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東京ガスのホワイト度は?労働環境とエネルギー事業を審査

東京ガス株式会社は、首都圏を中心に都市ガスと電力を販売し、LNGの調達・製造、発電、エネルギー設備、海外事業などを展開する総合エネルギー企業です。ガス管の維持管理やガス漏れへの緊急対応は、2022年4月に事業を開始した100%子会社の東京ガスネットワーク株式会社が担っています。

家庭で火を使えること、飲食店や病院が給湯・空調を利用できること、工場が操業を続けられることは、人の生活を支える基礎です。一方、天然ガスは燃焼時に二酸化炭素を排出し、その多くを海外から輸入しています。社会へ欠かせない事業であるだけに、事故、災害、戦争、調達途絶、料金変動への責任も小さくありません。

働く会社として見ると、平均年収、勤続年数、離職率、育児休業、労働災害などの数値は国内企業の中でも良好です。ただし、東京ガス本体とグループ会社では職種も待遇も異なります。LNG基地の運転、研究開発、営業、企画に携わる東京ガス社員と、導管工事や保安を担う東京ガスネットワーク社員、各家庭を訪問するライフバルなどの従業員を、すべて同じ労働環境として扱うことはできません。

この記事では、東京ガス本体の労働環境を中心に調査し、グループの事業実績は実施主体を明記して評価します。そのうえで、人の生命・健康・生活を守るセーフティ、危険・単調・過重な仕事を技術で改善するイノベーション、災害・戦争・供給途絶への備えを示すプロテクションの3項目からシビックリワードを判定します。

調査日:2026年8月12日

目次

先に結論:シビックカンパニーランクはA(良い)

審査項目ランク主な判断理由
セーフティA(良い)平均年収約784万円、平均勤続19.5年、自己都合離職率1.3%、男性育休取得率100%、労災死亡者0人など、公開された雇用指標は良好。都市ガスの保安体制も高度だが、男女賃金差、グループ・委託先の待遇差、ガス事故の残存リスクがある
イノベーションA(良い)2025年度の研究開発費は約66.3億円。e-メタン、水素製造部材、熱源制御AI、メタン検知、スマートメーター、災害復旧システムなどを開発し、保安と現場作業の省人化へつなげている
プロテクションA(良い)4か所のLNG基地、調達先の分散、耐震設備、約4,000基の地震センサー、約1,000基の浸水センサー、遠隔遮断、BCP、全国のガス事業者との相互応援体制を持つ。海外原料と東京湾への依存が残るためSには届かない
総合ランクA(良い)労働環境、技術開発、防災の三つが高い水準にある。エネルギー供給による人間への貢献も大きいが、化石燃料由来の排出と海外依存を解消できておらず、最高評価にはしない

東京ガスの強みは、単にガスを販売していることではありません。海外からLNGを調達し、基地で都市ガスを製造し、電力も供給しながら、地震発生時には被害の大きい地域だけを遮断し、復旧を管理するところまで一つのグループで構築しています。

働く人への条件も良好です。2026年3月期の有価証券報告書によると、東京ガス単体の平均年間給与は784万953円、平均勤続年数は19.5年でした。2024年度の平均残業時間は月18.0時間、年間有給休暇取得日数は16.9日です。男性の育児休職取得率は2025年度に100%、平均取得日数は68日に達しました。

ただし、S(ホワイト)とするには課題が残ります。正規雇用者の男女賃金比率は80.6%、女性管理職比率は12.8%です。東京ガス本体の指標は優れていても、導管工事、訪問点検、LNG輸送などを担うグループ会社・協力会社まで同じ待遇だとは確認できません。

事業面では、2024年度の温室効果ガス排出量がScope1・2で436.0万トン、Scope3で6,750.1万トンでした。e-メタンや再生可能エネルギーの開発は進んでいるものの、現在の供給量の中心は依然として化石燃料です。人の生活を守る現在の貢献と、将来の気候・資源・安全保障上の損害を両方見た結果、総合Aと判断します。

審査対象となる会社

この記事で主に審査する法人は、東京ガス株式会社(東京瓦斯株式会社)です。東京ガスグループ全体を一社として評価するものではありません。

都市ガスが家庭へ届くまでには複数の会社が関わります。2022年4月以降、主な役割は次のように分かれました。

主体主な役割この記事での扱い
東京ガス株式会社LNG調達、都市ガス製造・販売、電力、発電、法人向けエネルギー、研究開発、海外事業労働環境と総合評価の中心
東京ガスネットワーク株式会社ガス導管、供給指令、保安、漏えい対応、地震時の遮断・復旧100%子会社として、保安・防災・プロテクションへ反映
東京ガスエンジニアリングソリューションズ株式会社法人向け設備、地域冷暖房、LNG供給、エンジニアリンググループ事業として実施主体を明記
東京ガスライフバル各社など家庭向け点検、機器販売、工事、修理、開閉栓など東京ガス本体の雇用実績には含めない
東京ガス不動産株式会社など不動産開発、賃貸、管理都市ビジネスとして補助的に扱う

東京ガスネットワークの会社概要によると、同社は東京ガスが株式を100%保有し、2026年3月1日時点で3,611人を雇用しています。東京都と神奈川、埼玉、千葉、茨城、栃木、群馬の主要都市におけるガス導管事業が担当範囲です。

したがって、ガス管の耐震化、地区ガバナ、緊急遮断、ガス漏れ対応を「東京ガス株式会社が直接行う仕事」とは記載しません。ただし、親会社が経営・投資・人権・グループ方針へ責任を持つ100%子会社のため、シビックカンパニーランクではグループの中核機能として反映します。

東京ガスの基本情報

項目内容
会社名東京ガス株式会社(東京瓦斯株式会社)
英文名TOKYO GAS CO., LTD.
証券コード9531
本社東京都港区海岸1-5-20
創立1885年10月1日
代表者代表執行役社長 笹山晋一
資本金1,418億円
従業員数単体3,769人、連結16,001人(2026年3月31日)
連結売上高2兆8,347億円(2025年度)
主な事業都市ガス、LNG、電力、発電、エネルギーサービス、海外、都市ビジネス
都市ガス小売顧客数886万1,000件(2025年度)
電力小売顧客数433万7,000件(2025年度)

会社概要では、グループ事業を「エネルギー・ソリューション」「ネットワーク」「海外」「都市ビジネス」の4分野に分けています。ガス会社という名称ですが、現在は電力、エンジニアリング、再生可能エネルギー、海外の天然ガス開発、不動産まで扱う企業グループです。

財務状況

2026年3月期は、連結売上高2兆8,347億円、経常利益1,937億円、親会社株主に帰属する純利益2,269億円でした。営業活動によるキャッシュ・フローは4,518億円です。

財務項目2026年3月期
売上高2兆8,347億円
経常利益1,937億円
親会社株主に帰属する純利益2,269億円
総資産3兆8,923億円
純資産1兆7,966億円
自己資本比率44.1%
有利子負債1兆2,772億円
営業キャッシュ・フロー4,518億円

2025年度は3期ぶりの増収増益となりました。都市ガスの原料調達、電力販売量の増加、北米シェールガス事業の販売単価上昇が利益を押し上げています。

エネルギー企業は、LNG基地、発電所、船舶、導管など巨額の設備を必要とするため、有利子負債も大きくなります。それでも自己資本比率44.1%、営業キャッシュ・フロー4,518億円を確保しており、雇用や設備保全が直ちに不安定になる財務状態ではありません。

一方、利益は気温、原油価格、為替、海外ガス価格、不動産売却などに左右されます。2025年度の純利益だけを通常の収益力として固定的に見ることはできません。

主な業務内容

東京ガスの仕事は、家庭へガス料金を請求するだけではありません。原料の長期契約、船舶の配船、LNG基地の運転、ガス製造、発電、電力取引、法人設備の設計、研究開発まで、多数の工程があります。

エネルギーが届くまでの流れ

工程主な担当実際に行うこと
LNGの調達東京ガスの原料・トレーディング部門海外プロジェクトとの契約、価格・為替リスク管理、船の配船、在庫調整
海上輸送東京エルエヌジータンカー、船会社などLNG船の運航、受入日程の調整、安全管理
受入・貯蔵東京ガスのLNG基地LNGを荷揚げし、低温タンクへ貯蔵する
都市ガス製造東京ガスのLNG基地LNGを気化し、熱量を調整して都市ガスを製造する
高圧・中圧輸送東京ガスネットワーク導管で地域へ送り、圧力を調整する
低圧供給・保安東京ガスネットワーク、関係会社家庭や施設へ供給し、漏えい監視、点検、緊急対応を行う
小売・料金東京ガス契約、料金、請求、プラン、顧客対応を担う
機器・設備東京ガス、グループ会社、協力会社給湯、空調、厨房、発電、エネルギー管理設備を提案・施工する

東京ガスは根岸、袖ケ浦、扇島、日立の4か所にLNG基地を持っています。2025年度の都市ガス生産量は133億3,970万立方メートル、販売量は111億7,501万立方メートルでした。

LNGの調達と都市ガス製造

天然ガスは、産出国で採掘・精製した後、約マイナス162度まで冷却してLNGにします。体積を小さくしたLNGを専用船で日本へ運び、基地のタンクで貯蔵し、必要量を気化させる流れです。

東京ガスの2026年3月期有価証券報告書によると、LNGは5か国・10プロジェクトから購入しています。自社船団は長期傭船を含め12隻、LNG基地は4か所です。複数の契約、船、基地を組み合わせ、一つの供給元や施設が止まっても別のルートで補う仕組みを作っています。

LNG基地では、受入桟橋、配管、タンク、ポンプ、気化器、熱量調整設備、制御室を運転します。設備保全、計装、電気、機械、化学、安全管理の知識が必要な職場です。24時間供給を維持する施設では、職場によって夜勤や交代勤務があります。

都市ガスと電力の販売

2025年度の都市ガス小売顧客数は886万1,000件、取付メーター数は1,269万3,000件でした。都市ガス販売量の内訳は、家庭用27億1,900万立方メートル、業務用22億7,500万立方メートル、工業用46億3,000万立方メートル、他事業者向け15億5,200万立方メートルです。

家庭だけでなく、飲食店、ホテル、病院、学校、オフィス、工場、他のガス事業者へ供給しています。給湯や調理に加え、蒸気、乾燥、加熱、空調、自家発電など産業活動にも使われるため、供給停止の影響は広範囲です。

電力小売顧客数は433万7,000件、販売量は280億2,100万kWhでした。自社・出資先の発電所、市場調達、再生可能エネルギーなどを組み合わせて販売します。2025年3月には、出力を調整しやすいガスエンジン10台を備えた袖ケ浦発電所が竣工しました。天候で変動する太陽光・風力を補う調整力として利用する計画です。

法人向けエネルギーと設備

工場、病院、商業施設、オフィス、地域冷暖房では、ガスや電気を売るだけでなく、設備の設計、調達、施工、運用、保守を組み合わせます。ボイラー、コージェネレーション、空調、蒸気、太陽光、蓄電池、エネルギー管理システムなどが対象です。

顧客の設備を遠隔監視し、運転条件を改善できれば、エネルギー使用量と人による巡回作業を減らせます。設備故障の兆候を早期に検知することは、停止損失だけでなく、作業者や利用者の安全にもつながるでしょう。

ただし、法人向けエンジニアリングの多くは東京ガスエンジニアリングソリューションズなどのグループ会社が実施します。東京ガス株式会社の社員がすべての設計、施工、保守を直接担うわけではありません。

海外事業

海外では、北米のシェールガス開発・生産、再生可能エネルギー、蓄電池、LNG基地、現地のエネルギーサービスへ投資しています。2025年度の海外セグメント売上高は2,415億円、セグメント利益は738億円でした。

エネルギー産出側へ参加することは、調達能力と収益源の分散になります。一方、採掘現場の労働安全、水資源、地域住民、メタン漏えい、生態系への影響は日本国内から見えにくくなります。海外事業の利益だけでなく、現地の人権と環境負荷を継続的に調べる必要があります。

都市ビジネス

東京ガスグループは、田町、新宿などで不動産開発、賃貸、ホテル、地域冷暖房を行っています。エネルギー設備と建物運営を一体化できる点が特徴です。

ただし、都市ビジネスの主な実施主体は東京ガス不動産などです。不動産施設の従業員、清掃、警備、ホテル運営の労働条件を東京ガス本体の平均年収で判断することはできません。

主な職種と職場

2026年3月31日時点で、東京ガス単体の常勤従業員は3,769人です。セグメント別では、エネルギー・ソリューションが2,964人、海外が94人、全社部門が711人でした。ネットワーク部門は0人であり、導管事業が別法人へ移ったことが数字にも表れています。

職種・職場主な仕事特有の負担・責任
LNG調達・トレーディング長期契約、売買、配船、在庫、価格・為替リスク管理時差、国際情勢、巨額取引、供給責任
LNG基地の運転・保全ガス製造、制御監視、設備点検、工事管理交代勤務、低温・高圧設備、事故防止、緊急対応
電力・発電発電所運用、電力需給、市場取引、再エネ開発24時間の需給、価格変動、設備停止リスク
法人営業・ソリューション顧客の設備・エネルギー利用を調査し、改善策を提案売上目標、専門知識、関係者調整、長期案件
研究開発e-メタン、水素、AI、燃料電池、センシングなどの研究実用化期限、投資判断、安全検証、知財
DX・情報システム顧客システム、AI、データ、サイバーセキュリティ障害・漏えいの影響が大きい、緊急対応
企画・管理経営企画、人事、法務、経理、調達、広報など規制対応、グループ統制、繁忙期
海外事業投資、事業開発、現地法人管理駐在、出張、法制度・文化差、地政学リスク

新卒採用の勤務時間は8時45分から17時30分で、フレックスタイム制度があります。一部職場では夜勤・交代勤務があると明記されました。完全週休2日制が基本ですが、エネルギーを24時間扱う現場まで一律に土日勤務がないわけではありません。

労働環境の評価

東京ガス本体の雇用データは、賃金、勤続、残業、休暇、離職、安全、育児まで比較的詳しく公開されています。大企業の制度が整っているだけでなく、実際の取得実績が伴っている点を評価します。

賃金:A(良い)

2026年3月期の平均年間給与は784万953円でした。平均年齢43.3歳、平均勤続19.5年で、賞与と時間外手当などの基準外賃金を含みます。管理職は平均給与の算定対象外です。

賃金項目公開値
平均年間給与784万953円
平均年齢43.3歳
平均勤続年数19.5年
2027年入社予定・学部卒初任給28万円
2027年入社予定・修士/博士了初任給30万5,000円
昇給年1回
賞与年2回

新卒採用の応募要項では、通勤費は原則全額支給です。初任給と平均給与は国内の一般的な水準を明確に上回り、財務基盤も安定しています。

一方、平均値だけでは職種、年齢、学歴、交代勤務、一般職と管理職の差は分かりません。2025年度の男女賃金比率は、全労働者79.2%、正規雇用者80.6%、パート・有期雇用者64.0%でした。会社は職位構成などの影響を説明していますが、同じ価値の仕事に対して差がないかを判断できる職種別・等級別データは公開されていません。

福利厚生:A(良い)

社会保険に加え、貯蓄、融資、共済会、社員持株会、独身寮、家族寮、総合グラウンドなどがあります。国内外留学研修、自己選択型チャレンジプログラムも用意されました。

育児、介護、ボランティア、キャリア形成に関する休暇制度があり、柔軟な働き方を進めています。子育て支援ではプラチナくるみん、女性活躍ではえるぼし最高位、健康経営ではホワイト500の認定を受けています。

外部認定は労働環境の完全な保証ではありません。しかし、制度の有無だけでなく、男性育休100%や平均68日という利用実績が確認できるため、福利厚生はAとします。

労働時間・休日:A(良い)

サステナビリティファクトブック2025によると、2024年度の平均残業時間は月18.0時間、年間有給休暇取得日数は16.9日でした。

年度月平均残業時間年間有給休暇取得日数
2022年度17.9時間21.2日
2023年度17.6時間18.2日
2024年度18.0時間16.9日

残業時間は大きく増えておらず、有給取得も高い水準です。ただし、有給取得日数は2年間で4.3日減少しました。単年の事情か、組織再編や業務量の変化による傾向かを今後も確認する必要があります。

社員口コミを集計するOpenWorkの公開ページでは、東京ガスの総合評価は3.89、月間残業は21.4時間、有給休暇消化率は71.6%、口コミ数は1,696件でした。公式値と完全には一致しませんが、極端な長時間労働が全社へ常態化している状況は読み取れません。

LNG基地、発電、緊急対応に関わる職場は、一般のオフィスと勤務形態が異なります。全社平均が18時間でも、繁忙部署、交代勤務、海外案件、障害対応には負担が集中する可能性があるため、職場別データの開示が望まれます。

安全性・健康:A(良い)

2024年度の定期健康診断受診率は100%、ストレスチェック受検率は96.1%でした。労働災害による死亡者は、2022年度から2024年度まで0人です。

休業度数率は2022年度0.00、2023年度0.26、2024年度0.15でした。同資料に掲載された電気・ガス・熱供給・水道業等の産業平均より低い水準です。労働損失日数の大きさを示す強度率も0.001以下に収まっています。

東京ガスの仕事には、LNG、ガス、高圧設備、電気、化学物質、夜勤、工事管理など固有の危険があります。事故が少ないことは、仕事そのものが安全という意味ではなく、教育、設備、手順、保護具、点検が機能した結果と見るべきでしょう。

なお、この労災データは東京ガス社員と契約社員の実績です。導管工事、設備工事、輸送、訪問作業を担うグループ会社・協力会社を含む統一的な死亡者数、度数率、強度率は確認できません。危険な現場ほど外部へ委託されている可能性を考えると、サプライチェーン全体の開示が必要です。

雇用の安定性:A(良い)

2024年度の東京ガス単体の自己都合離職率は1.3%でした。2022年度1.3%、2023年度1.2%で推移しており、平均勤続年数19.5年と合わせて長期雇用の安定性が確認できます。

AIや自動化の導入は進んでいますが、現時点で東京ガス本体が大規模な人員整理を行い、技術導入の利益を雇用削減だけへ使っている状況は確認できません。2025年度のリスキリング・学び直し実施率は99.7%でした。

ただし、東京ガス単体の従業員数は、導管事業の分社化などで大きく変動しています。グループ内転籍と外部への解雇は意味が異なるため、単純な人数減だけで雇用不安と判断しない一方、転籍後の賃金・制度差は調査対象に残ります。

育児・多様性:B(普通)

男性の育児休職取得率は、2021年度16%から2025年度100%へ上昇しました。育児休業等取得率は109%、平均取得日数は68日です。女性管理職比率も2016年度6.5%から2026年度12.8%へ増えています。

女性活躍推進ページによると、女性社員比率は21.1%です。女性の平均勤続年数は18.5年、男性は18.8年で、大きな差はありません。

育児との両立実績はA相当ですが、女性管理職12.8%、正規雇用者の男女賃金比率80.6%は、意思決定と報酬の差が解消された状態ではありません。総合して、多様性の項目はBとします。

口コミ・SNSの評判:A(良い)

口コミでは、待遇、法令順守、相互尊重、ワークライフバランスを評価する声が目立ちます。安定した事業基盤の中で大規模案件へ関われることや、休暇を取得しやすい点も好意的に語られています。

一方、伝統的な大企業らしい意思決定の遅さ、部署間調整の多さ、若手の成長速度、人事評価の納得感を課題とする意見があります。異動や配属によって仕事内容が大きく変わるため、「東京ガスの働き方」を一つの口コミで代表させることはできません。

公式データと1,000件を超える口コミが概ね同じ方向を示しているため、評判はAとしました。ただし、投稿者の雇用時期、職種、所属会社が不明な口コミもあり、個別の記述を事実認定には使っていません。

事業による人間への貢献

東京ガスの事業は、人が安全に暮らし、医療・福祉・産業を継続するためのエネルギーを供給しています。生活インフラとしての貢献は大きい一方、事故と気候変動の影響も人間へ返ってきます。

家庭・医療・産業を支えるエネルギー

都市ガスは、調理、給湯、暖房だけでなく、病院の給湯・蒸気、飲食店の厨房、工場の加熱・乾燥、建物の空調などに利用されます。電力も合わせて供給することで、顧客は設備とエネルギーを一体で管理しやすくなります。

災害時には、避難所や病院で温かい食事、給湯、空調を維持できるかが健康へ直結します。平時に料金を徴収するだけでなく、停止を防ぎ、安全に遮断し、復旧する能力まで含めて社会的価値があります。

安全を支える保安技術

東京ガスネットワークは、約1,200万件の需要家を対象に導管と保安を担っています。2026年3月には、テクノロジーを活用しながら自律的に高度な保安を確保する事業者として、都市ガス事業者で全国初の「認定高度保安実施事業者」に認定されました。

家庭のマイコンメーターは震度5程度以上の揺れを検知すると、自動的にガスを遮断します。低圧導管網は300以上、中圧導管網は25以上のブロックに分けられており、被害の大きい地域だけを止められる構造です。

この仕組みは、事故防止と生活継続を両立させます。広域を一律に止めれば安全側にはなりますが、無傷の地域まで長期間ガスを使えなくなるためです。

技術による省エネと負担軽減

法人向け設備の最適運転、コージェネレーション、熱源制御AI、スマートメーターは、エネルギー使用と人による巡回・検針を減らします。2025年度には、東京ガスが特許を持つ強化学習AIをTAKANAWA GATEWAY CITYの地域冷暖房施設へ導入しました。

グループが開発したガススマートメーターでは、遠隔検針、遠隔開閉栓、遠隔データ収集が可能です。立ち入りにくい場所へ人が訪問する回数を減らし、人手不足と作業負担を軽減します。災害時に遠隔遮断できるため、単なる人員削減ではなく安全性の向上にも結びついています。

人権管理の前進

東京ガスグループは2025年9月、初の人権レポートを公表しました。人権デュー・デリジェンス、救済窓口、新規投融資時の社会・環境リスク管理をまとめています。

海外の資源開発、建設、LNG輸送、カーボンクレジットでは、現地労働者、先住民、地域住民への影響が生じます。人権レポートの発行は評価できますが、2025年が初回です。方針の公表だけでなく、特定した問題、是正件数、取引停止、被害者への救済結果まで継続的に示す必要があります。

人間へ与えている損害や問題

化石燃料による温室効果ガス排出

2024年度の東京ガスグループのScope1・2排出量は436.0万トンCO2e、Scope3は6,750.1万トンCO2eでした。Scope3のうち、国内で販売した製品の使用による排出は2,772.9万トン、海外分は2,620.3万トンです。

天然ガスは石炭や石油より燃焼時の二酸化炭素排出が少ない場合がありますが、排出がゼロになるわけではありません。採掘・液化・輸送時にはエネルギーを使い、メタンが漏れれば強い温室効果を持ちます。

気候変動は、猛暑、洪水、食料、感染症、住居、移住などを通じて人の生命と生活へ影響します。したがって、環境問題を人間への損害と切り離すことはできません。

東京ガスは2050年のCO2ネットゼロ、2030年のe-メタン1%導入などを掲げています。しかし、2030年時点でも都市ガスの大部分は化石由来の見込みです。実証や目標ではなく、実際の供給構成と絶対排出量がどれだけ変わったかを評価する必要があります。

海外資源と東京湾への依存

都市ガス原料の大半は海外から輸入されています。会社自身も、産出国の情勢、ガス田・液化基地のトラブル、LNG船の事故、東京湾への入港規制が長期化すれば供給へ影響すると認識しています。

5か国・10プロジェクトへの分散と複数基地は有効ですが、国内だけで長期間必要量を生産できる体制ではありません。戦争、海上封鎖、サイバー攻撃、同時多発災害が起きた場合、契約先が複数でも共通の輸送路が弱点になります。

ガス事故の残存リスク

2025年7月には東京都八王子市の集合住宅で、ガス漏れに伴う可能性がある火災により1人が死亡しました。経済産業省の公表時点では原因は特定されておらず、ガス小売事業者は東京電力エナジーパートナー、一般ガス導管事業者は東京ガスネットワークでした。

この事故を東京ガスグループの過失と断定することはできません。一方、ガスは漏えいと着火が重なると重大事故につながるため、機器、配管、利用者への注意喚起、緊急対応を継続する必要があります。

供給支障はゼロではない

2025年10月17日、葛飾区新小岩のガス管へ水が流入し、572戸で供給支障が発生しました。東京ガスネットワークは水を除去し、各戸の安全を確認したうえで、翌18日10時15分までに全戸の供給を再開しています。

約1日の復旧と情報更新は評価できますが、都市ガスが止まれば調理、給湯、店舗営業へ影響します。事故件数が少ないことと、影響を受けた人の不便が小さいことは同じではありません。

問題発生後の対応

東京ガスグループは、地震、台風、津波、富士山噴火、大規模停電、感染症、サイバー攻撃、ガス供給支障などを対象にBCPと非常事態体制を整えています。各部門・子会社には約270人のリスク管理推進者を配置し、重大事象では非常事態対策本部を設置する仕組みです。

供給支障が起きた場合は、原因調査、ガス管内の処置、圧力確認、各戸の安全確認、開栓という順で復旧します。新小岩の事例では、第1報、停止戸数と原因を示す第2報、復旧完了を公式サイトで公表しました。

災害時の復旧では、SUPREME、HURRY、TG-DRESSなどのシステムを使います。被害推定、ブロック別の作業計画、閉栓、修繕、漏えい調査、開栓、現場報告を一元管理し、必要な場所へ人員を振り分ける仕組みです。

対応体制は強いものの、事故原因と再発防止の最終報告が一般利用者から見つけやすい形で蓄積されているとは限りません。発生時の速報だけでなく、調査終了後の原因、責任範囲、設備改修、被害者支援まで同じページから追えることが望まれます。

セーフティの評価:A(良い)

セーフティは、働く人、顧客、地域住民の生命・健康・生活をどれだけ守っているかで判断します。

東京ガス本体では、高い賃金、長い勤続、低い離職率、月18時間の平均残業、男性育休100%、労災死亡者0人という実績があります。制度だけでなく利用・結果の数値を公開している点も評価できます。

顧客側では、マイコンメーター、ブロック遮断、24時間の保安、定期点検、事故時の情報提供を整えています。東京ガスネットワークが全国初の認定高度保安実施事業者となったことも、技術と管理体制が外部評価を受けた証拠です。

一方、男女賃金差と管理職構成には改善の余地があります。東京ガス本体より現場作業の比重が高いグループ会社・協力会社について、同じ粒度の賃金、残業、離職、労災データがそろっていません。ガス事故も完全にはなくせておらず、セーフティはSではなくAです。

イノベーションの評価:A(良い)

イノベーションは、新製品の数ではなく、人が行う危険・単調・過重な仕事を減らし、社会の安全と生産能力を高めているかで判断します。

2025年度の研究開発費は66億2,700万円でした。うちエネルギー・ソリューションが49億4,000万円、ネットワークのスマート保安などが16億8,600万円です。

主な研究・実装は次のとおりです。

技術・事業内容人間への効果
e-メタン再生可能エネルギー由来水素とCO2からメタンを製造既存のガス設備を利用しながら化石由来排出を減らす可能性
PEXEM水電解装置の中核部材を大型化し量産体制を構築グリーン水素のコスト低下と普及を支える
熱源機器最適制御AI強化学習AIで地域冷暖房設備を制御運転調整とエネルギー使用を削減
レーザー式メタン検知メタン濃度を簡易計測・可視化目視できない漏えいの把握と排出削減
ガススマートメーター遠隔検針、遠隔開閉栓、データ収集訪問・反復作業を減らし、災害時の遮断を迅速化
SUPREME地震データ収集、被害推定、遠隔遮断人が被災地を確認する前に二次災害を防ぐ
復旧支援システム作業計画と現場報告をデジタル化復旧要員の重複・待機・入力作業を減らす

自動化を単なる人員削減ではなく、検針、開閉栓、監視、復旧計画などの負担軽減へ使っている点は、シビックリワードの趣旨と合います。リスキリング実施率99.7%も、技術変化へ社員を参加させる材料です。

ただし、e-メタンや水素の多くは実証・拡大前の段階にあります。2030年のe-メタン導入目標はガス小売量の1%です。自動化で不要になった仕事の担当者が、どの職種へ移行し、賃金と雇用を維持できたかも公開されていません。実用化と働く人への利益が十分に確認できるまではAとします。

プロテクションの評価:A(良い)

プロテクションは、戦争、災害、事故、停電、サイバー攻撃、供給途絶などから人の生活と社会機能を守る力です。一般的な日本企業では評価しにくい項目ですが、東京ガスは生活インフラを担うため、事業の中心に明確な防護機能があります。

災害を防ぐ設備

LNGタンクは大地震に耐えられる構造で、阪神・淡路大震災と東日本大震災でもLNG漏えいの実績はないとされています。高圧・中圧導管には溶接接合鋼管、低圧導管には柔軟で腐食しにくいポリエチレン管を採用しています。

東京ガスネットワークの供給エリアには、約4,000基の地震センサーと約1,000基の浸水センサーがあります。SUPREMEへ情報を集め、被害が大きいブロックを自動または遠隔で遮断します。

停電時にもガスを送りやすい構造

ガスの圧力調整器は、ガス自身の圧力差を利用するため電力を必要としません。監視設備や保安拠点は、停電時に非常用電源へ切り替えます。LNG基地も自家用発電設備で一定量のガスを送出でき、複数基地の相互補完が可能です。

電力とガスは完全に独立していませんが、同じ災害で両方が直ちに全面停止しない構造を持つことは、首都圏の生活防衛に意味があります。

復旧と相互応援

被害がないブロックは遠隔で再稼働し、被害地域では閉栓、修繕、漏えい調査、開栓を管理します。病院など早期復旧が必要な施設には、移動式ガス発生設備で臨時供給する方法もあります。

大規模災害では、日本ガス協会を通じて全国200余りの都市ガス事業者が要員と資機材を相互に応援します。自社だけで要員を抱えるのではなく、被災地域へ全国から人と設備を集められる協力体制です。

原料調達の分散

5か国・10プロジェクト、12隻の自社船団、4か所のLNG基地を組み合わせています。2030年からは米国のLNGを年間約100万トン、20年間調達する契約も決定しました。仕向地制限のない契約により、需給に応じて配船しやすくしています。

それでも原料の大半を海外へ依存し、船舶と港を使う構造は変わりません。複数の調達先が同時に影響を受ける戦争、海上輸送の遮断、東京湾の長期閉鎖には弱さが残ります。サイバー攻撃の具体的な防御能力も、安全上の理由から公開には限界があります。

防災能力は日本企業として例外的に高いものの、国内で自立して長期間エネルギーを確保できるS水準には届かないため、プロテクションはAです。

AからSへ上がるために必要なこと

グループ・協力会社を含む労働実態の開示

東京ガス本体だけでなく、導管工事、LNG輸送、設備工事、訪問点検、コールセンターなどについて、会社別・雇用形態別の賃金、残業、離職、労災、休暇を公開する必要があります。危険や負担の大きい業務を委託し、本体の数値だけを良く見せる構造がないことを確認できる状態が望まれます。

男女賃金差と意思決定層の差を縮める

男性育休100%は大きな成果です。次は、正規雇用者の男女賃金比率80.6%と女性管理職比率12.8%を、職種・等級・配置の改善によって縮める段階です。平均値だけでなく、同一等級・同一職種での差を公開すれば、原因と進捗を判断しやすくなります。

化石燃料からの移行を実供給量で示す

実証件数や将来目標ではなく、販売したガス・電気のうち、化石由来、e-メタン、バイオメタン、再生可能電力がそれぞれ何%かを毎年示す必要があります。Scope1・2だけでなく、販売したエネルギーの使用を含むScope3の絶対量を減らすことが重要です。

戦争と長期輸送途絶への耐性を高める

調達国の分散に加え、国内再生可能エネルギー、蓄電、バイオメタン、水素、地域の分散型発電を増やし、船が来ない期間にも最低限の生活・医療・産業を維持できる体制が必要です。平時の価格だけでなく、非常時の生存と社会継続を投資判断へ入れることが求められます。

自動化後の仕事と権利を示す

スマートメーターやAIによって作業を減らした後、対象者が解雇されたのか、別の業務へ移ったのか、賃金が上がったのかを公開することが重要です。自動化の利益を株主と企業だけでなく、働く人の安全、時間、教育、権限へ配分できれば、イノベーションの評価はSへ近づきます。

東京ガスの総合評価

評価項目ランク
賃金A(良い)
福利厚生A(良い)
労働時間・休日A(良い)
安全性・健康A(良い)
雇用の安定性A(良い)
育児・多様性B(普通)
口コミ・SNSA(良い)
セーフティA(良い)
イノベーションA(良い)
プロテクションA(良い)
シビックカンパニーランクA(良い)

東京ガスは、労働環境だけを見ても国内の大企業の中で良好な部類です。平均年収約784万円、平均勤続19.5年、自己都合離職率1.3%、男性育休100%、労災死亡者0人という数値には、長期雇用と安全管理の実績があります。

事業による人間への貢献も大きいと判断できます。家庭、病院、飲食店、工場へエネルギーを届け、地震時には必要な地域だけを遮断し、全国の事業者と協力して復旧する仕組みは、人の生活を直接守るものです。研究開発も、e-メタンや水素だけでなく、AI制御、漏えい検知、遠隔検針、災害復旧へつながっています。

一方、現在の事業は大量の化石燃料と海外輸送に依存します。温室効果ガス、男女賃金差、グループ・協力会社の労働実態、事故の残存リスクも無視できません。

東京ガスは、現在の生活を守る能力と、未来のエネルギーへ移行する技術の両方を持つ企業です。その能力が実際の排出削減、サプライチェーン全体の人権、働く人への自動化利益の還元まで広がったとき、S(ホワイト)を検討できるでしょう。現時点のシビックカンパニーランクは**A(良い)**です。

主な参考資料

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