、米ウィスコンシン州Sussexの元Order Picker投稿には、
“Expect long, demanding hours, often 14 to 16 hours a day, 5 days a week”
とあります。[出典15]
別の2026年6月14日Atlantaの元Operations Technicianは、
“Good pay and good benefits.”
とし、夏には残業があり、冬には勤務日数が短くなることにも触れています。[出典15]
職場や職種によって差があるため、一つの投稿を全社実態とは扱いません。
ただし、現在の前線職で14~16時間勤務という具体的な投稿があり、会社側の職種別実績で確認できる公開データも不足しているため4点です。
次の6点には、拠点・職種別の月平均残業、12時間超勤務率、有給取得率を公開し、長時間勤務が例外化していることを示す必要があります。
雇用の安定・待遇の公平性|2/5
2025年末の従業員数は約30万6,000人で、研修やキャリア開発制度も大規模に運用されています。
一方、PepsiCoの2030年までの生産性向上計画は、新技術・自動化、販売方法や情報システムの再設計、組織簡素化、製造・供給網の最適化を一体で進めるものです。
想定税引前費用約61.5億ドルの約50%が退職金など従業員関連費用となっています。[出典10]
2024年には米国の4つのボトリング拠点で約400人の削減が発表されました。Chicago工場では約150人が影響を受け、PepsiCoは60日間の給与・福利厚生継続を表明した一方、労組は通知や協約をめぐり異議を唱えました。[出典23]
雇用維持の大規模な結果を確認できる一方、構造改革に雇用削減が組み込まれ、給与所得者以外を含む待遇公平性の結果も十分ではないため2点です。
次の3点には、閉鎖・自動化時の再配置率、再訓練率、12カ月後の雇用継続率を公開し、人員削減以外の選択肢が中心になっていることを示す必要があります。
福利厚生・育児・介護|4/5
PepsiCoは全事業国でウェルビーイングプログラムを展開しています。
米国では出産した親に最低16週間の妊娠・出産休暇を設け、短期障害給付10週間と有給育児休暇6週間で構成しています。6週間の育児休暇は性別を問わず、養親にも適用されます。[出典4]
制度の対象範囲と日数が具体的であるため4点です。
一方、世界全体での男性育休取得率、介護休暇利用率、復職後の離職率、前線職で制度を利用できた結果は十分に公開されていません。
次の5点には、主要国・雇用区分別の利用率と復職継続率まで公開する必要があります。
人権・ハラスメント・労使関係|3/5
2025年改訂のGlobal Human Rights Policyは全PepsiCo従業員に適用され、世界人権宣言やILOの「労働における基本的原則及び権利に関する宣言」などを参照しています。[出典5]
2025年末時点で多数の団体協約を持つことも10-Kで確認できます。[出典1]
一方、NLRBにはPepsiCo, Inc.を被申立人とするLas Vegasの事件が2026年10月時点でOpenとして掲載され、解雇・報復・尋問・監視などが申立項目に含まれています。
これは申立内容であり、NLRBが違法行為を最終認定したという意味ではありません。[出典13]
2024年にもTeamstersの5支部が、賃金・労働条件の議論を妨げる政策だとして不当労働行為の申立を行い、PepsiCo側は不当行為を否定しました。[出典14]
人権方針と団体交渉の仕組みは評価できますが、現在も労使紛争の申立が残っているため3点です。
次の4点には、案件の是正・解決状況と、会社単体の相談、調査、是正件数を匿名化して継続公開する必要があります。
労働安全・健康|8/10
PepsiCoの2025年LTIRは0.45で、2024年0.49、2023年0.48から改善しました。
この指標はフルタイム、パート、季節従業員と依存請負者を対象とし、ジョイントベンチャーとフランチャイズボトラーを除外しています。第三者の限定的保証も受けています。[出典2]
さらに113施設、全施設の47%がISO 14001とISO 45001の両方を維持しています。
2025年にはMachine Safety Summits、エルゴノミクス危険を把握するセンサー、運転支援システムの導入を進めました。[出典2]
結果指標を公開し、LTIRも改善しているため8点です。
一方、LTIRはゼロではなく、ISO 45001等の対象も全施設ではありません。
次の10点には、死亡災害ゼロを長期継続し、LTIRを0.3未満などさらに低い水準へ下げ、主要地域・職種別でも同様の結果を確認できることが必要です。
商品・サービスの安全|2/5
2024年6月、FDAはPepsiCo, Inc.とThe Quaker Oats Companyに対するWarning Letterで、Danville工場の環境からSalmonella Cubanaが検出され、2022年6月以降に13件の環境陽性があったことを指摘しました。
FDAは、是正措置が環境汚染の再発を防ぐうえで十分ではなかったとしています。2024年1月には同工場で製造した賞味期限内のRTEシリアル、バー、スナック等まで回収範囲が拡大されました。[出典11・12]
FDAは2024年9月、Danville施設を恒久閉鎖したことで指摘事項には対応したと判断し、Warning Letterをclose-outしました。ただし、他拠点での是正の持続性について今後も確認するとしています。[出典26]
工場を閉じて是正したことは考慮しますが、複数年にわたる環境陽性と大規模回収は重大な商品安全上の問題です。
そのため2点です。
次の3点には、他のRTE工場を含む環境病原菌モニタリング、不適合件数、是正完了率を継続公開し、同種の大規模回収が長期に再発していないことを示す必要があります。
従業員・元従業員の口コミ
IndeedとGlassdoorを確認しました。
Indeedは2026年10月時点で総合3.7/5、Work-life balance 3.4、Pay and benefits 3.8、Job security and advancement 3.4、Management 3.3、Culture 3.5です。[出典15]
肯定的な投稿では、Atlantaの元Operations Technicianが、
“Good pay and good benefits.”
と書いています。[出典15]
一方、Sussexの元Order Pickerは、
“Expect long, demanding hours, often 14 to 16 hours a day, 5 days a week”
と投稿しています。[出典15]
Glassdoorでも「Good culture, benefits and workload」という肯定的な投稿がある一方、長時間労働やwork-life balanceへの不満も確認できます。[出典16]
口コミは職種・拠点差が大きいため、単独で全社の点数を決めていません。
会社側の職種別労働時間開示が不足する中で、前線職の勤務負荷を確認する補助材料としてSafetyへ反映しています。
SNS・匿名掲示板の確認結果
Redditのr/Pepsiでは、2026年6月のGeo Driver投稿に、
“12-14 hour days is the norm.”
とあり、給与計算や保険対応への不満も書かれています。[出典17]
2026年9月のProject Summit関連スレッドでは、
“Nearly all bcrs left the company when they understood that they had to get reduced pay and become a merchandiser.”
という投稿があります。[出典18]
これらは匿名・自己申告であり、PepsiCoが公表した人員統計ではありません。
一方、SEC提出資料でも自動化・組織簡素化と大規模な従業員関連費用が同時に計画されているため、雇用への影響を追う必要があります。
Xでは対象法人の従業員投稿として本文確認できる有用な情報を今回の検索範囲で得られず、5ちゃんねる・爆サイでも対象法人の現在の労働実態へ結び付けられる投稿を確認できませんでした。
Innovation
Innovationでは、AIや自動運転の派手さではなく、人が担っていた危険・重量・反復作業がどれだけ減り、その成果が労働時間や雇用へ返っているかを評価します。
PepsiCoは設備・物流・商品開発の技術力は非常に高い一方、生産性向上策と人員削減が同時進行しているため、人への還元を厳しく評価します。
作業負担・危険の削減|8/10
PepsiCoはSiemens、NVIDIAとのデジタルツインで、機械、コンベヤ、パレット経路、作業者動線を物理変更前に仮想検証しています。
初期導入では潜在問題の最大90%を物理変更前に特定し、スループット20%向上、ほぼ100%の設計検証、設備投資10~15%削減を公表しています。[出典7]
また、Gatikとの自動運転貨物輸送をTexas、Arizona、Arkansasですでに運用し、2026年6月に北米での複数年展開を発表しました。[出典8]
EHSでもエルゴノミクスセンサーや車両運転支援を導入しています。人が危険な運転・反復確認・設備変更の失敗リスクを直接負う場面を減らせるため8点です。
次の10点には、導入前後の人の歩行距離、重量物取扱回数、事故件数、運転時間、夜間勤務を拠点横断で定量公開し、大幅な負担削減を複数年確認する必要があります。
商品・サービスの改善|5/5
2025年にPepsiCoは、飲料ポートフォリオの68%を12オンス当たり添加糖由来100kcal以下とし、67%目標を上回りました。
コンビニエンスフードでは79%が1kcal当たりナトリウム1.3mg以下、79%が飽和脂肪目標を満たしています。[出典6]
商品構成そのものを糖、ナトリウム、飽和脂肪の少ない方向へ変え、同時に商品開発を継続しているため5点です。
改善成果の人間への還元|1/5
デジタルツインや自動運転で生産性を高めていますが、その成果が従業員の残業削減、休日増、賃上げ、雇用維持へどれだけ返ったかを示す全社的な因果データは公表されていません。
むしろ2030年までの生産性向上計画では、技術・自動化、組織簡素化、製造・供給網最適化を一体で進め、61.5億ドルの想定費用の約50%が退職金などの従業員関連費用です。[出典10]
すべての退職費用が自動化によって生じたとは断定できません。
しかし、「技術導入後に雇用を維持し、浮いた時間を人へ返した」という全社結果も確認できないため1点です。
次の3点には、自動化対象拠点で雇用を原則維持し、再配置・再訓練を行った人数、12カ月後の在籍率、残業削減時間、賃金・休日への還元を公開する必要があります。
研究開発・現場改善の継続|5/5
AIデジタルツイン、クラウド・AI活用、自動運転、EHSセンサー、商品栄養設計など、製造・物流・商品開発の複数工程で改善を続けています。
単発の実証ではなく、複数年・複数機能でR&Dと現場実装が継続しているため5点です。
自動化・AI導入後の雇用状況
PepsiCoの自動化後の雇用は、今回の審査で最も重要な論点の一つです。
公式の生産性向上計画は、新技術と自動化だけでなく、営業モデル、情報システム、組織、製造拠点の再設計を含みます。
そのため、退職・閉鎖をすべて「AIが仕事を奪った」と結びつけることはできません。[出典10]
一方、2026年時点でも同計画の想定費用の約50%が退職金等、15%が工場閉鎖等による資産減損です。
2024年には米国複数拠点で約400人の削減も発表されています。[出典10・23]
RedditのProject Summit投稿でも、役割変更、賃金低下、退職を選んだという経験談が複数あります。【情報ランクB】[出典18]
PepsiCoは2025年に前線職を含む従業員へ280万時間超の研修を実施しています。[出典1]
しかし、デジタルツイン、自動運転、倉庫自動化の対象者が何人再訓練され、何人が別職種へ移り、何人が退職したかを結び付けた公開情報はありません。
公開情報がない点は課題であり、Innovationの「改善成果の人間への還元」を1点にした主要理由です。
Protection
Protectionでは、災害、サイバー攻撃、工場停止、物流途絶が起きても、PepsiCoが食品・飲料を供給し、市民生活を支えられるかを評価します。
世界規模の分散網、サイバー対策、実災害での支援は強みですが、一般に検証できるRTO・RPOや拠点停止後の復旧時間は不足しています。
災害への備え・訓練|4/5
PepsiCoは2025年に、緊急事態への準備・対応用モバイルアプリの利用範囲を拡大しました。[出典2]
サイバー面でもtabletop exercise、社内侵入テスト、独立第三者による侵入テスト、フィッシング訓練などを行っています。[出典1]
危機対応を紙の方針だけでなく訓練・ツールへ落としているため4点です。
次の5点には、地震、洪水、停電、サイバー攻撃を含む主要訓練の頻度、参加拠点、復旧目標と達成時間を毎年公開する必要があります。
生産・物流・調達の代替|3/5
PepsiCoは自社工場だけでなく、契約製造、co-packer、戦略提携、ジョイントベンチャーの分散ネットワークを利用しています。[出典1]
Gatikの自動運転輸送も地域輸送の追加能力として使われています。[出典8]
一方、具体的な代替生産能力や切替時間は公開されていません。
そのため3点です。
次の4点には、主要カテゴリーで代替工場・代替サプライヤーのカバー率と切替時間を公開する必要があります。
サイバー防衛・情報保護|4/5
PepsiCoはNISTのサイバーセキュリティフレームワークを用い、社内侵入テスト、独立第三者による内外部テスト、フィッシング訓練、第三者リスク評価、インシデント対応計画を運用しています。
取締役会がサイバーリスクを直接監督しています。2025年10-K提出時点では、重大な影響を与えた、または重大な影響を与える合理的可能性がある既知のサイバー脅威はないとしています。[出典1]
技術・統治の具体性が高いため4点です。
次の5点には、主要システムのRTO・RPO、復旧訓練の実測時間、MFA・EDR等の適用率を外部が検証できる形で公開する必要があります。
供給継続・復旧能力|3/5
世界各地の工場、倉庫、契約製造網を持ち、複数の輸送手段を組み合わせられることは供給継続の基盤です。
2026年第3四半期の連結売上高も前年同期比5.6%増、Organic Revenueは3.1%増でした。[出典9]
ただし、特定の主要工場やERP、受発注、物流システムが停止した場合に何時間で復旧できるか、供給量を何%維持できるかという実測値は公開されていません。
工場閉鎖・物流再編も進んでいるため3点です。
次の4点には、主要拠点停止訓練で24~72時間以内の代替出荷など、目標と実測を公開する必要があります。
危機時の市民への対応|5/5
2025年1月のCalifornia山火事では、PepsiCo Foundationが50万ドルを支援し、1万食の常温保存食、数千ケースのボトル水・食品を提供しました。[出典19]
2026年7月のVenezuela地震では10万ドルを地域団体DVCへ拠出し、社員のマッチング寄付と合わせて約10万ドルを追加し、商品寄付も行っています。[出典20]
資金だけでなく、自社の商品・物流を使って水分と食料を危機時へ動かしており、複数災害で継続実績があるため5点です。
良いニュース・最近の前向きな動き
最近の前向きな動きでは、AI・デジタルツインによる設備設計の事前検証、自動運転物流、災害支援、栄養改善を評価します。
PepsiCoの商品が選ばれることで、危険や無駄を減らす設備投資、供給網の強化、非常時の食料・飲料支援を続ける資金が増える関係があります。
2026年1月|デジタルツインで潜在問題の最大90%を事前検出
Siemens、NVIDIAとの初期導入では、設備変更前に潜在問題の最大90%を特定し、スループット20%向上、ほぼ100%の設計検証、設備投資10~15%削減を公表しました。[出典7]
人が稼働中の工場で試行錯誤する回数を減らし、危険なレイアウトや搬送干渉を仮想空間で先に確認できる点がInnovationの強みです。
2026年6月|Gatikとの自動運転貨物輸送を北米へ拡大
Texas、Arizona、Arkansasですでに運行している自動運転貨物輸送を、複数年契約で北米へ広げます。[出典8]
地域間輸送の安定性と追加容量を増やせるため、ドライバー不足や反復運転負担を減らす可能性があります。
今後は、人の運転時間、事故、配置転換が実際にどう変わったかの公開が重要です。
2026年7月|Venezuela地震で資金・社員寄付・商品を支援
PepsiCo Foundationは10万ドルを地域団体へ拠出し、社員のマッチング寄付と合わせて約10万ドルを追加し、商品寄付も実施しました。[出典20]
地震で店舗や水・食料供給が乱れた場面で、企業の在庫・資金を救援へ切り替えられることはProtectionの具体的な市民メリットです。
2026年8月|糖・ナトリウム・飽和脂肪の改善結果を公開
2025年実績として、飲料の68%が添加糖由来100kcal以下、食品の79%がナトリウム目標、79%が飽和脂肪目標を満たしました。[出典6]
大量販売企業が既存ポートフォリオの栄養設計を変えると、多数の消費者が日常的に摂る糖・塩分量へ影響するため、商品改善として評価できます。
悪いニュース・問題となった動き
問題となった動きでは、食品安全、労働時間、労使関係、構造改革に伴う雇用影響を重く見ます。
これらが改善されなければ、AIや生産性向上の利益が働く人へ戻らず、長時間労働や雇用不安、商品安全リスクが残るためです。
2026年10月|利益見通しを引き下げ、コスト削減を深める
PepsiCoは2026年10月8日、北米の回復が想定より遅いとして通期Core EPS成長見通しを従来の4~6%から1~2%へ引き下げ、追加のコスト削減を進める方針を示しました。[出典24]
第3四半期の売上自体は増えていますが、コスト圧力が強い局面では雇用・労働強度への影響も追う必要があります。
2026年時点|生産性向上計画の約半分が従業員関連費用
SEC提出資料では、2030年までの生産性向上計画の想定税引前費用61.5億ドルの約50%が退職金など従業員関連費用、15%が工場閉鎖等による資産減損です。[出典10]
自動化・効率化の成果が人の時間へ返るのか、人員削減へ偏るのかを確認する必要があります。
2024年|FDAがQuakerのSalmonella管理を警告
FDAはDanville工場で2022年以降13件のSalmonella Cubana環境陽性があり、是正が再発防止を十分確保していなかったと指摘しました。[出典11]
会社は回収を拡大し、最終的に工場を恒久閉鎖しました。FDAは2024年9月にWarning Letterをclose-outしています。[出典26]
是正されたことを考慮しても、消費者Safety上の重大事例です。
2024~2026年|労使関係の申立が継続
2024年にはTeamstersの複数支部がNLRBへ申立を行い、PepsiCo側は不当行為を否定しました。[出典14]
Las VegasのPepsiCo, Inc.案件は2026年10月時点でもOpenです。[出典13]
申立と確定違反を混同しませんが、働く人が賃金や労働条件について安心して発言できる環境かを確認する重要材料です。
総合評価と、これから改善してほしいこと
PepsiCo, Inc.は67点、シビックランクCです。
次のBランクは70点からなので、あと3点です。
AI・デジタルツイン、安全技術、災害支援は高く評価できますが、技術による生産性向上を前線職の短時間化・雇用安定へ返すことと、2024年の食品安全問題を全社的な再発防止結果へ変えることが、Bへの最短ルートです。
前線職の長時間勤務を減らす|労働時間・休息4→6点
現在は4/10点です。
会社全体の職種別残業・有給実績が十分公開されず、Indeedには14~16時間勤務の投稿があります。
PepsiCoが倉庫・配送・製造の主要拠点で月平均残業20時間以下、恒常的な14時間超勤務を原則ゼロ、有給取得率70%以上を達成し、拠点別に公開できれば6/10点を検討できます。
加点は+2点で、総合67→69点、Cのままです。
参考企業はキリンビバレッジ株式会社(74点・B)です。
現行審査では年間総実労働時間1,971時間、有給取得率66.0%を法人単位で公開し、労働時間・休息8/10点としています。
PepsiCoも巨大企業だからこそ、前線職の時間を同じように結果で示す必要があります。
食品安全の再発防止結果を全工場へ広げる|商品・サービスの安全2→3点
現在は2/5点です。
Danville工場閉鎖だけで終えず、RTE食品の主要工場で環境Salmonella検査の実施範囲、陽性件数、是正完了率、再発状況を毎年公開し、少なくとも24カ月にわたり同種の大規模病原菌回収がないことを確認できれば3/5点を検討できます。
加点は+1点です。
前項の+2点と合わせれば、総合67→70点となり、Bランクへ到達します。
参考企業はキリンビバレッジ株式会社(74点・B)です。
主要生産拠点のFSSC22000を公開し、過去の表示行政処分も他の加点で相殺せず、商品・サービスの安全3/5点としています。
PepsiCoでも問題発生後の是正を、工場横断の結果指標として継続公開することが重要です。
自動化の利益を雇用・時間へ返す|改善成果の人間への還元1→3点
現在は1/5点です。
デジタルツインや自動運転で設備・物流の生産性が上がる一方、構造改革では退職費用が大きく計上されています。
自動化対象拠点で雇用維持または希望する再配置を原則化し、再訓練人数、配置転換率、12カ月後在籍率、残業削減時間、賃金への還元を公開し、たとえば配置転換率90%以上、対象職の残業20%以上削減を確認できれば3/5点を検討できます。
加点は+2点です。
参考企業はキリンビバレッジ株式会社(74点・B)です。
海老名物流センターの実証では生産性42%向上後に人員を検品など別作業へ再配置する設計を示し、改善成果の人間への還元4/5点です。
PepsiCoも「何人減らしたか」ではなく、「危険作業から何人を移し、時間をどれだけ人へ返したか」を公開できれば、Innovationの強みが市民貢献へ直結します。
次のランクへ上がるための具体例
最短例は、
労働時間・休息を4→6点へ改善して+2点。
商品・サービスの安全を2→3点へ改善して+1点。
この2項目で67→70点となり、シビックランクBへ上がります。
さらに自動化後の再配置・残業削減を実績で示し、改善成果の人間への還元を1→3点へできれば72点まで上がります。
つまりPepsiCoが次のランクへ進むために必要なのは、AI投資をさらに増やすことだけではありません。
すでに生まれている生産性を、前線職の短時間化・雇用安定へ返し、食品安全の再発防止結果を継続的に公開することです。
出典一覧
1.PepsiCo, Inc.「2025 Annual Report / Form 10-K」
2.PepsiCo「Environment, health and safety」2026年8月更新
3.PepsiCo「Pay equity」2026年8月更新
4.PepsiCo「Employee Experience」
5.PepsiCo「Global Human Rights Policy」2025年8月改訂
6.PepsiCo「Nutrition」2025年実績・2026年公開
7.PepsiCo「AI and Digital Twin Collaboration with Siemens and NVIDIA」2026年1月6日
8.PepsiCo / Gatik「Autonomous Freight in North America」2026年6月8日
9.PepsiCo「Third-Quarter 2026 Results」2026年10月8日
10.PepsiCo Form 10-Q「Multi-Year Productivity Plan」2026年
11.U.S. FDA「PepsiCo, Inc. Warning Letter 679972」2024年6月12日
12.U.S. FDA「Quaker Revised Recall Notice」2024年1月
13.NLRB「PepsiCo, Inc. Case 28-CA-358276」
14.Reuters「Teamsters union files charges against PepsiCo with US labor board」2024年4月19日
15.Indeed「PepsiCo Employee Reviews」2026年10月確認
16.Glassdoor「PepsiCo Reviews」2026年10月確認
17.Reddit r/Pepsi「Finally quit」2026年6月5日
18.Reddit r/Pepsi「Project Summit」2026年8~9月
19.PepsiCo Foundation「California wildfire relief」2025年1月14日
20.PepsiCo Foundation「Venezuela earthquakes relief」2026年7月13日
21.PepsiCo「Water milestones」2026年3月19日
22.PepsiCo「2030 agriculture goals progress」2026年7月1日
23.Associated Press「PepsiCo is closing 4 bottling plants and cutting nearly 400 jobs」2024年
24.Reuters「PepsiCo slashes forecast, deepens cost cuts as North America recovery drags」2026年10月8日
25.Reuters「KFC picks Coca-Cola as US soda supplier, ditches longtime partner PepsiCo」2026年10月15日
26.U.S. FDA「PepsiCo, Inc. Closeout Letter 679972」2024年9月10日
シビックランクの基準
| ランク | 点数 |
|---|---|
| S | 90~100点 |
| A | 80~89点 |
| B | 70~79点 |
| C | 60~69点 |
| D | 50~59点 |
| E | 40~49点 |
| F | 20~39点 |
| G | 0~19点 |
情報ランクの基準
| 情報ランク | 基準 |
|---|---|
| S | 公的機関、裁判所、規制当局、独立した第三者機関の調査・監査・検証・認証など、内容そのものに独立した裏づけがある情報 |
| A | 企業公式資料、採用情報、公式声明・SNS、氏名・役職・立場が確認できる記名取材や公表発言など、発信主体を確認できる公表情報 |
| B | 従業員・元従業員の口コミ、一般SNS、匿名掲示板など、発信者の身元や対象企業との関係を独立に確認しにくい情報 |

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